細径医用穿刺針の穿刺抵抗高精度評価技術 東北大学大学院工学研究科 教授 横堀 壽光 Tohoku University Department of Nanomechanics 1 研究背景 専用の鍼(針)を用いて皮膚・筋肉などを刺激 することにより生理状態を変化させ、病気を治 療する医術 鍼治療 切皮 ・・・鍼を身体に入れる動作 穿刺の2つの段階 刺入 ・・・鍼を奥に刺し入れる動作 針尖(鍼の先端)の形状 によって… 損傷は少ないが 刺入は容易だが、鋭利すぎるため 刺入が困難である 痛みや屈曲をまねきやすい 穿刺時の抵抗の大小に大きく影響 Tohoku University Department of Nanomechnics 2 研究の目的 実際の施術の際 「患者の痛みの軽減」 現状では… 「穿刺時の抵抗を小さくする」 術者の経験や感覚に頼るところが大きい 直径200μm以下の細径針穿刺抵抗試験 抵抗の大きさ、刺しやすさを力学的に表現する必要 鍼の先端形状による穿刺抵抗への影響 Tohoku University Department of Nanomechnics 3 実験装置 マイクロメータ ロードセル 冶具 鍼 電子天秤 被穿刺物 治具拡大図 Tohoku University Department of Nanomechnics 4 供試鍼 A(50mm,φ0.16) B(40mm,φ0.14) C(60mm,φ0.18) D(30mm,φ0.12) E(40mm,φ0.14) F(50mm,φ0.16) G(60mm,φ0.20) 供試鍼7種類×5セット(①∼⑤) Tohoku University Department of Nanomechnics 5 針尖拡大図 0.1mm E D C B A 0.1mm 0.1mm 0.1mm 0.1mm 0.1mm F Tohoku University Department of Nanomechnics 0.1mm G 6 実験方法 実験2 実験1 −実験1 切皮抵抗実験− 切皮時の最大荷重を計測 −実験2 刺入抵抗実験− 刺入変位δとその際の 荷重Pをグラフ化 実験1 実験条件 実験2 実験条件 使用した鍼 実験1 切皮抵抗実験 ①-B,F ②-C∼G ③-A∼G ④-A∼G ⑤-A∼G 被穿刺物 ゴム製の 薄膜 穿刺速度 毎秒約 0.015mm 実験2 刺入抵抗 実験 使用した鍼 被穿刺物 穿刺速度 ③-A∼G ④-A∼G ⑤-A∼G 蒟蒻 毎秒約 0.015mm Tohoku University Department of Nanomechnics 7 実験結果 −実験2 刺入抵抗実験− G(60mm,φ0.20) 3 ⑤:E2=0.271 ⑤:Py=0.91 E1=0.728 2.5 ③:E2=0.256 ④:Py=0.83 E1=0.755 荷重P(g) 2 ④:E2=0.229 1.5 ③ 1 ④ ③:Py=0.92 E1=0.681 0.5 ⑤ 0 0 1 2 3 4 5 6 7 変位δ(mm) Tohoku University Department of Nanomechnics 8 実験結果 −実験2 刺入抵抗実験− 荷重P(g) 安定穿刺部分 ∼変位に対してdP/dδが一定∼ 初期穿刺部分 ∼変位に対してdP/dδが増加∼ P=Aδn A≒1 n≒1.1∼2.0 変位δ(mm) Tohoku University Department of Nanomechnics 9 解析 −実験1 切皮抵抗実験− 1.0mm 傾き角θ3 0.3mm 傾き角θ2 0.1mm 傾き角θ1 Tohoku University Department of Nanomechnics 10 解析結果 −実験1 切皮抵抗実験− 4 3.5 切皮荷重(g) 3 2.5 2 1.5 1 相関係数:0.901 0.5 0 13.0 14.0 15.0 16.0 17.0 18.0 19.0 θ 1 (度) Tohoku University Department of Nanomechnics 11 荷重P(g) 解析 −実験2 刺入抵抗実験− Py E2:安定穿刺抵抗 E1:初期穿刺抵抗 変位δ(mm) Tohoku University Department of Nanomechnics 12 解析 −実験2 刺入抵抗実験− 評価関数 I = Py + E 1 2 2 穿刺能(刺入しやすさ)・・・ I値によって評価 異なる(Py、E1)の組み合わせをもつ鍼の穿刺能を 1次元的にランク付けできる I値が小さい程良い穿刺能をもつ Tohoku University Department of Nanomechnics 13 解析結果 −実験2 刺入抵抗実験− G(60mm,φ0.20) E1 (g/mm) 2.0 ④:Py=0.83 E1=0.755 1.0 ⑤:Py=0.91 E1=0.728 ③:Py=0.92 E1=0.681 0.0 0.0 1.0 P y (g) 2.0 穿刺能 I値・・・・原点からの距離に相当 Tohoku University Department of Nanomechnics 14 解析結果 −実験2 刺入抵抗実験− A(50mm,φ0.16) E 1(g /m m ) 2.0 ⑤:Py=0.57 E1=0.570 1.0 ③:Py=1.31 E1=0.819 ④:Py=0.50 E1=0.556 0.0 0.0 1.0 2.0 P y (g) Tohoku University Department of Nanomechnics 15 解析結果 −実験2 刺入抵抗実験− θ 3 によるI値の変化 1.7 1.6 I値(1/2乗) 1.5 1.4 1.3 1.2 1.1 1.0 相関係数:-0.771 0.9 0.8 0.7 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 θ 3 (度) Tohoku University Department of Nanomechnics 16 解析結果 −実験2 刺入抵抗実験− θ1∼3・・・大 I値・・・小(穿刺能が良い) θ1∼3が大きい 有効針部分が短い 有効針長さ θ1∼3が小さい 0.1mm 0.4mm (θ1) (θ2) 1.4mm (θ3) 有効針部分が長い Py観測部分 Pyの観測部分に近いθ3に最も影響を受ける Tohoku University Department of Nanomechnics 17 解析結果 −実験1、実験2の相違− 実験1「切皮抵抗実験」 実験2「刺入抵抗実験」 θ1・・・小 θ1・・・大 なぜ? 切皮しやすい ∼突破の際の最大荷重∼ 穿刺能がよい ∼侵入しながらの荷重∼ Tohoku University Department of Nanomechnics 18 解析 −実験2 刺入抵抗実験− 傾き角変化 θ2 − θ3 η= θ1 − θ 2 を定義 鍼の形状のイメージ η⇒大 ・・・有効針部分が長い η⇒小 ・・・有効針部分が短い Tohoku University Department of Nanomechnics 19 解析 −実験2 刺入抵抗実験− E2 E1 初期穿刺抵抗に対する 安定穿刺抵抗の比 小さいと… 大きいと… 安定穿刺抵抗に対して相対的に 初期穿刺抵抗は安定穿刺抵抗と 初期穿刺抵抗が大きい 近い値になる 使用目的に応じた選択が必要 Tohoku University Department of Nanomechnics 20 解析結果 −実験2 刺入抵抗実験− ηによるE 2 /E 1 の変化 1.0 0.9 0.8 E 2 /E 1 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 相関係数:-0.485 0.1 0.0 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 傾き角変化η Tohoku University Department of Nanomechnics 21 • まとめ 1.従来、針の穿刺能を評価する方法は、著者らによる腎臓 結石除去のための超音波穿刺術による医用穿刺針形状 設計以外は見当たらない。本技術は、経験的穿刺技術に 依存する直径が200μm以下の鍼灸針についての穿刺能 を評価するものである。 2.本方法によって、針の穿刺能を定量的に評価でき、施術者に 同じ穿刺能を持つ針を供給できる。 3.このことは治療の安全性維持に関して、術者の負担を大きく 軽減することに貢献するものである。 Tohoku University Department of Nanomechnics 22 • 想定される業界 1)医用穿刺針製造メーカー 2)試験機製造メーカー ・市場 1)医用穿刺針製造メーカー • 実用化へ向けた課題 1)試験機をコンピュータ制御による自動データ解析装置 にする。 Tohoku University Department of Nanomechnics 23 • お問い合わせ先 • 国立大学法人東北大学 • 産学官連携推進本部 知的財産部 • 丹下 和也 • 〒980-8579 宮城県仙台市青葉区 荒巻字青葉6-6-10 • TEL: 022-795-3218 FAX: 022-795-3220 • e-mail: [email protected] Tohoku University Department of Nanomechnics 24
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