建築免震用積層ゴム支承の JIS を制定 -免震ゴムのより一層の普及を目指して- 平 成 23年 8月 22日 経済産業省産業技術環境局 産業基盤標準化推進室 地震の多い我が国は、免震用積層ゴム支承(以下、「免震ゴム」という。)の品 質、製造方法及び試験評価方法に関して世界トップレベルの技術力をもっていま す。阪神淡路大地震において、免震ゴムの有効性が実証されて以降、免震ゴムの 国内市場は拡大しつつあるものの、生産者・使用者間でその品質、要求特性及び 試験評価方法について共通の指標がなく、そのため製品がもつ性能を客観的に評 価することが困難な状況にあったことから、早期のJIS制定が望まれていました。 そこで、経済産業省では、建築免震用積層ゴム支承の品質、試験評価方法等を 標準化し、その普及促進に貢献することを目的として、2件の日本工業規格(JIS K6410-1、-2 建築免震用積層ゴム支承-第1部:仕様、第2部:試験方法)を平成 23年8月22日に制定・公示しました。 【建築免震用積層ゴム支承の構造と施工例】 建築免震用積層ゴム支承とは、ゴムと鋼板を交互に積層して貼り合わせたもので、建築物の 基礎部分に配置することにより、上部構造の振動周期を地震の周期帯域より長周期化させ、 地震の力が構造物に伝わることを抑制するものです。 提供:日本ゴム工業会 1 1.目的及び背景 (1)地震の多い我が国は、免震ゴムに関する品質、製造方法及び試験評価方法に関し て世界トップレベルの技術力を保有していることから、我が国が主導して原案作成を 行い、平成17年に免震ゴムに関するISO規格(ISO 22762-1,-2,-3の3部 構成)が発行されました。これらのISO規格は、免震ゴムに関する初の国際規格であ ること、また、それぞれの国や地域での地震規模や性質等が異なることから、具体 的な基準値の規定よりも、評価指標や考え方の共通化に重点が置かれた内容とな りました。 (2)一方、我が国は世界で最も免震建物の実績も多く、その技術水準においても世界を リードしており、より免震ゴムを普及させるためには、生産者・使用者の間で、その品 質、要求特性及び試験評価方法に関する業界指標の共通化と、安心して使用できる 品質水準の確保が必要となり、我が国の実状に応じた品質基準値をできるだけ盛り 込んだ日本工業規格(JIS)を早期に制定することが望まれていました。 (3)このため、免震ゴムの品質、試験評価方法、検査、表示項目等を標準化し、その普 及促進に貢献することを目的として、日本ゴム工業会 1)は、平成21年度に建築免震 用積層ゴム支承の使用者団体、学識経験者、生産者等からなる原案作成委員会(委 員長:東北大学原子分子材料科学高等研究機構 西敏夫教授)を設置し、JIS 原案 の取りまとめを行い、経済産業省に対し JIS 制定の申し出を行いました。経済産業省 は、この JIS 原案について日本工業標準調査会(JISC)での審議を本年5月に行い、 8月22日にJIS K6410-1(建築免震用積層ゴム支承-第1部:仕様)及びK64 10-2(建築免震用積層ゴム支承-第2部:試験方法)として制定・公示しました。 (4)これらのJISが制定されることによって、建築免震用積層ゴム支承の性能に関する客 観的な評価指標及び評価方法が示されることとなり、建築物の設計・施工に係わる 企業だけでなく、使用者側においても、製品性能や品質について客観的評価に基づ く判断や比較検討が可能となります。その結果、建築免震用積層ゴム支承に対する 信頼が高まり、一層の普及が図られることが期待されています。 (5)経済産業省としては、これらのJISの制定によって、国内、さらには国際市場におい ても、日本の優れた免震建物が適正に評価され、その普及が促進されることを期待 するとともに、免震技術、積層ゴム支承の更なる技術開発の促進に寄与することを期 待しています。 注 1) ゴムメーカーの団体であり、ゴム分野の数多くの日本工業規格(JIS)の原案作成や国際規 格(ISO)の提案活動等を行っています。 2 2.制定した JIS のポイント (1)JIS K6410-1,K6410-2の主な規定項目は以下のとおりです。 K6410-1 建築免震用積層ゴム支承-第1部:仕様 適用範囲 建築物を地震から保護するための免震構造に用いる積層ゴム支承について規 定。 主 な 規 定 用語及び定義 主な用語を定義 項目 記号 主な記号を定義 種類 構成される材料によって、積層ゴム支承の種類を以下 の3種類に分類 ・天然ゴム系積層ゴム支承(NRB) ・高減衰ゴム系積層ゴム支承(HDR) ・鉛プラグ入り積層ゴム支承(LRB) 要求事項 以下の項目について、要求性能や使用材料、基準値 の定め方等を規定 ・ゴム材料の要求性能 ・フランジ、連結鋼板及び中間鋼板に用いる材料 ・鉛プラグの使用材料 ・積層ゴム支承の要求性能 ・寸法及び許容差 ・製品外観 検査 ゴム材料、積層ゴム支承、それぞれについて、形式検 査項目と受渡検査項目を規定 製品の表示 表示項目、表示の場所及び方法について規定 K6410-2 建築免震用積層ゴム支承-第 2 部:試験方法 適用範囲 建築物を地震から保護するための免震構造に用いる積層ゴム支承の試験方 法について規定。 主 な 規 定 用語及び定義 主な用語を定義 項目 記号 主な記号を定義 ゴム材料試験 ゴム材料について、以下の試験方法を規定 ・引張特性試験 ・熱老化特性試験 ・硬さ試験 ・接着特性試験 ・ぜい化特性試験 ・耐オゾン性試験 積層ゴム支承試験 積層ゴム支承について、以下の試験方法を規定 ・圧縮特性試験 ・せん断特性試験 ・せん断特性の各種依存性試験 ・終局特性試験 ・引張特性試験 ・耐久性試験 寸法測定 平面寸法、高さ、傾き、水平方向のずれ、フランジの平 面寸法、フランジのボルト孔位置の測定方法を規定 3 3.JISの閲覧方法 平成23年8月22日付で制定公示し、8月23日以降、次の日本工業標準調査会のJI S検索のURLで閲覧が可能です。 http://www.jisc.go.jp/app/JPS/JPSO0020.html (本件に係る問い合わせ先) 産業技術環境局 基準認証ユニット 産業基盤標準化推進室 担当者:高橋、小松 電話:03-3501―1511(内線 3423~3425) 03-3501-9277(直通) (参考1) 市場動向 免震建築物棟数 :国内総計 2,600棟(※戸建て免震:3,800棟) 免震建築物の用途別内訳 免震建築物の年推移(※戸建て免震を除く) 大臣認定 告示免震 4 提供:(社)日本免震構造協会 (参考2) 免震効果の例 建築物の地震対策としては、①免震、②耐震、③制振の3構法があります。平成23年3 月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(震央:N38.103/E142.860°、規模:M9.0、深さ: 24km)の際の3構法(構造)の事例(いずれも霞が関の中央合同庁舎)を以下に示します。 建築物の形状等が異なるので単純な比較はできませんが、免震構造建築物では、地面 の揺れ104ガル(地震の揺れの強さを示す加速度の単位)に対して、最上階の揺れは9 4ガルに低減されました。 ①免震構造(中央合同庁舎3号館) ②耐震構造(中央合同庁舎6号館B・C棟) ③制振構造(中央合同庁舎2号館) 提供:(独)建築研究所 5
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