軟磁性複合材料(SMC) - アイダエンジニアリング

NEWS RELEASE
平成 22 年 12 月 21 日
各
位
会 社 名
アイダエンジニアリング株式会社
代表者名
取締役社長
会 田
仁
一
軟磁性複合材料(SMC)の高密度成形法開発のお知らせ
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小型・軽量化、省エネ・省資源化、高機能化を実現する圧粉成形
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アイダエンジニアリング株式会社(代表取締役社長:会田仁一/以下アイダ)は、軟磁性複合
材料(SMC)を高密度に圧縮して優れた磁気特性を持たせる新しい成形法を開発いたしました
ので、お知らせします。
軟磁性複合材料とは、鉄粉表面を絶縁被覆でコーティングした金属粉材料を指します。
粉材は、スクラップが出ないため材料利用率はほぼ 100%となり、また 3 次元形状の成形も容易
であるため、省エネ・省資源・省工程に優れた成形方法と言われております。しかしながら従来
の圧粉成形技術では、粉材の圧縮密度が低いがゆえに、その活用範囲は限られておりました。
今回、アイダが新たに開発した「軟磁性複合材料(SMC)の高密度新成形法」は、粉材の圧
縮密度を飛躍的に向上させ、優れた磁気特性をもつ付加価値の高い機能性部品の加工を可能にし
ました。 今後、モータコアなどの成形分野に活用され、電磁機器部品の更なる小型・軽量化、
省エネ・省資源化、高機能化に大きく貢献する技術です。
【開発の背景】
現在多くの電磁応用機器に用いられる磁心(コア)は、電磁鋼板という板形状の素材をプレス
の打抜き加工により積み重ねた積層コアが一般的です。しかしこの積層コアは、板形状の素材
から円盤状の部材を打抜くため、材料歩留まり率が低いうえ、更に後工程として積層した電磁鋼
板を溶接などで固定する工程が必要です。また、板材を積重ねた形状のために、磁束の方向は2
次元方向のみという問題がありました。今日、多様な製品に使用されるモータなどの電磁応用機
器については、地球環境への負荷低減の観点から、更なる小型・軽量化、省エネ・省資源化、高
機能化を実現することが求められており、こうした課題の解決が望まれておりました。
そこで近年、鉄粉表面を絶縁被膜でコーティングしたSMC粉末の電磁応用が注目されるよう
になりました。
これは粉末なので、電磁鋼板に比較して材料歩留まりがほぼ 100%と圧倒的
に良く、また 3 次元形状の成形も可能となるため、磁束を 3 次元方向に流すことも容易とな
ります。
更に、電磁鋼板では打抜き後に必要となる溶接工程も不要となるなど、多くのメ
リットがあると考えられております。 しかしながら、SMC粉末材を電磁鋼板の代替材料とす
るためには、粉末成形された圧粉磁心の磁気特性の性能向上が大きな課題となっておりました。
アイダは、成形システムビルダとしてこの問題に着目して研究開発を進め、このたび新たな成形
方法の開発に至りました。
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【開発技術の内容】
従来、SMC粉末を成形した圧粉磁心では、密度に比例して磁気特性が向上することが知られ
ています。
しかし、一般の粉末成形で使われている単純な高加圧による高密度化法では、高密
度の圧粉磁心が得られても、加圧中に鉄粉にコーティングした絶縁被膜を破壊すると同時に、加
圧後の残留内部応力も大きくなり、結果として期待した磁気特性の向上が得られないことが障害
となっておりました。
そこで本開発では、金型内のSMC粉末成形メカニズムを解析し、密度
向上の主な阻害要因のうち、材料と金型内壁面の摺動摩擦抵抗および粉末材料同士の摺動摩擦抵
抗に着目し、その低減を可能にする新たな高密度圧縮成形法を開発した結果、積層電磁鋼板製の
磁心と代替可能な特性水準を得ることに成功いたしました。
7.75g/cm3
・ 密度:
(目標:7.7g/cm3以上)
・ 磁束密度B: 1.73T
磁界強度 10kA/m 時 (目標:1.6T 以上)
・ 鉄損W:
磁束密度1T、周波数 400Hz 時
37W
(目標:40W 以下)
(外径 50mm/内径 40mm×高さ 5mm のリングコアにて磁気特性を測定したもの)
【本成形法によりSMC粉末を成形した磁気回路構造部品の一例】
「磁気特性評価リング」
(左は熱処理前、右は熱処理後のもの)
「モーター用 3 次元ステータコア」
(左は単体、右は2個をセットにしたもの)
【電磁鋼板製磁心と圧粉製磁心の一般的な性能比較】
項目
磁気特性
積層電磁鋼板製磁心(コア)
圧粉製磁心(コア)
良好
飽和磁束密度および透磁率低め
ただし2次元でのみ等方向性
3次元的に等方性、渦電流損失無し
機械強度
良好
曲げ強度低め
形
2次元断面積層
3次元形状がネットシェイプで可能
状
【今後の展開】
アイダでは、電源メーカやモータメーカと連携してSMC粉末圧縮成形対象分野の拡大を進め、
自社の成形システムを活用して金型を含めた自動加工ラインの製品化を予定しています。
また、合金粉末(Fe-Si 粉、アモルファス粉等)の圧縮成形法の開発も進めていきます。
以 上
<本件に関するお問い合わせ先>
開発本部
技術研究所(担当:森永)
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TEL
042-772-5231
FAX
042-772-5238