「雨水がはぐくむ里山の生き物・人のくらし」実施報告書 - 平吹研究室

2003年度杜々かんきょうレスキュー隊事業
森林・里山分野Ⅱ
「雨水がはぐくむ里山の生き物・人のくらし」実施報告書
平吹喜彦(宮城教育大学教育学部理科教育講座/環境教育実践研究センター)・
知智美(宮城教育大学大学院環境教育実践専修)
1. はじめに
日本のふるさとの代名詞ともいえる里地・里山には,人と自然が長い時間をかけて構築して
きた伝統的な生活様式や豊かな自然が存在する(亀山,1996; 武内ほか,2001; 広木,2002).1960
年代に始まるエネルギー革命や高度経済成長は,こうした里山の状況を大きく変えたが,近年,
「地域に根ざした持続的な社会づくり」をめざす多様な取り組みが実施される中で,かつての
里地・里山で機能していた自然共生型・資源循環型システムを見直す活動が始まっている(藤
井,1995; 守山,1997).
私たちもまた,環境教育・自然教育という視点から,宮城県,特に仙台都市圏の丘陵地域に
みられる里山をフィールドとして,自然環境に関する基礎調査や教育・啓発活動を行ってきた
(荒木・平吹,1999; 川村ほか,2001; 平吹・川村,2002; 知ほか,2003; 平吹ほか,2003).
本稿は,仙台市環境局環境都市推進課が企画した「杜々かんきょうレスキュー隊」
(環境省「平
成 15 年度体験的環境学習推進事業」)の一環として,「水の循環: 山から海まで」という統一
テーマのもと,里山を舞台とした取り組みについて報告したものである.
開発したプログラムでは,特に,里山における①水の連続性,②水と多様な野生生物や農作
物との関わり,③水を大切にする日常生活の実態に着目した.里山を「水の回廊」としてとら
え,森に降った雨水がため池,小川,水田・畑地,農家,河川を巡りゆく過程を追跡しながら,
随所に隠れている生き物や自然現象,暮らしの工夫を発掘して行くことが,プログラムのねら
いである.
2. 学習プログラム
今回の取り組みでは,プログラムを「活動目的を達成するための まとまりと流れ をもっ
た学習プロセスの全体」と定義し,「このプログラムの構成要素であり,それぞれに目標やね
らいをもった相対的に短時間の学習行為」をアクティビティーとみなした(川嶋・藁谷,1999;
長島・平吹,2003).仙台市泉区堂所地区における活動を想定した学習プログラムを作成し,
「杜
々かんきょうレスキュー隊」事業の企画書の書式にしたがって著した(付表 1).
「子ども用(保護者あるいは市民を含む)」については,小学校 4 ∼ 6 年生を対象として,
①触れ合い(五感,感性)を重視し,②自然に親しむ楽しさやマナーを実感できる活動を主体
とすることとした .「教師用」については ,「子ども用」をベースとして,①個々のアクティ
ビティーのねらいや組み立て,発展性,あるいは自然現象の中に隠れている学術的原理につい
て説明するとともに,②日々教育活動に関わっている参加者の間で,自然体験学習に関わる意
見・情報の交換を行う機会を盛り込むこととした.③個々の教師がオリジナルな実践を構築す
る際,有用となる情報や経験を提供することが目的である.
なお,今回提示した学習プログラムは,おおむね 5 時間ほどで実施可能な,いわばイベント
的な一過性の活動を想定して構築されたものである.しかし,個々のアクティビティーが豊富
な活動・学習内容を秘めていることは明らかであり,例えば①「総合的な学習」の体系的なカ
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リキュラムとして,じっくりと取り組む活動に格上げしたり,②アクティビティーの一部だけ
を取り出して,他教科の学習に活用するといった再編が可能である.いずれ,個々の実践に応
じて,実施者自身のねらいや手法,工夫,あるいはフィールドの特性を勘案した改善を施す必
要がある.
3. 学習プログラムの実践
2003 年 9 月 28 日(日)に,仙台市泉区堂所地区で行った「子ども用」学習プログラムの実
践結果を,以下に報告する.
当日の活動には,『仙台市政だより』に掲載した募集に応じた市民16名のうち11名(小学生 4
名とその保護者 4 名,および教育関係者を含む市民 3 名)が参加した. 活動全体の進行役は,
堂所地区をフィールドとして環境教育に関わる調査・研究を続けてきた知智美が務め,活動
を補助するために宮城教育大学平吹研究室に所属する学生 6 名(福岡公平,佐藤麻衣子,長谷
川巧,戸羽康幸,菊池彰人,遠藤陽子)が加わった.
事前に行った下見や模擬実践から,実際の活動ルートや観察対象(図 1),時間配分(活動
全体では 10:00 ∼ 14:00)などが最終決定され,付表 1 に示したアクティビティーについて取
捨選択がなされた.実施日の天気は,快晴であった.実践開始前に,遡上する堂所川の水量を
再確認するとともに,万一の緊急事態に備えて,諸物品を積んだ自動車を活動ルート途上の谷
奥に配置した.
図 1. 堂所地区の地形, および活動
ルート(太線)と観察対象(数字).
観察対象の数字は, 観察の順序
と対応する.
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a) 導入の段階
今回は,探求活動を行うフィールドの全貌が確認できない場所(木立や斜面に囲まれた小さ
な空き地; 図1の地点①)で導入活動を行った.仙台市近郊の里山の多くは,低い山並みの中
に入り込んだ袋小路状態の谷(「谷津」や「谷戸」とも呼ばれる)を構造・機能上の単位とし
ているが,谷津の入り口に立って里山の景観全体を見渡す前に,閉鎖的な場所で活動目的や安
全対策を確認し,里山のイメージや活動への期待を膨らませることを先ずねらった.なお,集
合場所については,交通機関・駐車場の利便性やトイレの使用を考慮して,根白石市民センタ
ーとした上で,自家用車に分乗してこの場所への移動となった.
全員の到着を待って,参加者に活動を支援するためのワークシート(付図1)を配布し,改
めて自己紹介とグループ分けを行った.各グループは,3 ∼ 4 人の参加者(家族は同一グルー
プとした)と最低 2 人の学生補助者から構成された.
(1) 里山の全体像を想い描く
活動の最初は,これから水源をめざした探求を行う里山とはどんな所なのか,その景観を
想い描いてもらうことであった.保護者や市民の方々には,かつての農村景観や生活様式を思
い出していただきながら,グループごとに,子どもを中心に据えた話し合いを促した.薪炭林
や採草地,ため池,棚田といった日常生活と密着した土地利用が話題となったところで,堂所
の空中写真や地形図を提示した(図 2; 実物は縮尺 5 千分の 1 程度)・・・・・この時,進行役が示
した地形図には,森林や水田,畑地,民家,尾根線,水系の様子があらかじめカラーペンで書
図 2. 堂所地区の空中写真(左)と地形図(右). 空中写真(原図はカラー)は, 1993 年 10 月 23 日に
国土地理院が撮影. 色や模様の違いからコナラ林やスギ植林, 水田, 畑地, ため池, 住居など
の景観単位を読み取ることができる. 地形図には, 尾根(原図では赤色)と水系, ため池(原
図では青色)を上書きした. 今回は, 太い尾根線で区切られるU字型の集水域(谷津)を活動
単位とした.
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き加えられており(図2右参照 ),①里山が位置する丘陵地は,U字型の集水域の集合体であ
ることや,②地形(尾根−斜面−谷底,あるいは上流−下流といった環境傾度)に応じた土地
利用がなされていることについて説明がなされた.続いて,模擬実践にも参加して土地勘のあ
る学生補助者が支援しながら,親子や参加者ひとり一人が,遡上予定の堂所川や枝分かれを繰
り返す小川,谷奥にあるため池など,今回のテーマである「水の循環」に直接関与する水系を
着色した.参加者の多くは,里山に樹枝状に入り込んでいる水系をていねいにトレースし,そ
の複雑さに驚いていた(付図2a)・・・・・.そこから,隅々まで維管束が入り込むブドウの房,あ
るいは血管が入り込むヒトの肺のような秩序ある有機体を想い浮かべ,里山の基本構造がイメ
ージされたかもしれない.そして最後に,活動ルートを個々の参加者の地形図上に書き込むこ
とで,水辺をたどる活動を介して,さまざまな景観や生き物と出会えそうな予感を与えた.
(2) 安全とマナーを約束する
川を遡上する前に,活動に必要な器具を分配し,危険回避と里山に接するマナーについて確
認した. 危険な動植物に対する注意を促した上で,防虫対策(スプレーや携帯蚊取り線香の使
用)と服装の点検を行った. また,訪問先は私有地であることを伝え,住民の方々が大切にし
ている里山を傷つけないよう約束した.生き物については,観察後に原状に戻すこととした.
b) 探求の段階
(1) 大きな流れを遡る
先ず,空き地から急な斜面を下り,堂所川の本流に入った.川幅は 5m ほどで,河床は滑床
で美しい. 前日の雨で水量は多少増えていたが(水深 30cm 以下),流れは緩やかで,澄んで
いた. 子ども達はすぐに活発な行動を始め,足元が濡れることも気にせず,ぐんぐん遡上した
り,タモ網を使ってドジョウや小魚を捕まえていた(付図2b). 20 分ほど歩いてから,ヤブに
覆われた幅 1m 弱の支流に入り(付図2c),急な斜面を登って,水田が連なる谷津田の最北端
に出た(図 1 の地点②).
(2) 里山の全体像をつかむ
ここで初めて里山の景観全体と対面することとなった参加者は,木々に覆われた堂所川を
遡上する動的な活動から,一転して,秋日のパノラマが広がる田園をスケッチする静的な活動
へと導かれた(付図2d). 持参していただいた色鉛筆を用いて,大地の凹凸や海抜(=地形)
に留意しながら,里山の景観を構成する棚田や屋敷林,家屋,畑地・ビニールハウス,コナラ
林,スギ植林といった景観単位を見つけ出し,その輪郭をスケッチしていただいた(図 3) .
スケッチ開始からおよそ 15 分後,2・3 名の参加者の方に,スケッチを示しながら里山景観の
特徴についてお話しいただいた後,①里山では人が作り出した景観単位がパッチワークのよう
に,地形と対応づけられる法則性を持って配列し,②このことが,変化に富んだ自然環境を生
み出す一因となっていることを付け加え,まとめとした.そして次に,前方に延びる川の流れ
を目でたどりながら,景観単位のひとつ一つで出会うであろう動植物や,それらが生活する環
境をしっかり観察しながら,水源をめざして進むことを再確認した.
導入の段階では,地形図を用いて水平的・概念的に認識された里山が,ここではスケッチ
という活動を通じて,立体的・視覚的にとらえ直されたことになる.
(3) あぜ道に沿って小川を遡る
早速,川沿いのあぜ道を一列になって進んだ(図 1 の地点③).小川と水田に挟まれたこの
小高いあぜ道には,さまざまな野草や昆虫のほか,カエルやヘビも認められ,子ども達は飽き
ることなく追いかけていた(付図2e). 動植物の名前や生態的特徴に詳しい方もいらして,参
加者それぞれの視点で,観察が深まった.
(4) 里山を鳥瞰する・採草地を調べる
30分ほど小川に沿ったあぜ道を歩いた後,昼食休憩のために小高い尾根に向かった(図 1
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図 3. 里山のパノラマ(上)と景観単位が抽出されたスケッチ(下). このアクティビティーによ
り, 導入段階で提示された里山の全体像が再認識されるとともに, これから里山の核心部
で実施される探求活動に, 指針と期待が与えられる.
の地点④ ).この場所は,これまで活動してきた大きな谷津を二分する尾根の突端に位置し,
しかも毎年ていねいな草刈りがなされて,かつての採草地の面影を留めている.活動ルートを
含む堂所地区全体が見渡せる場所であると同時に,採草地に特有の陽生植物がいくつか生育し
ている.今回は,昼食を食べながら里山のパノラマを存分に楽しむとともに(付図2f),食事
後にはセンブリの苦味を体験したり,秋の七草を探す活動を行った.
(5) ため池を調べる
昼食休憩の後,もとの小川に戻って,その上流に築かれた小さなため池に移動した(図 1
の地点⑤). 導入の段階で作成した着色地形図を取り出して,谷津の最奥部には必ず 1 ∼ 3 個
のため池が存在することを再確認していただきながら,ため池が人工物であることやその水が
農作物の栽培に使われていること,ため池にはたくさんの水生生物がすんでいることなどを説
明した.実際このため池でも,スイレンやガマといった豊富な水生植物が認められ,タモ網で
池底をすくうとヌマエビやマツモムシ,イトトンボの幼虫などが躍り出た(付図2g). こうし
た動物は,すぐさま透明なプラスチック容器に入れて,からだのつくりや動きをいろいろな角
度から観察した.
(6) 水源の森を調べる・コナラ林の歴史を知る
次に,ため池の奥に広がるコナラ林に移動した(図 1 の地点⑥).この場所は,小川の両側
に斜面が迫り,高さ16mに達する落葉広葉樹が空を覆っている点で,これまでとはまったく様
相の異なる景観単位であり,遡ってきた水系のもっとも上流に位置する.今回は先ず,コナラ
林内の谷頭(=斜面のあちこちにみられるU字型の浅い凹地で,その下端付近から水流が始ま
-5-
る)に着目し,谷頭内に参加者を導いた後,降雨の最初の受け皿であることを解説した.続い
て,
「空から森の上層に達した雨水は,どのような経路をたどって水流となるのか」問いかけ,
ワークシート(付図1)を用いて,①上空を仰ぎながら,木々の枝張りや葉群の配置を垂直的
にスケッチしたり(=森林断面図),②水源涵養の役割を担う土壌について,表層の落葉層か
ら下方の鉱質層に向かって,色やにおい,湿り具合,粒状構造などの変化を垂直的にスケッチ
する(=土壌断面)活動を促した.学生補助者の支援を受けながら,20分ほどかけて,参加者
ひとり一人がこうした活動に取り組んだ(付図2h).最後に,車座になった参加者に活動結果
をたずねながら,水源涵養や土砂流出防止といった機能を果たす森林のはたらきに言及し,ま
とめとした(付図2i).
引き続いて話題としたのは,このコナラ林が水源の森であると同時に,里山では特別な意味
をもった存在として,長い間にわたって,人の暮らしを支えてきたという歴史である・・・・・先
ず,高木となった木々のサイズ(高さや幹直径)が比較的均一であることや,一つの根元から
複数の幹が伸び出していること(=萌芽)に注意を促し,その原因として,幾世代にもわたっ
て実施された薪炭林としての管理・施業について簡単に解説した.その証拠ともいえる炭焼き
窯跡の小さな窪地も観ながら,最後のアクティビティーとなる「農家の方から,里山の伝統的
な暮らしについてお話を聴く活動」につながりを持たせた.
c) まとめの段階
今回観察させていただいた棚田や採草地,ため池,コナラ林を所有・管理し,代々堂所で生
活なさってこられた農家を訪問し,伝統的な暮らしの実態をお聴きするとともに,質疑応答や
意見交換の時間を設定することで,一連の行程・活動をふりかえり,わかちあうこととした.
このため,依頼をお引き受けいただいた方とは,事前打ち合わせを十分に行った.
(1) 農家の方から里山の暮らしを聴く
おたずねした農家では,広いお屋敷内を案内していただきながら,里山の伝統的な生活様式
についてお話をうかがった.母屋の背後に位置する小山(=背戸山)から湧き出す水は,一年
を通じて温度が安定しており,現在も日常生活や養魚,灌漑に使われていることや,「背戸山
の木を切ると水が出なくなる」という格言があることなどをお聴きし,水・暮らし・森林の密
接な繋がりを実感しながら湧水をごちそうになった(付図2j).背戸山には大きなタケやクリ
が育ち,前庭にはさまざまな草木に混じって,シドケやミズなどの山菜が栽培さていた.また,
土蔵の軒下には,お風呂を沸かすための薪が整然と積まれてあった.母屋の北側に並ぶスギ木
立(=屋敷林)を抜けて屋敷の外側に進むと,段々畑に隣接して炭焼き小屋があった.最近ま
で利用されていたという小屋,そして窯の内部を見学した後(付図2k),コナラ林の伐採に始
まり炭が焼きあがるまでの製炭作業の工程や苦労話,馬に積んで根白石に売りに出かけた話を
お聴きした.まるで玉手箱が開いたように,興味深い話題が次々と飛び出す状況に,一同すっ
かり魅了されてしまい,予定した20分を超える活動となった.
農家の方を囲んでの質疑応答・意見交換の時間には,子どもからも,大人からも発言が出て,
活動のふりかえりとわかちあいがなされた(付図2l ).「谷津田のある里山風景は美しいけれ
ど,平野部の水田と比較して区画の形や大きさがまちまちだ.苦労する点が多いのでは?」,
「水田やコナラ林では,これからも現在のような管理を続けていくの? 」,「こうした里山に
関心をもっている人は結構いる.そうした人々が農作業を手伝いに来ればいい.」,「生活排水
やゴミは,どのように処理されるの?」などなど,「あのため池のそばにあった木から収穫し
たのよ.クマと競争になって大変.」と言って,農家の奥さんが振る舞ってくれたゆで栗をい
ただきながら,なごやかな雰囲気の中での議論となった・・・・・話題は尽きなかったが,簡単な
まとめとお礼を述べて,随時解散となった.
-6-
4. 実践の評価
昼食休憩やまとめの時間,解散直後,そして翌日に電話やファクシミリで,参加された方
々からコメントをいただいた.その多くは,「里山の典型ともいえる地域で,とてもよい経験
となった.」,「樹木に覆われてトンネルのようになった堂所川から,人の暮らしが一望できる
棚田へ導かれる展開は,冒険心や驚きをかき立てる効果が大きく,十分に楽しめた.」,「里山
のパノラマをスケッチすることで,里山の全体像を楽しく把握できた.」,「土壌の観察は学術
的で,ミクロの世界をのぞき込むおもしろさが楽しめた.」,「農家の方のお話はおもしろい上
に意外性があって,ぐいぐい引き込まれた.炭焼き小屋の内部まで見せていただくなど,貴重
な体験ができた.」といった肯定的な内容であった.
一方,教育関係者の方々や学生補助者からは ,「導入の段階で,うち解け合い(アイスブレ
イク)を図るアクティビティーを,もっと充実さた方がよい.」,「見どころやアクティビティ
ーがやや多くて,忙しかった.」,「まとめの段階で,ふりかえり・わかちあいを意識させるア
クティビティーが不十分であった.」,「最後に,参加者に対して,日常生活における水の利活
用を促すコメントが必要であったのではないか.」といった貴重なアドバイスをいただいた.
今回の活動は,私たちが長年にわたって取り組んできた「里地・里山の自然と人の暮らし」
を探る生態学的・環境教育学的研究に関わって,「水の循環」という視点から里山の価値に迫
ろうとするものであった.「分岐を繰り返しながら,徐々に狭く,か細い水流となってゆく川
を遡上し,水源をめざす」という進め方は,参加者が活動の方向性や目標・目的を常に意識で
きる点で,また水系に沿って出現するさまざまな事象(景観単位やその構成要素である動植物
と無機的環境)を順序性をもって肉付けできる点で,極めて有効であるといえる.ただし,①
導入の段階で実施した「里山の全体像を把握する活動」が難解であった点,②観察対象とした
景観単位が多すぎた点,③参加者の自律的な総括を欠いた点については,改善が必要となる.
5. 本プログラムの発展性
今回提示した学習プログラム(付表 1)が,イベント的な一過性の活動を想定して構築され
たものであり,個々の実践に応じて適宜改善を施す必要があることは,すでに述べた.本稿を
しめくくるにあたり,活動を行うフィールドと活動を支援してくれる人材について,2・3 コ
メントを記したい.
仙台市の広がりは,太平洋岸の砂浜から奥羽山脈の主稜線に及んでいる.その中で,典型的
な里山景観が認められる丘陵地は,海岸線と並行する,幅 10km ほどの低平な平野および海抜
400 ∼ 600m 以上の脊梁山地の中間に位置し,その面積は仙台市のおよそ半分を占める(大月,
1994).そして,名取川や広瀬川,七北川といった大河に注ぐ無数の小河川が,この丘陵地に
樹枝状に入り込んで,大小の谷津や比較的急峻な斜面をつくり出している ・・・・・ 都心周辺の
丘陵地では住宅団地の造成が著しいとはいえ,こうした原地形とその秩序に順応した里山の暮
らしは,まだまだ仙台市のあちこちで認められる.この意味で,本稿で提案・報告したような
「里山における環境教育の実践」に対する物理的障害は,さほど大きくないといえる.むしろ,
フィールドとする地域に暮らす方々と信頼関係を築くことがもっとも重要であることを考える
と,児童・生徒の父母や学校の役員の中に協力者を見い出し得る可能性も高く,実施は容易と
なるのではないだろうか.
また,仙台都市圏において,里山をフィールドとした環境教育活動を展開している機関や団
体がいくつもあり,さまざまな支援が期待できる.インターネットをはじめ,仙台市が発行し
てる『環境学習ガイド 2001 年版』(仙台市環境局環境部環境計画課, 2001)や『環境学習パ
ートナーズリスト』(仙台市環境局環境部環境都市推進課,2002)から情報が入手できる.
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6. 謝
辞
本事業を推進するにあたり,仙台市環境局環境都市推進課の皆さまから,多岐にわたるご援
助をいただいた.早坂均さん,早坂しげるさんをはじめ堂所地区の皆さまには,調査・実践活
動をお許しいただくとともに,いつも暖かく見守っていただいた.宮城教育大学の川村寿郎教
授,そして福岡公平,佐藤麻衣子,長谷川巧,戸羽康幸,菊池彰人,遠藤陽子,福田明子, 林
出美菜の諸姉兄には,多くのご助言やご助力をいただいた.皆さまに心から感謝申し上げます.
7. 引用文献
荒木祐二・平吹喜彦. 1999. 宮城県津谷高等学校学校林の植物相と植生: 自然教育実践のための
基礎的研究. 53pp. 宮城教育大学教育学部理科教育講座生態学研究室.
藤井英二郎. 1995. 農村生態系の指標としての里山. 『生物−地球環境の科学 −南関東の自然
史−』(大沢雅彦・大原隆編), 179-189. 朝倉書店.
平吹喜彦・川村寿郎. 2002. 宮城教育大学地域開放特別事業 「みつけよう,みつめよう,青葉
山の自然 2000・2001」: 地域自然をいかした環境教育の展開. 宮城教育大学環境教育研究
紀要,4: 71-75.
平吹喜彦・川村寿郎・中澤堅一郎・西城潔・齊藤千映美・溝田浩二. 2003. 里山に学ぼう,里
山を教えよう: 2002 年環境教育シンポジウムをふりかえって. 宮城教育大学環境教育研究
紀要,5: 79-82.
広木詔三(編). 2002. 里山の生態学 その成り立ちと保全のあり方. 333pp. 名古屋大学出版会.
亀山章(編). 1996. 雑木林の植生管理 −その生態と共生の技術−. 303pp. ソフトサイエンス社.
川村寿郎・平吹喜彦・西城潔. 2001. プロジェクト研究『宮城県の地域自然を生かしたフィー
ルドミュージアムづくり(その 1) −仙台北方丘陵の里山−』報告. 宮城教育大学環境教育
研究紀要,3: 89-96.
川嶋直・藁谷豊. 1999. 森林環境教育プログラム. 『ふれあい・まなび・つくる ∼森林環境教
育プログラム事例集∼』,14-19. 全国森林組合連合会.
守山弘. 1997. むらの自然をいかす. 128pp. 岩波書店.
長島康雄・平吹喜彦. 2003. 景観スケールを重視した環境教育プログラムの開発. 1. 景観スケー
ルの有効性と防潮マツ林を事例とした学習プログラムの開発. 宮城教育大学環境教育研究
紀要,5: 39-46.
大月義徳. 1994. 山地・丘陵地の地形. 『仙台市史 特別編 1 自然』(仙台市史編さん委員会編),
56-69. 仙台市.
知智美・平吹喜彦・荒木祐二・宮城豊彦. 2003. 丘陵地谷頭の微地形構造に対応した土壌含
水率と林床植生: 仙台市近郊のコナラ林の事例. 宮城教育大学環境教育研究紀要,5: 19-27.
仙台市環境局環境部環境計画課. 2001. 環境学習ガイド 2001 年版. 84pp.
仙台市環境局環境部環境都市推進課. 2002. 環境学習パートナーズリスト. 65pp.
武内和彦・鷲谷いづみ・恒川篤志(編). 2001. 里山の環境学. 257pp. 東京大学出版会.
-8-
付表 1.「雨水がはぐくむ里山の生き物・人のくらし」実施要項.
項
目
子ども(市民を含む)
教
師
プログラム
のねらいと
期待される
教育効果
仙台市の自然環境は,東端の太平洋から西端の奥
羽山脈に向かって帯状に配列する砂浜海岸,平野,
台地・丘陵地,山地によって特徴づけられる.私た
ちが今回担当する「里山」は,おおむね丘陵地に
広がり,人の暮らしと二次的自然がモザイク状に
混在する地域としてとらえられる. そして,つい
50年ほど前までは食料・薪炭の生産地として,近年
は住宅・工業団地や緑地として,常に都心の活力を
支える役割を果たしてきた.
今回作成・実践する環境学習プログラムでは,こ
の里山における構造上・機能上のモジュールとみな
し得る小支谷(=谷津)に着目して,下流側から
「雨水のゆくえ」を追跡する.主な観察ポイント
は,①水と動植物の関わり(多様な水生生物の存
在,水田や畑地,森林に生育する植物の違いなど),
②伝統的な水の利活用の実態(生活用水や農業用水
の入手・利用状況など ),③「みどりのダム」とし
ての下流域への貢献(水源涵養や土砂流出防止と
いった環境保全機能など)である.里山を「水の
回廊」ととらえ,自然と人の共生的関係のありよ
うを認識・考察することをめざす.
子ども,親子,市民を対象とする場合は,特に
①触れ合い(五感,感性)を重視した活動,②自
然に親しむ楽しさやマナーを実感できる活動とす
る.
活動を経験することによって,里山を構成する
水や生き物,人の暮らしの実態が連続性をもって
認識され,日常生活における環境保全活動に結び
つく効果が期待できる.
「子ども,親子,市
民向けプログラム」と
同じねらいを設定し,
教師自身に実体験して
いただく活動を尊重す
る.
また,教師自身のオ
リジナルな実践の構築
に資するべく,①個々
のアクティビティーの
ねらいや組み立て,発
展性,あるいは自然現
象の中に隠れている学
術的原理について説明
するとともに,②参加
者の間で自然体験学習
に関わる意見・情報の
交換を行う.
活動を経験すること
によって,里山の実態
や里山・水環境を素材
とした体験的環境教育
の進め方について,理
解が深まることが期待
できる.
プログラム
の内容
a) 導入の段階
9:30∼10:00
1) 数人程度の参加者でグループをつくり,活動
補助者を配置する(できるだけ複数名 ).ワーク
シートやネームプレートを配布した後,補助者・
参加者全員が車座となって自己紹介を行い,うち
解けあう(アイスブレーク).
参加者に配布するワークシートとしては,①地
形図(1万分の1を超える大縮尺地図を用い,水系
や尾根線,観察適地などをある程度書き加えたも
「子ども,親子,市民
向けプログラム」と同
じ内容を基本としなが
ら,教師自身のオリジ
ナルな実践の構築に資
するべく,専門的な解
説あるいは意見・情報
交換を活動ステージご
とに配置した構成とす
る.特に ,「まとめの
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の)や②種々のスケール(観察の基準となる物差
し)を表示したスケッチ用紙などがある.
2) 仙台市や宮城県の衛星写真を示し,市街地を
縁どるように分布する里山の存在を確認する.次
に,空中写真や現存植生図などで,里山の独特の
全体景観(樹枝状の水系やパッチ状の土地利用形
態)を認識しながら,生息・生育する動植物もい
くつか紹介する.また,藩政時代の絵図や旧版地
形図,既存資料(写真や図面)などを用いて,里
山には循環的・自然共生的な生活様式が存在して
いる(いた)ことを認識する.
3) 各グループごとに,活動補助者の支援の下,
実施地区(=フィールド)の地理情報と踏査ルー
トを,地形図ワークシート上で確認する.
4)一連の作業により,①里山は水源地であるこ
と,②里山の水系をたどることで,さまざまな景
観(=地形,立地,植生の複合体)や動植物に出
会えそうなこと,③里山の自然の創出に関わり,
共生的な暮らしを営んでいる(いた)住民の存在
が重要であること,④里山を発した水が下流の都
市や田園を潤していることに気づき,こうした実
態を自ら確かめたいという意欲を高める.
b) 探求の段階
10:00 ∼ 10:10
1) グループごとに,活動補助者から器具類の使
用法や,ワークシートを用いた観察・記録のしか
たなどについて簡単な説明を受ける.さらに,安
全確保(服装の点検や防虫対策など ),自然保護
(採集の可否や歩行時の踏みつけに対する注意な
ど ),活動マナー(私有地・耕作地に対する配慮
など)に関する留意点を確認する.
10:10 ∼ 14:00(この間,適宜昼食をとる)
2) グループごとに,フィールドを貫く水系を遡
上しながら,水流の状況や河岸・河床の様子,お
よび水田,畑地,採草地,溜池など(=景観単位)
を観察・記録し,最後にコナラ林内の谷頭凹地(=
源頭部)に至る.里山の基本構造を把握するため
に,景観全体をスケッチし,地形と景観単位を対
応づける活動も行う.
観察開始直後は活動補助者がデモンストレーシ
ョンを行うが,あらかじめ配布したワークシート
を活用するなどして,速やかに自主的な活動への
移行を図る.観察ルート上では,水流の状況に一
貫して注意を払いながらも,動植物の生息・生育
- 10 -
段階−活動に対して評
価を受ける」時点で,
十分議論を行う.
また,いわゆる学習
指導案のような資料を
配付して,目標の達成
を図る.
状況(多様な水生生物の存在や,景観単位に応じ
た動植物の分布など),あるいは農林業の実態(耕
作や伐採,育林施業,炭焼きなど)にも目を向け
るべく問いかけを行う.
3) 源頭部となるコナラ林内の谷頭凹地では,土
壌(落葉層の厚さや乾湿,土色など)→根(細根
の位置や密度など)→樹体(樹高や幹直径,枝張
りなど)→空(林冠のうっ閉度など)という順序
で視点を移動し,雨水が森にとらえられる過程を
より詳細に探究する.
14:00 ∼ 14:40
4) 参加者全員で農家をたずね,伝統的な水の利
活用の実態(水源となる背戸山や森林,灌漑に欠
かせないため池の管理など ),および自然と調和
した伝統的な暮らしの実態(食料や燃料,肥料,
道具などを自給自足し,循環的に用いる生活様式)
についてお話しをうかがう.
c) まとめの段階
14:40∼15:00
1) 各グループが,絵地図やスケッチ,デジタル
カメラ写真,メモ,場合によっては標本という形
式で収集した情報を提示し,参加者全員で「雨水
のゆくえ」に沿って整理することで,一連の活動
をふりかえる.特に,①水源に至るまでの水流の
変化,水・地形・動植物の関わり,②源頭部とし
ての谷頭凹地の存在,および樹木と雨水の関わり,
③伝統的な暮らしにおける水の利活用について,
わかちあいを深める.
2) 活動の総括として,①雨水として里山に降り
注だ水は,たくさんの動植物や農業活動を支えて
いること,②その水はやがて都市や田園を潤す存
在となること,③水を大切にする里山の伝統的生
活様式が動植物や人のいのちの存続,そして地域
全体の環境保全に貢献していることを認識した上
で,環境教育の最終ステップともいえる「行動・実
践」を誘発する締めくくりを行う.
3) 活動に対して評価を受ける.
プ
ロ
グ
ラ
ム
準
告
知
①仙台市環境局を通じて『仙台市政だより』な
どの広報誌で公募,②新聞やインターネット,ち
らし,ポスターを介して公募したい.公募で所定
の参加者が集まらない場合は,③宮城教育大学環
境教育実践研究センターおよび宮城教育大学地域
連携推進室を通じて募集したり,④実施者の既存
- 11 -
「子ども,親子,市民
向けプログラム」と同
じ.
備
のネットワークを用いて募集.
参加者
受付
仙台市環境局が窓口となって,一括受付するこ
ととなった(先着順).
「子ども,親子,市民
向けプログラム」と同
じ.
保
加
険
入
万一の事故に備え,実施者が参加者全員を対象
として,レクレーション保険への加入手続きを行
う.
「子ども,親子,市民
向けプログラム」と同
じ.
参加者
準備品
昼食,飲み物,おやつ,野外活動に適した服装
(長袖シャツ,長ズボン,帽子,長ぐつ),雨具(カ
ッパ),折りたたみ傘,軍手,タオル,ティシュペ
ーパー,リュックサック(原則として,活動中は
両手を使える状態にしておく),筆記用具(鉛筆,
消しゴム,直定規,色鉛筆またはクレヨン),健康
保険証のコピー,できればデジタルカメラやルー
ペ,双眼鏡などの観察器具.
「子ども,親子,市民
向けプログラム」と同
じ.
さらに,情報交換を
促進するための資料な
どがあれば,持ち寄っ
ていただく.
実施者
準備品
開催地や天候の状況によって適宜変更する.
衛星写真(地形・土地利用状況が明瞭なもの),
藩政時代の絵図,旧版地形図(発行年代の異なる
ものをいくつか)
,カラー空中写真(最新のもの)
,
地形図(少なくとも水系や農家の位置が判別でき
る大縮尺のもの.活動の導入・まとめで異なる図
面を使用する可能性もある),図面掲示用のボード,
ワークシート(観察項目が明記され,適切な書式
設定がなされているもの),バインダー(配布した
ワークシートや資料を綴じ込むもの)
,筆記用具(参
加者が持参する物品と同じものを,念のために準
備),カメラ(できれば,フィールドで即座に再生
・印刷が可能なデジタルカメラ),クリノメーター
(方位磁石+傾斜計)
,ルーペ,根堀り(スコップ),
ピンセット,ビニール袋(複数種),タモ網,白色
紙コップ(またはビーカー)と白紙(または白色
トレイやペットボトル,シャーレ: 水や土壌,生
物の観察時に使用),防虫スプレー,携帯用蚊取り
線香,ライター,巻尺,直径尺(折尺),測量用ポ
ール(2 m),双眼鏡,照度計,GPS,救急箱,飲料
水,トランシーバ,携帯電話機,マジックインク
(複数色),画鋲,セロファンテープ,のり,はさ
み,解説用の写真・チャート・標本など.
もし,まとめの段階で時間・場所が確保されれ
「子ども,親子,市民
向けプログラム」と同
じ.
さらに,いわゆる学
習指導案のような資
料,活動に関係する教
材・教具なども準備す
る.
- 12 -
ば,模造紙,各種図鑑,パソコン,プリンターと
印刷用紙,電源延長コード,実体顕微鏡.
プ
ロ
グ
ラ
ム
実
施
実
時
施
期
9月∼10月の学校休日,9:30∼15:00に実施.
現時点では,9 月 28 日,10 月12日,13日,19
日のいずれか1日・1回で実施する予定.
「子ども,親子,市民
向けプログラム」と同
じ(ただし,その実施
後に行う).
実
場
施
所
仙台市泉区根白石堂所地区を予定.
根白石市民センターに仮集合した後,自家用車
に相乗りして現地に誘導.現地解散.
「子ども,親子,市民
向けプログラム」と同
じ.
参
者
加
数
仙台市内の小学校 4 ∼ 6 学年に在籍する児童と
その保護者,10 組(20 名)程度.
仙台市内の学校・教
育機関に勤務する教師
・教育関係者, 20 名
程度.
実
者
施
数
平吹喜彦(宮城教育大学教育学部教員)と知
智美(宮城教育大学大学院教育学研究科2年)が主
体となり,宮城教育大学平吹研究室で研究活動を
行っている大学院・学部学生および同研究室の卒
業生有志 10 名程度が参加.
「子ども,親子,市民
向けプログラム」と同
じ.
安
体
全
制
①事前に,観察ルートの下見や話題提供者から 「子ども,親子,市民
の聞き取りを行い,安全確保の視点からプログラ 向けプログラム」と同
ム内容を再検討する,②参加者へ事前連絡を行う じ.
際に,服装や持ち物,活動にあったっての留意点
などを書面で伝える,③救急箱や飲料水などを持
参する,④緊急事態に備えた対応体制を明確にし,
実施日に開業している救急医療機関を確認してお
く.
進
行
プログラム全体の進行役は知が務め,平吹が
補佐する.グループそれぞれには,2・3 名の案内
員(リーダー1名を決定)を配置し,活動の充実と
安全確保に努める.
「子ども,親子,市民
向けプログラム」と同
じ.
まとめ
グループごとの総括に続いて,参加者全体で活
動結果のふりかえり,わかちあいを行う.そして,
日常生活において環境を保全する行動(今回は特
に,水資源・水環境に関わる事項)を積極的に実
行してゆくことの大切さを確認する.また,活動
に対する評価を受ける.
「子ども,親子,市民
向けプログラム」「
の 活
動に対する評価」の時
間に,私たちが提供し
たプログラムそのもの
をたたき台として,参
- 13 -
加者の間で意見・情報
の交換を行う.
継 続・
発 展
①今回の実践結果を踏まえて,プログラムを改
善する.実施する地域や参加者の特性に応じた活
動が可能となるよう,事例を蓄積する.
②「水」に限らず ,「植物 」,「動物 」,「地形・
地質 」,「土地利用 」,「景観」といった視点から,
里山における環境教育プログラムを構築し,里山
と地域・地球環境の包括的な学習・保全に資する
(=宮城教育大学の「里山研究会」の活動として
発展を図る).
新たなネットワーク
づくりを進め,学校教
育・社会教育における
環境教育の発展をめざ
す.
その他の留
意事項
フィールドはほとんどの場合,私有地であり,
また耕作地や居住域が含まれる.さらに里山は,
貴重な動植物が生息・生育する場でもある.活動
の実施許可を得るためには,住民の方々(特に,
土地所有者)と信頼関係を構築しておくことが不
可欠である.参加者にも,こうした背景をきちん
と理解していただいた上で,モラルと自然保護の
遵守を徹底していただく必要がある.
「子ども,親子,市民
向けプログラム」と同
じ.
- 14 -
付図1. 活動に用いたワークシート. コナラ林で森林断面(左)と土壌断面(右)を観察するために作成した2枚を, 記載事例ととも
に示す.
a. 導入の段階. 活動ルートに沿って水系や尾根,
棚田, ため池を地形図上で確認.
b. 堂所川本流を, 川底の状態や動植物を観察しなが
ら遡上.
c. 枝分かれした支流を遡る.
d. 里山の景観全体をスケッチし, 地形や景観単位を
とらえる.
e. 川辺のあぜ道を歩きながら, 動植物の観察.
f. 小高い採草地で昼食休憩.
付図2. 2003年9月28日に実施した「雨水がはぐくむ里山の生き物・人のくらし」の活動状況.
g. ため池で, 水草や水生昆虫の観察.
h. 源頭部のコナラ林で, 土壌の観察.
i. 車座になって, コナラ林で調べた「水のゆくえ」
をふりかえる.
j. 背戸山から湧き出す水で, のどを潤す.
k. 農家の方の案内で, 炭焼き窯を詳しく観察.
付図2. 続き.
l. 農家の方から, 水の利活用や里山の暮らしについ
てお話しをうかがい, 活動をまとめる.