2 2 1 無水マレイン酸ー酢酸ピニル共重合体の粘性 博 田 相 Viscosity of Maleic Anhydride-VinylAcetate Copolymer H i r o s h iAIDA Thev i s c o s i t i e so fm a l e i ca n h y d r i d e v i n y la c e t a t ecopolymeri ns e v e r a lk i n d so fs o l v e n t s h eu s eo fanOstwaldt y p ev i s c o m e t er . Ther educedv i s c o s i t i e s weremeasureda t2 50 C byt i ndioxaneandt e t r a h y d r o f u r a nwerep r o p o r t i o n a lt ot h ec o n c e n t r a t i o n ,butthosei np o l a r s o lv e n t ss u c ha sa c e t o n e ,N,N/ -dimethylformamideandwaterd e c r e a s e dwitht h ei n c r e a s e i nc o n c e n t r a t i o nandhadminimumv a l u e sa tc r i t i c a lc o n c e n t r a t i o n s .l twasfoundt h a tt h i s abnormalbehaviorwasa s c r i b a b l et oani o n i cs t r u c t u r eo fcopolymeri np o l a rs o l v e n tr a t h e r thant h er a t eo fs h e a randt h ea b s o r p t i o no fcopolymeronc a p i l l a r yw a l l s . 品ゐ. 序 a 悶 高分子物質の稀薄溶液の粘性については多くの研究がなされ還元粘度と濃度とのあいだに比例 関係が成立し,極限粘度は分子量および分子のひろがりと密接に関係していることはよく知られて いる九 しかし、溶媒の種類によっては比例関係が成立せず,稀薄なある濃度で還元粘度は極小を示 し,それより低濃度では濃度の滅少とともに還元粘度は増大するへ とくに高分子電解質水溶液で はさらに低濃度で極大のあらわれることが報告されている剖 -h マレイン酸共重合体の稀薄水溶液 erryおよびその協同研究者出 h 物延 4) らの報告があり,解離したカノレボオキ の粘性については F i/) レ基に原因する静電気的相互作用によって粘性は著しい影響をうけることが示された D 乙れに反 して有機溶媒中での挙動についてはあまり研究がなされていないように思われる口マレイ y 酸共重 合体は飽和炭化水素系の搭媒に不溶であり,ベ y ゼユ/中では有限な膨潤をするだけであるが,多く の極性溶媒には可溶であることが経験されているへ そこで著者は種々の溶媒を用いて粘性を測定 し,溶液中における共重合体の挙動について知見を得ようとしたのである o 2 . 試料および実験方法 2 . 1 試 料 0 . 2 5モノレの無水マレイ Y 酸と 0 . 2 5モノレの酢酸ピニノレを 276gのべ y ゼシに溶かし, これに重合開 始剤アゾピスイソプチロニトリノレ O.25gを加え 7 0Cで 3時間反応を行なわせた。ゲノレ状の反応生 0 成物よりベ y ゼ/'を除いて真空乾燥し,これをメナノレエナノレケトンに溶かし石油ベンジ y で分別を 1 5 g ), B( 1 5 g ), C( 1 2 g ) の三部に分け,このうち Aを再度メチルエチノレケトシおよ 行なった。 A( び石油ベ /'i/ンで分別沈澱させ常温で真空乾燥して試料とした。 溶媒はアセト/',メチルエチノレケト Y, i/オキサ/',テトラヒドロブラ Y, i/.Jナノレホノレムアミ こ従い蒸溜して用いたロ ドおよび水で,常法 81 I 2 . 2粘 度 計 オストワノレドおよび傾斜型粘度計を用いた。オストワノレド粘度計の毛細管半径は O.248mmおよ び O.273mmである口傾斜型粘度計は和国的の考察した装置を用いた。毛細管半荏は O.209mmお 本 助教授 2 2 2 福井大学工学部研究報告第 1 1巻 第 1 ・ 2 号 よび 0.340mmである o 最初に共重合体の濃厚溶液を作りとれをうすめて使用した。測定温度は 2 5 土 O . lOCである。 3 . 3 . 1 実験結果と考察 還元粘度と遣度 オストワノレド粘度計で測定された相対粘度より還元粘度 η (, p/C) を求め,濃度 Cとの関係を示す と図 1が得られる o 比較のため水溶液の場合を図 2に示す D テトラヒドロブラシ,1/オキサ Y 溶 液 8 1 .4 7 1 .. 2 6 1 . 口 、 . . 副 広d U¥号骨 U 1 .6 占 4 3 2 ( ヰJ ~""'~ 0 . 2 1 (21 一 ー ーι 一 一 一 」 ー ー 一 一-)f.-一 一 一 } す 一 一 一 一 " 一 一 (3) 企 o 0 . 1 0 . 2 0 . 3 0 . 4 0 . 5. , 濃度 C gj100ml ( 1 )口印 N-N'ジメチルホルムアミド ジオキサン,テトラヒドロフラン セトン 任)・印メチルエチノレケトン J 1p/C と濃度 図1 , 0 . 6 0 . 1 0 . 2 0 . 3 0. 4 0 . 5 0 . 5 濃度 C g/100ml ( 2 )N -N'ジメチルホ Jレムアミド ( 3 ) ジオキサン,テトラヒドロフラン 図2 7 JB P j C と濃度 ( 2 ) 0印 ( 3 ) X 印ア (1)水 では比例関係が成立する o Hugginsの式 10) を用いて η , p/C= C η J + k γ びyc 極限粘度〔η〕および溶質との相互作用を示す定数kを求めると表 1 1と示す値が得られる。可提性高 分子の良溶媒中の k 'は 0.35で貧溶媒中ではこれより大きい値を示す傾向があるといわれているの で 113,テトラヒドロブラシ,ジオキサ y は貧溶媒に近いとみられ るo これに反してアセト γ , メチノレエチノレケト Y, ジメチノレホノレム アミドなどの極性の大きい溶媒中ではもp/Cは濃度の増加ととも に減少し,ある濃度で極小を示すようになる O η, p/Cが極小を示 表 1 極限粘度(甲〕と 溶 媒 k ' i ω Ik' テトラヒドロフラン I0 . 5 0I0 . 5 0 ジオキサン 1 0 . 4 91 0 . 4 1 す濃度は次の順序で大きくなっている D ジオキサシ,テトラヒドロブラ y くアセトン,メチノレエチノレケト y く1/メチノレホノレムアミドく水 乙の順序は誘電率の大小の j 聞になっている D すなわち 2 50 Cにおける誘電率は p オキサン ( 2 . 2 1 )12), アセトシ ( 2 0 . 7 )12), N,N'1 /; lチノレホノレムアミド ( 3 6 . 7 )13), 水 ( 7 8 . 5 )14) である o 還元粘度と濃度とのあいだに比例関係の成立する場合を正常な挙動とみなすと,誘電率の小さい 溶媒では正常であるが,誘電率の大きい溶媒では異常性を示し,誘電率が大きい程高濃度で異常性 のあらわれる傾向を示している。乙の原因としてずり速度による二次構造の崩壊,毛細管壁への高 無水マレイン酸ー酢酸ピニノレ共重合体の粘性 2 2 3 分子の吸着,高分子鎖のイオン化,鎖のからみ合いなどが考えられる o そこではじめにずり速度の 影響を調べた。 3 . 2 還元粘度とずり速度 ポ Pアク Dノレ酸などの高分子電解質は稀薄水溶液でも小さいずり速度によって二次構造の崩壊の 生ずる場合のあるととが報告されている 15)。有機溶媒中でも二次構造の形成が考えられるので 9) 傾 斜型粘度計を用いて粘性を測定した。溶媒の密度と稀薄溶液の密度とは等しいと仮定すると,相対 粘度は次式であたえられるへ 4 / t o 3 / t十 ( l / to )/d( l / t 同( l / to ) 乙乙に t oは容量 Q の溶媒が毛細管を流出するに要する時間, tは溶液のときの時間である。さらに η ← ' 1 ' - 毛細管壁におけるずり速度 r Rは次式であたえられるヘ 九 4Q n π R 3t o叫 ここに Rは毛細管の半径である口 還元粘度1)1f'l /Cとずり速度 r Rとの関係を示すと図 3および図 4のようになる o i/オキチシ,テ ' . 0 ( t J a t 6 D a ιι r 。 且 ‘ ' ( 1) A . . . A . U ¥ ¥ . . ¥ υ ¥ 品 (2) , l o ( 2 ) ; : . 0 .. . ; : . 句 0. 4 0 . 2 0 .2 200 <WO --660 800 1 0 0 0 1 2 .00 200 ・ ずり i 虫 度 sec-1 (l)0.5g/100ml (210.05g/100ml 1 8 P / Cとずり速度 図3 1 400. 600 800 1000 1200 ずり速度 sec-1 2 )O .5g/100ml (110.05g/1ω ml ( P/Cとずり速度(アセトン培技) e c . 1 の範囲 0 0 1 0 0 0s トラヒドロブラシ,アセト γ ,水のいずれの溶媒においても,ずり速度が 1 (テトラヒドロフラン溶液) 図4 ' l J I f では還元粘度はずり速度によって著しく変化しないことがわかる。そこで次に毛細管壁への共重合 体の吸着の影響を調べた。 3 . 3 高分子稀薄溶液において高分子が毛細管壁に吸着 する ζ 1 . 0 還元粘度と吸着 とによって毛細管の半径が見かけ上減少し, 0 . 8 。 6 そのため粘度に異常性の生ずることが指摘されていミ ; : . る16】口そ乙で半径の異なる毛細管を用いて粘度を測 0'" 定した。還元粘度と半径との関係を図 5に示す口と れにより半径が減少すると還元粘度はわずかに増加 0 . 2 前後では共重合 する傾向を示すが,半径が 0.26mm 体の吸着によると考えられる還元粘度の濃度変化は すくないにとがわかる口従って異常性は高分子鎖の l関係していると考えられる口そこでジメ イオシ化ζ 2 . 0 2 . 2 2 . 4 2 . 6 2 . 8 3 . 0 毛細管半径 cm ( 1 )0.05g/l00ml 但 . J0.2g/l ml l J8 図5 ' P / Cと毛細管半径(アセトン溶液) チノレホノレムアミド溶液および水溶液の電気伝導度を測定した D ∞ 2 2 4 福井大学工学部研究報告第 1 1巻 第 1 ・2 号 3 . 4 電気伝導度の測定 交流ブリッジ法 (1000cps) によって電気伝導 度を測定した。電極には白金黒が付着しである。 溶液で測定した容器定数は 0.455cm-1,純水の比 伝導度は 0.91x10-6 ohm-1cm-¥ N-N' i/sチ × 20 U o 出 守寄り 三 1 5 出 V 関係を示すと図 6が得られる。 i/sナノレホノレムア r i 出 あるが,濃度とともに著しく変化することがわか 合体を 0.5g/l00mlを含む溶液では1.1X 10-6 ohm-1 cm-1 の比電導度をもつようになる o 極 性 2 0 cu るO メナノレエチノレケトンの場合も純ケト y の比電 導度は 1X10-7ohm-1cm-1程度であるが 171,共重 1 0 hall--fB'F'BE'EEEEBEEt 円 UV ミド溶液では電導度は水溶液の場合の 1/50位で U J向¥口出i出 Ko,溶液のを K とし K-Ko I KoCと濃度 C との 60 ~ι U ︽ n u n u 測定温度は 25 C で あ る 口 純 溶 媒 の 比 伝 導 度 を 0 T o EJVA cm-1 (文献値 17】 1 .83X 10-6ohm-1cm-1) である。 2 5 ぷ 、 戸 引ト J レホノレムアミドの比伝導度は, 2 .74X10-6ohm-1 1 0 A 0 . 2 0 . 1 L_ ー ー ー ー ー ー 」 0 . 3 0. 4 0 . 5 0 . 6 溶媒ではいずれも共重合体の存在によって電気伝 濃度 C g / 1 0 0ml ( 1 ) 水 位 ) N-N'ジメチルホ Jレムアミド 導度が増大する口水溶液の場合より類推して共重 図 6 電気伝導度と濃度 合体はかなりイオ y 化の状態にあるものと推察される口 4 . 曇d為 結 自問 マレイシ酸ー酢│酸ピニノレ共重合体の粘性を測定しテトロヒドロブラ Y , i/才キナ y などの誘電率 の小さい溶媒中では正常な挙動を示すが,ケト Y,アミドなど誘電率の大きい溶媒中では異常性を 示す乙とをみとめた D 乙の異常性は二次構造の形成,管壁への吸着などに原因せず,共重合体のイ オ y 化によるものと推察される D なお共重合体は U メチノレホノレムアミド中で深紅色に発色する口発色現象と異常粘性,電気伝導度 との聞には深い関係があるものと思われる D この点については別に報告する予定である口 おわりにこの研究に対し柊始御懇切な指導を賜わった本学山田教授および試料調整に助力をいた だいた高瀬巌技官に感謝する。 (昭和 37年 10月 5 日高分子学会北陸地方大会発表) 参考文献 1) P r i n c i p l eo 1 9 5 3 ) fPolymerChemistry"p.308 ( . 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