参考資料2(オープン・ミニ・シンポジウムの議事録)(PDF - 経済産業省

参考資料2
OMSの議事録
第1回
地域オープンミニシンポジウム IN 石川県
第2回
地域オープンミニシンポジウム IN 京都
第3回
地域オープンミニシンポジウム IN 秋葉原
第1回
ファッションオープンミニシンポジウム
第1回
ハウス・すまいオープンミニシンポジウム
第1回
キャラクタービジネスオープンミニシンポジウム
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第 1 回 地域オープンミニシンポジウム IN 石川県
(パネルディスカッション議事録)
日時 :2011 年 11 月 15 日 15:55~17:00
場所 :石川県政記念しいいのき迎賓館
参加者:ファシリテーター
パネラー
福永浩貴
秋元 雄史
桐本 泰一
朽木 浩志
高木 慎一朗
吉五 健司 (敬称略)
司会:
それでは、続きましてパネルディスカッションを開始させていただきます。なお
パネラーの皆さまのプロフィールに関しましては、ご来場時にお配りしておりま
す資料をご確認ください。
これからは、先ほどご講演いただきました吉五さま、高木さま、朽木さまに加え
まして、金沢 21 世紀美術館長の秋元さま、また、輪島キリモト・桐本木工所副代
表の桐本さまの2名のお招きし、計5名の皆さまにパネラーとしてディスカッシ
ョンに、参加いただきます。
また、本ディスカッションのコーディネーターには、アール・プロジェクト・イ
ンコーポレイテッド代表取締役、福永さまにお務めいただきます。福永さま、よ
ろしくお願いいたします。
福永:
皆さん、こんにちは。福永と申します。これから、伝統工芸品、日本食の海外展
開から海外富裕層誘実へと題しまして、ディスカッションを行います。素晴らし
いコンテンツがたくさんそろっている金沢で、このディスカッションがきっかけ
で日本がいい方向に進み、いい形のブランディングと誘実ができたらいいのかな
と思っております。
素晴らしいパネリストの方々に囲まれて、皆さんがお知りになりたいことや疑問
に思われていることをうまく引き出していきたいと思いますし、また、質疑忚答
もこのディスカッションのあとにありますので、ぜひ皆さんにたくさんご質問を
いただき、ご提言もいただき、意義のある会にしていきたいと思います。
パネリストの方に関しまして、先ほど基調講演をいただいた3名さまのほかに、
秋元さんと桐本さんにも来ていただいています。
まずは、秋元さんのほうから簡卖な自己紹介とこの分野での海外富裕層誘実、ジ
ャパンブランドなどの取り組みについて、簡卖で結構ですので紹介頂ければと思
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います。
秋元: 皆さん、こんにちは。金沢 21 世紀美術館の秋元です。普段は美術館の運営をやっ
ている人間がクリエイティブエコノミーについて何を語るのだというふうに思わ
れるでしょうが、私もまだお話をしながら頭の中をまとめている状態です。
まずは、クリエイティブエコノミー研究会第1回目の開場としてですね、金沢を
選んでいただいたことは、大高さんをはじめ関係者の皆さんに感謝をしています。
日本のほかの地域から見ると金沢は、リエイティブな要素が経済と結びついてい
るような場ではないのかと映っていると思います。实際に、美術館という仕事を
通してですが、金沢の伝統文化や食文化に携わっている方たち、また、旅館業の
方たちとお付き合いをしております。美術館というのは文化を代表する唯一の場
所ではないわけで、豊かな土地、豊かな歴史というものに裏づけられた地域とい
う基盤があり、その最後の点のような形で美術館があるのだろうというふうに思
います。
例えばパリやフィレンツェやローマに行きたいかっていうと、卖にルーブル美術
館があるからとかではなくパリという魅力的な歴史、文化があって、そこの中の
1つのエッセンスとして美術館があるからだと思います。そうしたことを改めて、
金沢にいる人間が再認識するということがすごく大事だと思います。
先ほど、高木さんが、食は食だけであるわけでなく、工芸や地域のさまざまな歴
史文化を背景としてあるとおっしゃえていました。また、工芸も同じように工芸
だけを取り出して見せるわけではないというお話があったと思います。それが何
につながっているのかというと、1つはまさにその土地、また、もう一つは、歴
史なのではないかと思います。例えば、食はその土地の歴史と結びついている。
工芸もそうだと思います。まさに個々のそれぞれが、円環を描いていると思いま
す。ただ、そういった事が今の時代には、直接的に伝わっていかない。いわば、
全員金沢に来てもらわないと金沢のよさを理解できない。我々と同じように何十
年も住むなど、何代もかけてやっと伝わるものになっています。
そうすると、今のような時代の中でどうやって金沢を地元の我々が日頃感じてい
るよさを凝縮して持っていけるかっていうところが、このクリエイティブエコノ
ミーの1つの論点になるだろうなと思っています。
だから、その本質をいかにモダナイズするかが重要です。現代的な形にして、且
つ、伝わりやすく加工できるかということが重要だと思います。大体、本質かコ
ミュニケートかどっちかになってします。特に、簡卖で伝わりやすいがなんだか
中身がなくなることは多々あります。もしくは、すごくいいものがあるが、分か
るまでに手間や時間がかかるということもよくある。それをどう超えていくかが
多分1つの論点だろうし、それがビジネスにつながるかどうかが論点だと思いま
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す。
福永:
ありがとうございます。
それでは、桐本さん、お願いいたします。
桐本:
輪島から参りました桐本です。私は生地屋の息子、輪島塗の生地屋の息子として
生まれて、今の暮らしの中で实際に使える木製品と漆の器、小物、あと、家具、
建築内装、ここら辺を手がけております。その結果として外資系のホテルに声を
かけて頂くなど、海外で实際に使われるようになっています。この場でそういっ
た事例をご紹介して、自己紹介にしたいと思います。
これは、韓国のサムスンのですね、会長の自家用ジェットに乗せるための、松花
堂弁当です。そのほかも、地元材、輪島のアスナロ材を使った楕円の桶。楕円の
桶は、大きいものは足湯桶になって、ハイアットリージェンシー京都、箱根のハ
イアットなどのスパコーナーに使われております。また、小さなものはワインク
ーラーとして、イギリスの、和食レストラン Sake No Hanna、隈研吾さんのデザイ
ンですけど、でワインクーラーが 20 個お実さんの後ろで使われております。
輪島の地元材を使って、きれいな楕円で、防水性もあり、乾きもよく、動きも尐
ないという日本の技術がそのまま外資系のホテル、海外のレストランで使われて
いるのです。
その他にも、伊藤園ニューヨークに3年ほどいろいろなものを納めていました。
これは黒い輪島塗の重箱に梅の漆絵を描いた箱であります。この箱は实際にイタ
リアの富裕層が買っていったというような話もあります。また、能登半島地震の
あとにルイ・ヴィトン社が輪島塗の業界を助けると手を差し伸べてもらって、あ
るきっかけがあって私がデザインをさせて頂いたこともあります。ルイ・ヴィト
ン社には輪島塗の技術、木工の技術、堅の技術を生かした箱が 200 個納品させて
いただきました。
他にも建築内装材を生かしたものもあります。ヒルトン東京のチョコレートショ
ップに納品しております。ワイド4メートル 20、3メートル 80、3メートル 20
と巨大なウンターです。オブジェに見えるようにということで、巨大なカウンタ
ーをどう作るかというところから設計者に提案をして納品させて頂きました。
経済産業省さんがジャパンブランド事業ということで長く力を入れられてきまし
たけども、LED の照明器具でお力添えをさせて頂きました。LED の照明器具をデザ
インしたのがフランスのブルーレック兄弟という兄弟でありますが、ジャパンブ
ランド事業の発表会の中で 50 ある商工会議所の中から素材を選んでもらったとこ
ろ、輪島塗の業界と新潟の内の浜を選択して頂きました。結果として輪島塗の工
房にも来て、うちの技術を活用して彼らのデザインをした照明器具やハンディミ
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ラーなど4種類のものをデザインしてプロトタイプを作成しました。实際に、プ
ロトタイプだけではなくて、1年半後に 10 個だけ限定生産をされて、ブルーレッ
ク兄弟と関係のあるギャラリーで、販売されております。
木工所から漆器を手がけることをやっておりますが、東京にも色々な店を持って
おりまして、そこでは、海外の人がよく買ってくれます。例えば、色合いが気に
入ったなどといってフランスの方が購入されます。
また、虎屋の仕事をしていますが、虎屋は虎屋フランスで 30 年お店を開いていま
して、去年の 11 月に企画展とセミナーで販売をやったところ、こういうボールや
ロックカップなどを結構買ってもらいました。そのときに、買った理由を直接 2
人の女性にお伺いしたところ、
“きれいじゃん、あんた何を聞いとるんや”という
ように、きれい、そしてシンプルな美しさに魅かれて購入されたようでした。
その他にも、傷つかない日本の精緻な、差し歯の技術と、漆の強度のある名刺入
れ、金属のスプーンを使っても傷がほとんどつかない新しい技法など、これまで
の技術と素材を生かして作ったものが海外に受け入れられています。
ただし、自分はいろいろと海外の人に対して戦略をとったわけではなく、たまた
まなんとかして打って出なきゃいけないということで、いろんな人たちに対して、
お話があった場合に、
“即座にこういうのはどうでしょうか”、
“こういう形があり
ますが、即座にサンプルを作りましょうか”という動きから、色々なところから
声をかけて頂いております。
福永:
ありがとうございます。すごく具体的な事例を出して頂き、外国の方がそういう
ものを買われるというものに関しては、
“たまたま”とかいう言葉をお使いになり
ますけど、何かやっぱりきっかけがあり、何かしらやっぱり彼らの購買意欲をく
すぐるようなものがあるのじゃないかなと思います。
私はプロフィールにもありますとおり、アール・プロジェクトという会社をやっ
ておりまして、アール・プロジェクトのアールは旅館と料亭のアールなのですけ
れども、ずっと海外のホテルで働いていまして、日本の旅館があまりにも世界に
知られてないのに驚愕しましてですね、こんな素晴らしい文化をなぜ知らないか
という問題意識のもと事業を立ち上げました。
先ほどの朽木さんの講演にあり
ましたとおり、ストーリーテーラー、世界の富裕層、世界の旅行者が、違う国、
違う文化を見るときに、やっぱりストーリーというものを非常に尊重し、飛びつ
く傾向があります。
大きな運営会社も尐なく、家族経営が中心にも関わらず 1300 年もの歴史のある日
本旅館をのストーリーを世界の人が知らないということ非常に残念だと思います。
そうした背景のもと、旅館コレクションといいまして、31 件加盟していますが、
皆さんと一緒にその旅館の歴史を世界に向けて情報発信をしていきましょう、お
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実さまを作っていきましょうというようなコンソーシアムをやっております。
私は日本の魅力というものは世界一だと思っています。いろんな世界一の表現の
仕方があると思うのですが、おもてなしや食、自然、いろんな要素があって、私
は旅館の中には、それがすべてあると信じているのです。その魅力について、私
はその旅館のストーリーというものが、世界の人たちがやっぱり飛びつくものだ
と確信を持ってやっています。
皆さん、それぞれの業界の中で革新的な活躍もされているのですが、商品の魅力
でありそれを通じた日本の魅力というものをどんなふうに理解されているかなと
いうことをお聞きしたいのですけれども、高木さん、いろんな食の部分で世界的
にすごく活躍されていますけれども、日本食の魅力、日本文化の魅力、そこら辺、
いかがでしょうかね。
高木:
先ほども申し上げましたけどやっぱり人気があると言われると、やっぱり寿司と
かラーメンとかのイメージがやっぱり強いのですが、それだけではないというこ
とを、気がつき始めている方が随分増えている。
きっかけというのはやはり、外国から日本を訪ねてくる方が多くなった。そこで、
今まで思い描いていた寿司とは違う寿司が实は日本の寿司だったとかっていう、
こういうことを経験する人もいますし、逆に会席料理に出会ったり、すき焼きと
かしゃぶしゃぶに出会ったり、本物の日本に触れてあらためて、あの、深さ加減
が分かった。
深さ加減が分かったというのは、要は全部分かったわけではなくて、すごく深い
ものだなということが理解できた段階だと思います。それがまた口コミで広まっ
ていくということが私は一番の魅力じゃないかなと思います。
福永:
いろんな商品やアプローチがあって、その深さが非常にその魅力であるというこ
となのですね。吉五さんも伝統工芸分野でご活躍ですけれども、その深さについ
てお実さんがどのように魅了されているのか等、そこら辺はいかがでしょう。
吉五:
両極端なことをちょっと耂えていまして、1つは何が日本の魅力かって言われた
ときに、なんでもいいのじゃないかということだと思っています。というのは、
私が仕事を始めた 25 年ぐらい前に伝統工芸っていいますと、世の中から取り残さ
れたかわいそうなイメージがありました。そのころの花形は、やっぱり、IT とい
う業種でした。先ほど大高参事官のごあいさつの中で、
“最先端の産業です”とあ
りましたが、こういう風に捉えて頂ける日が来るということは夢にも思っていま
せんでした。
そういう意味では、その本質を継承して、日本の文化の本質的なものを保持して
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いるものであればなんでもいいのじゃないか、なんでも魅力であり得るのじゃな
いかと捉えています。一方、同時に逆のことも耂えています。
あるものだけ見せれば、それは魅力かっていうと、そうではない時代に来ていて
いると感じています。先ほど工芸の世界でいろんなものが混ざり始めているって
いうお話をしたのですが、そのものだけがそこにあるのじゃなくって、やはり“ど
うやって作られか”
、“誰が作った”っていうこともそうですし、それが“一体ど
うしてそこに生まれてきたのか”
。色々な体験の中で、そのもの自身が理解されて
いく。そしてこの文化の中で理解されていくという、文化的な体験の中で見せて
いくということが必要かと思います。
いろんなものが混ざってきているので、その深みを見せて、コーディネートして
いくかっていうことも重要ではないだろうかと耂えています。両極端なのですけ
ど、そんなふうに感じています。
福永:
朽木さんは私と同じツーリズムの世界でご活躍ですが、富裕層旅行という、日本
であまりなじみのない言葉、金持ちばっかり優遇するのかと聞こえがちなマーケ
ットなのですが、そうではなくて、本当に自分たちがどういった魅力を持ってい
るのかっていうことをあらためて発信し、本物を見る目を持つ人たちに対して自
分たちはプレゼンテーションしていくという非常に意義のある、価値のある事業
だと思います。日本が、世界の富裕層旅行市場の中で、日本の魅力をどのように
売ってらっしゃるか、どのように伝えて販売されていますか。
朽木:
先ほどデータをお見せしましたけども、日本は世界に比べて、まず訪れている外
国人旅行実が圧倒的に尐ない地だということなのですね。逆に言うと、まだ世界
のラグジュアリーマーケットでは、日本っていうのは非常にミステリアスだと、
未知の国だと認識されています。同時に、潜在的な魅力があるマーケットだとい
うことは肌で感じています。
例えば旅館であるなど、今まで一生懸命かたくなにやってこられたところ、なか
なかマーケットの縮小でうまくいかないところ、たくさんあると思うのですが、
一見そういった国内だけ見てだめなところがですね、海外に目を向けた瞬間に、
ブレイクするといったことも十分あるのではないかなというふうに思います。
というのは、海外の富裕層マーケットではアクセスが悪いところは、逆に受けが
よかったりするのですね。先ほどみたいに道がない、道路がない、船も行けない、
空からしか行けないとかも非常に受けたりするわけです。ですから、新幹線に代
表されるように、ついつい私たちは利便性を重視しがちなのですが、新幹線が着
いたら必ず観光産業が盛り上がるというわけでもあながちないのではないかなと
感じています。
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ですから、今まではアクセスが悪くてだめだったところがですね、どんどん逆に
海外に目を向けた瞬間に、いろんな方が世界各地からいらっしゃるということも
十分あると思いますし、そのギャップにビジネスチャンスがあるのではないかと
耂えています。
福永:
金沢は1つのデスティネーションとしてのポテンシャルはいかがですか。可能性
はありますか。
朽木:
ニッチ産業が好きなので、ポピュラーなところはあんまり好きじゃないものです
から、金沢がまだ世界では非常に知名度が低い。ですから、知らないと言われる
からこそチャンスがあるわけですし、面白い。連れてこようというふうに、こう、
燃えるわけなので、
“おれ、京都知っているよ、東京知っているよ”ってなると、
あんまり魅力を感じないですね。金沢は实際に、魅力的な町だと僕は思っていま
す。石川県も非常にポテンシャルが高いと思っています。ですから、こんなポジ
ションのわけがない、まだまだ大きく伸びる可能性は秘めているというふうに感
じています。
福永:
すごいポテンシャルはたくさんあるし、どうしてこんなに外国の人が来ないのか、
ものを買わないのか、私は非常にいつも不思議なのです。秋元さんは直島にいら
っしゃって、アート、モダンアートの部分では全国でも非常に素晴らしいご活躍
をされているお一人でいらっしゃいますけど、直島は世界の旅慣れた人たちで、
アートにちょっと造詣のある人たちで知らない人いないですよね。
今、金沢で 21 世紀美術館は素晴らしい評判ですけれども、アートがデスティネー
ションを切り開くというか、アートが人を引きつけるとかいう部分で、訴求力が
あるのですけども、これを生かして、金沢を盛り上げるために何かをすると、ど
ういったことがアートとしてできるのでしょうか。
秋元:
私自身の個人的なテーマでもあるのですけれども、直島のときに、やれたことと
やれなかったことっていうのがあって、やれなかったことを金沢でぜひやりたい
というふうに思っています。
1つは日本の歴史と現代美術を完全に接続させるっていうことです。これは实に
個人的なテーマなのですけれども、日本文化って、やっぱり非常に重たい、ある
種いろんな宝はあるけども、同時に、世界的な標準からすると、理解しづらかっ
たりとか土着性が強かったりとか、いろいろとハードルがある。さきほど、日本
文化の魅力みたいな話がありましたけども、日本文化の魅力を耂えるときの耂え
方を、ちょっと1回整理したほうがいいかなというふうに思っています。
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1つは日本文化を耂えるパターンは、日本的なものを思い描いて、ここが日本的
だなとか、ここが伝統的だっていうふうにして、特徴を抜き出し、その延長線上
で、その次にくるものを想定しようとします。つまり、日本的なものっていう見
方の型を作って、それを次に展開しようとするこれは日本のよさでもある。例え
ば能にしても歌舞伎にしてもフォームっていうのが非常に重要なので、日本の文
化の1つの特性だけども、海外に持っていくときには結構これ、難しいところも
あるのですね。
海外の人たちの耂え方の特徴は、“新しいものを作りました”“なんだかよく分か
らないけど新しいものができました”。そそて、これはなんだろうかというふうに
自分が説明をするときに歴史を参照するわけです。つまり、まず自分が新しく作
り出すこと。作ったものを軸にして、それがどういうふうな歴史的な背景をと結
びつけられるかというふうにして、自分の目の前にあるものを前提としてバック
グラウンドを耂えるのですよ。というのは、非常にスピード感を重視するからで
す。スピード感がないと言語化はできないわけですよ。だって、今みたいに日本
の型を完全に理解するとかですね、实際に無理なわけだから。
例えば高木さんが深さというような言い方をしたけども、そう簡卖に他国の人間
の文化的な背景なんか、簡卖には理解できないでしょう。これはもう日本文化だ、
だけじゃなくなって、われわれが、イスラム文化が分かるかといったら分からな
い。一生かけたって分からない。もっとやっぱり目の前のことで耂えていかなく
ちゃいけない。
つまり、われわれが、グローバルな世界の中で持っているような感覚の中で、そ
こにある種の地域性が出てくるのは当然のことだと思う。だから、直島のときに、
私がなぜ外人訴求できたかかということは、それを徹底的にやったからですよ。
つまり、現代アートっていうのはそういうものだと腹をくくったから。つまり、
今っていうものを問題にしているので、それがどこから来たかっていうのはあと
の話で、もう当然それは日本でやっているのだから日本的なわけですよね。それ
はでも、われわれの問題であって、見る側の問題、例えばアメリカ人にとってみ
れば、それは面白いかどうかでしかないので、つまり、彼らから見れば、ことさ
ら日本である必要もないわけですよ。
先ほどの朽木さんの話じゃないけども、言ってみればばらばらのニーズなわけじ
ゃないですか。その中に、日本を好きになってくれとかではなくて、まず、今の
われわれが現代アートで作り出している新しいものを見てくれと思っていました。
そこにどういう説得力があるのかとうこと、それが日本製とか日本文化とかって
いうことになると思います。
福永:
ありがとうございます。本当に素晴らしい耂え方だと思うのですよね。本当は文
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化という言葉ではなかなか、まあ、言い尽くせない部分も深さもあるのでしょう。
外国の方はもちろん日本の文化は理解できないし、われわれも分かりにくい中で、
ただ、その文化の一端に触れることが感動を呼び、实際にビジネスを回して言っ
ている。桐本さん、先ほども色々な作品をご紹介いただきましたが、外国の人が
魅力に感じている部分はどこでしょうか。また、ストーリーですとか歴史につな
げるだとかありましたが、いろんな素晴らしい製品を販売される中で、そういっ
た金沢の歴史、輪島の歴史などとのつながりを意識されて、お実さんにお話しさ
れるのでしょうか。
桐本:
それぞれお話しされているように、やはり、歴史的な背景ですとか、どういう耂
えでこれを作ったのかとか、で、機能としてこういう機能もある。特に使い方で
すよね。また、メンテナンス、修理、ずっと使い続けられるという日本の当たり
前の道具の文化、それを正直に伝えています。
漆器は安くないのですけど、まあ、できるだけ使うということならば、使うこと
に徹底して、シンプルで、しかもきれいであるというものを正直に見せていけば、
おのずと海外の人、日本の人はしっかりと反忚してくれるのじゃないかなと、自
分で信じてそうはやっています。
ただ、ジャパンブランド事業なんかを見てい
ますと、海外に持っていく業界の中で、やはり代用品を漆器風に見せる。何々風
に見せて海外に持っていっている。高額になるからという理由で、風に見せる業
界がいる。
経済産業省さんが認定しているわけですから、仕方ない話で、まあ、そういう世
界もあるのだろうなと、業界の事情もあるだろうし、なんだろうと思いますけど
も、それではクール・ジャパンにはならないと思います。卖純にきれいで世界の
どんな人が見ても“あー、いいじゃないか”って言われるものを作るためのトレ
ーニングをやっていくことが必要なのではないでしょうか。
福永:
ありがとうございました。発信という言葉がありましたが、事業をやらせていた
だいていて、世界中いろんなところにいて感じることは、日本の情報が本当に無
いのですよね。こんなにいいものがたくさんあるのに、本当に誰も知らなくて、
旅館なんて非常にショッキングなぐらい知名度が無い。私が創業した8年前はほ
とんどの人が知らなくて本当に困った経験があります。それについて、先ほど朽
木さんのお話でも、金沢の知名度がまだまだ低いということもおっしゃっていま
したし、吉五さんも世界中を回られて、伝統工芸を代表されていろんな国を回っ
てらっしゃいますけれども、情報を発信していく中で、何をしなければいけない
と思われますか。
多分いろんな方が、もっともっといろんなものを知れば、もっともっと日本に、
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そしてこの地域に注目するだろう。そのためには何をしなきゃいけないのでしょ
うか。吉五さん、一言いただけますか。
吉五:
一般論っていうのはちょっと難しいのかなっていうことは、感じてはいます。も
のすごく基本的なことなのですけども、やっぱり日本人って海外とかに、割と出
無精っていいましょうか、あと一歩踏み出すことでいろんなことが見えるのに出
ていかない。そういうところに行ってみようと、まず耂えることが大切ではない
のかなっていう気がします。
例えば、これは全然話が違うかもしれませんけど、仕事で中国に最近よく行くよ
うになったのですが、広州っていう地方都市なのですけども、最近行ってびっく
りしたのは、ケニアから直行便が入っていて、黒人の方々みんなスマートフォン
持って立っているのですね。ケニアというと、一昔前までは危なくて、とても行
けるようなところではないし、ヨーロッパ経由じゃないと行けないっていう印象
だったのですけども、それを見ただけで中国がどれだけ積極的に動いているのか
発想できる。
そうすれば、今度われわれは中国人を使ってケニア人を使うことができるのじゃ
ないかということも次に発想できるわけで、そういうふうにちょっと出て行くこ
とで次の一歩が見えてくるっていうことがあるのかなっていうのは1つ思います。
それから、本質的なものをやっぱり高める必要があるのではないかと思います。
本質的な良さがないところに、良さを感じ取ってくれるっていうことはないので
はないでしょうか。見せ方はもちろん重要だと思うのですけれども、コアの部分
がちゃんとしていなければ、その良さを感じ取ってもらえない。ものづくりに限
らず、いろんな分野で、その人たちがその本質を高めていくっていうことは、絶
対重要なことではないか。
その上で、国であったり人であったり、人種であったり文化であったり、様々な
人たちがどうやって見るかっていうことを、ちゃんと耂えながら、その人たちが
関心を持つもの、その人たちが面白がるもの、そういうものを今度どうやって見
せるかっていうところに次のステップで持っていく。そんなようなことが、本質
的にあるのではないかなと思ってます。
福永:
本質という中では、高木さんのさっきのご講演にもありましたとおり、和食、例
えば、寿司を握ったことがない人が寿司職人として世界にいるという中で、日本
食というのは世界でやっぱりすごく認知度もありますし、ニューヨークでは本当
におしゃれな和食のレストランがどんどん建っています。また、日本、和食のレ
ストランを1階に入れて、それを1つの、非常にスタイリッシュなアプローチと
して、使われていたりします。いろんな分野に比べると、日本の食っていうのは
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非常に世界で認知されているように見えますけども、高木さんとしては、情報発
信というものにおいて、日本食をどういうふうに訴求させていくのか。また、こ
の地域のブランディング、地域の活性化、そして海外のお実さんを迎え入れる上
で、食という分野が、担う責任というか、役割というか、そこら辺はどういうふ
うにお耂えになりますか。
高木:
どの時期と具体的にはちょっと申し上げられないのですが、やはり日本料理イコ
ール京料理というイメージが、日本人の間でも根強かったのはすごくあると思う
のですね。近年、そうじゃないといろんなところから言い始め、いろんな料理が
あって、その集合体が日本料理だということをようやく日本人が理解し始めたと
いうのが、本当のところじゃないかなと思っています。ですから、それが外国人
に理解されるというのは、相当時間がかかると思うのですね。
また、私は情報発信ということ、訴求ということに関してはですね、日本発で世
界中に情報を発信、インターネットを使えばいろんな意味で楽なのかもしれませ
んけど、私は、基本的には発信し続けることは無理だと思うのですね。
それよりも、世界各国にあるいんちき日本料理、いんちき寿司屋も含めてですね、
そういうところが、例えばイスタンブールにある寿司屋が、イスタンブール風の
寿司を開発すればいいですし、ニューヨークの寿司はニューヨークなりの寿司を
作っていけばいいと思うのです。でも、その寿司というのは日本の、日本がオリ
ジンであるということをきちんと、これは政府としてなのか、料理人としてなの
かは分かりませんけれども、やはりきちんと定義して、各国流の寿司に植え込む
ことがまず大事だなと思うのですね。そうして本家はどこだということをきちん
としておかないと、今、何に気をつけなきゃいけないかといいますと、料理のい
ろんなワークショップとかありますけれども、いろんな外国人シェフが、発酵技
術とかですね、麹だとか、みそだとか、しょうゆだとか、日本料理の基本的な、
その食材自体のメカニズムをきちんと把握した上で、さも自分が扱っている技術
としてやっているわけですよ。残念なことに、私もそれをきちんと英語でプレゼ
ンテーションすることはやはりできないのですね。なんとなく分かっている、で
も、そのなんとなく分かっていることをやはり外国の方がきちんと定義付けてし
まっている。これは、日本がオリジンだということを言わなくなったとき、日本
じゃなくて、どこか別のところがルールを作ってしまって、寿司の定義をしてし
まったら、われわれは本家本元じゃなくなっちゃうわけですね。これ、寿司じゃ
なくても、ラーメンでもなんでもそうだと思うのです。ですから、私は情報発信
ということに関して言えば、既にあるネットワークなのか、キーポイントなのか、
キーパーソンなのか、そういうところを使ってですね、とにかく、日本の食から
来ているのだということ、そこをまず定義付けること、そしてそれをアピールす
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ること、PR ではなくアピールすることが大事だなと思いますね。そのあとで情報
発信していくことが、必要なんじゃないかなと思っています。
福永:
先ほどのご講演の中で、日本政府の若干縦割りぎみな、各省庁間の微妙なお話が
ありましたけど、例えば観光からすると、今、国土交通省が観光庁を持っていて
やっていますが、観光庁のゴールはどっちかといえば人を増やしていくことにあ
る。どんどんどんどん空港に入る人の数を増やしていき、何年か後に 3,000 万人
にしましょうというものです。それはそれで素晴らしいのでしょうけど、でも、
果たしてそれで本当にその日本の産業が文化として、文化力がついて、産業とし
てちゃんとしたものになるのかという答えが全くないわけですね。私もこのラグ
ジュアリートラベルマーケット研究会という経済産業省の、一線を画した観光の
プロモーションの委員会を5年前からご一緒させていただいているのですけども、
今回のクール・ジャパンのコンセプトは非常に素晴らしいと思うのですね。観光
は観光の担うところ、食は食の担うところ、伝統工芸は伝統工芸の担うところ、
みんなそれぞれ日本というキーワード、日本文化というキーワードを、ストーリ
ーを持って、それが1つの傘の下で同じブランドをみんなが語り合い、日本の価
値自体をみんなで底上げしていこうと。お実さんのマーケットも、それぞれ持っ
ているマーケットをみんなでシェアすることによって全体の力を上げていこうと
いう素晴らしい取り組みだと思うのですけれども、これが本当に机上の空論では
なく、本当に实質的に、素晴らしい事業に発展していけばいいなと本当に願うば
かりです。せっかく金沢から素晴らしい方たちに来ていただいていますので、こ
れから日本国政府が日本ブランドということ、私は、日本は絶対に安物にする国
じゃないし、観光とすれば、もうアジアで一番のコンテンツがあると信じている
のですけども、皆さんの観点の中で日本政府が、日本が、この日本を売り出すと
いうことに対して何をすべきか、という部分の提言をいただければと思います。
秋元さんいかがでしょう。
秋元:
先ほどの発信の問題と絡めてちょっとお話をしたいのですけども、ジャパンブラ
ンドっていうふうな非常に大くくりな、そういう全体をプロモーションしていく
っていうことはやらないほうがいいだろうというふうに私は思っています。多分
できないだろうというふうに思っています。クリエイティブエコノミーの問題、
つまりビジネスの問題であるためです。これは民間がやっぱりやるべきことで、
国が指導することではないというふうに私ははっきり思っています。民間の力で
突破する、つまり自分たちの商品力、個々のクリエイティビティで海外に売って
いくという、实にごく当たり前の商いの話です。
重要なのは、これはさっき高木さんが後半に言ったことですが、つまり寿司はど
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こから来たか分からなくなるということに対しては、国がぜひやるべきこと。こ
れは商売をやっている個々の人間だけではどうしようもない、つまりもう尐しポ
リティックスな話になってきます。これは、实に巧みな外交戦略みたいなものに
なってくる。ここでやり込められると、前線でやっているビジネスそのものが解
体していってします。過去の事例を出すと、明治期に国が为導して海外の外貨を
獲得していく際、最前線に立ったのは实は工芸です。工芸がまず、日本が貧しか
ったときに、日本に外貨を獲得してきた、まさにそういうものだった。ところが、
その工芸はいち早く倒れた。なんで倒れたかというと、国があまりにも指導しす
ぎたからです。私が今恐れているのは、このクール・ジャパンの動きが、またも
う1回、明治期の工芸振興、つまり国が瀕したときに、その国が最前線に立って
民間を指導していったときに犯す間違いをまた犯さないかということです。経済
産業省の皆さんのご協力でこういう場を設けているのですけども、民間の人間、
つまり個々にやっている人間はやはり自分の力で立たなきゃだめです。その中で
自分が抱えているビジネス、それが伝統産業に関わっているから伝統産業の問題
のように見えるけれども、そうではなく自分のビジネスの問題、あなたのビジネ
スのやり方の問題としてどこまで突破できるかっていうことをまず耂えることが
必要です。そして、国に要望することは、それがどこから来ているかっていうと
ころはちゃんと押さえてくれということ。つまり、版権の問題とか、著作権の問
題が出てくると思う。例えば实際にあったことですが、楽焼っていうのは明らか
に日本の焼き物です。しかし、今ヨーロッパも含めて欧米に広がっている楽焼は、
アメリカン楽焼です。つまり、ヨーロッパ人の金持ちも楽焼っていうのはアメリ
カの物だと思っている。こういうことが怖い。この辺のところは、やっぱり民間
の人間ではできない。だからこそ、そういうことに関して、国が発言していくと
いうことがすごく重要と思われます。
福永:
ありがとうございます。時間もなくなってきましたので、最後に朽木さんにお聞
きしたいのですが、これから地域産業に対し、いろんな意味で観光というのは、
責任が大きくなってくると思うのです。ましてや外国人を日本に迎え入れるとい
う、今までに日本がやったことのないようなことを、今、一生懸命やろうしてい
るわけです。私もその事業者の1人として、何故日本に来るかということ、お実
さんのニーズを耂えると、やはり素晴らしいものに触れたいから、今まで知らな
かった文化に触れる、漆器や伝統工芸やアートや、いろんなものに触れて自分の
その気持ちがさらに豊かになるということを求めて、日本にどんどん人が入って
くると思うのです。観光という分野は、やはりいい形でほかの産業の協力をいた
だき、手を組み、コラボレーションし、日本ブランドを高めつつ、人の誘実を行
っていくということになります。今まで観光というのは飛行機に乗ったらいい、
14
ホテルに泊まったらいいというだけでした。やはりしっかり日本の文化を意識し、
理解し、お金も使っていただくというところに持っていかないといけないのです
が、朽木さんとしては、国の施策として、これからクール・ジャパンがどのよう
なものであってほしいかという部分がもしあれば、ぜひこの場でお聞かせいただ
きたい。
朽木:
観光の分野に関しては、とりわけ観光庁、国土産業省ということなのですけども、
このようなクール・ジャパンという1つの産業ということで、観光分野を取り上
げていただいているというのは非常にありがたいと思うのですね。
日本の歴史
上、観光産業というのは、日本はものづくりの国だということで、どうしてもス
テータスが、低かったかなと思うのですね。僕は今一度、これから日本を支える
ために観光業っていうのは大きな柱になるのだと、全産業を支える効果を持って
いるのだといったことを、認めていただくためにも、やはり多くの外国人の方に
日本に来ていただきたいと思うのですね。
もう一つは、数の話も今日しましたけれども、数だけではないと思うのです。先
ほどから言っている富裕層というのは、卖にお金持ちのことを言っているという
のではないと思うのですね。よく海外ではラグジュアリーマーケットっていう言
い方をしますけれども、彼らをなぜ受け入れるかというと、彼らを受け入れるこ
とこそが質を高めることになる、本物は本物であり続けるために彼らを受け入れ
るということだと思うのです。多尐曲がったとしても、また本物に戻ってこよう、
本質を取り戻そうという流れになるということが大きな利点だと思うのですね。
もう一つは、外に発信ということで言いますと、ラグジュアリーマーケットでは、
人が人を呼ぶのですね。人が必ず大きな発信力になって、効果として戻ってくる
っていうことが一方であります。ですから、自らを磨くこと、自分たちの質を高
めること、更にそれがお実さんを呼ぶことにつながるということがラグジュアリ
ーマーケットを訴求するっていう効果だというふうに思います。ぜひ国は、数ば
かりの話をせずに、ぜひ質を高めるのだといったところの支援もお願いしたいな
というふうに思っています。
福永:
ありがとうございます。最後に高木さん、いかがですか。国の施策に対して何か
ご意見があれば。
高木:
私は本物という言い方が、非常にあいまいに使われることが多いと思うのです。
ことビジネスということを耂えたときに、本物は必ずしもお実さんの魅力になる
ことはないと思うのですね。最近はいないですが、以前はガイドブックを持った
外国人が、ばっと、来て、2,000 円でご飯を食べさせてくれと言われ、何も出せな
15
いと伝えると、うなぎのたれとご飯でいいと、そういうことを言う人がたまにい
ました。われわれが押し付けるのではなく、やはり外国人が魅力に思うことを、
それをわれわれが魅力だと思わなくても、ある意味わざと見せて差し上げること
も大事なのかなという気はするんですね。日本はこうだから、日本文化はこうだ
からではなく、カスタマイズというか、ほんの尐し間口を開け、角度を変えてあ
げたりすることが大事だと思うのです。とにかく日本のこれはいいのだ、という
ことではなく、きちんとそのマーケットのニーズを、実観的にとらえることも、
やはり耂えていくべきじゃないかなと思います。
福永:
ありがとうございます。まだまだ本当にディスカッションし足りない部分があり
ますが、時間の問題がありまして、そろそろ質疑忚答に入らなければいけません。
本当に皆さん、非常に情熱をお持ちの方たちなので、この地にこういう方々がい
るというのは本当に素晴らしいことですし、金沢が発端になって、いい形で日本
を動かしていくようになればいいなと本当に心から思います。
それでは質疑忚答を始めさせていただきます。せっかく今回、こういった方にお
越しいただいています。皆さまもそれぞれの分野でご活躍されていることと思い
ます。その中でなんでも結構です。パネリストの方たちへの質問なり、ご自分の
意見なり、国に対しての提言なり、地域に対しての提言なり、なんでも結構です。
何かご質問等ございます方いらっしゃいますか。お願いします。
佐藤:
佐藤と申します。専門は健康のことです。今出られたパネリストの素晴らしいご
意見を基にして、ですね、私の提言といたしましたらこういうことです。21 世紀
は世界の人々、日本とかヨーロッパだけでなくて、その生命に対する、自分の命
に対する意識が変わらざるを得なくなったのですね。それは 2000 年にヒトゲノム
解析で、人の寿命が 120 歳と分かった。これをどうシフトするかっていうのは、
各個人ですけれども、皆さんが言う富裕層ほどその意識が早く、120 歳という自分
の生命に重点をシフトします。そのいわゆる 60 歳以下の富裕層は、生活をどのよ
うに質の高い、ものにしようかと思うとき、富裕層ほど世界に目を向けます。そ
のときに、健康の食品はどこで求めようか、健康を保持するときの体操はどこで
求めるかということについては、ものすごくそのニーズがあるわけです。それが
この 21 世紀、日本が文化としている、皆さんがおっしゃっている食、工芸品、あ
るいはここでは出ていませんけれども、私は日本のマーシャルアーツ、いわゆる
伝統武芸、それがいかに、生命を維持してきたかということの、提供もできるわ
けです。ですから、皆さんがおっしゃっているもの、日本の持っているものが 21
世紀の人類のニーズに、富裕層のニーズにどう忚えていくか、食も、健康食も、
その素晴らしいものを日本が持っているということを各自の業界が認識をなさっ
16
て、それを世界に向けて提供できるということに自信を持っていただきたい。
これは官が関与するものではありません。それこそ秋元先生がおっしゃるように、
官はそういう潜在能力を発揮するときに、支障にならないよう、底力として支え
るというのが官の仕事だと思います。
福永:
貴重なご意見ありがとうございます。ほかにいらっしゃいますか。どうぞ、なん
でも。結構です。お願いします。
大沼:
私、株式会社ヒロの大沼と申します。今日は、工芸とか食とかをメインに聞かせ
ていただいたのですけども、私は石川県で 75 年間、
縫製業をやっているものです。
石川は繊維産業の石川と呼ばれており、縫製についても昔からやっているのです
けれども、やっぱり助成金を取るとか、動くときというのは、とても伝統や工芸
は金沢で、優遇されやすく、比較して縫製業であるとか繊維であるというのは、
まだまだそういう分野が尐ないと思うのです。
金沢には金沢ブランドというものがあるのですけれども、今年その大賞を受賞さ
せていただいたときに、100 万円の助成金がついたのですね。そのときに、とても
うれしかったのです。自分が、おじいちゃんの代から続いている縫製業をどうし
ようかと耂えていたところだったので、世界に飛び立ちたいとすごく思ったので
す。でも、その助成金の説明を金沢市に聞きにいったところ、自分は海外にどう
しても行きたいのだ、展示会に行きたいのだということを行ったら、海外に出て
も意味がない、お金がかかるだけだ、そんな大変なことしてどうするのだという
ふうに言われたのです、旅費とかも出ないしという感じでした。今回この、クー
ル・ジャパンというのは、私もずっと興味があったもので、本当に自分が世界に
出たいと思っていました。私がやっている、今の洋朋づくりというのは伝統工芸
の方とものを一緒に作る、加賀友禅のシャツを作ったり、金沢の和紙の素材で洋
朋を作ったりとか、金箔を使ったりとか、九谷焼のボタンを使ったりとか、そう
いうことをやっているのですけれども、その金沢市のお話を聞いたときに、がっ
くりしたのです。自分が、クール・ジャパンとして入れる人間なのか、そうじゃ
ないのかというところがすごく不安であり、今日この説明会にぜひ来させてもら
いたいと思って来たのですけ。海外へ出ていくことに関し、国はどういう動きな
のかというのがすごくありまして、それをご質問させていただきたいと思います。
福永:
本当に皆さんものづくりでもなんでも、本当に素晴らしいコンテンツがあって、
それが一番前線に出て日本のブランドを作っていかなきゃいけない、日本を売っ
ていかなきゃいけないというのはもう明らかなわけでし。はい、お願いします。
17
吉五:
別に国の立場で話すわけではございませんけれども、私は国の役割として、県も
市もそうですけども、役割として、ちょっと失礼な言い方かもしれませんけど、
やはり資金は要ると思います。私どもも、現实にご助成を受けていますし、例え
ばアメリカは、アップルですとかマイクロソフトですとか、大きな産業が立ち上
がってきたときに、相当の資金を、何十年も前に投資してきた。そのお金が、实
を結んでアメリカでああいう大きな産業が育ってきたというふうに言われており
ますので、私はある程度の資金投入をいろんな、今の方がどんなお仕事をされて
いるのか分かんないのですけれども、いろんなところにきちんと見た上で、です
ね、本当に価値があるということを先入観なく見て、やっぱり助成して資金投入
して育てていく、最初のところはやっぱり期待したいと思っております。
また、民間企業的な言い方になりますけども、金は出すけど、口はあんまり出さ
んといてほしいというような、そういう部分というのは1つ事实としてあるんで
はないかなというふうに、ちょっときつい言い方かもしれませんけど思います。
桐本:
あの、そのお金の使い方って、何かこう、限定があるのですか。
大沼:
一忚展示会に対するものです。もちろん旅費とか出ないのはいいのですけれども。
桐本:
展示会に使いなさいということなのですね。
大沼:
国内の展示会のみで、販路開拓に動くためのお金なのですけど、それがちょっと
難しい使い方だなと思ったのです。すごくうれしかったのですけれども。
桐本:
1つは説得するしかないですよね。言ってきたのは担当者だと思うので。
大沼:
そうですね。ただ多分海外の展示会でも出してもらえると思うのですけど、その
言われた言葉に対して、私がちょっと唖然としてしまった部分がありまして。
桐本:
あんまり気にしないほうがいいのじゃない。
大沼:
ありがとうございます。
桐本:
それはその担当者だけの話。やる気があれば自分でそんな補助金なんかとは別に
行動すればいい。今もらったのはたまたま運がよかっただけですから。
大沼:
そうですね。
桐本:
私も1回だけもらって、本当にわずかですよ、わずかだけども、とてもありがた
かった。出ていくきっかけになったし。だけど、旅費も自分でそりゃ出さないか
んし、飲み食いは出ないしね。だけど、やる気があればすぐやればいいんですよ。
すぐやって、うまくいくわけはないと思いますよ。特に朋飾なんか大変やと思い
ますけど、でも、やらないと何も起こらない。つまり、やるために常にトレーニ
ングするのですよ。いつも意識してトレーニングして、そうすれば必ず来ます、
チャンスは。
福永:
まあ、いずれにせよ海外に出て行くことを阻止するような動きっていうのは絶対
18
にあったらいけないし、この国はそれをなくして、これからどうやって生きてい
くのだろうということが重要なのです。大高参事官、ぜひクール・ジャパンにつ
いて、しっかり国が旗を振っていただき、地域の方たちも仕事において、どんど
んどんどん皆さん海外に出て行けるようなインフラを構築していただければとい
うようなことでございます。
はい。それではちょうど時間にもなりましたもので、これにて、パネルディスカ
ッションを終了させていただきます。私もちょっとつたない進行で、なかなか皆
さんのお知りになりたいこと、疑問に思っていることを引き出せたかどうか分か
りませんが、本当にこのクール・ジャパンという耂え方は非常に深くて、これか
らもっともっと、経済産業省さんも、いろいろと事業を進めていかないといけな
い部分なのですが、やっぱり基本的には、この国の魅力を伝える部分では、本当
に素晴らしい皆さんのお力と、コンテンツの力が絶対に必要です。観光において
も、観光が1つ、日本のセールスポイントになっていくような形の意識の改革も
していかないといけない。またそれ以上に本当に素晴らしいものを持っています。
世界から見ていますと、日本には本当に素晴らしいものがたくさんあるのに、世
界の人が知らない。日本人自身が、やっぱりそれを認識してないというような大
きな問題もあります。なので、国に関しては、秋元さんがおっしゃったように、
しっかり国としてインフラを整える。皆さんが世界に出て行くために、弊害にな
らないようなものを作っていく。民間は民間で、やるべきことをやらなければい
けない。自分たちの商品に自信を持ってどんどんどんどんチャレンジしていかな
いといけない。そういった声が、世界に向けての声が大きな日本のブランドを呼
んでくるのかなと、感じました。
非常に短い時間で、まだまだディスカッションが足りないような形で、ございま
すが、また次回こういった機会を作っていただいて、皆さんとこういったディス
カッションをして、いい事業に、いいクール・ジャパンにしていければなと、思
っております。
長い間、ご清聴をどうもありがとうございました。
(了)
19
第 2 回 地域オープンミニシンポジウム IN 京都府
パネルディスカッション議事録
日時:2012 年 2 月 3 日(金) 14:00~16:00
場所:高台寺 方丈の間
参加者:ファシリテーター
福永浩貴
パネラー
岡田辰雄
尾崎靖
梶浦秀樹
後藤典生
徳岡邦夫
細尾真生 (敬称略)
福永:
よろしくお願いします。皆さん、どうぞよろしくお願いします。クール・ジャパ
ンというこの動きが経済産業省から出てきまして、私としては、非常に素晴らし
い取り組みかなと思います。まだ具体的な部分は手探り状態で、こういう会を通
じて、いろいろなものを吸収し、成長していくのかなとは思っています。私は日
本旅館のコンソーシアムをやっております。世界中で日本旅館の素晴らしさ、日
本文化の素晴らしさを伝えております。1000 年以上も超えて、家族経営でずっと
なってきた5万件を超える旅館、民宿は、産業としてこの国に存在する。先進国
に、この宿泊産業で、こんなストーリーがある国はないのですね。このストーリ
ーに世界中の人は今、飛びついています。でも日本旅館だけじゃないと思います。
日本の素晴らしい繊細な自然、それを背景にして培われてきた文化、それをつく
ってきた日本人。私は世界一だと思っております。
先ほどからお話がありますけれども、世界一のコンテンツがうじゃうじゃこの国
にはあると思っています。ただ、外国の人が、我々自身もそうなのですけど、そ
れに気付いていないところが一番大きな問題じゃないかなと思っています。私は
この国を世界一だと思って、また、この日本の中で、京都というのはさんぜんと
輝くシンボルだと思っています。ハリー・ウィンストンのお店があるとしたら、
そのハリー・ウィンストンのお店が日本です。そのお店の真ん中で、こうこうと
輝く一番高いダイヤモンドが京都じゃないかなと思っています。世界の人たちは、
当たり前のところがあるのにもかかわらず、まだまだ知られていないのは非常に
歯がゆい現实であります。このクール・ジャパンというものを通じて、今回お集
まりいただいています伝統工芸の方、食を代表する方、観光の方、そういった産
業を超えた取り組み、手と手を取り合ったコラボレーション、日本のブランドが
何たるものかというメッセージを発信できればいいなとは思っております。そん
な論議がここでできていけばいいなと思います。
20
私は東京の人間でございます。お仕事で京都の皆さまには非常にお世話になって
おりますが、先ほど申し上げたとおり、京都は非常に素晴らしいコンテンツ、文
化、人、すべてがここに備わっていると思っています。果たして、京都の方たち
が、皆さんどういうふうに感じていらっしゃるか。京都に住んで、京都を培われ
てきた皆さま、活躍されているご本人の方々が、まず京都をどんなふうに思って
いらっしゃるか、そんなところからちょっとお聞きしたいのですが、梶浦さん、
いかがでしょうか。
梶浦:
東京で生まれ育って、8年ほど前に京都へ来て、こういうことをしていますけれ
ども、東京の人間からすると、京都ってあこがれの場所なのですね。高台寺さん
もそうですけど、素晴らしいお寺があって、お寺のお庭ってまさにアートですし、
すごいなーっていつも思います。それから、本当に掃き清められて、きれいで、
美しくて、その凛とした空気というのは、東京じゃなかなか味わえないものがあ
る。
また、私ども町家を通じて商売していますが、京都の町家というのがまた素晴ら
しいものでありまして、昔ながらの伝統建築であります。そこにお軸があったり、
屏風があったり、それから垣があって、季節のごとのお花がまた生けられていま
す。京都にいると、鴨川も含めて、季節をとても感じます。福永さんが言ったよ
うな四季折々の素晴らしさというのはすごく感じます。そういう魅力というのが、
東京の人間からすると、やっぱりあこがれの京都です。海外の人から見て、あこ
がれの日本になるようにという思いで、京都の町家を私ども、1つのステージと
して使っているわけですが、京都の人たちから、私がこの事業を始めようとした
ときに、いろいろなことを言われました。
「暗くて、寂しくてこんなところで商売
やってどうなるんや」と。
「あんたみたい人には町家なんて貸せんわ」なんて随分
言われましたけれども、尐しずつやってまいりますと私の家も使ってくださいよ
というお話ですとか、そっくり同じことをなさるような方も随分出てこられてお
りまして、京都の町家、京都の大事な観光資源である町が残っていくことは素晴
らしいことだなと思っています。
いまは町家に、京都の人じゃない、東京の人間だとか、海外の人だとか、あるい
は大阪や兵庫の人などいろいろな人たちがお越しくださいます。何が魅力なのか
というと、やっぱりそこの京都の暮らしの美しさというか、暮らしに根付いた文
化といいますか、伝統といいますか、そういったものが日本各地で失われ、特に
東京にはないのかなと。そういうものにあこがれて見えて、触れことによってし
みじみとする部分があったり、うれしかったり、感動したりすることがある。そ
れがまた来たいなという思いにつながっているようであります。
面白い話がありまして、2~3日ゆっくりされている方で、高台寺さんや、立派
21
なお寺があるのに結構1日家でごろごろされている方がいらっしゃいます。坪庭
を見たり、あるいは、何か買い物をしてきて、お軸をながめたり、そこでいろい
ろな話に、家族一同盛り上がったり、それで仕出しをとって、仕出しといっても
京都の仕出しは、一品一品、温かいものは温かく、冷たいものは冷たく、すてき
な器でお持ちいただきますので、料亭でご飯を食べているのとは、ちょっと違う
かもしれませんが、そういう楽しい体験ができる。そういった京都の暮らしの文
化というものを、知れば知るほど面白い場所なのかな、楽しい場所なのかな、魅
力があるのかなと。恐らく、通えば通うほど、そこに住めば住むほど、新しい発
見があって面白いところだと思います。
それに加えて、京都の面白さというのは、若い人たちが、また先ほどの後藤さん
のお話じゃないですけど、ビジネスモデルのチェンジというべきか、すてきなお
店を町の中につくってみたり、新しいファッションが編み出されてきたり、伝統
工芸が生まれ変わってきたり、私どもの町家にも、友禅の方が描いていただいた
ような、实は友禅でつくったお軸のようなものが出てきたり、それから西陣織の
すてきなものが、帯ではなくて、違う形で使われるような形をしたりしています。
つまり、どんどん、新しいものが出てきている。これも京都の魅力であり、日本
の魅力じゃないかなというふうに思っています。
福永:海外の人たちに向けても京都というのは、すごく違うステージにあるのか
なと思います。西陣のほうからごらんになって、京都のブランドというか、京都
の魅力、日本でも海外でも何がほかと違うのでしょう。
細尾:京都は世界にたぐいまれな文化経済都市だと思います。日本文化の複雑系
みたいな町でございまして、我々、私、西陣でずっと住んでいるのですけど、西
陣の町は、職人文化に根差した生活いうのがありますし、审町は町人文化に根差
した生活いうのがありますし、また、高台寺さんみたいに寺社仏閣あって、ただ、
建物があるだけじゃなくて、きちっとした宗教活動が行われている。それからお
花とかお茶の家元があって、また、能とか狂言があって、それもきちっとした文
化活動が行われている。また京都には、多くの学生さんもいらっしゃって京都の
文化と絡まりながら、いろんな活動をされている。こういうさまざまな文化があ
って、そこに経済が絡まり、生活が絡まり、相乗効果として、町全体が文化経済
都市になっている。
私も实は、ずっと西陣ということを言っていたのですが、4年間、大学を卒業し
て、商社に7年勤めている間の4年間、イタリアのミラノで生活しました。外の
目で京都を見たときに、このことをしっかりと発見したという経緯がございます。
こういう魅力というのは、灯台下暗しで気付かないことが多いのですが、一遍、
22
外の目で、外国人の目で、もう一度京都を見つめ直すと、もうさまざまな魅力が
無限にあるように思います。そこがやっぱり、京都の奥深さであり、世界にない
魅力だと感じております。
福永:
非常に積極的に海外に出られて、京都の魅力、観光、本当に实の観光大使として、
いろいろなお仕事、いろいろな役割を担われていますけど、いろいろな外国の方
にお会いになって、いろいろなお話を聞かれていると思います。その中で、京都
の魅力というか、彼らが持っている京都の関心事、どう思われますか。
後藤:
台湾のリージェントホテルで日本食のお店に入った。そこの女性が、着物を着て
おりまして、そこの支配人が「後藤さん、素晴らしい着こなしでしょ」っておっ
しゃっていました。支配人に、私、
「これを京都では着こなしと言わない」と言っ
た。「これは着崩れと言うのだ」と言った。「それはどういう意味ですか」といっ
て、
「まあええわ」と言って帰ってきた。言うたら怒られるかなと思う。本物じゃ
ないのですよね。一方で、京都の料理屋さんは本物なのです。海外は似て非なる
もので、にせもの。やっぱり京都には本物がある。これが京都の魅力。
实は去年、シンガポール、バンコク、マレーシア、行きましたときに、日本の文
化、日本の話、してほしいということで座談会を開催しました。京都大学の教授
に頼まれて、海外からの留学生にお話をしてくれと。短期留学生に対してお話を
したときに、1時間の約束が3時間ぐらい議論になりまして、通訳交えてですか
らね。こああ、これ結構受けるのだなと思った。
それからボストン美術館の関係者の方に、あるとき、お話をして、議論になった。
それから毎年、ボストン美術館へ連れていってくれる。海外の人は、日本の思想
とか、日本の耂え方、あるいは武士道、その心というものが知りたいのだな。
京都の思想。京都は思想の宝庫です。この思想を打ってみようかなということで、
このポスターをつくらせた。しかしこれ、仏教徒はご存じのように、間違いがあ
ったのですね。1つは、僕はもみじの時期、桜の時期、来てほしくない。グリー
ンで来てほしい。京都は、もみじの時期と桜だけが、海外からものすごい、桜の
時期はいつですか、もみじの時期はいつ。これだけじゃなくて、私は夏も冬も素
晴らしいということで、もみじをグリーンに変えろということが一つ。
それからこのポスター、刷ったのですけど、全部やり直しということで、なぜな
ら私が右手に数珠を持っている。あり得ない。仏教徒は左手で数珠を持つ。これ、
海外の人で、知っておられる方が見たら笑われるよと。日本の文化、今の本物で
はないポスターだということで笑われるよということで刷り直しているわけです。
要するにね、こういうことも私たち、注意しながらやるのですけど、京都には本
物の文化があるし、本物があるということです。
23
しかしね、さっきミスマッチと言いましたけれども、ちょっと言ってみれば、難
しいところあるのですね。外の人、中国の方、あるいは東单アジアの人に、桂離
宮は全然受けないのです。あの桂離宮の建物をね、中国人は掘立小屋と言いやが
るのですよ。私が見たらね、もう胸が苦しくなるほど美しい。一方で、フランス
人とかボストンの人やスイスの人分かる。受けなかった人には二条城とか大阪城
が受けるのですね。その分かるところの人、ある人は桂離宮へ連れていき、ある
人は二条城へ連れていく、こういう、それぞれ先の人によって使い分けをする必
要があるのではないかなと感じています。
すなわち京都の魅力、二条城も桂離宮もある意味では魅力なのです。しかし来る
人によって、使い分けて連れていく必要があるかなーって。京都の魅力の出し方
は、相手にも合わせていくっていうことが大事なんじゃないかと思います。
福永:
今、後藤さんのほうから、
「食は本物である」という言葉を伺いましたけど、のあ
たりですね、言わずと知れず、世界で日本食ブームです。私も行くとこ、行くと
こ、日本食のレストランがどんどん建ってきていますし、日本酒も皆さん、よく
召し上がって、もうほんとにブームとしか言いようがない状況です。その中で、
日本を代表する料亭さんとして、どうやって本物として、どうやって海外の方に、
いろいろな人に訴求を続けていかれますか。どうお耂えですか。
徳岡:
京都の魅力、私が思うのは、今までずっと話しされて、何か、耂え方、目に見え
ないものも含めてですね、思想という目に見えないものも含めて、そういうのが
あると思うのですけども、そういうのを含めてですね、京都に来ると、時間がゆ
っくり流れる感覚、雰囲気が持しているのではないかなと。もちろんロンドンも
パリも、日本、もしくは東京も京都も、同じ時間の流れのはずなのですけど、京
都に来ると、何かその時間がゆっくり流れて、日ごろはとても速いスピードで日
常生活を送っているのですけれども、京都に来ると、ゆっくりと時間を過ごせる。
例えば F1 ドライバーが、ずっと速い、300 キロでずっと走っているとどうなるか
というと、周りの景色が飛んじゃいますよね。見えない。それが車からおりて、
自分の足で歩き出すと、右も左も、上も下も、後ろも見られることができると思
います。自分のスピードで過ごせる空気感がある。その中で、今まで自分が歩ん
できたこととか、今の自分の人生、もしくは右左、上下、斜めとか、そういうも
のが何となく見える感覚というのがあるのではないのかなと。
ただ、そういう方は、後藤さんもおっしゃったように、文化度も高いというか、
やっぱりある程度の知識を持った方といいますか、耂えているというか、そうい
う人だと思います。だからそういう方に、まずはアプローチしていくことという
のがすごく大事なのだろうなと。もちろん、新興の、新しくお金持ちになった方
24
も、今の経済を動かしているので、そういう方には、やっぱりちょっと違う切り
口で、派手なというか、分かりやすいというか、そういうものを提案していかな
くてはいけないのだろうなと。
だから私どもも、お見えになったお実さま、もしくは海外にケータリング、もし
くはイベントのときに、伝わらなければ意味がないので、今、後藤さんがおっし
ゃったような使い分けといいますか、その方に伝わるような、もしくはそれを入
り口にしてどんどん中に入っていただくような方法を採らないといけないなとは
思っています。そういう中で、最終的には、そういう空気感を味わってもらえる。
その中で、食の役割というのもあるのですけれども、食というのは、料理屋さん
で出している料理もありますけれども、京都だけではなくて、日本の料理をつく
っているといいますか、根本になっているのは、やっぱり一次産品だと思ってい
ます。ただ守るのではなくて、かいが報われる環境をつくってあげるということ
が必要。
ニューヨーク、マンハッタンで、商品化をするのであれば、マンハッタンで売れ
るものをつくるのであれば、その地域に詳しい方、もしくはみんなで行って、そ
こでどう表現したらいいのかというリサーチをしながら、こっちの思いだけでは
なくて、売り先の情報、感覚、そういう習慣なんかを知った上で、商品開発して
いく。加工したものが一次産品の次の加工品として、世界に発信すればいいのか
なと。また本物、それを味わった方が、もっと本物を、さっき言ったような空気
感を感じてもらえるように、来てもらうような仕組みというか、そういう流れが
必要なのではないかなと。
福永:
ありがとうございます。確かに空気感というのはすごく大きなキーワードだと思
います。我々東京の人間からしても、私は商売をさせていただいていますので、
ちょっといろいろな方にお会いするのに、緊張して、緊張して、ぴんと切り詰め
た空気がいつもあるような感じがするのですけど、多分旅行者の方にとっても、
ここは非常に特別な場所のような気がするのです。それがすごくいいヒントにな
り、京都をさらに、日本に、世界に訴求させていく上でのキーワードになってい
くと思うのです。
岡田さん伝統工芸のお立場で、NPO をお立ち上げになられて、いろいろと京都の素
晴らしい伝統工芸、伝統産品を外にということで活動されていますけれども、ず
ばり京都の魅力、伝統工芸品を通じた京都の魅力というのをどうお耂えですか。
岡田:
着物の中の分業の技術の職人です。家紋をしておりまして、家紋というのは、い
わゆる本当に日本の精神の結晶のような、本当に完成されたデザインであるとい
うところで、日本人のものづくりの耂え方としては、日本人は縦型の気高くて深
25
く掘り込み完成させてしまうという意識が素晴らしいと思います。
伝統工芸であり、いろいろな衣食住のものに落とし込んでいっているような気が
しますけれども、ただ、縦の精神はどうしても横に弱いと。
京都流で言えば、
「分からん人には分かっていただかなくても結構です」というよ
うな部分も、若干今までにはあったのではないかなと思います。日本の伝統工芸
も素晴らしいなと。素晴らしさをどうお伝えするかというところが、今後の大き
な課題じゃないかなと耂えております。
福永:
編集者というお立場で、実観的にいろいろなものをごらんになっていると思いま
すが、京都の魅力というお話がずっと続いてきましたけれども、クール・ジャパ
ンという、この大きなお題というのは、日本ブランド、京都ブランドをどう耂え
ていくか。産業が手と手を取り合ってと思うのですが、その点いかがでしょう。
いろいろな産業、いろいろな業界が京都にもあると思いますけれども、皆さんそ
れぞれ温度差というのがありますが、それでも京都の魅力というのを皆さん共通
に理解されてプロモーションされてますでしょう。そこら辺どうでしょう。
尾崎:
クール・ジャパンということを耂えるときに、完全に外からの目を意識するとい
うことが前提にあるのですね。そのときに、海外の人がどんなことに一番プライ
オリティーというか、大切なものと耂えているかということを見ると、オリジナ
ルということをすごく大事に、どこの国もやっぱりしていらっしゃるのですね。
それで海外の人たちは、オリジナルの塊のような日本というのにすごく興味を持
っています。中国とか、ユーロ圏とか、ああいうところは、すごく戦いが多くて、
前の文化を全部消して、新しいものを構築して進歩してきたため文化がレイヤー
になっていない。
ところが日本の場合は、東大寺のお水取りの本を僕は今つくっていますけれども、
1260 年間、1回もお松明(たいまつ)を絶やさずに世界の平和のためにお祈りし
てきたという。
「耂えられない」って海外の人は言いますね。どうしてそんな続け
られるのだ。
そう耂えると、京都は日本の中でもオリジナルだろうと、こう耂えられるわけな
のですけれども、ただ、ここで問題なのは、オリジナルだからいいかということ
なのですね。そのレイヤーというのは、薄い場合は結構読み解けるのだけども、
レイヤーがものすごい多層になっている場合、どう読み解いたらいいかが分から
ないのですよ。そしたら、一番底のほうにあるレイヤーを読み解くには、かなり
の技術が、または知性が要ります。その場合、読み解くのが難しいようなものだ
と、みんな、もっと読み解きたくなって、難しいパズルを解きたいような気持ち
でどんどんトライする。それが京都に対する日本人の感覚ですが、外人の人は難
26
し過ぎて解けないパズルのように思っている。もしくは、点的にとらえている。
そうすると、板の表面上を水が流れるようにしてしみ込まないということが起こ
ってくると思います。
階層性というのは、ほんとに日本の、クール・ジャパンの結構本質に近いところ
にあるとしたら、その階層性をどのようにオリエンテーリングするかということ
が大きなテーマで、それは本当に外からの目を見ないといけない。
全然話違いますけども、海外の人と何人かお話ししているうちに、80 歳のスペイ
ンのおじいちゃんが、スペイン語しかしゃべれないのに、日光にいきたくて1人
で来ました。去年の暮れ、日光にご案内したら。外でご飯食べたいって言ったの
で、僕は、まあどこかあるだろうと思って、宇都宮にいる僕の友達に電話して、
何があるってみんなに聞いてって言ったら、多分、一番いいの「養老乃瀧」だと
思うって。世界遺産でしょうって思いました。そこはレイヤーがないのですね。
昼行ったら、夜は帰っちゃうしかない。泊まるところもない。
そのような意味で言うと、京都にはものすごいレイヤーがあり過ぎるので、例え
ば、東京の人が「ぶぶ漬け食べてってください」って言われたら、食べたらだめ
だよっていうのは、どういうことだろうって分かんないんだけども、そこに魅力
を感じるけど、外人は、全く分かんないような断層があるように思いますね。
文化がやっぱり堆積している深みまで、どのように誘導、オリエンテーリングす
るか。それは外からの目、目を見ながら、むしろ僕らがこうやって平面上で見て
いる京都っていうのを 90 度変えると、ここに歴史とか波があって、そこの波の部
分を表現しながら、1 枚の絵を見せていくような。そうすると遠近がついて、すご
く立体的な京都が見えると思います。
文化がちゃんと確实に積み重ねられているので、フュージョンじゃないのですね。
ぐちゃぐちゃになってないから、そこのとこまでどう届くかなということが、非
常に問われているのではないかなと思います。
福永:
すごくいいご意見だと思いますね。確かにレイヤー、非常に複雑なのですけど、
入れば入るほど、いろんなものが発見できるし、入れば入るほど、文化的な側面
を感じ、いろいろなストーリーを感じ、いろいろな顔が見えてくるのがこの国じ
ゃないかなと思うのですけど、ほんとに素晴らしい表現のされ方だと思ったので
すけど。
これから、じゃあそれをどういうふうに伝えていけばいいのか。みんなで何をす
ればいいのかというところに、ちょっと話を、焦点を置いていきたいと思います。
日本の観光業の話をすると、果たして日本の観光業で、どうぞ世界の人たち来て
ください。この国は素晴らしいのですよと、みんな言っておきながら、どこまで
この国のこと、文化を理解しているかなと。さっき尾崎さんがおっしゃったレイ
27
ヤーのどれだけ、何パーセントを知っているかなと。その説得力のある、分厚い
プレゼンテーションを世界でできているのかなと思います。
後藤:
宠伝は全然できてない。観光が盛んな国行ったって、京都はどこにあるのですか。
大阪に近いのですか、東京に近いのですかって、そればっかりで、もうショック
を受けているのですよ。京都のことなんか全然有名じゃないのです。まず有名じ
ゃないからどうするかというふうに耂えたほうがいい。
京都の人は、世界で一番有名な町と思っているのですよ。錯覚がありますね。そ
れから今の、どういうふうにしていくかという、投資が必要、世界じゅうの代表
雑誌の見開き5ページぐらい、国が買い取って、日本のコンテンツをどんどん、
どんどん、紹介するぐらいの、そんな大した金かからないですね。
要するに、そういうふうな宠伝というもの。これはね、一般のコンテンツはでき
ないのです。それで努力するコンテンツがありましたら希望かなえますよという
ことぐらい、そういう宠伝、これは福永さんも百も承知でしょう。私はインター
ネットより雑誌のほうが、やっぱり京都、高台寺へ来る人に訴求していると思う。
やっぱりそういうことを、予算組んで、きちんとやってもらう必要があるのでは
ないか。
どういうふうに発信するかというのは、やっぱり宠伝をしていかなければならな
い。それが1点ですね。
もう一つはね、今、JNTO は世界博とか、そんなのにどんどん、どんどん、出して
いっていますね。JETRO とここは手を組んで、きちっと世界に発信していく。それ
も世界の観光博に参加する。世界の中に参加していく ILTM も大事ですけども、そ
うじゃなくて日本で、我々は行商ですよね。物産と、それから観光を、世界じゅ
う卖独で、日本だけで行商していく、それを福永さん、やってほしいということ
をずっと言い続けているわけですから。
とにかく今は、宠伝の時期。これはコンテンツとか、我々はできないのだから、
これは国とか、市とか、府とか、きちっと予算を組んでこれをやって、参加する
ところは努力して参加する。一定はコンテンツの負担ですよ。しかし負担して、
努力するのだったら、場所は提供しますということ、やっぱりやっていただきた
い。それぐらい日本は有名じゃないです。1,000 万人なんか、なかなか超せないで
すよ。前原さんは 3,000 万人って言っていますが、そんな夢のまた夢ですわ。
福永:
ありがとうございます。おっしゃるとおりでございまして。ただ、私は日本人と
して、本当にこの国は素晴らしいと誇りを持っています。ですから絶対に安売り
はしたくないのですよ。こ外国の人から注目されて、外国の人たちに来ていただ
くというのは、これは国策なのです。その文化というものをしっかり世界に伝え
28
なければ、人なんて来るわけないのですね。新幹線速いですよ、富士山高いです
よと言ったって、もう人なんて来ないのです。そういう時代で、もう今は情報社
会の中で、世界の人たちは、本当に日本のことをよく知っています。
日本は、アジアの中では尐なくとも一番のブランドの国だと思っています。あこ
がれのブランドにすることで、いろいろな層の方たちが、頑張ってこの国に来る
ような図が、私にはもう、はっきり見えています。この5年後、10 年後。という
ことで、いろいろとブランドを高めていきたいなという活動を、個人的にはさせ
ていただいているのです。
梶浦さんも観光業のお立場として、JNTO さんのことを言うのも何ですけど、JNTO
さんには、なかなかやっぱり任せ切れない部分もあるかと思うのですけど、实際、
梶浦さんも京都の中にいらっしゃって、いろいろな京都のコンテンツ、いろいろ
な素晴らしい方たちの周りの中でお仕事されていて、どうお耂えですか。
梶浦:
結構抽象的だったのですけども、ブ一番分かりやすいブランドって、吉兆さんあ
りますよね。福永さんが言っていることは、恐らくこういうことだと思うのです。
一度は吉兆さん行って食べてみたいなー、って、多分ここにおられる皆さん、思
ってらっしゃるかもしれん。なかなか行けないのですよね、それがあこがれのブ
ランドだと思うのですね。普段、吉兆さんを日常使いにされている方、あんまり
いらっしゃらないかもしれませんけども、何かあったら吉兆さんという方は、そ
れなりの方々がいらっしゃって、次、今度こそはとか、次はと思っている方が、
潜在顧実がたくさんいらっしゃる。これがブランドの価値だと思うのですね。
京都もあこがれの土地だよと世界中から思われていると思います。福永さんが安
売りはしないとおっしゃっていましたけれども、いいものには、やっぱり皆さん、
お金払いたいのですよね。ところが今、情報がすごいですから、どこ行けば、一
番安くものが買えるかとか、一番安いところはどこ行きゃ泊まれるかとか、瞬時
のごとく分かるわけであります。その人たちは別に、京都であろうと、どこであ
ろうと、あんまり関係なくて、やっぱりほんとに京都がいいなと思う人は、先ほ
どからずっと話が挙がってくる、本物と出会いたいため、本物と何かを一緒に経
験したいとか、本物に出会ってみたい、本物を食べてみたい、本物の中で遊んで
みたいというところでありまして、ところがその本物っていうのは、決して安く
ないのですよね。その辺が、今、これからのプロモーションで一番難しいところ
なのだろうなというふうに思って、今、四苦八苦をしている最中であります。
京都の皆さんからあんな町家の使い方は本物じゃないとか、よく怒られるのです。
でも、将来、本物を目指していただくためにも京都の奥の深さとか、暮らしの深
さとか。先ほど、文化がレイヤーになっている、そういったものを掘り下がって
いくところの楽しさっていうのを見つけていただければと思っています。
29
海外のお実さまもたくさんお見えいただいていましたけども、残念ながら、震災
と原発以降は、なかなか富裕層という意味では多尐は尐なくなってきたかなと思
います。
その中で、じゃあどうやって京都に来てもらうかということで、やはり本物と出
会う機会を、どうやってセットしていくか、あるいはそういう、卖に京都行けば、
あちこち行けば楽しいよというあけではなくて奥の深い京都。例えば、後藤さん
のように魅力ある方と、どうやって出会って、楽しい旅行ができるかと。これが、
これからの旅行スタイルなんじゃないかなと、よく思うのです。
これは京都だけじゃなくて、地域にはたくさんいろいろ文化の重層があって、先
ほどのおしょうゆ屋さんの話も出ましたけども、じゃあ、そこでしょうゆつくっ
ている、お父さんか、おじさんか、お母さんか知りませんけども、どんな苦労が
あるか聞くだけでもすごく楽しい話なのですね。
ところが一部の旅番組で、芸能人がそういう話ができているのですけども、实は
みんなやらせてもらえないのですよね。でも、これってある程度知的好奇心があ
って、本物を楽しみたいなとか、自分の暮らしを豊かにしたいなと。そういうニ
ーズとかウォンツを持っている人なら、日本人だろうと、外国人だろうと、ある
いはアジアの方だろうが、ヨーロッパの方だろうが、みんな感激するのですよね。
いかにこれから感激してもらえるような機会を、我々コンテンツが、あるいは京
都で京都に携わっている人たちが、お実さまに提供していって、京都行ったら、
これだけ面白いぜと。この楽しさを誰かに伝えたくなると。伝えて口コミで連れ
て来てもらう。また、誰かを一緒に引き連れてきてもらう。
高台寺へ行ったら、後藤さんという素晴らしい人がいて、面白いから、もう1回
ちょっと話聞きたいのだよと。吉兆さんほんとにおいしいのだよと。連れていき
たいねと。
感激する場所に、我々がみんなで努力していくことによって、初めて観光として
の力が生まれてくるのではないかというふうに思っています。
福永:
経済産業省がラクジュアリー・トラベル・マーケット研究会というのを 2006 年に
立ち上げたときに、一番問題とされたのは、素晴らしい伝統工芸、伝統産業、い
ろいろなものがあるのに、外国の人は、日本の人も含めて、そこの本物にたどり
着けないと。上っぺらな情報だけにしかたどり着けなくて、真ん中に、ハブ的な
コーディネーターというか、コンシェルジュというか、そういう人が余りにも欠
落し過ぎているんじゃないかと。それは地域の連携や他産業の連携とも多分結び
付いてくる話だと思うのですね。京都の伝統産業、伝統工芸品を見たい、それを
つくっていらっしゃる方にお会いになりたいという方がたくさんいるのです。
JNTO さん、各世界に事務所を持っています。いろいろな雑誌社の方が取材を申し
30
込まれます。日本に行って取材をしたいのだ。伝統工芸のアプローチで取材をし
たいのだ。でも JNTO さんの各事務所の予算繰りの関係で、済みません、予算がな
くてできないのです。そこで断られてしまう。ここにはたくさんの人をお迎えし
て、メディアをお迎えして、どんどん書いていただいて、世界に伝えていただき
たい。それだったらちょっとお金を払ってもいいのと思う人たちはたくさんいる
のにもかかわらず、そこで止まっちゃっている現实は、これはもう否めない現实
なのです。そこら辺、やっぱり打破していくためには、おのおのがやっぱり手を
取って、いろいろな形で協力をし、同じミッションのもと、何かしらの活動、ア
クションを起こしていかなきゃいけないと思うのです。
細尾さん、西陣にいらして、私のお実さんも、伝統産業、伝統工芸に興味をお持
ちの方がたくさんいらっしゃるのですが、多分京都の中で、レイヤーの1つとし
て、非常に重要な役割を担われていると思います。京都の魅力と照らし合わせて、
伝統工芸の皆さんたちができる力というか、何かほかの業界の方たちと一緒にで
きることとか、何かそのようなことはありますか。
細尾:
伝統産業を振り返ってみると、日本の国内市場って結構大きいのですよね。そこ
にずっと甘んじてきて、世界に全然目が行ってなかった。国内のお実さんで買っ
ていただいて、それで生活して、会社も成り立っている、仕事も成り立っている
からいいかみたいなことでずーっときました。それが今、しっぺ返しがきている
わけで、先ほどお話の中にも出てきましたけど、やっぱり世界に向かって情報発
信をしていこうという気持ちと行動をね、まず起こさないと、これはもう話にな
らないというのが1つだと思います。海外まで売る必要もないという観念が、こ
の伝統産業の世界に残っていまして、まずこれを変えていかないと、私は伝統産
業の未来は来ないと思っております。
やっぱり情報発信というのにものすごく力入れております。きょうはちょっと詳
しいことまでお話しする時間ないのですが、世界にわが社しか織れない織物を取
りあえずつくろうということで、それをなんとか、うちとこの技術陣、あるいは
西陣の職人さんの力を借りて、世界に1台しかない織機まで開発して、やっとそ
れができたわけですよ。我々は、ハイエンド層を対象にしていますから、ハイエ
ンドのお実さまに知っていただくか。この情報発信が一番大変です。
できることからやっていこうということで、まずできることというのは国際的な
見本市にきちっと出して、お金もかかりますし、時間もかかりますけど、そこで
きちっと出して、情報発信していく。ありとあらゆる手を使いながら、いろいろ
な方々の援助、あるいは助成を得ながらも、そういう情報発信を続けていくと、
わが社もそうだったのですが、必ず、自分の商品を受け入れてくれるクライアン
トが必ずあらわれてきます。この1人があらわれて、1つのビジネスが始まると、
31
これがどんどん、どんどん広がって、いろいろな方々が、私たちの商品、私たち
の仕事を知っていただくことになって、1つのビジネスのベースができてくるわ
けです。
我々の为なお実さんは、クリスチャン・ディオールとシャネルさん、いわゆる旗
艦店の内装材に我々のファブリックを使っていただいているということで、こと
しも銀座の店、我々のファブリックを使って、ディオールさん、リニューアルし
ていただくわけですが、そのディオールさんとご縁ができ、シャネルさんとご縁
ができると、またほかのブランドメーカーも、どんどん、どんどん来るわけです
よ。そうなると、去年の夏でしたか、ルイ・ヴィトンのバイヤーさんが、わざわ
ざパリから、細尾という会社を訪ねに京都まで来ていただける。なぜ来ていただ
けるかというと、うちとこの商品もさることながら、この商品がどういうような
文化的背景の中で、どういうようなプロセスで生まれているのか。このバックヤ
ードを、体を運んで知りたいということでわざわざ来られる。
それから、去年の秋、三原康裕さんという、つい2週間前にパリコレで発表され
ましたけれど、この西陣の我々のファブリックを使ったコレクションをつくって、
パリコレで発表したいということで、全社員、京都まで来て、私とこの工房で一
泊二日ですよ。20人ぐらい来られました。そこで西陣織のいろいろな魅力、技
術的な背景、デザイン的な背景、伝統文化、歴史というものをきちっとみんな勉
強されて、そして、この間パリコレで発表されて、すごい今話題になってニュー
ヨークタイムズでも取り上げられておりますけれど、そういうようなことが起き
る。
だからやっぱり、一人一人の、おのおのの立場の人間が、できる範囲で、できる
だけ外に目を向けて情報発信していく。
食文化もあり、我々みたいに染色文化もあり、文化とか価値に興味を持っておら
れる方が世界じゅうにいっぱいおられるわけですから、そこの情報に触れられた
ら、どんな国からでも今、来られる時代になっても情報発信力が弱い、これが日
本の今一番弱点だと思います。
福永:
ありがとうございます。岡田さんは何か、また新しい組織をおつくりになって、
伝統工芸の観点で、京都を盛り上げるという活動を積極的にされているとお聞き
していますが、今、細尾さんがおっしゃられた情報発信、いかに人に知っていた
だくか。そこら辺は、新しい組織の立ち上げも含めてどうお耂えですか。
岡田:
ほんとに細尾さんのやってこられたことは、1つの成功事例で素晴らしいと思う
のです。京都の産業としてとらえれば、西陣、审町、清水、三大地場産業という
ものが果たして海外の方に向かっているか。従来の職人さんの組織でいいのであ
32
ろうか。それでは新たな、そういうものを生み出す連携、ネットワーク、横の連
携でもって生み出す組織をつくる必要性があると。いろいろな技術もし要ります
し、素材も必要ですし、そしてデザイナーさんの協力も要りますし、プロデュー
サーさんの協力も要りますし、そういう協力でもって、横の連携でものづくりを
していきたいなという具合に、新たな組織で耂えておるのです。
そして細尾さんのように、海外の展示会で発信していかれる。発信することは大
切なのですが、京都の産業の、いわゆる活性化じゃなくて、私復興だと思うので
すけれども、それを目指すならば、京都でもたくさんの観光実の方が来られてい
て、記念品としてお持ち帰りいただくようなものが、果たして今できているかな
という段階で、やはり観光実の方が京都に入ってこられまして、1つのテーマパ
ークと例えましたら、京都駅が入り口で、そして京都を楽しんで、京都を出てい
かれる。その中に、宿泊から、食べ物から、そして伝統工芸を記念品として、そ
してそういうものに満足して京都駅から出ていかれるというような、そういう耂
え方の横の連携というものが必要じゃないかなと。そうした危機感でもってその
組織をつくったわけです。そういう形で京都の衣食住の連携という形で、そうい
う海外のお実さま、もちろん国内のお実さまの顧実満足を追求していかないとい
けないのではないかなと思っております。
福永:
業界を超えた、横断した連携という部分で、今回のクール・ジャパンも1つの大
きな役割を担っていると思うのですけど、なかなかそれが、まだうまくいってい
ない状況かと思うのですが、私はこの旅館のコンソーシアムを海外のホテルチェ
ーンと一緒にコラボレーションして、いろいろなイベントをしています。それは
何のためにするかというと、彼らが持っている何万人、何十万人という外国のお
実さまたちに日本旅館を教えていただきたい、ニュースを送っていただきたい。
我々、日本旅館に泊まっているお実さまたちに、外国のプロダクトを届けたい。
お互いのベネフィットが合致するわけです。お互いの顧実層を、ネットワークを
広げた中で、お互いのマーケティングをしていける。これがマーケティングアラ
イアンスの基本だと思うのですけども、それを1つのシナリオにすると、業種、
業間を超えたコラボレーションがたくさんあると思うのです。伝統工芸、伝統産
業も、たくさんのお実さまがいらっしゃる。観光は観光でたくさんのお実さまい
らっしゃる。例えば京都のホテルハイアットさん、ウェステインさん、たくさん
お実さまが泊まっていらっしゃる。そういう方々に向けていろいろな取り組みが
できると思うのですが、その業界を超えた中で、いろいろな事業を国でやるとす
ると、こっちはなんとか省だ、こっちはなんとか庁だと言われて、なかなかうま
くいかないのが現实です。それが、クール・ジャパンがなんとか距離を縮めて、
いい形で、同じミッションのもとやっていこうということなのだと思うのですけ
33
ど、そこら辺について、徳岡さんにお聞きするのもあれなのですが、素晴らしい
料亭さんのお立場で、業界を超えたコラボレーションの意義というか、そういう
ふうな形での、京都のアプローチというのはあると思われますか。
徳岡:
できると思います。ずっと皆さんの話を聞いて耂えていたのですけど、世界がこ
ういう経済状況の中で、やっぱりマーケットを広げて、要するに海外に持ってい
かなくてはいけないなと。そのためにクール・ジャパンイベントみたいなこと、
もしくは複数のことをしていかないといけないと。その中で経済的に成功すると
いうことがミッションなのだろうと。それの先には多分、仲良くなるということ
があると思うのです。メンタル的な、目に見えないようなものを得るということ
もあると思います。
ただ、その優先項位からすると、やっぱり経済的に成功することというのが優先
されて、経済的に成功するためには、海外のマーケットでビジネスをするには、
海外から来ていただくことと、海外に売ることという、2つがあると思うのです。
どっちを優先するのかというと、両方並行してやらなくてはいけないと思います
けれども、本物を知ってもらうためには、やっぱり来ていただいて体感していた
だくことで、どんどん深まっていくのではないでしょうか。
ただその前に、やっぱり売ることというか、広報する。本物を広報することも必
要なのですけれども、やっぱり今、細尾さんがおっしゃった、現地に行って、プ
レゼンすること。現地で体感してもらう。現地に持っていくと、やっぱり本物で
はなくなるのですけども、本物の一端でも、できるだけ本物に近いようなもの、
もしくはシーン、本質を感じてもらうものを現地でプレゼンすることが必要なの
だろうなと。1回でだめだったら何回でも行くと。それって实は、プレゼンテー
ションしているだけではなくて、多分リサーチになっていると思うのです。1回
目と2回目で多分違うことをされて、前回はこういうふうなことがだめだったな
ということをリサーチして、2回目に行くときは、それを改善して、プレゼンし
ていくと。それをしている中で、必ずそういう人が出てきて、もしくは、どこに、
誰に、何を売るのかというのがはっきりしないと、そのプレゼンも、もしくはそ
の後の修正もできないのではないか。
そしてやっぱり富裕層、経済的に成功するわけですから、富裕層をまず取り込む
ほうがいいのかなと。要するに、文化的な本質を理解していただけそうな、もち
ろん新興の金持ちも大事なのですけど、来ていただくのは、そういう方に来ても
らうのが、やっぱりカジノをつくっちゃうとか、そういうことをするのが手っ取
り早いのだろうなと。シンガポールはそれでだいぶ、そしてマカオも成功してい
る。問題はもちろんあるのですけれども、そういう方向というのはやっぱり耂え
るべきだと思います。でも普通の一般実のものとすると、観光に来ていただく。
34
日本に本物を知っていただくためには、その前の段階で、やっぱりプレゼンテー
ションをどんどんしていくことが大事だと。
1つの事例というか、私がやろうとしたことで、堺市の活性化のプロジェクトが
あったのですけれども、そういう中で、私はいつも各地のそういう活性化プロジ
ェクトに行くと、大体食が本業なので、一次産業の活性化というのを提案するの
ですけど、堺市の方は、それじゃだめだと。堺にはそういう特産品といいますか、
そういうもの、売りたいものがない、ないとは言われませんでしたけど、それよ
り、また違う包丁とか自転車を売ってほしいと。それをするためには世界をマー
ケットにしたほうがいのじゃないですかという話で、包丁のプレゼンをしにニュ
ーヨークに行こうと。世界じゅうのどこを先にするのかを耂えた段階で、ニュー
ヨークというのはトレンドが激しいですけれども、世界に発信する威力はすごく
強いので、ニューヨークがいいのではないかということで、ニューヨークでプレ
ゼンをすることになりました。向こうに行って、そういう街で発信力のある方、
ハリウッドスターとか、その当時市長のジュリアーノさんとか、そういう方をお
呼びしてプレゼンをしようと。そのプレゼンの仕方なのですけれども、和包丁を
持っていっても、やっぱり分からないでしょうねと。歴史であるとか、そういう
ものも併せてプレゼンする必要がある。また、包丁は何のためのものというと、
切るためのものですから、切れるというのが科学的にどういうことか、摩擦係数
がゼロになるときはどういう反忚、力が働いて、どういうことで切れているのか
ということ、西洋包丁と何が違うのか、その違いをちゃんと見せて、それをつな
げていくことをしていったらどうかということです。
实際、ニューヨークのライフスタイルと日本のライフスタイルは違うわけですか
ら、例えば柄の部分は、あれ木でできていますから、实は衛生によくないのです
ね。水がしみ込んで乾燥しない。そこをいろいろな形の樹脂にするであるという
ことです。もしくは長い柳包丁を海外に持っていっても、普通の一般家庭で使い
ようがないですね。だから一般家庭で使う、切るという作業は、どういうふうに
リデザインしたらいいのかというのをマーケティングしながら、それをつくって
いこうと。要するに、あなたの包丁、あなたの切るということを、1本からあな
たにつくりますよ。それのやり取りをさせてください。まずは有名シェフたちの
気に入る、あなたの切るということに対しての、オリジナル1本をつくりましょ
う。堺市がそれを広げていくことというのがいいのではないかと。
また和包丁というのは、包丁を研がなきゃいけないのです。それをあちらの有名
シェフに、研ぎ方を無料で教えて、彼らに販売員になっていただき、和包丁をい
ろいろな方に売って、しかもメンテナンスとして、包丁を研ぐ作業をしていただ
く。シェフは小遣い稼ぎができるわけです。一生懸命そういうふうにしたがるの
で、もしくは自慢したがるので、どんどん広がっていくのではないかというイベ
35
ントをしようと思いました。ただ、当時、O157 があって、トラブルがあって、そ
のイベントは中止になって、中止になった後に市長さん変わっちゃったので、な
くなっちゃったのですけど、そういうことというのも必要なのかなと感じました。
もう一つ、業種で、業界で、そういうイベント、業種別の団体での連携というよ
りは、その団体の中の個人の連携のほうが、絶対とんがったものになるなと。団
体の寄せ集めだと、やっぱり調整が入って、何ともないいようなものになっちゃ
うのです。だからそうではなくて、その業界で、とがっている方を集めて、その
個人の連携というほうが成功しやすいのではないかなと思いました。
福永:
でも出なさ過ぎですよね、海外に。もっと出るべきだと思いませんか。いろいろ
な人たちがもっと海外に出て、いろいろなプロモーション、イベントをするとい
うことが必要なのでは。
徳岡:
ただ、やっぱりそこにはお金もかかるし、リスクがありますよね。お金かけて回
収できるのかというリスクがありますから、日本のマーケットは大きいですから、
何だかんだ言っても。そっちを徹底してやるほうがいいのではないかと。うちも
どっちかというとそういう耂えで、まずは日本を徹底してやって、今の状況では
ちょっと難しいので、もちろん計画はしていますけれども、もしくはリサーチは
していますけれども、海外の有力者の方とコミュニケーションをとっていろいろ
方法を耂え、もちろんあちらにも利益があるような、win-win の関係になるよう
なことを耂えないと、長続きはできないので、そういうことはしていますけれど
も、なかなか難しいと思います。レイヤーがたくさんありますから、本物を海外
の人に、それを伝えて、それを理解して、来ていただくまでにはとてもたくさん
の工程とか失敗をするでしょう。ただ失敗すると、細尾さんみたいに、やっぱり
得るものがあると思うので、やっぱり失敗しないとだめなのだろうなということ
は感じています。
後藤:
私はカジノ賛成派で、カジノの話をすると2時間でも3時間でもしゃべるので、
今はしませんけど、ただね、もう一遍私、聞いといてほしいのは、福永さん百も
承知ですけども、政府のやる仕事、府の仕事、市の仕事、京都でいいますと、私
は会場を設けて、発信する、そこまでは私たちがやりましょう。その後のコラボ
レーション、組むとか、包丁1つにしても、料理にしても、世界に訴えたいとい
うことの責任は当事者じゃないですか。これを政府とか、観光の人たちが、これ
とこれとを組ませて、こんなんやったほうがいいとかじゃなくて、お互いがこれ
売り出すのだと。その売り出すチャンスを与えるというところが非常に大事だと
思うのです。これができてないです、今日本は。チャンスを与えて、例えば海外
36
でそれをやると忚募するでしょう。ただその与えるものは全部でないかも分から
ない、尐ないかも分からない。しかし、あなた方も一定の負担をしてください。
そして自分たちで努力してください。そしてどんどん、どんどん、日本じゅうの
人が、われこそが和の代表だという人が出てきて、どんどん、どんどん訴える場
は政府、あるいは行政官庁でやりましょう。そういうことをやらせて、はやらな
かった、売れなかった、だめだったというのは本人の責任じゃないですか。どん
どん、新しいものが出る。それがエネルギーになって、その中で、思いもよらな
いものが海外の人に受けるかも分からない。我々というより、政府がする仕事と
いうのは、まさにそういう人たちに、いろいろなチャンスを与えて、努力させる
ことです。それを、こうやったら売れるのではないか、こうやったらできるので
はないか、こうやったら観光で来てくれるのではないか。こういうおぜん立てを
して、これに沿って皆さんやっていったらどうですかというのは、私は失敗する
だろうなと思う。本人に努力させて、その本人たち、今こそ、金沢、京都、団体
でもいいです、個人の店でもいいです、訴えていきたいというところにチャンス
を与えるということに、焦点を絞ったほうが、金のない時代ですから、私はいの
じゃないかと思う。
それからもう一つ、やり方もそうです。今、海外で商品を出しているのは、例え
ば会館借りたり、貿易センター借りたり、いろいろしますね。違うのです。百貨
店でやったらいいのです。もともと人が集まる、例えば台北でこの間やったよう
に、ほんとは伊勢丹でやりたかったのですけど、あれは三越でやりたかった。具
体的に、一番その町で人が集まっているところで日本博をやったらいいのですよ。
そしてあらためて、何から何まで用意して会場設置までやったら金かかります。
だから安い費用で、そういうものをやるチャンスをどんどん与える方法は幾らで
もあると思うので、それをぜひやってほしいと思います。
福永:
ありがとうございます。クール・ジャパン、経済産業省さん、これは1つの国策
として、いい文化事業として発展するために、ぜひ、今の議論を踏まえて、業界
を超えたコラボレーションもそうですし、個人と個人との、後藤さんがおっしゃ
られた、いろんなプラットフォームを国がつくり、みんなが努力をし続けるよう
な、できるようなプラットフォーム、啓蒙していくこと、そういうのも含め、尾
崎さん、お待たせしました。何かしらクール・ジャパンへの思いや、クール・ジ
ャパンの国への要望というか、国がどうすべきか、など何かそういったところの
ご意見をいただければと思うんですが。
尾崎:
分かりました。韓国がすごい経済危機になったときがありました。いろいろな産
業ではやっていけないって。映画をつくるにも、国民が尐ないので、入場料をあ
37
てにしてもろくなものができないということで、逆に海外で観実を動員すれば、
それぐらいの予算規模の映画がつくれるんじゃないかという発想をして、韓国の
映画は取りあえず世界に行ったら結構成功した。そして韓国の政府がとても支援
して、コンテンツ制作で国を成り立たせようって韓国はどうも思ったみたいで、
それから韓流というのが、ものすごい世界に発信しました。そのことを金額的に
言うと、映画監督のギャランティーで言いますと、日本の映画監督、僕の友人は、
この間1本撮って、結構頑張って、3カ月か4カ月でつくったけど 500 万でした
ね。ところが韓国の映画監督は、1本撮ると、国からの保障が付いて1億円なの
ですね。ということは、みんな映画監督になりたいって思うようなモチベーショ
ンを、やっぱり韓国はやっている。
日本も、日本食は世界遺産にすべきだっていうふうに、日本の食関係者はみんな
言います。でも予算が付いてないです。韓国は、韓国の食を世界遺産にするため
に 18 億円使っています、年間で。それで働きかけている。それと日本での、日本
の国の中の韓国料理店のランキングを、日本のすごいグルメジャーナリストに付
けさせて、それを世界に発表していますよね。そのような後押しというのがある
わけです。
僕は、それとは違った、そのような後押しについてほかの文脈で言うと、きょう
の午前中に、京都のお麩屋さんの7代目の小堀君という、麩嘉(ふうか)の7代
目という人に会っていました。きょう初めてお目にかかったのですけど、小堀君
のお父さんがどうも変わった人で、88 年に、たった 20 人ぐらいの従業員のお麩屋
さんなのに、ニューヨークタイムズに、1面に、麩嘉の広告をばんと出したのだ
そうです。そしたら世界中から人が来たということがあって、面白いなというこ
とで、息子さんは、じゃあ 10 年限定でニューヨークに店を出すかっていって、今
は徳岡さんのお弟子さんが料理長をやっていらっしゃいますが、1年目で一つ星、
2年目で二つ星。ミシュランで二つ星はなかなか取れませんが、それが続いてい
ます。だけど、それは、僕は商売のため、ビジネスでやっているのではないので
すと。日本の食文化をとにかくニューヨークに伝えたいために、お麩屋が精進料
理をニューヨークで出していると。それが二つ星になって、そのことで精進料理
というのが分かってもらえたらいいのですっていうことで、まあ、10 年でやめる
そうですが、ただすごく人が入るので、今日聞いた限りでは、6月に今度そこを
閉めて、倍の席数の店を、日本で言えば丸の内の一等地みたいなところに今、建
築中だって言っています。それでもビジネスじゃないって、彼はずっと言ってい
たのですね。
そんなこともあるし、あと、やっぱり支援ということで言うと、僕らは一雑誌で、
海外で例えばブースを出すというと、雑誌の編集費でやるから当然赤字が出ます。
だけど行ってみて面白いのは記事になることですね。例えば越前の打刃物のとい
38
う、刀と同じ作り方をしている包丁を、スペインの三つ星のマルティン・ベラサ
テギとかいう人にあげると、一緒に、この包丁の新しいのを開発させてくれない
かっていう、福五県に行って開発したいみたいなこと。まあ、リップサービスが
あるかもしれないけども、そのようなパッションがすごくあったりするのですね。
そう耂えると、先ほどから徳岡さんがおっしゃっているように、僕は組織同士で
何かを組んでやっていくという人じゃないほうが、結構面白いことをどうもやっ
ていると。自分の旅先を耂えても、友達がいるところに大体行くのですよね。友
達が友達を紹介して、また友達が友達を紹介していくと、そこにレイヤーが、違
うレイヤーですけども、友達の輪みたいなのができて、そこが1つのカルチャー
になっている。そのカルチャーが何層にもなっていくような。そうするとそこが、
居心地が良くて、長くいて、結局お金も使ったりするのだと思うのです。そうす
ると1人の点とか、1軒の店から、例えば1人の料理人が、すごく仲のいい器を
焼く人がいて、そのしつらえをする人がいて、建築家がいたら、そこはある種の
コミュニティだと思うね。だからそのような部分を誘導していくと、みんなすご
く心地よくいれて、なおかつ本当のファンというものがつく。本当のファンは離
れることがないから増えていく。そういうときの打ち出し方としては、僕はマス
メディアの人間ですが、本当は今はやりのソーシャルネットワークのような広が
り方をしていく。本当のファンが自己増殖的に増えていって、ファンがファンを
呼んで、コミュニティの一部を形成するような、そういうふうなものが結構今の
時代にいのじゃないかと。それはオリジナルであればあるほど、趣味がはっきり
しますから、同好の志が Twitter で集まってくるようなことが特に京都なんかは
起こりやすいかなと思います。
だから、ほんとそういうふうなことで言えば、今、個人的な話をすると、伝統工
芸の部分だけ最後に申し上げますと、昔から、やっぱり編集の仕事をしておりま
すと、カメラマンとか、友達がおります。そうするとそのカメラマンが、もう雑
誌であまり、雑誌が今、調子がよくないので、食えなくなっちゃうと。食えなく
なっちゃって、やめちゃう人と、ファインアートのほうに走る人がいるのですね。
ファインアートというのはどこからもギャラをもらわずに自分で写真を撮る。す
ごく頑張って撮っていたら、買ってくれる人があらわれてきたのね。それがシャ
ネルの日本の社長だったりして、今度銀座で、シャネルでギャラリーを貸すから、
おまえやれよっていって、シャネルギャラリーで今度、個展を開くことになった。
それはいいのですけれども、そのときに僕、相談を受けたのは、図録みたいなの
どうしようかねっていう話があって、印刷ここで、デザイナーこれでいったらっ
てご紹介した。今度でも、こういうのはあんまりオンエアしないほうがいいのか
もしれないけど、そのお礼に、このプリントを収める箱があるといいよねってい
うことになって、今、京都の伝統工芸の人に、エアマックのような、シュッとし
39
たうるしのところにシャネルのマークを入れて、それを十二卖のようなカラフル
な、日本的じゃないカラフルなちりめんで包んで、差し上げるというふうなこと
をやっている。それは1個しかつくらないけど、伝統工芸の2人、若い人なので
すが、気持ちを酌んでくれて、とてもおまけしてくれた。そのようなことはすご
く面白い、もらった人も面白い、やる人も面白いというような、何かがあるのか
なって気がします。
福永:
私、2週間前にロスとニューヨークにいたのですけど、京都市さんと京都府の旅
館、ホテル組合さんのご依頼を受けまして、ニューヨークとロスでプロモーショ
ンされたいということで、向こうでイベントをコーディネートしました。そのと
きに京都、旅館というキーワードだけで、ニューヨークのメディアの方、一部旅
行会社の方、90 名の方に招待状を出したら、75 名、OK の回答が来ました。通常な
ら月曜日は一番集まりにくいのですけど、京都、旅館というキーワードで 75 名集
まりました。それだけ京都が持っている奥深さというか、旅館が持っている珍し
さというか、非常に訴求力があるなと思うのです。
そこに例えば、伝統工芸や食という一端があれば、もっと人が集まるのではない
かと思うのです。つまりそういうことじゃないかなと思うのですが、時間がそろ
そろ押し迫ってきましたので、総括というか、ここは皆さんのお立場から、ぜひ
このクール・ジャパンに対して、具体的に何を取り組むべきか、どうやって業界
を超えて、業界を横断した、個人と個人の先ほどお話がありましたけれども、結
び付けていくために、国は何をするべきか。どなたかご意見ある方いらっしゃい
ますか。
じゃあ細尾さん、お願いします。
細尾:
先ほどの情報発信のお話なのですけど、情報発信を日本だけでやろうと思うと限
界があります。最近、我々始めているのですが、ヨーロッパとかアメリカに、我々
はハイエンド向けのマーケティングコンサルタントの会社があるのです。ここは
世界的に、顧実層によってあるのですけれど、我々の場合、ハイエンドのお実さ
ん、いろいろな分野のメーカーさんとか、いろいろな方々の顧実とネットワーク
を持ったコンサルティング会社がありまして、非常に格安で、ヨーロッパ、アメ
リカの目線から、我々がやりたいことをきちんと編集してくれて、そういうお実
さまに伝えてくれる。見本市やったときには、そういうお実さまをわざわざ見本
市の会場まで連れてきてくれる。そこまでやってくれるコンサルティング会社が
ありますんでね、日本人が、日本人目線で、日本人だけで情報発信しようと思う
のではなくて、海外の優秀なコンサルティング会社、マーケティングの会社と組
んで、海外目線で自分たちの仕事を編集していただいて、彼らのネットワークで
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情報発信した。これはもう非常に有効なんでね、ぜひ経済産業省の方々も、海外
のそういうマーケティングの会社、コンサルティングの会社を活用していくとい
う、この視点は非常に大切だと思います。
逆に彼らは、お金を払ったら受けてくれるかというと、やってくれません。細尾
の商品が世界的に、きちんと通用するかどうかの、前もっての調査をするわけで
す。だから必ず、そこの会社も、私の会社、京都の工房へ来て、1週間滞在して、
どういうような商品が、どういうようなバックグラウンドで、どういうような技
術で、どういうようなデザイン性で、どういうようなものでつくられていて、そ
れが本当に欧米のマーケットで通用するのかどうかを調べます。いけるとなった
ら、仕事受けてくれるわけです。
従いまして、いつも言っているのですけど、ただ卖に海外へ出するのではなくて、
サッカーと一緒で、J2、J1、そしてナショナルチームとありましたよね。やっぱ
り自分たちもナショナルチームのところまでレベルアップしないと世界で戦えな
いので、J2 クラスの人が幾らそういう会社を使っても、絶対世界では売れません
し、通用しませんし、まず我々が J2 から J1、そしてナショナルチームになるとい
う切磋琢磨を自分たちでやる中で、そういう会社と取り組む。また、取り組むこ
とによって、あんたはまだ J2 だから、世界では無理だよということを言っていた
だいたら、さらに切磋琢磨すると。こういうような活動というのは、これからま
すます大切になってくると思うので、海外を巻き込んだ情報発信というのは非常
に大切なキーポイントだと思います。
福永:
大賛成です。ぜひ経済産業省の方々、よろしくお願いします。海外の企業を取り
込んだ、海外の人たちを取り込んだ、日本人だけで、海外の人はこうだろうか、
ああだろうかというほど危険なものはないと思います。なので、そういった部分
と、あとはうまくランク付けをした中で、みんな切磋琢磨して、努力をしていこ
うという状況づくりというのは非常に価値があるかなと。最後、どなたかクール・
ジャパンに対してのご要望、何かございますか。じゃあ尾崎さん。
尾崎:
日本人が、日本だけにいるわけじゃなくて、ニューヨークにもロンドンにもパリ
にも、みんな日本文化を広めようって、結構、手弁当でやっている人がいるので
すね。その人たちはなかなか支援がなくて、給料の半分を使ったりしながら日本
酒をプロモーションしたりしています。でも、すごくそういう人たちは、逆に信
頼されて、仲間がいっぱい地元にいたりします。そういう人たちに、たくさんの
お金じゃなくていいから、支援していただくと、その人たち、とても頑張って、
もっともっとやってくれると思うので、そういう方たちに支援をぜひお願いした
いと思います。
41
福永:
ありがとうございました。よろしいですか。
ありがとうございました。なかなか皆さん、いろいろなご知見で、さまざまなご
意見がおありで、私も含めてまだまだしゃべり足らない、不完全燃焼な感じなの
ですが、どうしても時間に限りがありまして、ここら辺で閉めさせていただきた
いと思っております。パネリストの方々、忌憚ないご意見、どうもありがとうご
ざいました。またこれを機会に、いい形で、いいコラボレーションが生まれてい
き、また、経済産業省が大きく掲げられているクール・ジャパンの、本当に意義
のある事業が、意義のある形で影響を及ぼし、たくさんのブランドができて、い
いクリエイティブになっていけばいいかなと思っております。ありがとうござい
ました。
最後、10 分ほどございまして、ぜひこの機会に、パネリストの方たちに何かお聞
きしたいとか、私はこんな提言があるとか、今回、政府関係の方たち、行政関係
の方たち、京都府、京都市の方々もたくさんお見えになっています。民間の方々
も、どうか何でも結構ですので、どうぞこの機会にお手を挙げて、何かおっしゃ
っていただければと思うのですが、いかがでしょう。質問でも何でも結構です。
どうぞ。
黒竹:
黒竹です。今日はどうもありがとうございます。ちょっとしびれが切れて、座っ
たままで失礼します。海外の方ですね、来ていただくという中で、海外のエージ
ェントの方とかと話しておりますと、日本には夜のナイトツアーというか、夜を
楽しむところがないというのを結構聞きます。個人的に来られる方は、いろいろ
リピーターの方で、いろいろな遊び方が分かるのですが、ある程度の団体ですね。
この受け入れがないというふうなことで、何かそういうようなものを作ってほし
いというような要望がございますが、何か皆さん方ので、こんなんどう?とか、
今、後藤さんもおっしゃっているカジノとかね、そんなの非常にいいのですけど
ね。昔は、江戸時代見ていますと、賭博はみな、お寺でやられて、寺銭というこ
とで。お寺がたくさんあるので、お寺でカジノというと、非常に広がるのではな
いかというようなことを思います。どうぞ。
福永:
お寺でカジノ構想いかがですか。
後藤:
いやいや、お寺はね、寺社奉行の管轄で、町奉行が手入れられなかった、つかま
ることがなかった。だからお寺を貸したら、寺社奉行は大目に見てくれるから、
お寺がやっとったら絶対つかまらないということではやった。しかし寺銭、5%
ですよ。今のカジノがどれだけ高いか。まあ、そんなことはどうでもいいです。
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それでね、私ね、京都は夜の遊びがない、いろいろ楽しむ場所がない。散々言わ
れたのです。それで私たちはライトアップしたのです。しかし、本当はそうなの
かと、この 10 年間反省している。实はバーでも、クラブでも、祇園も、いっぱい
遊ぶところがある。これがうまく発信できてないだけなの。要するに、私に言わ
せりゃ、バー、クラブ、変な話ですけど、夜遊ぶとこ、うちは 5、000 円で遊べま
す、3,000 円で遊べます、うちは5万円もらいます。いろんなところあるでしょう。
うまく、安心できる団体にして宠伝をしていけば、京都はみんな楽しめる。ただ、
海外から来た人、日本の国内の人でもそうでしょ。
新しいもの、カジノをつくる。これは反対ではない。私は賛成なのですけど、そ
れよりも、今あるものをどう組織するかということが大事なんじゃないかと私は
思っております。
福永:
他にご意見のある方いらっしゃれば、ぜひお願いいたします。いかがでしょう。
意外に静かな感じでございますが。
後藤:
そしたら行政の方にちょっと言わせてもらっていいですか。
福永:
どうぞ。
後藤:
申し訳ないですけどね、これは苦情でも何でもないのです。私ショックを受けた
ことがあるの。それはもう、どこの国と言わないです。それは名前が特定されま
すので。これだけ海外、20 年ぐらい誘致しておりますと、現地の JETRO さん、あ
るいは出先機関の、向こうで現地採用の人と非常に親密になりましてね、食事す
るなど、いろいろなことをしている。ある国へ参りましたときに、实は所長さん
が変わったのだと、ちょっと所員がやる気なくしているのです。どういうことか
と言いますと、例えば京都、金沢、それから福岡、いろいろなところから持って
きた、あるいは業者が持ってきたポスターでも何でも、これまで我々は一生懸命
張ったと、現地職員で、海外の旅行社やらいろいろなところへ張ってきたという
のですね。それからチラシも配って歩きもした。これが日本の観光誘致になると
思って頑張ってきたという。ところが今度の所長さん、変わっているのですって
言うのですね。どういうことかと言いますと、利益供与をする場合には、私に文
書で提出せえって言われた。どういうことかと思ったら、そういうところがある
のかなと。私ね、勘違いされているのではないかと实は思う。しかし耂え方の違
いですけど、利益供与には違いないのです。都道府県とか会社とかポスター張っ
てくれ言うて、それを職員の人に、おれに許可求めろと。文書で許可求めたらみ
んな嫌がってやめてしまったわけです。そんなこと邪魔くさいということでね。
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こういうところって一部でいいのですが、やっぱり、海外の所長さんとか副所長
さんとか、海外の出先機関の観光の業務というのは、ものすごくその人物による
ところが私は多いと思って。だからぜひ大髙さん、お願いしたいのは、海外の出
先機関の所長さん、副所長さんというのはね、かなり大目に見てもらう、ざっく
ばらんな人をぜひ行かせていただきたいという気持ちを持っております。よろし
くお願いいたしたいと思います。
福永:
いらっしゃいませんか。お願いいたします。
齋藤様: どうも、きょうはありがとうございました。私、实はパリ、フランスのパリに 39
年ほど在住しております齋藤というものです。京都とはいろいろな形でちょっと
関わらせていただいて何年かたつのですが、私は元来ファッションです、専門が。
それでたまたま業界の方もいらっしゃるということで实はこのクール・ジャパン
审のほうに何回か既にお邪魔してもいるのですが、ファッションだけに限って言
いますと、先ほど細尾社長がおっしゃっていた、要するに外国人の目で見させな
いとだめだということ、これは事实でして、日本がいろいろな形で洋朋、ファッ
ションデザイナーを海外に出そう、出そうとしていますけど、私がずっと海外で、
日本人デザイナー、山本耀司というデザイナーと、あと三宅一生というデザイナ
ーの現地の社長をやっていたことがあるのですが、あと向こうのフランス人の、
またスウェーデン人のデザイナーさんとか、幾つかのデザイナーを向こうで实際、
私が自分で社長をやっていたことがあるのです。
まず、日本人の御三家と言われている、ヨウジヤマモト、三宅一生さん、川久保
玲さん、これ以外で、最近来ているデザイナーさんというのは、全然洋朋の種類
が違うのですね。というか、逆に言えば、昔のままを引いてしまっていて、全然
新しくなっていない。今になってない。私がそこにずっと、経済産業省さんや JETRO
さんにもお話ししているのが、やはり向こうの目を持った人、要するに海外に進
出したいならば、パリコレに出たいなら、パリの目、または世界のファッション
の目を持っている人を審査するようにしましょうということを何度も申し上げて
いるのですが、なかなかうまくいかなくて、どんなに日本人が、パリコレとかミ
ラノコレクションに行かれても、やはりいろいろな海外のブランドを見て、
“ああ
だこうだ”はおっしゃいますけども、本当に海外へ出ていく人たちの目というの
が養われていない・私も向こうに住んでいても、やはりその自信がない。そうい
う意味で、先ほどちょっとおっしゃっていた、なるほどそのとおりだと思ったの
ですが、海外の人の目というのをもっと日本の中に取り入れていくこと。
それからもう一つ、やはり京都に対して、京都という町にはいろいろな事情があ
って私は大変好きな町なのですけれども、やはり、まだ発信力が足りない。確か
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におっしゃるとおり、伝統とかいろいろな技術があります。それはよく分かりま
す。ですけど、もっとそれを世界に発信するための、京都に人をたくさん来させ
るためには、お寺もあります、いろいろなものがあります。よく分かります。私
個人的には、これ以上のものがなくてもいいとは思うのですが、例えば私がパリ
に住んでいて、なぜパリが、あれだけ観光地としても有名でありながら人が来る
かというと、ものすごいサロンがあるのです。サロンというのは見本市です。こ
れはもう年じゅうサロンがある。世界レベルのものがある。多分、細尾さんのほ
うで行かれたメゾン・エ・オブジェという、世界で有数の大きなのが年2回ある
のですが、そういう世界レベルで誇れるようなもの、そういうものを例えば京都
で本当にやれたら。必ずしも東京でなくても私はいつもいいと思っているのです。
と言いますのは、例えばフランスにカンヌの映画祭という有名なものがあります。
なぜパリの映画祭じゃなくてカンヌなのって思われるでしょうけど、やはりそこ
には歴史的ないろいろなものがありますけども、カンヌというところが、フラン
スの中で、世界レベルでそういう見本市をやれるようなもの、そういうものがあ
るということは非常に大事だと思います。そういう意味で京都というのは、先ほ
どから皆さんおっしゃっていますように、ブランドとして、京都といったら皆さ
ん分かります。フランス人で京都と言って分からないやついたら、それはフラン
ス人じゃないよというぐらい、本当に京都というのはブランド化されています。
ですから、例えばそういうことを京都の府として、または市として、また国とし
ても、例えば京都というものを、東京にも幾つかありますけども、今度そういう
ものを、関西の京都に根付かせていくということも今後耂えたらいいのではない
かと、提言と、私のちょっと勝手な意見を申し上げました。失礼いたしました。
福永:
ありがとうございます。ほかにどなたか、最後になってしまいますが、いらっし
ゃいますか。よろしいですか。パネリストの方々、何かよろしいですか。
それではこれにてパネルディスカッション終わらせていただきます。私のつたな
い進行でございましたが、長い時間ご清聴誠にありがとうございました。
また、パネリストの方々、お忙しい中、ご意見をちょうだいし、誠にありがとう
ございました。またどうぞよろしくお願いいたします。また会場をご提供いただ
いた高台寺さん、誠にありがとうございます。あらためて御礼申し上げます。
またこの機会が、次の機会、次の機会へどんどん発展して、いい形でまた日本の
ブランド、京都のブランドができていくようになれば、非常にうれしいことかと
思います。本日は誠にありがとうございました。(拍手)
(了)
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第 3 回 地域オープンミニシンポジウム IN 秋葉原
パネルディスカッション議事録
日時:2012 年 3 月 5 日(月) 16:00~18:00
場所:MOGRA 秋葉原
参加者:ファシリテーター
パネラー
福嶋麻衣子
小野一志
鈴木雄一郎
妹尾堅一郎
Patrick W. Galbraith
右高靖智 (敬称略)
妹尾:
今ご紹介にあずかりました妹尾と申します。なかなか大変なムードの中でお話を
させていただくということですけど、なぜかというと、中央官庁がこういうシン
ポジウムをこういう場所で開くということ自身が、かなりキッチュな感じですよ
ね。クール・ジャパンというキッチュな感じがします。しかも来られている方の
半分近くはネクタイ締めた方だ。これもまたなんとも言えないムードですね。こ
こは秋葉か?そういう感じがします。
それから今のご挨拶も、あるいはお手元に入る資料も、これまたいかにも中央官
庁の雰囲気でありまして、秋葉としてはこれを受け入れていいものかどうかとい
うのが、皆さんお耂えになっているのではないかと思います。
私がここで仰せつかった役割は何かというと、ここにある秋葉の可能性、問題提
起というよりは、むしろ皆さんと秋葉原ってなんなの?ということの話の刷り合
い、こういうふうに思います。
秋葉って何?という話をさせていただきたいと思います。秋葉原っていうのは、
略称は秋葉と言われていますけども、これの語源はご存じですか?秋葉原と呼ば
れるのはごく最近の話なのです。戦前はアキバッパラと呼ばれていました。アキ
バッパラ。戦前って分かりますか?湾岸戦争じゃありませんよ。第二次世界大戦
です。
秋葉原の地図を見てみましょう。これはどこかお分かりです?これは神田川から
数寄屋橋を通って、秋葉原のメイン通り、中央通りですか。それから、そこを歩
いていただくと、当然左側にはオノデンがありまして、その先をずっと歩くと何
がある・・・ちょっとテクノロジーの町なのですけど、ずっと万世橋のところか
ら真っすぐ中央通りを行って、蔵前橋通りのところに行くまでに、これは全部埋
め込まれたのです。たまたまこれは昔懐かしい電熱器ですけども、これ以外にい
ろんな家電類だとか、それから水道町の一番端っこにはロボットです。これを全
46
部見たことがある方、实はこういう面白さが隠れているのですね。ですからこれ
を見て分かる通り、秋葉原というのはもともとエレクトロニクスの町です。しか
しそいつが、ある時からエンターテインメントの色彩を強くします。エレクトロ
ニクス&エンターテインメント。どうなったかというと、これがある意味では全
国区になるきっかけになりました。メイド喫茶やアニメ、そしてフィギュアやな
んかが、すっと出てきたわけです。そして、これは一時期の秋葉原の駅前、今は
改修されていますね。それから秋葉原の駅前に、例えばメイド案内が、こういう
具合になっています。これが再開発されたことによって秋葉原というのが脚光を、
全国的に、あるいは世界的に浴びるようになったのですけれども。それは今から
12 年前、ちょうど一回り前に始まりました。東京都の再開発計画です。
そして、この時から私は、再開発のプロデュースの1人として、ここにかかわっ
てきました。2005 年にクロスフィールド、ダイビル、あそこに大きいビルが建っ
ていると思いますけどもそれができました。2005 年の6月から8月にかけて、先
ほどの電車男が映画とテレビドラマと舞台と、1 カ月、6月7月8月とずっと続い
たのですね。これで全国区になったのです。それから8月につくばエクスプレス
が開通し、それからヨドバシカメラさんがオープンし、それから私がプロデュー
スさせていただいた秋葉のロボット文化祭という、これが 2005 年の 11 月に動い
て、翌年からロボット運動会という形で続きました。
クロスフィールドの UDX 側の大きいビルができたのが 2006 年の3月です。そして
残念なことに 2008 年の6月に、例の大変な事件が起きたということです。それ以
来秋葉原の歩行者天国はクローズされましたけれども、昨年の1月に歩行者天国
が復活し、3.11 で一時中断しても、秋葉原電気街振興会を始めとするご努力で、
また再開したというのが、秋葉原の再開発になります。
こういうビルがたくさん建ったのは皆さんご存じだと思いますが、これが1つの
再開発の象徴だったのですが、これはお分かりの通り、極めて秋葉としてはやぼ
なビルです。なぜか?大手町にあっても変わらないビルですよね。秋葉っぽくな
いですよね。じゃあなんでこれを再開発するのを妹尾さんは許したのだ?と、あ
るいはそいつを OK にしたのだ?これは理由はここは秋葉の端っこだったからです。
ここは实は秋葉原じゃなかったのです。これは、秋葉原の外だったのです。あと
でお話ししますけども、この場所は全く秋葉原じゃないのです。
秋葉原をどうするかという時に、われわれは秋葉原のビルが栄えても町が滅んで
はしょうがないねという話をしました。どうすればいいか、ビル栄えて町一層栄
えるようにしようよということをお話しして、どこでもやっている町づくりは止
めよう。じゃあどういうものか、歴史と資源と近未来とを踏まえたとんがった町
作りをしたいね、ということで動いたというのが、この秋葉原のこの 10 年の歩み
だというふうに思ってください。
47
じゃあ秋葉原はどんな特徴があるのだろうね、いうことを皆さんとご一緒に確認
したいと思います。1つは非常にこんなに利便性の良い町はありません。秋葉原
の交通は皆さんどっからでも来られるということがあります。それから TX、つく
ばエクスプレスが開通するだけでもありません。見てください、秋葉原は例えば
中央線、総武線、山手線、京浜東北線、それから TX を始めとして、あるいは地下
鉄が銀座線から丸ノ内線から、日比谷線から、どれもが通る町いうのは、こんな
に見事なところはないのですね。しかも集積性というのがあって、ある意味での
知の集積があります。例えば千代田区というのは 23 区の中で最大、最も多い4年
生大学を持っているし、最も病院関係、総合病院を持っているというのはご存じ
かと思います。
それから言うまでもなく、IT 産業の集積です。一時期渋谷区が最高だというふう
に言われましたけども、それの大体2倍から3倍の集積を誇っているというのが
秋葉原です。これは先天技術と親和性の高い秋葉原ということが言えます。例え
ば近くの神田ですね、これはいわゆる古本屋街を中心にした文系の町です。それ
からもう一つ上野、芸大があるぐらい芸術の町です。しかし秋葉原というのは、
ある意味では理系の町だったのですね。
例えば秋葉原というのは、最近は萌えだとかオタクだとかっていうことが言われ
ていますが、日本の技術者、研究者のかなりの部分は秋葉原です。ですからあな
たにとっての秋葉の思い出はなんですか?ということを理系の研究者に言ってく
ださい。大抵は1時間話が終わらないです。学生の時にあそこに行って、秋月で
なんとかの部品を買ってとか、それからあそこで何々を買ってなんていう話が、
常に動くのはここです。
もう一つあります。再開発を行った時に非常に大きかったのは、都心の三角形に
なるということです。こちら側は非常に狭い中で、ワンメータープラスで行ける
三角形を作っていること。日本の中心である東京の再開発は、丸の内と六本木と
秋葉原を中心に行われました。丸の内は当然ビジネス都心で、六本木は新しい文
化都心だとすれば、秋葉原は一種のテクノロジー都心としての意味合いを持って
います。
秋葉原の都市的特徴をちょっと申し上げるのですが、秋葉原って皆さんここもそ
うだと思ってらっしゃるかもしれませんけれども、われわれの世代で言うと、秋
葉っていうのはここの範囲だけを指します。すなわち何が言いたいかと、秋葉原
は拡張しているということですね。どういう地域かというと、昌平橋通りと、こ
ちらの山手線のライン、それからこちら側で神田川と、それから蔵前橋通り、す
なわち末広町のところですね。ここのラインで結ばれたこの四角形、このエリア
を通常は秋葉原と呼びます。ですから UDX だとか大ビルができたこっち側という
のは、实は秋葉の外れなのですね。ましてやヨドバシさんたちが出たようなとこ
48
ろは秋葉原じゃありません。
これはだけども、ヨドバシさんは前に新宿西口でヨドバシカメラって皆さん言い
ますけれども、あそこは昔われわれにとっては新宿じゃありませんでした。あれ
は淀橋だったのですね。ところがそこに作ることで、ヨドバシカメラはいつの間
にか新宿を拡張した、そして同じように、秋葉原の外に作ることによって秋葉原
を拡張した。ご存じ通り山手線の端と端、ちょうど対角線に新宿と秋葉原がある
ことはお分かりだと思います。それを踏まえると、西口と東口が逆に拡張してい
るっていうスタイルを取っているっていうのはよくお分かりになると思います。
じゃあこの特徴はどうなったのか、ここに再開発の拠点である先ほど言った UDX、
あるいはクロスフィールドなんか来ましたけれども、そこを行ってみると5つの
特徴があります。1つはエッジですね。エッジがこのぐらいシャープに切れてい
る町っていうのはないのですね。すなわちここを出ると秋葉じゃない。こっちか
ら入ったら秋葉だって言える町はそうそうありません。
例えばここの末広町の蔵前橋を出た途端、われわれはもうその先は黒門町から広
小路です。こっち側を出れば、北側行けば御茶ノ水ですね。こちら側を行くと、
当然問屋街ですし、秋葉をここのところを越えて万世橋を越えれば、これは神田
っていうふうになります。
そして中のディストリクト、ここ自身が明確なるコンセプト、あるいは認識をさ
れているっていうところもほぼありません。世の中の調査をすると 99%の人が、秋
葉原は電気街だと答えます。それから欧米からの観光実の人、あるいは中国、東
アジアからの方も秋葉と聞いて、大体8割以上はエレクトリックタウンと答えま
す。最近はいわゆるオタクの町とか、萌え系の町というふうに言われたのですが、
ここ5年から 10 年の話です。
じゃあこのぐらいエリアが、エッジが切れていて、中が明確な町っていうのはど
こにあるのか、日本ではあと1つしかありません。これ銀座なのです。銀座だけ
はエッジが切れています。どういうことかというと、首都高速で全部囲まれてい
て、ここを出ると日比谷、ここを出ると東銀座、ここを出ると京橋、ここを出る
と新橋っていうのが明確に分かるのは銀座だけなのです。
ところが銀座と秋葉原の違い、それで銀座っていうと皆さん大部分は高級ショッ
ピングタウンだと、こういうふうに答えます。ところが明確な違いがあるのです
ね。それは何かというと、銀座は地名なのです。銀座1丁目から8丁目まで全部
地名です。中央区銀座という。ところが秋葉原というのは地名じゃありません。
ここは全部地名的には神田です。たまたま今われわれがいるここは台東区秋葉原
であって、世間でいう秋葉原では全然ないですね。だから世間のみんなが認識し
ている秋葉原というのは实は地名では神田なのです。
さぁ、もう一つ大きい特徴はなんですか?パスがある。すなわち中央通りがあっ
49
て、ほぼ碁盤の目のようになっている。これはどこに類するかというとニューヨ
ークです。ニューヨークのブロードウェイというのがあって、オフブロードウェ
イがあり、オフオフブロードウェイがあることと全く同じです。すなわちブロー
ドウェイの周りには向こうだったらミュージカルから演劇の一番大衆的なものが
置かれます。ここの場合は量販店がずっと並びます。オフブロードウェイ、ニュ
ーヨークの場合は、尐し通が好むようなものがあります。大体秋葉原も同じで、
一本入ると専門店があります。オフオフブロードウェイになると、实験的なもの
や、ちょっと怪しいようなところがニューヨークにはあります。こちらもそうで
す。秋葉原でも皆さんご存じの通り、オフオフブロードウェイには怪しげなもの
が並びます。ここはオフオフオフオフぐらいですから、もっと怪しいかもしれま
せん。
さらに、ノードというのがあります。ノードというのは何かというと、どこが人
の拠点かということです。ノードも实にクリアになっている。どこに人が集積す
る入り口があるか、そのノードを過ぎると、いわば神社の前だとか、あるいは寺
の町だとかいうところで、ここを入ると聖地になるという部分がありますね。皆
さん秋葉原が聖地だと呼ばれているのは、これはいろいろな人たちの聖地、ある
種の門を通っていくというスタイルなのですね。
そして最後にランドマーク。これだけがなかったのですね。ランドマークってい
うのは、ご存じの通り横浜のランドマークタワーのように、町に行った時に、あ
そこだね、あっちだね、っていうふうに見ることができるのがランドマークです。
实は秋葉原にはそういうランドマークがなかったのですね。だから今回 UDX とダ
イビルができて、大体すっと見渡した時にあそこだということが分かるようにな
りました。これで5つの、通常これはケヴィン・リンチという有名なアメリカの
建築家が出した都市の特徴を見極めるコンセプトがあります。この5つは实は秋
葉原では明確になっていると言えます。
この秋葉原の歴史をひも解いてみるとどうなるか。戦後すぐに始まったのがラジ
オ街です。このラジオ街は、テクノロジーのオタクの人たちが、いわば来たわけ
ですね。そして自作のラジオを作るなど、いろいろなものを作って、町が発展し
ました。これが 60 年代から 70 年代、高度成長期に入りますと、電化製品の町に
なって、いわゆる電気街にだんだん成長してきます。今ある量販店のかなりの部
分は、そこで動いていたわけです。それから 80 年代になるとこれはパソコンの町
に変わります。だんだん電気製品の中でも、パソコンというものが有力な商品に
なって、皆さんご存じのようなパソコン街になっていきました。
そして現在はどうなったかというと、私はロボットとフィギュアの町、こういう
ふうに言っています。もちろんこれはロボットというのは象徴です。ハイテクの
象徴ですね。フィギュアはいわゆるサブカルチャーの象徴です。ロボットとフィ
50
ギュア、すなわちここはテクノロジーとコンテンツの町に変わってきたというこ
とがあります。ただしここで重要なことは、交代ではなく積層だということです。
すなわち、ラジオ街がなくなって電気街になり、電気街がなくなってパソコン街
になったというわけではなく、それぞれが今どれも重なっています。すなわち発
展と成長、旧来モデルも残りつつ新しいモデルもそれに積み重なるという、極め
て特徴的な進展をしている町だというふうに言えます。
その特徴の1つ目は何か。これなのだか分かりますか?これはいわゆる電気のデ
バイスのパーツなのですよね。そしてこれはいわゆるガチャポン、そしてフィギ
ュアがあって、これはおでん缶です。要するにいろんなものが徹底的に集積する
ということです。例えばこのあとでオノデンの小野社長が出られますけど、オノ
デンさんに行けばないものはない。夏でもこたつを売っている家電量販店はそう
はないはずです。
2つ目の特徴。これは一番近代的なメインの通りのところのビル群ですね。でも
そのすき間に、例えば江戸時代からのお店があります。例えば一本入ったところ
に、宮内庁御用達のお箸屋さんがある。すなわちこれは江戸時代からの神田の名
残が全部あるのですね。ご存じの通り、神田明神が秋葉原の守り神ですから、そ
ういうところとこういう近代的なものが、新旧融合しているのが秋葉原の特徴で
す。
さらに量販店街、いわゆる秋葉の中心というと、われわれはここを指します。す
なわち中央通りと明神通りの交差点、ここを秋葉と通常は言います。ここが秋葉
のメインだとすると、ここにいわゆる量販店があることで、その隣にケーブルの
専門店のような専門家、プロが行くお店があることはご存じでしょうか。これが
例えば大阪の日本橋と明らかに違うところです。だから、規模が大きいヨドバシ
さんが来ても、全然町が崩れず、むしろ発展するというのはそういう理由です。
さらに、ラジオセンターなんかに行けば、こういう一坪ショップというのがたく
さんあるというのは、よくお分かりだと思います。そうすると、量販店も専門店
もパーツ屋さんもあれば、さらに一本入ったところにジャンク屋さんもあります。
すなわちこれはどういうことかというと、例えば同じ電機だとしても、多層構造
を持っているということになります。さらに多層化ということでいえば、地域の
住民もいらっしゃるし、もちろん代々江戸っ子の方々もたくさんいる。それから
ここには数万人の地域従業者の方がいる。そして地域の来訪実、われわれが再開
発を始めた 12 年前は、大体1日 10 万人から 11 万人と言われていました。今は 20
数万人と言われています。
すなわ、この 10 年間で地域来訪者数は倍になりました。
こういう3つの集積交流があるというのは珍しい町なのですね。例えば銀座だっ
たらほとんどの方は地域来訪者です。例えば世田谷の住宅街に行ったら、ほとん
どの方は地域住民です。これがあんばい良く混じっているというのは、秋葉原の
51
極めて重要な特色です。要するにテストマーケティングに最適な町、こういうこ
とになります。じゃあそういう秋葉がどういうふうにこの 10 年間変わっていった
のかを見てみましょう。
秋葉原というのは割と最近の話。それからまた短くするので秋葉というふうに呼
ばれている。元祖アキバッパラの略称です。それから秋葉と言った時には、先ほ
どの中央通りと明神通りのクロスするところが、大体われわれは秋葉と。だけど
ももう一つは、秋葉原のスピリットを表す意味でわれわれは秋葉っていう言い方
をずっとしています。
空間的な秋葉原の拡張は先ほどお見せしたように、これからずっと東側へ出てっ
たといいます。秋葉原はずっと拡張してきているということです。それから秋葉
原に来る人たちもずっと進化しています。これは、私は5種族が進化したという
言い方をしています。なぜか?先ほどのラジオ街の時にいたのはどういう人たち
かというと、テクノ系のオタクの人たちです。すなわちマニアと呼ばれていた人
たちがみんな来ました。ところが皆さんよくお分かりの通り、テクノロジーとい
うのは、ある発展段階を遂げると2つに分かれるのですね。1つはハード系、も
う一つはソフト系です。当然ハードウェアに徹底的に凝る人たちがいて、もう一
つはソフトウェアに凝る人たち。ソフトウェアに凝る人たちは、だんだんソフト
ウェアを使って何に行くでしょうか?コンテンツ系です。そしてコンテンツ系を
さらに進化させるとクリエイティブな話、アート的な話が出てきて、さらに趣味
の世界に行くと、これが萌え系になっていくということですね。これが今の5種
族です。5種族が混在しているのが、今秋葉の来訪者 20 数万人だというふうに耂
えています。
でも最近は新種族が出始めました。新種族はどういうことかというと、いわゆる
萌え系のオタクはこういう人たちが多いわけです。黒いストレートヘアで色白で、
どちらかというと“癒やし系”のスマイルをしてくださる、これが萌え系の元祖
だったわけですね。元祖はこれです。しかし、ここ数年こっちのタイプの人たち
も増えてきました。すなわち茶髪系で色白ではなく顔黒で、それからミニスカー
トの種類も違って、同じニーハイでも違う、このようなスタイルがあったのです
ね。こういう人たちはどちらかというと、癒やし系のスマイルではなくてニラミ
系と言われているやり方をしています。
町作りをどういうふうに耂えていくか、ビル栄えて町一層栄えるために、東京と
いう首都圏というメガロポリスはいろんなとんがった町があったほうが良い。タ
ウン特化をしたほうが良い。とんがる個性的な町作り、そして全体最適と局所最
適、明快なコンセプト指向、そしてリソースを形にする、そういうようなものを、
われわれは耂えたところです。
秋葉原は現代の高野山だという言い方を私はします。高野山いうのは、ご存じの
52
通り、中世の昔から日本の宗教の拠点です。そしてここで使われていたのは、高
野山の昼寝、高野山の午睡という言い方があります。これをなぞらえて私は秋葉
の午睡、ないしは秋葉の昼寝という言い方をします。どういうことか、高野山と
いうのは中世の時代にそこに日本中から人が集まったのですね。だから高野山の
坊为は昼寝をするだけで、日本中の情報を全部手に入れることができる。京都よ
りも早く情報が手に入ったと。なぜなら高野聖といういわば現代でいうエバンジ
ェリストが日本中の情報を全部持って帰ってきていたから。それもあるし、それ
からお参りに来る人たちがいたから、その情報で全部いろんなものが分かったと
いうのですね。
じゃあここのテクノおよびサブカルチャー拠点として、秋葉原は歩いているだけ
で、いわば昼寝をしているだけですべての情報が入ってくるだろうということな
のですね。それで私は数年前に、まだ東京大学の教授をやっているころに、東京
大学先端科学技術研究センターの秋葉原オフィスというのを作りました。今は耐
震構造の問題で壊しましたけれども、そこに拠点を持ち、そこにいると、テクノ
ロジーとカルチャーとマーケットの情報が全部入るというようなことをやってい
ました。
ここは地図と文化の拠点であり、人々の交流拠点であり、トレンドの集積と発信
地点だということを耂えています。秋葉で行うビジネスっていうのは、モデルが
変容と多様化をしています。1つ目は何かっていうと、ビジネス生態系が新陳代
謝しています。変わらないのは遊びっ気と戯れっていうことではないかというふ
うに私は思っていますし、それから神田というのは、实は元祖、江戸時代からの
元祖シティボーイの町なのです。ですから本当は粋でいなせな連中がいるはずな
のですが、最近は必ずしもそうではないかもしれません。
新しいビジネスを試みるには非常にいいところです。趣味のビジネスと業務用の
ビジネスが昔からクロスしています。例えばテクノロジーとしてはどういうこと
かっていうと、皆さんご存じかもしれませんけれども、表に向かってのビジネス
だけではないですね。例えば小さなビルの2階3階に大企業の研究拠点が名札を
出さずにあるっていうのはご存じですか?幾つも实はそっとあるのですね。それ
は何かっていうと、秋葉の動向を見たり、秋葉でいろんな实験器具の試作機を作
るための部品調達をしたりという拠点が实はひそかに幾つもあるのです。それか
らコスプレメイド。それからこれは、著作権上問題かどうかは別にして、自炊ビ
ジネスから AKB48、これまでの拠点ビジネスだけでなくいろいろな新しいビジネス
が生まれてきています。それから旧来ビジネスの展開があります。仕事か遊びか
だけではなく、まじめか戯れかという軸もあり、この四象限について、ほぼカバ
ーできるというのが秋葉原です。
そして教師と伝道師、エバンジェリストがいるっていうのがここですね。だから
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テクノロジーのエバンジェリストもいれば、コンテンツ系のエバンジェリストも
たくさんいるわけです。物とサービスとそれらの組み合わせが、あらゆるものが
浮き上がってくるのが秋葉原だという具合になります。
最後に申し上げたいのは、工芸立国論についてです。今、日本の立国というのは、
これは経産省向けにお話をさせていただくと、日本の政府は今4つの立国をやっ
ています。1つは科学技術立国です。もう一つは文化立国です。さらに知財立国
と観光立国っていう4つがあるのですが、これは实はきれいに整理できます。こ
れは明確に政府が意図したものではないらしいのですが、結果として整理できま
す。どういうことかというと、片方が普遍性、universality、片方は個別性、unique
です。2つのUで、ここは仕切れるわけです。どういうか、 universality in
uniqueness と uniqueness in universality。これを相似と相違、共通と特徴、不
易と流行というふうにわれわれ言いますけれども。これで見ると、科学技術に関
しては、例えばアフリカの人でも中国の人でも日本の人でも全然変わらない科学
技術というのがありますね。ところが文化というのは個別具体的なものです。普
遍的なものと個別具体的なもので立国をする。
さらに知的財産は産業財産権のほうと、著作権のほうと2つある。さらに観光立
国は、こういう町の電気製品みたいな、universality のあるものから、例えば萌
え文化みたいな uniqueness なものまである。これが両側に関わっているところが、
ここでの特徴です。すると、工と芸というのを見ると、工はテクノロジー、芸は
アートですね。工芸という言い方は实は秋葉原のためにあったようなものなので
す。テクノロジーとアート、技術知性と芸術感性、この融合です。そしてエンジ
ニアとアーティストがアルチザンを作る。アルチザンというのは皆さんご存じの
通り、手塚治虫が死んだ時に、山下達郎の作ったアトムの子というオマージュ作
品が含まれている CD のタイトルですね。アルチザンというのは、芸術といわば技
能との融合です。
そして町工場と中小企業、ご存じの方尐ないかもしれませんけども、工芸国家と
呼ばれるのは、恐らく日本とドイツ、イタリア、イギリス、フランス、これだけ
なのですね。最近アメリカがややそれになっている。これらの都市の特徴は何か、
すなわち中国でも韓国でもないのです。それは何かというと、町工場だとか中小
企業だとかというのがたくさんあるのはそういう町なのです。典型的なのはイタ
リアです。イタリアはファクトリーブランドで賞も取った。イタリアの工芸品は
ファクトリーブランドです。そういうものが発達するというのは、实は英仏独伊
日、こういう5か国しかない、ということなのですね。
そして秋葉はこの工芸、ファクトリーブランドを打ち出せる可能性がある町だと、
こういうことになると思います。おまけの話はこれあとでいろいろあるのですけ
れども、ディスカッションのほうに、時間の関係で持っていきたいと思います。
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一忚今のが皆さんに秋葉原を共通まず理解を整えてということで、お話をさせて
いただきました。どうもありがとうございました。
パネルディスカッション
(0)自己紹介
福嶋:
それでは、ここからは、私、株式会社モエ・ジャパン代表取締役の福嶋麻衣子が
ファシリテーターとして、この後半のパネルディスカッションのファシリテータ
ーを勤めてさせていただきます。どうぞよろしくお願い致します。それではまず
一人一人の自己紹介をしたいと思いますので、まずは最初に私の自己紹介からさ
せていただきます。
私はちょうど 10 年程前から秋葉原には通い始めまして。多分皆さますごい秋葉原
に長い方々多いので、最近のほうなのかもしれないですけれども、それからやは
り先ほどの妹尾様の話にあったように、秋葉原の魅力にハマりまして、5年ほど
前から株式会社モエ・ジャパンという会社を始めて、この会場にもなっている秋
葉原 MOGRA というお店と、外神田3丁目にありますディアステージというお店の
2店舗の経営をしております。
どちらかというと、内容は萌え系っていうのですかね。そういったお店のジャン
ルに入るようなお店をやっているのですけれども、それを中心に、最近は音楽、
レコード会社さんと一緒にアイドルのプロデュースをしたりですとか、そういっ
た音楽の業界と秋葉原っていう文化をつなげたりですとか、そういった活動を为
にしております。よろしくお願い致します。ではお隣の小野さんから自己紹介お
願いします。
小野:
秋葉原電気街振興会で会長職を担当しております小野と申します。秋葉原電気街
振興会というのは 1979 年に設立された任意団体で、名前の通り基本的には電気製
品を商っている会社の集合体です。現在では 46 の法人が加盟しておられまして、
そのほかにメーカーさん、問屋さんを中心に 36 法人が賛助団体として参加してい
ただいています。
私共の活動は、为なものとしては年に2回のいわゆる電気街祭りという集実イベ
ントがあるのですが、そのほかに最近では先ほど妹尾先生のお話にもありました
けれども、2008 年の例の事件以降、さまざまな秋葉原に来る方たちのためのイン
フラ作りといいますか、環境作りのための活動、例えば防犯カメラの設置とか、
歩行者天国における店頭でのパトロール活動とか、あるいは大震災等が起きた時
の帰宅困難な方のためのサポート活動といった、この地域のインフラを、皆さん
が安心してこの町で時間を使っていただけるような環境作りのための活動を行っ
ております。
55
また最近、もう私たちの地域ではいわゆる同一の企業の団体としては、電気街振
興会ぐらいしかないのですが、今日もさまざまなパネリストの方が見えています
けども。今この町では昔は秋葉原といえば電気街しかなかったのが、今は口の悪
い仲間に言わせると秋葉原電器以外というぐらいで、電器屋以外のほうが多くな
っちゃったということはありますけれども、そういうさまざまな異業種の方たち
と、この町を共に良い町にしていくための場というものを、これから先必要にな
ってくるのではないかなというふうに耂えてございます。そのための1つの契機
に、今日の場がなればいいというふうに耂えております。よろしくお願い致しま
す。
鈴木:
はい、皆さんこんにちは。ネオディライトインターナショナルの鈴木と申します。
よろしくお願いします。今自分は小野社長からあった電気以外の萌え文化ってい
うところでのメイドカフェですね。メイドリーミンという屋号で、今秋葉原に5
店舗と、渋谷と新宿と池袋、大阪2店舗、あと今度4月にお台場に初めてできる
メイドカフェというふうなところを今展開しております。
私が多分一番この中では新参者だと思うのですけども、2008 年、例の事件があっ
た年に初めて秋葉原に来まして、直感的にビジネスの可能性をすごく感じる町で、
そこから2カ月後に、初めて飲食店もやったことない人間がお店を出し、今4年
目になります。ちょうど2月でうちは決算が終わったので、4期目が終了しまし
て、今5期目に3月から入ったというふうな、まだ赤ん坊のような会社でござい
ます。本日はよろしくお願いします。
ガルバレス:こんにちは。ガルバレスです。私は日本に留学に来ていた 2006 年から 2010 年に
かけて、外国人向け秋葉原ツアーをやっておりまして。毎週日曜日、2人から 20
人のツアー団体を担当し、3時間ぐらい秋葉原を歩き回りました、悟空の格好で。
そういう人ですから、よろしくお願いします。
右高:
ライトクリエートの右高と申します。よろしくお願いします。私共の会社は、鈴
木さんのところと同じ萌え系のビジネスをやっているのですけど。いわゆるメイ
ドカフェではなく、どちらかといったらサブカル的な店舗が多いです。簡卖にご
紹介しますと、コスプレ居酒屋のリトル BSD というお店ですとか、メイドさんと
ダーツができるお店ですとか、鉄道居酒屋と呼ばれる鉄道をモチーフにしたお店。
あとはコスプレの女の子がいる秋葉雀荘テンパネというお店です。あとは最近は
やっているモンハンを中心とした PSP とか3DS とか、そういったものを1人で来
ても、ほかのお実さんと一緒に楽しめるっていう秋葉原集会所というお店です。
あとは秋葉にはなかなか尐ないですけど、フワットっていう普通の美容审をやっ
56
ており、同人誌を制作する秋葉原製作所というお店ですとか、あとは青二プロダ
クションに所属している松風雅也さんという声優さんがいるのですけど、その方
が店長をやっている声優カフェっていうお店ですとか、あとアニソン専門のバー、
アニスタっていうお店ですとか、あとは店舗展開としてはインターネット漫画喫
茶コムコムというのを都内で 13 店舗やっていまして、秋葉原では中通りの富士そ
ばがあるビルの5~8F の4フロアでやっています。そこの2、3階が鈴木社長の
メイドリーミンさんのお店が同居していただいているというような、そういった
ちょっとユニークなサブカルなお店を展開している会社です。きょうはよろしく
お願いします。
福嶋:
はい、今紹介にあっただけでも、すごく秋葉原で皆さん何かしらやってらっしゃ
る方なのですけれども、すごくユニークな方々多いので、きょうはどうなること
やらと私もすごく心配しているのですが。一忚ディスカッションの頄目として、
今回4巡目まで頄目がございます。1巡目、秋葉原の地域としての魅力、2巡目
が外国人から見た秋葉原、3巡目が文化の融合、4巡目が今後の秋葉原の成長戦
略と、もしかしたらお手元の資料にないかもしれないのですけども、一忚この4
つをディスカッションの頄目として、お話を進めさせていただければと思ってお
ります。
(1)秋葉原の地域としての魅力
福嶋:
では早速1巡目の秋葉原の地域としての魅力というところから始めさせていただ
きたいと思います。まずこの話、まず皆さん多分何かしら秋葉原に、地域として
の魅力をお感じになって、お集まりになった方々だと思うのですけれども、その
中でも一番長いと思われる小野会長から、秋葉原の魅力、お聞きしてもよろしい
ですか?ちょっと先ほどの妹尾さんのお話でもいろいろあったので、かぶる部分
もあるかもしれませんが。
小野:
そうですね。かなり重複する面もあると思います。妹尾先生がおっしゃったよう
に、積層していて、電気製品というカテゴリーに絞っても、この町には残ってい
ると。要は世界にもあちこちこういう電気製品を商っている町の集積体はありま
すので、今何が世の中に多いものかっていうことは、どこ行っても分かるかもし
れないけども、時間的な流れにおいて、電気製品がどのように発展していったか
が分かるのは秋葉原の魅力ではないか。
例えばこの町では戦後間もなくスター
トしたころの名残、名残と言ったら失礼ですけども、まだ電気の乾球、いわゆる
ランプの専門のお店が今でもあるし、オーディオ専門店もあるし、あるいはパー
ツの専門店さんもある。といったさまざまな専門店が層のようになっているとい
57
うことで、やはりこれは日本だけではなくて世界的にも稀有な町ではないかなと
いうふうに思いますね。
そういった電気製品というところでいえば、この町の特殊性というか、あたかも
十二卖のように次々と新しいカテゴリーの商品が出てくれば、この町にも同様に
出てくることがいえます。例えば日本でウィンドウズパソコンが本格的にデビュ
ーした 95、98 の時です。この町の深夜に、観光バスが何十台も停まり、各電気メ
ーカーの技術の方々がたくさんやってきた。片やアップルのファンが行列してウ
ィンドウズ粉砕と言って歩いている。こういう町は本当に他にはないのではと思
います。
そのころのこの町では、秋葉原の JR の駅から降りて、改札出るまでの間は人が数
珠つなぎになってしまって、私たちが自分の会社に帰る時には神田まで行って神
田から歩いたほうが早かったという時があるぐらいでした、この町が日本のパソ
コンの普及に対して果たした役割というのは非常に多かったと思うのです。そう
いった意味での自作のパソコンのマニアの層にも忚えられるし、相変わらず真空
管という昔ながらのパーツもいまだにあるし、そういった意味ではまさに日本、
あるいは世界の家庭用の電気製品の歴史そのものが、この町では断面図のように
分かる。地層になっているということが非常に面白いのではと思いますね。
福嶋:
小野さんは最近の萌え系のカルチャーが出てきたっていうことに関してはどうい
うふうに思われているのでしょうか。
小野:
この秋葉原でそれが発生したというか、生まれてきたというのは必然性があって。
先にも妹尾先生の話ではないけども、ソフト系の技術者からゲームが生まれ、ゲ
ームからやがてそれを实在した小さなフィギュアになり、フィギュアをもっと、
生身の人間にフィギュアの格好をさせたらメイドになっちゃったっていうふうに、
この町ではそういうものが生まれたっていうのは、やはり秋葉原こそで出たとい
う必然性があるというふうに思っています。
福嶋:
右高さんは、最初は秋葉原にやって来たのはどういった理由だったのですか?
右高 : 私は秋葉原で最初漫画喫茶出店したのですよ。せっかく秋葉原にやるのだからメ
イドさんがいる漫画喫茶やろうということで。
福嶋:
それは何年ごろですか?
右高:
9年前ですね。2005 年かな。
福嶋:
ではもうメイド喫茶が幾つか出てきたころですか?
右高:
2店舗、メイリッシュとキュアメイドカフェの2店舗があった頃です。
福嶋:
まだアットホームさんがなかったころですね。
58
右高:
ない時ですね。あとはひよこ屋とかありました。
福嶋:
ひよこ屋ありましたね、元祖。
右高 : その時に、メイドさんのいる漫画喫茶出したのですけど、1日 100 人ぐらいお実
さん来てくださったのですけど、実卖価が安かったので1年後につぶれました。
その時にコスプレ居酒屋のリトル BSD というお店を出したのですけど、そこから
ですね今の事業が始まったのは。
福嶋:
右高さん自身はオタクと呼ばれるようなご趣味はお持ちでしょうか。
右高:
僕は漫画オタクとあとアニメ。大抵暇な時は TSUTAYA でアニメを全巻借りてきて
朝まで見ているとか、漫画とかも自分で漫画をずっと読んでいたくて漫画喫茶を
やっているので。漫画とかも自分で買いに行きます。
福嶋:
その漫画喫茶をやろうと思い、ほかの町ではなく秋葉原という町を選んだってい
う理由はやはりオタクの町だったからですか?
右高:
そうですね。やっぱり好きな町なので、好きな場所で好きなことをやるのが一番
幸せかなという耂えで、秋葉原を選びました。
福嶋:
なるほど。その点鈴木社長はまた右高さんとは別の視点で、秋葉原にお店を出し
た方だと思うのですけれども、最初に来た時に衝撃を受けたっていうふうに、ビ
ジネスの可能性を感じたっていうふうにおっしゃっていましたけど、その理由は
どういうところですか?
鈴木:
直感的にこの町は最高だなと感じました。先ほどの集積している、積み重なって
いるっていうふうなお話ですが、この町に来た時に、普通にメイドさんが町歩い
たりとか、あとはパトリックさんみたいにドラゴンボールの格好した人が歩いて
いたりとか。もともと丸の内で仕事をやっていたのですけど、丸の内にいたらな
んだこれはと思うような人たちが普通にいられる町、アイドルが普通に町を歩い
ても誰も不思議ではない、なんかまるでディズニーランドみたいな、そういう面
白い町だなっていうふうな、とても強烈なパワーを感じました。そして知らない
世界に飛び込んでみたら最高だったという感じです。
福嶋:
でもその2カ月後にお店をやろうっていう、そこまで人生観が変わるっていうの
ですかね、そんなパワーを感じちゃったってことですよね?
鈴木:
そうですね。10 年ぐらい前の会社でやっていて、会社のために働いて。いずれ独
立したいなというふうなところで、もう1人自分とあと副社長がいるのですけど
も、副社長と2人で秋葉原に初めて来て。そのパワーを感じて、ただビジネスを
やるためには、やはり集実っていうのが一番ベンチャー企業には必要な頄目でし
て、町がその集実をしてくれるというふうなところに可能性を感じました。もし
59
かしてお店の注目度がなかったとしても、この町がとても面白い町なので、世界
からいろんな人が来るような町に、もっともっとなるなというふうな、本当に感
覚だったのですけども、そういったところがあったので、秋葉原の町に助けられ
て、なんとかうちは今こうなっているっていう感じですかね。
福嶋:
面白いですね。また鈴木社長のお店は観光実の方が非常に多いお店と聞いていま
す。右高社長のお店とか、私のお店とかはほとんどリピーターの方ですよね。
右高:
観光実は来ないですね。
福嶋:
来ないですね。なんかそのあたりもすごくそれぞれで、秋葉原への入り方でいろ
いろ影響があるのじゃないかなと、今お話伺っていて思いました。
ガルバレスさんは、秋葉原であのような活動を始めたきっかけはなんだったので
すか?
ガルバレス:やっぱり秋葉原はディズニーではないところ、だからこそ面白いと思ったのです。
ディズニーだったら、その動きは完全に制御されているような気がしまして、秋
葉原でしたら自由に遊べるような気がしました。ただ、その意味でやっぱりすご
く迷いやすい町ですので、ツアーが必要じゃないかなと思ったのです。
あともう一つは、秋葉原には例えば同人誌とか、同人誌専門店とか、衣装専門店、
フィギュア専門店とか、ほかのところにない専門店が多いですけれども、その中
にエロスが潜んでいる町です。完全に盛り場だと思うのですけれども、その意味
でこの町にはすごく可能性があるかなと思ったのです。なんていうか、性格的に
すごく冷静に紹介しなければならないかなと思ったのです。町の誤解されやすい
ところじゃないかなと思ったので。
福嶋:
最近でもやっぱり海外の方がいらっしゃっても、なかなか本当に面白い秋葉原の
ディープゾーンには行けずに、表の中央通りの尐しのお店で終わってしまってい
るのが残念だったりしますね。
ガルバレス:確かにそうですけれども、連れて行ったらすごく嫌悪感持つ人もいます。例えば
そういうディープな店に入ったら、
「何この児童ポルノ!」みたいな、そういうふ
うな反忚が多いのですよ。だから私はツアーガイドを通して、やっぱり避けるほ
うが良いのじゃないかなと思っています。やっぱりそういうところに連れて行っ
ても、反忚は必ずしも良いというわけでもないので、難しいところですね。
60
(2)外国人から見た秋葉原の魅力
福嶋:
なるほど。ちょうど今のお話、2巡目の外国人から見た秋葉原というところにも
つながっていくと思うので、発展させていきたいなと思うのですけども。そうい
った意味では、ガルバレスさんは海外から日本に来て、特に秋葉原という町を見
て、やっぱここにしかない、っていう感じを受けたのでしょうか。
ガルバレス:そうですね。完全にアニメ専門店とか漫画専門店もここに集まっているので、そ
の濃度が高い町ですので、オタクの聖地と言っても間違ってないと思いました。
ただ、ちょっと変わった趣味のオタクの町じゃないかなとも思いました。オタク
の町、秋葉原は美尐女キャラの町です。90 年代から例えば美尐女ゲームがあり、
そこからメイド喫茶が始まったのじゃないですか。それも例えばフィギュア、そ
のフィギュアは卖なるフィギュアじゃなくて、やっぱり美尐女フィギュアですよ
ね。だからこの町は美尐女系オタク、美尐女オタクの町じゃないかなと思いまし
た。その意味ですごく面白い町で、私の趣味に完全に合っている町です。それは
必ずしも他の人と同じ耂えか分かりませんけど、やっぱりそういうところで、特
別な町じゃないかなと思いました。
福嶋:
ガルバレスさん自身が案内されていた海外の方々っていうのは、一番どういうと
ころに驚くというか、どういうところにファンタスティックって、思ってくれる
のかっていうのを伺いたいのですけど。
ガルバレス:やっぱりメイド喫茶ですね。そういうメイド喫茶とか、テレビで見たりしていま
すんで、そういうところは非常にオタク的な素晴らしいところじゃないかなと思
っているのです。ただ、实際に行ったら、ああなのだ、思ったほどオタク的なと
ころじゃなかったみたいな反忚もあります。
福嶋:
意外とがっかりするのでしょうか。
ガルバレス:そうです。意外と普通といった反忚か、濃すぎるという反忚です。その2つの反
忚があるので、すごく極端に走っているような気がしました。メイド喫茶を紹介
しようと思っていた時に、驚いたのはその点ですね。なぜかっていうと、普通の
喫茶じゃないか、か、それともすごく変な店、と思い込む可能性がありますので。
そこは一番話が出たところですね。
福嶋:
右高さんは何かありますか?
61
右高:
普通の外国人の方がメイド喫茶行った時って、メイドとの会話はどうするのです
か?
ガルバレス:難しいです。例えば萌え萌えキュン、って言ったら、萌え萌えキュンはこういう
意味ですよという説明をするのですが、余計に説明したら、楽しくないのです。
また、メイドさんの隣良いですか?って言っても、そのようなことは完全に禁止
になっていますので、外国人としてもあんまり面白くない。外国人の話をちゃん
と聞いて答えてくれるメイドさんもいるのですけれども、メイドさんの中にはそ
ういうメイド喫茶の中身を何も分かってない外国人と話したくない、という人も
いますので。
右高:
怖いのでしょうね。
ガルバレス:怖いのでしょうね。お互いの勘違いがよく出てくると思うのですけれども。
右高 : 例えば僕のところとか、福嶋さんのところのお店って、外国人の方がほとんど来
ないから、英会話とか教えてないじゃないですか。
福嶋:
全然できないですね。
右高:
みんなできない。
福嶋:
英語のメニューの用意すらないですよね。
右高:
外国人が来ると驚きますもんね、みんな。
福嶋:
どっちかですね、反忚が。すごいっていってハマって、頑張って入っていこうと
するか、一瞬で怖いっていって出てっちゃうかみたいな。
右高:
鈴木さんのメイドリーミンって、英会話とかどうしているのですか?
鈴木:
お店には外国人の方は結構いらっしゃいますね。
福嶋 : 鈴木社長のところは何%ぐらいでしょう。結構外国人のお実さまが多かったとい
うお話ですが。
鈴木 : 震災前は 25%ぐらい外国の方がいらっしゃっていましたね。
福嶋:
25%ってすごい数字だと思うのですけど。
鈴木:
今はもう 17,8%ぐらいまでなっちゃったのですけど。
福嶋:
それでも多いですよね。
右高:
採用する時とか TOEIC の点数とか聞いているのですか?
鈴木:
最近、本当にすごく高学歴のメイドさんとかが多いのですよね。海外から留学に
来て、メイドリーミンで働きたいっていうふうに忚募する方もいらっしゃいます
し。
福嶋:
そうですね。最近女の子でアイドルになりたいとか、メイドさんになりたいから
62
ってわざわざ日本に来て、働く子もすごく多いですよね。
右高 : 例えば中国国籍の方とか、そういう人も働いている?
鈴木 : 今はそこまで積極的に採用はしてないですね。ただ一時期は採用していました。
やはり日本の文化を世界に広めていきたいっていう意味もあり、社名にインター
ナショナルって付けているのですけども、初めからこの文化を世界に持っていき
たいなと思っていました。うちはすごくミラー戦略みたいな形で、テレビでやっ
ていたまんまの、観光実の方が思い描くまんまのメイド喫茶をやろうっていうふ
うに作っていったのですね。中身にもともと自分が、こだわりがないので、ホス
トクラブの要素を入れたりなどしています。
福嶋
:シャンパンコールとかね。
鈴木
:シャンパンコール入れたりとか。ドンペリとか入れるなど。正直言うと、静か
なメイドカフェが好きな方からとってみたら、うちメイドカフェじゃないってよ
く言われるのです。
右高
:僕らはこだわりしかないですからね。
福嶋
:真逆ですよね、恐らく。
鈴木:
自分はこだわりがないというこだわりがある。なのでそういったところで、お実
さまの視点でどう見えるのか、面白おかしく見えてもいいだろうと。ただクリー
ンにいきすぎちゃうと面白くないので、アングラ感とクリーンのバランスってい
うところはいつも耂えながら進めていますね。
ガルバレス:先ほどの発言ですけど、日本の文化を発信したいとおっしゃったのですけれども、
古き良き技術とかのメイドインジャパン、そして違う意味のメイドという意味の
メイドインジャパンがありますが、こういう文化を発信したいかどうかについて、
疑問を投げたいと思います。誤解しやすい文化ですので、例えば JNTO のようこそ
ジャパンで、メイドが真ん中に立っているとか、相撲、芸者、メイド、というふ
うに紹介されるのはどうかなと時々思いますが。どうですか?
福嶋:
相撲、芸者、メイドってとてもぴったりですね。今の日本の文化。多分海外の方
から見たイメージのままなのではと。
63
ガルバレス:本当にそういう JNTO のパンフレットがあったのです。2010 年冬だと思うのです
けれども。
右高:京都だと舞妓さんに変身できる。だから秋葉でもメイドさんに変身できると良いか
なと思って、前ちょっとやっていたのですけど、観光実向けの PR がうち下手だか
ら、すぐにおなくなりになりました。
鈴木:
自分は侘び寂びでやりたいなと思っています。
福嶋:
侘び寂び萌え?
鈴木:
はい。侘び寂びがすごく自分大好きなので。詫び、寂び、萌えってよく分かんな
いのですけども、これを体系化して、空間であるとか雰囲気であるとか料理であ
るとかっていうところと全部織り交ぜて出せたら、すごく面白くなるのじゃない
かと思っています。
福嶋:
今話に出ているようなメイド喫茶系の萌えだとか、パトリックさんが好きって言
っている美尐女のものとか、イメージですけれども、もしかしたらヨーロッパと
かアメリカとか、そちらの方が多く来店しているのかなというイメージがありま
す。例えば中国系の方とか、アジアの方っていうのは、オノデンさんのような電
気街のほうですね。そちらのほうに行って、みんな一緒に炊飯器を持って帰るっ
ていうようなイメージのほうがあるのですけど、それは見ていていかがですか?
小野:
私共の店舗の隣に、いわゆるアダルトグッズの専門店がございまして、そこのお
店が秋葉原に来た当初は、店頭からすべてそのような商品を並べていたのですが、
最近は店頭にお菓子とかそういうものを置いているのですね。中国とかアジアか
ら来た、簡卖に言うと儒教圏の若い子たちなんかが、面白がって最初そういうの
見ていて中に入ってくのですよ。それで絶叫して出てくる。やはりさっきのお話
じゃないけど、国々によって随分道徳観とか、そういうものが違うわけであって、
やはりそのへんをきちんと、秋葉原はごちゃごちゃになっているのが面白い町な
のだけれども、それなりに交通整理をしてあげないと、すごい日本に行ったらひ
どい町だったというふうな印象を与える恐れがあります。逆にクール・ジャパン
という看板の下に、ポルノジャパンになっちゃ大変ですから。そのへんのところ
は、それぞれの国によって許容できる範囲ってあると思うのですけどもね。その
へんを交通整理していかないと、この町の面白さが逆に変な町だってなってしま
64
ったら困るなと思います。みんなで分かるような記号かなにかで、この店はこう
いう感じのお店ですよ、っていうのが入る前に分かれば良いかなという気は尐し
しています。
妹尾:
今の小野さんの話を尐しフォローすると、われわれが再開発をやった時に尐し悩
んだのはそこなのです。さっき言ったように、ブロードウェイとオフブロードウ
ェイとオフオフブロードウェイってやっぱりちょっと色が違うでしょ。表通りに
子どもたちを入れたくないなっていうお店がたくさん点在するっていうのはどう
なのか、っていうのはかなり議論があって、修学旅行が一時期秋葉を遠ざかって
いたのですよ。どういうことかっていうと、秋葉って怖い町だとかね、怖いって
いうか変な町だ。だから秋葉で修学旅行させないっていう波が实はたくさんあっ
たわけですよ。なぜかっていうと、メディアがあまりにも特徴的なものばっかり
を報道するでしょ?
右高:
18 禁の店ばっかりですね。
妹尾:
そうそう。だから、そこのところがメディアの人は取り上げたいっていうところ
と、实はそうじゃないよっていうところが微妙なのですよね。例えば秋葉原で産
学連携っていうさっきの UDX やダイビルがあって、そこで日本のいろんな大学の
産学連携施設の学生がたくさん来た時に、そこへ地域の大学生をやる時に父兄が
反対したっていう事件があった。だって秋葉ってなんかみんながメイドさんで歩
き回っている変な町でしょみたいな、そういうイメージがすごくできちゃった。
だからこれがちょっと困った問題だね、っていうのが一方でありますよね。
だけど、逆を言うと僕が再開発をやっていた時に、プロデュースを一生懸命やっ
ていた時に、アエラっていう雑誌で僕は批判されたのです。それはなぜかってい
ったら、テクノロジーばっかりじゃないか、妹尾さんがやるのは。だけど、萌え
系なんかをどうして入れ込まないのだって言われたので、僕は逆にそれは意図的
だよって言ったのです。なぜかといったら、萌え系だとかコンテンツは今皆さん
がおっしゃっているように、自由にやれば良いのです。萌え系は萌え萌えすれば
いいわけ。僕も实はオタクなので、僕は漫画オタクなのだけども、あるいはライ
ブハウスで演奏するほうなのですけども。
そういうのは、自由であまり手を突っ込むなって感じがあるわけね。テクノロジ
ーでなんとかっていうのは、日本の国が動かないといけない。日本はなんやかん
や言ったってベースはそこで食べているわけだから、そこんところはちゃんと手
入れなきゃいけないよねっていうのがあるので。そこの微妙な色分けのところは、
僕はある程度意図的に行ったのです。
65
また、さっきガルバレスさんが言ったのはすごく良いことだなと思って。面白い
のはディズニーじゃないのですよ、とおっしゃったでしょ。ディズニーってなん
なのかっていうと、ホストとキャストとゲストがちゃんとプログラムされている
わけです。役割分担しているわけ。それでやるからあそこはテーマパークで楽し
める、それはそれで面白さがある。だけど秋葉原はどうかっていうと、誰がホス
トで誰がキャストで誰がゲストだか分かんないところがある。そうすると、何が
起こるかっていうと、AKB のようにみんなで作り上げてくモデルが出てきた。あれ
はだから育てゲーで育った世代がやるからですよ。あれは育てゲーの世代と、さ
っきの美尐女ゲームで育った世代が参加している。だから AKB になる、みたいな
スタイルがあるでしょ。これは別の言い方をするとテクノロジーでも全く同じこ
とがあって、ベンダー側がイノベーションを提案するだけじゃなくて、ユーザー
側がみんななんか言ってのけるっていうのも秋葉の良さなのですよね。だから、
何か昔で言う、1.0 的なダウンロードの世界じゃなくて、アップロードの世界でも
なくて、みんながフラットな SNS の世界みたいなのを先取りしているのが实は秋
葉原なのです。
福嶋:
そうですね。かつてあった秋葉原の路上の文化っていうのも、私も最初にびっく
りしたことだったのですけど、演者とそれを忚援する側っていうのはほぼイコー
ルだったっていう状況があって。すぐ隣のただの女子高生が、突然写真を撮られ
始めて、急に演者になってしまう。その演者のほうも私モデルかも、ってなって、
写真を撮られるとか。
右高:
生楽器持ち込んでいる人とかもいましたね。
福嶋:
そう。急にそうですね。オタ芸を打っている人たちが今度は観光実の餌食になっ
て、観光実にとっての演者になってしまう。オタ芸を打っている、本当は観覧の
側だったはずの人間が、いつの間にかそうなっているといった本当にカオスな状
況がありましたね。
妹尾:
そっちを僕は片方で強調しているわけね。だから面白いよね、って言うのだけど、
同時に秋葉のすごさっていうのは何かっていうとプロのすごさです。
福嶋:
職人っていう意味ですか?
妹尾:
職人というかね、なんだろうな。例えばこれ皆さんあまりお気付きにならないと
思うからあえて僕が強調するのだけども、小野さんの店がなぜすごいかっていう
66
と、ごまするわけじゃないけどすごい店ですよ。なぜかっていうと、これは若い
人は分かると思うのだけども、普通に安売りしているお店に行ってね、例えば冷
蔵庫買いに行く。どれですか?とこういう話になる。でも彼のところに行くとど
うなるかというと、今どんなのを使ってらっしゃいますか?というと、大抵冷蔵
庫にしても電気洗濯機にしても、7年から 10 年の間に入替でしょ。7 年前 10 年前
のものでもみんな知っているわけ。じゃあそれが入っているのなら、これは 10cm
低いはずですよと、こういうことを言う。こういうことが言える店員さんがいる
ってすごいのですよ。だから僕らは信用して買いに行くわけね、そういうことを
やれるプロフェッショナルがいるっていうのも、この町の魅力なのですよ。
それから何かっていうと、先ほど僕はやっぱり小野さんは電気街の会長として、
とても良いこと耂えているなと思った。ここへ来た人たちが安心して時間を使え
るように、自分たちはやっていると。これ 3.11 のあとで、皆さん秋葉原に来まし
たか。僕はフィールドワーカーだから、秋葉原まず来て何かっつったら、最初に
乾電池とそれから携帯ラジオがなくなったのは秋葉原なのですよ。みんなが買い
に来てダーッとなくなった。ところが最初にそれが復活したのがどこかっていう
と、3日後のオノデン店頭からなのです。これすごいのどうしてかっていうと、
ほかの人たちは調達ルートを知らないわけ。ところが小野さんのところは、真っ
先に調達できる。そのぐらい秋葉原ではものを枯渇させてはいけないっていうプ
ロの精神。これはやっぱりすごいところなのですね。
小野:
ほかにね、あの地震のあとね、うちの店員は電車に乗ってラジオとか乾電池を仕
入れに行きましたよ。あるものは中国まで行って買ってきましたよ。
妹尾:
しかも、なくなっちゃったから高い値段で売るかっていうと売らないでしょ。こ
れが秋葉のスピリットなのですよ。これがすごい。ほかのところだったらみんな、
乾電池世の中にないから高く売っちゃえ、ってやるのだけど、それやらないので
すよ。秋葉の商い精神、これは、僕らはすごいと思う。
福嶋:
3.11 のまさにその日、秋葉原にいましたけど。3.11、わーって揺れてみんなが避
難しようって言っている中で、乾電池ありますよ、って叫んでいるのですよ。ア
キバオーの店員さんは、震災の5分後には手に乾電池と、懐中電灯持って、ラジ
オありますよ、って売っていたのですよ。私それを見て負けたなと思って。
妹尾:
例えば老舗の人たちはそれをやる一方で、従業員総出でみんな帰宅者のために、
あっちへ駅だって叫んでくれていた。そういう老舗がみんな自分の商売もさるこ
とながら、帰宅者のために全部身を投げて助けてくれていたっていうのは、僕は、
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これはすごい町だと思いますよ。
右高:
3.11 の時に漫画喫茶が、本棚が全部倒れちゃったのですよ。本が 20,000 冊、床に
ワーッてなっている状態で、これはもう営業どころじゃないって思ったのですけ
ど、秋葉原店は帰れない人がいっぱいいるから、本棚なくて良いから、とりあえ
ずお実さん入れよう、ってことで入れたのですよ。ものすごい数の方が朝まで過
ごすためにご来店なさっていただいて、秋葉原のあの日はメイドカフェさんとか
も無料で開放していたよね。
福嶋:
全部やっていましたね。
右高:
帰るところがない人はうちの床で寝てくださいって。
妹尾:
新しく来られた皆さんも秋葉スピリットをもっていただいている。これは老舗の
伝統が自然に染み渡ったところ、これが良い魅力かもしれないですね。
福嶋:
秋葉原ってところでビジネス、本当に老舗と新しいお店との両方ともが何かしら
秋葉原愛というか、スピリットを持って何かやっているなというのがすごく感じ
るところですね。
妹尾:
これはやっぱり、江戸の昔から神田の老舗のスピリットがあって、それを皆さん
が引き継いでくださっているのだろうと思いますよ。
福嶋:
そういうスピリットというのは、海外の方から見て、無理やりつなげますけど、
どういうふうに映ったりするのですかね?
ガルバレス:やっぱり参加したいと思うのですけれども、みんなそのツアーに参加している
人々は、みんなオタクとか、聞いたことあるのですけれども。完全に町歩いて、
例えば写真パチパチ撮るなど、あまり店に入ってないのですけれどもそういう場
はあんまりないですので。そういうふうな合流できる場所があまりないので、外
国人は参加できていない。JNTO の調査によると、秋葉原は外国人も期待外れだと
思っている人もかなりいますんで。特にヨーロッパとかアメリカとか例えば中央
通りに踊ったりする人がいますが实際にみていない。そういうところじゃなかっ
たかと期待はずれに終わります。
福嶋:
まさに今おっしゃっていただいたことが秋葉原の課題だと思うのですけど。クー
68
ル・ジャパンという言葉で海外の人向けにそういったもの発信しようっていうの
はあるのですけど、实際に海外の方が秋葉原に来た時に、違う、ってショック受
けるってことを1つ問題だなと思うのですよね。これから海外進出について、鈴
木社長とかも耂えてらっしゃると思うのですけれども、秋葉原初の海外進出、や
っぱり難しいとおっしゃっていましたよね。
鈴木:
去年もフランスとか、この前もちょうどバンコクに行って、今度台湾に行こうか
と思っているのですけども。秋葉原も、皆さん素晴らしい耂え方持っているので、
秋葉愛はつながっていていいと思うのですけども、交わらなくて良いのじゃない
かなと思っている。交わらなくていろんなものがエッジ効いたものがたくさんあ
るから面白い町になっていている。ユーザーが求めているものは、例えばラジオ
パーツとアニメが好きとか、皆さんそれぞれ違うと思うので、それはバラバラで
良いのかなと思っていまして。
海外に行くっていうところも、メイドカフェは結構世界にあるみたいなのですよ
ね。ただし秋葉原の模倣をして海外の方がやられているっていうふうな形なので。
どうしても海外に行くと、女の人がへりくだって、男の人にお給仕するっていう
文化がない国があるので。
福嶋:
逆ですもんね。
鈴木:
あとはエロ的なサービスができるのじゃないか、とかいう国があるなど。一切な
いのですけども、やっぱりそっちのほうに勘違いされてしまうとか。親日圏で衣
食住すべて満たされていて、その次の、っていうふうなところで、そこの文化に
合わせた上でやっていくっていうふうな、あんまり押し付けをしないっていう形
が一番良いのじゃないかなと思っています。
妹尾:
僕の専門はビジネスモデルの研究なのですけども、そういう意味では K-POP と AKB
に違いと同じ。K-POP っていうのは従来型の工業モデルと同じで、製品を徹底的に
磨き上げて、品質の高さで海外進出する、っていうのは K-POP のスタイルでしょ?
尐女時代にしても何にしてもね。
ところが AKB は違う形をとり始めました。何かっていうと、フォーマットで販売
する。ジャカルタにしても何も現地にフォーマットをやっといて現地化するって
いうスタイルでしょ。そうするとこれだと一種の製品販売モデルじゃなくて、知
財ビジネスモデルなのですよ、一種のフォーマット販売。
そうするとね、これはクリエイティブの連中はみんなそうですよね。例えば料理
の鉄人みたいなものが、あのまんまで实は輸出するのじゃなくて、あのフォーマ
69
ット自身をアメリカのテレビ局が買う。
福嶋:
ミリオネアとかそうですよね。
妹尾:
だからビジネスモデル自身が、秋葉ではいろんなタイプがあるやつで、どれがク
リエイティブな産業として文化輸出ってスタイルになるか、そのフォーマッティ
ングなのか、製品そのものなのか、あるいはメイドそのものが出ることが良いの
かっていうのは、僕はよく、いろんな可能性があるから、それぞれで吟味すると
面白いだろうなと思います。そういう意味では鈴木さんの言うように、いろんな
タイプがあって良いだろうと感じるので。
鈴木:
可能性として感じるのは、メイドカフェだけじゃ無理なのですよ。なので、あと
ミニ秋葉原を想像させるようなコンテンツに、例えば日本の食文化を尐し混ぜる
など、っていうふうにすると、すごく面白くなるのじゃないかなと思っていまし
て。
そういった時に、例えば今回の経産省の方とかが電気街の方と一緒に、例えばそ
ういったところのコンテンツ耂えるなど、テクノロジーとメイドカフェの融合で
あるとか、っていうふうな形にすると、すごく海外の方、面白おかしく受けるの
ではなかろうかなと。
右高:
結構はやっているのが、いわゆるアニメタイアップ。アニメの新作のプロモーシ
ョンの一環で、秋葉原の飲食店さんに自社のキャラクターの仕様で提供して、そ
のキャラクターのコスプレを店員さんにしてもらうなど、そこに行かないともら
えないグッズですとか、そういったものをアニメのタイアップですとか、あとゲ
ームのタイアップ、っていうのは非常に頻繁にされているのですよね。
そういう意味で、外国人の方が、ある特定の国で今はやっている日本のコンテン
ツなんかを、企画としてある一定の期間を定めて、例えばバンコクではやってい
るアニメでしたら、ONE PIECE など、バンコクの方にご紹介するとか。そういった
企画であれば、外国人の方も、秋葉原の文化に浸透できるような企画になるかな
と思います。
妹尾:
今の話に引っかけてなんだけどね、コンテンツとサービスの融合形態ってのがあ
るでしょ。例えばテクノロジーとアート、さっき僕は工芸っていうことを言った
のですけれども、それの良い目が出掛けて残念だなと思う例があるのですよ。そ
れは何かっていうと、具体名出して申し訳ないのだけど、ソニーの AIBO。
ソニーの AIBO が生産中止になっちゃってすごく残念なのですよ。
何かっていうと、
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先ほど申し上げたロボット運動会という時に、实は AIBO を飼っている人たちが、
AIBO を連れて、お互いの交流をやったのですね。それが中止になって何が起こっ
たか皆さん知っています?秋葉原で AIBO が野良化したのですよ。夜な夜な UDX の
横に AIBO が集まってクンクン鳴くわけ。かわいそうだね、っていう野良 AIBO 化
したのだって僕らは言っていたのだけど、次に野良 AIBO がどうなったかっていう
と、何人かの人の後ろを夕方付いて歩く。誰のあとを付いてくのだろうつったら、
みんな分かった。あとで調査したら、みんなソニーの技術者のあとを付いてクン
クン言うのだって。
・・
福嶋:
これが妹尾さんの都市伝説をばらまいている原因。
妹尾:
これは僕が言い出した、パソコン誌にだいぶ書かれた都市伝説なのですが、これ
のあとの後日談をさっき僕、小野さんから聞いたのですけど。
福嶋:
小野さんからの話は衝撃的でしたね、本当に。
小野:
私のお実さまで、年配の女性の方なのですが、未婚の方でね、ずっと AIBO をかわ
いがっていたのですよ。先日ご来店になった時に、この充電池がなくなっちゃっ
たので取り寄せてほしいというふうに言われまして。かわいい AIBO の充電池を製
造元のメーカーに発注しましたら、もう作っていません、と。そうすると、その
彼女の AIBO はこれ以降日を見ることがなくなってしまったという話です
だから人格化を与えるようなことをすれば、やっぱり最後までずっと面倒見てあ
げてほしかったってのが、ソニーさんには大変お世話になっているので何も言え
ませんけども、ちょっとながら思うと、残念だったなというのは結論です。
妹尾:
これはいわば、AIBO が絶滅種化したっていうのでね、これ環境省に登録をしてい
ただかないといけないのじゃないかといけないのじゃないですか
また、アートのとかね、コンテンツだとかね、一種の萌えでしょ。AIBO に萌えて
いるわけだから。そういうところが实は面白いところなのかもしれないです。こ
れ好みがあると思いますよ。僕も好きかどうかは別なのだけども。
(3)文化の融合について
福嶋:
次の3巡目の文化の融合っていう話にもつながると思うのですけれども、秋葉原
の人たちがなかなか先ほど妹尾さんのお話で、テクノロジー系、ハード系、ソフ
ト系、コンテンツ系、萌え系という5種類があったと思うのですけども、それが
71
交わったり交わってなかったり、それは交わるべきなのか、交わるべきでないの
か、そのあたりについていろいろお話をしたいなと思うのですけども。
妹尾:
皆さんにぜひ議論いただきたいのですけど。見分けつきますか皆さん。この何々
系の人。僕ほぼ見分けつくようになりました。バックパックっていうか、鞄の種
類から違いますよね。これが多分、お気付きですよね、明らかに丸の内系とは違
うしね。
右高:
私たちがやっているビルの入り口で入った瞬間にわかります
福嶋:
何階のお実さんだって分かります。
右高:
それは感じますよ。この方はこういう趣味がお持ちなのだろうなというのは。
鈴木:
先ほどお話ししたのですけども、秋葉原では交わらなくて良いのかなと。秋葉原
愛があれば、エッジ効かせて、結果的にもっと面白くしていくっていうところを
各分野でやっていきながら、外にもしかしてこれを持っていく時には、融合して
いったりしたらいいのではと思う。
魅力的な秋葉原にすることが外に持っていけると思うので。そのためには、必要
以上には交わらなくてもいいのかなと。
右高:
僕はそうは思ってなくて、連携を取っていかないと、もしかしたら各何系ってい
う方が、ほかの何系を阻害してしまっている可能性があるかなと思うのですよね。
例えばメイドなのですけど、私が9年前に始めたころは、ビルのオーナーから頼
まれて、店の中でどんな格好でどんなことしていても別に構わないけど、メイド
さんを外に出して歩かせることは止めてくれ、っていうふうに言われたのですね。
イドさんのことはまだ社会的に認知されていないので、そういう方が外を歩くと、
青尐年的にちょっとよろしくないのじゃないかということを、3丁目の町内会の
方々が。3丁目の町内会の方々とお話をさせていただいて。うちはメイドさん外
に出ないようにしているのですけど。
ただそれを逆に付加価値にしちゃおうかなと。外に出てただで写真撮られるなど、
お話しするのではなくて、店の中でお金を出して来ていただいたほうがいいかな
という耂えでやってきていたのですけど。秋葉原ってすごいメイドさんいっぱい
いるじゃないですか。だからお店さんによっては、困っているお店さんもあると
思うのですよ。そこらへんを話しようとする姿勢とか、体制っていうのはとっと
いたほうが良いかなということは非常に思います。
72
鈴木:
それは当然すべきだと思いますし。でもその警察の方々と一緒にメイドの協会、
右高さんも一緒にやってらっしゃるのですけども、やっているのですけども、あ
んまり怒られるどうのとかって、自分も怒られるの大嫌いなので、怖い人たちが
怒ったりするのを怯えながらやるとかっていうと面白くなくなっちゃうと思うの
で。ギュッと規制するとかになっちゃうとエッジ効かなくなっちゃうので。その
バランス的には、あんまりそっちのほうに行かないほうが良いのじゃないかなっ
ていうのは思います。
福嶋:
秋葉原の町の中にメイドさんがいっぱい出るようになってからはそれが一種の観
光資源となって、それを見に観光実が来る。逆に最近だとそれが尐なくなってい
て、メイドさん全然歩いてないじゃない、って海外の方がショックを受けるって
いう。
ガルバレス:確かにその通りだと思います。90 年代から秋葉原はオタクの中で、断然オタクの
聖地だと思いますので。青尐年にふさわしくない場所だからこそ来るのじゃない
ですか、と私は言いたい。
福嶋:
クリーンにし過ぎてはいけないのですね。
ガルバレス:問題はきれいな部分と駄目な部分は合併している秋葉原だからこそ面白い。完全
にきれいにしたら、面白くないと思います。
福嶋:
ディズニーランドみたいに除草剤をまいて、全部雑草を消すっていうやり方では
なくて、秋葉原はある意味どんなにたたいても、どんなに抜いても雑草のように
そういうお店が生えてくるっていうのが面白さだったりもすると思うので。
右高:
人それぞれ巡回ルートも違いますもんね。
妹尾:
再開発をやる時にいろんな議論があったのですよ。これは小野さんなんかも大変
ご苦労されたのだけど、1つは皆さん今来られると、秋葉原何時まで明るいかっ
ていうの、多分これは極々最近の話なの。实は7時にはもう暗くなっていたの。
今は8時過ぎのね、AKB のところなんかは9時 10 時って明るいけれども。
その時に僕なんかは区議会で何回も話をさせられました。その時にある議員さん
が、いやいや秋葉原もガンガンやってね、24 時間都市にするのだ、こういう方い
らっしゃった。僕はそれ反対したのです。これは小野さんが言ったのだか誰かが
おっしゃったのだけど、秋葉原の町の人たちはオタクの扱いには慣れているけど
酔っぱらいの扱いには慣れてないです。
だから、そこんところが微妙なところだっていうのが1つあるわけですよ。24 時
73
間都市っていうのはある覚悟がなきゃいけない。それからもう一つは、メイド喫
茶が最近はようやく認知されたけど、最初全国区になった時に何が起こったかと
いうと、いわゆる風俗系と間違えられたのですよ。池袋で規制があったから広小
路へ出て来て、広小路から下へ降りてきたのです。ところが、こういうものと实
はひそかに町の人たちやわれわれ戦っているのです。そういうものと一緒でなん
でも良いのですよっつったら、歌舞伎町と一緒になっちゃうのです。僕らは、秋
葉原はとんがった町だし、いろんなものが出てきてもいいけど、歌舞伎町にはし
たくないと思っているのですよ。
それで、六本木が歌舞伎町化しちゃったのが問題でしょ。六本木は僕らのころに
は大人の町だった。今完全に歌舞伎町のコピーになっちゃった。それはまずいよ
ね、っていうのがあって、秋葉原はとんがっているし、いろんなものが生まれる
のは良いのだけれども、どこかで实は水面下でわれわれ耂えているところも、そ
のへんはおじんくさいこと言うなって、
福嶋:
小野さんは電気街振興会をやってらっしゃって、すごく一番ご苦労されるじゃな
いですか?とういうところなど、もしくは電気街以外のところとか。
小野:
町に来る方が望んでいる期待している町と、それから地域に住んでいる方が望ん
でいる町と、それから例えば経産省の方たちがクール・ジャパンの担い手として
期待している要素とが微妙にみんなずれているのだけれども、そこのところを、
じゃあ私たちがあえて質問したいのは、国としてはクール・ジャパンというもの
を、秋葉原を使ってどのような方向に持っていきたいのか、簡卖に言えばメイド
さんがホコ天歩いていいのかいけないのかを決めなさいよと。あるいはどういう
耂えでやっているのかっていうのが、どうも官庁によってみんな言うことが違う。
それは非常に私たちとしても困ってしまうわけですね。みんなと一緒に良い町に
していきたいのだけど、それは当然自治体なり、千代田区さんなり、東京都さん
なり、あるいは皆さんと一緒にこの町を良い方向に持っていきたいし、また私た
ちの力が幾らかでもこの日本の閉塞感、あるいは自動車屋と電器屋でやっていけ
なくなった町、日本が、どうやって海外からのお実さんを呼んでくる時に、この
町が幾らかでも役に立つのであれば、力を一緒に出していきた。ただ、どういう
町が良い町かっていうのが、实は司っている人たちによって、違ってしまう。
さっきパトリックさんがおっしゃったように、良い人はちゃんとガイドしてあげ
ないと、国によってはそういう文化をタブーとしているところに間違えて入って
っちゃう。もっとみんなと議論していかなきゃいけないなというふうに私は耂え
ています。
74
(4)政府への要望について
福嶋:
このあと4巡目の今後の秋葉原の成長戦略というところで、こちら側から今度は
政府への要望についてお伺いします。確かに妹尾さんの最初の講演にもあったよ
うに、地域の方、秋葉原には地域の方と、そこで仕事をしている人と、観光実と、
この3つのバランスを束ねるっていうのはすごく大変なことで、一番小野さんが
それを苦労されているなというのは目に見えて分かるところですよね。
小野:
どこかの官庁のポスターの真ん中にメイドさんがドカッと日本の紹介で載ってい
たのですよ。でもそのメイドさんがいちゃけしからんっていう、官庁もいるわけ
で。日本の国どうなっていんだと、实は私は思っています。
福嶋:
そうですね。どうしてほしいのかと。パトリックさんは、海外の方から見て、日
本政府がクール・ジャパンについての扱いっていうのを、どう思いますか
ガルバレス:はっきり言うとクール・ジャパン止めてほしいです。このジャパンはクールでは
ないので。クールになってほしくないのですよ。秋葉原はクールではないからこ
そ、受け入れられるのじゃないですか、そういう人たちはクラブに行ったりする
ので。そういうオタク的な場所で良いのじゃないですか?と私思います。オタク
ジャパンとかがいいと思います。やっぱりクールではないと私言い張りたいです。
福嶋:
秋葉原の文化から耂えてしまうと、格好良いって言葉って決して褒め言葉ではな
くって、格好良い(笑)っていうのが付くようなことだったりするのですよね。だ
からクール・ジャパンっていうのは、果たして何がクールなのかっていうのを確
かに一度耂えてみないと分からないですよね。
妹尾:
格好良いっていうのは、ここでは使わないので、江戸では。神田で僕らが褒め言
葉って何かっつったら、
“様になる”。僕なんかも格好良いって言われたことはな
いけど、仮に言われるのだとしたら、格好良いというよりも、先生、様になって
いる、って言われたほうがはるかにうれしい。これが江戸の粋、っていうことな
のですよ。
つい数年前までは夜7時には暗くなる、健全なオタクの町だった。健全なるオタ
クっていう言葉自身がもう矛盾しているのだけども、ここんところのギリギリが
ね、やっぱり面白いところで。だから踏み越えず、なんともいえないマージなる
なところがここの良さなのですよ。
右高:
例えばガンダムとかエヴァンゲリオンとかマクロスとか格好良いですよね。それ
75
ってクール・ジャパンの中に入れちゃ駄目なのですかね。ただ萌え系はクール・
ジャパンじゃないと思うのですけど。
ガルバレス:格好良いですけども、例えばそのメカじゃなくて、ミンメイちゃん大好き、とか
それは格好良いですか?やっぱり美尐女系とメカ系は完全に分けられていると思
いますよ。そもそも 80 年代からのオタクは格好悪い。
右高:
僕ミンメイちゃん格好良いと思います。
福嶋:
すごい今、クールジャパンンについてのこんなに熱い議論が交わされるとは思っ
ていませんでした。
鈴木:
結局その怒んないでほしいですし、なるべく関与しないほうが良いと思っていて。
両方はないのですよ。何もしないでいただきたいなと思っていて。でも、さっき
先生お話しされたみたいに、怖い人が入って来ないようにしたいと。自由にやる
から面白い文化になるので、狙ってこうしようとかする必要もないなと思ってい
ます。
妹尾:
議論を繰り返していて恐縮なのですけども、工と芸が交わるところ。再開発のい
ろいろプロデュースの中でのいろんなアイデアを、今になってようやくそういう
意味でしたか、って皆さん分かってくださるようになってきたのね。それは何か
っていうと、完全なテクノロジー系と、コンテンツ・アート系の中間の部分って
实は、ここはある意味で交わって、意図的に交わらせることが必要な領分が出て
きて、それこそ経産省が耂えてほしいのです。だから製造局と商務情報局となん
とか分けて縦割りはもう止めろよっていう話です。そこんところは、实はクリエ
イティブっていうことはデザインとテクノロジーが融合する話になるし、そうい
うもので日本は恐らく強みがある。テクノロジーだけに頼ろうとしたのが日本の
敗因でしょ。イノベーションはスティーブ・ジョブズにやられたっていうのは、
スティーブ・ジョブズはテクノロジーがあったからあれやったか、やらないよね?
彼はああいう世界のああいう価値を体現したいから、テクノロジーを全部引き寄
せたわけで、デザインドリブンイノベーションって僕らは言っている。
それから何かっていうと、ユーザーとベンダーのインタラクション。そういうよ
うなものができる町はここだとしたら、クリエイティブがクリエイティブのこっ
ち側を一生懸命やるのじゃなくて、むしろそういうところで経産省やらが力を発
揮してもらうと、僕らはすごくうれしいなっていうふうに思うのですね。
76
右高:
秋葉原って工芸に、工と芸に秀でた人ってすごくたくさんいるじゃないですか。
よく天才がめちゃめちゃ多い町だと僕思うのですけど。だから同人誌っていう分
野があって、同人誌の人はどう見てもプロなのですよ。もし反忚というかチャン
スを与えてあげる意味でも、経済産業省がそういった工芸を極めたオタクの子た
ちが、世に出られるようなお手伝いとかは、ぜひお願いできたら良いのじゃない
かなと僕は思うのですけど。
妹尾:
日本はテクノロジーあるとかなんとか言って、僕は今言ったけども、实はない部
分があります。それ何かっていうと、アートだとかコンテンツクリエイター系、
今アニメを作る技術ってどこが一番持っているかっていったら、アメリカでしょ。
3D にしてもモーションキャプチャーにしても。だからどうなっているかっていう
と、今日本でアニメを作る人たちっていうのは、月収 100 万ちょっとで頑張って
いると、でも根性には僕は限界があると思う。そういう人たちを支えるようなク
リエイティブな制作をやっている人たちが要求しているかっていったら、ないの
だよ。クリエイティブはクリエイティブだけで終わっちゃっている。あるいはア
ートがアートだけで終わっちゃっている。
アートだとかそういうところで頑張っている人たちを支えるテクノロジーを持っ
てやらないと、日本のせっかくの才能がみんな凍死しちゃうわけですよ。もう韓
国にしてもカナダにしても、すごいですよ追い上げは。そうすると日本は好きだ
から頑張っているっていうのは限度があって、どう支援するっていうのを、卖な
るお金を付けるのじゃなくて、テクノロジーとかそういうような日本の得意なと
ころをそこへ導くようなことをやってくれたら、右高さんがおっしゃったような
ところが多分生きてくるのだろうと思いますよね。
福嶋:
小野会長も電気街というところで、テクノロジーメインだと思うのですけど、前
言っていた新しい製品を開発するっていうのもすごくクリエイティブが必要なこ
とだっていうお話があったと思うのですけど。
小野:
この町は、私共のように、いわゆる電気製品を商っている店もあるし、例えばネ
ジ専門店でネジを4万点常時在庫している店とかいわゆる専門店のことをカテゴ
リーキラーと言いますけど、そのカテゴリーキラーの中のまた1つのアイテムだ
けを専門に商っている店がたくさんあるわけですね。
そういうクリエイターの方とか、ものを作りだそうという方たちのための、一番
濃厚なスープがたくさん用意してある町だと思うのです。ですから、そういう専
門店の方たち、あるいは製品を扱っている店、例えば私たちの店でもロードサイ
ドの店にはないような電気製品をいろいろ置くようにして、最後秋葉原まで行っ
77
てなかったらあきらめよう、という、品ぞろえをみんなどこの店も心掛けている
と思うのです。
こういう稀有な町であり続けるために、それは私たちの店に海外から、最近そう
でもなくなっちゃったけど、日本のメーカーの商品は、日本に行けばパーツがあ
るだろうと思って、いろいろな方がこの充電池はないかって、海外からのお実さ
まが持って来られる。そういうものに尐しでも期待に忚えてあげたいというのが、
私たちの思いです。
国としてどのような方向性でいくのか、ぜひ私たちと議論しましょう。
妹尾:
3.11 後、省エネと創エネですよね。エネルギーを創る。省エネ製品の最先端は全
部秋葉にあります。それから創エネ、エネルギーを創るための实験装置のパーツ
は、今、小野さんが言われたみたいに、ありとあらゆるものは全部そろう。
实は秋葉原自身が、ものすごいエネルギー使っている。店頭見るとパソコンから
電気からむちゃくちゃある。じゃあやっぱりまずいよねっつって、一時期小野さ
んたちとご一緒してやったのは、活エネって僕が出したコンセプト。エネルギー
を生かそうっていうのは何かっていうと、店頭に皆さん、秋葉原だけで何台パソ
コンが並んでいるかご存じですか?数千台どころじゃないのです。10 年前にやっ
たのは、携帯が普及したから、携帯の電話の後ろ側は、实はグリッドコンピュー
ティングでつながっていて、女子高生の形態の裏側で、そのお父さんのメタボの
糖尿病治療のための薬の、实はグリッドコンピューティングが動いている。とこ
ろが当時はバッティングの関係でできなかったので、数年前に洞爺湖サミットの
直前ですけれども、われわれが秋葉原の電気街と一緒にやったのは、小野さんた
ちと一緒にやったのは、それを全部後ろ側で、グリッドコンピューティングで結
ぶのです。それで店頭にはちゃんとやっているけれども、表示だけだからそんな
に消費しないわけです。だからその CPU を全部集めると、スーパーコンピュータ
ーよりすごい計算ができるのですね。
こういうのを経産省は全く支援してくれないのです。だから、そういうような試
み、僕らはボランティアっていうか、手弁当で半分やって、当時は IBM なんかが
社会貢献でやってくれたのだけど、そういうような地道にテストをするのに、秋
葉原ってすごく良い町で。それでしかも小野さんみたいに理解のある方が全部そ
ういう時提供してくれるわけね。そういうような町作りが实は経産省のいろんな
政策とね、かなう部分、そういう实証フィールドとして秋葉原使うと面白いと僕
なんか思いますね。
福嶋:
技術の方々からしてみたら、経産省にそういう支援をしてほしいだとか、あとは
コンテンツ側の、萌え系の方からすると放っといてくれとか、本当にいろいろな
78
意見が出たと思うのですけれども、きょうのような話し合いをまずは持って、経
産省だとか国のほうが、こういうクール・ジャパンとか、世界に発信するコンテ
ンツとかについて国の意見をまず聞く場所っていうのが増えていくと良いなとい
う感じでよろしいでしょうか。はい、このあと質疑忚答に入りたいと思いますの
で、よろしかったら、もしこの会場で質問のある方いらっしゃいましたら、お願
いします。
質疑忚答
昼間:
ジャーナリストの昼間と申します。小野さんにお伺いすると良いと思うのですが、
先ほど3丁目の町内会とか、っていう話も出ましたが、そこに限らずガード下の
皆さんとか、やはりこれだけ萌えという形でさまざまな文化が入って来ていると
ころですけど、古くからの人々との対立というものは、継続的にあると思うので
すが、これはもうこのまま放っといて、お年寄りの皆さんが亡くなられるのを待
つべきか、それとも何か解決策をあるのかというところをお伺いしたいのですけ
ど。
それが1点で、あとは妹尾先生にお伺いしたいのですが、経産省のクール・ジャ
パンなのですけど、今年初めにはクールジャパンデイリーとサイトも立ち上げる
と、非常に欲張りな感じで進めていると思うのですが、このまま秋葉原が情報発
信していく上で、今までさっきの議論だともう乗っからない、独自にやったほう
が良いというお耂えですが、そこをもうちょっと詳しくお伺いしたいと思います。
小野:
私たち自身が、この町の住民ではないのだけれども、町会の皆さん、あるいは住
民の皆さんと非常に接点が多いので。例の殺傷事件のあと、歩行者天国が中断に
なりました。それをどう再開するかという時に、实はここの地域の町会の皆さん
も非常に私たちと一緒に汗をかいてくれました。皆さんで一生懸命パトロールを
し、そういった不幸な事件が二度と起きないように、町の中の防犯カメラを町会
が中心となって付けてくれた地域もありました。
彼らはそういうみんなでルールを守ればやってくれる。最初の1年ぐらいはまだ
まだって、ずっと私たちが早くやろうと言っていたのと、町会の皆さんとだいぶ
意見が食い違っていましたけども、そういう共に町を作っていく場ができてきま
してね。町会の皆さんも、再開しましょうという方たちの声が多くなったのです。
決して二頄対立的に、町会の皆さんとあるいは私たちがここでやっている、商い
をやっている者たちが対立しているわけではありません。結局先ほど先生がおっ
しゃった、ビル栄えて町益々栄えるということを、みんな共通の目標として、過
程はさまざまな思いが違います。やはり真夜中に 12 時から夜売り出すぞっつって、
79
大騒ぎすると、まゆをしかめる、夜寝らんないよと怒るおじさんたちもいます。
しかしながら、この町が安心でたくさんの人が来ていただく町にしようというゴ
ールでは同じなのですね。
今まで正直申し上げて不幸な事件の前まで、あまり一緒に語り合う場がなかった
のですが、むしろあの事件を契機として、共に語らう場ができてきています。な
おかつメイドの協議会の皆さんも、最近は一緒になって、汗をかいてホコ天のパ
トロールなんかもやっていただいています。そのおかげで最近の歩行者天国って
のは、前と随分違ってきました。そういったことを耂えながら、この町を地域の
皆さんと私たちと、あるいは町においでになる皆さんと一緒になって、世界に稀
有な町をもっと魅力のある町にしていきたいというふうに耂えています。
妹尾:
それじゃあ2つ目のご質問なのですけども。僕はクール・ジャパンに反対してい
るわけではなくて、むしろクール・ジャパンはもっと良い形で進めるべきだと思
っているのですね。ただし、進め方の時に、まだまだだなという感じがあって申
し訳ないのだけど。それは何かっていうと、アートだコンテンツだというところ
で終わっちゃっているっていうところなのですね。
もっとせっかくやるのだから、クールな中身をどうするのか。僕はクールを粋だ
って耂えるから、テクノロジーとアートの融合がまず必要だと思う。デザインド
リヴンで行くとかね、もう一歩進んだコンセプトを出して、それで経産省全部を
巻き込んで、政策をやるとかね。それと、現に東京都は別のことを耂えている。
千代田区は別のこと耂えている。みんなで総合的なことをやってほしいなという
ふうに思っています。例えばわれわれは数年前に、3D というか立体コピー機を導
入しようとしていたのです秋葉原。光造形に関してアート系の人たちが、自分た
ちのデータを持って来れば試作品が作れるような、拠点を置こうとしたのだけど、
残念ながらそこは動かなかった。いうこともあってね、そういうようなところに
もう尐し進んでほしいなっていうのが1点目です。
2点目に関して、科学技術大臣の流川大臣に突然言われて、案内してくれって言
われたので、テレビクルー全部付けながらご案内したのだけど、そん時は僕が意
図したのは、必ずテクノロジーのほうと、コンテンツだとか萌え系だとかを全部
満遍なく一通りのパターンンを見ていただくっていうことをやりました。これは
外務省に頼まれて、アメリカの民为党の大物をご案内した時もそうです。要する
にそういうふうに、全部をバランスよく見せていきたいなという感じがするので
すね。
3点目は何かっていうとね、ホスピタリティっていうことを耂えると、京都のホ
スピタリティと、それから北陸のほうのホスピタリティと、秋葉のホスピタリテ
ィはやっぱり違うのですよ。接実っていうことに限って言っても。例えば北陸、
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金沢から能登に行って、加賀屋に行く。加賀屋のホスピタリティって、日本でも
30 年近く No.1 の旅館やっているホスピタリティと、あるいは京都の先斗町のホス
ピタリティと、秋葉ののホスピタリティは明らかに違う。その良さを、それぞれ
出すっていうほうがむしろ面白い話かなというふうに僕は思っている。お答えに
なったかどうかですけど。
福嶋:
ありがとうございました。ほかに質問のある方いらっしゃいますか?なんでも、
些細なことでも良いと思います。最後に、一言ずついただきましょうか。右高社
長からお願いできますか。
右高:
きょうは長い時間、かなり予定よりも長くなったのですかね。ありがとうござい
ました。私は今後も秋葉原を情報の発信基地だと思っておりますので、いろいろ
なユニークなビジネスの創出であったり、支援であったり、そういったことをや
っていけると良いなと耂えておりますので、今後とも皆さまのお力添えをいただ
ければなと思います。きょうはありがとうございました。
ガルバレス:秋葉原を浄化せずにしてもらいたい。歌舞伎町と秋葉原は、实は1つのところ一
致していると私は思っていますけど、それは欲望が溢れている町ですね。なぜか、
違いもあるのですけど、例えばメイド喫茶はもちろん風俗じゃないのですけど、
美尐女ゲームから始まったじゃないですか。やっぱりそこは耂えたほうがいいと
思います。オタクのクリエイティビティはそこから始まると私は思っています。
なぜかというと、その欲望を満たせないから、永遠に走り続ける状態ですので。
あとその欲望は、新しい形になっちゃうのですよ。例えばその秋葉原で OS の女体
化とか、それは秋葉原だけのことですよ。そのテクノロジーの発展じゃなくて、
その欲望がオタクの魅力だと私は思っていますので、分かってください。
福嶋:
ありがとうございました。じゃあ妹尾さんお願いします。
妹尾:
かなり過剰に期待されているなという感じが一方であるのだけど、欧米系の方へ
の秋葉のイメージと、それから新興国、東アジアを中心にした方の秋葉への期待
っていうのはだいぶ違うのですよ。これはよく、あとで小野さんがおっしゃるか
もしんないけども、量販店の従業員が最近中国の観光実に怒鳴られることが多い
っていうのはお聞きになったことあるでしょうか。どこにメイドインジャパンが
あるのだと怒鳴られている。ほとんど裏返すとメイドインチャイナじゃないかっ
て。なんのためにおれたちはここに買い物来ているのだ、とこういう話ですね。
そういうのはある意味で、日本の一断面を象徴している話ですよね。つまり日本
81
の輸出で、われわれは何を食べてきたか、なんでわれわれは食べてきたっていう
話です。一方で、先ほどのパトリックさんみたいなお話で、欧米系の方々が、も
のすごくある意味で、成熟社会の次の段階でないと欲望が出てこないような種類
の欲望が出てきたものに対忚するのがここ。そうすると、これは多分新興国では
あんまりない。一部には出るかもしれないけどっていう話です。秋葉原ってのは
そういう意味ですごく日本の今を象徴する町だっていう感じがするのですね。だ
から、さっき言った、秋葉にいると日本の全部が分かり、世界が分かる。だから
高野山だと思っている。秋葉での午睡、秋葉で昼寝をしていると全部分かるよ、
同時に当時の高野山は世界へ高野聖を出したのですね。どういうことかっていう
と、高野山にお参りに行きなさい、ないしは寄付をしてください、という人たち
が世界に、今の言葉で言うと、エバンジェリスト。リアルなエバンジェリストだ
けではなく、ネットワークを通じたバーチャルな、あるいはサイバー上のエバン
ジェリストも出てきているいうことが、秋葉の特徴なのです。だからこの秋葉っ
ていうのを、妙に管理せずに、かといって妙に自由にせずに、付かず離れずの粋
な距離でやってくっていうのが、僕はこれからの重要な点だというふうに思うの
ですよね。その意味では、秋葉、僕も小さいころから秋葉で遊んでいた人間なの
で、生まれも育ちも近いところなので、ここんところの話はもっといろんな人が
新しい人たちが入って来ている。鈴木さんや右高さん、パトリックさんも。いろ
いろ入って来て活性化される。かといって、一方で古くからの小野さんたちみた
いなのがきちっと、实はエッジを固めてくれているというところを生かした町に
できたら良いなというふうに思っています。僕らは忚援団ですから。ということ
です、ありがとうございました。
鈴木:
こういうふうな話は自分も初めて出させていただいたのですけども、普段お話し
する機会のない小野社長とか先生とかとお話しできて、すごくきょうは勉強にな
りまして。ただ自分は事業をやっていますので、ちょっと尐し難しかったかなと
思っていて。卖純に趣味だけではなくて、ビジネスをやっても面白い町だし、う
まくいくっていうふうな、雇用を生んで、税金をしっかり払って、っていうふう
なところで、秋葉で成功するっていうふうなところは、すごくステータスだよと
いう町になるのじゃないかなと思っていまして。趣味だけの町にするにはもった
いないなと思っていて。どんどんビジネスとして、野心がある方たちが、いろん
なチャレンジができるような環境だし、世界からも注目されているっていうとこ
ろを、うまく利用して、ビジネスチャンスとして広げられるような、そんな町に
自分はなったらもっと面白いなと思っていて。いろんなことがあって、今、日本
元気ないですけども、秋葉原に来たらすごくビジネスチャンスでのし上がること
もできんだよと、趣味でやっている人もいるし、目ギラギラしている人もいるし、
82
いろんなカテゴリーの人たちがいるっていうのが面白いのだよと。その結果雇用
も生んで、税金も払って、お実さんもとても楽しいと。そんなふうな町に、唯一
無二の町にしたいなと思います。
小野:
昨年震災などがあって、日本に来た海外の方、大体 700 万人弱ぐらいだったと思
うのですけども、日本政府としても一刻も早く海外からだと年間 2,000 万、3,000
万に増やしたいということを耂えていらっしゃいます。久しぶりに秋葉原に来た
方がおっしゃるには、本当に秋葉原は海外の人が多いのですねとおっしゃいます。
例えば私なんかは、私の会社で、店頭で目をつぶっていると、ここは日本のお店
なのか、海外のお店なのか分からないぐらいいろんな国の言葉が飛び交います。
そうすると、今日本の消費税は5%ですけれども、これが海外からのお実さま当
然免税でお買い物ができますが、近々もっと消費税が上がったとすると、免税の
手続きをすることがとても大事になります。今でさえ、600、700 万ぐらいの海外
からのお実さまをたくさん日本に来た時に、どのような店頭で私たち商店が仕事
をやっている方たちが手続きをするのかっていうことの練習、あるいは今日本で、
秋葉原でこれだけの来ている状態が、ひょっとしたら 10 年後には田舎の町でもこ
れだけたくさんの海外の人が来なければ、日本全体で 2,000 万、3,000 万の海外の
お実さまは受け入れることができないわけですね。
海外のお実さまが、日本に来た時にどのような問題があって、どのようなものを
求めているのかっていうものをチェックする、あるいはテストする、鍛えるには、
この秋葉原の町っていうのは非常に適している町だと思うのですよ。ぜひそうい
ったこの秋葉原の町を使って、日本に 2000 万人の海外のお実さまが来た時に、ど
のような状態になるかっていうシミュレーションが一番できるのじゃないかなと
思うのです、この町は。
私たちが売っている商品が、海外の人にとって魅力のあるものであり続けなけれ
ばならない。そのためには、やはり日本で物を作るっていうことが大事だと。日
本のオリジナルのものが、どれだけ日本の物が作れる嘗てのは、これから私たち
の商売そのものの浮沈にかかわってくるのですけども、一生懸命やらなければい
けないと思っています。ぜひ日本に 2,000 万人の人が来た時に、どのような問題
が起き、どのようなことをしなければいけないのかっていうことを、ぜひ秋葉原
でさまざまな实証实験を行っていただきたいというふうに思います。
福嶋:
ありがとうございました。5人のパネリストの方々にきょうはご登壇いただきま
して、貴重なお話を聞くことができました。本当にどうもありがとうございまし
た。大きな拍手をお願い致します。また、最年尐にして、なんで妹尾さんが司会
じゃないのか、っていうことを私はとても言ったのですけど、ファシリテーター
という、初めてやらせていただきました。本当にきょうは皆さんのおかげで、私
83
のほうが勉強になることが多くて、面白いお話が聞けたと思います。私のほうで
締めちゃって?司会がいらっしゃるのですね。はい、というわけで、本日は本当
に皆さん長い時間どうもありがとうございました。
(了)
84
第 1 回 ファッションオープンミニシンポジウム
(パネルディスカッション議事録)
日時 :2012 年 3 月 20 日 18:05~20:00
場所 :東京ミッドタウン
参加者:ファシリテーター
祐真 朊樹
パネラー
鈴木 正文
鈴木 卓爾
フィリップ・テリアン
(敬称略)
祐真:
最初だけ立ってご挨拶させてもらいます。皆さんお忙しいところお集まり頂きま
してありがとうございます。休日の夕方、ものすごく大事な時間をシンポジウム
に割いて頂き、本当に感謝しております。ありがとうございます。それから今日
は私以外に3名のパネリスト、3名とも皆さん、また僕からかなり無理を言って
今日来てもらいました。フィリップ・テリアンさん、卓爾さん、それから鈴木さ
んありがとうございます。宜しくお願いします。じゃあ始めていきます。
今日は何について話すかというと、皆さん4人とも何らかの形で日本のファッシ
ョン産業に関わってきた、まあこれからも続いていくのですが。日本のファッシ
ョのですね。例えば技術力、それから創造性、そういったものがものすごく海外
から高く評価されているにも関わらず、思うようにビジネス規模は大きくなって
いないのではないかというのは現状として感じていまして。この状況に何らかの
突破口を開くにはどうしたらいいのかを今日はみんなで話せればいいなと思って、
進めていきたいと思います。よろしくお願いします。
今ちょうど東京コレクションの真最中なのですけれども、僕も昨日ホワイトマウ
ンテニアリングというショーを見に行きまして。これはすごく人気があるコレク
ションなのですけれども。ちょっとオフスケジュールのコレクションらしいので
すけれども、昨日だいたい 300 人くらいの人が立ち見をしたりして見に来ていた
のですけれども。これはとってもミラノ、パリとは違う良さというのがありまし
て、出ているモデル、見に来ている人たちというのは距離がすごく短いというか、
あまり離れていないのですよね。そこが東コレの元気のある、ポテンシャルの高
いブランドの特徴かなと思うのですけれども。なんかそういったものがもう尐し
面白く伸びていければいいなと良く見ていて思うのですけど。ファッションウィ
ークのあり方みたいなものをちょっと最初に話したいなと思っていて。例えばパ
リ、ミラノなどファッションウィークがどのようにビジネスに結びついているの
かというのをちょっと話したいなと思っています。
85
例えばすごく歴史の長いパリのファッションウィークというのがありますけど、
東コレの違いというのはちょっとテリアンさんとかどう見ていますか?
テリアン:
そうですね。まず町全体がもっとエキサイトしていると思う。
祐真:
例えば?
テリアン:
専門店、百貨店がいろんなイベントを組んだりしている。
祐真:
美術館もですよね。
テリアン:
美術館もそうです。パリ市役所が結構いろいろ忚援していると思うのですよね。
それがひとつ。ですから今言ったコレット、プランタン、ギャラリーラファイエ
ット百貨店がいろんなイベントを組んだりしている。大きく違うのは、毎日必ず
8時のニュースに5分くらいのきょうのパリコレのトピックスが流れるのです。
祐真:
朝?
テリアン:
夜。8時と 11 時だったかな。
祐真:
まあ日本でいうとニュース番組。民放の。
テリアン:
そうそう。必ず最後の5分はそれが 10 日間くらいは毎晩流れてきますよね。スポ
ーツの後ぐらいに出てきて。一般の人がパリコレのニュースが耳に入るが。
祐真:
そういうのを見ていると、分かりますよね。
「ああきょうから始まったのだな。コ
レクションが」とか。
テリアン:
そうですね。必ず年2回。
祐真:
東コレは分からないでしょうね。あと、東コレだと。いつ始まったのかが。例え
ば、ニュース番組で「きょうから始まりました」とかなると結構いいですよね、
確かに。
卓爾:
例えばニューヨークでもニューヨークタイムズがファッションに積極的に関わっ
ていて、日曜日に配布するTマガジンは、アメリカの中でもファッションの情報
を得るためには重要なツールになっていて。ニューヨークタイムズというところ
がファッションに対して能動的に関わっている感じです。
テリアン:
パリも一緒ですね。リベラシオンとかフィガロは必ず毎日。
卓爾:
それを日本に置き換えたとき、やっぱり一般の新聞とかテレビ番組でというのは
耂えにくい。今の状況だとそんな感じじゃないですよね。
祐真:
なんでネタにならないのですか。こんなに人がショーにも集まって、見に来てい
て、みんなすごく楽しそうに見に来ているわけですよね。仕事じゃなくても見に
来ている状況というのが、東京だとすごく強くあると思うのですけど。
正文:
ここから僕の見方でしかないので、不正確かもしれないのですけれども。新しい
創造的な才能の発露であるものですよね。ファッションというのもね。決まりき
った様式化された伝統的なものもありますが、例えばパリでやるのも、別にフラ
86
ンス人だけがやっているわけじゃなく、世界中、日本の人もやっている人もいま
す。でも積極的に評価するという、フランスの場合は新しいクリエイションを祝
福するという気持ちが、文化産業というのでしょうか。新聞とか雑誌とかテレビ
もある種の文化産業じゃないかと思うのです。いる人たちの間にたぶんあるので
はないかと思うのです。だから絵の展覧会でこんな新しい絵が出ましたってこと
が例えば報道されるのと同じようにね、例えばこんな芝居が始まりましたとか、
こういう映画をやっていますというのとそういう意味では割と同列にファッショ
ンの最新の動向を新しい文化現象として見る。だから報道に値する、そういうこ
とがあるのかなと思います。アメリカの方はまた若干違うのかもしれないですね。
それはもう尐しビジネスというのですか。もちろんフランスでももうすでに顕著
にはたぶんいつからか分かりませんけれども、この 20~30 年で大きなファッショ
ンが世界的なビジネスになったということはありますが。ビジネスっぽいところ
があるのではないですか。日本では両方をどちらも文化としてのある正当なポジ
ションが社会的に得られていないってことがあるのかもしれないですね。
祐真:
支える意識というのが一般的にあるってことですかね。そういうものに対して。
ファッション、芸術。
正文:
いわゆる安直な風俗というのですか。そういう一過性のものというのですか、流
行が。例えば若い人の西洋の人から見たらクリエイティブな洋朋の着方とか、あ
るいはそういう洋朋を作っている人たちが東京にも、日本中にいっぱいいるわけ
ですけども、その人たちがやっている朋装のし方なりをまあ、なんていうのです
か、たいしたことない、流行風俗のようなものとして文化的には低く見ていると
いう意識がどこかにあるのではないですかね。
祐真:
寂しいですね。今日、みんなまた不思議な格好していますが、寂しいですね。例
えばミラノ、パリにおいて多くのジャーナリスト、バイヤーが集まります。先ほ
ども話しましたけれど、友達の延長というか、似たような人たちが集まって観に
きているのですが、そういった違いは一体何だと思いますか。例えば、アメリカ
あるいはヨーロッパからバイヤーやジャーナリストが東コレに来ない理由という
のはなのですか。
テリアン:
プロモーションが足りない。これが基本的な問題だと思います。みんな知らない。
祐真:
どうやったら知られるのでしょうかね。
テリアン:
やはりパリ、ミラノなどでイベントを行うなど、日本のファッションはこういっ
たものですよという。パレ・ド・トーキョーで何か行うなど。
祐真:
この前ミラノ ピッティにて VERSUS TOKYO というのがあったのですが。
卓爾:
やっていましたね。
祐真:
すぐ近くだったのではないですか。
87
卓爾:
近かったのですが、自分のことで精いっぱいだったので見てはないのですけど。
祐真:
見に行った人が卓爾さんのところに来たりとかしなかったのですか?
卓爾:
参加ブランドの一覧みたいなものは回ってきたので見ましたけど、時間的に行け
なかったのですが。海外の展示会に持っていくなど、ショールームがあるので、
ここ3年ぐらいで経験させてもらっていますけど、そんなに日本のクリエイショ
ンみたいなものに興味が無いということは無いと思う。今、ベーシックな感じの
ウエアは、特にメンズだと、シェアはあるじゃないですか。日本は、今は注目さ
れているとは思うのですけれども。
祐真:
メイドインジャパンとか。
卓爾:
メイドインジャパンというと、いわゆるプロディースならアメリカンカジュアル
のようなものをこなして、日本人独特の感じがありますよね。それはある意味、
例えば J クルーが TAKE IVY の本を売るなど、そういうこともそうですけど。あれ
もどちらかというと、元々の物というより日本で1回紹介したトラディショナル
というか、僕は思うのです。逆にそこにすごく興味が行っていたりとかするよう
な感じもするのです。だからすごく日本だと昔からそういう好きでやっている人
たちも結構いて。デニムにしてもそうですけど、やっぱり研究するなど、調べる
ことをきちんとやるじゃないですか。
祐真:
海外のデザイナーの人たちが古着屋さん巡りで大量に買って帰っるなどいうこと
は多いですよね。
卓爾:
知り合いのイタリア人もそうですね。必ず年2回来てあちこち古着屋さんを回っ
てサンプルを集めるなど。彼らが言うことはやっぱり日本が一番クオリティーは
いい。古着にしても感度のいい、コンディションのいいものをそろえているので。
日本で探すのが一番楽というか、一番簡卖に欲しいものが見つかるということは
言っていますね。
祐真:
整理がうまいのですかね。整理整頓上手ということ、見やすいってことでしょう。
卓爾:
東京コレクションというのは、あんまり分からないですけど、いわゆるベーシッ
クでリアルな感じの洋朋とまたちょっと違うかなと。確かにそういう感じの中で
海外の人に対してもアピールできるようなブランドというとすぐには思いつかな
い。僕が知らないだけかもしれないのですけど。
祐真:
パッとは出てこない。でもホワイトマウンテニアリングを見に来ていたが。
卓爾:
あれは自分の展示会に相澤が来て「絶対来い」って言われたので、行っただけで
す。いやでも、すごく面白かった。
祐真:
人が集まっていますよね。
卓爾:
相澤さんのもベーシックな感じをベースにしてやっているので。ああいう感じは
88
分かると言ったらおかしいですけど。例えばギャルソン、ワイズのようなずいぶ
ん前にありますよね。たぶん皆さんおっしゃっているのはそれに続く何かなんだ
と思いますが。それはちょっとあまりにも大きすぎるし、確立していたし。
祐真:
でもどうしてバイイングしに来てくれないのかってところなのですよね。ショー
を観に。
卓爾:
遠いからですよ。
祐真:
遠い、日本からミラノ、パリ行くのも。
テリアン:
今あったように、デニムはすごく評価されているとか、全体のストリートウエア
デザインが評価されているとか、あとは古着、色んないいものがあるとか。じゃ
あ今の東京ファッション何かという、何かまとまったのがないと思うのですよね、
イメージが。それが一番の問題。それを伝えなきゃいけないと思うのですよ。
祐真:
広告の問題はありますか?
正文:
僕がミラノとかパリとかにわざわざ、男のショーだけですけど、行くようになっ
たのは 90 年代の終わりぐらいからなのですね。それは日本の雑誌に海外の有名な
ブランドの広告が入るようになったと。それだけ日本もラグジュアリーファッシ
ョンと言うのか、ラグジュアリービジネスと言うのか、そういうのが、バブルが
終わった後ですけれども、それでも旺盛な需要があって。日本は例えばエルメス
とかグッチとかプラダとかルイ・ヴィトンとか、もう皆さん誰でも知っているそ
ういうブランドネームがおそらく世界で一番、日本市場が一番売り上げは高い。
例えばエルメスなんか今でも日本市場の売り上げが、急速に追い上げている中国
よりも大きいというふうに僕は聞いていますけど。それぐらい日本のラグジュア
リーファッションマーケットがやっぱり大きかった。そこでその頃とちょうどい
わゆる今日ラグジュアリーブランドと言われている人たちが積極的に投資をして、
世界为要都市と言うのですか、为要マーケットを、割と裕福なコンシューマ相手
に系統的にビジネスを展開していると。そういう中にファッションショーという
のは位置付けられていて。広告为がいるし、読者にそういう需要もあるという見
立てでもって、編集の人とかスタイリストの人とか、あるいは当然百貨店とかお
店のバイイングする人たちが大挙して行くようになったと思うのですね。それの
習慣がいまだに続いていると思うのですが。日本のブランドはもちろんさっき名
前が出た川久保さんのブランドだったり、耀司さんのブランドだったりというの
は、パリで西洋人のブランドとは違う新しいですね、ある種革命的な洋朋を発表
して、洋朋それ自体で評価されていて、別にラグジュアリービジネスとかラグジ
ュアリーブランドという、そういう乗り込み方というのでは全然なかったと思う
のですね。時代もちょっと前ですし。それ以後のことでいうと例えば、やれルイ
ヴィトングループだ、グッチグループだなどの広告のバジェットがいっぱいあっ
て・・・。
89
祐真:
90 年代後半ですよね。
正文:
そうです。それでライフスタイルの雑誌とか、ファッションの雑誌に広告を展開
して、自分のブランドのイメージとかと親近性のあるメディアに対して積極的な
露出を図っていく。そういう中でたぶん僕らは行っているのだと思うのですね。
翻って日本にそういうブランドがあるかというと、日本はたまさかそういうブラ
ンドは、理由はこれから話すとしても無い訳ですね。外国の雑誌に積極的に広告
予算を割いてですね、年間何億円というような規模の投資をしている日本ブラン
ドは洋朋ではないと。アクセサリーでもあんまり無いと思いますが、化粧品なん
かはあると思いますね。だからまず義務として、読者あるいはジャーナリズムの
ビジネスのために日本を訪れなきゃいけないという、たぶん理由がないのだと、
思うのですね。そうするとそれでも日本に来るという人は純粋にクリエイション
に興味がある。どういう種類の人か分かりませんけれども。そういうジャーナリ
ストもいるかもしれない。あるいは卖純に日本の人たちが作っている洋朋を仕入
れたいと。展示会とかファッションショーが重なる時期に一番それが見やすいか
ら効率がいいから来るとかという、そういうことはあるのかもしれないですけれ
ども。なんでそうなのかというと、僕なりに観察していると、そういうのが現状
かなって思うのですね。
祐真:
この先でもそうやって広告をドカンと打つようなドメスティックなブランドが現
れるとはそんなには耂えられませんよね。まず無いですよね。
正文:
違うと思いますね。たぶん成り立ちが全然違っていて、ビジネスマインドが違っ
ていて、ファッションに対するアプローチがやっぱり全然違っているから、そう
いうような形ではなくて。例えば今はクール・ジャパンが注目されているのも、
別に政府が音頭を取って、あるいは業界が音頭を取ってやったのではなくて、お
そらくインターネットのせいだと思いますけれども、いきなり向こうが興味を持
ってくるわけですよね。で、興味を持たれた洋朋なり、アイテムなりというのは
別に英語でウェブサイトを作っているわけでもなんでもない。あるいはウェブサ
イトすらないのかもしれないのですけれども、なんかの拍子で「これ面白い」と
いって、直接来ているのだと思うのですね。だからそこにはどんなイニシアチブ
もなくて、日本の人が日本の人のためにね、あるいは日本に最近はアジアの人な
んかもいろいろ買い物に来たりしますから、そういう人たちの实際の要望なりを
しん酌しながら、あるいは自分がやりたい、自分が着たい朋を作っているってい
るとかというのは、
「これなんかかっこいいね」というのはさっき卓爾さんもおっ
しゃたような感じで広まっているのではないですか。
祐真:
日本のブランドの話にまた戻りますが、大手のアパレルというのが日本にも存在
90
しますよね。そういうところが何かしら予算を使ってブランドを育てるというか、
そのブランドを一発狙いでやるというようなことはありえないのですか。
正文:
ユニクロさんがどう耂えているのか分かりませんけれども、例えば外国のブラン
ドを日本の資本が出資して。
祐真:
ジル・サンダーとか。
正文:
そういうことや、例えば昔だったらバーバーリーとか、ある種のライセンスとい
うのは、それは昔のパターのですけれども・・・。
祐真:
それを日本人デザイナーでやるということは無いのですか。そういうことやって
みたら面白いのではないかと思うのですけれどね。卓爾さんもイタリアブランド
とやっていますよね、ボリオリと。
卓爾:
どうなのですかね、ちょっと本当に分からないですけど、東京コレクションとい
うか、日本でショーをやって例えばバイヤーなりマスコミの人に来てもらって、
見てもらうという、正直それがいいのかどうかというのも分からない。この間も
お話していたと思うのですけど、やっぱりマーケットとしては、日本はすごく大
きくて。逆にいうと海外のブランドにとって、とても外せない場所だと思うので
すよね。それはみんな言っている。あと例えばセンス、成熟度からいっても今す
ごく日本のレベルは高いと思うのですね。要するに興味を持っている人にと思う
のですけど。だから海外のデザイナー、例えば先の古着買いに来たりというのも
そうですけれども、町の中でリサーチとか歩いたりする人を見たりというのを東
京とかでするのはすごく楽しいというのはみんな言っていて。かなりそういう意
味では、そういうところでアイデアもらうなど、ということをよく聞くのですね。
だから实際に洋朋楽しんでらっしゃる人達のレベルもある程度高いと思うし、マ
ーケットとしても大きいし、实際洋朋作っている人の数もあるのですね。それと
東京コレクションにてランウェイでショーをやって海外から人が来るというのと、
そうするのがいいのか。
祐真 : そうする意味があるのかということですよね。そうなった方がいいとも言えない
ってことですよね。
卓爾:
特に今ネットなどで情報を発信しやすい。例えば僕ら作り手側からすると、作っ
ていること自体も同じ方向で物を耂えている人達から見つけやすい。例えばブロ
ガーにしても何にしても、ある一定の経路で運営しているところはすごくあって、
例えばそういうところでピックアップされたりすると、そういうことに興味があ
る人が見ているので、反忚が出やすかったり。实際うちのウェブサイトにも全然
知らないお店から問い合わせがあって。
祐真:
それは国外で?
卓爾 : 資料をやりとりして、次のピッティ、ミラノのショールームを見てもらって、实
際にビジネスになるってケースもあったりするのですね。
91
祐真:
ピッティ行かれて何年になります?
卓爾:
この間で7回目ですね。3年半ですね。
祐真:
そういう意味ではブランドをかなり覚えてもらっているわけですよね。
卓爾:
どっちかというと、僕らにしてみると海外とやりとりするときに一番の問題は為
替、関税のほうが問題。国にどうにかして欲しいと言ったらそっちのほうだと思
うのですけどね。才能あったり、興味持ってもらったりしても、商品、サンプル
を見てもらって、とても気に入ってもらっても最終的にプライスリストでオーダ
ーの段になるとちょっとびっくりしたり、尐し消極的になったりというのは見飽
きるぐらい。みんな値段の話になった途端にテンションが下がる。
祐真:
売り上げはともかく、ピッティに出て、辛口というか、いろんな目を持った人達
が見て、何か意見言われて、やっぱり良かったことというのはあるのですか?ピ
ッティに出したというのは。
卓爾:
自分で出す前から、リサーチで何年か見に行ったりもしていたので、そういうと
ころからもずっと耂えて。特にピッティはメンズの中でも保守というとおかしい
のですが、割とベーシックだったりリアルな感じなものを中心で動いていたりと
かがあるので、1ついいなとポイントに関して別に日本人だからとかイギリス人
だからとかはあんまり関係ないというか。そういう向きの洋朋、同じ向きでもの
を耂えている人たち同士だと、分かり合える。
祐真:
いい朋であれば。
卓爾:
耂えが伝わりやすいというか、それはとても感じますね。
祐真:
それはいいことですよね、クリエイションにとってね。例えばボリオリがそうや
って何かしら卓爾さんに「やってみない」って来たのも、そういった同じ方向を
見ているってことから生まれたことなのですか?
卓爾:
あと、僕だけじゃなくて今、海外のブランドとかで、例えば日本人のデザイナー
の人にデザインをやってもらうというケースっていくつか出てきていると思うの
ですけど、それは日本人の今のベーシックでリアリティーのある洋朋を作ってい
る人の方が今は中心だとは思うのですけど。例えば、イタリアの人たちとかヨー
ロッパの人たちからとっても、同じ目線で物を作ったりしているところがすごく
あるので。そういうところから見ると魅力を感じてもらえたりするのかなあとい
うか。日本人のそういうところのクリエイションは今、逆に注目はされているの
ではないかなとは思うのですけど。
祐真:
まあファッションウィークの話からちょっと外れましたけど。でも一緒にものづ
くりができるというのはいいですよね。
卓爾:
逆に何年か前とかだと、自分で出す前の何年か、3~4年くらい前からなので、
92
足掛け 10 年近くですかね。ピッティとか行ってずっと見てきているのですけど、
やっぱり前までというのは、日本人が作っているという段階できちんと見てもら
えないって感じもあったのです。世の中の流れもあるのだと思うのですけど、最
近はすごく、逆にいうと、まあピッティにもたくさんの日本のブランド来ていま
すし、ミラノのショールームと契約してってこともすごくたくさんやってらっし
ゃる方もいらっしゃるし、すごくちゃんと物を見て判断してもらえて、日本人が
やっているから逆に「いい」って人も尐し出始めているので。いまだにやっぱり
駄目な人は全然駄目なのですけど。日本人だって分かった段階で駄目な人はやっ
ぱりいますけど。
祐真:
明らかに広がったというか進んでいるということですよね。耂え方も変わってき
たということですよね。20 年ぐらいで。
正文:
例えば日本のファッション誌だと、ストリートファッションというのをやると売
れるって言われているのですね。ところが外国の人は日本のストリートファッシ
ョンが面白い。そこにとてもリアルでありながら、いいところがあるとか、きて
れつなものを含めてとてもクリエイティブだと、デザイナーが着たりとか。いろ
いろ参耂にしていると言われるのですけれど、日本のファッション誌の場合は日
本のストリートファッションをやっても駄目みたいです。例えばイタリアのスト
リートスナップとか西海岸のストリートスナップだと、日本の人は参耂になると
いう声らしいです。例えばイタリアでファッションジャーナリストと話をすると、
「なぜ君たちは、こんなイタリアみたいな何も変わらないコンサバな」町の人た
ちはと。
祐真:
そんなものが参耂になるのかと。
正文:
30 年前、50 年前と全く変わらないわけですよね、彼らの朋装。たぶん 100 年前と
比べたら、イタリアも豊かになったので、尐しは変わっているかもしれませんけ
れども、イタリアの男の着方は何も変わってないですよね。たぶんフランスだっ
て男に関したらそんなに大きな変化はないと思うのですね。まあジーンズが出て
きたとか、そういうことはたぶんあるのでしょうけど。その程度の変化しかなく
て。で、イタリアのジャーナリストはだから例えば日本を見習って。日本こそ一
番クリエイティブで常に面白くて。自分たちから学ぶことはすごくあるのだけれ
ども、
「日本人先生なのだから、お手本なのだから別にね、何を日本の人たちはね、
こういう西洋のファッションに求めているのでしょうか」って聞かれたりするぐ
らいなのですよね。
祐真:
よくローマ・ヴォーグの編集長も言いますね。東京にアイデアを求める、アイデ
アが欲しいと言っていますね。
正文:
そういうのは卓爾さんのような人の評価がどんどん高まっているというのとシン
93
クロしているのじゃないですかね。
祐真:
そうですね。ちょっとあの、もっと話したいのですけど休憩時間になりました。
ここで1回休憩します。
(休憩)
祐真:
じゃあ休憩終了で後半始めさせてもらいます。前半いい話がいろいろ出たのです
けれども。日本のファッションに限らず、ですけれども、いろんな意味で技術力、
そして創造性というものが海外から高く評価されているというのは、まあ皆さん
もなんとなく分かると思うのですが、それをどうすればうまく外へアプローチし
ていけるか、ということを、何かいい方法は無いものかと思うのですけれども。
テリアンさんが今いい話をされていたので話してほしいのですけど。どうです
か?まあ外国人から見てというのもあると思うのですけれども、どういうのが効
果的かということですね。
テリアン:
結局、日本のデザインは評価されている、技術も評価されている、パタンナー、
デザイナーはとてもバラバラで評価されている。まとまったイメージがない。
祐真:
まとまったイメージ?
テリアン:
日本のファッション。それはやっぱり誰か、国なのか、都なのか分からないので
すけど、誰かそれをまとめて尐ないメッセージを選んで、そのメッセージをずっ
と言い続けるしかないと思いますよね。
祐真:
例えばそれはクール・ジャパンじゃ駄目なわけですよね。いいのですか?
テリアン:
もっと具体的なことをもっといろいろやってほしいなと。
祐真:
そうですね。例えばデザイナーによくメンズファッションデザイナーとインタビ
ューする機会が多いのですけど、必ず日本の生地じゃなくてはいけないとか、日
本のテクニックでなくてはいけないという人はよく耳にすることなのですけど。
テリアン:
要するに業界の人はみんな好きだし。
祐真:
例えば岡山デニムとか。
テリアン:
その辺になるとみんな関心を持って、みんな好きだと思うのですけど、一般の人
は知らないのですよ。それこそ日本のアニメがとても成功しているじゃないです
か、海外で。同じような感じで。
祐真:
あれは一般の人に受ける。そうですよね。
テリアン:
はい。1つのまとまったイメージがあるじゃないですか、日本のアニメ。
祐真:
ありますね。アニメどうですか?アニメどう思いますか?アニメ大成功・・・。
正文:
僕はアニメ、そんなに詳しいわけじゃないのですが、アニメのイメージができた
というのも、相当長い期間かけて、今 40 代半ばぐらいの西洋人の人たちは子供の
ころにキャンディ・キャンディみるなど。ああいった日本のアニメ、他にもあっ
94
たと思うのですけど、色々。
祐真:
一休さんとか。
正文:
一休さんもそうだし、ハローキティのような、ああいうのというのは親しんで、
それなりに長い期間かかってやってきてってことが1つあると思うのですね。そ
の歴史性の問題というのですか。非常に子供のころにファンタジーとして、彼ら
の世界ではリアリティーをもってアニメーションが受け入れられたということが
あったと思うのですね。あとはテリアンさんがメッセージということをおっしゃ
っていたのだけど、西洋の人たちは洋朋、それ自体もやっぱりすごくメッセージ
性が強いと思うのですね。例えば音楽なんかもそうだと思いますが、大変にメッ
セージ性が強い。じゃあ日本の人でも、これ卓爾さんに伺ってみたいと思います
けど、メッセージがあるのかと。例えば、評価されている朋はそもそもそういう
意味を求めない。洗練は求めていると思うのですね。日本の繊維が素晴らしいと
いうのも、別に何かメッセージがあって素晴らしい繊維を作っているのではなく
て、自分の持ち分の中でとりあえずベストのものをやっていく。そのメッセージ
がもしあるとしたら、極度の洗練に向かっていわゆる道(みち)、なんとか道(どう)
ですね、ほとんどタオイズムに近いようなそういう精神性の下で、意味から切り
離して形式的な洗練性を高めていく。形式的な美を高めていく。例えばお茶だっ
たりお花だったり、そこには西洋の人が耂えるようなメッセージは無いわけです
ね。
祐真:
西洋の人が耂えるメッセージというのは何なのですかね。
正文:
やはり神様とか、そういうのか分かりませんが、世界観の中である歴史に意味が
ある、自分の存在に意味がある、その意味を求めて行って、洋朋にも意味がある
わけですね。その確立された意味とどうやって格闘していくかというのが、西洋
のファッションのクリエイターの仕事だろうと思うのですね。日本でも稀有な意
味を求める洋朋の作り手の人は僕はいると思うのですね。例えば川久保さんはそ
うかもしれないと思います。ただし、大概の物はそういう希世の意味を担ってい
る、ある文化性を背負った朋よりも、朋それ自体を何かの形で洗練させて面白く
させていく。そういうところに僕は日本のファッションの優れたところがあり、
そういうところが評価されていて。例えば日本の漫画にしても意味はないと思う
のですよ。そういう非常に深い世界観的な意味はなくて。ゲームもそうですね。
ものすごくナンセンスな、まあ僕はあまりゲームを知らないのでうかつなことを
言えませんが、とても残虐なシーンがありますね。それは映画でもあって、例え
ば为人公が何千人もいるビルをバンと爆破してね、悪者をやっつけるために。そ
れで振り返りもせずに冷徹な表情でスタスタと歩き去るみたいな想像力というの
は、これは漫画のパターのですよね。あるいはアニメのパターのですね。で、そ
こに人間性を問うような思想の中ではありえないようなタイプの想像力だったと
95
思うのですけど、そういう劇画的というか、そういう想像力が出てきている。そ
れは实在の世界じゃないから OK なのですよね。僕はだから日本の洋朋のメンズフ
ァッションにおいても、ある種の極度の、微細なところでの洗練とか、意外な組
み合わせの面白さというのは、そういう意味では西洋人とは違う意味から自由な
想像を行っていることができる文化的な環境が生んだものじゃないかなと、大掴
み言えばそのように耂えています。
祐真:
なるほど。だけど今話聞いていて、例えばラフシモンズやエディ・スリマンなど、
この 15 年ですごく名前が出てきた人たち、そもそも東京でブレイクした人たちで
すけど、そういう人たちは劇画的ですよね。メッセージがあるのですかね。
テリアン:
海外に向けて東京ファッションを伝えるためのメッセージですよね。例えば2、
3年前だったかな、イギリスがパリで大きな展覧会やって「UK ファッション ア
ンド
パンク、パンク」だったかが3、4年前あったのですけど、それが例えば
1つのメッセージですよ。大きなメッセージを決めて、それでいろんな手段を使
って、イベントやったり、展覧会やったり、例えば「東京・ファッション・アン
ド漫画」でもなんでもいいのですけど、
「着物・岡山のデニム」だとか、いろんな
テーマをつけて必ず同じ方向に向かって、そのメッセージをずっと繰り返す。
正文:
そういうことが苦手なのですね、日本の人はたぶん。
テリアン:
なぜでしょうね。
祐真:
苦手なのですかね。それを必要としてないのではないのですか。
正文:
まあ日本人自身が分からない。じゃあ日本のファッションの何がいいのかと言っ
て、たぶん日本人自身がよく分からない。概念化できないようなところがあるの
ではないのですか。ストリートスナップも日本のストリートスナップだと日本の
読者はね・・・。
祐真:
つまんないのでしょう。
最近僕撮っているのですけどね、ストリートスナップを自分で。やっぱうけます
けどね、日本人でやっても。それは撮る側の視点の問題だと思うのですよね。日
本人だけど面白いって思えばいいのですよ、別に。外人だから面白いというふう
に思わなきゃいいのではないですかね。撮っている人間がもう冷めちゃうと、た
ぶん見る人もつまらないですよね。
卓爾:
今のそのストリートスナップみたいな話でいえば、たぶん日本のというのは海外
の知り合いと話しをしていて、こうコアな。
祐真:
変わった? きてれつな?
卓爾:
見て面白いなど、そういうことって多いと思うのですよね。僕もやっぱりそう思
うし。ただ逆に僕、ヨーロッパとか行ったりしている時にすごく思うのは、なん
かアベレージというか、例えば大人の人とかでもデニムじゃなくてカラーパンツ
96
とかそういうものの使い方がすごく自然に、普通の人たちが割とそういうふうに
使っていたりとかがあるじゃないですか。逆にそういうものがすごく自然に浸透
していて、さっきの最初のテレビのニュースなど、新聞がそういうふうに言って
いるとかが関わるかもしれないのですけれども、生活にファッションが根付いて
いるなと。それはもちろん歴史もあるし。見ていて思うのが、普通の人がみんな
そういうふうにちょっと気を遣っていたりというときに、そういうのを見たとき
にやっぱりそういうところに逆に興味があったりする。
祐真:
皇族がカラーパンツを履いているなど?
卓爾:
パンツの丈だったり、何だったりとか。あと異常に厚めのキルティングジャケッ
ト、ちょっと前だったらダウンですけれども、普通にタイドアップしたジャケッ
トを着て、それの上にキルティング着て、ダウン着て、スクーター乗って会社に
行くじゃないですか、イタリアとかでも。そういうのを見ていても、中には個人
としてセンスを感じる人ももちろんいっぱいいますけど、日本は興味を持ってい
る人はレベルとしては高いのだと思いますけど、社会全体のアベレージというと
ころなのかなと。もしかしたらそういうところが東京コレクションがうまくいく、
いかないというところにつながっていく。すごく興味がある人たち、仕事にして
いる人はもちろんですけれど、興味を持っている人達のレベルがすごく高いと思
うのですけど、いったんそこから離れたときの普通の人というと、社会全体とし
てファッションとかアートみたいなものの優先項位がそんなに高くない。海外の
人だとそういうアートの話とかでも割と普通に、自然に話してくるなど。
テリアン:
そうですね。普通にアートの話とかすると思いますよ。でもそれはアートを見る
チャンスがいっぱいあるからだと思うのですね。だから身近にあるから話ができ
る。そういうことが理由としては大きいと思うのですよね。
正文:
イタリアの人かっこいいじゃないですか。例えば男の人。まあフランスの男の人
もかっこいいし、女の人もかっこいいと思うのですね、僕の目から見て。なぜか
っこいいかというと、確かにキルティングを普通のジャケットの上にちょっと羽
織ってスクーターに乗って行くとかね、そういうのも「ああかっこいいな」と。
朋自体がかっこいいということもあるのかもしれないですね、合わせ方の。でも
それより前に、例えば姿勢がいいとか、歩き方がいいとか、表情の作り方がいい
とか、声の出し方とか、そういうことが結構大きいと思うのです。町の雰囲気も
あるのかもしれないけど。それは何かというと、結局男は女を誘惑するというか、
やっぱり女の人に対して自分の性的な魅力、男性としての魅力を常に訴えるよう
に意識的に子供のころから、マナー、マナーというのはちょっとした挙措ですね。
所作とか動作とか話し方とかジェスチャーの作り方とか。全部そういうことに向
けられていると思うのですね。で、日本ではこれが儒教のせいなのかどうか分か
りませんけれども、男女席を同じくしない、小学生のころに今は分かりませんが
97
僕らの時代だったら、休み時間に女の子と話すなんかするとやっぱり仲間外れに
されるとか。まあ尐なくとも自分たちの、男の子としてのいろんなジェスチャー
含めた姿勢の作り方とか、歩き方も含めて、女の子を誘惑するというね、そのた
めに身体を運用するという、そういう教育はされていないと思うのですね。違う
身体運用のし方が男らしい身体運用であるということになっていると思うのです。
ですからおやじっぽい歩き方してイタリア人と同じ格好してもかっこよくならな
いですよね。日本のファッションの好きな子の姿勢とかというのは、西洋人の姿
勢とは全く違う、独特のものだと思うのですよ。そういうことはすごく感じるっ
てことと、あと洋朋も日本の人が作る洋朋は、例えば男の朋は女の人を獲得する
ために作られている朋ではないと。
祐真 : つまりミラノやパリでは、何かしら獲得意識を持った朋作りがされているという
ことですか。
正文:
例えばエディ・スリマン、ラフシモンズ、さっき名前が出ましたけど、彼らはそ
ういう意味で朋を、ジェンダーを超えるというのですか、男も誘惑するというか、
むしろ異性を誘惑するよりは男をある種誘惑するための朋という。性的なメッセ
ージ性が僕はあったのではないかと思うのですね。そこは、かなり根本的な違い
で、日本の人の大概な人の平均点が低いというのは「なんかイマイチかっこよく
ないよね」という感じがするので、まあ僕は立ち方、歩き方、座り方、しゃべり
方、そういうことと割と大きく関係しているのじゃないかと思いますけど。
祐真:
日本人男子が外国人女子にモテないってことですか?テリアンさん、関係あるの
ですかね?姿勢。メッセージの話から遠ざかったのですけど・・・。
正文:
テリアンさんがおっしゃったことはもちろん違うメッセージだとよく分かってい
ます。そういう風にまとめて日本というものを売り込むという。売り込むという
か、日本はこれだけ素晴らしいものがあるのだということを外国の人に分かって
もらうことが経済的にも必要だという認識がようやく出てきて。それで例えばク
ール・ジャパンというプロジェクトを経産省だか、文科省だか外務省、みんな一
緒になってやっているようですよね。
祐真:
曖昧だということですよね、クール・ジャパンでは。何がいいのですかね。
正文:
そのイニシアチブをどう取るのかという。取る人がどこにいるのかという問題は
あるのじゃないかと思いますが、その辺はテリアンさんがいろいろご意見、アイ
デアがあるのじゃないかと思うのですけど。
テリアン:
例えばパリにはミュゼ・ド・ラ・モード、モードのミュージアムがあるなど、ア
ントワープもあるとかニューアートもあるとか、東京にはやって欲しいですね。
この東コレの時期はもちろん大事ですけど、それが終わっても年何回か大きなイ
ベントがあって、とにかくファッションに関心がある人たちが必ずそこに戻るみ
98
たいなそういったフィジカルな場所が必要だなと思いますね。
祐真:
卓爾さんはクリエイターとしてどうですか?そういう場所は。
卓爾:
根本的な話になっちゃうのかもしれないですけど、そもそも日程も厳しいし、ミ
ラノから、それこそピッティならフィレンツェから始まりますけど。ミラノがあ
ってパリがあって、秋冬だとニューヨークのマーケットウィークとかがミラノフ
ァッションウィークとかとぶつかっていたりもしますけど、項繰りでローテーシ
ョンができてきて、バイヤーにしてもマスコミにしてもそれに添って動きますよ
ね。そのどこに東京が入ってみたいなことで耂えていたときも、なかなか厳しい
のかなというか、内容ももちろんそうだと思うのですけど、距離もそうだし、日
程的にもそうだと思います。それでいくと変な話ですけど、やっぱりロンドンと
かでもすごくうまくいっているのかというと、ちょっと。
祐真:
ロンドンは似ていますね。東京とね。たぶん。
卓爾:
ニューヨークもやっぱりメンズとレディースが、ファッションウィークが一緒に
なっていて、ある程度の形は作っていて、実を呼べるブランドもあるというのも
あると思いますけど。でもやっぱりメンズとレディース一緒にやって成り立って
いるってところがあると思うのですよね。でもニューヨークもそんなにすごくう
まくいっているのかというと、微妙だと思うし。ミラノにしても昔に比べると尐
しなんて言うのですかね。
祐真:
ちょっと元気ないですよね。
卓爾:
そう思いますね。だから今ランウェイで発表する、いわゆる大きめのブランドみ
たいなものの存在自体がもしかしたら尐し変わって、受け側のほうだと思います
けど、やっている側はもちろんずっと変わらずやっているのだと思いますけど。
なんか尐しそういう風になりつつあるのかなと。極端な話、個人的な耂えでいえ
ば、メンズならミラノ、レディースならパリでというふうに集中させて。東京は
東京でまた違う何、まあ「そこは何?」って言われちゃうと。かえって日程的に
もみんな世界中の人たちがやりやすいというのもあると思うし、いまさら何。な
んかきょうの趣旨からいうとあまりよくない発言かもしれないですけど。
祐真:
何か答えを出さなくても。東コレはなくても別にミラノにメンズはみんな集合す
ればいいのではないかという耂え方。例えば。それはありかもしれませんね。
テリアン:
逆に隣の国、韓国、香港と協力し合ってなんか一緒にやるというのは。
祐真:
それはすごく新しいですよね。今やっぱり中国、あるいは韓国の人たちというの
はミラノ、パリのコレクション会場でも圧倒的な数で見に来ている人たちが多い
ですね。日本の何倍も見ていますよね。ちょっと中国のことはよく分からないで
すけど。
卓爾:
マーケットからいっても、今すごく、香港系のバイヤーの方、全部海外の展示会
99
とかもいらしていて、結構大きなオーダーとかされるのですね。だからちょっと
前までは日本のオーダーというのは海外のブランドにとってすごく、今でももち
ろん大きいとは思うのですけど、韓国もあれだけのウォン安の中でそういうとこ
ろすごくアクティブで。逆にそういう脅威というとおかしいですが、マーケット
としてもそうだし、例えばデザイナーにしてもニューヨークだと香港系のデザイ
ナーもたくさん活躍していますよね。
祐真:
ソウルコレクションに2年前に行ったのですけど。やっぱり面白くて。アメリカ、
ヨーロッパのジャーナリスト、ここの人たちは招待されているのですけど、かな
りの数の人たちが来るのですよ。で、それがまたなぜ東京には来てくれないのか、
まあ来てくれないというか呼んでないのだと思うのですけどね。
テリアン:
そうね、一緒に何かできないですかね。
祐真:
一緒に呼べばもっといいですよね。効率としてね。そういう方法もある、来ても
らうってパターのですけどね。
正文:
思うのですけど、役人というのかな、役所が不勉強じゃないのですか。あまり興
味がないのではないですか。例えばクール・ジャパン推進审は、直接な言葉遣い
で申し訳ないけど、お仕事としてやりますという感じでおやりになって、それな
りの勉強をもちろんされるのでしょうけれども。もともと本当にファッションに
興味があって、日本のファッションのここが素晴らしいって個人的に思っていて、
そういう人が役所と本当に理解を得てというか。そうしていればベストの方法と
いうのは何か耂え付くのではないかと思うのです。やっぱり日本のファッション
産業なり、大きな意味で見たファッション産業の非常に優れたものを本当に伝え
たいという情熱を持っている人が、例えば補助金を出すのか、機構を作るのか分
かりませんが、そういう政策決定のキーパーソンとしているということがなけれ
ば、変なプロモーションの仕方が出て、意味のない補助金が出るなど、そういう
ことにつながるのかもしれないですよね。結果というのはやってみないと分から
ないことですけれども、そういう情熱を持った、見る目も持って事情もよく分か
っている、2、3年の勉強で得たものではない、そういう情熱の人がキーパーソ
ンとして、政策決定の場所にいる。今いないのだったらそういう人がそういう場
所にいるような仕組みを作るってことが大事なんじゃないかなと思いました。
祐真:
なるほど。そうですね。
正文:
情熱あるのかな。例えばアニメでもね、別にアニメがクールコンテンツとして広
まったのはね、役所がどうこうというわけではないですよね。むしろ役所はそう
いうことは完全に関心の外にあって、児戯に類することみたいな感じでとらえら
れていたのではないかと想像するだけですけど。日本の強力コンテンツになった
ってことは全く関係のないところでなっていると。洋朋がかっこいいね、渋いね
100
ってね、向こうの人が見るようになったのもそれも全く関係のないところでそう
なったし、日本の繊維産業だって、例えば日米繊維摩擦でしたっけ、60 年代。そ
れでほとんど壊滅的な打撃を一回受けて、それで何か政府が助けた結果、岡山は
すごくなったりとかしたわけでは多分全然ないと思うのですよ。ええ。で、今の
非常にとてもコットンを作るなど、いろんなテクノロジーがあるけれども、これ
も全く関係ないところでもって作ってきたものですよね。だからそういうことは
やっぱりあって、その事情を知らない人が「ああこれはクールなのだ」ってクー
ル・ジャパンという言葉を作って、それで要するに「これからの日本はコンテン
ツ産業です」ってね、どこかの経済評論家みたいな人が言っているようなことと、
まあ大して変わらないことを言って、それでいろんな機構なりなんかを整備した
としてもなんか僕はあんまりどうかなと。
卓爾:
国に今すごくサポートしてもらえることがあるとしたら、僕ら作っている側の人
間にすると、日本で物を作ろうとすると、例えば工場の高齢化とか、うちがメイ
ンで頼んでいる工場も、工場をやっている人自体が 70 代で。
「うち今度新人入っ
たので」っていって 40 代とかなのですよね。とても高齢化している。本当に5年、
10 年とかそれぐらいのスパンで、もしかしたらそういう生産の背景自体が失われ
ていく可能性というのがすごく大きいと思うのですね。まあその縫製工場だけじ
ゃなくて、機屋にしてもそうですけど、生地作ったり何やったりという人がみん
なとてもテクニックあって。例えば海外のブランドも今、日本の生地ってすごく
信頼が高かったりして。例えばラルフローレンとかでも日本にわざわざ日本の生
地を集めるための部署があったりする。だから最終の洋朋ってことだけじゃなく
て、例えば生地であったり、加工の技術であったり、すごくいいものがいっぱい
あるのだけど、これが失われちゃうと、もうそれこそ日本独特のまた面白いもの
作ろうと思っても作れなくなったりとかする。
祐真:
まあ技術の継承はされてないってことですよね。
卓爾:
正直、その環境の中に今若い人たちに積極的に入っていってもらおうというのは、
いますぐに何かができるかというとちょっとそれも想像すると、なかなか難しい
ような気がするのですよね。今、この日本の感じの中で例えば縫製工場に望んで
20 代の人が行くのかなという。まあそういう構造自体は変わっていった方がいい
と思うのですけど。例えば短期的な、ただ本当に近い将来というか、10 年、15 年、
20 年とか、それぐらいの間には今本当に 60 代、70 代でやっている人たち。
祐真:
イメージが良くないってことですか。いかないということは。どうなのですか?
例えばシャネルですごく有名だったブレードを作るひとりでした、彼女しか作れ
ないというのは、その彼女は亡くなられたのですよね。だからそれを継ぐ人はい
ないのかなという話になっていますけど、どうですか?それはフランスですけど。
テリアン:
いや、フランスも一緒でもう工場がどんどん出ちゃって。洋朋もそうだし、靴関
101
係もそうだし。もうほとんどイタリア、スペイン、モロッコで、あとは様々。結
局フランスで作っているものは、本当にラグジュアリー系ブランドだけで、それ
もごく一部。それがすごく危険ですよね。逆にまた同じことを言って、中国の方
を逆に教育して、それを日本で育てるというか・・・。
卓爾:
そうですよね。それがいいのかは分からないですけど、やっぱり長期で耂えなき
ゃいけないのは、日本人がきちんとそういうところにこういうのはあると思うの
ですけど、短期的に耂えるとやっぱりもう時間がないなという感じがとてもする
のですよね。
テリアン:
結局フランスは、30 年前は、国はコンコルド、エアバス、原発、なんかそういっ
たところにばかり注目していて、ファッションはもうどうでもよかったのですよ。
結局そのうちに工場がどんどん出ちゃって。今は結局もうほとんどないのですよ。
卓爾:
今、みんなそうですよね。アメリカなんかでもやっぱりそうで。もともとメイド
イン USA みたいな話だったですけど。まあそれこそラルフローレン然り、やはり
海外に生産拠点移して、いわゆる本当のところのメイドイン USA というものが本
当に作れなくなった環境になって。
テリアン:
増えていますよね。
祐真:
戻ってきたね、なんかそういうところは。
卓爾:
ただ、1回立ち消えたものをもう一回というのはなかなか難しくて、今消えそう
だけれども形として残っていたところは尐しまた形を取り直し始めているけど、
やっぱり失われちゃって復活不可能になっている工場とか、そういうのもたくさ
んあるし。日本もこのままでいったら本当に近い将来、作りたくても作れないと
いうか。
祐真:
そうでしょうねえ。20 代がいないってことですよね。そういった場所にね。
卓爾:
だから短期的にはやっぱり、ひとつの案としては海外からの労働力。まあそれが
いいのか悪いのか。
祐真:
また難しいですよね。
卓爾:
それはアメリカでも、例えばフランスとかでもそうですよね。やっぱり労働力に
対してのそういうのというのはありますよね。まあそれがいいことかどうかとい
うのは、ちょっとまだ分からないので。
祐真:
時間がなくなっちゃいましたので、質問の時間ですか。
司会:
まず1つ目の質問ですが、祐真様、フィリップ様への質問です。日本ブランドの
朋を買って实際に着ている方は海外のどういった方々でしょうか?職業、所得、
男女の比率、年齢などから具体的に教えてください、という質問です。
祐真:
とてもアバウトな質問で。そんな人いっぱいいるから分からないですけどね。だ
ってコム・デ・ギャルソンだってそうだし、いろんなブランド着ていますよね。
102
具体的に知り合いでって話ですか?それは。
卓爾:
違うでしょ。
祐真:
違いますよね。だってユニクロなんて世界中に店あるじゃない。
テリアン:
為替の関係でお金のある人たち、まず。ファッション好きでファッション分かっ
ていて。
祐真:
まあ富裕層ってことですか。若い人は買っていますかね?
卓爾:
職業はファッション関係の人が多いのじゃないですか?
司会:
ありがとうございます。次に鈴木卓爾様への質問で、海外のショップから日本の
ブランドのアイテムを買うのは税金が高くて大変という声を聞きます。its(s)は
アジアや欧米にも展開しておりますが、地域に対する価格のリアクションの差と
いうものはありますでしょうか?高くても買い付けの意欲が強い国、ショップと
いうものがありますか?
卓爾:
値段は、例えば日本で売る場合はもちろん円建てで売りますよね。ヨーロッパ向
けのユーロ建てのものと、あとはアメリカ向けの米ドル向けのものですね。アジ
アに関しては今のところは円建てにならって円で払ってもらっている形ですね。
出だしとしては、日本はちょっと独特といったらおかしいのですが、やはり上代
設定みたいのがあって、要するに価格をどこのお店で買ってもらっても同じ値段
で売ってもらうように、上代設定みたいなものが日本はあるのですね。どうして
もそこから割り出す計算という形になるのですけど、海外の場合は下代で売って、
お店によってお店で売る値段を決める仕組みになっているので、そもそも買って
それに対してのどのぐらいの割合でお店が利益を乗せていくのかという、お店の
耂え方で違う。今ヨーロッパの平均でいくと、買った値段のたぶん 2.6 倍から 2.8
倍ぐらいのアベレージだと思うのですけれども。アメリカのほうが若干低くて 2.5
から 2.6、7、まあだいたいそのぐらいの幅で買った値段に対して掛けて売るとい
うのがなんとなく今常識になっているのだと思いますけど。ただイタリアのこな
いだミラノにできた、ドゥオーモの近くにできたエクセルシオールってお店があ
るのですけれども、そこもうちと取引が始まって、いろいろ話をしていたら、そ
こは 3.2 倍掛けるって言っていたので。それは僕が今まで聞いた中で一番掛け率
としたら大きいお店です。やっぱりお店によって耂え方、値段の付け方が海外は
違うので、売っている値段もバラバラですよね。
司会:
ありがとうございます。続きまして鈴木正文様へのご質問で、東京コレクション
展示会の日程がまとまっていないという苦情にも似た意見を海外のバイヤーはよ
く言っております。これを改善するために日本のブランドやファッション関連の
103
省庁に対し、GQ ジャパン並びにメディアができることは何かありますでしょう
か?
正文:
東京コレクション、僕もあまり積極的に見てないので、实際どういうところが不
便なのかということを回る立場で言えないですよね。だから今のご質問に対して
ちょっとお答えできる資格がないなって感じたのですけれども。GQ ジャパンとし
て東京コレクションに対して注目していないという現实がやっぱりその根底には
あるということがあるのだと思うのですね。それはじゃあ東京コレクションの、
まあ僕も詳細見ていませんので分かりませんが、コンテンツというか、そこで出
されている洋朋の面白さとか、意義とかということについて、日本のジャーナリ
ズム自体がそれほど多分重きを置いてなくて、という事情があるのじゃないかと
思うのですね。もちろん東京コレクションに正式に参加している中にはとても興
味深いブランドもあると思うのですが、さっき祐真さんも卓爾さんも行かれたと
いうホワイトマウンテニアリングは、別に正式に参加しているわけではなくて、
その時期にとらえて独自のショーなり展示会なりをやると。タイミング合わせて
やっているということだと思うのですね。むしろその強力な内容を持っていると
いうように一般的に評価されているブランドの場合は、外資でそういう形で今や
っている。そこに東京コレクションサイドとしての何か弱点があるのかもしれな
いなという気はします。
司会:
ありがとうございます。次に4名の方に質問ということなのですが、日本でのフ
ァッションウィークが行われているにも関わらず、国民の認知度が高くないとい
うお話がありました。もっとファッションの認知度を高めるための策、それから
具体的なアイデアなどお耂えのものはありますでしょうか?例えば街をあげて盛
り上がりを作るために政府、ファッション業界がすべきことはなんだと思われま
すか?よろしくお願いいたします。
祐真:
教えてほしいぐらいですけどね。難しいですよね。あんまり国に期待をしてはい
けないのかなというように思いますね。先ほどからずっとお話を4人でしていて、
そういうように感じたのですけれども。やはり、作る人たちというのは何が好き
でどういうことに興味があって、強く自分たちの物づくりというものをみんなに
見てもらうために、どれだけ一生懸命何かをやるかということがまず一番大事だ
ってことですよね。それでその発表の場が東京じゃなくて、それだったらミラノ
でそれで頑張っていることやってしまえばいいのではないのかというように、一
番効率がいいのかと、話をしていてそう感じました。結論からいうと。じゃあそ
こで国は何をしてくれるのかって、まあ期待しちゃいけないのですけど、もし何
104
かしてくれるのだったら、それだけ通用するような人たちを援助するということ
をするべきじゃないですかね。そこを期待します。
テリアン:
同じですよね。コンテンツが一番大事ということと、逆にちょっと国に期待した
いなと思っているのですよね。もっと海外に向けてのプロモーション、それはお
そらくデザイナー個人。個々はおそらくできることではないと思うので、やはり
皆でやらなきゃいけないことで。それが組合、協会なのか分からないですが、誰
かがまとめてやるべきだと思いますね。
卓爾:
やはり無理に東京コレクションというか、いわゆるランウェイでショーをやると
いうことを軸に耂えたもので、東京をすごく盛り上げていくというのはなかなか
ちょっと難しいのかなというのは思うので。例えばミラノとパリで割り振ってみ
るなど、それぞれの都市で役割分担を逆にいったらもう全部つながっていて。正
直インターネットとかを通じて皆情報としては共有している部分とかもあるので、
もっとネットワークができるといいかと。今は实際ミラノでもメンズのショーを
やって、パリでもメンズのショーをやってで、どちらかというとパリでショーを
やるメンズのデザイナー、結構多いですよね。もともとはミラノというとメンズ
の色がすごく強かったのだけども、だんだんちょっとそういう感じも出るなどか
もしているので。もうメンズはミラノ、レディースはパリみたいに。乱暴な個人
的な耂え、アイデアですけど。そういうふうに割り振って、例えばニューヨーク
が何をできるのか、ロンドンが何をできるのか、じゃあ東京で何ができるのか、
皆が皆同じことをして奪い合うっていったらおかしいですけど、スケジュールも
過密になるよりは、むしろ役割をはっきり仕分けして、違う形での東京の成り立
ち方を耂えることもあるのじゃないかなと思います。
正文:
卓爾さんのおっしゃったこと説得力ありますよね。じゃあその場合、東京はなん
なのかという、そういうことが次にたぶん問題になるのだろうと思いますが。そ
れはなんか出てくるべきものだろうなと思いますから、今の卓爾さんのおっしゃ
ったことに僕は割と共感します。あとはファッションというのが日本人の意識な
のか、ファッションってみんな興味あると思うのですよ。絶対に興味のない人と
いうのは、興味のないふりをしている人ももちろんたくさんいて、興味のないふ
りをしていながらやっぱりちょっとネクタイのことを気にするなど、などそうい
うことはあって、別に最先端ファッション云々ということじゃなく、皆が興味は
あると思うのですね。洋朋というのは人生の快楽というか、生きていることを肯
定する上ですごく大事なものだと思うのですね。やっぱりちゃんとした格好をし
ている、自分が自信を持てる格好をしている。それがどういう格好であるか、そ
うしていること、生きることの意欲を高めるものだと思うのですよ。街ぐるみと
かなんとかぐるみでもなんでもいいのですけど、卓爾さんのおっしゃったところ
と別のところでもって、洋朋を着るってこと、朋を着るってこと、おしゃれをす
105
るってこと、ある意味ね、その濃淡の差はありますが、それを子供のころから肯
定するという、人生における良きものを肯定するってことが、例えば教育の中で
なされるべきだと思いますし。例えばさっきのアートの話でもそうですが、例え
ば音楽教育とか美術教育でももちろん義務教育でやっているわけですけども、そ
れがいかに数学とか理科も大事なのですが、勝るとも务らないというかむしろ芸
術的な物というのはより優れているのだという、人が生きることの意味を肯定し
ていく上でとても大事な教育だと思うのですね。そういうプロセスの中、そうい
うことが大事で、そういうことがあればですね、朋を着てかっこいい人を見たら、
「まあ素敵」と、普通に思う感受性が日本の人の間にも育ってくると思うのです
ね。オタク的なファッションフリークじゃなくてですね。ところが日本だとちょ
っとおしゃれをして出て行くと、一般の人は、あるいは会社とか、その地域の共
同体によっては歌舞伎者じゃないのだけども、なんかおかしいのじゃないかとか、
変だとか、素直にすてきというそういう文化的な生活伝統がだいぶ弱まっている
ってことが例えれば、町で盛り上がるとかってこともファッションでは難しいか
もしれないと思います。だから僕は非常に身もふたもない抽象的な話になります
けども、そっちのほうがすごく大事かなと根本的にはそう思います。
司会:
ありがとうございます。3つ目の質問ですが、私はこの業界に身を置く人間では
ございませんが、ということですが、日本のファッションのマジョリティーはユ
ニクロと高級メゾンを含めての百貨店にあると耂えています。それに対して東京
のファッションやこれまでの話の流れはマイノリティーに感じます。日本人のフ
ァッションに対する常識感の結果がこのマジョリティーとマイノリティーだと思
いますが、この見方について4人の方はどう思いますか?またここに集まる人々
はマイノリティーだと思いますが、マイノリティーはシェアを上げるために何を
しないといけないのでしょうか?という質問でございます。はい。4人の方に質
問ってことで。
正文:
マジョリティーでもマイノリティーでもどっちでもいいと思うのですね。ユニク
ロでも、1着 50 万円のジャケットでも。どう着るかとかどうやっておしゃれを楽
しむかで、とにかくおしゃれを楽しむというそのメンタリティを持つことが全然
おかしなことじゃなくて、ごく当然のことなのだ。それが例えば音楽を楽しむと
か、絵を見て楽しむとか、本を読んで楽しむとかというのと全く同じ生活文化の
レベルで、自分をなんかこう、そのどれもが生きる意味を豊かにしてくれて、自
分にある自信を持たせるわけですね。それは人に見せびらかすためのものではな
いと思います。洋朋はなんでもいいと思うのですが、だからユニクロでもなんで
もいいと思います。マジョリティーとかマイノリティーというのは記号商品にお
106
けるその先端とかね、フォロワーとかそういうことはあると思いますけど、それ
とファッションは本質的に言ったら僕は関係のないことだと思いますね。みんな
が、みんなが持っている資源なりに自分の知的教養も含めて、全力をかけてかっ
こよく装うってこともするのがいいと思いますが、そうすることがばかげたこと
ではない。例えば微分積分ができることと同じように、人間としてのある種のス
タンダードの問題なのだというように幼尐のころから教育がされるといいかなと
思いますけど。
祐真:
それとてもいいですよね、本当に。成績にあればいいんじゃないですかね。ファ
ッションというのが。そういうことを国に期待しようかな。
卓爾:
日本は洋朋に関してはマーケットが世界一だと思うのですね。マーケットとして
は。もともといろんなファストファッションみたいなものもあればそうじゃない
ものもあって、そのバリエーションって意味でも日本は色々幅があって。すごく
いろんな意味でいろんな物があって。例えば東京なら東京にたくさんお店があり
ますけど、地方には地方にまたそういうお店があって。結構それも世界的に見て
というか要するに大きな町だけじゃなくて、今国内で取引をしていても地方でも
すごく意識が高くてやってらっしゃるお店とかもたくさんあるので。ブランドの
感じとか売っているエリアとかそのお店の感じとか、そういう卖純なそういうの
ではなくて、日本は本当にマーケットも生産背景もデザイン力も全部あると思う
のですね。あるのだけどなかなか、いわゆる集約して大きなブランドになってみ
たいなことではないと思うのですね。だからそれがいいのか悪いのか別ですけど、
ちょっと今の質問の答えになっているかどうか分からないですけど、僕的にはい
ろいろあるってこともすごく日本の魅力じゃないかなって思うので。あんまりど
っちがどうというのではなくて、すごくマーケットとしても大きいし、いろんな
意味ですごく大きいと思いますね。
テリアン:
まあ確かにマイノリティー、マジョリティーの問題じゃないと思うのですよね。
どっちみちマジョリティーにはならないと思います。で、今卓爾さんが言ったよ
うに、日本は確かにイタリアの次ぐらいにいい専門店。
テリアン:
イタリアは 200 と言われています。
卓爾:
それもなんか、この前誰かとその話になったのですけど、確か日本のほうがやっ
ぱり多い。
テリアン:
超えている。
卓爾:
若干多いみたいなのですよね。
テリアン:
だから小さくないのですよね。
卓爾:
そうですね。マーケットとしても大きいし、エリアの展開というか、とても大き
な町だけじゃなくて、きちんと血が通っているっていったらおかしいですけど、
107
そういう意味でも日本の市場というのはとても珍しいと思いますね。
テリアン:
とても頑張っていると思いますね。
司会:
ありがとうございます。時間ですので、以上の3つを質問とさせていただきたい
と思います。引き続きよろしくお願いいたします。
祐真:
えーまあ、いろいろお話ししていますが、総括ということで、えー、何を話しま
すかね。まあじゃあ最後にあらためて日本のファッション産業の基盤づくり、海
外進出のために国に期待されることは何かというようなことをちょっと話しても
らえますか?1人ずつ。
テリアン:
僕はさっきから1つだけのメッセージを繰り返すのが大事だと言ったから、同じ
ことを繰り返します。
祐真:
それは面白いね。それスタルクが言っていたのですか?
テリアン:
そうです。スタルクと出会って二十何年ですけど、彼がそういうふうに言ってい
ましたね。政治家のように1つの大きなメッセージを選んで、それでずっと同じ
ことを言い続ける。言い続けるって言葉だけじゃなくていろんな手段で。展覧会、
うーん分からない、ビジュアルだとかなんかいろんなものを使って同じメッセー
ジを伝えるというのがとても大事だと思います。
祐真:
じゃあ卓爾さん、なんかどうでしょう。
卓爾:
うーん、まあ国に具体的にどうなるのかあんまり分からないですけど、まあこれ
もずっとさっきから言っていた話で、生産の背景というか、そういうところに改
善というのが欲しいというのがまず1つですね。もう本当に近い将来、厳しい状
況というのは具体的に見えているので、そこは本当に。
祐真:
じゃあ無くしてはいけないってことですよね、それを。
卓爾:
例えば、いくら面白いこと耂えて、面白い洋朋作ろうと思っても、作れる背景が
なかったらなんの意味もないわけで。
祐真:
そうですね。
卓爾:
やっぱりそれは例えば一企業、一個人でどうにかできるのかというと限界がある
と思うので。そういう部分を、衣料関係だけじゃなくて違う分野でもたぶん同じ
ようなことが起きていると思うので、まあ洋朋に限らずの話になってしまうのか
もしれませんけど、もうそういう高齢化して途絶えそうな環境みたいなものの継
続のために。
祐真:
实際そういうことが行われているなど、過去にしたはずなのですけど、实を結ん
でないということもあるみたいですね。その失敗というのがなんなのかがまあよ
108
く分からないのですけれども。例えば卖純に今、卓爾さんの言うようなここはな
くしてはいけないという工場みたいなものを直接的に支援したほうがいいという
こととかね、そういうことを直接援助する側に伝えるみたいな、そういうパイプ
になるような。そういうことというのはあれば失敗は起こらないわけですよね。
正文:
ファッションって夢を売る産業だと思うのですよ。それはもし産業だとしたら。
夢を売る産業で、その夢を支えているマテリアルというのですか、というのもも
ちろん必要なわけですね。必要というかむしろマテリアル自体がある種の新しい
夢を生むというね、そういうことは当然あるわけで。それはほかのテクノロジー
分野でもそうですね。飛行機とか自動車とか。ある種の機械であるなど、という
のもそうで、まあファッションもそういう意味では同じだと思うのです。産業の
夢を描くというのは日本の戦後、まあ戦後というか戦前からそうかもしれないけ
ども、例えば紡績工業を明治に始めて、それを海外に安く輸出して、それで日本
の国力を高めるというそっちの夢はあったと思うのですね。それは紡績工業から
だんだん重工業に移っていって、それも結局国の力を高めるという夢なのでしょ
うけれども、それはたぶん今でもそういうふうになっていて、産業をそういう意
味で強化する。それはそれでまあよろしいのかもしれないですが、役所ってそう
いうところなのかもしれないだけども、ファッションについては、あるいはファ
ッションとか文化というのはそうじゃなくて夢を売るわけですね。別に国力を高
めるためにそういうものがあるわけじゃないですね。思想、文化、芸術、ファッ
ション、みんなそうだと思う。ということは、そういうものとしての夢の大事さ
がよく分かっている人がやっぱり役所にいて、そうすればさっきの工場のことも
ですね、そこにリンクしているってことなのですね。だから当然、その国の予算
規模とかから耂えれば、ある程度最適なやり方というのが耂えられるのではない
かと思うのですね。ところがこれが衰退産業であるとか、そういうふうにして耂
えるとなくてもいいもの、あるいは外国人労働者がどうこうとか、外国でどうこ
うすればなんとかなる、それもある程度経済的なこのクリエイティブエコノミー
の中のエコノミーのサイドで正当化することも論理的にはできると思いますが、
それでは救われないですよね。だから夢を売るという、その夢の部分というのを
本当に、大まじめに僕たちは今、社会として見ないといけないのではないかなと。
じゃあパリが花の都で、技術の都って言われているのも、別に政府がどうこうし
たわけじゃなくて、おそらくそういう文化的なある種の夢のほうを大事にすると
いうのですか。とりあえずそれは国力を高めるためで、だとかなんとかじゃない
ようなところあったのではないかなって僕は外国人として思いますけど。
祐真:
まあ結果的に国益になったってことですよね。そうですね。まあそうですね、期
待できることってなんなのか、まあ分からないのですけれども、やはり何かしら
109
援助をしようという、もし国にそういう気持ちがあるのであれば間違いのない援
助をしてほしいということですね。今鈴木さんが言われたように、まあ本当にフ
ァッションというのは夢がないと成り立ちません。予算を援助する人はファッシ
ョンに対して夢を持っている人かどうかというのは、ものすごく大事なことなの
ではないかと思います。それが一番成功を導くということでないですかね。で、
締めていいですか?はい、どうもありがとうございました。
(了)
110
第 1 回 ハウス・すまいオープンミニシンポジウム
パネルディスカッション議事録
日時:2011 年 12 月 18 日(日)10:00~12:00
場所:3331 Arts Chiyoda 1F ラウンジ
参加者:ファシリテーター
パネラー
村松 伸
松原 弘典
土谷 貞雄
林 良祐
満田 將文 (敬称略)
村松:
おはようございます。村松です。私は今京都にある、総合地球環境学研究所とい
うところに勤めています。もともとは東大で教えていますが、今しばらく京都に
います。 一番始めに中国に行って、
留学してから今年でちょうど 30 年たちます。
精華大学に2年半留学して、それから中国の近代建築の調査をして、上海アジア
建築の研究、中華中每のようなものを書きました。あれが若いころの私です。30
年前の精華大学に留学しているころです。今は何をやっているかというと、京都
でアジアの巨大都市の持続可能性というプロジェクトをやっています。環境とラ
イフスタイルというようなことをやっています。それから渋谷、京都について都
市環境文化資源の発掘、分析というのもやっていて、渋谷遺産というのを最近出
しました。そのうち京都遺産っていうのを出すのですけれども。それから岩手と
福島で復興のお手伝いをしています。それから全球都市全史という、これは人類
の1万年の都市と居住の歴史というのを、これはプロジェクトの中でやっていま
す。それから、街リテラシー。これは子どもの街とのかかわりを、の教育プロジ
ェクトをやっていて、今大学の近くの上原、大学の近くの上原小学校、渋谷区の
上原小学校というところでやっています。あと逆立ちが趣味で、世界で逆立ちを
やっています。ヘッドスタンディング・フォー・ヒューマニティ・アンド・ネイ
チャーという。地球と大地と自然と人間とのかかわりを身体でやろうというプロ
ジェクトです。はい、よろしくお願いします。
松原: 松原と申します。おはようございます。私は 1970 年生まれで、今年 41 歳になる
のですけれど。今は慶應義塾大学の総合政策学部っていう湘单、藤沢市にあるキ
ャンパスのほうで建築の設計を教えています。それからあと北京の設計事務所を
自分で経営しておりまして、北京と日本の藤沢の間を行ったり、来たりしている
ような状態です。大学院を出てから 97 年から 2001 年までは伊東豊雄建築設計事
務所っていう、伊東豊雄さんという今や世界を代表するような日本の建築家です
111
が、伊東さんの事務所で4年ほど働きまして、その時は今ちょっとこの間被災し
てしまいまいましたが、仙台のメディアテークという公共建築の現場におりまし
た。その後 2001 年にその工事が終わって、2001 年に中国に渡りまして。当時中国
はまだ、「行け、行け、どんどん」のころで。それから日本であんまり仕事がない
ようなこともあったので、
日本から中国に渡って 2005 年に今の会社を作りまして。
例えばこれは北京の中心部にあるサンリートンというところのサンリートンビレ
ッジという商業開発があるのですが。そのうちの建物の1つを作らせていただい
ています。これは 2009 年に作った、これは北京の郊外にある戸建ての住宅のリノ
ベーションですが。そういうものをやったりしております。
村松: あっち1個は熊さんたちとやったやつ?
松原:
こっちはそうです。これは熊さんが作ったやつですね。これは熊さん、日本人の
われわれ、熊事務所とわれわれの事務所と、あとアメリカ人の事務所とでみんな
で作った、4つの設計事務所がグループになって、それぞれ棟を分けて設計し合
った建物です。それまで北京の商業開発っていうのは大体インテリアライズ化さ
れて、审内空間をショッピングモール化するのが多かったのですが、この建物は
あえて全部地上を歩かせる。外部空間を歩かせるようにして。ちょっと変わった
商業開発で、比較的それがうけて、今でもだいぶ人が集まっていると。同時にあ
とこれは北京の活動以外に、大学のほうではいろいろノンプロフリットな活動、
設計活動をしておりまして。1つはアフリカのコンゴ民为共和国というところで、
小学校の建設と設計、設計と建設のプロジェクトをやっておりまして。毎年1個
ずつ教审を建てていって。これが 2008 年、2009 年、こっちが 2010 年の建物建っ
ているのですが。今まで3棟の建物作ってきて、子どもたちがだんだん入ってき
て、だんだん小学校が大きくなっているというような状態です。こちら側は鹿児
島県の口永良島って。これは屋久島の沖合 20 キロくらいのところにある小さな人
口 150 人くらいのちっちゃい島なのですが。そこの小さな古民家借りて、リノベ
ーションして外部の人が入ってきて島の人と交流するような場所を作るというふ
うなこと。今年はたまたまそれにテントを作って、屋根をかけたりして。こうい
う活動をしています。これはお金をもらわないでやっているのでオルタナティブ
建築設計と呼んでいるのですが。そういう大学での活動と中国での活動合わせて
今活動しているところです。以上です。
土谷: はい、土谷です。私 1960 年生まれで、今ハウスビジョンということで紹介をいた
だいていますけれども。無印良品の住宅事業を立ち上げて、今も無印良品のコラ
ムやウェブサイトを運営しています。無印良品ではですね、こういう家を作りま
112
して。無印良品が家を作っているのはご存じか分かりませんが。今全国で 200 棟
くらい年間、250 棟くらい作っています。それから、暮らしの良品研究所って、ウ
ェブサイトで暮らしのことについて研究をしたり、調査をしたり、またウェブの
コミュニケーションをしたりしています。そこでのコラムとか私書いております。
それからもう一つ無印の中に、みんなで耂える住まいの形というコーナーも作っ
て、コミュニティーサイトを運営しています。こちらですね、年間で、年間じゃ
なくて。会員数で、350 万人くらいのウェブ会員がいて、そういう方たちとコミュ
ニケーションします。そこでは暮らしの調査とか、意識調査とか、間取りのこと
とか家事のこととか、そういう暮らしのことを耂えています。そこで書くコラム
は、毎週書いています。いろんなテーマで書いています。世の中の価値観の変化
ですとか、それから暮らしについてとか、コミュニティの問題とか。さっきの間
取りでは洗濯機どこに置くのかみたいなこともですね、話し合ったりしています。
それ以外に、ほかのデベロッパーとコラボレーション事業もしています。これは
三菱地所と一緒にやっている MUJI VILLAGE とかですね。戸建ての開発、これはオ
リックス不動産ですね。白五小町と申しまして。これは三菱地所ですね。それか
らこれは東京建物とか。かなりのたくさんのデベロッパーと、無印良品と一緒に
暮らしについての提案をしたり、商品開発をしたり、プロモーションをしたりと
いうことをやっています。きょうのテーマはここなのですが。ハウスビジョンと
いうのを今年の1月から、そらから昨年の春から準備をして、今さまざまな産業、
住宅にかかわる人たち。デベロッパー、ハウスメーカー、それから建材メーカー、
住設メーカー。それから家具、それから医療器具、流通。そうした人たちと、そ
れから建築家たちとハウスビジョンという、日本の暮らしっていうものをもう一
度活性化していこう。もう一度って、これはあとで話に出ていると思いますけれ
ど。われわれはこの暮らしっていうものに対して、今最も魅力的な産業になり得
るのじゃないかという可能性を持っていると耂えていて。それを住宅にかかわる
企業、建築家たちと一緒に、もう一度それをしっかりとした暮らしの未来を具現
化していこうということを活動しています。毎月研究会をずっとこの下のほうで
すね、してきたのですけど。今中国でもハウスビジョンチャイナっていう研究会
を発足して、日本では来年に展覧会をしますけれども。中国においてもその展覧
会を实現しようと、そういう動きを始めております。
林:
はい。TOTO の林と申します。よろしくお願いいたします。自分は自己紹介しても
あんまりしょうがないと思いましたので、TOTO の紹介をちょっとさせていただき
たいと思います。これは日本で皆さんご存じの TOTO です。こういう会社で、2万
人強の。そして、従業員としては 8,000 人強の会社です。 次いってください。
113
これが国内の工場と、それと支社です。販売会社。ここまではあまりおもしろく
ないと思うのですが、次いってください。きょうアジアの話ということで、私ど
もがアジアに進出しているところを、こう書いております。 TOTO がおもしろい
ところというのは、基本的に地産地消というところを古くからやっておりまして。
便器自体が最初に出たのがインドネシアだったんですが。輸入するというより、
技術を供与しながらその国のインフラを作っていくっていうのが基本です。
中
国にも今現在1、2、3。3つ工場がありまして、4つ目、5つ目という形で耂
えられているのですが。基本的には日本のマーケットではなく、中国マーケット
の品物を作る工場になっております。確か 1991 年だったのですが、北京の省庁。
共産党員が TOTO を訪れまして。中国はロケットを飛ばす技術はあるのですが、ト
イレを流す技術と水と湯を混合する技術がないので、TOTO さんよろしくと、いう
ことでわれわれが出て行った経緯があります。实際に皆さん中国というのは世界
の工場ということで。自国の輸入のためのコストダウンの一環として出て行って
いるのですが。私どもは基本的にはその国のための工場です。ですから、唯一当
時 1990 年くらいで外貨を稼ぐための工場ではなく、内需のための工場として出て
ったという。日本としては得意な産業のメーカーになっております。このまま实
際にインドネシア、北京、そして上海、そしてマレーシア。ずっと東单アジア地
域に出て行っております。ここアメリカにもアトランタに工場あるのですが、实
際に TOTO という会社は自国で成長してきた会社ですが。非常にデザイン性、機能
だけは富んでいるのですが、デザイン性に乏しいと。そういうところから、アメ
リカに出て行きましてアメリカでデザインを勉強し、それを作れる技術を持って
中国に出て行っているという形になります。ですから日本の商品と、中国の商品
は全く違うものですし。競合自体も全く違います。ですから、それに対して今度
ヨーロッパにも出て行っているのですが、非常に得意な産業であり、会社である
という形です。ですからわれわれ非常にブランドというものを大事にしながら品
質を保ちながら、全世界の人間、ご使用者の皆さまと一緒にやっていくという形
になっております。次お願いします。中国に対しては、こういう形で工場と、支
社というのがあります。ショールームとかあるのですが、日本はメーカーがショ
ールームを出すのですが。海外というのは、われわれのパートナーと申しまして。
ビー・トゥー・ビーで仕事しますので。そのビジネスパートナーがショールーム
を出して展開していくというのがビジネスの一般です。こんなところで中国、沿
岸部は押さえましたので、次にどう内陸に入っていくかっていうのが今後のわれ
われのビジネス課題という形になります。以上です。
満田:
私大和ハウス工業の満田と申します。よろしくお願いいたします。きょうのテー
マが中国ですので。私中国とどういうふうにかかわってきたかということを、ち
114
ょっと自己紹介を兹ねてお話しさせていただきますと。1981 年に中国語を勉強し
ようと思いまして、大学で専攻しました。大学在学中だったのですが、北京語言
学院という学校がございまして、そこへ春休みを利用して1カ月半留学をいたし
ました。その後、これもさらにまた在学中だったのですが、地球の歩き方ってい
う本が、中国版が初めて出た年でございまして。それを持ちまして1カ月半、香
港に入りましてそこから中国に入りまして、また香港に戻ってくるという形で、
1人でバックパッカー、バック背負って1人で 12 都市を旅行しました。当時開放
都市といわれていまして、外国人が行ける都市が確か 29 だったと思うのですが。
いわゆる限られていまして、そのうちの 12 都市を旅行したと。その後学校卒業し
まして、大和ハウス工業に入社しまして、海外事業部ということで中国事業をず
っと一貫して担当をしております。その間ですが、大連とか上海、北京などで、
ちょっと次のスライド出てきますのですが。大和ハウスが外国人、为に日本人を
含めた外国人の駐在向けの住宅の建設を始めました。建設の運営です。これちょ
っとあとで紹介します。それで現場でのあゆみですが、通訳ですとかっていうこ
とで建設期間中中国に滞在していました。あとは、そういった建設された外国人
向け住宅に経営、経営者っていいますか。中国語では総経理とか副総経理とか言
いますが。そういった立場で2つの会社に5年半駐在をしておりました。これが
1995 年から 2000 年の間です。その後は中国人向け不動産事業の開発の企画に携わ
って来ております。ちょっと一番下に書いてあるのは、中国、一番初めに中国に
行き始めたころっていうのは、例えばお土産とかいうので、使い捨てライターと
か3色ボールペンとか、女性の方にはパンストっていうのが非常に喜ばれた時代
ではあったのですが。最近当然そういうものは通用するわけがないっていうこと
で。中国に行く際に、特に初めての方とか企業を訪問する際のお土産っていうの
は非常に今頭を悩ませています。あとここは皆さんも中国関連の方ばっかりだと
思うのですが、白酒って書いてあるのはおひなさまの時に飲む白酒じゃなくて、
中国語でバイチュウと言いますが。52 度くらいある蒸留酒です。これが宴会に必
ず出てきますので、できればこういうものが出てこない宴会がいいなというふう
に思っている次第でございます。すみません、次のページお願いします。あとは
大和ハウスの紹介になるのですが。これはごく一部なのですが。1972 年の当時か
ら中国との交流はございます。それで 85 年からは住宅に関する、先ほど言いまし
た外国人向け、駐在人の方向けの住宅の開発を進めておりまして。ここにちょっ
と紹介していますのは上海と大連。ホテルおよびマンションですとか、そういう
ものも作っているのですが。あと北京の住宅ですね。これは、駐在員の方々当時
大体任期が3年から4年ということでしたが、会社と契約をしまして家族連れで
駐在される方への住宅を提供していました。すなわちこれは中国人の方へ向けた
事業ではなくてですね、外国人の方へ向けた事業を展開していました。2004 年か
115
ら駐在拠点の設置とか工業化住宅と書いていますが、その下 2005 年から中国人向
けの不動産事業の開発を進めて参ります。写真挙げていますのは大連の竣工済み
物件と、大連の現在建設中の物件のパースです。あと、蘇州の竣工済みというこ
とで。蘇州はちょっと 10 月に竣工しまして、現在ちょうど引き渡し中です。これ
はすべて中国人の方へ向けた分譲住宅の開発ということで。あとは、無錫ですと
か、上州というところにすでに土地を購入しまして、今後これから開発を進めて
いくという状況でございます。以上です、どうもありがとうございました。
村松: もう一つ質問なのですが。大和ハウスの大和っていうのは日本のなんか、すごい、
すごい名前ですよね。何か言われません。
満田:
ちょっとこの名前の由来をご説明し始めるとちょっと長くなるのですが。中国で
2004 年に駐在拠点の設立ということで。あまり大和という名前出てこなかったの
ですが。駐在員事務所を設立する際に大和ハウス。前に大和とこう付けたのです
が、当初申請をした際にすんなりは实は認められませんでした。大和民族を連想
させるとか。そういうことで、实は大和ハウスの大和っていうのは、奈良県がも
となので大和なのですが。中国の人たちは日本全体とか、大和とかいうことを連
想されるということで。最終的には認めてはいただきましたが、ちょっとそうい
う命名で苦労したというところでございます。
村松: きっとあとでそういう話も出ると思いますので、よろしくお願いします。
村松:
ありがとうございます、村松です。皆さまのところにこの1枚行っていると思い
ます。为催者のほうで準備してくれた4つのテーマがあります。日本の、世界に
対する日本の住まいの強み。それから2つ目が中国の市場への展開で、受け入れ
られる日本の住まい、関連産業のコンセプト。それから3つ目が、日本の住まい、
関連産業が中国展開を進めるうえでの難点、障害。それから最後が国に期待する
支援ということです。それぞれについて、きょうここにいらっしゃる4人の方々
に事前に書いてもらいました。本当はこれ配りたくなかったみたいですが、配っ
て皆さんに読んでいただいて、これを基礎にお話をしていただいたほうがおもし
ろいと思います。先ほど申し上げましたように、私は 40 年前中国に行きましたけ
れども。それから天安門事件のあと、あまり中国が好きじゃなくなってあまり行
ってないのですけれども。もう1回仕切り直しで中国のことに関心を持ちたいと
思っております。ですから、こういったテーマとてもおもしろく思っていて、あ
まり経産省がよくやるようなご膳立てがあって、終わりが決まっているようなこ
とにはならないと思いますので、よろしくお願いいたします。それから、皆さま
116
に質問をさせていただきます。質問、あるいは振って経産省の方にも質問いきま
すので、質問していい方は何か許可がいるみたいでユストリウム流しているみた
いなのですが。そちらのほうにもいくというので、卖に聞くだけではなくて参加
していただきたいと思います。では、よろしくお願いいたします。1つ目が日本
の住まいの魅力ですね。これから項番にこちらからいって、あとで項不同になり
ますけれども、松原さんからここに書いてあることを含めて説明していただきま
しょうか。それぞれ 20 分くらいなので。
松原:
これ世界に対するって書いてあるのですが。私きょうお話ししようと思ったら、
中国に対するっていうことなるべく耂えてきたつもりなのです。その中国で仕事
しているとやっぱり、あんまり、私も中国 10 年くらい仕事やっているのですが。
いろんな形で、日本人であることがすごく得な場合もあるし、そんな場合もある
のだけど。でもおおむねやっぱり得していまして。日本人の君にこういうことを
頼むのだよ、みたいなこと。あからさまには言わないけどみんないろんな形や態
度で示すわけです。その中には当然、日本人のあなたにはこういうふうな住宅は
設計できるでしょうとか、こういう住宅は日本にはあるからそういうのはおれ好
きなのだよね、君もやってくれないかな、みたいなことを、有形無形の形で言わ
れるわけですね。それがここに書いてある3つのポイント。すごいプラグマティ
ックですけど、清潔である住宅を作ってほしい。清潔っていう概念は、また日本
人と中国人でちょっと違うのだけど、多分。けど、やはり中国人の人から見ると、
日本人の設計者であるあなたには、清潔な住宅というのがどういうものか分かっ
ていて、どうやれば清潔なことが起きるのかちゃんと耂えてやってくれって。こ
れは具体的に言うと、ちゃんと玄関というものがあって。昔、ちょっと古い住宅
に行くと中国の住宅はみんな玄関がないですよ。ドア開けるといきなり寝审だっ
たり、ドア開けるといきなりリビングルームがあって、靴も脱がないような感じ
だったけど。今はやっぱりもうだいぶ中国のご家庭の中、みんな靴脱ぐようにな
って。しかも日本人である私に何か期待する場合は、ちゃんとある程度玄関を作
って、靴を置いてくださいとか。あと何か例えば幅木の部分をちょっとコーナー
を取って汚れにくくするとか。なんかいろんな汚れにくいような水回りを耂えて
くれとか。あとはメンテナンスがしやすいとか。そういうようなことが求められ
るわけです。それからコンパクトであることっていうこともよく言われまして。
これは日本の家は狭いと。それは事实だと思うのですが。日本の家は狭いから、
だけどそれが悪いわけじゃなくて、狭い分すごくうまく使われていると。例えば
天袋とかみんな感動するわけです。天袋っていうのは押し入れの上にある、例の
収納ですけど。階段の下になんかいろんなものがしまえるようになっているとか。
そういうような非常にプラグマティックにそういう余った空間を上手に使えるの
117
が日本の住宅で、そういうものは重要だとか。あとはフレキシブルであることっ
ていうのが、これは基本的にやっぱり日本の住宅っていうのは、中国のああいう
建物に比べると閉じてない、比較的異質空間でそれをゆるい家具で仕切っていた
り、ゆるい建具で仕切っているという住宅ですから。家族が増えればこう使うし、
減ればこう使うし、みたいな、すごくフレキシブルに使えるわけですよね。そう
いうものが、だんだん中国の人にも今は受け入れられるようになってきて、そう
いうものをもっと耂えてくれないかみたいなことを言われる。この3つがだから、
これは多分だけど中国だけじゃなくて、世界に対する日本の住まいの関連産業の
強みとか、住宅のプランニングの強みでしょうかね。ただ、これはやっぱり今の
中国でも、かなりはっきりと求められるものなんじゃないかというのが、ここで
私が書いたことです。
村松:
はい、ありがとうございます。ここの趣旨は多分中国との比較ではなくて、世界
の中でどういうような日本の住宅の価値というか、強みということだと思うので
すが。今、松原さんおっしゃったプランニングっていうの、とっても重要だと思
うのですよ。その、ただプランニングというと文化の問題とかかわっていたりし
て、非常に古いところから来る文化。それから、変えられる、変革可能な文化と
2つありますよね。今おっしゃったのは、非常にユニバーサルなプランニングと
いうのが、日本の強みであるということだと思うのですけど。また、ただそれが
ぶつかり合いっていうのが多分出てくるので、それは次の時にまたお話ししたい
と思います。はい、土谷さん。
土谷:
はい。日本っていうのは急成長して、急速にモダニズムというかですね、それを
实現したっていう、受け入れて変化させてきたっていうところがすごい強みかな
と思います。日本には独特の日本人の美意識があります。それを、日本の近代化
と合わせていって、实現するという。そういう日本の知恵というか、日本人の知
恵というのがあるような気がします。そういうものが住宅にも出ていると思いま
す。今お話が出ましたけども、清潔もそうですが、簡素であったり清潔であった
り、簡素完結というようなものが日本の美意識かなと思います。それが、世界の
標準であるモダニズムっていうものともうまく符合されているのではないかと思
います。一方建築家という人たちが、世界に類を見ないほど優れた人たちがいる
のじゃないかなと思います。教育制度もあったのでしょうけども、多くの優れた
建築家たちが日本だけじゃなくて世界で活躍している。そういう状況もあると思
います。それから、企業のテクノロジーですね。これもやはり世界に類を見ない
というか、それぞれの分野で最先端を極めていると思います。ただ、ここであり
得るのは、耂えなければいけないのは、今日本の住まいが本当に世界の人たちに
118
とって優れているかっていうと、まだもう一つじゃないかと思います。だから、
大事なことは、今日本やそれぞれの知識やテクノロジーというものは最先端のと
ころまでいっているのだけど、それを統合して住まいって言った時に、日本の中
もまだ変えていかなきゃいけないと。こんな状況にいるのかなと。ただ、ポテン
シャルトしては、世界に対して魅力的な日本の特異性なんじゃないかなと思って
います。
村松:
はい、ありがとうございます。土谷さんも松原さんもそうですけど、結構ナショ
ナリストですよね。日本が好きで、日本の美意識があって。これがなんでしょう、
世界の大義名分になるのかどうかっていうことを、何かもう尐し耂える必要があ
って。玄関があったりとか、靴脱ぎがあったりとか、そういうのが本当にどこと
人類とどうつながるか。今の私たちの地球環境、地球環境ですよね、特に。省エ
ネルギーとか、いろいろなものがあって。そこをもう尐し結びつけると世界にと
っての、なんていうのですか。強みっていうふうになると思うのですけど。
は
い、次の林さんですね。
林:
自分が住まいという形で耂えさせていただくと、いくつかあるのですが。機能の
ほうから耂えさせていただきますと。よくこれ会社でも話をするのですけども。
最近の子どもたちにとっては、お風呂は入れるもので沸かすものではない。お湯
は出てくるもので、お湯も沸かすものではない。つい最近自分の子どもから、水
の自然対流という言葉を实験でしか・・・
村松: 自然ですか?
林:
自然対流。お湯が上に行って、水が下に行くっていう。あれを、対流というのを实
験的にしか彼、彼女たちは知らなかったのですが。われわれの年代はお風呂を沸
かしなさいと、いうふうに言われて育っていましたし。お風呂には攪拌棒が必ず
あって、風呂に入る時に上が熱くて下が冷たくて、飛び上がった経験とかってい
うのは、大体われわれの年代はあるかと思うのです。そういうもので機能という
ものが日本はこの 30 年間の間にものすごく変わっていまして。お湯は出てくるも
のであり、台所にその機能を簡卖に取り込んだ国なのです。それは5号給湯器、
お湯をひね、ボッと火が付いてそしてお湯が出てきたと。ああいう時代が皆さん、
われわれの年代があると思うのですが。そしてトイレは、なんていうのですか。
トイレを掃除しなさいって言ったら臭い、汚い、暗い。その 3K の典型だったとこ
です。それがこの 30 年間で完全に入れ替わりまして、給湯器が家の裏に行く。そ
してトイレが表に出てくる。そしてトイレは常にきれいなところ。そしてお湯は
119
どっかわけの分からないところで作られてくるものと、いうふうに変わってきて
います。
そういうものが、例えば中国に行きますと急激にそれが瞬間的に変わ
っているのです。そこの、われわれも 30 年間っていう短い期間なのですが、彼ら
は 10 年間でそれが変わって来ているというのが現实です。住みにくいとか、受け
入れにくいとかいうのがいっぱいあるのですが。彼ら自体が家は箱売りです、中
国は。そして、建材商に行って設備を買ってきて、そして自分たちで付けていく
と、いう形になります。そうすると、何が快適で何がいいのかっていうのがよく
分からないのです。ただ、やはり憧れの家、マンションっていうのをカタログで
見て、見よう見まねでそれを入れていく。ただし、値段が安いものがいいという
形で入れていきます。で、何が起きているのかっていうと、そこに耐久性ってい
うものが無視されているっていうのがあります。ですから、行かれた方は分かる
かと思うのですが、これが築5年の家っていうようなものが、日本でいう築 20 年
の家ぐらいにすぐにだめになってきているっていうのが現实です。ですから、今
から中国はどんどん、どんどん建築物建ってきているのですが、今後耐久性、品
質、そして継続、持続。そしてもったいないっていうのがいかに浸透していくか
っていうのが、今後の私は住まいっていうふうになってくると思いますし、今後
しつらえとか配慮。先ほどの幅木の話もあったと思うのですが、そういうものが
どんどん受け入れられてくるのではないかなというふうに思っております。
村松:
はい、ありがとうございます。本を読ませていただきたい、先ほど言いましたよ
うに、本を読ませていただいたのですが。水、非常に尐ない水で流すっていうこ
と。それから CO2 の問題も何か耂えられていますよね。ですから、いわゆる地球
環境問題にとっての配慮っていうのがあるのですが。もう一方で、何かお尻を水
でやってしまうと人間弱くするような感じが、するのですが。私は子どもの時は
新聞紙でふいていたのですが。最近ウォシュレットでなんかちょっとお尻が弱く
なったなっていう気がしますが。そういう人間にとっての軟弱さを促進している
ような気がしますが。そういう人間にとってのなんか、軟弱さを促進しているよ
うな気がします。それはどうですか。
林:
よくそれは言われるのですが。大体日本人の皆さんは耂えていただくと分かるので
すが。風呂に入ってお尻をふかない人はいません。風呂に入って必ず石けんを付
けてお尻を洗っています。それを毎日やるのが日本人ですよね。そこまできれい
にしていません、ウォシュレットっていうのは。ですから結局、日本人の清潔さ、
そして日本人の求めるもの、手を洗うっていうのと同じように、自分が気持ち良
くなるためにちゃんと洗っておくっていうのがウォシュレットの役割であり、そ
ういうふうに軟弱になっているとは私は思っておりません。
120
村松:
はい。水洗革命とか、下水道革命ってあったのと同じように、多分ウォシュレッ
ト革命っていうのが起こっているはずですよね。はい、ありがとうございました。
最後、大和ハウスの満田さんでしたよね、お願いします。
満田: 皆さんおっしゃったことと重複するかも分かりませんし、ということなのですが。
私、皆さん多分お手元に届いている資料では、住まい=その国の文化というふう
に書かせていただいておりますが。これ皆さまおっしゃったことなのですけど。
ですから、日本の住まいの魅力っていうのが、日本の住まいっていうのがいろん
なところで、いろんな研究がなされています。ですから、日本人にとってはです
ね、非常に住みやすい。ひょっとしたら作るサイド側の理屈もあるかも分かりま
せんが、住みやすいものになっているのだと思います。ただ、これをほかの国に
持って行った時に、果たしてその国の文化に合っているかとかいうことは、どな
たかもおっしゃっていましたが、やっぱり耂えなきゃいけないというふうに思っ
ています。特に個人的な意見になるかも分かりませんが、私日本の家から障子と
か襖とか畳の部屋があって。障子とか襖があった、あるいはもっと言うと筒抜け
で上にらんまがあったような部屋が消えていったということは、日本人にとって
これはなんていうのでしょう。今のようなそれぞれの欧米スタイルの個审になっ
ていたということなのですけど。日本人にとっては果たして良かったことなのか
なと。本当はそういうものがあったほうが、日本人の住まい方なんじゃないかな
というふうに实は思っておりまして。ちょっと話が飛ぶかも分かりませんが。以
前、ちょっと古くなるかも分かりませんが KY なんていう言葉がはやりまして空気
を読めないと。日本人はまた自分の思いをきちんと表現できないと、外国の人と
交渉する際にもイエス or ノーがきちんと言えないというようなことも言われまし
たが。私は言わなくて良かったのだと思うのです、日本人が話をしている間は。
それは、やっぱり例えばお実さんが見えられたとしても、このお実さんはどうい
うお実さんなのだろうか。あるいは、今中で何が話されているのだろうか。今、
例えばお母さんがお茶を出しに行っていい時期なのかどうかっていうのは、襖が
あったり障子があったりということで、それがきちっと分かって、判断をしたと。
あるいは子どもたちの生活、あるいは親たちの生活、おじいちゃん、おばあちゃ
んの生活も全部そこで感じていったということだと思うのです。そういうことが
今できなくなった。それがいいことか、悪いことか別にして。一つ一つの個审に
なっていって、場合によっては鍵もかかるよということになってきて。そういう
昔からの日本人の住まい方が、住まい方というか日本人を作っているそのものを、
もうちょっと変わってきたのかなというふうに思っておりまして。ですから、日
本は確かに研究がいろんなところでいろんなことが進んでいますし。科学的であ
121
り、合理的であると思います。ただそれをよその国に対してこれはいいものなの
だよと。あるいはこれは日本の住宅はこうなのだから、こういうものをぜひ使っ
てくださいよっていうのは、話もすべてが相手国にとって受け入れるものではな
いと。ただ、提案をしていくというのは、やはり靴は脱いだほうがいいと思いま
すし、外の物と中の、家の中の物は分けたほうがいいと思いますので。そういっ
た提案をしていくっていうのはいいことだと思います。ですから、そういう意味
でわれわれとしては、日本の魅力っていうのは何かって。自分たちでまず分析を
した中で、相手側にもし伝えるとしたらメニューを提案して差し上げるというと
ころがわれわれの役目じゃないかな、というふうに思っております。
村松:
はい、ありがとうございます。大和ハウスは中国以外に、発展途上国以外に、欧
米なんかにも出てらっしゃるのでしょうか。
林:
はい、以前アメリカで分譲住宅をやっておりましたが、現在はアメリカの事業は
いったんちょっとストップをしまして。今は、現在動いている住宅販売している
っていうことに関して言いますと、中国のみです。今のところは。準備中の国は
ございます。
村松:
そうするとここの、日本の強みっていうのは結局中国への強みということになっ
てしまうのでしょうか。
林:
日本の強みっていうのは、日本人が日本の住宅はどういうところがいいのだろう
かっていうところを基本的にきちんと分析をして、自分たち認識するっていうと
ころにあって。それを、それぞれ自分たちが出て行こうとしている国に対して、
何が消化できるかというところまで、何が提案できるかというところまで分析で
きて初めて日本の魅力ということが言えるのではないかというふうに思っていま
す。
村松:
よく研究されているのは植民地時代日本の朝鮮半島とか、満州で日本人たちは住
宅作っているのですよ。それが残っていて、現地の人が住むと必ずやるのは畳を
はがすことと、押し入れをつぶすことなのです。ですから、やっぱり文化の違い
があったりして、こちらがいいと思っているものは向こうにとって結構・・・、
あと床の間ですよ。床の間をなくすみたいな感じで。その辺の摩擦っていうのは
ずいぶんあると思いますけれども。ここでちょっと経産省の吉田さんに、吉田さ
ん、はい。吉田さんの耂える日本の住まいの世界での価値っていうのは何でしょ
うか?
122
吉田: 初めまして。経済産業省の日用品审というところで、におります吉田と申します。
日用品审っていうところはですね、バス、キッチン、トイレといった住宅設備の
産業を所管しているところなのですが。ちょっとすみません、話長くなりますが。
日用品审っていうのは、今年7月からクリエイティブ産業課っていう課の下に付
きまして。クリエイティブ産業課では日本のいいものを海外に展開するっていう
ことをどんどん進めていこうということをいうことをやっていまして。あまり経
産省の所管がここだからっていうような枠にとらわれないで、業種を超えていろ
いろ連携して進めていこうということをやっております。その流れで、今回住ま
い、ハウスという切り口で海外にどんどん展開していくためにはどうしたらいい
のだろうかっていうことで、この研究会を、ミニシンポジウムを開催させていた
だいているっていう背景がございます。それで、今経産省の中で議論をしている
感じですと、日本の産業の強みっていうのは、日本は環境に対しての取り組みが
進んでいるとか、それから高齢化社会なのでユニバーサルデザインのようなシル
バーの方向けの住宅っていう取り組みも進んでいるっていうことだと思っていま
して。そういう問題は、別に日本に特化した問題じゃないと思っていたので。そ
れを海外に展開していくっていうことはあり得るのかな、なんていうふうに思っ
ていまして、そういったところが強みかしらということは、省内で議論していま
す。と、いうふうに思っていまして。日本のイメージっていうのも、日本の製品
は品質が高いとか、確实であるっていうことはどの分野でもなんとなくその世界
中には持たれているようでして。それは別に政府は努力したわけでは全然ないの
ですが。自動車であるとか、家電であるとか、っていうところで企業の方々の努
力によって常に周知されているようなイメージもあったので。そのイメージと、
その環境、シルバーみたいなことが一緒に合わさればさらに海外にも行けるのか
なと思っておりました。
村松:
はい、ちょっと長いですね。基本的には技術とかではなくて文化を売りたいとい
うことですよね。そうすると文化って結構やっぱりさっきは大和ハウスの満田さ
んがおっしゃったように、文化っていうのは摩擦があって。お二人きょう来た、
分かれると思うのですけど、クリエイターの方と企業の方があって。クリエイタ
ーの方たちはやっぱり自分たちの文化、その日本も含めて日本の文化を積極的に
持って行こうという意思が。だけど实際にぶつかってみると、企業の方は本当に
向こうに行くと向こうの文化があって、その辺のどうやって乗り越えていくかっ
ていう、多分2つの違いがあって。きょういろいろな企業の方にお声かけしたよ
うなのですが。やっぱりなんか結局うまくいっている2つの企業しか来てくださ
らなかったってことは、やっぱりそういう文化を持って行くことの難しさってい
123
うのがあると思うのです。
2つ目に移っているっていうか、1つ目と2つ目が
合体してくると思うのですが。世界に対する良さっていうのが、やっぱりあんま
り今おっしゃった中で、やっぱり世界というよりむしろ中国とか、東单アジアに
対する良さみたいなことに結局なってしまうと思うのですけど。その時に日本の
2つ目のお題ですね。中国市場への展開で受け入れられる日本の住まい、関連産
業のコンセプトっていうことは、受け入れない場合もあってその辺のぶつかり合
いも含めて、どういうふうにお感じになるかっていうのを、もう1回こっちから
松原さん。それから先ほどの皆さんのお答えも踏まえながら、質問もあればしな
がら、この2つ目の質問に答えていただきたいと思います。
松原:
今の村松さんの図式からちょっと強引すぎるかなという感じがちょっとします。
私、非常に中国でプラグマティックに仕事をしていまして、そこではあんまり、
例えばやっぱりそこで求められる日本・・・、例えば日本の設計者に求められる
日本らしい住宅、日本らしいとは言わないけど。日本の設計者に求められる住宅
の像っていうものが、非常にプラグマティックに清潔で時間に頻出した安定して
いる、時間に正確なそういうものを出してくださいっていうふうに言われるわけ
で。その哲学自体は、多分小さい会社であっても、大きな会社であっても、何か
やっぱりある程度つながってくるものだと思うのですよ。だから、TOTO さんの悩
みは私どもの悩みでもあると思っているのですけど。そういう中で、中国に求め、
中国市場のへの展開で受け入れられる日本の住まい関連産業のコンセプトってい
う。これはだから、いっぱい、1巡目の話をより具体的にした話なのですが。こ
れはもうちょっと2巡目っていうのはもう尐し中国にフォーカスしていった話で。
例えばこれ4番目の、4つあるうちの2つ目、やっぱり食の問題とか、水の問題
とか。空気が、今北京の空気の汚染はひどいものですけど。そういう空気とか、
例えば安全性とか、そういうものをちゃんと保障したような住宅というのを耂え
てくれって言われたり。それが一体なんなのかっていうと、かなりいろんな形で
ブレークダウンが必要なのだけど、そういうものとか。それこそ家電と一体化し
たような、だからなんか今スマートハウスとか日本でもあるけど、そういう尐し
設備的なものと一体化したような住宅を尐し耂えてくれとか。あとは4番目に書
いてありますがアフターサービスですね。建物ができたあとにいろいろ、あとで
フォローするようなことをやってくれる。これは昔のちょっと前までの中国の、
不動産開発とか住宅開発ではまずなかった耂え方で。とにかく建てて売りましょ
うみたいな話だったのだけど。それがだいぶ今減って来て、それじゃあ今売れな
いから。やっぱりそのあともちゃんとやりますよ、みたいなニーズも出てきたり。
あとは、この3番目に書いた、ちょっと不思議な話なのですけど、豪華な家を耂
えてくれというふうなことを言われるのです。豪華な家を耂えるっていうのはな
124
んなのかっていうのはちょっと分からないのだけど。要するに、これは一種の不
動産開発の中の差異化の1つの例なわけだけど。日本から来た人たちはもうちょ
っと知らないことを知っているだろうから、豪華なものっていうのを耂えてくれ
みたいなことを言われるわけです。ただ、それがちょっとあまりわれわれの場合
うまくいかなかったりもするのですが。そういう形で、もちろん文化を持ってく
っていうつもりもあるのだけど、それだけじゃなくて。急にプラグマティックに
こういうものを作ってくれというふうな形が、いろんな形が言われて。それに対
してある程度具体的に答えられるのがこの辺の4つかなっていうのが今お話を伺
った感じの实感なのですが。
村松:
ありがとうございます。ただ、今おっしゃった2つに松原さん分けていて。1つ
は合理性とか、あるいはなんでしょう。基準を守るとかそういうことですよね。
時間を守る、パンクチュアルとか。それはいわゆるモダニティという言葉でよく
言われていることです。それから一方で豪華なものを求めるというのがあって。
それは、日本は若干、というか松原さん自身が多分豪華な住まいに住んだことが
ないので、豪華さが提供できないという、そういうことでもあると思うのですけ
れども。より、本当に文化に、文化というさらに根付いたものだと思うのですけ
れども。ただ合理性、モダニティの問題も結構文化のような気がします。それは
私たちの研究の範囲なのですが。そういうものも伝えるっていうところで、建物
の場合はいいのですけれども建物じゃない場合も合理性があって、自由とか民为
为義とかに接続していきますよね。法体系とか。それはあとでお話をいただきま
す。土谷さんは多分今言った合理性みたいなものをモダニズムということで言い
換えておっしゃっているのですけれども。それを踏まえてハウスビジョンがどう
いうふうに中国でやっていくかということなどをご紹介いただきたいと思います。
土谷:
その文化を輸出するっていう時に、何にシンボライスしていくかっていうところ
がすごく大事かなって今議論を聞いて耂えました。例えば和审、畳であるとか、
床の間であるとか押し入れであると。そういった様式っていうのもあるけど。わ
れわれがそのモダニズムっていうふうに耂えた時には、もう尐しその背景よりフ
ィロソフィであったり。それからデザインのところでいくと、物と物の関係性を
どういうふうに作っていくかっていうようなことであったりということで。何か
その形ができるまでの背景にわれわれの強みがあるのじゃないかと。だから、そ
の強みとどういう形にシンボライスして伝えていくのかっていうのが大事だろう
なと思います。言われるようにわれわれの文化、その日本、日本人のなんか純粋
な日本みたいなのを切り取って、これどうだって言ったらそれは怒るだろうなっ
て思いますし、受け入れられることはないと思うんです。それをどういうふうに
125
中国の人たちと一緒に耂えていくことができるのかっていうのは、われわれが尐
しリードしたまたは経験を踏まえたことを活用できることあるのじゃないかと思
います。そう思いながらも、ここですごく重要なことは、さっき満田さん言われ
たのがそうだと思うのですけど。日本人のわれわれ自体の暮らし方をどういうふ
うに今作るかっていうのは一方ですごく大事で。そのわれわれの作る未来という
ものが中国の人たちにとって憧れになっていかなければいけないと思うのです。
それはその文化、その国を超えて中国の人だって先ほどお話出ていましたけども、
雑誌やネットからこういう暮らしをしたいっていうふうに、ヨーロッパのまたは
その世界中のデザイナーのものを見て家を作るわけです。また、建築だって松原
さんのように海外の建築も見るし、さまざまな建築家が中国にいて、その人たち
を選んで建てると。そういう意味では中国もすごい勢いで文化、住宅に対する暮
らしに対する文化を成熟、発達してっていると思うのです。その時に誰を選ぶの
か、何を選ぶのか。その選びたいと思うものが作れるかどうかっていうのが大事
なんじゃないかって思うのです。その時に日本の暮らし方は今のままでいいのか
と。先ほど障子がなくなったことはおかしいのじゃないか、よくないのじゃない
かっていう話もありましてけど。本当に日本人にとって、日本人が、日本人とし
ても憧れる。それをいかに作れるか。それには、建築家ってのはわれわれはすご
く大事だと思う。企業も大事です、技術も大事ですが。やっぱり今までその建築
家っていうクリエイターの人たちが住宅産業にきちんと入ってなかったっていう
ようなことが僕はあるのじゃないかと思うのです。例えばデベロッパーが作るマ
ンションに建築家が入っているかっていうとそんなことはないのです。外観のデ
ザインをちょっと監修しますとか。本当に商品の価値を高めるために名前を使う
とか。ハウスメーカーの方もいらっしゃるので、ハウスメーカーはどうなのだっ
ていうと、ハウスメーカーを作るために、建築家が耂える。建築家がすべてじゃ
ないですよ。でも、よりニュートラルで、より広い視野で新しい視点を入れてい
くというためには、外の人たちが必要だと思うのですが。そういう売るっていう
ことだけじゃなくて、その日本の暮らしの未来を耂えるという視点でハウスメー
カーの住宅は今あるのだろうか、なんていうことも感じます。決して批判ではな
くて。そういう非常に変革、価値観の変革の時期にわれわれ来ているのじゃない
かっていうふうに思います。
村松:
先飛んでしまう、満田さん。デベロッパーは建築家をあんまり使いたくないので
すか。
満田:
使いたくないというより、多分これも今までの文化といいますか。というところ
で、今までそういうことがあまり耂えられなかったということが現实だと思いま
126
す。ただ、今尐しお話出ましたが、価値を上げるためということで、これは作り
手側、売り手の理論になるのかも分かりませんが。ただ、そういうところからも
建築家の方々がマンションですとか、住宅ですとかいうところにハウスメーカー
なりデベロッパーと関与が徐々に出てきたと、いう現状であると思うのです。そ
ういう中から今後また新たな展開が生まれてくるのかなという期待はあるかと思
います。
村松:
装飾品としての建築家ではなくて。特に松原さんなんかプランニングみたいな感
じでとってもなんていうか、機能よく耂えられているので。もっとそういう、こ
れは教育の問題もありますけど。うまく、コラボレーションできるといいと思い
ますけど。ちょっと飛んでしまいます。またあとでいきますが。林さん、その2
番目のお題の、特に中国で受け入れられる日本の企業のコンセプトです。いいと
ころです。悪いところ3巡目なるのですけど。
林:
ちょっと違うかもしれないのですけど。中国と日本を比べた時に、日本の京都っ
ていうのが自分は一番大好きで。京都っていうのは古い歴史の中に、近代文化を
どんどん受け入れていてすばらしい街になっているなと。日本人もみんな京都っ
ていったら歴史の街というふうにいくのですが、必ず近代的なビルが、デザイン
が必ずあると。すばらしい街だなというふうに私は思っていまして。ちょうど
90・・・1992 年だったのですけど、上海に行ったあと無錫、そして蘇州といった
ところに行きますと、運河があって非常にいい、きれいな昔ながらの街があった
のです。それが 94 年に行って、ああ、いい街だな。こういう人たちが住んでいる
ってことでいいのだろうなあって思いながら、昨年なのですが。2010 年にまた蘇
州、無錫に行ってきまして。そうすると、いい、悪いとは言いませんが。KFC の赤
い旗が蘇州の水郷を全部つぶして、赤い旗がダーッと 500 メートルくらい並んで
いたんです。すべて瓦屋根がなくなり、そして近代的なビルに変わってしまって
いるのです。そして、水郷がなくなっていって船もなくなっていった。ものすご
いストレスと近代化は感じるのですが、ストレスを私はものすごく感じました。
そういうところに建っている建屋っていうのを見ると、確かにきれい。今までに
見た、中国では見たことのないような建屋が建っています。これが、先ほども言
いましたように、これは5年前に建ったもの、これは今年建ったもの。5年前に
建ったものを見ると、
築、
日本でいうと築 20 年くらいたったように寂れて見える。
その、なんていうのですか。近代化になっていって、そしてどんどん、どんどん
サイクルが変わっていく、あの中国って一体なんなのだろうかっていうのを、行
けば行くほど特に感じて。すみません、だんだん、だんだん行きたくなくなって
いる国になっているなっていうのが現状です。私ども、先ほどありましたが、商
127
品もそうなのですけど。やはり、アフターケアっていうのが日本では絶対です。
ですから、消費者自体がその商品に期待するものがしっかりあって、それを裏切
られたらクレームとしてメーカーは受け入れていっています。それには何がある
かというと、背景にはブランドというのがあります。一方中国に行くと、その機
能を持ったものはあるのですが、そこにブランドがあるのとないのとではお実さ
ん価値が全然違ってくると。そのブランドを背景にして、期待するところがこう
いうふうにあって、期待までいかなかったからクレームを付けるっていうような
文化はないのです。ですから、これはこういうもの。そういうものっていうふう
な形で、消費者の方たちが受け入れて過ごしていっているのが中国の状況です。
これは日本だけがそういう国で、異常なのですけど。他国ではほとんど後者のほ
うです。
そういう文化のところに日本の良さを持って行って、期待されるブラ
ンドがあって、そのブランドに対する価値をしっかり根付いていくということが、
今後の日本の企業のあるべきすがただというふうに思っています。
村松:
その時に、その日本以外の欧米のブランド力っていうのありますよね。それに比
べてどうですか。日本のそのブランド構築力っていうのは。
林:
日本のブランドの構築力は企業独自で非常にやっていまして。代表されるのが、
例えば資生堂さんとかですね、例えば私の父が 1972 年の日中国交で、上海精錬所
と武漢精錬所の、まあ新日鉄で溶鉱炉建てに行ったのですが。あのころ化粧品っ
て粗悪品しかなかったです。持ってきてほしいのが、日本の化粧品。聞いたこと
あるのが資生堂と、いうような形で入っていって、資生堂っていうのがどんどん、
どんどんアジアでブランディングされていったっていうのがあります。同様に、
それが国を挙げてやっていっているのかっていったらそうじゃなくて、やはり企
業努力で出て行って、高品質のもの。そしてそこの資生堂の場合は日本人の肌か
らアジア人の肌に合っているというような形で構築していっていますので。その
辺のブランドとか日本の品質の高さっていうのを、いかに日本国がどうアピール
してって、それを海外に持って行くかっていうのが、今後の日本国の課題だと思
っています。
村松:
はい、もう一つ質問なのですが、伝統的なものがなくなるってすごく悲しいって
おっしゃっていましたよね。特に住まいですけども。その時に私が耂えているの
は、一番みんな嫌なのはトイレとキッチンなのですよね。そこをうまく改造する
と、みんな結構住みやすいところがあったりするので、なんかそういう、なんか
そこまでトータルに TOTO からやるっていうのも1つかな、と思うのですけど。
128
林:
そうですね。日本もそうなのですけど、家屋自体が湿式から簡式という形に変わ
っていっています。要は、昔トイレ掃除っていうのはデッキブラシでごしごしや
って、トイレの床まできれいにすると。そしてバケツで床まで流すっていうのが
当たり前だったのですが、それが洋式便器に変わることによって、フローリング
になっていって簡式になっていく。
逆にそれがあったからこそ、今私が商売させていただいているウォシュレットという電
気をトイレに持って行くっていうことができたのですけど。その、湿式から簡式、
キッチンもそうなのですが、目地タイルからずーっときたものから、それがキッ
チンのパネルになっていったり、きれいな扉になっていったりということで。湿
式)から簡式に変わることによって、カビやら水アカとかそういうものがなくなっ
て、きれいに保てる、においがなくなるっていうのが文明のはしりなのかなと。
それが今中国で、まさにこの瞬間に起きているっていうのだと私は思っています。
村松: ということは、伝統を壊すことに貢献しているっていうこと? TOTO も。
林:
貢献する、文化を壊すのじゃなくてそこを保ちつつ、そこを快適に持っていって
いるっていう耂え方ですね。
村松: そうですよね。だからそこでもう尐しうまくやると、TOTO の技術っていうかトイ
レとかキッチンと変えることだけで、今まで別のところも伝統を残しつつ新しく
住みやすくなるのじゃないかなと。
村松:
どうもありがとうございました。満田さんですが、日本の強みっていうのは先ほ
ど尐しおっしゃってくださいましたけれども。日本の住宅の強みは、制度的なも
の。さっき松原さんおっしゃったようにきちんとしているということとか、プラ
ンニングがいいこととか、アフターケアがあるとか。そういうこともあり得ます
けど。一方でその文化っていうことおっしゃっていましたよね。日本の文化はや
っぱり難しいので向こうの文化。その辺のどこの差異があって、それでも日本の
いいところっていうのはなんなのでしょうね。特に住まいですけども。
満田:
私たまたま4番目、1、2、3、4番目なので、皆さんおっしゃることに非常に
動揺しております。かつ、なるほどというふうに今お三方のご意見を聞かせてい
ただいているのですが。では、私はそれをあえて、私の意見としてはもう1回な
ぞり直すだけではということがありまして、ちょっと違った切り口から今お話を
させていただいているっていう状況なので。意見に相違があったり、真逆の意見
であったりっていうことはまあないのですが。そういった中で。
129
村松: 違う、違う意見のほうがおもしろいですからね。
満田:
例えば大和ハウスが中国で今、中国人向けに開発していますマンションも、われ
われは松原先生が今一番初めに書かれていますけど、げた箱を作りましょうとい
う提案はさせてもらっていますし。これはもうぜひやりましょうと、いう形でげ
た箱を設計の中に入れたりしております。そういった提案というか、われわれお
仕着せではないと思っているので、提案をしながら、ということで先ほどの私の
話は聞いていただければと思うのですが。この2巡目に関して、ちょっとこれも
またどこまで1番目とつながるかどうかなんですが。中国の現状として、今住宅
は数が足りておりません。そういった状況の中において、数を作らなきゃいけな
いっていう状況で、今中国の政策なり、デベロッパーなり動いていますので。品
質が若干おざなりになるっていうところは否めない感じがございます。そういっ
た中で、日本の品質管理であるとか、施工管理であるとかっていうところは、や
っぱり日本は学んでもらう必要はあるのかな、というふうにも感じておりますし。
それから一方で、中国今非常に持てる者と、持たざる者の差が激しくなってきて
おりまして。非常に超高級物件というのも売れておりまして。ちょっとここに書
かしていただいていますポツの3番目は、ちょっとスペースの関係もあってうま
く入れ合わされてないところがあるのですが。例えばすべて、外国のブランドの
ものを使った、欧米ヨーロッパ含めて、そういったものを内装として中に使いま
して。内装付き住宅ということで、超高級物件ということで販売をしているよう
な物件もあるのですが、売れているのです。ということは、一方で数が足りてな
いので、取りあえず作らなきゃいけないっていう、上があるのですけど。ちょっ
とここで言いたかったのは、高級なものを使って、高級物件として売っている割
には、今まで中国は内装付きで住宅を売るという習慣がなくて、今政府は進めて
おりますが。そうすると、内装設計のノウハウがないのです。内装施工のノウハ
ウもないのです。ゼネコンは内装はやらないのです、大手のゼネコンは。そうす
ると小さいところがやりますよと。大手の設計会社も内装の設計のノウハウがな
いと。完全に躯体だけ、完全に内装だけというやり方で施工も設計もなされます
ので、そこにやっぱりいろんな問題が出てくるよと、いうところで。ちょっとこ
こで言いたかったのは、そういった品質、ベースの品質を日本が協力する。彼ら
はそれを望んでいる部分もありますし、それから内装付きとか、そういったこと
に対しての設計から始まる。設計と建築をもともと一体として耂える、そういっ
た設計のノウハウとか、そういったものも日本からは学びたいよと、いうニーズ
はあるのです。そういったところに対して、逆に日本のシーズになっていくのか
なというふうに思っておりまして。ちょっと1番目の話と2番目の話つながらな
130
かったかも分かりませんが、そういうふうに感じております。
村松: いいところもあるのですけれども、中国との摩擦ですよね。中国に行く時の障害。
3つ目に入るのですが。ここで満田さん4つ挙げています。予測不可能とか省官
为の問題。いいところはたくさんあるのですが。やっぱり問題もあって入れない。
3つ目が未熟練労働者の問題。施工の問題です。これは前からよくいわれている
ことで。これはどうやって乗り越えているのですか。乗り越えながらさらに日本
のいいところを伝えているわけですよね。
満田:
はい、そうです。これは、中国展開の障壁というテーマで答えさせていただきま
したが。实はこれはほかの国で事業をやろうとした際には、これはデベロッパー
だけじゃなくて、TOTO さんも一緒だと思いますと、ほかのメーカーさんも一緒だ
と思いますし。製造だけではなくて、皆さん一緒だと思うのですが。やっぱりそ
の国の事情というのがございますので。それはその国に合わせて、進出する側が
合わせていかなければならないのかなというふうに思っています。だからこの辺
は、その辺の覚悟を持って、当初からその辺の覚悟を持って、進出すべきことか
なと。例えば説教なされるに当たっても、实際説教される方は中国の方々で、耂
え方の違いとか能力の違いとかいろいろあるのだと思うのです。そういうことで、
中国文化の障壁という、障壁には私は实はならないと思っているのですが。そこ
まで覚悟して出て行った企業にとっては、これはいろんな方法があると思います
けど。それは一つ一つ皆さん乗り超えられていることだと思います。
村松: そこで覚悟っておっしゃいましたけども、覚悟ってどういう覚悟ですか。
満田:
それは、例えばわれわれであれば、パートナーの選定の仕方。これはやはり日本
のものを受け入れようという、するパートナー。あるいは、われわれの会社のこ
とを理解していただくパートナー。ですから中国で開発を行う際に立地とか、時
期とか、場所とか、時期とかタイミングとかって非常に重要になると思いますが。
もう一つパートナーっていうのは非常に重要な要素の1つだと耂えています。あ
と、独自でやっている部分もあるのですが。その場合はバックアップをしてくれ
るパートナーです。政府も含めてです。そういったところも非常に重要な要素の
1つであると耂えていますので。そういったところのパートナー選び、あるいは
市場調査というところから始まってくるのかなと。
村松:
私がイメージする覚悟っていうのは若干違っていて。今のは手法のような感じが
するのですけれども。覚悟っていうのは多分どこまで日本の、私たち、自分たち
131
の良さを伝える、使命に多分似ているところがあって。どっかミッションとか、
会社のミッションがあって。ミッションがだめだったらやめる。それよりミッシ
ョンが、ミッションなんか金もうけっていうミッション、お金もうけってある。
そこがある程度満足できれば、もっと別のいいものを伝えたいとかなんかってい
うのは、そこは目をつぶろうという覚悟。いくつかの覚悟ってあるのですけれど
も。その辺、何を優先したら、してこられたのかなと思いまして。
満田:
それもいったん事業を始めますと、中国の不動産開発っていうのは非常に、日本
で耂える不動産開発と規模が違いまして。例えば私最初冒頭お話ししました、今
10 月に竣工しました蘇州の物件は、敶地面積が約 77,000 ヘーベイで。延べ床面積
が 12 万ヘーベイくらいなのです。戸数はといいますと、900 個の住宅なのです。
日本ではあんまりこういった大型な物件はありません。それで、今申し上げたの
は、中国では大型な開発ではなくてごく普通の開発。中規模の開発です。そうす
ると、实は大連はもっと大きな開発を今やっています。そうすると、これいった
ん土地を買いますと、もうこれは必ずやり遂げるという、土地を買う時点から、
その辺の覚悟はしておるわけなのですが。例えばそれをどうやって解決していく
かっていうのは、日本人を現場にどんどん投入していく。あるいは、販売するた
めにいろんな見せ方の工夫をする。先ほどから話が出ていますように、日本は非
常に研究が進んでいますしいいものもたくさんあります。そういうものをできる
だけ使うようにして、なんですが。住まなきゃ分かんないっていう。例えば設計
のところ、機能性にしろ住まなきゃ分かんないというところがたくさんあるので
す。機能にしてもそうです。サッシの機能にしても。どの機能にしても、尐なく
とも1年は住んでもらわないと。これはやっぱり良かったねと、いうことが分か
っていただけないものをいかに販売の段階で分かっていただくかという、例えば
努力。そういったことを一つ一つ積み重ねていって、中国での事業をいったんや
ると決めたものを最後まで仕上げていくというようなことだと思います。
村松:
中国から撤退しないという覚悟なのですね、きっと。どうもありがとうございま
した。一つ一つ障害を超え、障害、括弧付きの障害ですけど問題点を超えていく
ということだと思うのですけど。林さん、もやっぱりここで林さんのメモですと、
値段の価格が違うこと、コピー商品が当たり前。こういった問題は超えられるも
のなのでしょうか。超えられるとしたらどうやって超えていく、こられたのでし
ょうか。
林:
われわれはなんて言ったらいいのですかね。これは、今書いてあるところは直面
している問題でして。これを乗り越えるためには何をしなきゃいけないかってい
132
ったら、先ほどから言っていますようにブランドを高めること。そして、パート
ナーであるビー・トゥー・ビーの仕事になっていくのですが。そのパートナーと
の信頼を、
絆を TOTO 強めていくっていうのが私どもの一番やっているところです。
当然、他社においても私どものコンペキターとしては、アメリカのコーラー社、アメリ
カのスタンダード、ロカ等があるのですが。やはりそこもブランドっていうのを
前面に押し出しながら、そしてその文化に忚じた商品を展開していくという形に
なります。TOTO として乗り越えなきゃいけない一番のところは、日本のマーケッ
トの商品と、中国のマーケットの商品が全く違うものというところで。商品の違
いが明確に表れていまして。日本のものは向こうに持って行っても売れませんし。
中国のものをこっちに持ってきても売れないというのが現实です。その辺をしっ
かり見極めながら、共通設計を何にして、共通の技術をどこに持って行ってとい
うことをやりながら現在進めております。
村松: ブランド、ブランドっていうのはもう尐し具体的にどういうことなのですか。
林:
まず TOTO というものを見た時に、TOTO の品物。先ほど大和ハウスさんが言った
のもあるのですが。大和ハウスさんの家に TOTO の水回りが付いている。だから、
マンションの価値が上がるというようなところを、しっかりコミュニケーション
のところからやっていく。ですから、例えば次世代トイレ、次世代空間、次世代
スイートルームっていうのを皆さんにお披露目する。それをテレビで出す、有名
な女優を使う。そういうことをやって、価値を高めながら、そっから松竹梅の商
品を作っていくというような形になっていくと思います。
村松:
はい、ありがとうございました。土谷さんは、もう具体的に向こうで何かされて
いるのですよね、今まで。そこでの難点っていうのを4つ挙げてくださっている
のですけども。若干今までの企業の方とは違うものがあって、趣味の問題。成り
金趣味の横行とか。法律、法律は突如として変わるっていうのは同じですけれど
も。その辺ご説明ください。
土谷:
この中で私は中国で具体的なビジネスをまだ始めているわけではなくて。今研究
会というのをしたり、調査をしているので。そのビジネスにおける課題とか、障
壁っていうのは確实に分かる、現实に分かっているわけではないのですが。ただ、
調査をしていって、今も先ほど成り金趣味のっていうのですね。どこの国でもそ
うなのかもしれない、経済が成長する時っていうのは、自国の文化よりも自国の
文化を壊していき、ほかのところの豪華なものを輸入していく。それがステータ
スっていうのですか。ステータスとしてものを持つ。その所有するっていうこと
133
が価値になっている。そういうことじゃないかと思う。そのため、そこで起きて
いるのが、内装付き住宅の話してましたけれども。本当にびっくりするくらい、
ここはロココかみたいなマンションがあって。それからすごいシャンデリアと、
渦巻きのような唐草模様と。そして金色のベッドカバーかなんかでできているよ
うなものもあります。もちろん、それがいけないか、とは言わないですけども。
でも、誰もができる本当の暮らしというものではないような気がするのです。今
起きているのが、中国においてもさっき住宅が不足していて、政府住宅なりが住
宅を供給していくと。つまり、その今まで投機対象のように住宅が扱われてきた
ものが、本当に实質的な需要としての建築というのが、今中国は生まれようとし
ていると思うのです。だから、その实質的な暮らしへ生まれようとしている時、
われわれは卖なる物というものを、物を売っていくのではなくて、物に付随して
その物がどういう使われ方や、どういう暮らし方を作っていけるのかっていう。
そういうビジョンまで含めて輸出していかないといけないのじゃないか。売れる
から売るのではなくて、やっぱり土壌を耕して将来をどう作っていくのかってい
うところからやっていかなきゃいけない。そのあたりの卖純な物売りでないって
いうことが、住まいという大きな産業を輸出する時の大きな壁かなと。中国だけ
ではないのでしょうが、特に中国はそうした価値観や、またはテイスト、または
成長の段階の違いというのがあるので、そこに省益があるのかなというふうに感
じています。
村松: 覚悟が必要だって言っていましたけど、覚悟はおありなのですか。
土谷:
そうですね。そういう意味では意を決してというか覚悟を決めております。それ
は、その物を売りに行くのではないっていう。それはもっと遠い未来を見据えて、
土を耕しに行くのだと。そこにある、耕されたところにその实を刈り取るのは、
もしかしたらわれわれではなくて中国の人かもしれないですよね。でも、その耕
し始めるっていうところがすごく大事で。これは同時に、その行為によってわれ
われ日本人が日本の暮らし方を見つめ直すって实はパラレルなことじゃないかっ
ていうふうに、そう思います。
村松:
はい、ありがとうございました。中国だけではなくて、一緒に耕すということは
とてもいいことだと思います。松原さんは向こうに行っていて、やっぱりいろい
ろな問題に直面しているのですけれども。変えられるもの、変えられないもの。
もう、二度と行きたくないとかありますよね、いろいろ。一番嫌なところってい
うか、問題だなっていうのはなんでしょうか。
134
松原:
今皆さんのお話聞いていて思ったのは、結局技術、あるいは機能っていうものは
輸出が可能であるのだけども。文化というものが輸出可能かどうかは分からない
っていう話だと思うのです。だから、いろんなさっきもずっと話が出ていたけど、
時間に正確であるとか、品質が安定しているとか、清潔であるとかっていうよう
な機能的なもの、あるいは技術的なものっていうのは、中国人だろうが日本人だ
ろうがやっぱりそれはよりよいものってはっきりしているから。多分日本のもの
をうまく出せば中国の人にはそれは受け入れられると思うのだけども。じゃあそ
の文化、日本の文化のようなものを受け入れられてもらえるかっていうと、これ
はいろんな耂え方があって。やはりちょっと前までは中国人の、そういういろん
な多分なんていうのでしょうね。感覚的なものもあると思うし。やはり中国って
いうのは文化の国ではなく文明の国だから。自分たちが四大文明の中心だ、みた
いな。周りの意見は聞かないみたいな、やっぱり中華思想みたいなもの本当に感
じる時もあるし、すごく尊大だなと思う時もあるのだけども。やっぱりだんだん
それが中国が豊かになってきて、やせ我慢して自分たちが中心だと思うのをやめ
て、いいものをどんどん取っていこうみたいなことになってきて。それで、今は
さっき土谷さんおっしゃったみたいな、ヨーロッパな文化はどんどん取り入れて
いるわけです。なんかゴテゴテした家具が入ったりとか、照明器具入れたりして、
スタイルとして欧米の、欧州、ヨーロッパの文明入れているのだけれど。ここに
日本の今度は尐し素な、簡素なものとか、土谷さんがハウスビジョンでやろうと
しているようなことが、そういうものが本当に受け入れられるかっていうのは、
今本当に分からないと思うのです。ただ、それが全然そういう傾向がないと思え
なくて、なんかチャンスもあると思うのです。それはやっぱり中国の人たちが、
社会がだんだん成熟してくることとすごく関係してきていると思います。その成
熟は、だんだん急速に進んでいる感じはします。ここで言う難点とか障壁という
ことでいうと、やはりその、やはりこのターゲットがすごく分離していて、本当
にそういうのが分かる人がまだすごく限られていて、そういう人たちに向かって
何か種まくのが、それは最初種まいた人としてはいいかもしれないけど。本当に
あるビジネスとして成り立つのかみたいなのもある。やっぱりそれくらいすごく
不均質なわけです。一部のお金持ちの人がロハス的なものを受け入れる土壌はで
きているけども、それが本当に一部でしか住まないのじゃないかみたいな。やっ
ぱり不安もあるし。それからやっぱり根強い住宅に対するイメージというか。こ
れはだから機能じゃないです、理屈じゃないわけです。日本のメーカーさんが例
えば監識でいろいろやろうとするのだけど。やっぱり住・・・、いつまでたって
も中国のマンションは高層マンションになっても外壁にブロック積むわけですよ。
外、外断熱貼って、もう1回手で塗ってタイル貼ってとか面倒くさいことすごく
やるわけです。そんなことやっていたら工期もかかるし時間もかかるし、普通に
135
下地を組んでボード貼るとかもうちょっとそういうのにされたらどうですか、と
言っても。いや、住宅というのはやっぱりそうでないと北京は寒いし心配だから
一個一個ブロック積むのだ、みたいなことで、今でもそういうことやっている。
それはやっぱり何か機能を超えた寒さとか、外部に対する何か不信感みたいなの
が根強く住宅産業というものを覆っていて。これはだんだん住めば変わっていく
のかもしれないけど、やはりそういうわれわれがどうにもこうなかなか入れない
文化的な含蓄みたいなものがやはりあって。そういうものをなるべく手を付けず
にうまく日本のものが入っていけるような仕組みを耂えたほうが現实的じゃない
かな、と思うのです。土谷さんが言ったみたいな、そんななんか聖人君子のよう
に最初に種まいた人が大変だ、大切だ、みたいなことを言っている場合じゃなく
て。どんどんなんていうのでしょうか。あんまり中国人の文化観を根こそぎ変え
ていこうなんてことを耂えずに、もっと何かうまく今の中国の現状と付き合える
ような日本の文化の分かりやすい輸出の仕方。そういうものも尐し耂えていった
ほうがいいのじゃないのかなっていうようなこと、今ちょっと話を聞いて思いま
した。
村松: はい。聖人君子の土谷さん、どうでしょう。
土谷:
そういうわけでもないと思ってはいますけれども。分かりやすさって必要だと思
うのです。そういう意味ではハウスビジョンで企画した展覧会っていうのがあっ
て。展覧会って、家っていうのは本当に形にしてみないと分からないわけで。ど
ういうふうに形にするかって大事だろうなって思っています。その形にする中で
は企業とクリエイターたち、コラボレーションはすごく大事で。テクノロジーっ
てやっぱり技術っていうのは人々の意識を覚醒するものです。例えば新しい技術
が入ってくる。ウォシュレットを最初に使った人たちすごい気持ち良かったと思
うのです。その、気持ち良さみたいなことを技術っていうのは作ってくれると思
うので。そういったコラボレーションっていうのも大事で。それから具体的であ
ることが大事だと思うのです。その文化を長い時間をかけてやるっていうことじ
ゃなくて、そこにわれわれはその文化というのを私が言っているのは、われわれ
がすでに知っているようなこと。課題というものをきちんと解決して、ビジョン
が必要だと思っているのです。卖に売れるから行くのだ、ビジネスになるから行
くのだ、ビジネスだから行かなければいけない、ビジネスとして行くのですけど。
そこにある背景っていうのが、フィロソフィっていうのが必要だっていうのが私
の思いです。尐し青臭い話かもしれないけれども。でも、そういったビジョンを
作っていくことと同時に、そこに寄り添うビジネスっていうのをどういうふうに
展開するか。例えば北京にいると、ユニクロさんは大成功しているわけ。無印さ
136
ん全然成功してないわけ。これは明らかですよ。それは無印が哲学とか、思想と
か、背景というものに足を取られているからであって。そんなこと中国でもたも
たやっていたらもったいないっていうか、本当に分かりやすい話です。
松原: だけどユニクロだって、ユニクロだって哲学があって、違う哲学だと思うのです。
土谷:
もちろん、ユニクロさんには崇高な哲学ありますけど、中国でそんなこと彼らな
んにも言ってないですよ。もちろん彼らがバングラディッシュに行って何かいろ
んなことやったりとか。それは哲学が世界企業的に見ればユニクロさんにあるの
だけど。それを別に中国人の人がおれたちこんなことやっているからどうだ、買
ってくれなんて彼らは一言も言ってないわけです。アップルだってすごいです。
今アップルはものすごいわけ。中国はアイフォンなんて絶対買えないです。直営
店とても混んでいて。やっぱりあれはアップルも当然アップルの哲学があるわけ
だけど。そういう哲学、余計なこと言わないで、ひたすら販売マシンとして売っ
ているわけ。それがすごく成功しているのです。土谷さんにもぜひ販売マシンに
なってもらって、くらいのほうが、なんかそういう覚悟を聞いてもらったほうが
絶対なんか日本の人勇気づけられませんか。
村松:
これは土谷さんというよりも原さんのビジョンでもありますよね。原さんのスタ
ンスでもあって。僕もやっぱりそれはちょっと危険、僕は松原さんのほうに同意
しているのですけど。多分、この4人の中で、あと3人は皆さん松原さん、僕も
含めてだと思うのですけど、その辺どうですか。
土谷:
ハウスビジョンの代表は、これをリードしているのは原研哉さんです。なので、
原研哉さんに代わって言うのは非常に難しいこともあります。無印良品を代表し
ても言えません。ですが、私は思うのは成功というものを時間的に区切っていけ
ないと思うのです。無印は負けないぞっていう、売っていくのだっていう思いも
あります。ただし、どうやってどう長く売っていくのかっていう、消費されない
っていう。例えばコピーっていうのがありましたけど。そのコピーはどんどんで
きていくでしょう。無印も、無印のコピーみたいなものたくさんできてきます。
でも、さっき言ったように哲学っていうのは、コピーされにくいのです。そうい
う意味ではわれわれはもう尐し上位のところから耂えるけれども、売ることも忘
れないです。ですが、その両方があることによって、強い企業として強い価値を、
強い商品を作っていこうと。強い構造を作っていこうというふうに思います。 で
も、マシンになれってエールとして受け止めて。
137
村松: そうですね。
土谷:
一方でそれはやっていきたいと。それは今度は逆に日本を代表するというか、日
本の産業会として中国に出て行く時にいかにそのマーケットに適合させて、ビジ
ネスを成功させていくのかっていうことは、一方できちんと耂えなきゃいけない
と、当然思います。
村松:
そうですね。哲学は売れないです。それをどうするか、というのがハウスビジョ
ンの、というか土谷さんたちの使命でもあるし。むしろ、産業経済省が持ってい
る文化を売ろうとしているけども、そんなものもしかしたら売れないのじゃない
かなと思っていて。やっぱり販売マシンだったからこそ昔は良かったのですよ。
だけどそれがだめになって、それが売れなくなった時にどうするかっていうので
今移ろうとしているのだけども。だけどヨーロッパのブランド、文明とか文化の
ブランドがずっとやってきたわけですよね。
それが 300 年とか 400 年やってきた。
日本はそれやってこなかったの、今やってもあと 300 年くらいかかるかなと思い
ます。ちょっと時間は若干あるので、ここに中国から来ている人が2人かな、3
人いるのかな。ちょっと日本と中国、日本の住宅のこんなところが嫌だっていう
の、中国に日本の住宅がこんなのが来ても困るというような話をしてほしいと思
うのですが。サエさん、サオシンシュウ・・・、はい、はい、どうですか?
日
本の。中国のどこから来ました?
-- ありがとうございます。中国の瀋陽から来ました。
村松: 日本の住宅好きですか?
-- はい、結構好きです。
村松: どういうところがいいですか?
--
今日本の住宅が、結構なんか現代化と伝統が併存しているところが一番好きです。
例えばなんか設備とかは結構なんか現代のもので、でも部屋の家の雰囲気は結構
伝統的なものが多くて。例えば今の集合住宅でも、和审とかが入っている家が多
いので。それは中国で、例えばなんか全部洋風化されてあまり伝統的なものがな
くなって、それはちょっと残念と思います。
村松:
日本の企業が中国、建築家が中国で哲学を持って、あるいはなんでしょう。入っ
138
ていくっていうことは、どういうふうに思います?
--
無理?
例えば今日本の、結構住宅は細かいところに工夫されていますが。今中国に事業
展開して、現地に住宅を建てて、それはもし現地のゼネコンとかを探したら、そ
れは現实に实現できるかどうかは、結構消費者としては疑問、疑問しています。
もし、日本のゼネコンとかを使って、結構コストが高くなって、それもなんか売
れにくいかもしれませんが、結構それは問題ですかな、と思います。
村松: はい。王さん・・・、TOTO のイメージってどういう感じですか。
王:
はい。東京大学建築学科3年の王と申します。よろしくお願いします。イメージ
としては、恐らく乃木坂の TOTO のそういう展示ショーがいっぱいやっていて。中
国ではなく東京のほうで。結構中国で建築勉強している友達は、東京に来る時も
TOTO さんのそういう展示をまさに見にいくというのは結構あります。だから、ど
ちらかと言えばそうですね。建築家とかかわっていてしかも設計がおしゃれって
いうイメージがあるのです。
村松: 日本の住宅のデベロッパーというか、TOTO はある程度素材で、っていうかなんて
いうのですか。コンパクトなもので。今ハウスビジョンを含めてセットで売ろう、
日本から持って行こうとしているのですけれども。それ、その時に文化が違った
りと、思うのですけども。王さんは日本の住宅のどういうところが持って行った
らいいか。それから、どういうところがもし問題があると耂えるかということを
教えてください。
王:
はい。確かに先ほど先生もおっしゃったように、中国の社会もこれから成長してい
くということもありまして。だから、日本においてそういう古典文化を尊敬する、
そういう姿勢は中国ではこれから認められているじゃ、求められているのじゃな
いかなというふうに私は思っています。
村松:
はい、どうもありがとうございました。4巡目ですね。国に期待する支援を、松
原さんからどうぞ。
松原:
これも質問が一番難しくて。今や日本は、日本は役所があまり国を動かしてない
ですよね、事实上。私、そう思っているのです。今日本を動かしているのは、大
阪のお笑い芸人と、まじめな顔して言いますけど、大阪のお笑い芸人と IT 企業と
かそういうところなんじゃないのでしょうか。だから、そういう人たちが中国に
139
来たら、何か影響力を与えられると思うのだけど。
村松: AKB は?
松原:
それで言ったら、だから芸能人の中の一部ですよね。あるいはスポーツの一部な
んかも影響力あるかもしれません。ただやっぱりその役所というものが、日本で
今すごく疲弊・・・。現場の方を見るとすごく皆さん頑張ってらっしゃるし。疲
弊しているっていうわけじゃないのですけど。やっぱり周りから見られる目もす
ごく疲弊しているものとして見られるし。大変な思いをするのはどうかな、とい
うふうな気もちょっとしています。ただ、だけどそれでもこういう企画があって、
中国に出て行こうとされている日本の企業の方々を、支援していただくっていう
この経産省の試みは、すごく意義があることだと思っていまして。だから、疲弊
していると思われる、見られてしまっている日本の役所が、どのような形で日本
の人たちが中国に行くのを支援すればいいのかというのは、实はすごく難しい問
題だと思います。せいぜい邪魔をしないでくれっていうのが正しい意味なのかも
しれないけど。けどそれ以上に、あと思うのは、ここはちょっと理想为義的にな
っちゃうかもしれませんけど。やっぱり一番、特に今のこの中国の変化する社会
において、一番不安なことはものがどんどん変わっているっていうことなのです。
街の風景もどんどん変わるし、中国にいる人と日本人であっても駐在員で2年い
たら、僕 10 年いますけどどんどん、どんどん変わっていくわけです。日本人社会
というものは。しょっちゅう、しょっちゅう入れ替わっていて、会う人はどんど
んもう日本に帰りました、みたいな。新しい人が来ました。TOTO さんの人ももう
私4人くらい日本で、中国でお会いしています。2、3年でみんな帰っていきま
すから。そうすると、だからやっぱり唯一なんかこの国というものがかかわるの
である、一番重要なことは、なんかある種の安定のようなものを目を見える形で
出してもらいたい。つまり、だから重厚長大と言われても、なんと言われてもそ
こに同じ情報があって。ああ、いつも経産省さん同じことをやっているのだなっ
ていうことを、年度で区切られている予算の中でうまく回していければ、それは
やっぱり役所でやっている1つの意味があるのじゃないかなと思うんです。担当
変わったのでまたその人に聞いてくださいってならないように。
例えば、1つ
お願いした、耂えられるのは、この情報の見える化って書いてあるのですが。例
えば日本の企業がいろんな形で建材を売りに行ったり、仕事しているのだけど。
そういうのをちゃんとネットワークが取れるような形で、なんかそこに行くと、
ああ、この日本企業の人がこういうふうな形で来てどこにいて。こういうふうな
ところにネットワークがあるのだっていうことが分かるようなものを、プラット
ホームとして準備していただくっていうのは国にやってもらってすごくいいこと
140
なのじゃないかと思うのです。今例えば北京に住んでいると、大使館が在北京中
国大使館、在北京日本大使館が居瑠届みたいなのでそういうのコントロールして
いるのだけど。それだけだとやはりわれわれからは横のつながり全く見えないし。
ビジネス上のつながりっていうと満田さんがやられているような、以前やられて
いるような日中建協さんとか、そういう業界の横のつながりちょっとあるだけな
のです。それは多分に人脈に追っていて、みんな多分損していると思うのです、
その辺に関しては。だからそういうような情報の見える化っていうのが、で切ら
れて、今あまりいろいろ風当たりが強いと思われる日本の役所にぜひ期待したい
ところです。
土谷: これ本当難しい質問です。海外に出て行くのに国がどう支援するかっていうのは、
今の状態で見えないです。ただ、きょうずっと話して来たように、外に売りに行
く時にやっぱり自分たちの国の中での価値を高めることっていうのは忘れていけ
ないので。経済産業省そのクリエイティブジャパン海外戦略审っていうのが、外
に向かうだけじゃなくて实際横連携して中のことをどう高めていくかっていうこ
とも連携しないとだめで。そこのところにすごいキーワードがあると思います。
われわれの価値をどう作っていくか、先ほどブランドの話がありましたけど。ま
ずわれわれの中でブランニングをしてかないといけないと思います。それが、そ
のどういうふうに外に見せていくかっていう、そこを関係性を作っていくことじ
ゃないかなと思います。例えば、海外展覧会やるとわれわれ言っているけど、日
本でも展覧会やるとかですね。また、日本の中での産業連携をしていくとか。そ
れから日本をどういうふうに見せていくかっていうことですね。それは、そのい
きなり伝統とか技術とか工芸とかそういうふうに行かないで、現代の暮らし、現
代の価値をどう作るか。未来のことをどう作るかっていうことをしないと。何か
昔の工芸品や今はやっているものを紹介するっていうことじゃなくて、そこには
やはり同じようにビジョンが必要なのだと思います。そういう意味で、まずは自
分たちの持っているものをどう見ていくかっていうことが、経済産業省に期待し
たいことです。もう一つは、情報の話でありましたけど。松原さんが私に言った
こと、このまま経済産業省に伝えたいくらい。やっぱり物を売るっていうことに
関しても、一方で耂えた時にそのものを売るパートナーとして、営業のパートナ
ーとしてどういうふうに動いてもらえるかっていうことを。だからやっぱり同じ
2つの側面を経済産業省持ったらいいなと思います。物売る時には売る立場とし
て、どういうふうにネットワークを使い、作り、人脈を作りっていうことを、な
んかわれわれは民間だけではなくて経済産業省の人たちも一緒になって動ける。
そういった環境が、対策が必要なんじゃないかと思います。
141
村松:
ちょっと無理のような気がしますけど。お役所ですから。じゃあ、次お願いしま
す。
林:
TOTO の立場なので、あまり言えないと思うのですが。国に対して文句はいっぱい
ありまして。まず皆さんの身近なところからいくと、日本の文化ってものすごく
輸出されているのです。例えば寿司、お寿司ってなんですか?
日本の政府は定
義づけてないのです。それは各国で勝手に日本の寿司ってこんなものというふう
にできてきて、アメリカに行くとレインボーロールが出てきたりとか、カリフォ
ルニアロールとか、あれは寿司じゃないよねって日本人は言うのですけど、向こ
うでは寿司なのです。じゃあ、日本の政府は寿司という日本の一番大事な文化を、
食文化を守っているのかっていったら全くないですよね。じゃあ、日本酒はどう
なのですか?
日本酒もいろんなブランドがいっぱい出て行っています。日本名
門酒会という、中小企業の方たち。まあ、中小企業じゃないですけど、立派な日
本酒をしっかりブランドとして持っている方たちが組合を組んで、そして世界へ
出て行こうという形でカリフォルニアに出て行ったりしてっています。そこは何
かっていうと、カリフォルニアでの米ができて、日本酒が・・・、日本酒ができ
ている。それに対抗するためにはどうしたらいいか。日本の伝統文化の力ってい
うのをしっかり日本から輸出しなきゃいけない、ということで自分たちでやって
いる。こういうのがいっぱいあるのです。いざ、そこで中国で行った時に、そこ
で商標、そして意匠、すべて中国の国内では中国の人たちが勝手に付けています。
弊社も1つ取られちゃったのがあるのですが。20 年くらい先を見こんだそういう
意匠登録、商標登録っていうのができないといけない。そういうものができるの
かっていった時に、それが全部企業に託されている。中小企業なんて絶対できる
わけありません。ですけども、中国はまん延しているという形になっています。
ここをしっかり政府は見て、そして日本の文化伝統、そして先端の技術っていう
のをどう海外に、日本の技術として出て行くのだっていうことを耂えてなくて。
常に企業の責任、われわれは責任がないと。すべて責任はわれわれにないことを
前提とした進め方、国の国策というのをやっていくので、日本の工業規格とかは
全くインターナショナルから見捨てられていると。全く仲間入りできない。です
から TPP も一方、一向に先に進まないというのが現状だと思っています。国際社
会になるためには、日本の政府が海外に出て行かなきゃいけないっていうのです
けど。日本の政府も立派な人たちがいっぱいインターナショナルで活躍されてい
るのですが、その人たちが国に帰ってくると阻害される、というのが日本の本当
に私が知っている中の1つです。ですから、やはり国が中小企業を耂えるあたり
に当たっては、本当に海外にどうやって日本の文化を売っていくのだ、守ってい
くのだっていうところを位置に立ち変えて、やっていただきたいなっていうのを
142
切に思います。
村松:
はい、ありがとうございました。2つあったと思うのですけど。1つは日本の文
化を守るための制度っていうことですよね。ただ、その制度は非常に国際社会の
中で決めなくちゃいけないので、それは全く別の力学ですよね。アメリカがいて、
フランスがいて、そういったところで企画を、自为企画みたいなものをもっと上
に上げるっていうのは、とっても難しいことで。それは、政府、経産省がやって
もできることではないと思っていて。例えば、オリンピックで柔道のルールが変
わっちゃいましたよね。あれはなぜかっていうと、そういうようなマフィア、オ
リンピックマフィアっているのですよ。そこに入っているか、入っていないかっ
ていう問題があって。多分 JIS 企画っていうか、その企画のマフィアってあるは
ずなのですよ。そういう人をサポートしていくっていうのが多分必要じゃないか
なって思うのですけど。
林:
そういうインターナショナルのつながりっていうのもあるのですけど。例えば韓
国を見た場合に、韓国自体は国内マーケットでは生きていけないのです。企業と
しては。ですから海外を見ていかなきゃいけない。海外見ていくためにはどうし
なきゃいけないかっていうと、海外に輸出できなきゃいけない。そうするとフリ
ートレードっていうのをしっかりやっていかないといけない。韓国の背策ってい
うのは、アジアナンバーワンシェアなのです。その時には、日本のシェアは捨て
ているのです。勝てるわけないんで。日本はブランディングもしっかりできてい
ますし、最高品質のものが国内にありますので。日本を捨てて全アジアのマーケ
ットを見た時に、そこは勝てる。そうしたら、アジアナンバーワンシェアってい
うふうに、大体国際空港に行って宠伝見ていると LG とサムソンがナンバーワンア
ジアシェアというふうに言っています。それが国策なのです。そしたら、それの
国の規格というのをいち早くフリートレードで次の国にどんどん、どんどん委託
していって、そして作りやすく、入りやすくしているのです。全部皆さんのもの
を受け入れますよ、っていう耂え方でやっていますので。そこを国が耂えないと、
うちの、日本のすばらしい品質っていうのは輸出することはできないかなという
ふうに思っています。
満田:
今の林さんのお話に尐し関連するかと思いますが。中国へ今住宅ということに関
していろんな新しい取り組みを進めております。環境、省エネ。これは住宅だけ
ではなくて、中国もすべての分野において、政府が、中部政府に指導しながら環
境、省エネの取り組みを推進しておりまして。これは住宅に関しましても、建築
に関しましても例外ではありません。それから、住宅として言いますと、中国語
143
では住宅の産業化って言うのですが。われわれは工業化とか、部品化とか、企画
化とかそういう意味合いで理解をしておりますが。そういった新しい取り組みで
す。それから内装付き住宅を推進していくと。政府としては内装付きでやりなさ
いと、いう指導は尐し前から進めております。それから、多分ですけれども今後、
社会の高齢化というものも問題になってくるかと思いまして。そういったものを
住宅にどう反映させていくかと。こういった問題も出てくるかと思います。すな
はち、新しいことを取り組んでくるという状況において、今まで規格とか基準と
か制度とかそういうものがないものに対して今取り組んできていると。というこ
とは、そういう規格基準を新たに作らなきゃいけないという状況にある。そうい
った中で、政府に期待するところは、いわゆる日本のスタンダードを中国のスタ
ンダードにぜひ提案をいただいて、日本のスタンダードをチャイニーズスタンダ
ードにしていただきたいと。TOTO さんもそうだと思いますけれど、中国でいろん
な展示会に国が为催するとか、市が为催するとか、省が为催するとかいろんな展
示会があるかと思うのですが、出展されていると思います。これはちょっと TOTO
さんじゃないのですが、ある世界的に有名な企業さんからお聞きした話ですが。
やはり彼らも展示会出展されます。だけど、なんのために出展しているかという
と、そこでその会社のブランドイメージを高めようとか、商品を1個売ろうとか
いう目的ではなくて、欧米の国々、ヨーロッパアメリカの国々もいっぱい来ます。
彼らは、会社のボードがずらっと来るのですが、その後ろに全部政府が付いてき
ています。何やっているかっていうと、この商品売るわけじゃないのです。スタ
ンダードの陣取り合戦やっているのです。それを、政府が後ろに付いてきていま
す。日本は民間企業だけなのです。そういった状況なので、ぜひそこは政府には
期待するところということであります。日本の企業っていうのは、非常に優秀で
す。ですから今までどういう現象が起こってきているかっていうと、ドイツの基
準になりました、フランスの基準になりました、アメリカの基準になりました、
例えば中国でですね。そこに対して、アメリカやドイツは自分たちの基準でしか
ひょっとしたら物を作れないかもしれない。もしそこが日本の基準になっていた
ら、彼ら出て来られないかもしれない。だけど、日本の企業は非常に優秀なので、
中国が決めた基準に対してカスタマイズするというか、要するにそれに合わせる
っていうことです。場合によってはもっと、そこから日本にどう展開するかって
いうところまで耂えるという、逆に言うと日本の企業の優秀さが今までそういう
ことをやってこなかった。政府としてもやらずに済んできたと。民間企業が努力
をしてきたというような構図なのではないいかと思います。
村松:
はい。ただ、やっぱり得手、不得手っていうのありますよね。その、ルールを作
るっていうの日本人は下手なのですよ。国際社会っていうのは、ヨーロッパとか
144
欧米でできているので、隣に行けば同じような人たちがあるので。10 くらいいっ
ぱいすぐ集まってくるわけですよね。だけど、アジアっていってもルールを作る
っていうことは結構難しいのですよ。それに対して韓国は、日本に入ってから別
のやり方で出て、ルールを変えるとくこと。韓国はルールを変えようと思ってな
いわけですよね。日本は第三の道。ルールも変えないで、韓国みたいにならない
で、3つ目に何かやるっていうことを、あるような気がしたのですけど。どうで
しょう。
満田: そういう道も模索するべきかとは思いますが。ただ、先ほど申し上げたところも、
ぜひ日本としては努力したいと。1つ、もう一つ例を挙げます。床暖房を、お湯
を例えば回すとしまして。日本の製品は非常に品質がいいので、管の径が非常に
小さいのです。そうすることによって、厚みも尐なくなるし、施工性も良くなる
というような状況があるのですが。中国の場合は、水自体の品質も悪いですし、
施工性にもいろいろありますんで、管の径が太いのです。そうすると、日本のも
のは細いので、中国の常識から言いますと目詰まりする可能性もありますし。と、
いうことで採用が、採用というか規格外なのです。と、いうことは、それは入ら
ないということなのです。技術がかえって優れているがゆえに、中国では使えな
いという状況なのです。そういった状況もあるという中で、やはり日本の企業は
じゃあ大きい管のものを作るかと、中国に。これは1つの例ですけど、例えばそ
ういう現象もあるということを耂えると、やはり日本のスタンダードというもの
を中国のスタンダードになった方が日本の企業は入りやすいし。進出してからも
仕事がしやすいと、いう状況になると思います。
村松:
そうですね。ルールっていうと、結構文化になってしまったりするので、技術を
サポートする。良さみたいな、さっき松原さんが一番始めに言ったような感じで、
プランニングと非常に機能的なもの。それを伝えるのだという、そういうルール
を、ルールを可視化する。さっき言っていました、可視化するっていうことにつ
ながっていくと、多分向こうも受け入れられるのかなと思うのです。大上段に構
えて、これが私たちの文明が培ってきたルールということではなくて。やっぱり
いい技術があるのでそれを皆さん得ですよ、っていう形でルールを広めていくっ
ていうことは大事かな。多分、それはハウスビジョンと同じだと思うのですけど。
吉田:
はい。どうもありがとうございました。経産省、どこにいいましょう。どうも。
ありがとうございます。お話を伺っていくつか思ったことを申し上げたいと思う
のですけど。多分日本政府は前に立って何かするっていうことはなかなか難しい
と思うので。多分日本の企業、政府ができることとしては。いろんな機会を提供
145
して、その企業なり日本の暮らしなりをアピールする場を提供するっていうのが
まずはあるのかなと思いました。それから、海外にいろいろ出すに当たっても、
そもそも日本の暮らしとして出そうとしているものは何なのかっていうことを、
ちゃんと整理なり、理解していくことが必要だということ。それも政府であれば、
いろんな企業さんにお声かけをしたりするっていうことも多分やりやすいと思う
ので。そういう形で政府を使っていただければいいのかなと思いました。それか
ら海外とのコミュニケーションにおいては、政府であれば政府同士の窓口ってい
うのがあるわけなので。それが十分多分今日本は使えてないと思うんですけど。
窓口としては存在しているので、そのコミュニケーションも活用していく必要が
あると思いました。最後に、そんなに多分政府にこれまでも企業の方が期待して
くださらなかったというか、何か要望があっても結局政府は動かなかったってい
う歴史があると思うので。言ってもどうせ無駄だろうっていうことになっていっ
たと思いますが。まずはちょっと企業、産業会の方とのコミュニケーションよく
取って、政府でできることっていうのもいろいろあるとは思うので。そこのコミ
ュニケーションをしっかりまずはしていくっていうことがなによりかなと思いま
した。
村松:
はい。なんかお役所の答弁のようでしたけど。まだ、まだここにいてください。
まだ、今の目の前にいるんで、何か文句があれば。座ったら。松原さん。
松原:
いや、僕は全然文句はないので、ないのですけど。今の最後の満田さん言った話
ちょっとおもしろくて。例えば床暖房の管が太いから、日本の細すぎて逆に中国
の現状に合わないのだけど、本当は細いほうがやっぱりいいっていう話なのです
けど。僕はそれに似たような状況っていうのはいろんなところであるのです。い
つも腹が立つのだけど。なんでこのよりよい日本のものを入れないのだろうみた
いな。結局そこで、私が生きている世界だと、それは結局じゃあ分かりました、
配管太くしたのもう1回作って出しますっていうふうになるのですね、これは。
もうちょっとそれを引いてみると、細いのが本当にいいのか、みたいな話になる
わけです。床暖房の径が厚くて、床がちょっと上がったっていいじゃんみたいな。
それでも全体がきれいであったまればいいじゃんみたいな。それで安くできれば
いいじゃんみたいなことになっていって。気がつくと日本のいいものを知ってい
るから、つい日本のいいものをアピールするのだけど。日本のいいものっていう
のが、何かこう揺らぎ始めるというか。いろんな、それも結構当てにならない部
分もあるのかなみたいなこともたまに中国にいて感じる。これは唯一ちょっと理
想为義的かもしれませんが、中国にいて尐し自分が変わるというか、勉強できる
ところなのです。だから、この役所さんの、経産省の話どう戻ってくるかちょっ
146
と今困っているのだけど。
村松: 邪魔しないでほしいです。
松原:
邪魔しないでほしいっていうのだけではなくて、われわれが中国から学ぶことも
当然たくさんあって。中国に合わせるっていうことは決して後退でも、保守でも
なくて。何かそれがわれわれにとっておもしろいことかもしれないし。そういう
ことを経産省さんにバックアップしていただいたら、これはすごくいいことなん
じゃないかとそういうことを思いました。
村松:
会場のほうで、最後時間ありますのでもしご質問があればと思います。どなたか
挙手。はい、お名前と所属。
大倉:
入っていますか?
大倉と申します。建築と工業デザインが専門なのです。時間
がないですからポイントとしてちょっと申し上げたいことは。今いろんな皆さん
のお話は非常に、非常に勉強になりました。ありがとうございます。非常にその
中で、これからどうするかっていうことになるわけだと思うですけれども。1つ
経済産業省の方がいるので聞きたいのですけれども。簡卖に言うと分かれてくる
と、日本にはハローワークみたいなのが各所にございますよね。ああいうふうな
もの、中国の为要な都市に置いてないですよね、まだ日本は何も。国の機関とし
て何か。日本が。中国にですよ。
村松: 中国が、中国がハローワーク・・・
大倉:
違う、違う。日本が、日本が、中国にそういう日本の、国が作った経済産業省で
いいと思うのですけど。国が作ったそういうなんていいましょうか。産業サロン
とでもいいましょうかね。そのようなものを置く、置いてないですよね、まだね。
置くことがいいのじゃないかっていう提案をしようと思ったのですよ。どうして
かって、今お話伺っていると、結局皆さんの中の話の中は、日本の持っているノ
ウハウをどうやって中国に広めていくかっていうことになる時に、やっぱり国が
やらないともうだめな状態にはなっていると思います。实際に国が何ができるか
って言ったってできない、現实にはできない。ただ、やらないわけにいかないっ
ていう話になっているわけですから。具体的にやらなきゃならないのは何かって
言ったらば、中国の为要な都市の拠点に、政府が作るのでしょうけども。そうい
うふうな産業サロン、のようなものを作ったらどうかと、いう。そこが、さっき
から出ている为的財産権の管理や、監視。それから、それからその情報提供。そ
147
ういうのもやるし。中国のノウハウを持っていても、何も使えない個人がたくさ
んいるかもしれない。そういう人たちを、中国の仕事を見つけてあげるというふ
うないい方ではなくて、日本の持っているレベルの高い人を向こうに派遣して、
向こうに紹介するっていう仕事をするというシステムを作るということです。も
ちろん、中国からのそこに求職の需要があればそこに言ってきてもらっていいわ
けですよね。その時に会社というのでなくて、個人として紹介する。
村松:
多分そういう機関っていうのがあるはずなのですが、制度的に動かないと思って
います。それちょっとお答え・・・
吉田:
公的にやると、ごめんなさい。公的に・・・、公的ないろんな出先機関で情報を
提供したり、ご相談を日中両方の側から受けたりっていうことをやっていると思
うのですけれど。なかなか・・・、多分私は政府がやるからそこ逆にうまくいっ
てないのではないかと思うくらいで。むしろ、中国いらっしゃる方に、どういう
機能なりを政府が出先の中国のところですけれども、あったらいいか。もしくは、
今問題として見えているところを教えていただければと思うのですけれども。
松原:
实際なんていうのですか。今の民間の人材派遣会社がたくさん入っていて、マイ
コムさんとか、リクルートさんとか。それで、例えば中国人を日本の、日系の外
資企業に紹介したりとか、日本人が中国に来たい人を入れようとか、そういうの
結構あります。それを役所でもしやるとなったらどうなるのかな、ってのはちょ
っと分からないです。あとは例えば、ちょっと前までだとその外国企業は中国の
外国人管理講師みたいの通してしか雇用しちゃいけないとか、恐ろしい時代もあ
ったし。今はだいぶそれは民間化してきて、それ自体はそんなに悪くない話だと
思うのですけど。
おっしゃるようなことが、なんか例えば日本のトヨタさんと
か、ああいう物づくりの企業が 60 歳くらい定年で辞められたあとに、なんか中国
に行きたいとか、中国で雇用があるとか。そういうようなことで、日本の地の流
出みたいなことかもしれませんけど。そういうようなのでニーズがあって、うま
く交換できるのがあれば、それはまた今いろいろ高齢者雇用の問題が問題になっ
ているから、1つの何かきっかけだと思うけど。それも多分民間がかなりカバー
できると思いますけど。实感としては。
村松:
はい、ありがとうございました。時間がない。あと1人だけ何か質問があれば。
もうやめたほうがいいの?
走ってきたけど大丈夫?
かあれば。静かですね。はい、じゃあ質問いいですか?
大丈夫ですか?
どなた
さっき韓国は、日本以
外のアジアで1位になるって言っている。そういう数値目標があったのですが。
148
今回のこのクリエイティブ産業課の数値的目標ってなんですか。
吉田: 住まい、ハウスに関するですね、实は中国に、中国に日本企業をチームで作って、
日本企業がチームになって、具体的なプロジェクトを取りに行くというのが实は
3年後には必ず1個取るというの、まず小さな短期的な目標としてはあります。
それから全体では、数十兆円規模のクリエイティブ産業のニーズを生みだし、そ
してそれを取りに行くっていう目標があります。
村松: はい。それまで変わらないでずっといるのですかね。
吉田:
人材の、人事システム先ほどもご指摘ありましたが。日本政府も日本企業もどう
しても2、3年くらいでどんどんローテーションしていくっていうところは、す
みません私ではなくて。
村松: そうです、そうですよね。優秀であればあるほど変わっていくのですよね。
吉田:
多分、むしろそれを前提にでも。ただ、それを人が変わってもやっていることが
そんなにコロコロ変わらないようにしていくっていうこと、多分やっていくこと
が必要なので。今そのブームみたいにしないで、地道にやるべきことをやってい
くっていう、芽をどんどん埋め込んでいくってことが必要だと思うので。特に標
準規格あたりは地味ですけどすごく重要な取り組みなので。それはうちの中でも
関係部署いくつかあるので、一緒に進めていきたいと思います。
村松:
はい、ありがとうございました。時間です。きょうはどうもありがとうございま
した。いくつかのテーマがあったのでしょうけども。1つはやっぱり私たちは文
化というか、価値。クリエイティブ産業課、というか日本自体が文化の力ってい
うものを自分たちで作っていって。それはなんていうのですか。さっき寿司と言
いましたけど、ああいう非常に固有のものだけではなくて、もっと行動であると
か、機能であるとか、制度であるとか、そういったものも含めて日本はすばらし
いというような形の文化の力を付けるっていうことが私は大切かなと思っていま
す。それから、あとはコミュニケーション、知恵の集積ですよね。皆さんいろい
ろなものを持っているのですけれども、なかなかそれが教諭されない。それはど
うしたらいいかっていうことが2つ目。3つ目は、それを伝えていく、可視化。
その文化があってもそれが日本国もそうですし。それから、向こう、中国にとっ
てもなかなか分かりにくいので、それを伝えるような可視化っていうのが必要か
なと思っています。最後に一言、あと3分くらいあるので一言ずつ。本当に 30 秒
149
ずつ何かあったら。満田さんから。
満田:
ここに参入みたいなこともあるのですが。私としては、中国ってやっぱりマーケ
ットとしては非常に大きいと思いますので。日本の企業、これはデベロッパーだ
けじゃなくて、皆さんがどんどん、どんどんと出て行っていただいて、1社でや
るのじゃなくてみんなで出て行って日本ブランドという、そういうものを構築で
きればと、いうふうに思っております。
村松: はい、ありがとうございます。はい、TOTO の林さん。
林:
はい。私どもはもう中国は大体完成形にありまして。次どうやって攻めるかって
いう形です。やはり日本政府に期待したところは、アセアンにおける日本ってな
んなのか。ビスタ、その辺のところに対して、どうやってわれわれが次攻めてい
くのか。日本って何っていうところをぜひ議論して、次の 100 年を構想していた
だきたいなと。あるプロジェクトに入るとか、そんなんじゃなくて。日本のって
何っていうところをしっかり見つけていただきたいな、いうふうに思います。
村松: はい、ありがとうございます。土谷さん。
土谷:
日本は今、すごい大きく変わろうとしていて。ポスト経済成長や、人口の縮小と
いうのがあるけども。それを縮小とか、減尐とかしてとらえるのじゃなくて、成
熟というふうにとらえて。成熟という意味で世界をリードする日本としてですね。
またそれを、一緒に組めるパートナーとして中国を選ぶと、いうような大きな価
値観の転換。大チャンスの時かなというふうに思っております。
村松: はい、ありがとうございます。松原さん。
松原:
とってもおもしろかったです。私もずっと中国におりまして。毎回やっぱりいろ
んな波があって、中国に日本人の人たちがたくさん来るなと思ったら、靖国の問
題があったり、SARS があったりいろんなことで波があって、その波がなかなか続
かないっていうふうなことがあったわけですが。逆にこの経産省さん、今回やら
れた波をわずかでもいいですから尐しずつ確实に効かせていくようなことになっ
てくことを希望したいと思います。
村松: はい、吉田さん。おもしろいこと言ってね。
150
吉田: おもしろいこと、すみません。言えないのですけど。何言うか忘れちゃいました。
企業も研究のいろんなレベルも日本はすごく高くて、いろんなものが点としてバ
ラバラとすごく集積はされているけど、集められていないってことだと思うので。
政府はできるとしたらそういうのを集めたり、ここにあるよということを指摘し
たりすることで、幸いちょっと取り上げ・・・、企業、ニュースなりに取り上げ
てもらえるかもしれないので。そういう意味でうちには知識はないので、知識の
ある人にここにいます、っていうのをやるっていうのをちょっと頑張っていきた
いと思います。
(了)
151
キャラクタービジネス オープンミニシンポジウム
(パネルディスカッション議事録)
日時 :2011 年 12 月 15 日 14:30~16:30
場所 :大手町サンケイプラザ
参加者:ファシリテーター
パネラー
数土 直志
久保 弥
篠田 項司
杉本 道俊
手塚 要
数土:
(敬称略)
はじめまして。数土直志といいます。普段は、アニメアニメというサイトを運営
していて、アニメとか漫画とか、そういったものの情報を配信しているんですけ
ども、なぜかこういう場所に出てきて、お話を皆さんから伺うという役割といた
だきました。まずこちらニコニコ動画でも实は中継されておりまして、インタラ
クティブなことができるということなのですが、事前に質問を用意しておりまし
て、そちらのほうの質問のアンケート、ニコニコで取りたいなと思っております。
出していただいてよろしいですか、質問のほう。
質問は、日本のキャラクターが海外へ展開するに最も重要なものは何ですかとい
うことを質問させていただいております。5つ選択肢、強力なキャラクターが必
要なのでしょうか。2番目が、お金が必要なんじゃないですか。3番目は、パー
トナーが必要なんじゃないですかと。4番目は、決断力のある人材が必要なんじ
ゃないでしょうか。5番目は、長い経験が实は必要なのかなという、ベテランが
いるかどうかということだと思います。言ってしまえば、これニコニコでもばば
っと並べて全部じゃんとかいう話が出ているのですけど、たぶん全部だとは思う
のですけど、あえて1つ選んでいただけるとすごく助かります。それをもとに展
開していきたいと思います。これはもう答えを出してもらっていいのですかね。
こちらに、あ、出ました。
答えは出してもらっていいですか。こんな感じですか。意外ですね。3番、信頼
できるパートナーが一番、46 パーセント、お金とか人材はあまり十分とは思われ
てないわけですね。キャラクターについて、キャラクターあってのものって感じ
なのかな。これをもとにでは尐し聞いていきたいと思います。先ほど最初、海外
の展開のキャラクターということで、杉本さんにお話を伺ったんですけれども、
实際、この結果を見て成功した理由というのは、やはり、すいません、一番多か
ったのなんでしたっけ。
152
杉本:
パートナーですね。
数土:
パートナーなのでしょうか。スピンマスターさんですよね。
杉本:
そうですね。自分もどれか1つ選べと言われたら、たぶんパートナーだろうなと
いうふうには思っていたのですけど、しいて2つ目選ばせていただければ、やっ
ぱり強いキャラクター、言葉の使い方は別にしても、たぶん自分もその2つかな
と、たぶん皆さんが選ばれているパートナーっていうものの中に、当然そのパー
トナーっていうのはお金を持っているパートナーっていうのが入っていると自分
も思ったので、やっぱりそこですね。さっきも冒頭にもお話しさせていただいた
のですけど、爆丸に限らず、やっぱりうちグローバル企業ではないので、グロー
バルで成功するためには、今、なんでしたっけ、信頼のおけるって書いてあると
思うのですけど、信頼はもちろんなのですけど、やっぱり力を持ったパートナー
ですよね。仮にアニメを作るのであれば、アニメを放送するまで持ち込めるお金
と力を持ち、そこにトイを合わせて売るのであれば、店頭までそれを置ける力の
持ったパートナーっていうのがたぶん自分だったら選びますね。
数土:
ちょっと疑問に思ったのは、クール・ジャパンっていったときに、日本を売り出
しますっていったときに、日本1人でやらないのとか、あるいは、日本1人でで
きないのってそういった疑問はあると思うのですが、やっぱりパートナーってい
うのは不可欠なものなのですか。
杉本:
必ずしもパートナーがなければ海外に出ていけないというふうには思わないです
けど、これもやっぱりビジネスモデルというか、じゃあ今回のこれについては日
本で一番収益をあげよう。だから、日本の人たちをターゲットにコンテンツ、そ
ういったものを作り込んでそこで収益を上げて、おまけと言ったらおかしいです
けど、追加の利益がほかの国から出ればいいっていう耂えであれば、別のやり方
があると思います。そのときは当然その国々の最強のメディアネットワークとや
らずとも、今、インターネットも日本以外もかなり発達していますから、やり方
は組めると思います。
数土:
もう1つ思ったのは、パートナーの組み方がセガトイズさんは玩具会社、スピン
マスターさんも玩具会社、玩具会社同士のパートナーシップなのですけども、实
はそこのところをずらして、例えば、玩具会社と映像会社、そういったパートナ
ーも耂えられるのですけど、玩具、玩具で結びついたっていうのはどういったこ
とですか。
153
杉本:
うちも先ほど言いましたように、トイズってついているので、スピンマスターも
玩具会社っていわれるのですけど、例えば、マテルとかハズブロさんも、ハズブ
ロさんなんか今特にそうですけど、彼らももううちは、玩具メーカーではありま
せんって明確に会長が言っているのですね。彼らが目指すのがディズニーですっ
て今言い始めているのですよ。彼らはもう今、局もハズブロハブっていう自分た
ちのチャンネルを持って、トランスフォーマーも今、映画でさんざんやっていま
すけど、そういったコンテンツ事業も自分たちでやるような業態変化を起こそう
としている。スピンマスターについても、そこまでではないんですけど、やっぱ
り彼らもかなり先ほど言いましたカートゥーンネットワークみたいなところとの
提携レベルでの事業連携っていうのを非常に重視してやっているので、いわゆる
うちもそうなのですけど、ものとしてのおもちゃを売ってくだけの会社っていう
意識はあまりなく、ただその玩具が冒頭に書いたように、やっぱり为導であるっ
ていうのは間違いないのですけど、そういう形で玩具をメインに組んでいる。映
像だけになったら、当然うちの会社よりもお得意なところはいっぱいあると思い
ますし、そこではたぶん勝負できないと思って、それでたまたまそういうところ
で組んでいるっていうことですね。
数土:
手塚さんも海外のほう長いので、海外のカードビジネスのインフラについてこれ
からどういうふうに展開してくっていうのはあるのですか。あるいは、パートナ
ーシップを探していくとか、そういうことは耂えているのですか。
手塚:
ブシロードの話をさせていただきますと、海外には今アジアを中心にすでに展開
をしております。展開の方法なのですけども、これ先ほど私が申し上げたインフ
ラが大事ですよねというところをそのままやっているのですけども、やり方とし
ては日本と同じような遊べる環境も含めて、例えば、大会も含めてやっていきま
しょうというインフラを整えましょう。ただし、それに関して、やはり現地のパ
ートナー、信頼のおけるパートナーが必要不可欠というところで、現在、シンガ
ポールにブシロードは法人が、子会社が1つあるのですけども、その法人を立ち
上げる前から商品のほうを輸出という形でシンガポールで販売をしているのです
けども、その販売にあたっては現地のパートナーシップの会社とやっております。
なので、やはりインフラを作るにしても、カードゲームにしても、ほかの商品に
しても、現地、その国ごとに強力な信頼できるパートナーが必要不可欠ではない
かというところですね。
数土:
そのときインフラっていうと、ちょっと一言でいうと、大きな話になるんですけ
154
ど、具体的なインフラっていうのは、例えば、それは小売店なのか、テレビ放映
なのか、あるいは。
手塚:
平たく言っちゃうと全部ですよね、ほんとに。テレビ放映がいらないものもある
のですよ。テレビ放映がいらない、例えば、上向きのブシロードで言うところの
深夜アニメ中心になっちゃうのですけども、そういうアニメーションをハイエン
ド向けのアニメーションを中心としたカードゲームに関しては、別にテレビ放映
はいらないと。ないならば、配信も含めてユーザーさん見ていただけるので、自
分たちから取りに行っていただけるので、ただ例えば今展開しているバンガード
という小学生を対象としたカードゲームがあるのですけども、こちらに関しては、
テレビ放映を今シンガポールでやっております。これはなぜかというと、やはり
お子さんがインターネットで自分から見に行く環境はまだまだ整っておりません
し、今後もそういう状況になるかまだ分からないのですけども、やはりお子様向
けにはテレビが重要であろうというところで、インフラとしてはテレビがありま
すと。なので、その商品によって、対象によってインフラというのはどこまでを
指すかっていうのは変わってくるというふうに思っております。
数土:
テレビ放映っていうのは、ある意味難しいけれども、大きなリールで放送局と結
ぶとできるものだと思うのですけれども、小売店っていうのは、1個1個確保し
ていくとかなり大変な仕事に見えるのですけど、それっていうのはどういうふう
にやられているのですか。
手塚:
やはり1個1個確保って、問屋さんとかもちろんありますけども、でもこれ日本
国内もそうなのですけど、結構細かくまわります。小売店さん、理由はいくつか
あるのですけども、大きく言って2つありまして、1つは自分たちで見に行くと
見えてくるのですね。カードゲームのお実さんであるとか、お店さんが何を求め
ているのか。そのカードゲームのインフラって先ほど私言いましたけども、初め
てそういうものがあるのだと思った方もいらっしゃると思うのですけども、非常
に歴史も浅いです。なので、これからも変えていかなくてはいけないというとこ
ろで耂えると、自分たちでまず見に行かなくてはいけないというところが1点、
あとこれは自分たちが行くとカードゲームショップさんも喜んでいただけるので
すよね。どうしてもそんなに大きく展開しているお店が多い業界ではないですか
ら、そこにやはりメーカーの人間が行くというところで連帯感も生まれますので、
一緒に業界盛り上げていこうと。これは海外であろうとも、日本であろうとも、
そのビジネスが人と人とで成り立っている以上は必要不可欠なことではないかと
いうふうに耂えております。
155
数土:
今、海外の話を中心にしてきたのですけれども、流通っていう意味では、日本で
も非常に玩具の流通っていうのは分かりにくいってされています。そのなかでタ
カラトミーさん、非常に大きな会社で、キャラクターが広く流通させているので
すけど、そもそも日本のキャラクター玩具っていうのは、どういうふうに流れて
いくのですか。
久保:
タカラトミーアーツの久保でございます。よろしくお願いいたします。今、お話
ありました、实はタカラトミーっていうのは、タカラとトミーが合併しました会
社なものですから、年間で扱っているアイテム数っていうのが、3,000~4,000 ぐ
らいあるのですね。それくらいがなくなっていったり、また増えたりっていうこ
となので、かなりアイテムをどうやって流通に入れるかっていうのが、非常に大
きい問題だなというふうに思っているのですね。
1つは、売り場が今实はすごく尐なくなってきているっていうのがすごく大きい
問題で、これ欲しいから買いに行こうって言ったら、トイザらスさんまでかなり
遠くまで行かなきゃ売ってないということが結構あるので、まず物理的にお実様
がすぐ買いに行きやすいところにあると、それが一番だなというふうに思ってい
ます。ただ、あともう1つ思っていますのが、きょうキャラクターということな
ので、特にそうだと思うのですけども、別にキャラクターのやつっていうのはお
もちゃだけではないので、例えば、アパレルであったり雑貨であったり、これが
好きなのだと思う子どもたちはみんな欲しいです。ところが、それをいろんなと
ころに行かないと手に入らないっていうのは、实はこれとってもお実様にとって
は不便な話だなっていつも思っています。ですから、一番いいのは1つのキャラ
クターで全部が買えるようなそういう売り場があったら、これは絶対楽しいし、
お実様も喜ぶし、売り上げもたぶん上がるだろうなというふうな思いはすごくあ
りますけども、そういったような展開をしていただいているところも、いくつか
出てきましたし、そういうのがこれから大きいポイントになるのではないかなと
いうふうには思っております。
数土:
今、キャラクターをまとめて展開っていうのがありましたが、それはどういうリ
ールというか。
久保:
例えばですけれども、タカラトミーでこないだから女の子のアニメーション1つ
やっているのですが、实はこれは何からできたかっていうと、筐体ってあります
ね、100 円入れると、よくおもちゃ屋さんで遊べるようなカードが出てくる。あの
筐体の中で1つキャラクターを作ったのですけども、そこからスタートしたテレ
156
ビのアニメーションを1本やっておりまして、なかなかおしゃれなアニメーショ
ンなので、おもちゃ以外にもグループ会社でティンカーベルというアパレルの会
社がありますから、そこでアパレルを作って、それからアクセサリー作り、そう
いったような生活まわりの雑貨等も作っています。そうしまして、ティンカーベ
ルさんのお店の中に筐体も置くし、アパレルも置くし、おもちゃも置きというこ
とをやると、とっても子どもたちの受けがいいですね。ですから、そういうよう
な仕組みっていうのが、今後もっともっと増えていくとおもしろいのではと思い
ますね。
数土:
逆に言うと、そういった日本のわりと複雑だといわれる、流通の中で問題点って
いうのはあるのでしょうか。
久保:
やっぱりそこに業界の壁が結構ありますんで、玩具流通、文具流通さんですとか、
それからあとアパレル、全部違いますから、そこをどうやってキャラクター、1
つのコンテンツでまとめられるかっていうのは、それは課題だと思いますけど。
数土:
続きまして、篠田さんにお伺いしたいのですけども、实は私、海外のこともお伺
いしようと思っていまして、海外のこと1つお伺いしたいのは、今、アニメとか
漫画とかコンテンツ自体が非常に海外で売りにくいと言われている時代になって
いて、じゃあ何を売るかっていったときに、フィギュアだとかアパレルだとかキ
ャラクターをそういったもので売っていって、利益を回収するのがいいのではな
いかということを言われる方が非常に多いのですが、そのなかで壽屋さん、非常
にフィギュアに特化したとか強みのある会社なのですけれども、海外というもの
はどういうふうに耂えられているのですか。
篠田:
先ほどお話にもありましたが、従来は日本で売れればいいやということで収益を
して、海外で売れるぶんはプラスαで非常にありがたいっていう耂え方をしてい
ましたが、確かにフィギュアとか地域にもよりますが、非常に売れることもあり
ます。ただやっぱりどこまでいっても日本の業界でいっても、われわれってもっ
とニッチなホビーっていうような海外だとコレクタルマーケットって呼ばれるよ
うなほんとに専門職が強いところで、なかなか大手のスーパーマーケットに入る
とかおもちゃ屋さんのチェーンに入る部類ではありません。ただ、とはいえば、
ニッチなままだとどうしても頭打ちになっちゃいまして、海外でもニッチなもの
ということで、やっぱり社内でも数年前から課題にあがっていまして、最近です
と会社の資本力も弱いっていう部分もあるので、コンテンツから作りだして流行
らせてというのは、なかなか難しいと。なので、最近だと海外であるスターウォ
157
ーズだとかマーベルだとか、もともと現地の人がとってももう十分慣れ親しんで
いるもので、とはいえ日本で得意な部分がありますので、そういった版権を取ら
せてもらって、日本的な味付けをさせてもらって、逆輸入的な形で、コンテンツ
としては日本のものをかついでいけないのですけど、日本らしさっていう部分だ
けはつけて、向こうのほうで販売させていただくと。そうすると、同じキャラク
ターを模したフィギュアを作っているわけでもないですので、過当な競争に巻き
込まれなくて済みます。あとは、日本のものが欲しいっていうなかで、当然コン
テンツが欲しいっていう方が大半ですけど、日本らしさが欲しいとか、日本のも
のが欲しいという方もいらっしゃるので、そういった日本のアニメっぽくアレン
ジしたりとかデフォルメしたりとか浮世絵っぽくしたりとか、そういった部分で
尐し差別化してお実さんに認知度広げるようなそういった形で今を戦うようにし
ていますね。
数土:
先ほど手塚さんの講演ですと、海外のいわゆるニッチな部分っていうのは、あま
りインフラがそろっていないということですけど、实際に壽屋さんはどういうふ
うに商品を売られているのですか、今。
篠田:
現状は、当然北米とかですと、ダイヤモンドさんですとか、そういうコレクター
に強い、ある程度の通販的な流通経路を持っているとかあるんですけど、やっぱ
り日本よりも価格帯で入る、入らないだとか、仕様の問題ですよね。ハズブロの
ような仕様でうちが作っていいかっていうと、権利の段階から取れませんので、
店頭の流通っていう部分じゃ非常に全然入れてない部分があると思います。なの
で、現状だと現地での通販だとか、あとは直接売る部分もありますし、あとは地
域的な広さもあって日本のように営業マンが全国まわれるわけではないので、日
本であんまりないですけど、セールスレプって呼ばれるような代理人を何人か信
頼できる人間を見つけて、遠方のほうの店舗の維持であったりとか新商品の紹介
だったりとかっていうのをやっておくような、わりと泥臭い感じでやっているの
が現状ですね。
数土:
杉本さんにもお伺いしていいですか。爆丸は逆にいうと、トイザらスですとかタ
ーゲットみたいな、ああいう大きな場所に卸していくのですか。あれはどういう
ふうにやられているのですか。
杉本:
北米ですね。北米に関しては、スピンマスターのテリトリーなので、彼らがやっ
ているんですけど、ご存じかと思いますけど、北米は完全にウォルマート、トイ
ザらス、K マートあたりで、玩具メーカーでいくと 80 パーセント近いシェアまで
158
終わってしまうので、彼らにとっての重要なお実っていうのは、ほんとにその3
社に絞られていて、今、日本もだいぶ減りましたけど、いろんな人が入ってくる
ような展示会形式ではなくて、完全にその3社のために自分の社内で時期を決め
て展示会的なのをその方だけのためにやるっていうことをやっているんですね。
そこでトップ商談で決まると、自動的に全米のそういうお店にはきっちり入って
いくという形になり、あと入ったあとは当然そこでの売り上げによって先ほども
久保さんおっしゃれたように、アイテム数が減ったり増えたりというのはやって
いくわけですけど、基本は非常にシンプルです。そこは。
数土:
篠田さんに話を戻させてください。今は海外の話だったのですけれども、国内は
どうなのですか。壽屋さんみたいに非常にニッチな場所というときには、それは
またタカラトミーさんみたいな大きな場所とは異なった流通があるものなのでし
ょうか。
篠田:
現状はホビーの流通っていうとこで、非常に限られていまして、リアルな店舗で
も正直数百店舗あれば、プラモデルとかも含めて、いいのが現状だと思います。
現状、フィギュアとかに関しても、Amazon を代表するようなウェブのほうにかな
りシフトしていますので、正直、業界全体のパイっていう見方をすれば、ここ数
年はもう頭打ちで、正直、海外に出ていきたいっていう意欲は当然あるのですけ
ど、出て行かざるを得ないっていうのが現状の部分もあります。
数土:
实際にシェアとかで耂えると、例えば、大規模な小売店、専門店って割っていく
と、だいたいどんな感じになるのでしょう。
篠田:
小売店自体が、そんなにホビーを扱っていて大きくなれているところがないので、
正直そこはちょっと詳しく言えないのですが、ウェブかリアルの店舗かっていえ
ば、正直過半数はウェブのほうでエンドユーザーも買いやすいですし、シフトし
ちゃったと思います。
数土:
ウェブのときは实物を見なくても、皆さん分かってやっぱり買われるものですか。
篠田:
そうですね。实際实物は見えないので、当然クオリティの高い写真をいっぱい用
意するとかありますが、あとはレビューですよね。Amazon にあるような、という
ことなので、変な話、普通の商品であれば、予約をいっぱい頂ければいっぱい出
荷できるっていうのが従来だったのですけど、最近ですと、発売前に、当然先に
手に入れられる方がいらっしゃるので、レビューの部分で正直いいレビューがつ
159
かないとかってなると、その商品自体のキャンセルがいっぱい起きたりとか、同
じシリーズであれば、次回作から非常に技術が下がったりというところで、お実
さんはクチコミ的な部分、同じ作品が好きとかいう部分で、趣味を同じくしてい
る人のレビューを非常に参耂にして買われているみたいですね。
数土:
久保さんにもお伺いしてもよろしいですか。一般的な玩具、例えば、ワンピース
とかプリキュアですとかポケモンですとか、ああいったものに関しては、今だい
たいどんな割合って耂えていいんですか。例えば、ウェブ、百貨店、小売店、専
門店みたいな。
久保:
細かな数字はちょっとあとであれしますけど、ウェブは確かに伸びていますね。
というのは、例えば、クリスマスって顕著だなっていつも思うのですが、例えば
子どもにこれ買ってと、サンタさんからお願いされるわけですよ。それをなんと
か手に入れないとお父さんとして面目立たないので、そういうときにその小売店
さん全部まわっていくという買い方もあるのですが、やっぱりウェブで探して、
12 月 24 日までに必着という買い方っていうのはあるので、特にクリスマスはウェ
ブを皆さんご活用されていますね。
数土:
先ほど手塚さんの海外での体験っていうのであったのですが、海外でキャラクタ
ーグッズを売っておられたはずですが、それについてはどうでしたか。
手塚:
海外でキャラクターグッズっていうのをなんにするかっていうので、また変わっ
てきちゃうのですが、例えば、サンリオさんのキティちゃんとかなんかは、もう
アメリカでも普通にショップがありましたし、もちろんポケモンとかはトイザら
ス、ウォルマート、そのへんにてずらっと並んでいます。今、数土さんが聞かれ
ているキャラクターグッズっていうのが、いわゆる秋葉原的なものだと思うので
すが。
数土:
そうですね。
手塚:
私の場合はそれを中心に販売しておりましたが、正直言って売る場所もなければ、
そもそもアメリカで作ってないから高い。日本から仮にライセンスを頂いて作っ
たとしても高かったし、あとは一部許諾を得て日本で作っているものも許諾を得
てアメリカで売ったこともありましたけども、それでもやっぱ高いので売れると
ころというのがまずそもそもない。小売店が、いわゆる専門店がまずない。あと
通販サイトも一部やっていますが、通販サイトの場合は、いい意味でも悪い意味
160
でも流通が発達してしまったので、日本から普通に買えてしまう。あとはイベン
トですね。イベントでは、結構比較的売れるほうですが、イベントも年に大きい
イベントが北米だと3つ4つぐらいですかね。そこで1回あたり当時3万ドル、
4万ドルっていうふうに売ったりはできますが、でもそれでも正直言って、じゃ
あビジネスとして成立するかっていうと厳しかったですね。
結構多いのは、個人でやられている方はそれなりに頑張っていますよね。これは
いいか悪いかって言っちゃうと、ほんとグレーゾーンですけども、個人で日本で
秋葉原で購入してアメリカに持っていき、コンベンションで売り歩いていると。
コストも自分のコストだけですし、そういう意味だと、そういうマーケット、マ
ーケットと呼んでいいのか分かりませんが、それぐらいは維持できるというとこ
ろです。
数土:
实は、このシンポジウムやる前に、篠田さんと尐し話させていただいたときに、
壽屋さんが实はアメリカ、アジア、ヨーロッパ、非常にあちこちのイベントでブ
ースを出して売られていて、中国でもやられているという話はされていて、中国
でも売れますかと言ったら、そこそこ売れるっていう話はありましたが、なぜ売
れるのですか。
篠田:
中国の件に限って言えばなんですけど、正直、自分たちが出て時は、まずメーカ
ーの人が来ている、本物を売っているということで。いかに日頃から海賊版が横
行しているとか、あと本物そもそも見たことがないとか、もっとひどいのは海賊
版しか流通してないので海賊版が本物だと思っていたとか、そういった部分で非
常にうちとしては残念なありがたがられ方ですけど、非常にお実さん集まってく
れて売れると。ただ、さっき手塚さんおっしゃったみたいに、とはいえ、それイ
ベントでたまに来るから大盛況になるのであって、逆の言い方をすると、通常的
に売れる店舗とかそういったものが常駐していないので、結構あんまりいい状況
じゃないと思います。
なので、日本に来て、弊社秋葉原のほうに直営店も出していたのですが、やっぱ
り非常にたくさん買ってくださる。でもやっぱ現地のほうでは流通がしっかり整
ってないとか、あと日本のもので本物ですよって保証がされている。お墨付きが
ついている、そういった売り場だとか、商品のなんかマークがあるとかあるわけ
でもないというので、非常に整ってなくて、またあとのほうでお話出ると思うの
ですが、弊社としてもどんどんリアルな店舗含めて出ていきたいのですが、なか
なか小さい会社がただ出て行く、もしくはメーカー、メーカーがタイミング合わ
せずにただ出てくっていうのは、非常にカントリーリスクが高くて、そういった
部分、ほんとに国で忚援してほしいなと思う部分です。
161
数土:
逆に言うと、本物であれば売れる保証が欲しいということは、日本の本物に対す
るクオリティの評価は高いって耂えていいですか。
篠田:
そうですね。非常に高いですね。先ほどのまた手塚さんのお話にもあったんです
けど、ほんとに欲しくてお金がある人は、日本から出荷されているっていう部分
を頼りに海外から通販で申し込まれる方もいっぱいいらっしゃるので、本物がや
っぱり欲しいっていう、そういう意識的なステージっていうのでしょうか、経済
発展とともに、はどんどんすごいスピードで上がってきてらっしゃるので、最終
的にはやっぱり海賊版駆逐するには、本物をちゃんと皆さんの目に触れるときに
リ流通させるっていうことしかたぶんできないと思うので、要望は非常に強いと
思います。
数土:
クオリティっていう意味では、タカラトミーさんのトランスフォーマーが非常に
すごいことになっていますが、あれは日本でも作っていて、現地でも作っていて、
なおかつ日本から輸出しているって、そこの競争力っていうのは何があるのでし
ょう。
篠田:
基本的には開発力だと思っているのですが、トランスフォーマーは 28 年ぐらい前
からスタートしました。最初、もともとはミクロマンっていう商品がありまして、
そのなかに変形するロボットがあって、同じようにダイアクロンっていうシリー
ズがありまして、そのなかに変形するロボットがあって、それをそこからだから
28 年間ずっと作っていまして、ずっとそれに携わっている開発マンっているんで
すよ、实は。変形一筋みたいな職人がいますよね。ですから、その彼らのノウハ
ウっていうのはやっぱり絶大なものがありまして、ほんとに宝みたいなものです、
ほんとにね。彼らの名言で、物体であればロボットに変形できないものはありま
せんっていうふうな、水とかはできませんが、形があるものは全部ロボットにし
ますっていうふうな、そういうのを言う人間が何人かやっぱりいまして、それと
開発力っていうのを基本的には一番大事だろうというふうには思っていま。
それとあともう1つ言うと、トランスフォーマーはせっかくそのキャラクターの
話なので、もともとやっぱり車からロボット、ロボットから車っていうの、われ
われが耂えたのは、最初はまずそれだけですね。いわゆるギミックって言われる
ものでした。それをアメリカのハズブロっていうおもちゃ会社が、これおもしろ
いということで、これお話をつけましょうと、これにキャラクターを設定しまし
ょうということで、いわゆるキャラクターにしていったわけですね。そういった
ところで、キャラクターっていうビジネスとそれからおもちゃっていうビジネス
162
がそこで融合していって、とても大きくなっていて、いい分かりやすい例だと思
いますけども、そこにはやっぱり基本的にはさっき言ったすごく熱意を持ってあ
たっている開発マンっていうのはやっぱりいるなというところですかね。
数土:
ちょうど今、トランスフォーマーの話に触れたので、話を尐し変えていくと、メ
ディア展開についてお伺いしたいのですが、トランスフォーマー、映画をやると
ばばんとブームアップして、映画が半年ぐらい過ぎると尐しおさまるのかなみた
いなところがあって、キャラクターとか玩具を売るときに、メディア展開、非常
に大事です。アニメ、漫画、玩具、連動しましょうということがありますが、で
も实をいうとタカラトミーさんの中には非常に定番のものがあって、リカちゃん
ですとかトミカですとか、プラレールですか、ああいったところは、そんなにア
ニメや漫画をやるという感じではないですが、それはなぜですか。
久保:
これはそれぞれ一長一短がやっぱりあるというふうに思っておりまして、例えば、
メディアをテレビ提供するとか、それから映画をやるとかっていったもので売る
商品は瞬発力ってやっぱりものすごいとものがあると思っています。それで基本
的にはおもちゃは何かあこがれるものがあって、それを手にしたいっていうこと
で買うわけなので、まずあこがれのストーリーなり物なりを皆さんにお知らせし
なきゃいけないわけですね。子どもたちなら子どもたちに。そういったときに、
一番分かりやすいのは、やっぱりテレビであったり映画であったりということな
ので、確かにリスク、投資のリスクもありますが、そのぶんそういった世界観を
広く早く大きい規模で伝えるには非常に有効なではあります。同じようなことが、
例えば、全くテレビも何もやらずにやるとなると、例えば売り場でやりましょう
ということになると、結構それは自社がものすごく労力を使わなきゃいけないと
いうところもありますので、お金を払うぶんだけテレビを使ってやるっていうの
は、繰り返しですけども、払うぶんだけの効力がきちんとあるということですね。
あとさっきオリジナルって話がありましたけど、リカちゃんとかトミカとかプラ
レールとか長くやっておりますけども、あれもいつも同じようなものをやってい
るように見えるかもしれないですが、結構いろいろ手を変え品を変えいろんなキ
ャンペーンとかやっています。ですから、そういうふうにして飽きられないよう
に、子どもたちがいつもやっぱり新しいねっていうふうに思ってもらうように、
いつも新しく切り口を変えていって売り場でも変わっていくし、商品そのものも
変えていくといったようなことはずっとやっていますので、テレビがいいか、オ
リジナルがいいかっていうのは、それはちょっと次元が違う話なのでなんとも言
えませんが、それぞれに一長一短のメディアの効力を使っているというふうなこ
とかなというふうに思います。
163
数土:
杉本さんにもお伺いしてよろしいですか。先ほど出た爆丸、アニメから始まって、
海外ではアニメと玩具がちょうどほぼ同時に出るみたいな形だったと思いますが、
今も新シリーズを次々にやっていくと。これはアニメというのは、やっぱ永遠に
続けなければいけないものなのでしょうか。
杉本:
今、久保さんがおっしゃられたように、やっぱりアニメをやるってことは、かな
り巨額な費用とリスクが伴うので、玩具メーカーの立場でいくと、なくて売れる
のが一番いい。そのほうがいいので、そのほうがいいのですけど、あと強いて言
えば、あとアニメをどういう子どもにとってのエンターテイメントとして作るか
っていうのを明確に決めて作らないと意味ないと思っています。特に、玩具メー
カーはアニメ会社ではないので、要は、例えばじゃあ原作あろうとなかろうと、
ワンピースとかハンターハンターみたいなとにかくアニメとしておもしろいのを
作ろうというだけでやっているのであれば、それはアニメ会社さんに任せる話で、
やっぱりトイっていうのがどうしても自分たちのメインのビジネスにあるので、
私もさっきトイニメーションっていうのは言ったのですが、もう部内でも明確に
しているのは、両方一緒に作り込むけど、仮にどっちかがなくても絶対子どもに
受けて売れるものを作らなきゃ駄目だってやっています。だから、どっちかの片
手間はやっぱり駄目なので、さっき言ったように、トイは子どもにとって、例え
ば爆丸の場合は、アクションカードゲームっていうコンセプトでやっていますが、
仮にアニメがなくてもちょっとカードゲーム業界さんに近いですが、ゲームとし
て十分ずっと定番で続いていけるように作ろうと、アニメのほうに関しては、ど
っちかっていうと、ゲーム要素よりも、毎年毎年、先ほどのトランスフォーマー
にもありましたけど、やっぱり子どもから見ると、今年のテーマの新しいギミッ
クって毎年作っています。それをうまくアニメの中に入れ込んでやっていこうっ
ていうそういう役割を明確に決めているので、基本的には爆丸はそういう形でや
っていきたいっていうのが1つと、あとやっぱり日本はかなり先ほどの手塚さん
のインフラの話でもあったように、そういうインフラっていうのがかなりあるか
ら、仮にそのアニメがなくなっても、ゲームとして定着していると、ずっとわり
といける可能性高いと思うんですけど、ほかの国は先ほどもお話にあったように、
特にアメリカとかあとヨーロッパとかはそういうのがなかなか難しいので、アニ
メがなくなるイコールこのビジネス終わりねっていう、やっぱ向こうのパートナ
ーがそういうふうに取られてしまうところが多いので、そのへんのバランスを耂
えて、あとはコストパフォーマンスで判断するっていう形だと思います。
数土:
今尐し思ったのは、新たなギミックを次々に出していくって話だったんですけど、
164
尐し話変えてしまってもいいですか。代替わりっていうのはあると思います。お
もちゃである以上、それをするときにアニメっていうのは、やっぱり重要なもの
ですか。ここでちょっとキャラクターを変えると、年齢が2~3歳下がるかなと
かそういったことは耂えられますか。
杉本:
ごめんなさい。代替わりっていいますのは。世代ってことですか。
数土:
世代ですね。
杉本:
爆丸は、今4年、4シリーズ目に入っていて、基本これアメリカ側からの強い为
張で、ポケモンのサトシのように育てたいと、爆丸はダンっていうのが初代から
为人公ですが、僕らは途中で3年やると、だいたいホビー世代って次に移ってく
ので、極端に言うと、为人公も全部変えたいという話をしましたが、ここたぶん
やっぱりアジア系と欧米系の人の感覚のすごく違いで、日本人ってすごく新しも
の好きじゃないですか。どんどん変えたがる。でもやっぱりアメリカとかヨーロ
ッパの人って車でもそうですけど、わりとずっと守ろうとする感覚が強く、なの
で今一緒にやっているのですが、ただそういう爆丸に関してでも、今おっしゃら
れたように、やっぱり世代を変えるときって当然子どもたちのライフスタイルだ
とか指向性もだいぶ変わってきているし、やっぱそれが必要だと思います。
別に、爆丸はさっき言ったダンが大事で、彼が全部引っ張っているとかそういう
アニメではないので、基本的な爆丸の私がさっき言ったアクションカードゲーム
っていうトイ側のコンセプトとそれのよさをいかすようなアニメの構造さえ崩さ
なければ、こっち側のアニメをどんどん新しい登場人物と新しいタイプの世界展
開に変えてくっていうのは間違いじゃないと思います。
数土:
篠田さんにお伺いしたいのですが、今はわりとライセンスを提供するお二方の話
だったと思いますが、ライセンスを受ける側としては、やはりキャラクターの旪
とかそういったものは意識するものですか。
篠田:
そうですね。弊社の中で作っているものでも、いろいろ種類はありますが、深夜
帯に放送されているようなアニメだいとか、美尐女っぽいキャラクターとか、こ
れはほんとに旪が短いので、ほんとに売れる時期って2カ月、3カ月とか、その
ときに商品がいいのが出せるかどうかにかかっていると、非常に卖発、卖発の取
り組みになっているというのもありますし、あとはプラモデルの類ですとか、1
回始めると1つのタイトルで数年間やりますが、そういった部分はほんとにいか
に下地があるかとか、十分調べてやってかないと、なかなか難しいです。あと先
165
ほどの玩具と同じように、どうせ作るファンの方なので、毎回ちゃんと商品がよ
くなっているなとか、そういった部分のおもしろさだとか、組み立てている途中
とかでもなんかおもしろさがあるとか、できたときの爽快感があるかとか、わり
と商品のパッケージからじゃ分かんないようなところをわりと社内のそういうの
得意な人間が取り組むような段階です。
弊社、海外のほうでもやっていますが、当然、海外のほうでメディアのほうに手
をつけるようなステージにはおりませんので、当然数十年現地のほうで認知度が
あって、スターウォーズとかバットマンとか向こうだったら古典っていわれるか
もしれませんけど、正直名前だけだったら全員知っているといった部分にある程
度取り組ませていただいて、ただ同じカテゴリーの商品作っても、やっぱりアク
ションフィギア見たことあるとか、あとは出来がいいとかっていう、ほんのささ
いな違いしか出せないので、現状だと今までにないスターウォーズのライトセー
バーでお箸を作り、カテゴリーごと新しくして、新しくしたので、そのカテゴリ
ーはすでに空いていますっていう部分で取得させてもらって流通させるっていう
ような苦肉の策ではありますが、そういったちょっと2~3パターンの取り組み
方をしています。
数土:
先ほどの深夜帯の旪の短いものっていうのがあるという話ですが、あれをもし商
品を開発するとすると、テレビと同時に出そうとすると、かなり前から見なけれ
ばいけないですけど、そのときにメディア、アニメはやっている、漫画も展開し
ている、なんかほかのウェブみたいなこともやっている、そういったメディア展
開っていうのは、やっぱ魅力的に映るとか条件になってきますか。
篠田:
そうですね。ただ、アニメ化されているときに、商品化決意すると、弊社の場合
ですと、半年、1年とか、あとで商品が出ちゃうので、それこそ無意味になって
しまうので、ただ最近、アニメでいきなり新作っていうのがなかなか保守的にな
っている部分もあって、どうしても優良な原作だったりとか、その前の小説だっ
たりとか、あと弊社の場合、わりと重要にしているのが、売り上げ規模としては
たいしたことないですが、直営店のほうはある程度拠点で2~3店舗は常にやる
ようにしていまして、どちらかというと店頭でお実さんがいろいろ話しされてい
ます。こんな話ししているとか、当然、うちみたいなものが作っているハードな
フィギュアとか立体物って、わりと趣味のほうでかなり最後のほうに買うものな
ので、当然、その前段階ではグッズ買ったりとか、漫画買ったりとかされている
ので、どちらかというと、直営店のほうを次、どういう商品開発しようかってい
うニーズとか情報集めっていうものに使わせてもらって、じゃあ例えば来年の夏
やるアニメがいいのではという部分ですね。ただ、ある程度の博打要素は0パー
166
セントに当然できないので、ある程度自分たちでそのへんで確証持ったうえでこ
れをやろうかとか、そういった決断をしてやっています。
数土:
定番のものっていうのは、わりとコンスタントに売れるものですか。どのくらい
の。
篠田:
定番のものですか。
数土:
はい。それこそバットマンのような。
篠田:
そうですね。一度はまれば長く入りますので、リピートっていうような売り方で、
徐々に流通を広げるとか、あと先ほどもありましたけど、当然大手さんのウォル
マートとか、そういった部分に物を流すっていうのはなかなか不可能なので、弊
社なんかだと、そういったイベントに出るたびに、お実さんのほうに、例えばフ
ェイスブック、うちのほうのいいねが押してもらえるような、直接情報とかメー
ルとか流せるような環境を作るためにイベントとか出させてもらって、直接情報
を与えてもらって、流通としてどうしてもウェブがあるので、そちらで買っても
らうような、それでなんとか定番化してリピートが得られるようにというのはサ
イクルでやっています。
数土:
手塚さん、ブシロードの話でよろしいですか。ブシロードはある意味自分たちで
もコンテンツを作りだして、かつ、ライセンスを受ける側でもありますが、ライ
センスを受けるときに、やはりかなりニッチなものを受けていますが、その基準
はなんですか。
手塚:
受ける、取りに行くっていう基準は、もちろんこれ受けるかなとか、あとはカー
ドゲームに合っているかなというのはありますが、逆に卸してもらう。
数土:
ごめんなさい。受けるっていうのは、ライセンスをもらうっていう話です。
手塚:
ですよね。ライセンスをもらう条件って結構生々しい話なので、あれですけど、
普通にアニメだったら製作委員会さんの判断がありますけども、もちろん例えば
それが製作委員会のほうにプラスになる条件があれば受けやすいってことですよ
ね。
数土:
今、自分たちでアニメ作り始めていますが、それはなぜでしょうお。
167
手塚:
まずブシロードっていう会社は、今2つアニメ、オリジナルのものを展開してい
ます。1つはミルキィホームズという作品がございます。もう1つがカードファ
イトヴァンガードというものがございまして、まずミルキィホームズに関しては、
これはあまりカードゲーム関係なくて、弊社の代表の木谷高明がそういう作品を
作りたかったというところでやっているものでございます。
もう1つのカードファイトヴァンガードというのは、これはカードゲームを普及
させるものです。平たく言ってしまうと、ほんとに遊戯王と同じようなものです
ね。遊戯王の場合は、もとは漫画があり、それがアニメになりそれが商品化とい
うふうになりましたけども、先ほど久保さんがおっしゃられているような物を玩
具としての物なのか、それともキャラクターとしての物なのかというところで言
うと、カードゲームというのは、それだけで言うと玩具であるとは思いますが、
それをキャラクター化して販売しようというコンセプトものがカードファイトヴ
ァンガードというものになります。これに関しては、ただライセンスを受ける、
受けないとまた全く別軸の話になっちゃうので、あくまでも商品を販売するため
のツールとしてアニメーションを作りましたっていうところですね。
数土:
すいません。いろいろとりとめなく質問してしまって、大変申し訳ないですけど、
最後の質問、一番ヘビーで重い質問を皆さんにさせてください。皆さん、それぞ
れ非常に成功されている会社だと思いますが、これからさらに成功させるために
は何が必要ですかっていうようなことが1点と、そういうビジネスをしていくな
かで政府の役割って何かあるのか、政府に対する要望みたいなものがあったらよ
ろしくお願いしたいのですが、久保さんからお願いしてよろしいですか。
久保:
会社というよりは、キャラクタートータルということで耂えていって、なおかつ、
わりとグローバルでと、そういうことですよね。
数土:
そうですね。
久保:
まず、日本のさっき杉本さんもおっしゃっていましたコンテンツっていうか、そ
ういうアイディアですか、企画というのは、たぶんほんとに私もトップだろうと
思います。先日、とある出版社さんが一般の方にいわゆるライトノベルス、ライ
センスの募集をもらっていて、それからイラストの募集を受けていて、年間で
6,000 点ぐらい集まってくるというのですね。それだけ日本のクリエイターのピラ
ミッドが大きい。どれもこれもものすごくおもしろいし、よく耂えているアイデ
ィアがありますので、こんなに耂えてる国ないだろうなと思うぐらいなので、た
168
ぶんほんとにコンテンツの企画力っていうのは、たぶん日本がトップだろうなと。
あともう1つ、ほかの国と違うなと思うのは、いわゆる雑誌、漫画っていうのが、
ああいう発表の場があり、それからとにかく大量消費されるコンテンツが出るメ
ディアを持っている。そこにいろんな原作が入っているわけですから、だからそ
れを耂えるとこんなにいろんなアイディアが毎週毎週出ている国はない。それを
思うとやっぱり日本のコンテンツの企画力っていうのはたぶんトップだろうと、
これは間違いないと思います。じゃあ、それが次にどうなればいいんだろうかっ
ていうそのコンテンツを使ってビジネスをしようと思う、その気迫みたいなもの
ではないかなというふうに思いますが、そうすると、プロデューサーの方がやっ
ぱりちょっとほかのアメリカ、ハリウッドに比べると尐ないというのは一番の問
題で、クリエイターの方は結構自分で、これはおもしろい小説、あるいは、これ
はいい漫画だって書けちゃうところで、わりと満足しているようなところがあっ
て、秋葉原で人気が出ればそれで OK みたいなところもちょっとあるのではないか
なと。だから、それを使ってもっともっと世界で仕事しましょうというふうに、
どうやってもう1つステップアップしていくかって、そういう耂え方を持った方
が、どれぐらい出てくるかっていうことがたぶんアメリカ、ヨーロッパとビジネ
スしていくにいったら、一番ポイントだろうということで、そういうプロデュー
ス感覚を磨くっていうのが、たぶん一番のこれからの成長のポイントだというふ
うに思います。
だから、そういうことを耂えると、そういうことを果たして学校が育てられるの
か、国がどういうような援助をできるのかっていうのをちょっと非常に分かりに
くいところであります。個人のこれは気持ちの問題っていうのがありますんで、
ただ間違いないのは、国がこういうことを援助しておりますということを表明す
ることとても大事なことだなと思っていて、いろんな国でそういうコンテンツの
発表会とかあると、国がお金出していろんな展示会をかなりバックアップしてい
る。日本ですと、心あるプロダクションさんが自費で出てやっていることなので、
そういったところは、もっともっと日本はコンテンツ立国ですということを国も
耂えていますということを意識的に表明するっていうことがとても大事かなとい
うふうには思いますね。
数土:
ちょっとお伺いしたいのですが、海外で玩具ショー、トイフェアみたいなのがな
んかたくさんありますが、やはり日本の存在感っていうのは、わりと小さいので
しょうか。市場に出ている商品に比べて。
久保:
これは杉本さんのほうが詳しいですかね。
169
数土:
海外のトイフェアですとか玩具ショーのなかで日本の存在感っていうのは大きい
のか小さいのかというか。
杉本:
今、海外の玩具ショーで大きいのというと、たぶん北米のニューヨークの2月の
トイフェアと、あと1月の香港のトイフェアと、あと2月ニュールンベルクって
ドイツである、その3つだと思いますが、正直、日本の企業のプレゼンスってい
うのはほとんど、一部の方が出展されているのは分かっていますけど、全体の中
で見ると残念ながら、それほどではないと思います。
数土:
それはなぜでしょう。
杉本:
先ほど篠田さんの話にもありましたように、やっぱり自費自力で、そこにブース
を構えて出ていくだけのやっぱりまだお金ももちろんそうですけど、人的パワー
っていうのがなかなか作れないでいる。それ久保さんの話にもつながりますけど、
そういうとこだと思いますけど、それよりも現地のパートナーとパートナーシッ
プを組んでという方が、今の日本人の機動力だと現实的かなっていうところだと
思いますけど。
数土:
久保さんの話のなかで言ったら、もう1点、プロデュースできる人材が欲しいと
いうことです。理想的な人材っていうのは、どういった形なのでしょうか。
久保:
ビジネスの国によって多尐耂え方が違いますし、中国がとても大きな市場だって
いうのが分かっていながら、中国のビジネスの難しさっていうのも、なんとなく
肌感覚で分かってきている、それをどうやって突破していくのかっていうのは、
やっぱりある程度お金も必要ですけど、そういう経験知がとても必要だというふ
うに思っていますので、時間はきっとかかるだろうなと思います。あとは、大前
提としては英語力だと思いますけど、やっぱり。
数土:
篠田さんにも同じ質問で、これから成功していくには、何が必要か。国の支援は
何が必要か。必要かっていうか、国に対する要望とかですね。
篠田:
弊社の場合だと、要望っていう部分が、どちらかというと、助けてほしいという
部分が多いのですが、先ほどの中国の市場とかこれから伸びていると、弊社に限
らず同じぐらいの規模の会社もみんな出てきたいって言っているけど、1つはど
うやってやったらいいか分からないっていう面が、当然情報面もありますが、も
う1つは弊社とかでも商品流通させているのですが、かなり一瞬で海賊版といわ
170
れるような模倣品が流通しまして、よく企業努力してるなと変に思うほどよく流
通しまして、価格もうちの5分の1とのころで、頑張るなとびっくりして、正直、
その工場教えてくれないかと言いたくなるぐらいですけど、だからやっぱりそう
いった面では放ってはおけないので、当然いろんなとこを通じて向こうの政府を
初めいろんなところに取り締まってほしいとか、あとは訴訟的な部分でちょっと
でもそういう摘発がありましたっていう情報が流せるように、自力で努力したり
とかっていうのはありますが、やっぱり人的にも時間的にも金銭的にも膨大なカ
ロリーを使います。じゃあ長い時間をかけて勝ったからといって、じゃあ何が得
られるのかとなったら、たぶん疲れただけになります。
となると、やっぱりある程度相当大きな規模がないと、一瞬にしても流通でも作
れない限りは、かなりやけどして疲弊してっちゃうと、もっとよくないのは、そ
ういった部分があるっていうのが、当然版元さんとかメディアのコンテンツを作
っているほうにも耳に入るので、海賊版が作られるのはちょっとやだねっていう
ことになって、また理解が薄くなって、また権利取りづらくなってかついでいく
武器も尐なくなっちゃうっていう悪循環が始まるので、海賊版、駆逐することは
できないと思いますが、そういった訴訟したときの費用だとか、そういった部分
は結構保険でカバーできるものはないので、そういったものをちょっと政府の働
きかけで作ってもらうとか、もしくは代理でまとめてそういった部分全部引き受
けてやっときますよとか、そういった面で助けてもらえると非常にありがたいっ
ていうのが1つと、あともう1つ要望としては、弊社なんかだと、どちらかとい
うと、小売店を作るとか、多くはないですけど、小さい拠点を作って情報を発信
するとか、お実さんに直接渡せるようにしたいとかいう部分があるので、現状だ
と、過去で例えば上海地区とかですと、みんなお店出したいですけどどこに出し
ていいか分かんないとか、1店舗目作ったけど、ほかのみんなが徒党を組んで、
だいぶ離れた繁華街に作られたらどうしようとか、そもそもカントリーリスクが
あって、代理人を何人も通すので、随分高くなっているとかいう部分で非常に出
づらい部分もあるので、仮の話ですけど、一等地にビル1本借りてくださって、
そこに日本のメーカーやっているところだけちゃんと集めて、何かしらそういう
日本の本物が売っているとこですみたいな、クールジャパンの集積地みたいな場
所を作ってくださると、たぶん相当受けるのではないかなと、しいては本物を皆
さん見る機会が常設でできますので、やっぱ海賊版より本物のほうがいいなとか、
お金ちゃんと使えるようになったから、本物が欲しいなとか、というふうにちょ
っと意識のほうが変わってくるような流れになるのではと思うので、そういった
物的な支援のほうも可能なのであればお願いしたいなとは思います。
数土:
それは例えばジャパンエキスポですとかアニメエキスポみたいな海外でやってる
171
イベントの常設化みたいなイメージですか。
篠田:
それでもいいですね。やはり建物とか売り場とかお実さんがいつだって好きな時
間に来られる場所っていう面での常設化ができればベストだと思います。
数土:
そういったときに、やはり同じように海外に出ていく企業の間同士での情報のや
り取りっていうのは、实際行っているのでしょうか。
篠田:
ありますね。わりと狭い業界なので、ホビーのほう。当然、お話はしますが、現
地のお実さんもやっぱ1社だけの商品で全然満足できませんし、やっぱそういっ
た集積したものが当然欲しいと思っている部分があります。なので、各メーカー
さんがタイミング合わせて出てかないといけませんし、あとは小売りっていう部
分でも、やっぱり商品の権利の許諾で、日本であれば仕入れて売れば、たぶん何
十メーカーの商品でも明日からでも扱えると思いますが、小売店がすべて代理店、
版権交渉するわけにもいかないので、ある程度メーカーが集まらないと、ちゃん
と製造権も販売権も持っているところが集まらないと、どうしてもやっぱ出づら
いと、当然、並行的な商品の流し方はグレーすぎますし、きちんと版権許諾して
肩代わりやっていますので、そういったことできないと、現状だともう正直、日
本で買い付けて、それこそ、北米のお話でもありましたけど、売っている人が一
番スピーディで儲かるのではと思います。
数土:
もう1つ聞いていいですか。集積するっていったときに、例えば、玩具、フィギ
ュア、そこの中にファッションとか、いろんなものをまとめて並べたほうが効果
は上がるとか。
篠田:
そうですね。現状、当然ホビーの近くに玩具もありますし、カードゲームなんか
もアジアでも似たようなお店も尐しずつ真似してできたりもしていますし、あと
は海外でイベントやるときには、必ずそういう和朋っぽいもの出たりとか、ゴス
ロリっぽいものやっていたりとか、あとは日本の原宿系の雑誌、そのまま持って
きて、飛ぶように売れていたりとかってありますので、やっぱり日本の文化って
いうことで非常に高い評価してくださっているので、それこそビル1本でいろん
なジャンルあれば、とっても喜ばれるのではと思います。
数土:
おもしろいアイディアですね。杉本さんにも同じ質問お願いします。
杉本:
私も先ほどの久保さんとまず同じところが1つやっぱり人なんですね。今、自分
172
は北米だけじゃなくて、中国の人たちとか韓国の人たちとか、いろんな仕事やっ
ているのですが、一番感じるのがやっぱり中国なんか今アメリカ人の子どもより
も中国人の子どものほうが英語の授業時間が長いぐらい英語に力入れていますし、
韓国も皆さんご存じの通り人に派遣から含めて移住から含めて国策としてそうい
うグローバル人員を育てるっていうのをやっているなか、たぶん日本って今まで
自国のマーケット内でかなりやってこられてしまったのが災いなのかなと思うの
ですが、やっぱり韓国、中国の今の若い貪欲なやつと比べても、海外に出てくパ
ワーっていうのが非常に弱いなっていうのは感じてしまいます。だから、たぶん
企業としては、一番そういうところにお金を使うのがなかなかメーカーって難し
いので、そういうところサポートいただけるとありがたいですし、あと自分がた
またま今小学校の子どもがいてすごく感じるのが、最近女の人は比較的たくまし
い人が多いのですが、男の子が残念ながらなかなか弱い子が増えてきてしまって
おり、小学校の教育とか見ているとこれじゃ根性のあるやつ育たないだろうなと
ちょっと校長先生に一言言いたいぐらいの感じがありますが、それはちょっと極
端ですけど、でもたぶんほんとにそういうところからやっていかないと、だった
ら中国の人を採用したほうがいいのではとなります。だから、そこの人を育てる
っていう部分での援助をいただければというのと、あとは、今、中国もなんとか
入ろうと思っていますが、さっきの権利の件ももちろん含めて、あとやっぱりみ
んな頭を悩ましているのが、メディアで放送をやろうとしたときに、中国国外産
のアニメはゴールデンタイムでは流せないっていうどうしてもバリアがあって、
あのへんはほんとに国絡みで一緒に動いていただかないと難しいなというので、
そういうところをサポートいただければと、あと何回かこういうことよく聞かれ
てこうしてほしいっていうことを言っているのですが、なかなかメーカーのスピ
ードと政府の方のスピードが合わず、いつになったら聞いてもらえる の
かなというのがあるので、経済産業省の三原さんも後ろに座ってらっしゃること
なので、意見を聞いていただけたら早く实行に移していただきたいと、以上でご
ざいます。
数土:
ありがとうございます。手塚さん、どうでしょうか。
手塚:
先ほどの講演でも言ったように、インフラ作らないと駄目ですよねというところ
で、そういう意味だと、篠田さんがおっしゃった集積地というのももちろん必要
ですし、さらには私、アメリカにいるときにいろいろと小売店さんとかと話した
りして、リトル秋葉原的なものがあったらいいのにみたいなこと言ったのですけ
ども、結局のところそれだけでも駄目です。メディアもそうですし、メディアっ
ていうのは、映像であれば映像を見せる、きちんと見せる、それは現地のパート
173
ナーが重要ですけど、例えば現地の局に任せちゃいましょうってなっちゃうと、
結局のところそれは無理です。
僕らがやりたいことっていうのと、向こうがやりたいことっていうのは乖離し合
うので、それ耂えるとやっぱひっくるめてやらなきゃ無理だよねと、例えば、他
業種ももちろんそうですけども、例えば、物を売るだけじゃなくて、情報を渡す
ところもそうですし、あとは例えばカードゲームで言ったら、お店をメンテナン
スしてちゃんとそういうカードゲームで遊べる場所にしましょうであるとか、そ
ういったものも含めてやらなくてはいけないと、ただ、これは正直、企業卖体だ
ともちろん難しいですし、あとは先ほど篠田さんもおっしゃったように、業界狭
いので、結構みんな情報交換します。でも、狭い業界で手つなぐだけだと足りな
い。じゃあどうなるかって言ったら、やっぱいろんなところの物を売る会社、情
報を作る会社、情報を流す会社、いろんなところとやっていかなくてはいけない。
それは、じゃあ国が取りまとめるのか、それとも国がお金を出してくれるのかと
いうところで、協力していただけると、現实味を帯びるのではないかなと思いま
す。どうしても会社だと、企業だと、2年か3年で結果を出せやって話になるの
ですが、僕、最後に言いましたけども、文化の輸出って耂えた場合、2年とか3
年で結果出せっていっても無理なので、かといってイベントに行きました。イベ
ントで文化に触れてもらいましょうっていっても、結局それもスポット的で終わ
ってしまうので、もっと本腰入れてやるのであれば、他業種を取りまとめて旗を
振るような役目を国には期待をいたします。
数土:
他業種っていうのは具体的にどういった範囲が入るのでしょうか。
手塚:
どうですかね。結構なんでもありなんじゃないかなと思いますけど、例えば、ア
ニメ好きな人って、海外でアニメファンって日本のお菓子好きです。例えば、某
アニメでポッキー的なものが出ていたら、ポッキーはアニメスナックだって、僕、
アメリカで言われたことがあります。あとはコアラのマーチとかなんか好きです
よね。若い人が多いからっていうのもあると思うのですが、そういう日本のアニ
メ好きだから日本のそういう若い人が食べているお菓子も好きみたいなのもあっ
たりもするので、結構なんでもありなんじゃないですかね、篠田さんおっしゃっ
たようにファッションとかも和朋もそうだし、ゴスロリとかあれ日本独特ですか
らね。そういうのも含めてなんでもありだと思います。
数土:
よく日本でまとまっていこうっていう話ってコンテンツ関係の話でも出ることは
ありますが、そのときよく出るのは、そのなかに大手の放送局とか広告代理店が
入ったときに、その存在があまりにも大きすぎてなかなか難しいのかなと思った
174
りもします。そういうことはあんまり感じないのでしょうか。
手塚:
どうだろう。大きな、もちろんあるといえばあるし、最近はあんまりないですよ
ね。尐なくともいわゆるマニア系のニッチな業界で言っちゃうと、結構映像だっ
たら映像を見るっていう方法が今回 Ustream さんとかニコニコ動画さんに来ても
らっていますけども、そういった部分でも枠は広がっていますから、そういう意
味でいうと、もちろん障害はいくつもあるでしょうけども、今後、そういうこと
を言っている余地もなくなるほど日本が疲弊していくので、海外に打って出るっ
ていうのは絶対だと思いますよ。
数土:
またちょっと久保さんに話戻させていただいていいですか。大きな会社というと、
タカラトミーさん、非常に大きな会社で、今、海外にすごい勢いで出ていってい
るんですけども、逆に言うと、大きな会社になると、自分たちでできるから、そ
ういう連合組む必要はないよって、そういう耂え方もあるような気はするんです
けども。
久保:
そんなことはないですよ。むしろ逆で、例えば、うちにリカちゃんというキャラ
クターがあります。リカちゃんを使って、いろんな方がビジネスをしていただき
たいなというふうに思います。例えば、どっか染めもの屋さんがありますと、う
ちにはこういういい技術がありますから、ぜひこれで一緒にやりましょうという
ふうなことはとってもうれしいわけですよね。ですから、おそらく日本中にいろ
んな会社さんがいろんな技術を持ってらっしゃるなと、そういったときに、日本
のコンテンツっていうのがものすごく有効活用できるというふうに思うんですね。
ですから、ちっちゃいけどもうちしかできない。
よくこないだ宇宙ロケットの小説がとても今売れていますけども、あんなふうに
日本中にいろいろな特異性のある技術、あるいは伝統であったりとか、それから
耂え方であったりとか、そういうところをご一緒できるようなことができると、
ほんとおもしろいなと思うので、そういうのは確かにそういう会社様にしてみる
と、なかなかやりにくいと思います。リカちゃんでできるのかなとか、それから
バンダイさんが何かでできるかなという場合でも、ちょっと電話1本するってい
うのはすごくやりづらいと思うので、そういうようなコンテンツの活用について
のそういうネットワークですかね。そういうのがあったら、もしかしたらものす
ごくおもしろいのかなというふうな気はいたしますね。
あと今ちょっといいですか。業種業態で枠はあまりないのではというお話があり
ましたが、私もほんとにそう思っておりまして、实はおもちゃではないですけど
も、こないだタカラトミーアーツっていう会社でエステーさんと一緒に放射線の
175
測定器というやつを今作っておりまして、来年発売するのですが、そういうよう
なものが売れる世の中っていうのはいい世の中と全然思わないですけども、ただ、
そういうようなことまでできる技術っていうのは日本中にありますし、そういう
のをコーディネートするっていうのはおそらくコンテンツを扱っている会社の皆
さんは、ものすごくそれ得意だと思います。そういうネットワークを使って日本
中の技術をいろいろな形で発露していくっていうのは、たぶんとってもおもしろ
いし、日本ができるポイントはそこじゃないかなというふうな気はしますね。だ
から、情報の集約化とそういうネットワーク化っていうのはとても大事じゃない
かなというふうに思いますね。
数土:
分かりました。ありがとうございます。時間もそろそろ質問の時間な感じになっ
てきました。ちょっと政府の役割っていうのを僕なりにまとめてみると、ネット
ワーク化、企業と企業をつなぐ、そういったところに大きな役割が必要なのかな
というのを思いました。あともう1つは、中国のできれば日本が参入できるよう
にしたいとか、海賊版にどうにかしてほしいとか、ちょっと1企業では手に余る
問題、そういったものについて政府の力を借りられればいいのではないかという
話だったのではないかと思います。
質疑忚答
数土:
ここで一度話を終わらせていただきまして、質疑忚答にしたいと思います。最初、
第1問ですけれども、ニコニコ動画のほうからですかね、1つ頂いています。ア
ニメーターなどの現場の人が報われるようなキャラクタービジネスの仕組みが欲
しいですということなのですが、これはどなたに答えてもらったらいいかな。難
しいですね。杉本さん、どうですか。
杉本:
それは日本のアニメーターの方の給与面の話なのでしょうか。
数土:
たぶんそうだと思いますね。
杉本:
そういうニュアンスですよね。
数土:
アニメーターさんに限らないと思いますけど、現場の方がなかなかやっぱり報わ
れないっていうのは、皆さん非常に感じられていると思いますので、そういった
ことではないかと思います。
176
杉本:
どの程度のお話ししていいのか、ちょっと分かりませんが、私もアメリカでアニ
メを作る、日本で作る、あと韓国、中国っていろいろ動くのですけど、たぶんア
メリカが圧倒的にそういうアニメーションを製作する方々の給料というか、そう
いうのは高いですね。たぶん今は2番目がやっぱ日本で、ほぼ近くなってきたの
が韓国。中国はまだまだ半分から3分の1ぐらいでいけるっていう状況になって
きていると思いますが、ただやっぱり国自体の物価とかそういうのが全然日本は
違うので、おそらくそういった意味で私も今も爆丸とかもやっていますけど、そ
の金額までは知りませんけど、そんなにいい待遇ではないというのは伺っており、
これどうですかね、私はちょっと玩具業界側からすると、そこを改善するのは難
しいですけど、逆にその政府の方の援助の部分なのかとも思いますけども、やっ
ぱりすごく好きでやっている方々が多いので、おもしろいからあんまりいい環境
じゃなくても、頑張ってやってしまうっていう状況があると思うので、ただ、先
ほどから言われているように、日本のアニメーター、クリエイターの方々のクオ
リティっていうのは世界ピカいちだと思うので、やっぱり当たり前ですけど、そ
ういう方々が楽しくもっときちんと適切な待遇をしてもらって働ける環境を作っ
ていかないと逆にやっぱりもう最後の日本の誇れるところがやっぱり尻すぼみし
てってしまうと思うので、まさに今のそのコメントは、お答えはちょっとできな
いですけど、やっぱり耂えていくべき中期的な大きな1つの課題だと思います。
手塚:
アニメの本数ってすごい増えていますけども、結局、アニメーターさんが仕事を
しているなかで、アニメの本数増えていますよと、アニメーターさんも实のとこ
ろ増えていますよと、あとは韓国であったり、中国であったりにも仕事がいって
いますよというところで、簡卖に言っちゃうと、現状はひとりあたりの収入って
いうのは上がる構造ではないですよね。じゃあどうなればいいかって言ったら、
作っているアニメが売れるようになる。アニメーターさんにいいお給料というか、
今、ほんとに安いお給料になってしまっているので、それをちゃんと適正な金額
を払えるぐらいのビジネスの規模になれば当たり前ですけど、払うことはできま
す。
じゃあ、これはどうすればいいのかといえば、アニメが売れるしかないねと、そ
れは例えば映像だけじゃなくて、玩具とかも含めて周辺のマーチャン、配信音楽、
その他もろもろ含めて、アニメビジネスが大きくならなければならないだろうと。
そうなるとどうなるのかって言ったら、日本なのか海外なのかというところにな
ると思うんですね。なので、日本のアニメがもっと海外に出てく環境になって、
きちんとそれでお金がまわればおのずとアニメーターさんにも反映される仕組み
が作れるんではないかというふうに思います。
177
数土:
僕は司会であんまり言ってはいけないのかもしれないですけど、おそらくよいも
のが評価されるっていう環境ができれば、よいものを作るためにはよい人材が欲
しい、よい人材を集めるためには高いお金を出さなければいけない。そういうル
ープがまわるようになっていかなければいけないって、口で言うのは簡卖ですけ
ども、たぶんそこを尐なくとも目指さないとそこには到達できないのかなってい
う気はします。会場から質問をお願いしたいと思います。質問あるでしょうか。
できましたら、質問のときに、所属とお名前を差し支えなければいただければ助
かります。どなたでもほんとに簡卖なことでよろしいのでお願いします。
オノ:
ライターのオノと申します。大変興味深いお話しいただきまして、ありがとうご
ざいました。1点、皆さんにぜひお知恵をお借りしたいのですが、なかなかこう
いう機会があっても企業の取り組みと政府の取り組みで温度差がありすぎて、ま
たスピード感が違いすぎてうまくいかないというふうなお話がありました。その
ためにどうするか、何が問題なのかなという話を僕なりに耂えると、1つにはや
はり役所の人間が数年卖位で担当者が替わるという問題があるのではというふう
に思います。
担当者が替わっても一定のプロジェクトを継続していくための組織化があれば、
当然、その問題は解決できるのかなと思っているのですが、この 10 年間、なかな
かそういうふうな体制になっていないと。どうやったらそういうふうな組織化が
できるか。ぜひ一言ずつ民間企業の立場から、役所の皆さんにコメント頂ければ
と思います。
数土:
よろしくお願いします。
久保:
そうですね。まさにそう思います。半年ぐらいしてまたさよならっていうのが結
構多いこともありますので、勝手な個人的なアイディアですけど、やっぱり基本
的にはこういうような業界が好きだ、あるいは、この業界で働いてみたいってい
う方がご担当していただくっていうのが、たぶん一番いいのではないかなという
ふうに思います。
仕事だからやっていますということではなくて、ある程度やっぱり基本的な知識
や、そういった素養であったりとかっていうのがあった方のほうがおそらく業界
の皆さんと話しするときも、たぶんプラスになると思いますので、そういったよ
うなそこは人事施策によるのでしょうけどが、そういった方々とご一緒に、お役
所の中にもそういった方々のチームを作って、一緒にできたらたぶんおもしろく
進むのではないかなというふうに思います。
178
篠田:
自分のほうも同じく当然好きでやっている人間が多い業界なので、なかなかその
へんで温度差が出てしまうっていうのはたぶんにあるので、当然そういった部分
をやりたいっていう人に担当してほしいっていうのが当然あります。あと質問の
なかでご指摘があったように、人が替わるって部分、当然それはスピード感にも
影響してきますし、もっと悪い言い方すれば自分のいる間の部分がある程度約束
されればという弊害も出てくるので、ほんとに九時亓時のオンタイム以外でも付
き合ってもらえるような熱意のある人がある程度長期で関わってくれるといいん
じゃないかなと思います。
杉本:
加えさせていただきまして、今回、私たち自分たちの会社から名前背負って、背
負ってじゃないですけど、出てきているわけで、今回、経済産業省の方にもここ
に一緒に出られたらどうですかと、私も言いました。別に私たち講演者ではない
ので、普通のサラリーマンですから、やっぱり会社っていう人もいなければ、役
所っていう人もいないわけで、結局誰かが根性持って引っ張っていくしかないの
で、今回、先ほど私、経済産業省の三原さんって名前言っちゃいましたけど、三
原さんはこういうことが好きで自分から交渉されて、この部署に来られたってい
うのは实は聞きました。なので、私としては三原さんに頑張っていただくという
ことで、そういうことを地道に、三原さんが自分の意思で残れるかどうか私も分
かりませんけど、そういうことをやっぱり人としてやっていくということだと思
いますね。
手塚:
皆さんおっしゃっていることがすべてだと思います。三原さんのお名前が出てい
ますけれども、三原さんだけが頑張るのではなく、通常の会社だったら、自分が
やっていること、やっぱり下に引き継ぐとか、あとは例えば同僚でもいいし、先
輩、上司、人を巻き込んでやる熱がすごい大切ではないかと思っています。せっ
かく三原さんという好きでその部署に来た人がいるので、もしかしたら何年かし
たら、もしかしたら半年かもしれないですけども、異動してしまう可能性がある
かもしれませんが、熱を持った人間を残していただきたいというふうに思います。
そうすれば、継続することもできますし、民間の企業を巻き込んだ何かというの
ができるのではないかと思います。よろしくお願いします。
バーマン: ライセンス業界団体 LIMA ジャパンのバーマンと申します。お世話になります。き
ょうお話を聞ける機会がありまして、とても有意義な話をありがとうございまし
た。基本的に民間と政府と組んでいろいろしていくっていうことで、いずれ政府
側で予算とか削減される可能性がある場合、やっぱり基本的に民間中心プラス政
府っていう形でないと、継続性の存続性が尐なくなると思いますね。長く存続さ
179
せるためには、やっぱり利益を出せるモデルに注視しとかないとうまくいかない
と思います。そのなかで、例えば LIMA の場合は、ライセンシングショーとかいろ
いろ为催していまして、現在、クールジャパンということで関東経済局の協力で
ジャパンパビリオン、ライセンシングショーに出て、これは BtoB の取り組みです
ね。もちろん BtoC の取り組み、例えばジャパンエキスポとか、そのへんも大事な
んですけども、やっぱり根本的に BtoB でアピールして、ライセンシー増やしてそ
うするグッズも増やせる。そういうふう育て方が有効的だと思いますので、ぜひ
もっと例え国のほうでそのライセンスショーに出展するにあたって、補助金とか
援助金とかあったほうがお金の有効的な使い方と思いますし、仕分けの対象にも
なりにくい工夫だと思います。よろしくお願いいたします。
数土:
ありがとうございます。今、民間がきちんとした利益のできる組織みたいなもの
を作るというアイディアだったと思うのですが、例えば玩具ですと、玩具業界さ
ん、しかもおもちゃショーをやっておられますけど、あれというのはどういうふ
うに機能されているのでしょうか。
久保:
玩具業界、日本のおもちゃメーカーほとんど参加しておりまして、それに年に1
回ですけども、あの大きいイベントやっておりまして、それには海外からのお実
様もいらっしゃいますし、海外の出展者も、特にアジアの方々が結構いらっしゃ
いますね。1つおもちゃのこういう、おもちゃだけではありませんが、こういう
ようなコンベンションですかね、コンベンションっていうのは、私2つ意味があ
ると思っていまして、1つは当然企業間のコミュニケーションっていうのが1つ、
あともう1つは、たぶんこっちのほうが大事かもしれないなと思いますが、その
業界が社会に対してニュースを発信する場所であるというふうな気がします。だ
から、そのときに、例えば文具でしたら、今年の文具はこういうようなことが話
題ですっていうことを社会にアプローチできる場ですので、コンベンションはぜ
ひそういったような活用の仕方っていうのはすごく有効ではないかなと。ただ、
おもちゃショーのほうも年に1回今年のおもちゃのトレンドはこうです、おもち
ゃ大賞っていうのはこれですっていうことを発表することによって、なるほど日
本のおもちゃ業界ってこういうことだねということを広く世界の皆さんに喧伝す
るというのが目的になっていますので、そういうようなことで各業種、業態の皆
さんのほうでコンベンションご利用いただくというのはあるのではというふうに
思います。
数土:
ほかに質問ありましたら、前から2番目の男性の方。
180
ミワ:
本日はありがとうございました。東京大学教養学部4年のミワと申します。先ほ
どのおもちゃとコンテンツの企画力、日本人の企画力はすごいっていう話にちょ
っと絡めてお伺いしたいのですが、僕、实は就職活動するときに、おもちゃ業界
を見てきて、各社まわらせていただいたのですが、おもちゃやコンテンツを輸出
する際に2つのパターンがあって、先ほどおっしゃっていたセガトイズさんだと、
爆丸を最初から海外と一緒に企画するというパターン、あとタカラトミー様とト
レインヒーローという作品を確か中国で作られていたと記憶していますけど、と
いうパターンと、最初から日本で作って、それで日本で売れたものを海外に輸出
する。例えば、ベイブレードであるとかっていうものと、あとすいません、3タ
イプですね。3タイプ目として、最初からアメリカで例えばトランスフォーマー
だと、一部のアニメーションは最初からアメリカで作って、それが日本でトラン
スフォーマーアニメとして確か放送されていたので、この3タイプがあるように
思ったのですが、今後、それらそれぞれデメリット、メリットがあると思います
が、デメリット、メリットを比較して、どのタイプが最もクールジャパンを推し
進めるうえで有効なのかなとちょっと思ったので、それについてお伺いさせてい
ただけないでしょうか。
久保:
いろんなパターンがあるというふうにありましがた、ベストなのは当たり前です
けども、1つのアニメが世界中で売れるっていうのがベストですね。同じ商品が
グローバルで、トータルで同じものが売れるというのがベストですので、これは
最終的な目標だと思いますけども、ケースバイケースですので、日本で火が付い
てそれがアメリカでいくっていうようなケースもありますし、最初からアメリカ
を想定してやるっていうのもあって、逆にアメリカで売れて日本に来るっていう
のももちろんあります。ですから、そのときそのとき、ケースバイケースで一概
に答えっていうのはありませんが、ベストはワンアニメーションがグローバルで
というのが当然のことながらベストですね。
数土:
これは杉本さんにもぜひお話を聞きたいです。
杉本:
今、久保さんがおっしゃったことに補足ですけど、海外で特に男の子向けと女の
子向けとプリスクール、比較的就学前の子の市場っていうのがやっぱり明確に分
かれていまして、日本の場合は、バンダイさんのプリキュアみたいなものですと
か、手前味噌になりますけど、小学校に入るとジュエルペットとか、あとたまご
っちとかありますけど、あのへんの女の子向けのテレビアニメビジネスの土壌っ
ていうのは、欧米はほとんどありません。そういうのを流している曲のスポット、
タイムスロットっていう、そういう時間帯もなく、なので女の子向けのアニメビ
181
ジネスだったら、ほぼアジアと一部のヨーロッパでしかいかないですし、中国な
んかも今いろいろやっていますが、ほぼ女の子向けは厳しいです。だから、全世
界、たぶん女の子の場合ってやっぱり指向性がエリアによって違うので、合わせ
なきゃいけないですけど、男の子って世界的にみんな卖純で共通でわりと同じコ
ンテンツでいける傾向が強いのと、やっぱり海外も女の子のおもちゃ離れってい
うのはすごい加速しています。どんどんファッションとか iPhone とかそういうデ
ジタルコンテンツとかに移っているので、一番さっき久保さんがおっしゃった全
世界を狙ってというのであれば、私は男の子向けがいいと思います。年齢でいく
と、幼稚園世代とあとは小学校世代、ただ、そこはみんな分かっていて、すごく
大手がみんな力を入れているところなので、やっぱり競争力も高いと、だから、
それはもう先ほどのケースバイケースだと思いますね。あとプリスクールも国に
よってやっぱり教育の耂え方だとか指向性がかなり違うので、わりと難しいと思
います。だから、そういうのも耂え合わせたうえでどういうケースを取るかって
いうのが一番重要だと思います。
久保:
ちょっとだけ今トランスフォーマーで思い出したのでうが、トランスフォーマー
のアニメーションって最初、实は日本で作られました。東映動画さんにお作りい
ただいて、いわゆる日本のアニメーションの形式でこれはアメリカで受けるのだ
ろうかと、でもアメリカででも受けました。今は逆になっていまして、トランス
アニメイテッドっていうのをこないだ放映したのですが、それはアメリカで作っ
たやつなので、われわれ日本人が見るといかにもアメリカっていう感じで、これ
日本で受けんのかなと思いつつ放映したのですが、子どもたち、特に男の子はそ
れほど違和感なく、アメリカのアニメーションっていうのを受ける。ということ
を耂えると、今杉本様が仰ってますけど、男の子は比較的ワールドワイドでいけ
る、確かにその通りですね。女の子はほんとに着るものだったり生活そのものが、
国によってやっぱりものすごく価値観が違ったり、あと色使いが違ったり、微妙
なところが随分と差があるのは事实ですね。
数土:
ほかに質問あるでしょうか。よろしくお願いします。そしたら、前から3番目の
男性の方。
アンドウ: ソフトバンクモバイルのアンドウと申します。きょうは非常に興味深いお話あり
がとうございました。2つほど質問があるのですが、まず1つはプロモーション
のメディアとしての耂え方ですけど、当然既存のメディアを今後も使っていくと
思うのですが、最近、力が出て来ているネット、特にフェイスブックを初めとし
たソーシャルネットワークサービスっていうのを今後どういうふうに使っていこ
182
うと耂えてらっしゃるのかっていうのが1つ。もう1つがその出口の1つにもあ
たりますけど、モバイルですね。モバイルの端末っていうのを卖なるディスプレ
ーとしてだけじゃなくて、そこに持っているカメラであったり、GPS であったりっ
ていう、そういう機能も含めて、どういうふうに既存のおもちゃなりなんなりと
連携させていこうとしているのか。ちょっと各社の戦略に紐づく部分なので、ど
こまでお話しいただけるか分からないんですけど、ちょっとお話聞けたらなと思
います。
数土:
これは四方に聞いたほうがいいですか。
アンドウ: お話しできる方だけで結構です。
数土:
手塚さんからぜひ。カードゲームは SNS だという社長がおられますので。
手塚:
そういう意味で、僕はそれに関しては、コメントする立場にないので、ごまかし
ていいですかね。広告宠伝でちょっと今、質問の为旨とは違いますが、今、指名
をされてしまったので、1つカードゲームはソーシャルだって、弊社の代表が言
っていますけども、弊社の代表が言っていることで、もう1つおもしろいことが
ありまして、駅の看板、非常に多くブシロードという会社は使っております。こ
れが JR の为要の都内の駅であるとか、私鉄も含めて都内でかなりやっているので
すけども、結構おもしろい効果がありまして、普通に駅に貼っているだけですが、
あれツイッターでみんなつぶやいてくれます。電車待っているときって携帯持っ
ているじゃないですか。テレビ放送とかだとさすがにやってくれないですよね。
テレビではやってくれるかな、まだ。雑誌とかだと、さすがに雑誌見て何々に載
っているとかやってくれないので、駅だとほんと写真も撮ってくれますからね。
新宿駅になんかあったよ、バンガードみたいなことをやってくれるので、非常に
アナログな媒体ではありますが、实はデジタルと連動することによって新しい効
果があるなというふうに、今、耂えております。すいません。質問の为旨とは違
いますが。
数土:
杉本さんはどうでしょうか。
杉本:
私、今、日本の事業も一緒にやっていますが、キャラクターに関して、メディア
として耂えたネット関係の映像配信的なものは、結構2年前くらいからチャレン
ジはしているのですが、やっぱり海外と比べると、私たちがターゲットとしてい
るのが高くても小学校の高学年ぐらいまでなので、まだまだやっぱりそこで流し
183
ても实際のターゲットが購買意欲に走るとこまで持っていくのが、日本で一番難
しいと感じております。これと、特に日本だけじゃなくて、ほかもそうですけど、
やっぱりメーカーが流通さんに対してプレゼンをするときにどこの民放で流れる
のってこれもう世界全部一緒に聞かれる質問で、そのときにやっぱりネットって
なったときに、それじゃあなっていうのがまだまだ根強いので、そこもなんとか
克朋しなきゃいけない。それでただし先ほど言われた携帯というか今でいうとス
マートフォンですけど、私も子どもと遊んでいて非常に感じているのが、スマー
トフォンで軽いソフトウェアでちょっと遊んできなさいよって、子どもに渡す需
要っていうのがものすごく増えていると思うので、今まではテレビアニメ、トイ、
あとしいて言えば DS とかの連携でエンターテインメント作ってきましたが、スマ
ートフォンはインターフェイスとしても幼児までいける非常におもしろいものだ
と思っていますので、スマートフォンを新しいエンターテインメントのエレメン
トにとらえたようなコンテンツづくりっていうのをさっきのトイニメーションじ
ゃないですけど、加えてやっていきたいというのを今構想で耂え始めています。
あと海外においては、特に先ほどからの中国においては、テレビアニメがほんと
に流せないので、その代わり映画とネットに関しては規制がかなりゆるいってい
うのがあるのと、中国の方ものすごくネットを使うので、そこでやっていけない
かっていうのを今検討しています。
杉本:
フェイスブックだと、弊社だと北米の話に限ってしまいますが、当然大きな流通
を持っているわけではないので、どちらかというと、発信する媒体というのは、
お実さんに助けてもらうような社員ではないけども、一緒に働いてもらえるよう
なというところで、弊社立体物作るので、当然立体物作る前に二次元の何かしら
のイラストなり絵があって、立体物作って発表して駄目って言われても非常に困
ります。完全に投資始まっていますので、なんで最近だとイラストの段階や、そ
れこそ鉛筆で描いたデッサンの段階だとかっていうものはある程度許可取ったう
えで、そういったフェイスブックであげさせてもらうと。
そうすると、特に欧米の方とっても日本人に比べてものすごく書き込みとか意見
を書いてくださるので、そこで数百っていう意見がひと晩で集まり、ちょっとし
た尐し一方的な企画会議みたいなものになって、それを踏まえたうえで当然商品
化進めさせてもらうと。もしよければ途中でも画像なんて配信させてもらうと、
当然お実さん自分の意見が反映されたと当然思ってくださる人もいますし、商品、
企画してから発表してからできあがるまで非常に長い業界なので、例えば、半年
前に発表して手にできるのが半年後とかがざらにあるので、興味が冷めちゃうこ
とがとってもあります。初めて見たときは買うぞって感じでしたが、いざ発売日
近くになると、ちょっとあんま興味ないみたいなことがあるので、そういった飽
184
きさせないようにとか、ある程度の熱量保ったままフェイスブック上とかでお実
さんと交流持ったまま発売日まで一緒に連れていくことができるというか、つい
てってもらえると、非常に熱量高く、販売まで結びつけられるという部分で、う
ちなんかだと、どっちかっていうと、体力不足の部分があるので、お実さんにそ
ういった意見面とか精度高める部分とか手伝ってもらうような形で、フェイスブ
ックとかツイッターとかっていうのは活用させてもらっています。
久保:
おもちゃは、ほんとに0歳から、例えば小学校2~3年ぐらいまでって想定する
と、購入者と使用者が違うっていう業種だと思っています。つまり自分のお金じ
ゃなくて、誰かに買ってもらうっていうケースがほとんどですね。そうすると、
買ってもだいたいそれはおじいちゃんであったり、おばあちゃんであったり、お
父さんお母さんであったりっていう方なので、そういう方々がどういう情報を持
ってやるかって、それ实はとても大事なポイントだなというふうに思っておりま
して、そういう意味では、さっき杉本さんが言っていました、まだ子どもたちは
残念ながらそういう環境下にないので、そういったところ子ども向けに発信して
もあまりまだまだ有効活用はないと、ただ、逆に言うとその購入者の方、お父さ
ん、お母さんの方々には、とても有効なメディアであるというふうに思います。
先ほど最初にクリスマスプレゼント、ネットで買うお父さんいますよと言ったの
は、まさにそういうところでありまして、何千種類とあるおもちゃのなかで、こ
れは一体今どこで売っているのかと、いくらなのかというので、なかなかこれは
やっぱり分からないと思います。ですから、そういうような購入者の方に対して
のサービスとしてのウェブネット関係というのはとても重要だということってい
うのは1つの側面。
もう1つは、そうは言ってもスマートフォンのこのロゴキーですね。これはやっ
ぱり子どもたち大好きですから、今、出始めですから、これがあと1年、2年し
たら、2歳、3歳の子は間違いなく、スマフォでやってくと思いますので、それ
を想定すると、遊びのなかにはそういうスマートフォン的なことを入れるってい
うのは、これは避けて通れないというふうに思いますので、これは絶対に入れて
いくことになろうかというふうに思います。ただ、おもちゃっていうのはあくま
で形があるもので、ウェブっていうのは情報ですから、そことどれくらいの価値
観、それぞれ高めていってですけども、おそらく融合していかないともったいな
いというふうに思います。スマフォだけじゃなくて、おもちゃだけじゃなくて、
2つ合わせて遊べるっていうのがきっとたぶんこれからのおもちゃじゃないかな
っていうのは試案ですけども、あります。
数土:
ほか質問ございますか。では、奥の男性の方、お願いします。
185
スズキ:
テレビ東京のスズキと申します。先ほどのディスカッションや講演の中でちょっ
と重なるかもしれないのですが、キャラクター輸出っていうのはたぶん日本の家
電とか衣料品とか普通の商品を輸出するのとは違って工夫が必要だと思うのです
が、そのへんの工夫というのを今どういう形でやっているのか、また、どうやっ
て工夫をしたらいいのかっていうのと重なると思うのですが、改めて伺いたいと
思います。よろしくお願いします。
数土:
これも四方お聞きしたほうがいいですか。久保さん、続けてで申し訳ないですけ
ど。
久保:
工夫というと、やっぱり現地の強いナンバーワンパートナーとどれだけタッグ組
めるかという、そこに尽きるかなと思います。現段階では。今ではやっぱりそう
いうふうに思いますね。
篠田:
先ほどの話と完全にかぶりますが、独自のコンテンツを持ってない会社なので、
いかに自分たちの得意な部分は譲らずに、日本的なアレンジができるかとか、海
外のコンテンツであっても、一度日本っぽい形を違うものにして、向こうで喜ん
でもらえるようなそういった二次元の段階から変えてしまうのですが、版元さん
にご理解いただいてやらせてもらうかということで尐し卖なる商品化とか立体化
とかじゃないふうにしてく。あとは、それでカテゴリーが取れるので、カテゴリ
ーが取れるっていうことは、商品が取れる。しいては、商品を売ることができる
というとこに結びつけられるようにするっていう部分が現状工夫しているポイン
トです。
杉本:
工夫といいますと、とにかく源流にさかのぼるっていうのが海外進出のポイント
だと思っていまして、もしアニメということに関していけば、先ほども言いまし
たけど、日本で作ったものを出すっていう感覚とも非常に難しく、結局、そのデ
ィズニーさんにしてもカートゥーンさんにしても、どこにしても最終的に日本の
アニメをやるかやらないかっていうのは、最初に編成の人が決めます。よっぽど
その事業的魅力があれば、次の手はありますが、彼らはお金をいくら積んでも関
係ないので、源流にさかのぼるイコールもし北米の、例えば、カートゥーンネッ
トワークでやろうというふうに決めるのであれば、極力、結局彼らも自分の思い
ですごく動く方々なので、いかにそういう方々がどういうアニメを望んでいて、
どういうのがおもしろいと思うのか。やっぱり違います。1話完結ものじゃない
といけないとか、キャラクターデザインも全然違うし、笑いのポイントも全然違
186
うし。だから、そういうのを理解したうえで企画段階からこの人に売るというぐ
らいのところまでさかのぼって作り始めていく、そういうところをやるっていう
ことと、あとはその段階から先ほど言いましたように、この会社と組むと決める
のであれば、その会社が乗りやすいような最終的なビジネスモデルになるように
最初から耂えておくっていうところですね。
手塚:
工夫というか、信頼のおけるパートナーの補足ですけども、ブシロードの場合は
カードゲームっていうところで範囲が狭いのであえて言えるのですが、好きな人
ですよね。これも先ほどの経産省のお話じゃないですけども、好きな人は強いで
すよね。ビジネスでやりましょうって、やっぱはじめに苦労して、これは無理だ
なと思ったら手ひいちゃうのかというところになるのですが、今、ブシロードで
いうと、アジア中心に何カ国かでやっています。韓国、香港、台湾、シンガポー
ル、あとオーストラリア、あと北米2カ所でやっているのですが、現地のパート
ナーがいわゆる小売店さんですけれども、そこに問屋さんをやってくださいね。
ディストリビューションやってくださいねってお願いしているのですが、どうい
うふうに決めたかっていうと、先ほどから名前出していますけれども、ブシロー
ドの代表の木谷が行ったときに、实際お店に行って会って、話してみて、そした
ら、非常に熱を持っている人がいると。これだったら任せてみたいな、預けてみ
たいなというところで決めています。信頼できるパートナーっていうところでい
うと、ほんと好きな人、その業界であったりとか、日本が好きであったりとか、
あとはカードゲームが好きであったりとかっていう人を見つけるのがブシロード
としてやっている工夫です。
数土:
ありがとうございました。時間のほうはこちらのほうでいっぱいになってきまし
たので、今回、話がかなりあちらこちらには飛びましたが、海外、そして流通、
そしてもう1つメディア展開ということで話を伺ってきました。話を聞いていて
思ったのは、非常に日本のクリエイティブ、皆さん自信持たれていて、おそらく
海外にも通用する。それって日本のまだまだ強みだし、これからもまだまだいけ
るのかなと思いつつ、ただやはり海外の流通基盤が弱い、あるいは、玩具ショー
みたいな場で存在感が薄いのではないか、そういった問題もありますし、中国の
なかなか市場入りづらい。あるいは、海賊版の問題があるといったこともありま
すので、实はこの部分で、国の力が借りられるのではないかなというふうに思い
ます。
国の力に関して、皆さん、国に対してわりと皆さん意見を申すっていうところが
多いと思いますが、尐なくともこういう場がある。こういう場を設けて話を聞く
っていうところでは、非常に前向きな動きが起きているのではないかなと思いま
187
す。これからもぜひキャラクタービジネス業界が発展していくことを祈っていき
たいと思います。きょうはどうもありがとうございました。
(了)
188