2.7.2石炭灰の品質と利用用途 - 国土交通省

石炭灰の化学成分組成は、表2.7.1に示すとおり炭種の違いにより多少の差異は認めら
れるが、主な化学組成はシリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)が全体の70∼80%を占め、
その他の成分は微量の Fe2O3,CaO、MgO、SO3、Na2O、K2O などの酸化物となっている。
表2.7.1
石炭灰の化学組成
[出典:石炭灰ハンドブック、日本フライアッシュ協会]
2.7.2 石炭灰の品質と利用用途
(1) フライアッシュ
1) 品質
フライアッシュの物理、化学特性は燃焼する石炭の種類によって大きく異なり、冷却
過程や微粉炭の粉砕度合いによっても特性が異なる。
石炭火力発電所では1∼数週間で燃焼する炭種が変わることもあるた め、石炭火力発
電所間の品質のばらつきに加え、発生時期の違いによっても品質が大きく変動する。
コンクリート用のフライアッシュの品質は JIS A 6201において表2.7.2に示すとおり、
主に発現強度と流動性からⅠ∼Ⅳ種に等級化されている。これらはコンクリート用材や
スラリー化させて裏込等に利用する際にコンクリートやスラリーの品質に大きく影響す
る。
2-70
表2.7.2
種
コンクリート用フライアッシュの用途・性能等(JIS A 6201)
別
用
途
・
性
能 等
フライアッシュⅠ種
混入することにより、特にコンクリートの高強度,流動性付与,
アルカリシリカ反応抑制に効果があるもの。
また、初期強度発現性も無混入の場合と遜色ないもの。
フライアッシュⅡ種
標準的なフライアッシュで、混入することにより、特にコンクリ
ートの水和発熱抑制,長期強度の改善効果があるもの。また、コ
ンクリートへの流動性付与,アルカリシリカ反応抑制について、
無混入の場合と比較して十分に効果が発揮されるもの。
フライアッシュⅢ種
混入することにより、特にコンクリートの水和発熱抑制,アルカ
リシリカ反応抑制,長期強度の改善に、Ⅱ種と同等の効果がある
もの。ただし、練り混ぜ時に、コンクリートの流動性,空気連行
性に関して配慮が必要。
フライアッシュⅣ種
水和発熱抑制に対しⅡ種と同等の効果があり、アルカリシリカ反
応抑制も期待出来るもの。強度発現の点で低強度コンクリート,
工場製品等に使用可能なもので、鉄筋コンクリート用の普通コン
クリートに適用する場合には、事前に強度の発現を確認して使用
するもの。
表 2.7.3 に JIS A 6201 でのフライアッシュの品質区分を示す。
また、平成 11 年度に運輸省第二港湾建設局(現国土交通省関東地方整備局)で実施
したフライアッシュの品質調査では、全国の主な石炭火力発電所から発生する原粉・粗
粉(コンクリート用混和材等に利用する高品位なものではなく、余剰となっているフラ
イアッシュ)の品質は図 2.7.2 に示すとおり大半のフライアッシュはⅡ種に区分される
等級のものが発生している。なお、一部に強熱減量が大きいものがあるが、これは旧式
のボイラーから発生しているものやその他の理由による。
2-71
表2.7.3
種
項
フライアッシュの品質(JIS A 6201-1999)
フライアッシュ フライアッシュ フライアッシュ フライアッシュ
類
目
Ⅰ種
二酸化けい素
%
湿分
%
強熱減量
密度
(1)
3.0以下
5.0以下
g/cm3(kN/m3)
(網ふるい方法)
(2)
Ⅳ種
8.0以下
5.0以下
1.0以下
%
(3)
Ⅲ種
45.0以上
45μmふるい残分
粉末度
Ⅱ種
1.95(19.11)以上
10以下
40以下
40以下
70以下
5,000以上
2,500以上
2,500以上
1,500以上
%
比表面積
(ブレーン方法)
2
cm /g
フロー値比
活性度指数
%
%
105以上
95以上
85以上
75以上
材齢28日
90以上
80以上
80以上
60以上
材齢91日
100以上
90以上
90以上
70以上
注(1)強熱減量に代えて、未燃炭素含有率の測定を JIS M 8819 又は JIS R 1603 に規定する方
法で行い、その結果に対し強熱減量の既定値を適用してもよい。
(2)粉末度は、網ふるい方法又はブレーン方法による。
(3)粉末度を網ふるい方法による場合は、ブレーン方法による比表面積の試験結果を参考値と
して併記する。
8,000
7,000
粉末度(比表面積;cm 2/g)
タイプⅠ
6,000
タイプⅢ
タイプⅡ
5,000
4,000
3,000
タイプⅣ
2,000
1,000
0
1
2
3
4
5
6
強熱減量(%)
7
8
9
10
凡例
○ :
個別データ(国内炭)
▲ :
個別データ(海外炭、原粉)
発電所別範囲データ(海外炭、原粉)
発電所別範囲データ(海外炭、粗粉)
図2.7.2
フライアッシュの品質範囲
[出典:平成 11 年度港湾構造物へのリサイクル材料(FS コンクリート)の活用開発調査報告書、
運輸省第二港湾建設局横浜調査設計事務所(現国土交通省関東地方整備局横浜港湾空港技術調査事務所)
]
2-72
① 密度
フライアッシュの粒子密度は一般的に1.9∼2.4g/cm3の範囲にある。
表2.7.4は石炭灰のばらつきの特性を把握するため多くの事業所(20カ所×2回)と同
一事業所(2カ所×12回)から採取した新生灰(発生したばかりの灰)の密度試験結果
である。
表2.7.4
フライアッシュの密度
[出典:第4回石炭利用技術会議講演集、
(財)石炭利用総合センター]
② 粒度分布
シンダーアッシュの粒径は0.1∼1mm、フライアッシュは0.1mm 以下の粒径で、両者を
広義のフライアッシュ(原粉)とした場合、フライアッシュの粒度分布は 0.1mm 以下が90%
以上を占め、シルト分に相当するものが多い。
図2.7.3
フライアッシュの粒度分布(例)
[出典:石炭灰ハンドブック、日本フライアッシュ協会]
2-73
③ 粉末度(表2.7.3)
粉末度はフライアッシュをコンクリート混和材などに利用する際の強度を支配する一
つの重要な因子である。
④ 強熱減量
強熱減量は、主に未燃炭素の比率の指標を示す値であり、コンクリートや石炭灰スラ
リーの流動性に影響する。
⑤ ポゾラン反応
フライアッシュの主成分は、シリカ(SiO2)とアルミナ(Al2O3)である。これ自身は水硬
性を持たないが、微細粒子の状態で、かつ水分の存在下では、アルカリまたはアルカリ
土類と反応して不溶性化合物を生成する。これをポゾラン反応という。
例えばセメントと混合した場合、石炭灰中のシリカ、アルミナは、セメントの水和に
よって生成される水酸化カルシウム(Ca(OH)2)と徐々に反応して、カルシウムシリケー
ト水和物(3CaO・2SiO2・3H2O)、カルシウムアルミネート(3CaO・Al 2O3・6H2O)、エ
トリンガイト(3CaO・Al 2O3・3CaSO4・32H2O)などを生成する。この反応を以下に示
す。
3CaO・2SiO2・3H2O
Ca(OH)2 + [SiO2、Al2O3]
3CaO・Al 2O3・6H2O
3CaO・Al 2O3・3CaSO4・32H 2O
2-74
2) 適用用途
フライアッシュの適用用途については表2.7.5に示すとおりであり、コンクリート用材
(混和材)として JIS 化されており、その他にも港湾工事用としてマニュアルが示され
ている用途もある。
表2.7.5
フライアッシュの港湾・空港等工事への適用
主な利用用途
規格・基準類及び適用
・ JI S A6201「コンクリート用フライアッシュセメント」
・ フライアッシュを使用する施工指針;土木学会
・人工軽量骨材(JI S A 5002「構造用軽量コンクリート骨材」適合品)
コンクリート 用材
◎
製鋼スラグと石炭灰(フライアッシュ(石炭灰)
)
を混合して砂の代替えとしたFSコンクリートが開発
され、防波堤の上部工やブロック用のコンクリートとして利用されている。「 FSコンクリート利用手引
書」
が発刊されている。
捨石、被覆石等
-
中詰材
×
裏込材
○ セメントを添加して護岸裏込の利用実績あり。
・フライアッシュを護岸の裏込めに利用するための手引書→策定中
舗装用材
○
バーチカルド レーン
+
・フライアッシュを路盤・路床に利用するための手引書(案)
;
(財)
沿岸開発技術研究センター
石炭灰スラリーを路盤・路床材としての実証試験あり。
石炭灰とクリンカアッシュ、セメントの混合材を路盤材としての利用実績あり。
△ 陸上(埋立地)での利用計画あり。( フライアッシュを固化・造粒したもの)
陸上・海上での実証試験実績あり。( フライアッシュを固化・造粒したもの)
サンド コンパクションパイル
○ 実証試験の結果、適用可能性を示唆しており、利用にあたっては供給の長期的安定性の確認が
必要。
・
FGC深層混合処理工法技術マニュアル−フライアッシュを用いた軟弱地盤改良工法;
深層混合処理
+
○ (財)沿岸開発技術研究センター
FGC-DM工法の地盤改良としての利用実績あり。
・フライアッシュを軟弱地盤の表層処理に利用するための手引書(案)
;
盛土、覆土
○+ (財)沿岸開発技術研究センター
石炭灰スラリーを軟弱地盤上の覆土としての実証試験あり。
凡 例 ◎ :
○+ :
○ :
△ :
× :
− :
すでに当該用途を想定した品質基準が設けられ等、利用が可能。
利用実績が多いもの又は○に加えて利用マニュアル案等が整備されているもの。
標準材料と同等、または利用実績や実証実験などで確認され利用可能性の高いもの。 利用可能性はあるが、既存資料からは判定できず、今後の検討を要するもの。
現段階では利用は難しいと考えられるもの。
用途対象外。
2-75
3) 周辺環境への影響
① pH
石炭灰(フライアッシュ)の環境庁告示の方法で得た検液のpHは純水中で11.8∼12.6、
人工海水で8.6∼10.2であり、鉄鋼スラグと同様にpHは高い(「リサイクル環境保全ハ
ンドブック」環境庁)
② 有害物質の溶出
石炭灰の有害物質の溶出特性は、表2.7.6に示すとおりである。これによると、炭種に
よって、六価クロム、砒素は僅かながら検出されており、これ以外に銅や亜鉛等が低濃
度で検出されることもある。
従って、使用を予定している石炭灰について試験を行う等により安全性を確認する必
要がある。
表2.7.6
石炭灰(フライアッシュ)の溶出試験結果(例)
項 目 (mg/l)
アルキル
水銀又は カドミウム
鉛又は
水銀化合物 その化合物 その化合物 その化合物
国内炭
中国炭
南ア炭
豪州炭
有機燐
化合物
六価クロム 砒素又は
化合物
その化合物
シアン
化合物
PCB
純水
ND
ND
ND
ND
ND
0.19
ND
ND
ND
海水
ND
ND
ND
ND
ND
0.19
ND
ND
ND
純水
ND
ND
ND
ND
ND
ND
ND
ND
ND
海水
ND
ND
ND
ND
ND
ND
ND
ND
ND
純水
ND
ND
ND
ND
ND
0.10
ND
ND
ND
海水
ND
ND
ND
ND
ND
0.15
ND
ND
ND
純水
ND
ND
ND
ND
ND
ND
0.06
ND
ND
海水
ND
ND
ND
ND
ND
ND
0.20
ND
ND
ND
≦0.005
≦0.3
≦0.3
(注)
≦1
≦1.5
≦0.3
(注)
≦1
(注)
≦0.003
埋立処分に係る
判定基準(※)
[出典:石炭灰ハンドブック、日本フライアッシュ協会]
分析者
:㈱中国環境分析センタ一
試験方法:純水は環境庁告示 13 号、悔水は環境庁告示 13 号に準拠
ND
:検出限界未満を示す。
(注)
:石炭灰の場合、埋立処分に係る判定基準の項目対象外
(※)
:上記判定基準は、平成 10 年6月 10 日告示の総理府 36 号による。
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