急性腹症 :診療方針決定のプロセス - 日本消化器外科学会

日消外会誌 21(1)1170∼ 173,1988年
卒後 教育 セ ミナ ー 4
急性腹症 :診療方針決定のプロセス
福島県立医科大学第 1外科
元 木
良
一
PROCDSS OF PLANNING FOR THE TREATMENT OF ACUTE ABDOMEN
Ryoichi MOTOKI
lst Departmentof SurgeryFukushimaMedicalSchool
索引用語 :急性腹症,緊 急開腹手術
1.急 性腹症 に対 する治療方針 の変遷
かつ ては,腹 痛を主訴 とし急性 の経過を とる疾患 は
急性腹症 と総称 され,緊 急開腹術 を施行すべ きもの と
断的価値 の高 い情報 がえ られ るので,病 像 が よ り詳細
に把握可能 とな り,必 要 に応 じて反覆検査 が可能 と
なったため,病 像 の推移を一貫 して把握で きるよ うに
されていた。すなわち,開 腹術 の遅滞 か ら救命 しうる
機会 を逸す る ことが危惧 されるため,詳 細 な診断や術
前処置 に時間を費す よ りも緊急開腹術 を優先すべ きで
なった。
あ るとされていた。恐 らく,急 性腹症 とい う概念 が登
場 した頃は診断法 も治療法 も今 日とは比較 にな らない
程遅れていたにちがいな く,開 腹 が最 も信頼で きる診
断方法で あ り,手 術を遅 らせてみた ところで とくに有
強力な抗生物質,各 種輸液剤を始 め,ス テ ロイ ド,
血管作動薬,蛋 自分解酵素阻害剤,ア シ ドーシス補正
剤な どの有力な治療法の開発 によって効果的 に術前処
置 が可能 となったため印,一 般状態 が不 良な場合 には
術前処置 である程度全身状態を改善 させてか ら手術を
行 えるよ うにな り,ま た非手術的治療 が奏効す る書J合
効な前処置 が行 えなかったのであろ う。
しか しなが ら臨床経験が蓄積 されるにつれて,1)腹
も多 くなって きた。
以上 の結果急性腹症 の治療計画 は次 のよ うに考 えら
痛を主訴 とし,い わゆる急性腹症 として緊急開腹 され
た息者 のなかに,開 腹術 はた とえ試験開腹術 であって
も患者 に著 しい不利を与 えるため,緊 急開腹術 は禁忌
であるものがあること,2)同 一疾患 であれば,緊 急開
細 か く手術 の緊急度を検討 し許容限度時間内で効果的
2)可 能な ら
に診断 と治療 に時間をかけるべ きである。
緊急手術を避 け待期手術 に持ち込む努力を払 うべ きで
腹術 の成績 に比 べ て待期手術 の成績 は良好 で あ る こ
と,3)内 科的治療 で十 分好成績 がえられ るものがある
こと,な どが明 らかになって きた,
あ る。3)待 期的手術あるいは内科的治療を進 める場合
には,反 覆検査 で病像 の推移を把握 し,治 療効果 がな
い場合や不測 の事態 が発生すれば緊急手術を行 うべ き
その結果,今 日までは腹痛を主訴 とし急性経過 を と
る患者すなわち急性腹症患者 に対 しては,ま ず緊急手
である。
断す るこ とが重要 と考 えられてお
術 の適応 が正 しく半」
り,手 術禁忌例 の手術 は絶対行 ってはならない と考 え
1)∼
られ るよ うになって きた ゆ.
最近 の診断法 と治療法の進歩 も急性腹症治療方針 に
大 きな影響 を及ぼ した。
診断法 とくに非侵襲的画像診断の進歩 によ りいの,診
Ⅲ第11回卒後教育セ ミナー ・急性腹症
一
<1987年 8月 17日受理>別 刷請求先 :元木 良
ケ丘
1
福
〒96012 福 島市光
島県立医科大学第 1外
科
れて いる。1)緊 急手術を要す る場合は症例 ごとに きめ
2.緊 急手術 の適応
急性腹症を緊急開腹手術 の適応 か らわけると
1)絶 対的適応 :必 ず緊急開腹手術を行 うべ きもの。
2)相 対的適応 :場 合 に よって緊 急開腹手術 を行 う
べ きもの.
3)禁 忌 :絶 対 に緊急開腹手術 を行 ってはな らな い
もの, となる (表 1).
急性腹症 の治療方針を ま とめ る と図 1の よ うにな
り,ま ず最初 に外来診察室 で問診 と全身および局所所
見 か ら,緊 急手術を要す るか否かを決 めなければな ら
ない。各疾患 についての知識 がなければ正確 に診断で
1988年 1月
171(171)
表 1 緊 急開腹手術適応からみた急性腹症
1.緊 急開腹手術 を要す るもの (絶対的適応)
(1)腹 腔内後腹腔内へ の大量 出血
腹部大動脈瘤破裂,子 宮外妊娠破裂,腹 部動脈瘤破裂,肝 ・解 ・陣 ・腎破裂
(2)腸 管梗塞 (壊死)
上腸間膜動脈血栓症 (塞栓)症 ,上 腸間膜静脈血栓症,
各種紋抗性 イ レウス (異常索状物 による紋拠,軸 転,腸 重積,
外 ヘルニア嵌頓)
13)急 性汎発性腹隈炎
消化管芽孔 (胃 ・十二指腸潰場穿孔, 胃癌穿孔,穿 孔性虫垂炎,大 腸穿孔)
腹腔内高度炎症波及
“)臓 器の高度炎症
急性虫垂炎, メ ッケル憩室炎,大 腸憩室炎,急 性胆襲炎
(5)そ の他
卵巣裏腫,大 網腫瘤 などの軸転
2 . 場合 により緊急開腹手術を要す るもの (相対的適応)
( 1 ) 臓器 の軽度炎症
急性胆襲炎,急 性胆管炎,急 性陣炎,大 腸憩室炎,
ク ロー ン病,潰 場性大腸炎
単純性 イ レウス
緊急開腹術は患者 にとって有害 なもの (禁忌)
胸 部 疾 :心 筋梗塞,肺 炎,心 襲炎,肺 塞栓,胸 膜腔内液貯溜,気 胸
神経系疾患 !脊 髄,神 経根 の圧迫 ・刺戦
代謝性疾患 :ボ ル フィリン血症 (porphyria)
糖尿病によるケ トアシ ドーシス
高脂血症
図 1 診 療方針決定の プロセス
( 全身 ・局所 所
イ ン トに しぼ って所見 をつ かむ よ うにすれば疾患 の属
す るカテ ゴ リー ( 内出血 , 腸 梗塞, 腹 膜炎, 炎 症) も
不 明だ とい うよ うな こ とは稀 でむ しろ短 時間 で見 当 が
つ くこ とが多 く, 一 見 して緊急開腹手術 の適応 と判 断
で きる もの もあ る. そ の反面, 診 断 がつ かず 緊急開腹
保 存
的 療
法
待 期手 術 f 旨
向
検
査
内科 的療 法
す べ きか否 か迷 う症7 1 1 も
あ る。 その よ うな場合 は急性
腹症 の原 点 に帰 り, とにか く開腹す べ きであ る。成書
に記載 され ていない よ うな稀 な疾 患 で あ るか もしれ な
ヽヽ
.
一 般状態 が不
良 で あれ ば診 断 よ りも救命処置 を重視
す る.一 般 に全 身状態 の不 良な ものは緊急手術 を要す
ることが 多 い。 救命処置,抗 シ ョック療 法 を行 い なが
ら,そ の合間 に治療 を中断せず に可能 な検査 を行 い緊
急手術 を準備す る。
開腹手術 の禁忌 とされ るものは腹部 以外 の疾患 なが
ら腹痛 を訴 える ものが主で あ る。訴 えに迷わ されず 腹
きず したが って緊急手術 の適応 か否 かの判断 もで きな
い とい うことになるが,外 来 の レベルでは,詳 細 な診
断 よ りも疾患の属 しているカテ ゴ リーを正 しく判断す
ることに心がける.急 性腹症 の代表的疾患 はそれぞれ
特徴的所見があるので,疾 患 の特徴を熟知 し,そ のポ
部所 見 を正確 につ かむ よ うにすれば,元 来腹部疾患 で
はないので あ るか ら緊急開腹 に値 す る所見が な いのに
気 づ く筈 で あ る.な お,心 筋梗塞 を除外す るには必ず
正式 の全誘導心電 図を とる必要 が あ る。 モ ニ タ ー心電
図で は心 筋障害 の診断 に役立 た ない。
急性腹症 :診 療方針決定のプ ロセス
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日消外会誌 21巻 1号
3.緊 急度 の判断
5.緊 急手術適応疾 患
緊急開腹術 の適応 と判 断 された な らば,次 には開腹
す べ き時期 を考 える。考慮す べ き事項 は次 の ご と くで
緊急 開腹術 の適応 で は あ るが, や や余裕 を もって診
断 ・前処置 が行 える疾患であ る。
( 1 ) 急 性汎発性腹膜 炎
あ る。
1)疾 患 の進行速度 Ⅲ著 し く速 いか,比 較 的遅 いか.
ば,腹 腔 内 出血 で あれ ばその出血速 度.
frlえ
2)疾 患 の病期 i初 期 なのか,末 期 なの か。例 えば,
比較的遅 い進行速度 で 末期 なのか,進 行速度 は速 いが
早期 なのか。
3)診 断 に関 して i知 りた ヽマ
情報。それ が え られ る難
易度.所 要時間.
4)前 処置 に関 して i施 行 したい前 処置.推定 され る
治療 効果。そ の所要時間.
急性腹膜 炎で は腹腔 内へ の滲 出元進 に よる循環 血 液
量 の低 下 と, 細 菌 あ るいは エ ン ドトキ シンな ど有毒物
質 の血 中 へ の 吸収 に よ り, 全身状態 は速や か に悪化 し,
発症 か らの時間 と重症度 は平行す る。
一
一
急性汎発性腹膜 炎 の診 断 は 般 に容 易 であ る。 方,
患者 は苦 悶状 で脱水 が 著 明で あ り, 全 身状態 は種 々の
種度 に障害 されて い る。そ こで, 臨 床的 には, 手 術時
期, 換 言すれ ば前処置 に どれだけ時間 をかけ るべ きか
が 問題 とな る。
病歴 と息者 の全身状態 と局所所見 か ら これ らの こと
若年 者 に多 くみ られ る十二 指腸潰瘍 穿孔 に よる急性
断す る。臨床 上 困惑す るのは緊
を考慮 して緊急度 を半」
汎発性腹膜炎 では, 息 者 は激痛 のため直 ちに来院す る
急手術 の適応 と診 断 はつ いてい るが,患 者 の状態 が 悪
い場合 で ,手 術 が遅 れた場合 の危険度 と一 般状態不 良
ので発症 か らの経過 時間 が短 く, 腸 内容 が無菌 で あ る
な ままに手術 した場合 の危険度 を天群 にかけて前処置
に費す時間 を半J断 しなけれ ばな らないが,決 断 は必ず
か り, 十 分 に輸液 を行 い利尿 を まち, 脱 水 が改善 され
こともあ り, 全 身状態 の障害 が軽度 であ る。鎖痛 を は
た こ とをみ とどけてか ら開腹 す る。
緊急開腹術 の絶対適応 のなかで も, と くに緊急 を要
これ に反 して, 下 部消化管 穿子しに よる汎 発性腹膜 炎
∼
の場合 は種 々の 因子 に よ り重 篤例 が 多 いり 1 1 ) . 予備力
の少 い高齢者 に多 い こ と, 発 症後 の症状 が軽度 で経過
す る ものは腹腔 内や後腹腔 へ の大量 出血 と,広 汎 な腸
梗塞 の危 険 が あ る上腸間膜動脈血栓症 で あ る。
時間 が長 い こ と, 腸 内容 が 多量 の細菌 お よび有 毒物質
を含 んでい る ことな どに よ リシ ョ ック状態 に陥 って来
しも容易で は な い.
4.即 時手術適応疾 患
(1)腹 部大動脈破裂
腹部大動脈瘤 が破 裂 しかか ってい る場合 (切迫破裂)
あ るいはすでに破裂 してい るが腹膜や軟部組織 に よっ
院す る こ とが多 い。 この シ ョ ックは重篤 であ る。大量
輸液 に よって循 環 血 液 を確保 し, 大量 の ステ P イ ド( メ
チル プ レ ドニ ブ ロン3 0 m g / k g ) , ドパ ミン, ド ブタ ミン
て 自由腹腔内 出血 が防止 され後腹膜 に血腫 を形成 して
ヽヽる場合 (leaking aneurysnl, or sealed rupture)よ″
激烈 な腹痛 を訴 え,腹 部 に拍動性腫瘤 を触知 す る.出
( 3 ∼5 ″g / k g / m ) な どの血管作 動薬 を投与 し, 循 環動態
の改善 をはか る とともに, シ ョックに必発す る代謝性
アシ ドー シスを補正す る。 シ ョックか ら離脱 し, 利 尿
血 が 多 けれ ばシ ョ ックあ るいは プ レシ ョック状態 を呈
がつ き, 血 液 ガス, B E , 電 解質 な どが正 常 とな った と
す る.救 命 し うる最後 の機会 で あ るか ら,可 及的速や
かに開腹す べ きで あ る。血管外科 チ ー ムを招集 し,手
術室 と血液 セ ンタ ーに連絡す る。
ころで 開腹す る。
(2)上 腸間膜動脈 血栓症
動脈硬化 の あ る高齢者 夕 心房細動 を有す る心疾患患
者 な どが急激 に発症 した激 しい腹痛 を訴 えた場合 は,
本症 を念頭 にお くこ とが重要 で あ る。本症 の特徴 は初
期 には訴 えの強 い害Jに腹部所見 が乏 しい ことで あ る。
全身状態 は次第 に悪化 し,末 補循環不全,シ ョ ック と
な り,腹 部 は膨満 し,筋 性防御 が 出現 して くる。こ の
下部 消化管穿孔 では手術操 作 は必要最小限 に とどめ
( た とえば腸切 除や人 工 肛 門造 設 のみ として吻合 は後
廻 しにす る) , 腹 腔 内洗浄 を反覆す る。全身状態 でそ の
後 の手術操作 を決 め る。
( 2 ) 絞 掘性 イ レウス
定型的 な場合 は腹痛 のみを訴 えて来院す る。患者 は
苦 悶状, 疼 痛 は持続 的 で あ る。全身状態 は急激 に悪化
す る。こ の よ うな定型的症状 を呈す るものは初 めか ら
時期 で はすで に腸 管 は広範 な壊死 に陥 ってお り,救 命
す ら困難 で あ る, したが って本症 は疑診 の段階 で も開
腸 血行 障害 が強 く, したが って開腹手術時すで に腸壊
死 に陥 ってい る こ とが多 い。 一 方, 比 較的除 々 に絞掘
が進 んだ ものは, 初期症状 は単純 性 イ レウス に類似 し,
腹す べ きで あ る。
次第 に腹痛 の性状 が変化 して くる ことが多 く, 発 症 か
1988年1月
173(173)
らの時間が経 過 していて も腸管壊 死 を免 か れ る症例 も
中 に 予期 に反 して 緊 急 開腹術 が 必要 に な る場 合 が あ
み られ る。
る。第 1は 元来緊急手術 を要 したはず の ものが,初 期
は マス クされ てお り経過 とともに次 第 に明瞭 となる場
絞況 性 イ レウスは緊急手術 の適応 とされてい るが,
絞掘解 除 に よ り回復 し腸切 除を免 かれ る もの, 腸 壊死
に陥 り腸切 除 を必要 とす るもの, 腸 管壊死 か ら腹膜 炎
合 であ る。第 2は 炎症 が抗生物質投与 に よって も鎮 静
に進展 してい るもの, と進展度 に差が あ り, 壊 死腸管
の長 さに よって も重篤度が異 な る。
一 般 に全身状態 が
強 く侵 されてい る もの程, 腸 管 の
変化 も強 く, したが って, こ こで も術前処置 と手術時
揮 して くる48か ら72時間が決断す る 目安 で あ る.第 3
は疾患 自体が増悪 してゆ く場合 で,内 科的 に治療 して
期 が 問題 とな る。著者 の少 ない経験 か らではあ るが,
状や汎発性腹膜炎 の症状 が著 明になれ ば緊急開腹術 の
適応 と考 えて よい1り
.
腸管壊死 を救 うためだけに限定すれ ば寸秒 を争 うよ う
な緊 急性 は ない と考 えて い る。こ こで重視す べ きは全
身状態 で あ り, シ ョックを含む循環不全, 乏 尿 あ るい
は無尿 を伴 な う脱 水, ア シ ドー シス, 低 酸素血 症 な ど
は比較 的短 時間で改善 で きるので, これ らの処置 を行
い なが ら手術 準備 を進 め る。
( 3 ) 腹 腔 内高度炎症性疾 患
抗炎症療法 な ど内科的療法 が期待 で きず, 病 変 が進
展 すれば汎 発性腹膜炎 とな る可能性 が大 きい疾患 は腹
膜 炎 に準 じて考 え, と くに手術 が安全 で待期手術 に も
ち こむ利点 が少 ない疾 患 は緊急開腹術 の絶対適応 で あ
る.
急性虫垂炎 は この種 の典型的疾患 で あ り, 一 般 には
ほ とん ど問題 な く緊急開腹術が行わ れ る. 高 齢者, 小
児 では脱水 が, 妊 婦 では流産 が 問題 にな るが, そ れ ら
に対応 して前処置 を行 う時間 は十分 に あ る と考 えて よ
ヽヽ
.
6 . 緊 急手術 の相対 的適応疾 患
待期 手術, 内 科的療法 を指 向 して治療す る疾患 で あ
る. 急 性腹症 で緊急開腹術 を施行す る とすれば, 一 般
に患者 の全身状態 は不 良 で あ り, 絶 食 ・浣腸 な どの術
前処置 も十 分 で な く, 局 所 の汚染, 浮 腫 な ども加わ り,
円滑 な手術 の支障 とな る因子 が 多 い. し たが って, で
きれ ば非手術的療法 で病勢 をお さえ, 局 所所見 の改善
を待 って, 後 日十 分 な前処 置 の上 で待期 的 に手術す る
ほ うが, 安 全 に正 確 な手術 が可能 で あ り成績 も良好 で
あ る。 内科的療法 だけで 完治すれ ば さ らに望 ま しい。
前述 した通 り, 今 日では強力 な抗生物 質や輸液 を始め
とす る有力 な全身管理法 が あ るので, 非 手術療法 で病
勢 を鎮 静化 しやす くな ってい る。自発痛 の軽減 や消失 ,
解熱, 圧 痛 な ど局所所見 の改善 は治療効果 を示す もの
で内科的治療 を継続 して よい。
これ に対 して待期手術, 内 科的治療 を指 向 して治療
されず次 第 に増悪 して くる場合 で,抗 生剤 が効果 を発
いた 急性膵炎 が次第 に増悪 して,後 腹膜 か ら腹腔全体
に拡大 して ゆ くよ うな場 合 で あ る。麻痺性 イ レウス症
7 . おわ りに
とにか くあ けろ,あ けれ ばわ か る といわ れた急性腹
症 で あ ったが,診 断,治 療技術 の進歩 とともに診療方
針 も大 き く変化 した。
今 日の消化器 外科医 は息者 の リスク と疾患 の特性 を
把握 して,短 時間 内 に正 確 な判 断 を下す ことを要 求 さ
れ てい る。 これ は必ず しも容 易 で は ないが,わ れわれ
消化器外科医が手腕 を発揮 で きる場 で もあ る。日 頃 か
ら研鎖 を重ねてお きた い もので あ る,
文 献
1)四 方淳一,石 田 寛 ,武 田義次ほか :急性腹症.治
療 611263-268,1979
2)棟 久龍夫,中 国恵輔,室 豊 吉ほか :急性腹症.救
急医 6:225-229,1982
3)林 四 郎,市川英幸,荻原廼彦ほか :急性腹症 とは
どのような病態か。消外 7!1231-1236,1984
4)北 島政樹,港 康明,権見崎博樹ほか 1緊急手術が
必 要 な 急 性 腹 症 とそ の 鑑 別. 消 外 7 : 1 2 4 3
--1254, 1984
5)林 四 郎 !急性腹症 の診断上の手順 と鑑別診断.
外科治療 55i709-716,1986
6)湯 浅 肇 ,広岡大司,板倉恵子 ほか !急性腹症の超
音波診断.消 外 7:1267-1279,1984
7)山 口 晋 ,浜辺茂雄,九山雄二 :急性腹症の画像診
断.外 科治療 55:717-725,1986
8)天 方義邦 :緊急手術の術前処置 と行ってお くべ き
処置.消 外 7:1315-1319,1984
9)小 暮公孝,中村卓次 !大腸穿孔の臨床.外科 40i
731--740, 1978
10)松 峯敬夫,福留 厚 ,松尾 総 ほか 1非外傷性大腸
穿孔 について.外 科診療 24!721-728,1982
11)三 村一夫,高橋 裕 ,平 出星夫ほか 1大腸穿孔.救
急医 8i707-714,1984
12)黒 田 豊 ,原田 昇 ,土屋涼一 i重症膵炎の手術適
応 と手術.消 外 9i595-602,1986