2011年秋季 第72回応用物理学会学術講演会 2011年9月1日(木) 山形大学小白川キャンパス 8. プラズマエレクトロニクス 8.6 プラズマ現象・新応用・融合分野 1a-ZD-3 酸素雰囲気中水上パルス放電における フェノール分解過程 Decomposition process of phenol by a pulsed discharge over water surface in the oxygen atmosphere ○塩田晴基 ○Haruki 佐藤孝紀 伊藤秀範 (室蘭工業大学) Shiota, Kohki Satoh and Hidenori Itoh (Muroran Institute of Technology) MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY 背景および目的 大気中で放電 O3などの活性種が生成[1] H2O 存在下で放電 OH,H2O2が生成[2] 水上放電により効果的に生成 水中の汚染物質を分解 BG gas : O2 針 針電極 試料容器 目的 V=14.14kV, d=4mm, 1 needle exposure time T=50 ms 容器の縁 水上パルス放電によって水中の汚染物質(フェノール)を分 解するとともにその分解過程を明らかにする [1]M.A.Malik et al.: Plasma., 10, 82 (2001) [2]P.Lukes et al.: J.hys.D:Appl.Phys., Sources Sci. Technol 38, 409 (2005) フェノール分解過程の調査および報告内容 Hoeben et al. [1] BGガスをAirとし水上パルス放電によりフェノールを分解するとともに分解生成 物を調査 O3によるフェノール分解過程を予測 Hoeben et al.によって 予測された生成物 特定した 分解生成物 ギ酸 モルオゾニド オゾニド フェノール シュウ酸 双性イオン ヒドロキシアルカノール 不飽和脂肪族化合物 グリオキシル酸 グリオキサール 報告内容 BGガスをO2としてフェノール水溶液上にパルス放電を発生させたときの 分解生成物を詳細に調査 Hoeben et al.の分解過程と比較 [1]W.F.L.M.Hoeben et al.: Plasma Sources Sci. Technol., 9, 361 (2000) O3による分解過程を推定 実験装置および実験条件 直流高電圧電源 放電照射時間 : 120 min 極性 : 正極性 充電電圧 : 14.14 kV パルス繰り返し周波数 : 20 pps BGガス 種類 : O2 純度 : 99.5 % 流量 : 1 L/min 電極 針数 : 1 本 ギャップ長 : d = 4 mm フェノール水溶液 濃度 : 3000 ppm 液量 : 70 g MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY 実験装置および実験条件 Vg Ig 20 100 10 50 0 0 -10 0 1 2 3 time [s] 4 1.5 5 -50 electrnic power [MW] 150 current [A] voltage [kV] 30 Wg 1.0 0.36 J/pulse 0.5 0.0 -0.5 0 1 2 3 time [s] 4 5 直流高電圧電源 放電照射時間 : 120 min 極性 : 正極性 充電電圧 : 14.14 kV パルス繰り返し周波数 : 20 pps BGガス 種類 : O2 純度 : 99.5 % 流量 : 1 L/min 電極 針数 : 1 本 ギャップ長 : d = 4 mm フェノール水溶液 濃度 : 3000 ppm 液量 : 70 g MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY 放電の様子 放電開始直後 BG gas :O2, V=14.14 kV, d=4 mm, exposure time T=50 ms 針電極 液体試料容器 太い放電と細い放電が発生 太い放電の進展形状は1パルス毎に異なる 水とO2の界面でO3が生成される 放電照射前後におけるフェノール水溶液のクロマトグラム 1.5x10 6 intensity [a.u.] Air before discharge after discharge フェノール 1.0 0.5 0.0 1 2 3 4 5 retention time [min] 6 7 8 MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY 放電照射前後におけるフェノール水溶液のクロマトグラム 1.5x10 6 intensity [a.u.] Air before discharge after discharge フェノール 1.0 0.5 0.0 1 2 3 4 5 retention time [min] 6 7 8 5 6 2 7 3 ギ酸 無水マレイン酸 無水こはく酸 4 5-[2-ヒドロキシエチリデン] -2(5H)-フラノン MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY 熱による分解生成物の脱水反応 特定された生成物 5 6 2 7 3 ギ酸 無水マレイン酸 無水こはく酸 酸無水物 : 脱水反応により生成 GCMSによる分析の流れ 試料導入口 液体試料を注入 試料気化室 : 150 ℃ 加熱 ・ 気化 カラム (80 ~ 230 ℃, 10℃/min) 加熱・分離 質量分析装置 検出 4 5-[2-ヒドロキシエチリデン]-2(5H)-フラノン 熱による分解生成物の脱水反応 特定された生成物 5 6 2 7 3 ギ酸 無水マレイン酸 無水こはく酸 4 5-[2-ヒドロキシエチリデン]-2(5H)-フラノン 酸無水物 : 脱水反応により生成 GCMSによる分析の流れ 試料導入口 液体試料を注入 試料気化室 : 150 ℃ 加熱 ・ 気化 カラム (80 ~ 230 ℃, 10℃/min) 加熱・分離 質量分析装置 C2H2(COOH)2 → C4H2O3 + H2O マレイン酸 無水マレイン酸 HOCO(CH2)2COOH → C4H4O3 + H2O 検出 こはく酸 無水こはく酸 GCMSによるマレイン酸水溶液の分析結果 特定された生成物 5 6 2 7 3 ギ酸 無水マレイン酸 無水こはく酸 4 5-[2-ヒドロキシエチリデン]-2(5H)-フラノン 酸無水物 : 脱水反応により生成 マレイン酸水溶液のクロマトグラム intensity [a.u.] 300x10 3 Air maleic acid 250 (マレイン酸) 無水マレイン酸 200 150 1 2 3 4 5 retention time [min] 6 7 GCMS分析→無水マレイン酸のピークのみ検出 8 GCMSによって特定された生成物と実際の生成物 特定された生成物 5 6 2 7 3 ギ酸 無水マレイン酸 無水こはく酸 4 5-[2-ヒドロキシエチリデン]-2(5H)-フラノン 水溶液中に含まれる分解生成物 ギ酸 マレイン酸 こはく酸 MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY GCMSによって特定された生成物と実際の生成物 特定された生成物 6 5 2 7 3 ギ酸 無水マレイン酸 無水こはく酸 4 5-[2-ヒドロキシエチリデン]-2(5H)-フラノン 水溶液中に含まれる分解生成物 5 1 4 2 ギ酸 マレイン酸 こはく酸 6 3 4,6-ジヒドロキシ-2,4-ヘキサジエン酸 MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY オフガスの赤外吸収スペクトル 3 absorbance [a.u.] after discharge (15min) before discharge O3 2 CO2 CO 1 0 3500 3000 2500 2000 1500 1000 500 -1 wavenumber [cm ] フェノール分解生成物 CO2 , CO BGガスからの生成物 O3 MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY Hoeben et al.の予測した分解過程[1] 分解生成物 ギ酸 モルオゾニド オゾニド シュウ酸 グリオキシル酸 フェノール 双性イオン 1,3-双極子付加反応 [1]W.F.L.M.Hoeben et al.: Plasma Sources Sci. Technol., 9, 361 (2000) ヒドロキシアルカノール 不飽和脂肪族化合物 グリオキサール Hoeben et al.の分解過程および本研究の分解生成物 Hoeben et al.の予測した分解過程 分解生成物 ギ酸 モルオゾニド オゾニド シュウ酸 グリオキシル酸 フェノール 双性イオン ヒドロキシアルカノール 不飽和脂肪族化合物 グリオキサール 1,3-双極子付加反応 本研究で特定した分解生成物 フェノール 4,6-ジヒドロキシ2,4-ヘキサジエン酸 マレイン酸 こはく酸 CO2 CO ギ酸 分解過程の比較 Hoeben et al.の予測した分解過程 分解生成物 ギ酸 モルオゾニド オゾニド シュウ酸 グリオキシル酸 フェノール 双性イオン ヒドロキシアルカノール 不飽和脂肪族化合物 グリオキサール 1,3-双極子付加反応 本研究の結果から推定される分解過程 1,3-双極子 付加反応 フェノール O3 4,6-ジヒドロキシ2,4-ヘキサジエン酸 マレイン酸 こはく酸 CO2 CO ギ酸 本研究の結果から推定される分解過程 1,3-双極子付加反応 O3 4,6-ジヒドロキシ-2,4ヘキサジエン酸を 炭素数 4 個および 2 個の化合物が生成 O3 炭素数 4 個 O3 1,3-双極子 付加反応 フェノール O3 or 1,3-双極子 付加反応 4,6-ジヒドロキシ2,4-ヘキサジエン酸 マレイン酸 こはく酸 炭素数 2 個 CO2 CO O3 シュウ酸 ギ酸 本研究の結果から推定される分解過程 Hoeben et al.(LC分析) 分解生成物 [1] HOOCCOOH → HCOOH + CO2 シュウ酸 ギ酸 ギ酸 シュウ酸 [2] HOOCCOOH → CO2 + CO + H2O グリオキシル酸 シュウ酸 グリオキサール 本研究の結果から推定される分解過程 O3 1,3-双極子 付加反応 フェノール O3 or 1,3-双極子 付加反応 4,6-ジヒドロキシ2,4-ヘキサジエン酸 マレイン酸 こはく酸 CO2 CO O3 [1]G. Lapidus et al.: J. Phys. Chem., 67, 1863(1964) [2]T. Kakumoto et al.: J. Phys. Chem., 91, 2366 (1987) シュウ酸 ギ酸 本研究の結果から推定される分解過程 水上パルス放電によるマレイン酸および こはく酸の分解実験 →分解生成物は検出されない →最終的な分解生成物 本研究の結果から推定される分解過程 O3 1,3-双極子 付加反応 フェノール O3 or 1,3-双極子 付加反応 4,6-ジヒドロキシ2,4-ヘキサジエン酸 マレイン酸 こはく酸 CO2 CO O3 シュウ酸 ギ酸 まとめ BGガスをO2とし,水上パルス放電を用いてフェノールを分解するとともに,分解 生成物を詳細に調査し,分解過程を推定した。 結 果 フェノールの分解生成物として,こはく酸,マレイン酸,4,6-ジヒドロキシ-2,4-ヘキサジエン 酸,ギ酸が水中に含まれていることを明らかにした 気相中の分解生成物として,CO2およびCOが生成されていることを明らかにした 本研究の結果より推定されるフェノール分解過程を以下に示す フェノール 1,3-双極子 付加環化反応 4,6-ジヒドロキシ-2,4-ヘキサジエン酸 C=C結合部でオゾンによる 1,3-双極子付加環化反応 CO2 こはく酸 マレイン酸 シュウ酸 ギ酸 CO
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