地域医療に貢献し、皆様の長寿を願って・・・・ 東栄病院広報誌「えんれい草(延齢草)」 オオバナノエンレイソウ 『稔りの季節』 撮影:田澤健二 土地を元気にする麦 北海道の畑でよく栽培されるものの一つに麦があ ります。日本では戦後、小麦の輸入がされるように なって、麦の生産は急減しました。もちろん麦は食 用を目的として生産されますが、それ以外の目的に 栽培される場合もあります。畑で生産されるものの 多くは、同じ土地で同じ作物を作り続けることを嫌 います。「連作障害」といって病気が出やすくなり、 収穫量も減るからです。この連作障害を防ぐために は同じ畑で翌年は違う作物を作り、「輪作」を行うの が良いとされています。この輪作体系の一つとして 麦の栽培はとても有効です。 医療法人常松会 東栄病院 www.touei.or.jp 今年の麦の出穂期は好天候もあり平年より10日 以上も早く、収穫も早かったようです。六条大麦は 麦茶用、ビール大麦はビールの原料として、また、 小麦はうどん用として取引されます。最近はそれぞ れの品種に対する実需者の評価は厳しくなってきて 、生産者としては商品として売れる品質の良い麦作 りが求められているそうです。 十勝の芽室町では人工衛星から得た情報を活用し 、小麦の収穫を去年から導入し役立てています。ど の畑が収穫適期なのかを人工衛星からの画像情報で 判断し、麦の品質向上と作業の効率化が図られてい るのです。 健康 教室 糖尿病の知識 (後編) 『病気と上手く付き合おう』編 当院で 行わ れ た健康 教 室の内 容 をま と め た もの です ①はじめに 糖尿病は膵臓から分泌されるインスリンの不足が原因で起 こる病気ですが、一旦衰えたインスリンの分泌能力は完全に は戻りません。糖尿病の治療の目的はこれを完全に治すこと にあるのではありません。血糖値を高くならないようにコン トロールして、合併症を起こさない事が肝要です。なぜなら 血糖値を高いままにしておくと、いずれ必ずいろいろな合併 症が起こり、人生を不幸にするからです。今回は糖尿病とう まく付き合っていくために必要な検査や食事についてお話し ます。 ②糖尿病コントロールの目標 糖尿病とうまく付き合っていくには以下のようになること が理想です。 体重 検尿(尿糖) 血糖(空腹時) 血糖(食後2時間) HbA1c(糖化ヘモグロビン) ・・・・標準体重 ・・・・陰性 ・・・・110 mg/dl以下 ・・・・180 〃 ・・・・6.5%以下 自分の標準体重は以下の式から求めます。 標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22 例えば身長160センチの人の場合、 標準体重は1.6×1.6×22=56.3kgとなります。 標準体重は肥満度測定の一つの目安に過ぎませんが、これ に近づくよう努力することが大切です。 糖尿病の血液検査は血糖測定とHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー) が主なものですが、コントロールの良悪の判断にはHbA1c の測定がすぐれています。HbA1cとは赤血球内のヘモグロ ビン(血色素)にブドウ糖が結合してできた糖化ヘモグロビン のことです。その割合は過去1∼2ヶ月間の血糖値に比例す るので、これを調べれば平均血糖値がわかるのです。正常値 は4.1∼5.6(%)ですが、糖尿病の方の目安は HbA1c(糖化ヘモグロビン) 6.0%以下(優) コントロールは理想的で合併症は発症しにくい。 6.1∼7.0%(良) コントロールはそれほど悪くないがもう少し低い 値が望ましい。 7.1%∼8.0%(可) コントロールはあまり良くない。合併症の予防の ため一段と摂生が必要 8.1%以上 コントロール不良で合併症発現の危険が大きい。 となります。 糖尿病の方は HbA1c 6.5(%)以下 を目標としましょう。 ③糖尿病の治療 糖尿病の治療では運動と食事が基本となります。それでも コントロール不良の場合に薬を使った治療を行いますが、あ くまでも運動と食事、いわゆる生活習慣の改善が糖尿病のコ ントロールには大切です。 ▲運動療法 運動をすると筋肉などの細胞がブドウ糖を取り込んでエ ネルギーとして消費し、血糖値が下がります。同時にイン スリンの働きがよくなり、効率よく作用するようになりま す(インスリン感受性改善)。 運動はこま切れでもいいので毎日持続して行うことが大 切です。ウォーキングが最適な運動ですが、特別な運動で なくても駅や職場でエレベーターを使わずに階段を使う、 駅からバスを使わずに早足で歩く、などの工夫で十分運動 になります。1日30分から60分を目標にしましょう。 ▲食事療法 体格や仕事・運動量にあった適正なエネルギー量の食事を 摂ることが大切です。そしてエネルギーの総量だけでなく 糖質・脂質・タンパク質の三つの栄養をバランスよく摂るこ とにも気をつけます。その際「糖尿病食事療法のための食 品交換表」を利用します。この食品交換表は日常の食品約 500種類を、含まれている栄養の種類から6つのグルー プと調味料に分類してあり、カロリーや食品の量が簡単に わかるように工夫されているので、いろいろな種類の食事 を摂ることができます。これらのことについては食事療法 をはじめる前に栄養士による栄養指導を受けるといいでし ょう。 食事をする上で注意しなければいけないことは「規則正 しい時間に・三食きちんと・食事の間隔をあける」ことで す。血糖値は食事をとると上昇し、常に変動していますの で、上手にコントロールするにはこれらのことを守るよう にします。その他、甘いものや乾いたもの・健康飲料・の ど飴など、ついつい食べてしまいがちな物にもカロリーが ありますので注意が必要です。 ▲薬物療法 糖尿病の内服薬にはインスリンを出させる薬、小腸から のブドウ糖吸収をゆっくりさせる薬、細胞に働きかけてイ ンスリンの作用を高める薬などいろいろな薬がありますが 、患者様に合った薬を選ぶことになります。内服薬でコン トロール不良の場合はインスリンの注射をすることになり ますが、これにも速効型・中間型・持続型・混合型などい ろいろな種類があり、病状により使い分けます。 薬物療法を行う際は医師から指示された時間と量をきちん と守ることが大切です。薬が効き過ぎて「低血糖」を起こす ことも危険ですが、勝手に中止して「高血糖」を放置するこ とは合併症の発生を招くことにつながります。 人間の内臓の能力には限界があり、インスリンの分泌能力 も加齢と共に衰えてきます。過食、過飲を避け、膵臓に過重 な負担をかけず大事にしましょう。 (内科 常松潔) 前号の「えんれい草」に糖尿病の知識(前編)が掲載されています。 糖尿病の食事療法 ∼食品交換用を上手に利用しましょう ①食事療法とは 食事療法は適正な体重を守り、過食・偏食を防ぎ血糖値の 安定と合併症を予防することを目的とします。 食事療法をより効果的なものとするためには、カロリーを 守ることはもちろんですが、色々な食品をバランスよく食べ ることが重要となります。糖尿病食はバランス食(健康食)で あり、糖尿病以外にも肥満・痛風・高脂血症・高血圧・脂肪 肝といった食生活の乱れ、不規則な生活が原因となる生活習 慣病全般に効果のある食事です。 空腹に耐えて食事制限したのに痩せない・食べ過ぎていな いのに血液検査の結果が良くならないとお悩みの方、原因は 食品の選び方にあります。間違った食事制限は治療効果が得 にくいだけでなく、体調を崩す恐れもあります。しかし、毎 日の食事をカロリー計算し、さらにバランスを考えるのは大 変です。そこで簡単な方法で食事療法を行うには【糖尿病食 品交換表】のご利用をお薦めします。 ②交換表とは 食品交換表 6つのグループ 表1−炭水化物(エネルギー源) ご飯・麺・パン・芋類・南瓜・トウモロコシ 表2−炭水化物(ビタミン) 果 物 表3−たんぱく質 肉・魚・卵・大豆製品・チーズ 他 表4−カルシウム 牛乳・ヨーグルト・スキムミルク 表5−脂 質 サラダ油・ごま・ナッツ類・バター他 糖尿病食品交換表は色々な食品を栄養素の働き別に6つの グループに分けてあります。それぞれの食品の「基本の量( 80キロカロリー)」がグラム数と写真で表示されており、わ かりやすくなっています。 それぞれのグループから1日 のカロリーにより決められた 食品数を選ぶだけ。カロリー 計算なしでバランスの良い食 事が摂れます。 表6−食物繊維・ミネラル 野菜・きのこ・海藻・こんにゃく 食品交換表 日本糖尿病協会 編 交換表の 使い方 (例) 1日のカロリー 1600Kcal の方の朝食 STEP1 交換表で朝食の食品数 を各表毎にいくつ食べ られるか調べます STEP2 STEP3 それぞれの表から食べ たい食品を個数分選び ます 好みの調理法で料理します 表1から 3個 ⇒ ごはん150g 表2から 1個 ⇒ りんご1/2個 表3から 1個 ⇒ 卵1個 表4から 1.4個 ⇒ 牛乳コップ1杯 表5から 0.3個 ⇒ 油小さじ1杯 表6から 0.3個 ⇒ キャベツ・ピーマン 合計 7個 しめじ・人参 (調理例) 目玉焼き・野菜炒め ごはん 牛乳・りんご カロリーを知りたい時は ※ 7(個数合計)×80 =560Kcal ※交換表の食品は全て1個が 80Kcalです ③これから食事療法を考えている方へ 食事療法は長く続けることが大切です。薬による治療と違 い効果がすぐ出る治療法ではなく、日々少しずつ続ける事が 必要なため途中でやめてしまう方が多くいます。しかし、生 活習慣病や肥満は治療効果が出てくるのは遅くても悪化する のは早く、治療しなかったり、途中でやめた場合はダイエッ ト時のリバウンドのように以前より悪くなる事もあります。 継続的な食事療法には、個々の性格・生活(仕事)状況・運 動量などに合わせストレスをためない工夫が必要です。 当院では月・火・木・金の午前・午後と土の午前、予約制 で栄養指導を行っています。初めての方はもちろんですが、 現在食事療法でお困りの方は是非ご相談下さい。栄養指導を ご希望の方は栄養士または外来看護師に声をかけて下さい。 (管理栄養士 平山) 小児科が変わりました この度、当院小児科は菊田英明医師が診療を担当することになりました。なお常松喜久子医 師は主に予防接種を担当いたします。東栄病院は10月で開院33年を迎えましたが、これか らも小児科診療の一層の充実を図るよう努力してまいります。よろしくお願い申し上げます。 おかげさまで、栄町で小児科32年 東栄病院 小児科医師 社会福祉法人常誠会 理事長 (栄町あおぞら保育園) 常松 喜久子 常松内科小児科医院を開業するために栄町に移り住んだのが3 病気といえば32年間の開業期間の半分を過ぎた16年前から、 2年前の昭和47年、私が37歳になる年でした。その時から生涯 3回大きく健康を害して長期の療養を強いられました。これらの のほぼ半分を折り返してきたことになり、職業意識も当時とはず 体験も病む者の立場を思い遣るために天から与えられた試練のよ いぶんと変わったことが思い返されます。 うでした。はじめの病気以来、仕事の苦労はむしろ喜びに変わり 小学校1年生と4歳と3歳の3人の子供を育てながらのスター トは文字通りの悪戦苦闘でした。子供には充分に時間と手間をか けたい親心とは反対に、開業医の診療は勤務交代もなく24時間 自分ひとりが責任を負わなければならないのですから、子供たち には大変なしわ寄せがいったことになります。 当時は病人の医療機関たらい回しがしばしば新聞沙汰になるご 時世でした。札幌市ではちょうど我々の開業の昭和47年に開業 医が回りもちで診療に当る制度の夜間急病センターを設けました 、ようやく天職として受け入れる心境に到ることができました。 ここの診療以外に、頼まれれば札幌市医師会や北海道医師会、 北海道女医会の活動など、私でもお役に立てることならと謙虚に 引き受ける気持ちになっていきました。 2年前には、保育園医師の会でともに活動していた大学の後輩 に誘われてこの栄町に小規模保育園を設立することになり、長年 の子供の健康と保健に対する関心が役に立つ現在の立場に今しば らく力を注いで行く健康を願っています。 が、一般の認知度は低い上に遠方のセンターまでの足もままなら 16年前の闘病期間に北大医局の若く優秀な多数の医師たちに ない時代で、我々の開業後しばらくは、夜間には日中の時間内よ 診療の応援をしてもらいました。彼らはそれぞれに大成して活躍 りも時には多いほどの患者さんに起こされる苦労をしました。 しており、これがご縁で今も親交を頂いている中の一人が、計ら またいくつもの学校や幼稚園の春の健診、秋の予防注射と、病 ずもこんど当院小児科を引継いで下さる菊田英明医師です。この 院の休診などはせずに昼休みを抜けて駆けつけたもので、自分な 経緯は私が描く将来計画を超えた天の采配と受けとめずにはいら がらよくやったとねぎらいの言葉をかけてやりたいです。 れません。 誉めたことでもありませんが、病気入院でもなければ旅行やち 大学助教授として研究と教育に才覚を示してきた彼が、地域医 ょっとの不調などで休診をしたことはありませんでした。自分の 療に転向してどんな展開をして行くか、これまでに職員が培って 全時間を診療に費やすほどの熱心さではなかったにしても、せめ きた当院の基盤の上で更に全職員が力を結集して開花することを てもの心がけとして休診をしない方針を貫きました。仕事は辛く 期待し、私にこれまでに賜わった皆様からのご支援を引き続きお 、辞めたいと漏らす年月が続きましたが、子育ては楽しく、これ 願いする次第でございます。 がストレス解消になりましたし、小児科医にとっての実習のよう に貴重な経験でした。 小児科医長 菊田英明医師 経歴 昭和51年 北海道大学医学部卒業、同学部小児科入局 小児科診療時間 一般診療 その後、北見赤十字病院・愛育病院などに勤務 平成7年 北海道大学医学部小児科学講座 助手 平成8年 同 講師 月・火・木・金 水・土 平成10年 同 助教授 平成15年 北海道大学病院・感染管理室長(兼務) 予防接種 平成11年 予防接種健康被害調査委員会委員(北海道) 月・火・木・金 平成15年 「21世紀COEプログラム」研究教育拠点 「人獣共通感染症制圧のための研究開発」 事業推進担当 ◎専門は主に感染症、免疫、アレルギー 水 午前9:00∼正午 午後13:30∼午後5:00 午前9:00∼正午 午前9:00∼午前11:00 午後1:30∼午後4:00 午前9:00∼午前11:00 アレルギー予約外来 毎週土曜日(予約制) 東 栄病 院 広 報誌 「 えんれい草」 第 22 号 発 行日平 成1 6年10月 28日 札幌市東 区北41 条東16 丁目3 −14 TEL 782− 011 1
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