薄層クロマトグラフィー (TLC:Thin Layer Chromatography)

薄層クロマトグラフィー
(TLC:Thin Layer Chromatography)
多成分混合物で、溶媒に溶けるものであれば、
その分離法としてはクロマトグラフィーが一番
便利である。なかでも最も迅速に簡便な方法
が 、市販の既製プレートを用いる薄層クロマ
トグラフィー(TLC)である。
ろ紙を支持体とするペーパー法はTLCにとっ
てかわられ、カラム(分離管)を用いる常圧カラ
ム法は分取法としてだけに用いられることが多
くなっている。
薄層クロマトグラフィー
(
) は
物質を感度よく、速く、簡単に、安価に分析す
る方法で、反応の進行を追跡する際に有効であ
る。TLC板はガラスなどのプレート上にシリカゲ
ル等の吸着剤を塗布したものである。
のサ
ンプル量でも分析可能であるが、通常の分析に
用いるサンプル使用量は
である。試料
の溶液 (アセトン溶液等)をTLC板の下端から約
0.5 cmのところにキャピラリーを用いてスポッ
トし、これをよく乾燥させた後、TLC板の下端か
ら約0.3 cmまで溶媒につかるようTLC用展開槽に
溶媒 (化合物によって種類が異なる)を満たし、
この中にTLC板を慎重に入れその下端を溶媒に浸
し展開する。
展開中は、ふたをし、展開槽内を溶媒の飽和蒸気
で満たされるようにして、
のみで溶媒を
移動させる。TLCの上端から約0.5 cmのところまで
展開されたら、TLC板を取り出す。素早く展開溶媒
の先端に印を付ける。UV照射装置 (短波長254 nm、
長波長364nm)により、UV吸収のあるスポットを確
認し、濃く見える部分には実線を、薄く見える部
分は点線で鉛筆により印をつける。必要に応じ、
する。
を計算する。Rf値は溶媒が移動した距
離に対しての原点からスポットまでの距離の比で
ある。最も、
従って、展開溶媒の選択は重要である。
展開溶媒先端
物質B Rf = B/C
C
B
物質A Rf = A/C
A
1~2cm
原点、直径1 mm以下
溶媒液面
1~1.5cm
粗結晶
精製結晶
展開槽とTLC
TLC-1
参照:有機合成実験法ハンドブック.8章.P218
検出薬
硫酸-硫酸
セリウム
調製法
使用法
濃硫酸をそのまま用い
るが、ときには希釈して
用いる
噴霧後、加熱
(100~120℃)
硫酸セリウム(Ⅲ)の2%
硫酸(1M)溶液
KMnO40.5gを硫酸
15mLに溶かす(爆発性
があり、少量つくる)
硫酸Na2Cr2O7
Na2Cr2O73gを水3g、硫
酸10mlに溶かす
結晶(ヨウ素の0.5%クロ
ロホルム溶液を用いても
よい。あるいは、適量の
ヨウ素を細かく砕き、シリ
カゲルに吸着させてもよ
い)
呈色
適用化合物
褐色~黒
色
有機化合物全般
噴霧後、加熱
(100~120℃)
褐色
有機化合物全般
展開溶媒を加
熱除去後、50℃
に冷却して噴霧
ばら色地
に白色点
有機化合物全般
黒色。常
温では赤
地に緑点
有機化合物全般
褐色。放
置すると
退色する。
有機化合物全般
噴霧後、加熱
(100~110℃で
数分間)
密閉容器の底
に結晶を少量
入れ、ヨウ素蒸
気で発色する
(ヨウ素溶液は
噴霧。シリカゲ
ル吸着はTLC
板を埋めこむ)
SbCl3(三塩化
アンチモン)
リンモリ
ブデン酸
25%クロロホルム溶液
噴霧後、加熱
(100~110℃で
数分間)
種々の色
テルペン、ステロ
イド、配糖体、ビ
タミンなど。放置
すると変色。
5~10%エタノール溶
液
噴霧後、加熱
(100~120℃)
種々の色
有機化合物全般
Ce(NH4)2(NO3)60.5g+(
NH4)6Mo7O24,4H2O24
g+水500mL+硫酸
28mL
噴霧後、加熱
(100~120℃)
主に青色
有機化合物全般
ニンヒドリンの0.2%ブ
タノール溶液
95mL+10%酢酸水溶
液5mL
噴霧後、加熱
(120~150℃で
10~15分間)
アミノ酸・
アミノ糖
(赤色)、脂
質(赤紫)、
ビタミン類
(すみれ
色)
アミノ酸
Ⅰ液:次硝酸ビスマス
1.7g+酢酸20mL+蒸留
水80mL
Ⅱ液:ヨウ化カリウム
40g+蒸留水100mL
(両液は暗中に保存)
使用直前にⅠ
液15mL、Ⅱ液
5mL、酢酸
20mL、蒸留水
70mLの混液を
噴霧。発色の弱
いときは加温
橙色
アミン、アルカロ
イド、有機塩基
2,4-ジニトロ
フェニルヒド
ラジン
0.5%塩酸2M溶液
噴霧
黄色~
赤
アルデヒド、ケ
トン
塩化鉄(Ⅱ)
1%水溶液
噴霧
種々の
色
フェノール、タ
ンニン
ブロモクレ
ゾールグ
リーン
水-メタノール(20:
80)の0.3%溶液
100mLに30%Na
OH8滴を加える。
酸性溶媒を
用いたときは
完全に溶媒
を除去した
後、噴霧
黄色~
赤
カルボン酸
試料の性質(溶解度)
分離モード
固定相
使用頻度
化合物の種類
極性から弱極性
溶媒に可溶
吸着
アルミニウムオキシド
シリカゲル
脂溶性
ポリアミド
非電解質
順相分配
セルロース
シリカゲル-NH2
試料
シリカゲル-CN
弱酸性から無極性
溶媒に可溶
逆相分配
シリカゲル-C2
水溶性
シリカゲル-C8
イオン対
電解質
イオン交換
シリカゲル-C18
ステロイド
テルペノイド
..
....... . ..
キーゼルグール
..... . ...
よく使用
使用
脂質
ビタミン
カロテノイド
アルカロイド
アミン
フェノール
炭水化物
カルボン酸
エステル
糖
アミノ酸
タンパク質
シリカゲルジフェニル
核酸
ヌクレオチド
PEI-セルロース
有機イオン
参照:有機合成実験法ハンドブック.8章.P216
CH3
たとえば・・・・
(実際のRf値は自分で測定してみよう)
OH
順相(極性固定相)
AcOEt/hexane
(1/1)
AcOEt/hexane
(1/4)
CHCl3/AcOEt
(1/1)
AcOEt
THF
H2 O
逆相(非極性固定相)
CH3CN
CH3CN/H2O
(1/1)
CO2H
電気泳動
SDS - PAGE の原理
ポリアクリルアミドゲル電気泳動(Poly-Acrylamide Gel Electrophoresis)は、アク
リルアミドを重合させたゲル中で荷電粒子に電圧を付加し、その移動度によってそれ
ぞれの粒子を分離できることを利用している。ポリアクリルアミドゲルは分子篩いとし
て働き、ゲル中では小さい粒子ほど動きやすく大きな粒子ほど動きにくい。また、ゲ
ルの濃度を変えることで、移動度を調整できる。
しかし、蛋白質はそのアミノ酸配列により、それぞれ独特な
立体構造を持ち、同じ分子量でもその移動度が異なる。また
その蛋白質を構成するアミノ酸残基の電気特性(等電点)も
それぞれ異なり、同じ電圧でもかかる力が異なりそれが移
動度にも反映する。
この問題を避けるために、負電荷界面活性剤であるSDS
(Sodium dodecyl sulfate) で変性させてから行なう方法を
と言う。SDS は洗剤であり水溶液中では非極性基を
内側にしてミセルを作る。
この非極性基が、蛋白質のアミノ酸残基間の疎水結合を
壊すのでポリペプチド鎖はほぼ直鎖状に引き伸ばされ、ま
た、イオン性残基の電荷はミセル表面の負電荷にマスクさ
れ単位長さ当たりほぼ一定の電荷となる。