雄別炭礦の採炭機械 切羽支保の移り代わり 雄別炭礦の炭層分布状況 杭内支保材は「木・鉄・コンクリート」がある。 地質構造:馬蹄形のドーム構造で分布。 木 材 : 木 材 (抗 木 )は 軽 く 、 抗 内 で 細 工 が 安 易 で 、 加 地 層 傾 斜 : 12度 ∼ 30度 の 中 傾 斜 。 重が加わると曲がりながら耐え加重の状態を把握出来 る事が利点である。 炭 質:非粘結性、亜瀝青炭。 抗内では最も多く使用されている材料は坑木で、材 非常に硬質。 料と言うと抗木を意味する。不利な点は、鉄より弱く、 硫黄分が少ない。 鉄より腐れ易い事で、短期間使用の坑道、採炭現場に 使用される。 発 熱 量:原炭 5,500∼ 5,800(㌍ ) 製品 6,600∼ 6,800(㌍ ) 鉄:坑木と逆の利点と欠点である。利点は、坑木よ り強く腐れ難く、再利用可能である。欠点は、坑内で 加 工 は 難 し く 重 い 事 で あ る 。 主 要 行 動 の 「ア ー チ 枠 」、 雄別炭礦の採炭機械 雄 別 炭 礦 の 採 炭 方 式 は 「片 盤 向 長 壁 式 採 炭 」を 採 用 し 、 切 羽 長 は (採 炭 現 場 の 長 さ )100m ∼ 200m 。 採 炭 現 場 の 「鉄 柱 ・ カ ッ ペ 」と 広 く 使 用 さ れ て い る 。 コ ン ク リ ー ト : 施 工 が 困 難 で あ る 事 よ り 、 捲 座 (巻 き 揚 げ 施 設 )等 の 特 殊 な 場 所 で コ ン ク リ ー ト 被 覆 を 施 工 し ているに過ぎない。 主 力 採 炭 機 械 は 「カ ッ タ 」で あ っ た 。 太 平 洋 炭 礦 の 地 層は、傾斜6度の緩傾斜の単斜構造で分布、炭質は雄 別 よ り 軟 質 で あ る 事 よ り 「ボ ー ベ ル 」が 主 力 採 炭 機 械 で 採 炭 切 羽 の 支 保 材 の 移 行 : 木 柱 (杭 木 )→ 摩 擦 鉄 柱 → 油 圧 鉄 柱 (水 圧 鉄 柱 )→ 自 走 枠 → シ ー ル ド 枠 あ っ た が 、 後 に 「カ ッ タ 」に 移 行 し て い る 。 雄別炭礦閉山後、太平洋炭礦では「シールド枠」に 移行している。 ① コ ー ル ・カ ッ タ ( シ ン グ ル ・ジ ブ ・カ ッ タ ) コ ー ル ・カ ッ タ 「 コ ー ル ・カ ッ タ 」 は 、 昭 和 20年 後 期 の 主 力 採 炭 機 械 。 木 柱 (杭 木 )を 使 用 コ ー ル ・ カ ッ タ は 、 パ ン ッ ア (H 型 ト ラ フ チ エ ン コ ン ベ ア )の 上 を 走 行 し て 、 チ エ ン ソ ー 式 の ビ ッ ト (刃 )で 切 羽 を 掘 削 す る 。 掘 削 後 、 発 破 (火 薬 の 爆 発 )に よ り 切 羽 を 全 面 崩 し て 、 積 み 込 み は 人 力 (ス コ ッ プ )に よ り コ ン ふ る と 古洞側 き り は 切羽側 ベアに積み込んだ。 坑木支柱 昭 和 20年 代 前 半 ま で 、 切 羽 の 支 柱 は 坑 木 を 使 用 。 人 力 採 掘 (ツ ル ハ シ 採 掘 )時 代 は 、 切 羽 に 荷 か け て 石 炭を軟らかくして掘ると良いとされた時代もあり、掘 削は安易かもしれないが非常に危険な切羽の時代もあ 摩擦鉄柱を使用 昭 和 26年 堤 沢 右 6 片 払 鉄 柱 は 整 列 配 列 カ ッ ペ 長 1.20m 1 サ イ ク ル 1.20m 進 行 った。 摩擦鉄柱 ふ る と 古洞側 昭 和 20年 代 後 半 、 鉄 柱 ・ カ ッ ペ が 導 入 さ れ た 。 鉄 柱 き り は 切羽側 とカッペを使用した採炭はドイツで開発され、カッペ 採炭と言う。鉄柱は鉄の柱で、切羽の山丈に合う長さ を使用し、伸縮自在でくさびをツルハシで打ち付ける て高さを調節出来仕組み。カッペは鉄の梁で、長さは 1.20m ∼ 1.40m で 、 連 結 取 り 外 し が 出 来 る 。 切 羽 採 掘 が 進 む と 後 ろ 測 (古 洞 測 )の 鉄 柱 カ ッ ペ を 外 し、切羽側に移動させて進む。切羽の支保強度は、木 柱より増して安全になった。 ↑ パン ッ ア ② ド ラ ム ・カ ッ タ 油圧鉄柱 昭 和 30年 代 前 半 、 油 圧 鉄 柱 に 変 わ っ た 。 「ド ラ ム ・カ ッ タ 」は 、 昭 和 30年 代 の 主 力 採 炭 機 械 。 油圧鉄柱は、長い油圧ジャツキである。 ドラムカッタは、パンッアコンベア上を走行し、円 筒 形 の ド ラ ム に ビ ッ ト (刃 )を 付 け 、 ド ラ ム を 回 転 て 切 羽を掘削する。 エアーの注入で鉄柱は伸び、最後は鉄柱ハンドルで 締め付ける。負荷が加わると、油が一滴漏れて鉄柱は 1㎜程度縮む設計となっており、鉄柱が折れるのを防 雄別本層の山丈は2m以上あり、ドラムで下部しか 止する仕組みになっている。 掘削出来ないが、上部は自重で剥離して落下する。 剥離落下しない場合は、発破により落下させます (天炭発破又は吊り炭発破)。 鉄柱が縮む時、キュと音がする。キュキュキュと連続 して音がすると強大な荷重が加わっている証拠、落盤 の前兆だ。キュキュキュと音がすると大変、逃げるか 昇 り は 切 羽 を 掘 削 し て 2/3は コ ン ベ ア に 落 ち て 運 搬 さ 勝ち。 れ 、 下 り は プ ラ ウ で 残 り の 1/3を 掻 き 込 ん で 積 込 み ま す 。 1 サ イ ク ル の 掘 削 で 約 70㎝ 程 度 進 行 す る 。 ドラムカッターと油圧鉄柱 (プ ラ ウ : ハ イ ド 版 の よ う な も の ) き り は 切羽側 ふ る と 古洞側 天 炭 (吊 り 炭 )と は 、 厚 い 炭 層 の 下 部 を 掘 削 す る と 、 上部は自重で自然に剥離して落下するが、落下しない ドラ ム → ← 油 圧鉄 柱 場合天炭が吊ると言う。その石炭を強制的に発破で落 下 さ せ る 作 業 を 天 炭 (吊 り 炭 )発 破 。 発破屋の私は、もし殉職するとしたら天炭発破と思 っていたくらい非常に危険な作業であった。落下しそ うで、落下しない切羽の発破で、何時も逃げる準備を して切羽に近づく。発破作業時、切羽に近づかなけれ ばならないのが発破屋である。 ↑プラウ 鉄柱 は 千鳥 配列 カ ッペ 長1.40m 1 サイ ク ル70㎝進 行 ③トレパーナ トレパーナ 北進昇で稼働中 「ト レ パ ー ナ 」は 、 北 進 昇 下 1 番 層 ・下 2 番 層 で 使 用 。 下 1 番 層 ・ 下 2 番 層 は 、 山 丈 が 1.40∼ 1.60m の 薄 層 ←カ ッ ペ である事より、イギリス製の薄層採炭機のトレパーナ ーを2台輸入した。 切羽 側 古洞側 ト レ パ ー ナ は 、 パ ン ッ ア (H 型 ト ラ フ チ エ ン コ ン ベ ア )の 切 羽 側 を 走 行 す る 。 前 後 ・天 盤 に 回 転 式 の 刃 先 、 下 盤 ・切 羽 側 に チ エ ン ソ ー 式 の 羽 が 付 き 、 昇 り も 下 り も 共に、掘削と積込みが同時に可能な、優れた薄層採炭 機械である。 ↑ト レ パ ーナ ↑ パ ンッ ア 薄 層 で、 運転 工 は 中腰 。 雄別の石炭は硬質である為に、効率良く掘削する事 が困難で、トレパーナは坑外に搬出され、しばらく眠 っていました。 眠ったままでは勿体ない、シングルジブカッタで掘 削 し て 、 ゆ る み 発 破 (火 薬 の 爆 発 )で 石 炭 を 軟 ら か く し 、 それからトレパーナが走行する方法で、再び切羽で活 躍出来ました。トレパーナは、掘削・積込機械である が、雄別では積込機械として使用していた。 炭礦と鉄道館に保存 前部の刃先は外れている ④ レ ン ジ ン グ ・ド ラ ム ・カ ッ タ レ ン ジ ン グ ・ド ラ ム ・カ ッ タ と 自 走 枠 「レ ン ジ ン グ ・ド ラ ム ・カ ッ タ 」を 、 昭 和 42年 頃 導 入 し た。レンジングドラムカッタは、ドラムが上下にスラ イド出来、ビットはラセン状に配列して積み込みを容 易にしている、ドラムカッタの改良型である。雄別と 同 時 期 の 昭 和 42∼ 43年 頃 、 太 平 洋 炭 礦 で も 、 レ ン ジ ン グ ・ド ラ ム ・カ ッ タ を 導 入 し て い る 。 自走枠 搬入前の自走枠 昭 和 30年 後 半 か ら 40年 前 半 に 、 自 走 枠 が 導 入 さ れ た 。 自走枠は、数本の鉄柱とカッペが組み合った組鉄柱 で、切羽が進行すると切羽側に移動可能、水圧式の鉄 柱である。移動は、天盤を支えている鉄柱を少し下げ て、シフターにより切刃に側に移動して、再び鉄柱を 上げて天盤を支える。組鉄柱である事より、側方向か らの荷圧に強く、安全性は増大した。 太 平 洋 炭 礦 で は 昭 和 30年 代 後 半 に 自 走 枠 が 導 入 さ れ た が 、 雄 別 炭 礦 で は 昭 和 41年 12月 試 験 的 に 導 入 さ れ た 。 太平洋炭礦は傾斜6度の緩傾斜で炭層が分布するが、 雄 別 で は 傾 斜 12度 ∼ 30度 の 中 傾 斜 で 炭 層 が 分 布 し て い る 。 昭 和 40年 代 に 中 傾 斜 用 の 自 走 枠 が 開 発 さ れ た 事 で 、 太平洋より遅れて試験運用となつた。様々な形式の自 走枠を部分的試験運用で、切羽全体の自走枠運用の前 に閉山となった。 炭礦と鉄道館に保存 ⑤亀の子ドラムカッタ 雄 別 で は 「亀 の 子 ド ラ ム ・カ ッ タ 」を 試 作 し た 。 ⑥ホーベル 昭 和 40年 頃 ま で 太 平 洋 炭 礦 の 主 力 採 炭 機 は 「ホ ー ベ ル 」で あ っ た 。 昭 和 42年 頃 、 レ ン ジ ン グ ド ラ ム カ ッ タ の 導 入 に よ り 採炭機械に余裕が出来、ドラムカッタの上に、もう一 ホーベルは、刃先の爪で炭壁を引っ掻くようにして 台ドラムカッタを乗せた採炭機械を試作した。「ダブ 掘削する採炭機械てある。雄別の石炭は硬質である事 ルドラムカッタ」と命名したが、誰もが「亀の子ドラ より、ホーベルの爪では刃がたたず、ドラムカッター ム」と呼んだ。 が主力採炭機械であったがが、太平洋の石炭は雄別よ り軟質である事より、ホーベルで掘削可能であった。 当時のテレビ「親亀の背中に子亀を乗せて、子亀の 背中に孫亀乗せて、孫亀の背中に曾孫亀乗せて、親亀 太平洋炭礦のホーベル こけたら皆こけた」。 亀 の 子 ド ラ ム カ ッ タ を 「堤 沢 末 広 第 4 払 」に 導 入 し た が、あまりにも重過ぎて直ぐ子亀はおろした。失敗で あ っ た が 、 後 の ダ ブ ル ・レ ン ジ ン グ ・ド ラ ム ・カ ッ タ の 先 駆けである。 亀の子ドラムカッタ ↑ホーベル ⑦ ダ ブ ル ・レ ン ジ ン グ ・ド ラ ム ・カ ッ タ 雄 別 炭 礦 閉 山 後 太 平 洋 炭 礦 で は 「ダ ブ ル ・レ ン ジ ン グ ⑧切羽長の推移 雄別炭礦・太平洋炭礦では、長壁式採炭を採用して ・ド ラ ム ・カ ッ タ 」を 導 入 し て 主 力 採 炭 機 と な り 、 現 在 コ い る 。 切 羽 長 (採 炭 現 場 の 長 さ )は 時 代 に よ り 変 化 し て −ルマインで使用している。 いる。 ドラムが上下にあり、切羽全面が掘削可能となり、 天 炭 (吊 り 炭 )発 破 は 不 要 と な っ た で あ ろ う 。 長壁式採炭採用後、採炭機械を採用して切羽長を長 くして集約能率向上を目指し、どんどん切羽は長くな っ た 。 ( 100m か ら 200m 変 化 ) シールド枠 シールド枠は、ソビエトで開発された自走枠である。 従来の自走枠と機能は同じであるが、貝殻のように 完 全 に 身 を 守 る 形 状 構 造 。 天 盤 (上 方 )、 古 洞 (後 ろ )を 完全防護している。 短くして切羽進行を速くして天板の悪化防ぐ目的で切 羽 は 短 く し た 。 ( 200m か ら 100m に 変 化 ) そ し て 現 在 、 集 約 採 炭 を め ざ し 、 再 び 切 羽 長 は 200m 現 在 コ ー ル マ イ ン で は 、 シ ー ル ジ 枠 (S )と ド ラ ム カ ッ タ (D )の 組 み 合 わ せ で 採 炭 を 実 施 、 「 S D 採 炭 」 と 命名している。 シールド枠 自走枠導入初期、自走枠が高価である事、切羽長を 太平洋炭礦のシールド枠 程度に伸びている。
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