北信濃里山通信 vol.17 2014年 8 月 9 日 発 行 巻頭言 「クララの花と蝶たち」 事務局長 福本匡志 オオルリシジミのシーズンも終了し、今年も成虫や幼虫を観察できたことに胸をなでおろし ています。オオルリシジミの幼虫は、食草であるクララの蕾や花しか食べないので、花の付き 具 合( 花 の 量 )は 、幼 虫 の 生 育 や 生 存 に も 影 響 す る と 思 わ れ 、昨 年 は 、ク ラ ラ の 花 つ き が 悪 く 、 今年の発生を少々心配していたところでした。大豆やインゲンなどマメ科作物は高温・干ばつ などの気象条件により、 「 花 」や「 さ や 」の 付 き が 悪 く な る と い わ れ て お り 、マ メ 科 植 物 で あ る クララもそのような生理特性があるのかもしれません。 本年は、クララの花がよく咲き、オオルリシジミの幼虫のほか、花に集まる様々な蝶たちを 観察することができました。花は蝶たちにとって、餌としての蜜源となっており、花が咲く吸 蜜植物を増やすことは、蝶を呼ぶ手段ともなる。草原も放任され、イネ科草本などが繁茂する と、蝶の吸蜜植物が減り、草種の多様度も低下するといわれています。 これからも北信濃の蝶たちの「にぎわい」が見られるよう、クララのほか、多様な草種で構 成される草原環境の創出と維持を考えてゆきたいです。 クララの花に集う蝶たち ※ い ず れ も 撮 影 は 2014年 7月 13日 、 飯 山 市 内 の オ オ ル リ シ ジ ミ 生 息 地 に て トラフシジミ キアゲハ イチモンジチョウ カラスシジミ ウラギンヒョウモン カラスシジミ アカタテハ キバネセセリ お知らせ ・オオルリシジミの食草・クララの植栽活動 オオルリシジミの試行的放蝶を行っている戸狩地 区において、定着の安定化を図るため、食草・クラ ラの植栽を行いますので、参加をお願いします。 【日 時】 8月 23日 ( 土 ) 午 前 9:00~ 11:00頃 ※少雨決行ですが、中止されるような 悪天が予想される場合は。前日の夕方、 当 会 事 務 局( 飯 山 市 教 育 委 員 会 )TEL: 0269-62-3342 へ 問 い 合 わ せ く だ さい。 【 集 合 場 所 】 戸 狩 温 泉 「 望 の 湯 」( 二 ツ 宮 ) 駐 車 場 ( 飯 山 市 豊 田 7033-3: 戸 狩 野 沢 温 泉 駅 か ら 県 道 95号 線 を 温 井 方 面 へ 、 戸 狩 スキー場近く・二ツ宮バス停を左折) に 午 前 9時 集 合 。 昨 年 、「挿 し木 」で増 殖 したクララを 植 栽 します。 その後は、駐車場から北側にあ るオリオンゲレンデに移動、オオ ルリシジミ放蝶地から下方、リフ ト沿いにクララを植栽する予定で す。 当日は、作業に適した服装(軍 手、長靴)でお越しください。植 栽のための道具(スコップなど) は、当方で用意します。 放 蝶 地 のクララ・・・発 生 の安 定 化 、エリアの拡 大 を図 ります。 活動報告など 事務局 ・飯山市戸狩地区への「オオルリシジミ試行的放蝶」 5月 6日 、 飯 山 産 オ オ ル リ シ ジ ミ の 絶 滅 回 避 を 目 的 と し て 、 本年も戸狩地区の類似生息環境へ試行的に放蝶作業を実施し ま し た 。本 年 は 放 蝶 数 を 増 や し 、60頭 ほ ど の 蛹 を 、鹿 沼 土 が 入 っ た 鉢 に 入 れ ( 6頭 ×10鉢 )、 土 中 に 埋 め 込 み ま し た 。 そ の 後 、成 虫 は 6月 5日 に 初 確 認 さ れ 、 以 後 は 4~ 7 頭が見られるようになり、 6月 10日 に は ク ラ ラ へ の 産卵が観察されました。 6月 21日 に は 幼 虫 6頭 を 確認、順調に発生したよう に思われます。 蛹 の入 った鉢 の埋 め込 み オオルリシジミの産 卵 確 認 (6/10) 作業 ・第3回オオルリシジミ親子観察会 本 年 で 3回 目 と な る 、「 オ オ ル リ シ ジ ミ 親 子 観 察 会 」 を 6月 8日 ( 日 ) 及 び 15日 ( 日 ) に 開 催 し ま し た 。 本 年 も SAVE JAPANプ ロ ジ ェ ク ト の 一 環 と し て 、 長 野 県 NPOセ ン タ ー の ほ か 、 日 本 NPOセ ン タ ー 、( 株 ) 損 保 ジ ャ パ ン の 関 係 の 方 々 も お 見 え に な ら れ ま し た 。 ま た 、 信 州 大 学 教 育 学 部 エ コ キ ャ ン パ ス 委 員 会 か ら の 後 援 も あ り 、信 大 教 育 学 部 の 学 生 さ ん に も 参 加 い た だ き 、 両 日 あ わ せ て 80名 近 い 参 加 が あ り ま し た 。 観察会では、蝶類のモニタリング調査を行い、参加者全ての方々が、オオルリシジミを観察 す る こ と が で き ま し た 。 一 人 あ た り の オ オ ル リ シ ジ ミ 平 均 の 目 撃 数 は 、 8日 は 5.0頭 、 15日 は 4.1頭 で 、 概 ね 昨 年 並 み の 観 察 数 と な り ま し た 。 そ の 他 、 カ ラ ス ア ゲ ハ 、 ウ ラ ギ ン ヒ ョ ウ モ ン イチモンジチョウ、コチャバネセセリ、ヒメシジミなどが観察され、ルリシジミが例年よりも 多く見られる傾向にありました。 観 察 会 のようす 6 月 8 日観察会 6 月 14 日 観 察 会 靴 にとまるオオルリシジミ 本 年 の オ オ ル リ シ ジ ミ の 発 生 経 過 は 、 6月 7日 に 成 虫 初 見 ( 4頭 確 認 ) で 、 春 先 の 気 温 が 低 か っ た た め か 、例 年 よ り も や や 遅 い 発 生 と な り ま し た 。6月 14日 か ら 卵 が 観 察 さ れ る よ う に な り 、 6月 22日 に は ク ラ ラ 100穂 あ た り 27卵 が 確 認 さ れ ま し た 。成 虫 終 見 は 6月 30日 、7月 5日 に は 中齢~終齢幼虫を観察しています。 な お 、7月 14日 に ク ラ ラ の 挿 し 木 を 行 い 、来 年 以 降 の 生 息 地 整 備 に 向 け 、食 草 を 増 殖 中 で す 。 ・監視カメラの画像 オオルリシジミの生息地には、違法採集者への対 策 と し て 、 監 視 カ メ ラ を 4台 設 置 し て い ま す 。 カメラは内蔵しているセンサーにより、動くもの を感知して、撮影するしくみです。 生息地内を通行する人もカメラに撮影されていま したが、中には右の写真(カモシカ)のように動物 も写っており、普段、あまり目にしない動物たちの 活動を知ることもできました。 画像は思ったよりも鮮明に写っており、カメラの 性能に感心しています・・・。 ・マイマイガ幼虫の大発生 本年は、県北部を 中心に、毛虫のマイ マイガの幼虫が大量 発生し、山の木々の 葉を食い尽くし、低 木や草本にまで集ま りました。 オオルリシジミの 生息地でも大発生し、 マイマイガ幼 虫 クララはあまり食害を 受けませんでしたが、 様 々な木 々の葉 を食 べる マイマイガ幼 虫 に葉 を食 べられ、新 芽 を出 オオルリシジミの観察 森林害虫 したカラマツ:まるで春 の芽 吹 きのよう・・・・ で生息地に入るたびに、 知らないうちにマイマイガの幼虫が、体や持ち物に付着する状況に閉口しました・・・。 このような害虫は大発生すると、ウイルスなどの病気や天敵の寄生蜂などが流行し、発生が 拡大せずに終息するのが一般的ですが、最近の里山荒廃の動向もあり、来年どうなるか、少々 気になるところであります。 編集後記 オオルリシジミのシーズンも終わり、事務局の福本は、これまでの北信濃の蝶類の記録整理 に手をつけようかというところです。信州は蝶類の生息種数が全国トップクラスで、まずは、 東 信 地 方 の 蝶 類 生 息 状 況 の 記 録 を 将 来 に 残 そ う と 、 こ の 4月 に 「 信 州 浅 間 山 麓 と 東 信 の 蝶 」 が この地方に関係する蝶類研究家により出版されました。この本の刊行にあたり、自分も執筆・ 編集に関わりましたが、次は飯山・北信濃を含む北信の蝶の記録集・解説本を、来年度を目処 に出版する計画があがっています。 会員の方々にも、北信地方の蝶類の情報提供をお願いしたいと考えていますので、これから 来年にかけて、いつ・どこで・どのような蝶が見られたか、観察記録・写真撮影などお願いし ます。詳細は、また、次回以降で・・・。 発 行 者:北 信 濃 の 里 山 を 保 全 活 用 す る 会 事 務 局 : 〒 389-2253 会長 井田秀行 飯山市大字飯山1436-1 飯山市公民館内 TEL: 0269-62-3342 FAX: 0269-62-5940 E-mail: [email protected] 編集者・事務局長:福本匡志
© Copyright 2024 ExpyDoc