Ⅳ.津波に伴う砂移動について ○コメント内容 砂移動に伴う地形の時系列変化を示し,取水塔付近における堆積の影響につ いて検討していただきたい。 (平成 19 年 12 月 5 日 耐震・構造設計小委員会 合同WG(第2回)) ○回答要旨 想定津波を対象とした砂移動に伴う地形の時系列変化を検討した結果,取水 塔付近における堆積厚は,取水塔呑口下端レベルを下回ることから,砂移動に より原子炉機器冷却系の取水に支障が生じることはないことを確認した。(pⅣ -1~28) 1. はじめに 想定津波により砂が移動した場合の影響について数値シミュレーションによ り検討し,原子炉機器冷却系の取水に支障が生じることはなく,原子炉施設の 安全性に問題とならないことを確認している。 ここでは,敷地周辺の地質・地質構造における海域活断層の評価の見直しを 踏まえ,津波に伴う砂移動について検討した。 2. 数値シミュレーションの手法 数値シミュレーションは,高橋ほか(1992)(1),藤井ほか(1998)(2) および 高橋ほか(1999)(3)の手法に基づき,津波の挙動とそれに伴う砂移動を同時に計 算し,その結果変化した地形を用いて次のステップの流れと水位を計算した。 なお,津波の数値シミュレーションの条件は,既往津波の数値シミュレーショ ンと同様である。 地形のモデル化に当たっては,海上保安庁等による最新の地形図(4)と測量によ る敷地周辺の詳細な地形図を用いて,既往津波の数値シミュレーションと同様 に設定した。また,敷地前面における砂の堆積状況については,測量により変 化が小さいことを確認している。 数値シミュレーションのフローを第 2-1 図に,砂移動の数値シミュレーショ ンの手法および条件を第 2-1 表に示す。 Ⅳ- 1 初期条件(水位・流速・初期地形) 計算開始 T=0 流体の計算 流体の連続式 流体の運動方程式 T=T+Δt1) 砂移動の計算 掃流砂量式 掃流層・浮遊層間の交換砂量式 高橋ほか(1992)(1)を除く 浮遊層の流砂連続式 掃流層の流砂連続式 水深の変更 No 計算終了 Yes 結果の出力 ○津波による地形変化 (堆砂・侵食分布) 1) 計算時間間隔Δt=0.5 秒にて計算を実施している。 第 2-1 図 砂移動の数値シミュレーションのフロー Ⅳ- 2 第 2-1 表 地盤高の 連続式 砂移動の数値シミュレーションの手法および条件 高橋ほか(1992)(1)の手法 渡辺ほか(1984) (5)の連続式 ∂Z 1 ⎧∂ ⎛ ∂Z ⎞⎫ =− ⎟⎬ ⎨ ⎜Q − ε Q ∂t 1 − λ ⎩ ∂x ⎝ ∂x ⎠⎭ 浮遊砂濃度 考慮せず 連続式 Brown 式(浮遊砂を含む) 流砂量式 2.5 Q = 10 τ* sgd 3 巻き上げ量 考慮せず の算定式 沈降量の 算定式 考慮せず マニング則より算出 摩擦速度の u * = gn 2 U 2 / D1 3 計算式 藤井ほか(1998) (2) 高橋ほか(1999)(3)の手法 の手法 ∂Z ∂Q E−S + α( )+ =0 ∂t ∂x σ(1 − λ ) ∂Z 1 ∂Q E − S + ( + )=0 ∂t 1 − λ ∂x σ ∂C ∂( UC) E − S + − =0 ∂t ∂x D 小林ほか(1996) (6)の実験式 ∂(C s D) ∂( MC s ) E − S − =0 + ∂x σ ∂t 高橋ほか(1999)(3)の実験式 1.5 Q = 80τ* E= 1.5 sgd3 Q = 21τ* sgd3 2 (1 − α )Qw σ(1 − λ ) ⎡ ⎧ − wD ⎫⎤ Uk z ⎢1 − exp⎨ ⎬⎥ ⎩ k z ⎭⎦ ⎣ E = 0.012τ* 2 sgd ⋅ σ S = wC b S = wCs ⋅ σ log-wake 則を鉛直方向に積分 した式より算出 マニング則より算出 u * = gn2 U 2 / D1 3 :水深変化量(m) t :時間(s) x :平面座標 Q :単位幅,単位時間当たりの掃流砂量 (m3/s/m) τ* :シールズ数 ε :底面勾配の係数(=2.0,高橋ほか(1992) (1)より) s :=σ/ρ-1 σ :砂の密度(=2,700kg/m3,当社調査結果より) g :重力加速度(m/s2) d :砂の粒径(=2.04×10-4m(中央粒径),当社調査結果より) ρ :海水の密度(kg/m3) U :流速(m/s) D :全水深(m) M :U×D(m2/s) λ :空隙率(=0.4,高橋ほか(1992) (1)他より) n :Manning の粗度係数(=0.03m-1/3s,土木学会(2002) (7) より) α :局所的な外力のみに移動を支配される成分が全流砂量に占める比率(=0.1,藤井ほか(1998) (2)より) w :土粒子の沈降速度(Rubey 式より算出 )(m/s) Z0 :粗度高さ(=ks/30)(m) kz :鉛直拡散係数(=0.2κu*h ,藤井ほか(1998) (2)より)(m2/s) ks :相当粗度(=d)(m) h :水深(m) κ :カルマン定数(=0.4,藤井ほか(1998) (2)より) C,Cb:浮遊砂濃度,底面浮遊砂濃度(浮遊砂濃度連続式より算出,浮遊砂体積濃度 1%相当を上限とする)(kg/m3) Cs :浮遊砂体積濃度(浮遊砂濃度連続式より算出,1%を上限とする) Z log-wake 則:対数則 u * U = κ {ln (h z 0 ) − 1} に wake 関数(藤井ほか(1998) Ⅳ- 3 (2) より)を付加した式 3. 評価結果 想定津波を対象とした砂移動の数値シミュレーションを実施した結果,取水 塔付近における堆積はいずれの手法においても,取水塔呑口下端レベルを 3m 程 度以上下回ることから,砂移動により原子炉機器冷却系の取水に支障が生じる ことはない。 取水塔は敷地前面の沖合約 600m,水深約 10m の地点に設置され,取水口は水 深の中間部に設けた中間取水方式になっており,砂による埋没を防ぐ構造とな っていることから,砂移動により原子炉機器冷却系の取水に支障が生じること はない。また,仮に,砂が取水口から流入した場合でも,取水槽に設けた沈砂 池において,沈降および堆積させる構造となっていることから,原子炉機器冷 却系の取水に支障が生じることはない。 取水設備概要図を第 3-1 図に,砂移動に伴う地形変化量の分布を第 3-2 図に, 砂移動後の水深分布を第 3-3 図に,取水塔付近における砂移動に伴う地形およ び全水深の時系列変化を第 3-4 図に,砂移動に伴う地形変化量分布および速度 分布の時系列変化を第 3-5 図に示す。 また,念のため,浮遊砂体積濃度の上限として,水理実験等における河床付 近の局所的な実測値 5%を用いた場合についても砂移動の数値シミュレーショ ンを実施した結果,取水塔付近における堆積はいずれの手法においても,取水 塔呑口下端レベルを 3m 程度以上下回ることから,砂移動により原子炉機器冷却 系の取水に支障が生じることはない。 浮遊砂体積濃度の上限 5%の場合の砂移動に伴う地形変化量の分布を第 3-6 図 に,砂移動後の水深分布を第 3-7 図に,取水塔付近における砂移動に伴う地形 および全水深の時系列変化を第 3-8 図に,砂移動に伴う地形変化量分布および 速度分布の時系列変化を第 3-9 図に示す。 Ⅳ- 4 スクリーン 沈砂池 取水塔 スクリーン 取水口 T.P.-6.0 3号機 スクリーン 沈砂池 取水塔 スクリーン 取水口 T.P.-6.0 4号機 第 3-1 図 取水設備概要図 Ⅳ- 5
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