伊豆沼・内沼自然再生新聞 第7号 - 宮城県

伊豆沼・内沼
第 7
自然再生新聞
号
平成2 1 年1 1 月
伊豆沼・内沼自然再生協議会
事務局(宮城県自然保護課)
伊豆沼・内沼のバス駆除に電気ショック船を導入
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新たな外来魚駆除手法・電気ショッカーボート
これまで伊豆沼・内沼では,人工産卵床,三角網,定置網,刺し網など様々
な方法により外来魚駆除活動が行われてきましたが,今回,新たな駆除手法と
して注目されている「電気ショッカーボート」による駆除試験が,伊豆沼・内
沼環境保全財団により実施されました。
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電気ショッカーボートとは?
電気ショッカーボートは,水中に最大1000ボルトの電気を流して外来魚
を気絶させ,浮き上がってきたところを網で捕獲する装置です。これまで,皇
居のお堀や北海道の五稜郭などでも試験されており,オオクチバスやブルーギ
ルの駆除に有効であることが確認されています。在来魚も一緒に気絶しますが,
捕獲しなければ自然に回復するため,沼の生態系に影響を与えることなく外来
魚だけを選んで捕獲・駆除することが可能です。
早速威力を発揮
11月7日に,伊豆沼で初めてショッカーボートによる駆除試験が行われま
した。3人がボートに乗り込み,水中に電極を入れて電流を流したところ,
次々に魚が浮かんできました。気絶したオオクチバスはびっくりしたように大
きく口を開け,プカプカと浮かびます。普段は捕まえるのが難しいオオクチバ
スも,小さな網で簡単に捕まえることができました。1時間で69匹のオオク
チバスを駆除することができ,また,大きさも10数センチから40センチ以
上の大物まで,他の手法よりも幅広い大きさのオオクチバスを駆除することが
できました。
ショッカーボート,その名は
「黒鱒吃驚丸(くろますびっくりまる)」
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ボートの舳先から沼に電極を入れ
電流を流します
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今後の予定
今後,3月までにショッカーボートによる駆除試験を数回実施し,駆除効率
を調査する予定です。これまでの外来魚対策と組み合わせることで,外来魚駆
除が加速度的に進むことが期待されます。
※ 電気を用いた漁法は,宮城県内では原則として禁止されています。伊豆
沼・内沼での電気ショッカーボートによる外来魚駆除は,特別に許可を得た
上で行っています。
自然体験講座のご案内
県サンクチュアリセンターでは毎月,伊豆沼・内沼自然体験講座を
開催しています。伊豆沼・内沼の四季を楽しみながら自然体験をしま
しょう.
【開催予定】
○12月20日(日) 早朝(日の出前) ガンの飛び立ち観察
○ 1月24日(日) 早朝(日の出前) ガンの飛び立ち観察
○ 2月21日(日) 9:00∼
バードウオッチング,木工クラフト
【参加費(朝食又は昼食代)】
大人600円 子供(小学生以下)500円
※ 詳しくは県サンクチュアリセンターへ
℡0228-33-2216
伊豆沼・内沼自然再生新聞
第7号
∼かえってこい,ひと,みず,いきもの∼
ガン・カモ飛来状況調査を実施
11月5日,伊豆沼・内沼でガン・カモの飛来
数調査が行われました。この調査は、毎年11
月、1月、3月に実施されます。
伊豆沼・内沼への飛来数(速報値)は以下のと
おりです。特にガン類の数が増加しています
・ガン類
75,467 羽(前年 58,138 羽)
・カモ類
1,017 羽(同
1,524 羽)
・ハクチョウ類
901 羽(同
438 羽)
伊豆沼畔の池の底泥から沈水植物が復元
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伊豆沼自然再生のカギは「沈水植物の復元」
伊豆沼・内沼において最近特に生息数が減少している沈水植物は,小魚や水
生昆虫の生活場所になったり水中の泥が巻き上がるのを防いで水質改善に役立
つなど,様々な役割を有していることが知られており,沈水植物の復元は伊豆
沼・内沼の自然再生の大きな柱の一つです。
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沼の畔の池の底泥から沈水植物が復元
この度,今後の沈水植物復元につながる事例が確認されました。伊豆沼・内
沼の北の畔にある水生植物園内の池の底泥から沈水植物が復元した,とのこと
です。伊豆沼・内沼自然再生協議会の委員である宮城県本吉響高校教諭の鈴木
康さんが,去年の4月,水生植物園内の池の泥をくみ出し,たらいに入れてビ
ニールハウス内でハスを栽培し生育状況を調査していたところ,偶然にも沈水
植物のクロモが生えてきたとのことです。たらいには水を数センチ張って肥料
を与えながら栽培していたそうです。
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伊豆沼・内沼原産の沈水植物確保に期待
土壌に埋まった種子(シードバンク)は,長い期間休眠したあとでも発芽す
ることが知られていますが,伊豆沼・内沼本体では沈水植物のシードバンクは
まだ確認されていません。
沼の近くの池の底泥から伊豆沼・内沼原産の沈水植物の種子等が確認され,
うまく増殖することができれば,今後,伊豆沼・内沼に移植することで沼本体
の沈水植物を増加させることができるかもしれません。
※ 沈水植物とは?……水生植物の一種で,植物体全体が水中にあり,水底に
根を張って固着しているもの。現在,伊豆沼・内沼では,クロモやホザキノ
フサモなどが確認されている。
発芽したクロモ
伊豆沼・内沼自然再生全体構想を策定
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伊豆沼・内沼自然再生協議会が開催されました
10月31日,伊豆沼・内沼の自然再生に関わる関係者が集まり,第3回伊
豆沼・内沼自然再生協議会が開催されました。協議会では,伊豆沼・内沼の自
然再生の基本的な方向を定める「伊豆沼・内沼自然再生全体会議」が決定・策
定されました。
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目標は「昭和55年頃の伊豆沼・内沼の姿」
全体構想では,伊豆沼・内沼の現状と課題を踏まえつつ,昭和55年7月の
洪水が起こる前の頃の伊豆沼・内沼に向けて自然再生を進めていくこととして
います。また,その実現のため,生物多様性の保全や水環境の回復,あるいは
賢明な利用や環境教育の推進を重点的に進めていくこととしています。
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伊豆沼・内沼自然再生への御理解と御協力をお願いします
伊豆沼・内沼の自然再生のためには,関係する人々や団体が協力して,それ
ぞれ役割分担しながら取組を進めていくことが必要です。この新聞を御覧の皆
さんも,伊豆沼・内沼の自然再生に興味を持ち,沼の環境を良くするための取
組に御理解・御協力をいただくようお願いします。
なお,伊豆沼・内沼自然再生協議会の協議内容や伊豆沼・内沼自然再生全体
構想は,宮城県自然保護課のホームページで御覧になれます。
この新聞への御意見や御質問は…
伊豆沼・内沼自然再生協議会事務局へ
〒980-8570
仙台市青葉区本町三丁目8−1
(宮城県自然保護課自然保護班)
電 話 022-211-2672 メール [email protected]
※写真提供・監修
宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
伊豆沼・内沼自然再生新聞
第7号
∼かえってこい,ひと,みず,いきもの∼