参考資料2 三菱化学㈱鹿島事業所火災事故調査等委員会報告書(骨子) 1 序 委員会の構成及び経緯等 2 設備の概要 事業所,第2エチレンプラント及び事故発生時の作業実施状況の概要 3 事故の概要 (1) 事故概要 ① 日時:平成19年12月21日(金)午前11時30分頃 ② 天候:晴れ・西北西の風 4.5m/s ③ 場所:第2エチレンプラント内 分解炉(2F-208) クエンチオイル元弁フランジ部 ④ 内容: エチレンプラント分解炉のデコーキングに伴い,分解炉出口配管に供給するクエンチ オイルを遮断するために入れていた仕切板の抜き取り作業中,何らかの原因で配管の AOVバルブ(空気駆動弁)が開となり,クエンチオイルが漏えい,発火し,火災に 至った。 (2) 被害の状況 ① 人的被害 協力会社の社員4名死亡 ② 物的被害 発生場所である分解炉2F-208の他,隣接する3つの分解炉の一部が焼損した。 現時点では,被害額は不明である。 4 事故の原因及び被害拡大原因 (1) クエンチオイルの漏えい原因 次の3つの事象が同時に起こったためクエンチオイルが漏洩した。 ① AOVが施錠されていなかったこと ② AOVの駆動用空気元弁が開いていたこと ③ AOVの操作スイッチがオンになったこと (2) クエンチオイルの発火原因 現時点では発火場所が特定されていないが,発災当時の状況から電気火花,静電気火花, 高温部接触による発火のいずれかの原因である可能性が高い。 (3) 被害拡大の原因 リスク管理,危機管理ができておらず,適切な工事安全管理がなされていなかったこと が根本的な理由であるが,人的被害が拡大した具体的な理由は以下のように考えられる。 ① 仕切板入替作業と階下の断熱作業を同時並行で実施していた ② 災害の緊急性を想定できず適切な避難誘導ができなかった (4) 管理(組織・人)の問題 次の3点の問題点が明らかとなった。 ① 不安全を不安全と認識していなかった ② 必要と認識していた又は決定されていた安全に関わる操作を基準化していなかった ③ 個人の安全意識に頼りすぎていた (5) 事故原因及び被害拡大原因のまとめ 上記(1)~(4)のまとめ 5 三菱化学(株)における再発防止対策 (1) 漏えいに係る対策 今回の事故については,デコーキングに伴う仕切板入替作業を廃止するためにエスペロ ゲート弁へ変更することが三菱化学㈱から報告されており,その作業が廃止されることに より再発防止が可能である。 また,類似事故については,①AOVの施錠,②駆動用空気元弁の閉・脱圧,③操作 スイッチの隔離と防護の3つの対策により再発防止が可能である。 (2) 発火源に係る対策 今回の事故の状況において可能性のある発火源については,各々適切な防護措置(火気 工事の基準化,帯電防止対策,高温部の被覆措置)をとることで対応可能である。プラ ントの状況や作業の状況に応じて適切な対策をとることが必要である。 (3) 被害の拡大防止対策 ① リスク低減対策の実施 今回の事故では,AOVが開いた時にどの程度の被害がでるかを評価していなかった ため,被害を最小限に止めることができなかった。被害の拡大を防止するためにリスク を把握すること。 ② 工事管理の徹底 危険性のある作業を行う場合には,その影響範囲内の作業も管理すること。 ③ 避難誘導体制の強化 被害を最少に食い止めるために,リスクや緊急時の避難経路を明確にして,作業者に 対し周知すること。 (4) 管理(組織・人)の強化 ① 安全文化醸成体制の強化 安全管理システムの運用状況の確認及び協力会社の安全管理について統括する部門を 明確にし,その体制を強化すること。 ② 協力会社との連携の強化 協力会社と連携し安全打合会から作業の着手に至るまでの体制を見直すとともに,必 要な基準を整備し,安全措置の確実な実行を徹底すること。また,作業の着手にあたっ ては,リスクや緊急措置内容等必要な情報を作業者に対し提供すること。 ③ 基準遵守の徹底 所内基準の見直しを行うとともに,基準遵守のための仕組みを再構築すること。 ④ 保安教育の充実 今回の事故を踏まえ,保安教育の内容や方法を見直すこと。 6 着火原因の探究及び再発防止対策の実行について 茨城県は,三菱化学(株)に対し,再発防止対策の実施状況及び3点に絞られた発火源の 探究状況を確認,指導するため,その進捗状況について定期的に報告を求めること。 【委員会の名称及び構成】 三菱化学㈱鹿島事業所火災事故調査等委員会 委員長 長谷川 和俊 千葉科学大学 危機管理学部危機管理システム学科教授 委 員 赤塚 広隆 高圧ガス保安協会情報部審議役 同 角田 浩 東洋エンジニアリング(株)技術本部応用解析グループテクニカル・エキスパート 同 鶴田 俊 総務省消防庁消防大学校 消防研究センター特殊災害研究室長 同 松本 洋 危険物安全保安協会 危険物等事故防止技術センター長 同 吉村 誠一 (財)電力中央研究所 社会経済研究所 ヒューマンファクター研究センター 副センター長 オブザーバー 山本 豊 総務省消防庁危険物保安室 課長補佐 田村 修司 経済産業省原子力安全・保安院保安課 コンビナート保安班長 和泉 良幸 鹿島南部地区消防事務組合消防本部予防課 予防課長
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