礫層における標準貫入試験の打撃回数と貫入量の関係

全地連「技術 e-フォーラム 2003」さいたま
【98】
1.
礫層における標準貫入試験の打撃回数と貫入量の関係
㈱協和地質コンサルタント
○伊藤
孝博
㈱協和地質コンサルタント
森内
忠正
はじめに
標準貫入試験において,玉石や大きい礫を含む地層
では,サンプラーの先端が礫に当たったり,サンプラ
ー開口部が閉塞したりすることにより,図-1に示す
ような状態を示し,地層全体の強さに比べ過大なN値
となることがある。1)
図-1
図-2
小金井地区地盤状況図
図-3
武蔵野地区地盤状況図
礫層におけるN値の補正 1)
本発表では,武蔵野台地に広く分布する武蔵野礫層
について,N値測定の際に貫入量当たりの打撃回数を
測定し,礫打ちの影響の有無やN値の過大評価につい
て,検討し考察するものである。
ここで今回対象とした扇状地性段丘礫層の武蔵野礫
層は,礫が風化し軟質な状態を示していることから「く
され礫」と呼ばれている箇所も多く,マトリクスにお
いても粘土の混入量が多くみられる層である。
2.
調査対象地の地盤状況
調査地は,武蔵野台地が広がる東京都小金井市(ボー
リング 3 箇所)と武蔵野市(ボーリング 2 箇所)の 2 地区
である。調査地の地盤状況は,ボーリング調査から図
-2および図-3で示すように,上位から盛土(B),黒
ボク(Kb),ローム(Lm)及び,火山灰質粘土(Lc)層で構
成されており,GL-6~-8mより,武蔵野礫層に相当す
る粘土混り砂礫(Mg)が分布している。
3.
N値の測定結果
今回対象とした武蔵野礫層におけるN値実施の際の
貫入量当たりの打撃回数を図-4~図-8に示す。
貫入量
(㎝)
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
打撃回数(回)
小金井・B-2 地点
6m 7m 8m 9m 10m
0
0
0
0
0
1
1
3
2
1
1
2
4
4
2
2
2
7
7
5
2
3
8
9
7
3
4 10 11
9
3
5 11 13
10
4
6 12 15
11
5
7 14 17
12
6
8 15 20
13
7
8 17 23
14
8
9 18 27
15
9 10 19 30
17
10 10 21 33
18
12 11 22 37
20
13 12 23 41
23
15 13 25 45
24
16 14 26 49
25
17 15 27 54
26
18 16 29 57
28
19 17 31 60
30
20 18 32
31
22 19 33
32
23 20 35
34
24 21 36
37
25 21 38
39
26 22 40
40
27 22 41
42
28 23 43
44
29 24 45
45
30 25 48
47
図-4
小金井地区 B-2 地点測定結果
全地連「技術 e-フォーラム 2003」さいたま
図-7
貫入量
(㎝)
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
打撃回数(回)
小金井・B-4 地点
6m 7m 8m 9m 10m
0
0
0
0
0
1
1
1
5
4
1
2
2 11
7
2
4
3 15
9
3
6
4 19 11
4
7
5 25 14
5
8
6 29 17
6
9
7 33 19
7 10
8 38 21
8 11
9 43 23
9 12 10 48 26
10 13 11 56 29
11 14 12 60 34
12 15 14
36
14 16 16
37
16 17 17
38
18 18 18
40
20 19 21
42
22 20 24
43
24 21 27
46
26 22 30
49
29 23 33
52
32 24 35
55
34 26 37
57
36 29 40
60
38 32 43
40 35 46
42 37 49
44 39 52
45 40 55
46 41 59
図-5
貫入量
(㎝)
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
小金井地区 B-4 地点測定結果
打撃回数(回)
小金井・B-6 地点
6m 7m 8m 9m 10m
0
0
0
0
0
0
1
2
2
1
1
1
4
4
2
1
1
6
6
3
2
2
8
8
4
3
2
9 10
5
3
3 10 12
5
4
3 11 15
6
4
3 12 18
6
5
4 13 21
7
6
4 14 24
7
7
5 15 28
8
7
5 16 32
8
8
5 18 36
9
8
6 19 40
9
9
6 21 44 10
9
7 23 48 10
10
7 24 52 11
11
7 25 56 11
12
8 26 59 12
13
8 27 60 12
14 10 28
13
15 12 29
13
16 14 30
14
17 15 31
14
18 16 32
15
19 17 33
15
20 18 34
16
21 19 36
16
22 20 38
17
23 21 40
17
図-6
貫入量
(㎝)
小金井地区 B-6 地点測定結果
武蔵野地区 B-7 地点測定結果
打撃回数(回)
武蔵野・B-8 地点
8m 9m 10m
0
0
0
1
3
10
2
6
20
3
9
25
4
13
33
5
17
35
6
26
40
8
36
48
10
46
54
12
60
60
14
15
16
17
19
21
23
25
27
29
31
32
33
34
35
37
39
41
43
45
47
図-8
武蔵野地区 B-8 地点測定結果
今回測定した貫入量当たりの打撃回数において,図
-1に示すような,明確な礫打ち・礫当たりの状況を
示すものはほとんど無く,小金井地区 B-6 地点の 9m
や,武蔵野地区 B-8 地点の 9mがその傾向を示してい
るのみであった。逆な見方をすると,他の大部分は貫
入量当たりの打撃回数は同じ回数で推移し,直線的な
状態を示している。このことは,礫が風化し砂状,粘土
化を示していることから,礫に当たっても反発するこ
となく,ドライブハンマーによる打撃で充分貫入でき
る状態にあるためだと考えられる。
4.
まとめ
今回対象とした扇状地性段丘礫層の武蔵野礫層は,
前述したように礫が風化し軟質な状態を示している箇
所もあり,採取試料観察から原形をとどめている礫も,
ハンマーの軽い打撃で容易に崩れる状態にある。更に,
採取された試料を観察すると砂状,粘土化を示してい
貫入量
(㎝)
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
打撃回数(回)
武蔵野・B-7 地点
8m 9m 10m
0
0
0
4
10
5
7
15
9
11
19
12
16
22
15
18
25
18
21
29
20
22
32
23
25
33
25
27
37
28
30
40
31
32
44
34
34
48
36
36
52
39
38
56
43
40
60
48
42
51
44
56
46
60
48
50
52
54
56
58
60
る箇所が随所にみられている。従って,対象扇状地性
段丘礫層は,現河床礫などの礫層としてではなく,締
まった砂,硬質粘土の混合体的な評価をすべきものと
考えられる。
《引用・参考文献》
1) 土質工学会編:土質基礎工学ライブラリー32
設
計における強度実数-C,φ,N値,pp.46~47,1988.5