タイ国で観察したイネの葉枯現象とその病原菌

タイ国 で観 察 した イえの葉 枯現象 とその病 原菌
赤
井
Il 雷
恭 ・大
重
弛 した とい う農家 も見 受 け られ た が, そ Uj場
無肥 料 栽 培 で あ るか ら, 疾 病 の蔓 延 状 況 も本
合 施 肥 は した が除 草 しな か った の で ,せ っか
邦 とや や異 な るよ うで あ って ,本 邦にお け る
くの肥料 が雑 草1
こ利 用 され て , イネ は黄 化 し
よ うな い もち病 の顕 著 な流 行 は 止 られ な い
C
現 在 タイ閏 にお いて最 も広 矧 年目こ蔓 延 , i
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E痛
て い るよ :
)な 場 合 も見受 け られ た (
写真 4)C
上 述 の よ うに, Pr
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iな ど砂質土嬢
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して い る もの は Or
に無 肥料 栽培 して い るC
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)で, イネ C
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)生 輔 ま机
ル ス 病 ) で あ るが , .
口
紺紺 T
柄 , 白葉 杵 柄 , 紘
して不 良 で あ るが , た とえ生 育 初 期 に か な り
枯病 , ごま葉 枯 病 な ど も, 隼 に よ って, あ る
の生 育 を 示 した場 合 で も, 後期 に は下 葉 が著
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de
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cを お こ して
い は地 域 的 にか な りの e
し く枯 れ とが って 〔
写 真 5,6), い もち病 に
い るよ うで あ る。 な か で も 白菜 枯 病 は 東南 ア
よ るイネ苗 の 「ズ リコ ミ」 症 状 に似 た様 相を
ジア諸 国 に お い て今 後 恐 るべ き病 告 の一 つ と
示 して い る こ とが あ る (
写 貢 7)。 この よ う
な る もの と見な され て い る。 以 上 の ほか , 条
(
す じ) 葉 枯病 , イ ネ 麹痛 ,黒 陣痛 ,小 粒 菌
核 病 な ど も各地 に認 め られ るが , そ の被 害 程
な症 状 は 明 らか に本 邦 にお いて い う秋 落 現 象
と見 て よ く,砂 質 土嬢 に無 肥 料 栽 培 す るた め
に土壌 中 の肥 料 分 が後 期 に欠 乏 しで 下葉 の枯
れ 上 が りを 来た し, さ らに ご ま葉 枯病 菌 そ の
度 は あ ま り著 し くな い よ うで あ るO
ごま葉 枯 病 が いわ ゆ る秋 落地帯 に よ くヲさP
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す る こ とは 周 知 の こ とで あ るが , タ イ国に お
他 の病 原菌 の 信 書 に よ って 助 長 され る もの と
見な して よ い 。
いて も各地 の砂 質 地 帯 によ く見 られ , きわ め
て 大 きな病 はん を形 成 す る場 合
あ る こ とな ど, 前 報
(
写真 1) a,
)
で 報 じた とお りで あ る。
1)
例 え ば Bangko
ko
j東 北 ,約 1
40-1
50km c
j
)
地 点 に あ る Pr
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i
,NakhonNayok 付
近 (図 1) な どは典 型 的 な 秋落 地 帯 で あ って,
細 か い砂質 の将 薄 な土 壌 の た め に, 根 の発 否
が悪 く,地 上 部 の発 育 もま た きわ め て不 良 で
あ り, 雑 草 の年 背 も少 な い (
写 真 2)。 も っ
棋 して 無 肥 料 栽 培 で あ るの で , 雑草 の住 輔 ま
。
しか し, まれ に肥 料 左
.
\
少 な い とい って よ い
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雑 草 が繁 茂 して い る場 合 もあ るが (写 真 3),
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と も,水 L
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lr恒 二は と ころ に よ って あ る程 度 C
,
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京大農芋 舶 t
F
.
物病 理学研究室 , 第 212L
i・
1
) 赤井京北 (
1
9
6
6
)『東南アジア研究ゴ 第 4/
i弟
3号,pp.5855
91.
--1
71--
図 1 バ ンコ クを 中心 とした平原地帯の略図
第 5巻 第 1号
東 南 ア ジア研 究
写 真 4 施 肥 した水 田中に雑草 が繁茂 して い る状
MaeRi
m,Chi
engmai
,Oct
.2
2,
況 (
1
9
66
撮影)
写 真 1 イネ ごま菓枯病 の大型病 はん
(
Pr
ac
hi
nbur
i付近 ,Oct
.2
5
,1
9
6
6
撮影)
写 真 2 砂質土壊 ,無 肥料栽 培 のため イネの
発 育 が極 めて悪 い状 況 (
Lampoon,
Chi
engmai
,Oc
t
.21
,1
9
6
6
撮 影)
写真 5 ごま葉枯病 その他 によ る水稲下葉 の枯れ上
がり (
Pr
ac
hi
nbur
i
,Oc
t
.2
5,1
9
6
6
撮影)
写 真 6 Pr
ac
hi
nbur
i付近 で観察 した イネ下葉
Oct
.2
5,1
9
6
6
撮 影)
の枯 れ上 が り (
写 真 3 水 田中の雑草
(
Pr
ac
hi
nbur
i
,Oc
t
.2
5,1
96
6
撮影)
1
72
-
17
2
-
亦 井 ・大 日 :タイ国 の イ ネの某 枯現 象 と病原 菌
表 1
耗
Pr
achi
nbur
i地 区童水稲葉 の病 はんか ら分離 した病原菌
病
地
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i
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*輸 送 中の条 件不良 のため, 標本が湿 り,付着 していた胞子が枯死葉 中に侵入 した ものか と考
え られ る。
**ご く微細 な砂土の地帯
籾 な ど と呼 ば れ て い る症 伏 は現 在 ご ま葉 枯病
菌 に基 づ く場 合 が最 も多 い とい わ れ て い る が ,
ご ま葉 情 病 菌 以 外 に も 多数 の菌 類 が 闇 与 す る
こ と も報 告 され て い る 。例 え ば 木 村 (
1
937
)
2
)
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s な ど多 数 の菌 類 を 分 離
し, 木 谷 , 大 畑 , 木 曽 (
1
967)3
)は 穂 枯 れ を ひ
き起 こす 菌 類 の うち に は , ご ま 葉 枯 病 菌 と同
写真 7 「ズ リコ ミ」症状 に似たイネ葉 の枯れ上
がり (
Pr
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撮 影)
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水 稲 の 秋 落 現 象 は , 上 述 の よ うに, 土 壌 の
げ るべ きで あ る こ とを 述 べ て い る
栄 養 的 欠 陥 を 主 閑 と して お こ る もの と い わ れ
筆 者 らは
イ ネ 疾 病 の 感 染 機 作 に 関 通 して , 葉 上 に お け
て い るが , 下 葉 を 侵 告 して そ の 枯 死 を 助 長 す
る病 原 菌 の 行 動 を 検 討 して い る が , 扶 落 現 象
る ご ま葉 枯 病 菌 そ の 他 は , l吊吏後 さ ら に穂 を
侵 して , 枝 硬 や 籾 の 変 色 , 枯死 の 原 囚 と な り,
ひ い て は 収 量 な らび に 品 質 に 著 しい 被 告 を 与
え る もの で あ るo この よ うな , 穂 枯 れ や 変色
-
。
1
2
) 木 村 笥二 (
1
9
3
7
)『植物病害研究』 3 (
京都),
pp.2
0
9
2
3
3.
1
9
6
7
)『r棚 1
:
3
) 木谷清美 ,大畑貫一,木 円 晴 (
病幸
u
E
]Vol
.3
3,No.2,p.81.
73 -
1
73
東 南 ア ジア研 究
Chi
engmai地 区産水稲葉 の病 はんか らの分離結果
表 2
産
第 5巻 第 1号
病
地
原
菌
学
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円形病 はん
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円形病 はん周縁不鮮 明
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細長 い病 はん
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どの原 因 で あ る病 原菌 を タ イ国 と本 邦 とで比
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較 す るた め ,現 在 Pr
achi
nburi
, Chi
engmai
一 方 ,葉 には ごま菓 枯病 の病 ほん の ほ か に,
な どで採 集 した 被 害 菓 お よ び穂 か ら病 原 菌 の
分離 を試 み て い る。
輪 郭 不 鮮 明 な病 はん が多数 認 め られ る場 合 が
あ るが, そ れ らか らごま葉 枯 病 菌 が分離 され
に関連 して お こ る葉 枯 れ ,穂 枯 れ ,変色 籾 な
上 表 は葉 か ら分 離 した結 果 で あ って , な お
る場 合 と され な い場合 とが あ る。 した が って ,
He
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予報 的 な もので あ るが, ごま菓 枯病 菌 ・(
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)の ほか 褐 紋病 菌 (
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,煤 紋病 菌 (にせ い もち病
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菌 )(
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病 原菌 の病原 性 と病 はん の形 態 とを再 確 認 す
る必要 を感 じて い る。 な お ごま葉 粘病 菌 の分
4
) 富永時任,土屋行夫 (
1
9
5
8)『日植病報』Vol
.
2
3,No.1,p.40.
5
) 伊藤誠哉,石 山哲爾 (
1
9
2
9
)『札幌農 林学会報』
No.9
6,p.21
8. 田中一郎 (
1
9
42
) 『水稲 の
病害』p.3
1
.
す る病 原 性 を 検討 中で あ り, そ れ らの結 果 に
1
7
4
離 率 は最 も高 か った が,下 葉 の枯 れ上 が り と
の 関係 を知 るた め に,上 記 の諸 菌 の イネ に対
つ いて は改 めて 報告 す る。
6
) G.W .Padwi
c
k(
1
9
5
0
) Ma
nual o
f Ri
c
e
,pp.3
9
43.
Di
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e
- 1
7
4-