畜試だより - 高知県庁

高知県
畜試だより
第101号
平成16年
年
頭
所
皆さん新年明けましておめでとうございま
す。
元旦からの数日は、例年になく暖かく穏や
かでしたが 、この天候と同様に、皆様にとっ
て平穏な年であってほしいと願っています。
前回発行の畜試便りは、記念すべき第10
0号でしたが、これを節目として新たな気持
ちで一歩を踏み出したいと考えています。
正月には、今までの仕事を振り返るととも
に 、今後の取り組みについて考えてみました 。
私たちの仕事の目的は、一言で言えば「畜産
に対する生産技術の貢献」ですが、その内容
は、
①飼料作物の生産・利用や飼育管理技術等
の試験研究
②家畜や家きんの改良増殖と種畜や種卵の
生産・譲渡
③生産技術の普及推進や講習会への参画
④家畜文化の社会教育・啓蒙などがありま
すが、
具体的な業務内容を個々に振り返って見る
と、実に多岐にわたっており 畜産農家や関係
者の皆さんの仕事と密接に関係していること
を再認識しました。
今後とも、その役割を果たしていくために
は、皆さんに畜産試験場の持つ多様な機能を
もっと理解していただき、より一層活用して
いただける 取り組みが必要ですし、これまで
以上に目標の明確化と重点化を図り先端的な
基盤研究と実用化研究を結合した、実践的な
昨年暮れ突如 として 、米国 にお け る
BSE 発生 ニ ュー ス 。正午 の テレビ ニ ュ
ー スでは県内 の緊急防疫対策 会議 の状
況 を放映 。素早 い危機管理 の対応 が問
われ る昨今 であ る 。一国 の経 済 まで も
揺 るがす ような人獣共通感染症や海外
マ
窓
ド
-1-
1月
感
畜産試験場長 小川 清之
取り組みを進めたいと考えています。
併せて、畜産業を取り巻く環境や社会のニ
ーズに的確に対応し、畜産関係者だけではな
く広く県民の皆さんにも直接的に貢献できる
公的機関として、保有する機能を、より多角
的な視点で活用し存在意義をアピールしてい
くことも必要だと考えています。
そのため、来年度からは畜産業の発展に関
係する試験研究を、従来からの高知大学農学
部や近隣各県等に加えて、森林技術センター
や高知大学医学部との共同研究や、工業技術
センターや高知女子大学、民間企業の協力を
頂きながらすすめ、畜産試験場だけでは得ら
れない研究成果の確保と技術の実用化に向け
て、産・官・学がより一層連携して取り組む
計画です。
さらに、畜産試験場には年間約1,200
人もの県民の方々が視察に来られますが、家
畜や家きんがいることや牧歌的な風景は児童
生徒の社会教育の場として、中高生には職業
や進路体験の場として、また、大学生には学
外体験実習の場として活用されていますし、
最近では福祉関係者が訪問する対象施設とし
て活用したいとの相談もありました。
「畜産に対する生産技術の貢献」を柱に、
本県産畜産物への理解も深めて頂けるよう、
様々な取り組みを進めていきたいと 考えてい
ますので、今後とも活用下さるようお願いし
ます。
伝 染 病 の発 生 は 、対 岸 の 火 事 では な
い。
ひ とたび家畜 伝染病 が発生 すれば 、
試 験 研 究 に も少 な か らず 影 響 を及 ぼ
す 。そ うな らぬ よ う、あ らた めて供試
家畜 の健康に注意 を喚起 したい。
地域畜産
森林との共生を目指して (育林放牧、林道の下草刈り、鹿害対策)
【はじめに】
ヒノキの葉っぱしかないか?」…とまで考 えたか
それは県政策総研・谷本氏の仲立ちにより、
どうかは 定かでないが、これを食べる可能性が
県庁畜産課OB・上田孝道氏と 、山本森林( 株)
出てきたので牧区から閉め出す。
そして林道
社長・山本速水氏の出会いから 始まった。
( 400ha 内 で総 延 長 42km )へ と誘導する 。こ
山本森林は、大豊町で 400 ヘクタールの植林を持
の時から『林道モー刈る』予備調査が始まった。
つ林業経営者 である。山本氏のみならず林業家
草木も芽吹き始めた 3 月 13 日 、更に妊娠牛 3
の 最大の悩みは、植林し たスギ・ヒノキの生長点を
頭を追加し『林道モー刈る軍団』を拡大した。林
野 生 鹿が こ と ご と く食 い荒 らす 事で あ る ら し
道沿いの栄養豊富 な軟らかい 野草を、見事なま
い。
でに『掃除刈り』してくれていた。
野生鹿というもの、本来は下草を食べて生活
していたはずが、その数の増加により冬場の食
【冬季育林放牧の結果】
糧が不足し、幼木の新芽や生長点などを好んで
入牧前 には雑木しか見えていなかった牧区に
食べるようになったと 言う話がある。
は、植林していた スギ・ヒノキが顔を出していた。
そこで平成 14 年 10 月 、谷本・上田・山本の
放牧地近辺で鹿を見かけなくなったのには、
三氏での面談が行われ、更には現地調査、そし
牛の排泄物の匂いを鹿が嫌っているのか、電牧
て 吾 北 村 の安 藤 忠 広 氏 に放 牧の 意向 を打 診す
に接触してそのパワーに圧倒されたのか 。…色々
る。
な事が解明されようとしているが、植林の食害
山主(山本森林)と牛主(安藤氏)の面談と
を防止できた事だけは確かな事実である。
現地調査で、 10 月末には合意に達し 14 年 11
月には畜産試験場・山本氏・上田氏・安藤氏・
【おわりに】
大豊町役場・家畜保健所を含め、総勢 15 名で
たかだか 40 年位前まで、和牛は農耕牛とし
2ha の『 電気牧柵冬季育林放牧地』が完成した 。
てその主役を果たしながらも 、繁殖母牛として
の役割も充分に果たしていた 。しかし 、今やそ
【冬季育林放牧地の概要】
んな光景を見ることも難しくなってしまった。
植 林 後、 2 年 経 過 の スキ ゙ と ヒ ノ キ の若 林 1.5ha
山に放つことで 、牛が持っている本来の能力
( 3,000 本/ ha)と、牛の水源地確保 のため、30
を引き出し、林業家の頼もしい『助っ人』とし
∼ 40 年生のスギ林 0.5ha を電気牧柵 で取り囲ん
ての活躍が大いに期待されている。
である。
嶺北地域には大豊町に限らず、そんな魅力あ
傾斜は緩やかであり 、獣道(けものみち )が
る場所があちこちに点在している。
多く、見晴らしの良い高台と獣道には多数の鹿
【中央家畜保健衛生所嶺北支所
色原
の糞が見受けられた。
ササ以外に牛のエサとなるべき植物は見当たらな
い。ここに 12 月 15 日、 5 名が集合し安藤牛 2
頭(放牧経験牛・妊娠中)を誘導する。
【放牧中の経過】
年明けて 2 月上旬、この間寒波・積雪などが
幾度かあったものの、2 頭の牛はいたって健康 、
24 時間自由気 ままな生活を謳歌していた。
しかし、牧区内のササを食べ尽くした牛達は「 あ
とは食えるとすれば、うまそうではないが スギ・
写真『林道モー刈る軍団』
-2-
豊彦】
地域畜産
檮原町畜産振興会「井戸端会議」のはじまり
檮原町には昭和 57 年に発足した畜産若妻会
やらで、思いのほかお話が弾みました 。家畜市
と い う 組織が あ り、「檮原の若 妻」の存在をご
場で顔は見たことがあるけどご主人のお名前し
存じの方も多いと思います。毎月の子牛検査や
か知らなかった、あるいは「うちへ来ちゅう牛
勉強会、家畜市場のお手伝い、県の畜産まつり
はおまさんとこで 生まれたがかね」という話な
への出店など精力的に活動しています。しかし
ど、あらためてお 互いを知る機会にはなったよ
発足から約 20 年、生産者全体 の高齢化につれ
うに思います。今後こういう 場をもつことにつ
メンバーが減少していることも 事実です。
いて参加者の方々から賛同をいただきました。
若妻会の会員は、今まで飼い続けてこられた
のは、勉強の場であり 愚痴をこぼす場でもある
第2回 (7 月下旬)
若妻会のおかげ、と言います。この言葉の裏に
ト牧場に行ってみたいという 声があったのでバ
は会への出席を応援してくれている家族への感
ス2台を仕立てて訪問しました。13 名が参加 、
謝の気持ちがあるのは 言うまでもありません。
運転は農協と役場のそれぞれの担当課長が買っ
一方でもう 少し年配のご婦人方の間では「私
て出てくださいました。あいにくの雨模様で放
は若妻会に入れてもらえなかった(発足当時は
牧場はほとんど視界がききませんでしたが、集
35 歳以下という年齢制限 があったそうです )。」
約管理施設では親子分離柵に興味が集中しまし
という冗談とも本気ともつかぬお声が未だに聞
た。参加者の中には預託していない方もいまし
かれます。
たので、放牧に関心をもっていただけたかと思
そんなこんなの話の中で、町内で牛を飼って
牛を預けている カルス
います。
いるご婦人方 の集まる場がほしい、という 声が
聞こえてきました。堅苦しい勉強や研修でなく 、
第3回以降の計画はまだ立っていませんが、
「昔はこんなことをしよった」というざっくば
おしゃべり、食事、遊びの中にときおり勉強も
らんな話をしたい・聞きたい、日ごろ心にたま
取り入れ、専門の方から牛の話を伺うこともし
っていることを口にしてみたい 、そしてときに
ていきたいと思っています。公の場ではなかな
は牛の話もし、時間がとれれば 牛を購入してく
か聞けない相手・内容でも、座敷でお茶を飲み
れた肥育農家 へも足を伸ばして ・・・、という
ながらなら話しかけることができるでしょう。
ような内容の、気楽に気軽に誘い合って、出ら
年内に第3回を開催できたらと考えています。
れる人が出られるときに集まる、いわゆる 井戸
9 月 24 日高原家畜市場の際には嶺北の畜産
端会議をしたい、というのです 。同じ町内でも
婦人の方々約 20 名が来場くださいました。全
ふだんはあまり行き来のない人もいますが 、家
国レベル では「モーモー母さんの集い」という
に牛がおる、その一点を共通項 に、檮原町畜産
集まりもあり、牛飼いは婦人でもっていること
振興会の一部「井戸端会議」として集まること
を実感します。家畜市場を訪ね合ったり、食事
になりました 。
をしながら話をしたり、という交流の輪を広げ
ながら、地域では一人一人に光のあたるような
第1回 ( 6 月末)
農家の約半数の 17 名参
集まりを 細く永く続けていけたらと願っていま
加、役場と家畜保健所 の職員も加わり(全員女
す。
性 !! )農協二階の座敷でお弁当を広げました。
【高幡家畜保健衛生所檮原支所
特に議題は設けず隣り合った方どうしお茶を飲
みながらおしゃべりする程度でしたが、時に全
体に笑いの輪が広がるといった 具合。牛を飼っ
てもう何十年になるといった思い出話やら、70
歳を過ぎてもまだ嫁の立場で・・・という 内容
-3-
浜田けい】
研究情報
[成果情報名]酒米中ぬかのペレット調製と利用技術
[背景・ねらい]
度のペレットを製造可能で、生産コスト は1 kg
高知県内の酒造メーカーから排出される 酒米
当たり労働費を含め 46.3 円で調製できる 。(表
中 ぬかは 、 11 月から 3月にかけて年 間 約 600
3)
t程あり、安価で栄養価値も高いことから 、約
2.利用技術
半分の量が畜産農家に利用されている。しかし 、
ペレットの利用は、肥育牛 の出荷2ヶ月前か
水分含量が高いため、夏季を中心とした高温期
らとし、給与する濃厚飼料の9%(重量比)ま
での保存が難しく、また単体で米ぬかを牛に給
でをペレットに置換することができる 。単味で
与すると、採食性が極度に落ちることから 他の
の給与が可能となり 、繁殖雌牛 の採食し好性は、
飼料とよく混合して給与する必要がある。
配合飼料 に匹敵する。また、成分の損耗がなく
そこで、年間を通じて利用できるよう保存性
長期保存( 5ヶ月以上 )が可能となる。
( 表1、
の改善と採食性の向上を目指して、酒米中 ぬか
2)
を乾燥ペレットに調製し、新たな地域飼料資源
[成果の活用面・留意点]
として活用する。
1.飽和脂肪酸組成が増加する可能性 がある。
[成果の内容・特徴]
2.本飼料を給与することで 、胸最長筋のメト
1.調製技術
ミオグロビン酸化割合を抑制(肉色の維持)
酒米中ぬか 10kg 当たり海洋深層水を2∼3
する可能性がある 。
リットル添加・攪拌後 、チョッパー型造粒機と
3.流通業者へのアンケート では、米ぬかで肥
乾燥機を用い、直径 5mm 、長さ 1cm のペレッ
育された 枝肉に付加価値があると92%が認め
トに調製する。造粒機 1時間の稼働で 100kg 程
た。
表1
酒米中ぬかペレット成分値(DM%)(2000)
粗蛋白 粗脂肪
可溶無窒素物
粗繊維
酒米中ぬか
15.90
7.14
72.03
1.25
ペレット( 製造時 ) 15.04
4.91
74.57
0.96
ペレット(5ケ月保存 )14.70
4.57
75.97
0.73
粗灰分
DCP
3.67
11.45
4.53
10.83
4.03
10.58
TDN
ビタミンE(mg/kg)
89.00
23.0
85.97
11.0
86.18
−
注
表2
ペレットは深層水原水添加
酒米中ぬかペレットの採食性(2002)
メニュー
初回選択率 %
写真1
酒 米 中ぬ か ペ レ ッ ト
φ5.01mm
L 9.98mm
時間内採食率 %
酒米中ぬか(ペレット)
60.4
81.3
酒米中ぬか(生)
18.8
19.5
配合飼料
70.8
93.6
注 1.5kg/2分間の採食率(4頭×6回の平均値)
表3
酒米中ぬかペレットの生産コスト試算値(原物中)(2002)
区 分
稼働時間
年間処理量
年間費用
ペレット
166hr(100回)
10000kg
462,900円
1kg当り
46.3円
TDNkg当り
56.8円
注 サイレージ重量比=稲わら4:深層水6:米ぬか1.2
-4-
研究情報
[成果情報名] 土佐ジロー(交雑鶏)効率生産のための自然交配技術
[背景・ ねらい ]
3 .雄 の種鶏 の利用 は、2 .5年 程 度ま で に終わ
本県 では 、卵 ・肉及 びその 加工品 を利用 する 、
特 産 鶏 土 佐ジ ロ ー を飼 育 し て い る が、 そ の種 鶏
ら せ る(図 3 )。
4 .人 工 授 精を 行 な わ な く て も 、 効 率 的 に 土
で あ る 土 佐 地 鶏 ( 雄) と ロ ー ド ア イ ラ ン ド レ ッ
佐ジ ロ ー が 生産で き る 。
ド( 雌 ) は、 体 の 大き さ の違 い か ら、 一 般 的 に
5 .体 型 や 種類 が 異な る 種 鶏 同 士 の自 然 交 配
は自 然 交 配に よ る 受 精 率 は極 め て 低く 、 こ れ ま
で も 、受 精 率 の高 い 種卵 が 容 易に 採 取で き る 。
では 人 工 授 精 に よ り対 応 し て き た 。そ の た め 種
[成 果の活 用 面 ・ 留意点 ]
鶏は ス ト レ ス で 傷 みが 早 く、 ま た 多く の 人手 、
1. ケージ 飼育よ り平飼 いが望 ましい 。
時 間 及 び 労力 を 必 要と し 、今 後 増 羽を 図 る う え
2 . 同 居 時 、 雌に 断 嘴を 実 施 し て お く と 、 へ い
で大き な障害 となっている。
死率 の減少等種卵 の生 産 性が高 まる。
そ こ で 、受 精 率に影 響を及 ぼす要 因を調 査し 、
自 然 交 配が可 能と な る方法を 研究し た。
3 . 雄に 対 す る体 重 比が 、 小 さい 雌 の系 統 を 選
定す る こ と が望ま し い 。
なお 、 種鶏 の 雌 が雄 よ り大 き い 、異 な る鶏 種
4. 受精率 は、四 季を通 じて変 化する (図4 )。
による 自 然 交 配の研 究 例 は少 ない。
5 . 土佐 ジ ロ ーの 生 産を 自 然 交 配 法 で行 う こ と
[成果 の内容 ・特徴 ]
に よ り、 人 工 授 精 に よ る 多 大 な人 手 、時 間 及 び
1.成 鶏 雄 に 対し、 育 成 期(9 0∼150 日 齢 程 度)
労 力 が軽 減 さ れ、 種 鶏は 長 期 間 使 用 が可 能 と な
の雌の 種鶏を 添わ せ る(図1 )。
り 、土佐ジ ロ ー生産現場で の普及 が期待 できる 。
2.雄 と雌の 同 居 比 率は2: 3とし 、群 規 模を1
ま た 、交 雑 肉 用 鶏 の 生産 に つ い て も 、応 用 が 期
5羽(6 :9) に設定 する( 図2 )。
待で き る 。
46.1
40
30
20
10
0
4
3
2
1
0
62.5
30.8
育成期(平均受精率7 6 % ) 成鶏期( 平均受精率5 9 . 9 %)
6:9(15)
10:15(25)
14:21(35)
8:12(20)
12:18(30)
群規模
受 精 率 (%)
産 卵 率 (%)
へ い 死 区 へ の 補 充 不 能 羽 数(羽 )
受精率70%以上の区の割合( %)
受精率50∼70%未満の区の割合( %)
受精率50%未満の区の割合( %)
図1
補 充 不 能 羽 数︵羽︶
23.1
25
9
8
7
6
5
受 精 率 ・産 卵 率 ︵%︶
12.5
90
80
70
60
50
雌の 同居開始時期別受精率等( 1999 )
図2
群規模別受精率( 2000)
85
90
80
受精率 各
・ 区 割 合 %[
80
70
受精率 ︵%︶
75
60
50
70
40
30
65
]
20
10
60
0
2年 まで
2 . 5∼ 3年 ま で
55
2∼ 2. 5年 ま で
雄の 利 用 期 間
50
1
受精率 8 0% 以上 の区
受精率 7 0∼ 80% 未 満の 区
受精率 7 0% 未満 の区
平均受精率
図3
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
調 査 月 (月 )
雄の 利用期間別受精率等( 2001 )
図4
-5-
月別受精率( 2002)
研究情報
[成果情報名]密閉式堆肥化装置を用いた家畜ふんの堆肥化技術
[背景 ・ね ら い]
2 . 原料 の 無 機 態 窒 素の う ち 、ア ン モ ニ ア 態 窒
食 品 ご みリ サ イ ク ル 法 を は じ め と し て 環 境 関
素 は 本 装 置 で の処 理 後5 日 目 ま で に 大幅 に 減 少
連法 が 強 化さ れ る 昨今 、 家 畜 排 泄 物を 含 む有 機
する (表2 )。
性 廃 棄 物 の堆 肥 化 技 術 は 資 源 循 環 の観 点 か ら も
3 . 本 装 置 で 行っ た 一 次 処 理 終 了 時 点の 堆 肥 、
注目 す べ き課 題 で あ る 。 そ こ で 今 回、 海 外で 製
お よ び二 次 処 理の 堆 肥を 用 い た作 物 栽 培 試 験 の
品化 さ れ て い る 独 自の 搬 送・ 撹 拌 シ ス テ ムを 有
結 果 、本 装 置 での 一 次 処 理 で 有 機 物 は か な り 分
する 横 型 密 閉 式 の 生ゴ ミ 堆 肥 化 装 置を 導 入し 、
解 さ れ、 有 害 物 質 の 影響 も 無 く な っ て い る こ と
家 畜 糞 堆 肥を 主 体 と す る 有 機 性 廃 棄 物 の 堆 肥 化
が示 された 。
装置 と し て改 良 す る と と も に 活 用 技 術 の 確立 を
[成 果の活 用 面 ・ 留意点 ]
図る。
1 . 本 装 置 の 搬送 ・ 攪 拌 機 の 構 造 上 、堆 肥 の 水
[成果 の内容 ・特徴 ]
分 率 が高 ま る と塊 状 物を 形 成 し や す く な り 、 破
1. 本 装 置で 家 畜 ふ ん の 堆 肥 化 を 行っ た 場合 、
砕 又 は ふ る い 分け 等 に よ る 製 品の 質 的 向 上 が 必
原料水分率を 70 % に調 整す れ ば静 圧 及び堆 肥 水
要で あ る 。
分が 安 定 的に 低 下 し、 良 好な 堆 肥 化が 行 われ 、
2 . 冬季 は 水 分 蒸 散 能が 低 下 す る た め、 原 料 水
家畜 ふ ん の堆 肥 化 装 置 と し て 活 用 で き る (表
分率 を 65 % 以下 に調整 する必 要が あ る。
1 )。
表1 堆肥化装置の発酵性能(2001)
経過日数(日)
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
静 圧 (kpa)
2.20
2.20
2.20
2.15
2.15
2.00
2.00
1.95
1.95
1.95
水 分 (%)
68.7
64.5
60.2
57.2
60.8
56.0
56.4
55.5
54.7
NH3(ppm)
210
260
200
100
50
150
50
25
70
CO2(ppm)
12
13
14
−
−
1.90
53.9
−
−
51.9
20
−
−
15
9,000 8,000 5,000 4,000 2,000 3,500 2,000 2,000 3,000 1,500
−
−
2,000
表2 製造堆肥の化学性(2001)
堆肥化装置(一次処理)
1日目
水
5日目
12日目
二
12日目
24日目
次
処
理
39日目 53日目
64日目
82日目
分(%)
68.2
61.9
55.7
54.6
60.0
56.8
62.5
35.2
47.3
NH4-N(mg/100g)
200.8
34.5
21.2
20.0
19.2
22.6
24.2
33.3
46.3
NO3-N(mg/100g)
89
25
17
17
38
42
76
T-N
(%)
2.28
2.16
2.19
2.02
2.16
2.08
2.14
2.14
2.00
P2O5 (%)
0.46
0.72
0.78
0.66
0.76
0.79
0.82
0.78
0.90
2.90
3.60
2.80
3.40
(%)
T-C
(%)
37.0
33.9
29.6
35.7
34.7
29.8
31.6
35.7
37.7
VS
(%)
82.6
76.3
73.0
72.6
71.3
70.6
68.4
72.0
68.6
-6-
3.20
2.80
3.70
194
K2O
注) P2 O5 は有効態リン酸
2.50
176
4.50
衛生情報
鶏のコクシジュウム症対策について
鶏コクシジウム症は、アイメリア属原虫の腸管
汚染の問題などの可能性が示唆さ れ て お り、より
粘膜上皮への寄生によって起こる消化器疾病であ
安全に効率よく本症を抑制す る こ と が望 まれてい
り、オーシスト(原虫の卵)の経口摂取によって
ます。
感染が成立します 。
現在、積極的な予防としてワ ク チ ンが 開発され
下痢、食欲不振・廃絶、体重減少 などといった 症
ており、国内ではアイメリア・テ ネ ラ、 アイメリ
状を示し、鶏で最も被害の大きい疾病の1つです 。
ア・アッセルブリーナ及びア イ メ リ ア・ マキシマ
今回、管内の大規模ブロイラー 農家( 5万羽飼養 )
オーシストを含有する弱毒生ワ ク チ ンが 販売・使
で本疾病が発生したので、その概要について報告
用されています 。
します。
本剤は、飼料に添加するか散 霧 投 与によって使
(発生状況)
用し、飼料添加の予防剤に匹敵する コクシジウム
2003年6月にA農家から出荷された 鶏の廃棄
症対策法として 活用されています。
率が高いとのことで、立入検査を実施しました。
一方、コクシジウム症を防ぐためには 鶏舎など
鶏舎に血便が点在していたことから衰弱鶏の病性
の清掃、洗浄、消毒に努め、オーシスト のいない
鑑定を実施したところ、小腸の充出血と、小腸内
清潔な環境をつくることも 重要です。
容物から多数のコクシジウムオーシストを確認し、
コクシジウム 症と診断しました。
オーシストは外界で1年以上生存 するうえに各
種の化学薬品や消毒剤に対して極め て強 い抵抗力
飼養状況は平飼いで、抗コクシジウム剤を含む
を持っています。消毒剤としてはオルソ 剤が有効
ブロイラー肥育用配合飼料を給与していました。
とされています 。
しかし 、抗コクシジウム剤を含む飼料を与えてい
また、熱には極めて弱く100℃ で2 ∼3秒、
たにもかかわらず、20日齢の雛で OPG (糞便1
75℃でも1∼3分以内に完全に死滅します。
gあたりのオーシストの数)が24万を越す個体
糞便や敷料中のオーシストは堆 肥 化することに
もあり、予防効果が十分でなかったと考えられま
より死滅してしまいます。
した。
雛を導入する前には鶏舎内をよく 消毒し、給餌、
(対策)
給水器などは糞便が混入しないようにし 、時々熱
コクシジウム症の感染時期を調べるため雛導入
湯で洗ってやるとよいでしょう 。
時から 5 日間隔 で雛の抽出検査 を行ないました 。
ご相談やご質問のあるかたは、お気軽に最寄り
その結果、20日齢でコクシジウム症の感染を確
の家畜保健衛生所におたずね下さい。
認しました。
東部家畜保健衛生所
0887-38-2543
このことから 、コクシジウムの感染時期 を考慮し
香長支所
0887-52-3069
15日齢で飼料1t当たりサルファ剤(スルファ
中央家畜保健衛生所
088-852-7730
ジメトキシン)1kgを均一に混じて経口投与す
嶺北支所
0887-82-0054
るように指導しました。
高幡家畜保健衛生所
0880-22-1124
その結果、血便を排泄するもの、ひどい 削痩を示
檮原支所
0889-65-0392
すものや重症例で死亡する個体がなくなり、出荷
西部家畜保健衛生所
0880-37-2148
羽数に対する削痩・発育不良による解体禁止及び
【 西部家畜保健衛生所
濱口
礼子 】
疾病による全廃棄率は 3.04 %(平成15年6月∼
7月出荷分)から 1.31 %(平成15年9月∼10
月出荷分)に改善されました 。
(おわりに)
現在、コクシジウム症対策は予防・治療薬の飼
料添加が主体ですが、薬剤耐性菌の出現や養鶏産
物への残留および養鶏廃棄物への残留による環境
写真
-7-
鶏 コクシジュウムオーシスト
病性鑑定
最近の病性鑑定業務とその傾向
平成 15 年 4 月より生後 24 ヶ月齢以上の死亡
法 定 伝 染 病 関 連の 診 断 業 務では 、 BSE 検 査
牛の BSE 検査が義務づけられました。病性鑑
に加えて、炭疽鑑別 2 件、ブルセラ病 5 件、ヨ
定室は、この検査の増加に伴い 1 名増員となり、
ーネ病 12 件、腐蛆病 2 件、バベシア病鑑別 1
室長以下 5 名体制となりました。以下、新体制
件、届け出伝染病関連の診断業務では、牛白血
になってからの病性鑑定業務の現状とその 傾向
病 2 件、気疽腫 1 件、レプトスピラ病 1 件、マ
について述べたいと思います。
レック病 1 件、ロイコチトゾーン 1 件の実績が
平成 15 年 4 月 1 日から 10 月 31 日までの 病
ありました 。このうち、腐蛆病 2 件 、牛白血病 2
性鑑定室への総依頼件数は、293 件で、そのう
件、マレック病 1 件、ロイコチトゾーン 1 件で
ち乳用牛は、 202 件、肉用牛 は、 43 件、以下、
陽性となりました 。
豚 6 件、採卵鶏 5 件、ブロイラー 2 件、ミツバ
最近の病性鑑定業務の傾向として、疾病診断
チ 2 件、土佐ジロー ・プチコッコ 11 件、その
よりも検査業務が主体となって来たことが挙げ
他 22 件となっています 。 BSE 検査は、 155 件
ら れ ま す が、一 方で は、 BSE 全 頭 検 査を行 う
で、全件数の 52.9%を占めています。
ことにより、死因究明のための病性鑑定の機会
乳用牛の内訳は、BSE 検査 137 件( 67.8%)、
が増加し、疾病摘発率が増加する傾向にありま
菌分離と同定 15 件( 7.4%)、異常産の究明 13 件
す。また、本来の家畜以外の動物種( イノシシ 、
( 6.4%)、ヨーネ病 8 件( 4.0%)、ブルセラ 検査 4
イルカ、キジ、タヌキ等)の病性鑑定依頼もあ
件 ( 2.0%)、 代謝プロファイル 4 件( 2.0% )、そ
り、病性鑑定業務 に対するニーズが多様化する
の他 21 件( 10.4% )となっています。また、肉用
傾向が認められます。
牛 の内訳は、 BSE 検査 18 件( 41.8% )、種畜検
【 中央家畜保健衛生所
水野
悦秀】
査 5 件( 11.6% )、ヨーネ 病 5 件( 11.6% ) 、代謝
プロファイル 5 件( 11.6%) 、その他 10 件( 23.4%)
となっています。
お知らせ
四国四県共同研究課題「新たな流通戦略を目指した肉用牛の品質評価システムの開発」に係る研
究成果報告会を下記のとおり 開催いたしますので肉用牛関係者方 々のご参加をお願いいたします。
1.日時:平成16年3月16日(火)午後1時30分から4時30分
2.場所:桜座(高知県高岡郡佐川町甲346 ー1)
3.内容:黒毛和種、褐毛和種及 び F1 を対象とした非破壊的方法 による繁殖牛、肥育牛及び枝肉
評価技術 に係る四国四県共同研究発表
4.問い合わせ先:高知県畜産試験場大家畜科
日浦千尋
電話 0889-22-0044 Fax0889-22-3960
E-Mail [email protected]
高知県畜産試験場のホームページ h ttp://www.pref.kochi.jp/ sangi/chiku/ もご覧下さい。
発行:高知県畜産試験場
編集者:高橋
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