平成23 平成23年度 23年度 高等学校授業力向上研修 実践記録 ユークリッドの ユークリッド の 互除法( 互除法 ( 研究テーマ 研究 テーマ) テーマ ) -数学A 数学A「場合の 場合の数」の指導を 指導を通して- して- 県立安塚高等学校松之山分校 Ⅰ 伊佐 友希 指導構想 本単元における 本単元における「 における「研究テーマ 研究テーマ」 テーマ」に迫るための視 るための視点 来年度から新課程となり、数学Aに新たな単元として『整数の性質』が加わる。その中で扱われる 内容のいくつかは現行の課程では教科書に載っていない内容であるが、大学入試では頻繁に出題され ているのも事実である。しかしながら、授業で扱うことが少ないためか、整数問題に苦手意識を持っ ている生徒も少なからずいる。現行課程においても、教科書内容にとらわれず、整数の性質について 積極的に授業で取り扱う必要があると感じている。 数学A「場合の数」において、『約数の個数と総和』について学ぶが、今回の授業ではその発 展課題として『ユークリッドの互除法』を扱う。視覚的に考察したり、自ら問題を作ったりすること で最大公約数や整数論に関する理解を深めさせる。 Ⅱ 1 2 学習指導案 単元名( 単元名(題材名) 題材名) 数学A 1章「集合と場合の数」 対象クラス 対象クラス 1年1組 発展課題「ユークリッドの互除法」 20名 3 指導目標 ○最大公約数について十分に理解し、作業や考察を行う。(知識・理解) ○ 指示をしっかりと聞き、それに従って作業を正確に行い、最大公約数を導く。(表現・処理) ○自ら工夫して問題を作り、出題する。(数学的な見方や考え方) ○どのような方法で最 大 公 約 数 を求めたのかを説明する。 授業で取り扱う方法でなぜ最 大 公 約 数 が求められるのかと疑問を持ち、その理由を自ら考える。 (表現・処理、関心・意欲・態度) 4 指導と 指導と評価の 評価の計画( 計画(全11時間 11時間) 時間) 時 学習内容 学習活動 ○個数の数え方 1・2 樹形図と 場合の数 ○和の法則 ○積の法則 3~5 順列 ○順列 ○円順列 ○重複順列 ○組合せ 6~8 組合せ ○同じものを含む順列 9・10 二項定理 11 ユークリッド の互除法 ○二項定理 ○二項定理の応用 ○ユークリッドの互除法 評価と方法 数 え 上 げ や 樹 形 図 、和 の 法 則 、積 の 法 則 を 理 解 し 、様 々 な 場 合 の 数 を 求 め る のに利用することができる。 階 乗・順 列 の 記 号 や 計 算 方 法 を 理 解 し 、具 体 的 な 場 合 に 応 用 し 、工 夫 し て 考 えることができる。 組 合 せ の 記 号 や 計 算 方 法 を 理 解 し 、具 体 的 な 場 合 に 応 用 し 、工 夫 し て 考 え る ことができる。 式の展開に組合せが活用できることを 理解し、二項定理や多項定理を用いて 展開をすることができる。 上記の「3 指導目標」を達成するこ とができる。 5 評価規準 Ⅰ 関心・意欲・態度 Ⅱ 数学的な見方や考え方 Ⅲ 表現・処理 Ⅳ 知識・理解 考察や作業に積極的 に参加することがで きる。自ら工夫して 考えようとする。 順列や組合せの考え 方を身につけ、様々 な場合に応用するこ とができる。 事象を数学的に考察 記号の意味や用途を し、表現・処理でき 理解し、必要に応じ る力を身につける。 て使用することがで きる。 6 本時の 本時の計画 (11/ 11/11時間 11時間) 時間) (1)ねらい ・ユークリッドの互除法を理解し、最大公約数を求めるために利用できる。 ・自分で問題を作ることで、整数に関する理解を深める。 (2)本時における 本時における「 における「研究テーマ 研究テーマ」 テーマ」に迫るための指導 るための指導の 指導の構想 ・生徒の着想を大切にするため、初めからこちらが説明しすぎないようにする。 ・有効な方法を用いている生徒がいれば、生徒にあてて説明させる。 (3)展開 評価の 評価の観点 時間 導入 (13分 ) 展開① (10分 ) 学習活動 ○「最大公約数の復習」 問1 次の2数の最大公約数 を求めよ。 (1) 9 , 1 5 (2) 1 4 , 3 5 (3) 2 4 , 3 6 (4) 5 4 , 3 0 (5) 6 , 1 8 (6) 2 1 , 5 1 (7) 1 5 , 2 8 (8) 9 1 , 1 0 4 (9) 1 2 1 , 1 5 4 (10) 7 3 1 , 3 0 1 教師の働きかけと予想される 支援・評価・留意点 生徒の反応 ・数人の生徒は最大公約 ・最大公約数につ 数が何かわからないこ いて理解し、工 とが予想されるため、 夫をして求める (1)は 様 子 を 見 て す ぐ ことができる。 に説明をする。 ・どのように考え ・素因数分解をして考え て求めたかを説 ている生徒がいれば、 明できる。 あてて説明させる。 ・2つの数の差をとって 考えている生徒がいれ ば、ユークリッドの互 除法につながる考え方 なので、あてて説明さ せる。 (1)は こ ち ら か ら 説 明 を す る 。 (2)以 降 は 生 徒 に あ て る 。 タイミングを見て、どのよう に考えたかも説明させる。 (10)に つ い て は 「 後 で 簡 単 に 求められる方法を説明する」 とあまり深入りせずに次に進 む。 ○「紙を切ることで最大公約数 ・指示通りに作業してい ・ここで扱う2つ るか確認しながら説明 の長方形の紙は を求める」 する。 事前にこちらで ・ 問 1 (6)に つ い て 、 人数分用意して 2 1 ×5 1 マ ス の 長 方 形 の 紙 ・ 長 方 形 の 紙 を 、 1 つ の 頂点から45度に紙を おいたものを配 から正方形の紙を順次切り取 折り返すことで正方形 布して、切らせ る方法で最大公約数を求める の切る部分を求めてい る。 方法を実際に生徒に紙を切ら る生徒がいれば「良い せながら説明する。 方法」と全体に紹介す る。 問 2 3 0 ,7 8 の 最 大 公 約 数 を ・最後にできた正方形で 紙を切ることで求めよ。 長方形が埋め尽くせる ことを確認させる。 展開② (15分 ) 展開③ (10分 ) ○「自分で問題をつくり出題」 ・問題の作り方がまった ・自ら工夫をし、 くわからない生徒には ・隣同士の生徒でお互いに問題 問題を作ること を出させ合う。 どう作れば良いか説明 ができる。 (出題者は正解もわかってい をする。 ることとする。A1サイズ ・答えを勘違いしている の 2 8 0 ×2 0 0 マ ス の 方 出題者もいるかもしれ 眼用紙が最大なのでその範 ない。その場合、全体 囲内での出題とする) に対してその間違いを 紹介し、なぜそうなっ たのかを考えさせる。 ○ユークリッドの互除法 ・計算の方法をよく理解 ・切った紙と対比 ・問 1 (6)と 問 2 を 、ユ ー ク リ ッ できない生徒がいるか させながら説明 ドの互除法を用いて計算で求 もしれない。色を分け する。 める方法を説明する。 る こ と で 視 覚 的 に 計 算 ・ この方法でなぜ最 大 公 約 数 が求め の方法がわかりやすい 問 1 (6)5 1 = 2 1 ×2 + 9 られるのかと疑問 ように板書する。 を持ち、その理由を 2 1 = 9 ×2 + 3 自ら考える態度。 9 = 3 ×3 問2 7 8 = 3 0 ×2 + 1 8 3 0 = 1 8 ×1 + 1 2 1 8 = 1 2 ×1 + 6 1 2 = 6 ×2 ・なぜこの方法で最大公約数が 求められるのかを説明する。 問3 731,301 の最大公約数を求めよ。 7 3 1 = 3 0 1 ×2 + 1 2 9 3 0 1 = 1 2 9 ×2 + 4 3 1 2 9 = 4 3 ×3 まとめ (2 分 ) Ⅲ ユークリッド互除法の有用性を 説明する。 授業の 授業 の 実際 授業開始時には最大公約数についてよく覚えていない生徒が何人かいた。また、最大 公約数を求めるのに手間取る生徒も多くいて時間を要した。 最大公約数について復習した後に行った展開①では、時間を十分にとって作業させた ため、みな紙を切ることで最大公約数を求めることができた。どの生徒も互いに教え合 いながら積極的に作業を行っていた。 紙を切る際、マス目を数えることなく工夫して正方形を切っている生徒がいたため、 その方法を紹介させた。普段おとなしく、あまり脚光を浴びることのない生徒だったの で良い経験だったように感じる。 反省点も残る授業だった。最大公約数を復習するための問題の数が多く、また最大公 約数のいろいろな求め方を生徒から引き出すことに執心したため、本題の「ユークリッ ドの互除法」を扱う時間が足りなくなり、展開②の後半と展開③を扱うことができなか った。この部分は次の時間に継続して授業をし、その中ではすべての生徒がユークリッ ドの互除法を用いて最大公約数を求めることができた。 展開②では、生徒に自分で問題を作らせたが、このような経験をしたことがないのか 戸惑う生徒が多かった。 Ⅳ 実践の 実践の考察とまとめ 考察とまとめ 導入の「最大公約数の復習」では、生徒がどのような方法で最大公約数を求めている かに注意を払い、随時生徒を指名して、その方法を説明させた。生徒から出た方法は、 ①両方の数の約数をすべて列挙して、最大の公約数を探す ②片方の数の約数をすべて列挙して、大きい方から他方の数を割りきれないか試す ③片方の数の約数を大きい順に考え、その都度他方の数を割りきれないか試す の3通りだった。③の考え方の生徒は次々問題を解いていたが、①の生徒は1問解くの にかなりの時間がかかっていた。 その他の方法、例えば、1学期の「場合の数」の単元の授業で説明した、素因数分解 を利用して約数を求めている生徒などはいなかった。 他にも、「91」と「104」の最大公約数を求める際に、2数の差である「13」 がその候補となることに気づいている生徒がいれば、これはユークリッドの互除法につ ながる考え方なので是非紹介したいと思ったがそのような生徒もいなかった。この考え 方は、次の授業で説明をしたが、生徒はすんなりと納得する様子を見せた。 新課程の教科書のうちの半分位は、今回の授業同様、「紙を切る」ことを『ユークリ ッドの互除法』を学ぶ導入として取り扱っている。実際に紙を切ることは、このアルゴ リズムの仕組みを理解するために有効な手段であると生徒の様子を見て感じた。 た だ し 、紙 を 切 る 方 法 で は 、求 め た 数 が「 公 約 数 」で あ る こ と は 理 解 し や い す の だ が 、 『最大の』公約数であることは簡単には説明できないため、補足説明が必要である。
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