アーキテクトi1000SRの基礎検討 - 岐阜県立下呂温泉病院

下呂温泉病院年報
.
∼ .
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アーキテクト i
SR の基礎検討
岐阜県立下呂温泉病院 臨床検査部
藤木
誠
福田明美
今井順子
森岡富子
林弘太郎
要旨 腫瘍マーカー、ホルモンなどの微量成分の化学発光免疫反応(CLIA)法を利用し測定する化学発
光免疫測定装置アーキテクト i
AFP、 CA
SR
(アボットジャパン)が導入され、TSH、 Free-T 、Free-T 、CEA、
― 、PSA、 BNP について院内実施に向けた基礎的検討を行った。
検討は、アーキテクトアナライザー i
SR(アボットジャパン)と各項目の専用試薬を用いて同時再
現性、日差再現性、従来法(BML 社測定)との相関、CA
― の抗原過剰によるフック現象の確認につい
て実施した。
各検討項目の再現性は同時再現性が . ∼ . %、日差再現性が . ∼ . %と良好な結果が得られ
た。相関は TSH、 CEA、AFP、PSA、 BNP の各項目の相関は相関係数、回帰式共に良好であったが、
Free-T 、Free-T は傾きが低くなった。CA
― の相関は
U/ml 以上で従来法に比べ高くなったのに対
し、カットオフ値の U/ml 以下では従来法に比べ低くなった。抗原過剰によるフック現象は
U/ml
まで認めなかった。
今回の結果から、検討した各項目において同時再現性、日差再現性共に良好で、従来法との相関は従来
法からのデータ移行が可能な結果であることから、アーキテクト i
SR は緊急検査を主体とする当検査
室の運用に有用な分析装置であることが示唆された。
Free-T 、Free-T 、CEA、AFP、CA
はじめに
― 、PSA、
BNP について院内実施に向 け た 基 礎 的 検 討 を
腫瘍マーカー、ホルモンなどの微量成分の測定
行ったので報告する。
方法として抗原抗体反応を利用した免疫反応法が
方法および対象
使われている。この反応は使用される標識物質の
種類により、放射性免疫反応(RIA)法、酵素免
.測定装置
疫反応(EIA)法、化学発光免疫反応(CLIA)
アーキテクトアナライ ザ ー i
法等がある。
SR(ダ イ ナ
ボット社)
我々は CLIA 法を用いた ACS
全自動化学発
.測定試薬
光免疫測定装置を用いた基礎的検討を行い、同法
TSH:アーキテクト・TSH
を用いた免疫測定の感度、再現性が良好であるこ
Free-T :アーキテクト・フリー T
とを報告した
))
Free-T :アーキテクト・フリー T
。
CEA:アーキテクト・CEA
当検査室では、主に感染症項目測定用として使
用してきた免疫分析装置 LPIA-A
AFP:アーキテクト・AFP
の更新にあ
た り、化 学 発 光 免 疫 測 定 装 置 ア ー キ テ ク ト
CA
i
PSA:アーキテクト・PSA
SR(アボットジャパン)
(以下 i
導入された。i
SR)が
SR は感染症項目のほかホルモ
再現性は
濃度の各項目専用管理試料を用いて
回連続測定、日差再現性は延べ
週間、
SR、再現性、相関、フック現象
―
XR
同時再現性、日差再現性を求めた。同時再現性は
部委託検査にて対応してきた項目の院内実施、迅
速 報 告 が 可 能 と な る。今 回、我 々 は TSH、
TM
.検討内容
ルランダムアクセス、測定時間標準 分、最大
テスト/時間の検体処理能力があり、これまで外
―
BNP:アーキテクト・BNP-JP
ン、腫瘍マーカー等の測定が可能である。またフ
Key word:i
― :アーキテクト・CA
―
日、
日×
回測定した。尚、キャリブレーションは
表
同時再現性
Free-T
Free-T
CEA
(µIU/ml)
(pg/ml)
(ng/dl)
(ng/ml)
L
M
H
L
MEAN
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SD
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CV
(%)
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M
L
M
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CA
AFP
(ng/ml)
H
―
(U/ml)
H
L
M
H
PSA
BNP
(ng/ml)
(pg/ml)
L
M
H
L
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SD
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CV
(%)
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H
日差再現性
(n= )
TSH
Free-T
Free-T
CEA
(pg/ml)
(ng/dl)
(ng/ml)
M
H
L
MEAN
.
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SD
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L
M
.
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M
H
L
M
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CA ―
(U/ml)
H
.
L
.
M
H
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CEA
CA
対象血清は委託検査提出時に必要量を− ℃にて
―
. ∼ . %、PSA
日差再現性の結果を表
Free-T
CA
U/ml)の
. ∼ . %、BNP
に示した。日差再現性
. ∼ . %、Free-T
. ∼ . % 、 AFP
―
. ∼ . %、PSA
. ∼ . %、
. ∼ . %、
. ∼ . %、BNP
各項目の従来法との相関を図
果
に示した。同時再現性
に示し
. x− . 、y= .
(図
)、Free-T :r=
. x+ . 、y= .
(図
)、Free-T :r=
. x+ . 、y= .
(図
x+ . 、y= .
における各項目の CV 値は TSH . ∼ . %、
―
∼図
た。各項目の相関係数および回帰式は TSH:r=
倍希釈にて測定し検討を行った。
同時再現性の結果を表
. ∼ . %、
. ∼ . %であった。
種類の試料を用い、無希釈、 倍希釈、
結
. ∼ . %、Free-T
における各項目の CV 値は TSH . ∼ . %、
象の確認は、BML 測定にて異状高値を示した
U/ml、
H
. ∼ . % 、 AFP . ∼ . % 、
CEA
種類の検討を行った。
― 高値検体で抗原過剰におけるフック現
.
M
. ∼ . %であった。
凍結保存し、測定時、室温で溶解し使用した。尚、
U/ml、
.
Free-T
め、相関を対象全検体と濃度域上限を U/ml に
BNP
(pg/ml)
L
.
― は測定法間における乖離が指摘されるた
H
H
.
部委託検査結果(BML 社)との相関を求めた。
M
M
.
従来法との相関は、当院患者血清を使用し、外
L
L
SD
初日のみ実施した。
H
PSA
(ng/ml)
CV
(%)
倍希釈、
.
M
(µIU/ml)
L
設定した
.
)
H
M
MEAN
試料の
M
.
AFP
(ng/ml)
濃 度(
L
L
CV
(%)
CA
H
MEAN
表
CA
(n=
TSH
. 、y= . (図
―
(図
)、CEA:r= .
)、AFP:r= . x+
)、PSA:r= . x− . 、
―
―
免疫反応を測定原理とした免疫測定装置である。
感染症関連、ホルモン、腫瘍マーカー等の項目を
フルランダムアクセスで
テスト/時間の処理
が可能で、測定時間は標準
分と迅速検体の対応
も可能である。
各検討項目の再現性は同時再現性が . ∼
. %、日差再現性が . ∼ . %と良好な結果
が得られた。i
SR は機器本体内に試薬用冷蔵
庫を持ち、常時、検査が可能となっている。また、
各試薬は本体に設置された状態で管理されている
ため試薬の安定性の一因となっている。同時、日
差共に良好な結果が得られたことから日常検査に
随時対応可能であると考えられる。
TSH、CEA、α フェトプロテイン、PSA、BNP
の各項目の相関は相関係数、回帰式共に良好であ
り、i
y= .
(図
)
、CA
― :全 濃 度 域 r= . x
列による評価が可能であると考えられる。
Free-T 、Free-T は相関係数が低くなったが、
− . 、
y= . 、 ng/ml未満r= . x− . 、
y= .
(図
、
)、BNP:r= . x− . 、
y= .
(図
)であった。
フック現象の確認は
i
濃度共に無希釈では
U/ml も
これは検討に供した試料の濃度域が狭く、検討試
料の抽出に起因すると考えられる。また傾きが
Free-T が . 、Free-T が . と 従 来 検 査 法 に
比べ低値となり、臨床上、同一時系列による評価
SR に て 設 定 さ れ て い る 測 定 上 限 値
U/ml 以上を示し、
U/ml 以下
では注意が必要であると考えられる。
CA
の測定範囲に低下せず、フック現象は確認されな
かった。
倍希釈、
U/ml は
倍希釈、
U/ml は
SR による測定結果は従来法と同一時系
U/ml は
― の相関は全濃度域、
U/ml 未満に分
けて検討した。全濃度域では相関係数は良好で
倍希釈でそれぞれ測
定可能であった。
あったが回帰式の傾きが . と i
SR の測定結
果は従来法に比べ高くなった。一方 U/ml 未満
考
では相関係数 . 、傾き . と全濃度域を対象
察
アーキテクトアナライザー i
とした相関と異なる結果となっ た。こ れ は
SR は化学発光
―
U/ml を超える濃度域での i
―
SR による測定結
果が従来法に比べ高くなったこと、カットオフ値
i
とする U/ml 以下の濃度域では i
り TSH、Free-T 、Free-T 、CEA、AFP、CA
SR による
測定結果が従来法に比べ低くなったことによると
考えられる。CA
SR(アボットジャパン)を導入するにあた
― 、
PSA、BNP について基礎的検討を行った。
― は測定法による乖離が知ら
各項目の再現性は同時、日差共に良好であっ
れており、また測定法毎に疾患別の陽性率の違い
た。また従来法との相関は Free-T 、Free-T で
が指摘されている
)))
。今回使用した CA
定用試薬アーキテクト・CA
患では
―
― 測
TM
XR は良性疾
傾きが低くなったが、従来法からのデータ移行が
可能であり満足できる結果であった。
アーキテクト i
U/ml のカットオフ値より低値をとり悪
SR は基礎的検討結果、検体
性疾患では RIA 法に比べ高値となるように試薬
処理能力から、緊急検査を主体とする当検査室の
調整されている。今回
運用に有用な分析装置であることが示唆された。
U/ml を超える濃度域
で従来法に比べ高値となる検体を認めたが、
U/ml 未満で極端な乖離はなかった。i
参考文献
SR に
)藤木
誠他:ACS
るが日常検査に有用であると考えられる。
年報、
,
抗原過剰によるフック現象について、
)青柳
美由紀他:ACS
よる CA
― の測定は疾患別の陽性率の違いはあ
U/ml まで i
下呂病院年報、
SR にて設定されている測定上限
値
U/ml 以下となる測定値は認めなかった。
CA
― は異状高値が想定される項目であり
,
)新 井
CA
U/ml でのフック現象の回避も報告され
,
,
の使用経験(Ⅱ)、
.
智 子 他:肝 疾 患 検 体 に み ら れ る
― EIA 法偽陽性とその分子量に関する検
討、臨床化学、
)
の使用経験、下呂病院
.
,
.
ている 。フック現象の回避は日常検査での異状
)阿部
高値検体の誤報告の回避、希釈再検などで運用の
間での比較について:医学検査、
効率化が図られると考えられる。
ま
と
正樹他:CA
,
― 測定値の市販
,
試薬
,
.
)堀内
め
裕次他:血中 CA
テ ク ト・CA
今 回、化 学 発 光 免 疫 測 定 装 置 ア ー キ テ ク ト
―
,
―
,
―
.
TM
― 測定試薬アーキ
XR の 評 価:医 学 と 薬 学、