津波の越流による海岸堤防の 破壊メカニズムに関する研究 背景・目的

津波の越流による海岸堤防の
破壊メカニズムに関する研究
背景・目的
1/10
金浜
裏法のみ破壊
堤防背後の洗掘
東日本大震災の津波で多くの海
岸構造物が越流によって破壊
越流による堤防破壊は、河川堤
防(越流堤)を除いて研究例が
少ない
全壊
洗掘による海岸堤防の破壊メカ
ニズムが指摘されている
田老
本研究の目的
海岸・沿岸環境研究室
中尾秀之
指導教員 佐藤愼司 教授
洗掘によらない
破壊メカニズム
・海岸堤防の破壊メカニズムの解明
GoogleEarthより
研究手法
2/10
・有効な対策の提案
支配要因の抽出
3/10
模型実験
側面図
スケール:1/:150
造波機
孤立波
H=7cm
30cm
津波の越流により海岸堤防周辺でどのような
現象が起こるかを観察する
Case1
Case2
2.模型の中に礫(空隙率:50%)
1.模型のみ
3.被覆材3枚を張り合わせたもの
2.模型の中に礫(空隙率:50%)
1.模型のみ
3.模型の上に3枚の被覆材を
張り合わせたもの
礫
空隙
礫
Case3
堤防破壊の支配要因
4/10
浮力
結果
条件
5/10
一体的な堤防
建造後年月を経過した堤防
裏法側が浮き上がるように破壊
1.模型のみ
2.模型の中にレキ(空隙率:50%)
・表法端部の水位が大きくなるとき
3.模型の上に被覆材を張り合
わせたもの
・裏法上の越流水の速度が大きいとき
空気層
→ 裏法側が浮き上がる
圧力
U字管を想像する
と分かりやすい
堤防の破壊要因
浮
力
1.浮力
浮力 => 被覆材のみ
浮力 => 海岸堤防全体
2.流速による揚力
空気層を介して、被覆材に大きな浮力が作用する
浮力発生メカニズムの確認
堤防内部の圧力の上昇を測定
6/10
浮力対策
押し波による圧力上昇の最大値を用いて分析する
圧力計
前面根入れ
波高計
根入れ有無での最大圧力の比較
6
根入れ無
30cm
波高7cmでの
での水位と圧力の関係
波高
での水位と圧力の関係
水位
水位と圧力の関係(根入れ有無)
1
6
最大値
2
水位(根入れ無)
水位、水頭
水位、水頭(cm)
水位、圧力水頭
水位、圧力水頭(cm)
4
4
圧力(根入れ有)
0.8
表法での水位とともに、模型
内部の圧力が上昇する。
外側の圧力が模型内部に
伝わっていることが分かった
根入れ有
2
水位(根入れ有)
圧力上昇
圧力水頭
圧力水頭(cm)
造波機
孤立波
H
1/10
0.6
0
圧力(根入れ無)
6.5
0.4
根入れによって、圧力が伝達しに
くくなり、圧力の上昇が抑えられる
0.2
0
0
1
2
時間(sec)
時間
3
7.1
7.3
波高(cm)
波高
0
0.1
0.2
時間(sec)
時間
0.3
0.4
7.9
揚力発生メカニズムの確認
揚力
ハイスピードカメラで撮影
8/10
揚力対策(二線堤)
9/10
揚力
越流が貯留される
1
FL = C Lρ w U 2
2
3枚
枚の被覆材を
貼りつけたもの
構造物
圧力
浮力と揚力の比較(現地で波高10.5mの場合)
浮
力
唐丹本郷(岩手県)
68.2kPa
重力 19.3kPa
揚
力
16.9kPa
結論
10/10
越流に対して裏法の被覆コンクリートが危険
ー 浮力: 被覆コンクリートと中詰砂の間に空気層が存在
すると、被覆コンクリートに大きな浮力が作用
ー 揚力: 越流による強い水流によって、裏法の被覆コン
クリートに揚力が作用
今回対象とした規模の堤防・津波では、浮力は揚力
の4倍程度
堤防を粘り強くする有効な対策
ー 浮力: 根入れを施すことで、被覆材に作用する浮力を
抑えることができる
ー 揚力: 二線堤構造は、越流水の流速低減に有効
ただし、二線間の距離は要検討
波高7cmで模型の岸側に構造物を置くと、そ
の間に越流が貯留され、越流速度が小さくな
り裏法被覆材が浮かなくなったが、貯留に
よって水位が上昇し、圧力の最大値が大きく
なってしまった
越流速度を抑えるための対策として、
二線堤が有効であるが、二線間の距離
は要検討
ご清聴ありがとうございました
圧力上昇を防
ぐために、二線
目の高さを調
節する必要が
ある