食品ロス問題およびそのLCA的側面について+既存研究紹介

第8回 食品研究会Part2
食品ロス問題およびそのLCA側面について
+既存研究紹介
パシフィックコンサルタンツ株式会社
松田 健士(Matsuda Takeshi)
2013/06/25
2/23
自己紹介
氏名:松田健士(まつだ たけし)
所属:パシフィックコンサルタンツ株式会社
業務:LCA含む環境エネルギー分野のコンサル
ティング
研究テーマ:廃棄物の3R効果のライフサイクル分
析および分別行動・分別施策効果の分析
「厨芥類の発生抑制と再資源化のトレードオフを考慮した家庭系廃棄物処理の
ライフサイクル分析」日本LCA学会誌, 6(4): 280-287、(2010)
“Life-cycle greenhouse gas inventory analysis of household waste
management and food waste reduction activities in Kyoto, Japan”, The
International Journal of Life Cycle Assessment, Volume 17, Issue 6, pp 743752, (July 2012)
2
3/23
家庭からの食品ロス発生

家庭系厨芥類(生ごみ)の4割以上が食品ロス
食品外
11%
厨芥類
(生ごみ)
食べ残し
21%
手付かず
食品
15%
調理くず
53%


家庭からの発生量は200-400万t/yr
食品ロスの削減により、食品の生産量が最適化されるこ
とで高い環境負荷削減効果が見込まれる
2013/06/25
4/23
食品ロスに関する国外動向
近年、海外では食品ロス削減が大きな関心を呼
び始めている
 FAOが取組みはじめた影響が大きい

 Global food losses and food waste(2011)@Interpack

UKのWRAPという政府系機関が消費者向けでは
最も洗練された取組みを行なっている
 Love food hate wasteキャンペーン

WRIは温室効果ガスと同じように、企業や政府レ
ベルの定量化プロトコルを検討中
 Reducing Food Loss and Waste(2013)
→以下、いくつか抜粋
2013/06/25
5/23
食品別ロス率
発生地域内訳
2013/06/25
6/23
一人一日あたり食品ロス量(カロリー)
2013/06/25
7/23
ライフサイクル段階別発生率
2013/06/25
8/23
国別ライフサイクル段階別発生率
2013/06/25
9/23
日本の取組状況

4府省が合同で意見交換を実施
 食品ロス削減関係省庁等連絡会議(内閣府、文部科
学省、農林水産省、環境省、消費者庁)

農水省が賞味期限等の商習慣ルールの検討会
を開催
 食品ロス削減のための商慣習検討ワーキングチーム
消費者庁は自治体の組成調査やキャンペーン
運動を支援
 環境省では「循環基本計画」で食品ロス削減含
む2Rが新たな柱に位置づけられる

2013/06/25
10/23
私のこれまでの研究紹介

主に大学院時の修士論文より紹介

修論タイトル「家庭系厨芥類の発生抑制・資源化
に関する研究-分別収集の実証分析およびLCI
分析-」
2013/06/25
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1.背景と目的
生物由来廃棄物の資源化

温室効果ガス削減、資源有効活用の観点から国
内外で生物由来廃棄物の資源化が検討中
その他
19%
厨芥類
37%
プラ類
13%
分別収集
家庭ごみ
紙類
31%
バイオガス化
CO2
機械選別
CH4
焼却
埋立
コンポスト化
分別収集量は大きな不確実性を
持ち、導入による環境負荷削減
効果に大きな影響を与える
2013/06/25
12/23
1.背景と目的
厨芥類の分別収集と発生抑制行動
家庭系厨芥類の分別収集導入による、厨芥類の
発生抑制効果が国内外で報告されている
 厨芥類の発生抑制要因として以下の3つがある

厨芥類分別収集の追加的な
効果として期待できる
食品ロス削減
水切り
これらの行動を総合的に
LCAで検討した事例は無い
自家処理
2013/06/25
1.背景と目的
13/23
本研究の目的

厨芥類の分別収集・発生抑制の可能性を実証的
に分析する
→2.京都市生ごみ等分別収集実験での調査
→3.分別収集量・発生抑制量の実証分析

家庭系厨芥類の発生抑制・資源化による環境負
荷(温室効果ガス:GHG)削減効果を評価する
→4.発生抑制・資源化のライフサイクル分析
2013/06/25
14/23
2.京都市生ごみ等分別収集実験
モデル実験の概要
缶・びん・
ペットボトル
(古紙類)
プラスチック製
容器包装(1回/週)
再資源化
生ごみ+紙ごみ
(2回/週)
家庭ごみ
他家庭ごみ
(2回/週)
期間1:生ごみ分別
焼却
期間2:生+紙ごみ分別
分別対象 ○:生ごみ
×:貝殻、かに殻、骨
×:紙ごみ類
○:生ごみ
○:貝殻、かに殻、骨
○:紙ごみ類
利用方法 バイオガス化
堆肥化(発酵残渣)
バイオガス化
実験期間 2008.10-12
2009.1-9
対象地区
バイオガス化
京都市内12地区、約2,200世帯
2013/06/25
1.背景と目的
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本研究の目的

厨芥類の分別収集・発生抑制の可能性を実証的
に分析する
→2.京都市生ごみ等分別収集実験での調査
→3.分別収集量・発生抑制量の実証分析

家庭系厨芥類の発生抑制・資源化による環境負
荷(温室効果ガス:GHG)削減効果の評価
→4.発生抑制・資源化のライフサイクル分析
2013/06/25
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3. 分別収集量・発生抑制量の実証分析
発生抑制効果の分析方法

厨芥類の分別収集を導入している86市町村の
1998-2008年度のパネルデータを用いて以下の
線形回帰分析を実施
 モデル式: yit= β1xit1 +β2xit2 +…+βjxitj +ai +uit
自治体iの個別効果
yit
t年度の家庭ごみ
排出原単位
(g/人・日)
分別収集される
厨芥類も含む
誤差項
uit
ai
β1
厨芥類分別導入の有無
β2
xit1
生ごみ処理機の助成台数
β3
ごみ有料化の有無
xit2
xit3
他廃棄物関連施策
地域特性等
※イメージ図
2013/06/25
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3. 分別収集量・発生抑制量の実証分析
家庭系廃棄物排出量のパネルデータ分析結果
厨芥類の分別収集導入により、
家庭ごみ排出量は80g/人・日減尐
厨芥類の発生抑制
効果は十分にあった
モデルにより40~100g/人・日
変数名
係数
標準誤差
有意確率
厨芥類分別ダミー
-82.2
16.1
0.0%
古紙分別ダミー
-78.8
25.2
0.2%
紙容包分別ダミー
-29.9
32.2
35.4%
37.1
21.5
8.5%
-173.9
25.7
0.0%
-52.4
22.4
2.0%
-327.7
116.4
0.5%
1,556.9
296.1
0.0%
プラ容包分別ダミー
可燃ごみ等有料化・袋指定ダミー
可燃ごみ等収集頻度(回/週)*
生ごみ処理機累積助成数(台/世帯)
ごみ有料化や生ご
み処理機の助成制
度も有意な発生抑
制効果を示した
地域特性*
定数項
*:地域特性、可燃ごみ等収集頻度は個別効果との相関が強く、理論と整合する結果とはならなかった
2013/06/25
1.背景と目的
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本研究の目的

厨芥類の分別収集・発生抑制の可能性を実証的
に分析する
→2.京都市生ごみ等分別収集実験での調査
→3.分別収集量・発生抑制量の実証分析

家庭系厨芥類の発生抑制・資源化による環境負
荷(温室効果ガス:GHG)削減効果の評価
→4.発生抑制・資源化のライフサイクル分析
2013/06/25
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4. 家庭系廃棄物の発生抑制・資源化のLCI分析
機能単位の設定

機能単位
 厨芥類、プラスチック製容器包装および一部資源ご
み*を除く国内の家庭ごみ1,500万t-wetの処理
 日本国民1億2千万人の食品摂取量
 国内で廃棄されたプラスチック製容器包装200万twetによる製品の保護
バイオガス化・堆肥化技術との親和性が高い
生分解性プラスチックへの素材転換を考慮
厨芥類の発生抑制、プラスチック製容器包装の素材転換
を評価するため、複数の機能単位を設定した
*:分別収集率が高い缶・びん・ペットボトルおよび白色トレーのうち、
可燃ごみ等に排出されない分(=分別収集された量)を除いた
2013/06/25
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4. 家庭系廃棄物の発生抑制・資源化のLCI分析
システム境界・シナリオフロー
焼却シナリオ
食品生産~調理
(食品ロス)
可燃ごみ等
混合収集
焼却・蒸気発電
飛灰
焼却灰
京都市実験での
収集率を適用
埋立
電力
食品生産~調理
(食品ロス以外)
プラ容包生産
分別収集バイオガス化シナリオ
可燃ごみ等
分別収集
(厨芥類・紙類)
メタン発酵
ガスエンジン発電
(GE発電)
発酵残渣
他製品生産
分別収集
(非分別ごみ)
他資源化物
(缶・びん・ペッ
トボトル等)
各種リサイクル
バイオガス
自家処理
(家庭コンポスト化)
電力
焼却・蒸気発電
堆肥
飛灰
焼却灰
埋立
バイオガス
ガスエンジン発電
(GE発電)
機械選別バイオガス化シナリオ
可燃ごみ等
混合収集
メタン発酵
機械選別
発酵残渣
電力
焼却・蒸気発電
分別収集
(プラ容包)
各種リサイクル
(MR,CR)
コークス等還元剤
再生プラスチック樹脂
飛灰
焼却灰
埋立
2013/06/25
4. 家庭系廃棄物の発生抑制・資源化のLCI分析
21/23
発生抑制ケースの設定

実証分析の結果を参考に、厨芥類排出量が
10%(21g/人・日)減尐すると仮定
1.食品ロス削減ケース
 厨芥類のうち食品ロスのみが減尐(27%減)
 生産段階のGHG削減
卒論時に推定した値を利用
2.水切りケース
 厨芥類の含水率が76.9%→74.3%に低下
3.自家処理ケース
 厨芥類の減尐分は自家処理
 生成した堆肥は化学肥料を代替
電動生ごみ処理機:プラスチッ
ク製コンポスター=1:9
2013/06/25
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4. 家庭系廃棄物の発生抑制・資源化のLCI分析
食品ロス生産段階のGHG排出量

食べ残し、手付かず食品のGHG排出原単位は
1.5-1.7kg-CO2eq/kg-Food
9,000
8,000
5,000
8,000
7,000
輸送
動物性(36%)
その他
(14%)
穀物性(25%)
植物性(25%)
2,000
1,000
0
生産(CO2)
6,000
5,000
生産(CO2)
輸送
生産(CH4)
動物性(21%)
生産(CH4)
4,000
3,000
嗜好飲料(3.5%)
卸売・小売
7,000
6,000
卸売・小売
調理
GHG排出原単位(g-CO2eq/kg-waste)
GHG 排出原単位(gCO2eq/kg-waste)
9,000
乳製品(2.2%)
4,000
3,000
植物性(36%)
穀物性(31%)
2,000
調味料
(0.5%)
調味料(5.0%)
飲料水(0.6%)
1,000
0
食べ残し構成比(%)
卵(ゆで)(0.4%)
手付かず食品構成比(%)
2013/06/25
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4. 家庭系廃棄物の発生抑制・資源化のLCI分析
基本シナリオ・発生抑制ケース結果
分別収集シナリオからさら
に-150万t-CO2eq/yrの
GHG削減効果
自家処理は逆に
GHG排出増加
-74万tCO2eq/yr
-66万tCO2eq/yr
GHG emission (103 t CO2eq/yr)
水切りはほとんど
変化なし
25,000
プラリサイクル
20,000
化肥代替
15,000
17,023
16,361
16,286
10,000
14,832
16,308
16,544
GE発電
蒸気発電
処理
5,000
埋立地ガス
0
焼却排ガス
-5,000
収集
樹脂生産
-10,000
焼却
分別バイオ
基本
機械バイオ
分別バイオ
分別バイオ
分別バイオ
食品生産
ロス減
水切り
自家処理
Net GHG
発生抑制ケース
2013/06/25
24/23
4. 家庭系廃棄物の発生抑制・資源化のLCI分析
発生抑制効果の感度解析結果

発生抑制ケース
 発生抑制効果を0~20%で感度解析

全量収集ケース
 厨芥類、対象紙類が100%分別収集されるケース
GHG Reduction (千t CO2 eq/yr)
4,000
=食品ロス54%減
3,500
3,000
2,500
2,000
全量収集ケース以上の
GHG削減効果を示した
GHG削減効果が
大きく向上する
可能性
=食品ロス
27%減
厨芥類20%減
厨芥類10%減
1,500
1,000
500
0
基本
焼却シナリオからの
GHG削減量
全量収集
ロス減
分別バイオ
水切り
自家処理
厨芥類0%減
(発生抑制なし)
2013/06/25
25/23
4. 家庭系廃棄物の発生抑制・資源化のLCI分析
分別収集と機械選別の比較
収集率向上・機械選別性能変動ケース
 発酵残渣の含水率が42、52、62%で変動

GHG Reduction (千t CO2eq/yr)
1,800
1,600
参加率・分別率ともに高ければ、
分別が望ましい
(発生抑制が無い場合)
残渣含水率42%
発酵残渣の脱水は機械
選別時に特に有効
1,400
1,200
1,000
残渣含水率62%
800
600
400
200
0
基本
分別率最大 参加率最大 収集率最大 全量収集
分別バイオ
世帯分別率最大値=厨芥80%、紙40%
参加率最大値=80%(京都市調査より)
基本
選別率大
+省電力
良
選別率小
+大電力
悪
機械バイオ
2013/06/25
26/23
4. 家庭系廃棄物の発生抑制・資源化のLCI分析
埋立ケース(焼却なし)

非分別物、発酵残渣等が全て埋立されるケース
埋立の場合、機械選別バイオ
ガス化がGHG削減の観点から
望ましいシナリオとなった
40,000
嫌気性埋立の場合はGHG
排出量が大きく増加した
33,065
GHG emission (103 t CO2eq/yr)
35,000
プラリサイクル
29,588
30,000
25,000
焼却シナリオ
基本ケース17,023
化肥代替
24,014
20,871
20,000
GE発電
18,820
15,829
蒸気発電
15,000
処理
10,000
埋立地ガス
5,000
焼却排ガス
0
収集
-5,000
樹脂生産
-10,000
埋立
準好気性・嫌気性の
両条件で分析
分別バイオ 機械バイオ
埋立・準好気
埋立
分別バイオ 機械バイオ
埋立・嫌気性
食品生産
Net GHG
2013/06/25
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5.結論と今後の課題
結論① 実態調査・実証分析
2.京都市生ごみ等分別収集実験での調査
各厨芥類・紙類の分別傾向
 分別収集量の決定要因として参加率が重要

3.分別収集量・発生抑制量の実証分析

厨芥類の分別収集導入による家庭ごみ発生抑
制効果が存在する
2013/06/25
28/23
5.結論と今後の課題
結論② GHG削減効果
4. 家庭系廃棄物の発生抑制・資源化のLCI分析

分別収集導入による食品ロス削減がある場合、
厨芥類等を全量収集する以上のGHG削減効果

発生抑制の内訳によりGHG削減効果は異なる

分別収集と機械選別の差は小さく、収集率・施設
能力など条件によって最適なシナリオは異なる
本研究を踏まえ、厨芥類の分別収集や食品ロス削減
施策が効果的に推進されることが望まれる
2013/06/25
29/23
ご清聴ありがとうございました
2013/06/25