Agilent Technologies 4263B LCRメータによる 効果的なトランス/コイル測定 4263B/4338B/4339B/4349B アプリケーション・ノート はじめに 従来の低価格LCRメータの問題点 近年の電子機器/デジタル回線の発展 に伴い、機器の小型化、低消費電力化、 高品質化に貢献するトランス/コイル の生産量が増加しており、生産ライン や受入検査部門における選別評価効率 の改善が求められています。スイッチ ング電源に使用されるトランス及び平 滑用コイルや、最近注目されている LAN/ISDNなどのデジタル回線に使用 されるパルス・トランスなどが例とし てあげられます。現在、これらの トランス/コイルの選別評価には、複 数の測定器を必要とするために、評価 効率を上げることがなかなかできませ んでした。本アプリケーション・ノー トでは、Agilent Technologies 4263B LCRメータを用いた効率的なトランス/ コイル測定についてご紹介します。 トランス/コイルの基本的な評価パラ メータとして、トランスでは、1次側/ 2次側の自己インダクタンス(L1,L2)/巻 線抵抗(DCR1,DCR2)、巻線比(N)、巻 線間容量(Ci)などがあり、コイルでは 自己インダクタンス(L)、クオリティ・ ファクタ(Q), 巻線抵抗(DCR)などがあ ります。従来の低価格LCRメータでは、 このようなトランス/コイルのパラメ ータ測定を行う場合、以下のような問 題点がありました。 (1) コイルや、トランスの1次側/2次側 の巻線抵抗(DCR)測定ができない。 (現状では、マルチメータを用いて 巻線抵抗(DCR)を測定している。 ) (2) トランスの巻線比(N)測定ができな い。(現状では、巻線比チェッカを ご注意 2002 年 6 月 13 日より、製品のオプション構 成が変更されています。 カタログの記載と異なりますので、ご発注の 前にご確認をお願いします。 用いてトランスの巻線比(N)を、測 定している。) (3) 100 Hz∼100 kHzにおけるトランス/ コイルの基本パラメータを1台で測 れない。 (4) 測定信号レベルが、インダクタン ス値(測定レンジ)により自動的 に決定されるので、測定したいレ ベルでの測定ができない。 (5) 測定スピードが遅く、製造ライン でのトータル・スループットが向 上しない。 (6) トランスの1次及び2次巻線の各々 の自己インダクタンス(L1,L2)や巻 線抵抗(DCR1,DCR2)を測定する場 合、その都度トランス端子のつな ぎ変えをしなければならない。 (5) 測定スループットの向上 4263Bは、測定スピード:25ms (SHORT時、参考データ)と、今まで (1) 巻線抵抗(DCR)測定機能 4263B LCRメータ(オプション001付) にない高速測定が可能です。さらに、 は、自己インダクタンス(L)やクオリ ① 内蔵コンパレータ機能(IN/LO/HI) ティ・ファクタ(Q)だけでなく、巻線 ② ハンドラ・インターフェイス 抵抗(DCR)測定が行えますので、今ま ③ GPIBインターフェイス で巻線抵抗測定のために使用されてい ④ 高速コンタクトチェック機能(5ms) たマルチメータが不要になり、測定お よび検査の効率化に貢献します。また、 ⑤ トリガーディレイ機能 巻線抵抗測定確度も要求ニーズを満足 が、すべて標準装備されているので、 しています。 自動測定/選別システムの設計を容易に し、自動選別のトータル・スループッ (2) 巻線比(N)、相互インダクタン トおよび信頼性の向上がはかれます。 ス(M)測定機能 トランス評価の中で、特に重要な測定 (6) 16060A トランス・テスト・ パラメータとして、巻線比(N)がありま フィクスチャ す。既存の低価格LCRメータでは、こ トランスの測定効率を低下させる要因 のパラメータを測定できず、巻線比 として、測定端子とトランス端子の接 チェッカを用いて測定するのが通例で 続の煩雑さがあります。通常のトラン した。4263B LCRメータ(オプション ス評価では、1次側/2次側の自己イン 001付)は、自己インダクタンス(L)と ダクタンス(L)や巻線抵抗(DCR)を測定 共に、トランスの巻線比(N)や相互イン するために、端子のつなぎ変えをしな ダクタンス(M)が、100 kHzまで測定で ければなりませんでした。16060Aトラ きます。特に、巻線比(N)は、0.9000∼ ンス・テスト・フィクスチャを4263B 200.00の範囲で、100 kHzでの高周波測 と共に用いますと、フィクスチャ上部 定が可能なので、ISDNなどに使用され のスイッチ1つで、1次側/2次側巻線測 る高周波用パルス・トランスなどの規 定に最適な接続を実現しますので、つ 格で要求される評価が実施できます。 なぎ変え時間を短縮することができま す。図1にその接続例を示します。 (3) 幅広い測定周波数範囲 4263Bの測定周波数は、100 Hz, 120 Hz, (16060Aを使うと、測定は2端子構成に なります。 ) 1 kHz, 10 kHz, 100 kHzと、従来の低価 格LCRメータではカバーしきれなかっ た100 kHzまでの測定が行えますので、 JIS-C 6435で規定されているトランス の1 kHz評価だけでなく、高周波スイッ チング電源用トランスなどの評価に要 求される100 kHzでのリーケージ・イ ンダクタンスや巻線間容量などの測定 が可能になりました。これによって、 今まで複数のLCRメータで評価してい たことが1台で実現できます。 4263BLCRメータによる解決策 おわりに こ の よ う に 4263B LCRメ ー タ は 、 広範囲な測定周波数(100 Hz-100 kHz) 及びきめ細かな測定信号レベルで高速 測定を実現し、また、オプション001 を付けることにより、巻線抵抗(DCR)、 巻線比(N)、相互インダクタンス(M)測 定が可能になりますので、信頼性の高 い効率的なトランス/コイル評価にお 役立て頂けます。 1、2:1993年廃止 (4) きめ細かな測定信号レベルと電流 モニタ機能 4263Bは、測定信号レベルを5mV分解 能で、20mVから1Vまできめ細かな設 定ができ、かつ実際に試料に印加され ている電流もモニタできますので、最 適なレベルでの検査が可能です。 図1. 16060A トランス・テスト・フィクスチャを用いたトランス測定 2 3 00-1668 070001302-H
© Copyright 2024 ExpyDoc