鴨川納涼床審査基準に係るガイドライン( PDFファイル ,2MB) - 京都府

鴨川納涼床審査基準に係るガイドライン
京都府
京都府
平成19年3月
平成20年4月
0
鴨川納涼床審査基準に係るガイドライン
目次
1.ガイドラインの役割
1
2.鴨川納涼床に係る沿革
2
3.鴨川納涼床審査基準
4
4.審査基準に係るガイドライン
8
(1)納涼床の高さ
8
(2)床の張り出し
10
(3―1)床の造り
11
(3―2)床の色彩等
12
(4)床の手すり
14
(5)その他関連施設等
15
5.納涼床の景観に係る留意事項
17
(1)鴨川納涼床の景観に係る留意事項
17
(2)京都市新景観政策における位置付け
18
参考資料
19
※表紙の絵の出典:
「京都名所之内
1
四条河原夕涼」
歌川広重
1.ガイドラインの役割
鴨川納涼床は、その起源を近世初頭まで遡ると言われ、祇園会とともに京の年中行事となり、また、
鴨川改修や都市整備と密接に関わりながら、数百年に亘る歴史の中で、幾多の変遷を経て、現在の姿と
なり、京都の伝統文化、夏の風物詩に欠かせないものとして、京都の暮らしの中に定着しています。
しかしながら、その形態についてはこれまでにも様々な議論があり、昭和 27 年に「納涼床許可標準」
が河川占用にあたっての景観上の基準として策定され、指導が重ねられてきましたが、現在、「標準」
と実態の乖離や、各床の店舗形態の変化と「標準」の間の齟齬等が生じてきています。そのため、京都
府の「鴨川流域懇談会」の報告や、京都市の「時を超え光り輝く京都の景観審議会」の最終報告の中で、
景観誘導の強化、基準づくり等の必要性が指摘されています。さらに具体的に「京都府鴨川条例」(平
成 19 年 7 月公布)において、
「鴨川納涼床に関する審査基準の制定」が位置づけられ、京都市の新し
い景観計画では、納涼床を設置している市街地側において、市街地景観及び屋外広告物ついての詳細な
規制の見直しが行われました。
一方、これまでの任意団体として一括許可の窓口であった鴨涯保勝会は、京都鴨川納涼床協同組合と
して組織体制の整備が行われたところです。
以上のような経過と背景を踏まえ、今回「鴨川納涼床許可標準」を改訂し、新たに「鴨川納涼床審査
基準」が作成されることとなりました。
今回まとめた「鴨川納涼床審査基準に係るガイドライン」は、関係者をはじめ多くのみなさんの鴨川
納涼床に対する意識と評価を高め、鴨川納涼床の文化をより良いものにして、未来に引き継ぐことを目
的としております。
このガイドラインにより、「鴨川納涼床審査基準」の内容に対する理解度の定着を図るため、鴨川納
涼床に関わる歴史的・文化的な背景やその形成の歴史を踏まえ、審査基準の項目ごとに、基準の考え方
やイメージ図を示すことで、基準への理解を深め、鴨川の景観と調和した納涼床のデザイン誘導を図っ
ていければと考えています。
■「鴨川納涼床審査基準」と「鴨川納涼床ガイドライン」の関係
鴨川納涼床の設置許可
河川法
京都府鴨川条例
良好な景観の形成に向
鴨川納涼床審査基準
けて鴨川納涼床に関す
る審査基準を制定
鴨川納涼床ガイドライン
1
2.鴨川納涼床に係る沿革
■鴨川納涼床の歴史的展開
応仁文明の乱以来荒涼としていた鴨の河原は、秀吉
による三条・五条橋架橋の頃から変わり始めます。納
涼床のはじまりも、出雲のお国が始めたという歌舞伎
芝居にあわせて仮設の茶屋が置かれたり、裕福な商人
が夏に河原に席を設けて遠来の客を遇したりするよう
になったあたりに求めることができます。
中でも、旧暦の 6 月 7 日から 18 日までの祇園会の
都名所図絵
時には、神輿が鴨川で禊ぎをするのにあわせて人々が
集まり、中州には多くの床几が出され、物売りなども
集まってにぎわいを見せるようになりました。
寛文年間(1661~72)、新たに鴨川の両岸に石垣
堤が築造され、先斗町や宮川町などが形成され、北座・
南座などの常設の芝居小屋なども設けられると、両岸
の茶屋からは、中州の床几に加えて、張出式の床も出
されるようになりました。
「四条河原水陸寸地を漏さず
床を並べ、席を設けて、良賤般楽す、東西の茶店、提
三条大橋下の床机式の納涼床(出典:京都百年パノラマ館)
灯を張り、行燈を設く、恰も白昼の如し、是を涼みと
いふ」
(1677 年『日次記事』)という記録もあります。
また『月堂見聞集』という記録では、1731 年頃茶
屋は 400 軒あり、床几の数を決めたり、費用を出し合
って、雑踏の整理や、大雨増水時の床の撤収などを組
織的に行っていたこともわかります(今日の協同組合
の前身といってよいでしょう)
。
宝暦 5 年に京都を訪れた本居宣長は、最近は「後涼
み」といって祇園会のあとも延長されるようになった
と日記に記し、
「星の如くにともしび見えて、いとにぎ
明治中期の納涼床の風景(出典:京都百年パノラマ館)
はし。かゝる事は江戸・難波にもあらじと思ふ」と言
っています。このころの様子は、京の観光案内書であ
る『都名所図会』をはじめ、円山応挙の眼鏡絵や安藤
広重の浮世絵にも描かれ、京の夏を彩る年中行事とし
て全国的に著名なものになっていたことがわかります。
明治に入ると、二条以南の鴨川運河開削や(1894
年)、京阪電車鴨東線の三条までの延伸(1915 年)に
より、左岸の高床形式の納涼床は姿を消します。さらに
大正から昭和にかけての河道改修の結果、川の流れが速
くなり床机形式の納涼床が禁止されます。また、右岸の
現在の納涼床の風景(平成 18 年 9 月撮影)
高水敷の計画に対し、納涼床を出せなくなることを憂え
2
た木屋町、先斗町の店々の陳情により、右岸高水敷の河
岸の建物のすぐ脇にみそそぎ川が開削されます。以後、
右岸より高床形式の納涼床だけが、このみそそぎ川に脚
をつけて出されるようになります。
このような、歴史をもつ、京の夏の風物詩である納涼
床は、現在、バーやカフェ等新しい営業形態も含めて、
京都鴨川納涼床協同組合(もとは「鴨涯保勝会」)によ
1 近世初期
河原は市街地との区別もなく、遊興地であり、歌舞伎小
屋などとともに、床几形式の納涼床が見られる。
ってその伝統文化が発展的に継承・保存されています。
■納涼床形式の変遷
○床机形式の納涼床
近世初期、発生当初の納涼床の形式は、現在とは大
きく異なり、持ち運びが可能な床机形式でした。設置
場所も中州や水際、川の中と河原全体に並べられます。
水面との距離が非常に近く、
「波枕並べて涼し床の上」
といった句もあります。
2 寛文年間の治水工事後
○高床形式の納涼床
寛文年間(1661~72 年)の治水工事により、両
岸に石積みの護岸が築造され、河岸と水面との距離が
大きくなり、足の長い束柱を持った高床形式の納涼床
が河岸から張り出す形が現れ、中州の床几形式と併存
する形が明治期まで続きます。
石積み護岸が両岸に築造され、砂州には床几形式の納涼
床が、両岸からは高床形式の納涼床が出されるようにな
った。
○左岸の納涼床の消失
明治 27 年の鴨川運河の開削などにより、左岸から
出されていた高床形式の納涼床は姿を消し現在のよ
うに右岸からだけとなります。
○大正・昭和初期の納涼床
大正・昭和初期の治水工事で河床の浚渫・高水敷の
築造・みそそぎ川の開削が行われ、現在の鴨川の姿に
近づきます。以後、中州に出す床机形式の納涼床は禁
止され、右岸より高床形式の納涼床だけがみそそぎ川
に束柱を立てる形で出されることとなります。また、
中国料理や洋食を提供する床も営業を始めます。
○現在の納涼床
戦後、昭和 25 年に数軒が設置出願しましたが、戦
争中の反動として鴨川の風致を破壊するものが多く
出ました。このため昭和 26 年に「鴨川の高床につい
て」の通達が、27 年に許可標準としての「鴨川納涼
床について」の通達が出されます。
3 琵琶湖疎水鴨川運河開通
琵琶湖疎水鴨川運河開通により、左岸の高床形式の納涼
床が消滅した。
4 大正時代初期の治水工事以降から現代まで
大正時代初期の治水工事により、床几形式の納涼床が消
滅し、右岸の高水敷にみそそぎ川が開削され、納涼床は
みそそぎ川に出される高床形式だけになった。
※参考論文:鴨川のアメニティ利用に関する二、三の考察
-納涼床の変遷を対象としてー
京都大学工学部土木工学科 牧田通(1998)
3
3.鴨川納涼床審査基準
鴨川納涼床は、その起源を近世初頭まで遡り、祇園会とともに京の年中行事となり、また、
鴨川改修や都市整備と密接に関わりながら、数百年に亘る歴史の中で、幾多の変遷を経て、京
都の伝統文化、夏の風物詩に欠かせないものとして、京都の暮らしの中に定着しています。
昭和 27 年には、河川占用に当たっての主に景観上の指針として「納涼床許可標準」が策定
され、これまで指導が重ねられてきました。
一方、府民共有の貴重な財産である鴨川について、その河川環境を安心・安全で、良好かつ
快適なものとして、次の世代に引き継ぐことを目的として京都府鴨川条例(以下「条例」という。)
が平成 19 年度に制定されました。
条例では、鴨川は川そのものと、川沿いの工作物、山並み等の自然が一体となって京都を代
表する景観を形成しており、その中でも、鴨川納涼床は都心部を代表するものであることから、
第 14 条において「知事は、鴨川納涼床(鴨川の右岸の二条大橋から五条大橋までの区間にお
いて、飲食を提供するために設置される高床形式の仮設の工作物をいう。
)に係る河川法に基
づく許可の審査基準を、鴨川の良好な景観の形成に配慮して定めるものとする。
」と規定され
ました。
本規定に基づき、河川法による許可工作物である鴨川納涼床が、京都の夏の風情を醸し出す
歴史的・文化的な構造物として、将来にわたり鴨川の景観と調和したものとなるよう、構造、
素材、色彩等に関する基準を次のように定めます。
1
床の高さ
(1)床の高さは「みそそぎ川」の川底から床板の上面までの距離とし、隣り合う床の高さは、
原則として揃えるように配慮するものとする。
(2)床の高さは、計画堤防高さ以上とし、標準図を参考にするものとする。
2
床の張り出し
(1)床の東端は、みそそぎ川東側護岸の法肩より以西とし、標準図を参考にするものとする。
3
床の造り及び色彩
(1)床は、母屋に接続して設けるものとする。ただし、二階構造は認めない。
(2)床は、原則として木材を使用し、簡素で伝統的な意匠のものとする。
(3)木材は、原則として素地仕上げ又は透明な木材保護塗装仕上げとし、周辺との調和に配慮
するものとする。
(4)床の部材として木材以外を使用する場合は、原則として周辺に配慮した木質素材色による
塗装を施すものとする。
(5)床の柱を鉄材とする場合は、原則として柱形状の角材(コラム)を用いるものとする。
4
4
床の「手すり」
(1)「手すり」は、原則として木材を使用し、簡素で伝統的な意匠のものとする。
(2)隣り合う「手すり」の高さは、揃えるように配慮するものとする。
(3)「手すり」の高さは、安全性、床からの眺めを考慮し、標準図を参考にするものとする。
5
「すじかい」
、「ぬき」、「すだれ掛け」
、「よしず掛け」等
(1)「すじかい」、「ぬき」
ア
「すじかい」は、治水上の安全性を考慮し、川の流水方向に直角の面に設けないものと
する。
イ
床の補強のため、やむを得ず川の流水方向に直角の面に「ほおづえ」及び「ぬき」を設
ける場合は、標準図を参考に 1 段だけ設けることができるものとする。
(2)「すだれ掛け」、「よしず掛け」等
ア
床の上面は「手すり」、
「すだれ掛け」及び「よしず掛け」以外の固定した施設は設けな
いものとする。
イ
隣り合う床に対して設ける「すだれ掛け」は、原則として床面より1メートル50セン
チメートル以下の高さとする。
ウ
日よけのために設ける「よしず掛け」の施設及び「よしず」は、原則として天然素材を
使用する。
(3)床の在基部
床の在基部と川底の取付部は、標準図を参考とし、安全について配慮するものとする。ま
た、床の撤去後は、川底にコンクリート又はボルト等が突出しないよう措置するものとする。
6
その他
(1)床上面、又は床の周囲を鉢植等の樹木で囲うことはできないものとする。
(2)床に広告物、色電灯(LED 等も含む。)、イルミネーション等を設けてはならないものと
する。
(3)照明は電球色を原則とし、華美なもの避けるように配慮するものとする。
7
適用期日等
この基準は、平成20年4月1日から適用する。ただし、知事がやむを得ない事由があると
認める場合にあっては、同日後5年間に限り、知事が別に定める基準によることができるもの
とする。
5
6
7
4.審査基準に係るガイドライン
(1)納涼床の高さ
【「鴨川納涼床審査基準」】
1
床の高さ
(1)床の高さは「みそそぎ川」の川底から床板の上面までの距離とし、隣り合う床の高さ
は、原則として揃えるように配慮するものとする。
(2)床の高さは、計画堤防高さ以上とし、標準図を参考にするものとする。
基準から見た現状と課題
○納涼床の設置は、治水上の安全性に出来る限りの配慮が必要です
【現況写真】
・納涼床は、鴨川の流水部に出水期(6月16日~10
月15日)に常設するものですから、洪水の流下に支
障とならないように、少なくとも計画堤防高さ(=計
画高水位+1.0m)に水位が来ても納涼床が浸からな
いように設置する必要があります。
○今もなお、昔ながらの良好な納涼床の姿が守られています
・京の夏の風物詩である鴨川納涼床は、鴨川の河川改修
など影響を受けながら幾多の変遷を経て、今もその良
好な姿を残しています。
・昭和27年、制定の鴨川納涼床許可標準において定め
られた、
納涼床の標準高さ 3.6m は、
おおよそ守られ、
横に連なる連続的な納涼床の景観がつくりだされてい
ます。
・一方、一部の納涼床で標準値を大きく上回る背の高い
納涼床や、背の低い納涼床があります。
隣り合う床の高低差が大きく、不揃
いな状況となっています
・隣り合う納涼床高さが大きく異り、横方向の連続性が
損なわれる状況が一部の場所にみられます。
■連続立面図でみる納涼床高さの状況
床
床
床
8
床
床
床
ガイドライン
■隣り合う床の高さの関係
《現状》
○隣り合う床高さの高低差が大きく不揃いな様子
床高さ
《見直し》 ○隣り合う床高さを 50cm 程度に抑え配慮した例
床高さ
■床高さと「手すり」高さの関係
○納涼床と接する建物アプローチ側の高さ
に大きな高低差が生じる場合、階段等を
設けるなど、処理を行います。
○納涼床の隣り合う床の連続性に配慮して
「手すり」の高さを揃えます。
9
(2)床の張り出し
【「鴨川納涼床審査基準」】
2
床の張り出し
(1)床の東端は、みそそぎ川東側護岸の法肩より以西とし、標準図を参考にするものとする。
基準から見た現状と課題
○高水敷の利用者への影響を考慮した納涼床の設置が必要です
【現況写真】
・納涼床の張り出しは、高水敷の利用者への圧迫感や、
物品の落下等を避けるため、床の東端がみそそぎ川東
側護岸から 1.5m以上離れていることが必要です。
・ただし、みそそぎ川東側護岸から離れる距離は、川や、
隣接する床の状況、景観への影響等を総合的に勘案す
ることが必要です。
・橋上等からの眺めを考慮した場合には、納涼床の張り
出しが揃うことに配慮し、統一感が確保されることが
望ましい。
10
みそそぎ川の東側護岸の法肩から
後退がほとんどできていない状況
となっています。
(3-1)床の造り
【「鴨川納涼床審査基準」】
3
床の造り及び色彩
(1)床は、母屋に接続して設けるものとする。ただし、二階構造は認めない。
(2)床は、原則として木材を使用し、簡素で伝統的な意匠のものとする。
(3)床の柱を鉄材とする場合は、原則として柱形状の角材(コラム)を用いるものとする。
5
「すじかい」
、「ぬき」、「すだれ掛け」
、「よしず掛け」等
(1)「すじかい」、「ぬき」
ア
「すじかい」は、治水上の安全性を考慮し、川の流水方向に直角の面に設けないものと
する。
イ
床の補強のため、やむを得ず川の流水方向に直角の面に「ほおづえ」及び「ぬき」を設
ける場合は、標準図を参考に 1 段だけ設けることができるものとする。
基準から見た現状と課題
○納涼床は、治水上の安全性に出来る限りの配慮が必要です
【現況写真】
・治水上の安全性を出来る限り高めるために、流水方向に
は出来る限り、阻害物や流木などが掛かりやすいものは
設置しないようにすることが必要です。
・そのため、床下に物置や床、
「すじかい」は設けないこと
とし、
「ぬき」
「ほおづえ」を設ける場合は、増水時に出
来る限り水流に浸からないような高さにするよう、配慮
します。
・納涼床の構造上の安全性を検討する際には、流水と直角
方向には「すじかい」を設けないことを前提に検討して
下さい。
○納涼床の造りや柱等の形状は、伝統的な意匠を基本とします
・納涼床のつくりやデザインは、伝統的意匠を基調としま
すが、アーチ形状のつくりや曲線を主体にした造りは伝
統的な意匠と言えず、避ける必要があります。
流水方向に直角に「すじかい」を設
けると、増水時に流木等がかかりや
すく、危険です。
・納涼床は、母屋に接続して設ける必要があります。母屋
の間口幅より外側にはみ出して設置しないようにするこ
とが必要です。
ガイドライン
■納涼床の伝統的な意匠を守るための工夫
・納涼床のつくりにおいて、
「すじかい」や
「ほおづえ」
等主要構造部分の意匠に
アーチ形状や曲線を用い
ないようにします。
11
(3-2)床の色彩等
【「鴨川納涼床審査基準」】
3
床の造り及び色彩
(2)床は、原則として木材を使用し、簡素で伝統的な意匠のものとする。
(3)木材は、原則として素地仕上げ又は透明な木材保護塗装仕上げとし、周辺との調和に配慮
するものとする。
(4)床の部材として木材以外を使用する場合は、原則として周辺に配慮した木質素材色による
塗装を施すものとする。
基準から見た現状と課題
【現況写真】
○納涼床の色彩は、木質素材色を基本とします
・納涼床の使用素材は木材を基本としていますが、鉄材
を用いることも可能としています。現在の納涼床で用
いられている色彩は、奇抜な色彩は用いられていない
ものの、一部の床に、木材素材色と異なる無彩色(白
や灰、黒など)が使用されている状況にあります。
・調和ある伝統的な納涼床の景観としていくために、納
涼床の柱と手すりの色調を合わせるとともに、木材素
材色に統一していく必要があります。
床の柱など構造体の色彩に木材素材
色と異なる色彩(灰色や白)が用い
られており、不調和な色彩となって
います。
ガイドライン
■伝統的な意匠に配慮した色彩とするための工夫
・納涼床に用いる色彩は、木材
素材色を原則とします。
・沿川の建物との調和にも配慮
した色彩とします。
木材素材色の
(YR、Y 系の低
彩度のもの)の
イメージ
《色彩の目安》
○床の柱や構造体に木材以外の部材を使用する場合は、次の
色彩を使用することとします。
・マンセル色票による YR(黄赤)系及び Y(黄)系の色相で、
彩度が1以上4以下、明度3以上7以下の色彩を目安とし
ます。
・具体色は次頁「参考目安色」を参照してください。
12
納涼床の伝統的な基調色
参考目安色
:推奨色(10YR5/1)
推奨色は、素地の木材素材がエイジング(退
色)した近似色を指したものです。
13
(4)床の手すり
【「鴨川納涼床審査基準」】
4
床の「手すり」
(1)「手すり」は、原則として木材を使用し、簡素で伝統的な意匠のものとする。
(2)隣り合う「手すり」の高さは、揃えるように配慮するものとする。
(3)「手すり」の高さは、安全性、床からの眺めを考慮し、標準図を参考とする。
基準から見た現状と課題
○納涼床の「手すり」の形状は、伝統的な意匠を基本とします
【現況写真】
・一部の納涼床の「手すり」に伝統的な意匠とは言えな
いものが見られます。
「手すり」の意匠は、その高さも
含め、連続的な統一感があることが重要です。
・納涼床の「手すり」の形態意匠は、納涼床の印象を大
きく左右する要素です。伝統的な意匠を基調とした「手
すり」に統一していく必要があります。
納涼床の「手すり」の意匠が伝統的
とは言えないものとなっています。
ガイドライン
■「手すり」の伝統的な意匠を守るための工夫
・
「手すり」は、納涼床の伝統的な意匠に配慮しながら、縦と横のバランスのとれたものとします。
・
「手すり」高さは 110cm を標準としますが、床上での営業形態、床からの眺め、さらに安全確保の
状況を踏まえ、これによらないことができるものとします。
14
(5)その他関連施設等
【「鴨川納涼床審査基準」】
5
「すじかい」
、「ぬき」、「すだれ掛け」
、「よしず掛け」等
(2)「すだれ掛け」、「よしず掛け」等
ア
床の上面は「手すり」、
「すだれ掛け」及び「よしず掛け」以外の固定した施設は設けな
いものとする。
イ
隣り合う床に対して設ける「すだれ掛け」は、原則として床面より1メートル50セン
チメートル以下の高さとする。
ウ
日よけのために設ける「よしず掛け」の施設及び「よしず」は、原則として天然素材を
使用する。
6
その他
(1)床上面、又は床の周囲を鉢植等の樹木で囲うことはできないものとする。
(2)床に広告物、色電灯(LED 等も含む。)、イルミネーション等を設けてはならないものと
する。
(3)照明は電球色を原則とし、華美なもの避けるように配慮するものとする。
基準から見た現状と課題
【現況写真】
○納涼床に設置する施設は伝統的な意匠を基調とします
・納涼床に設けられた「すだれ」や「よしず」等を掛け
る施設は納涼床の素材感や意匠と調和する必要があり
ます。
・日よけのための「よしず」等の施設は、納涼床の外観
を覆う施設となっており、部材等の太さや色彩が目立
つものになっています。部材の色彩や形状等の配慮が
「よしず」等の施設にかかわる部材等の太
さや色彩が際立つ恐れがあります。
必要です。
・納涼床への看板掲示は認められません。モラルの徹底
が必要です。
・納涼床の照明器具として設けられる提灯は、華美な色
彩や過度な配置を行うと隣接する床との調和を乱し、
際立つ存在になってしまいます。器具の色彩や配置に
対する配慮が必要です。
納涼床への看板掲示は禁止です。
過度な照明器具等の配置は、納涼床の景
観の調和を乱す恐れがあります。
15
ガイドライン
■伝統的意匠を基調とした付帯施設とするための工夫
・よしず掛け等の施設は、
・納涼床に設ける照明器具は、
柱などが太く見えないよ
伝統的な意匠のもので、電球
う配慮すると共に、目立
色を基本とします。器具の意
たない色彩とするよう配
匠は、華美にならないように
慮します。
配慮し、過度な配置は避ける
ようにします。
・すだれ掛けは、床の北面
と南面にのみ設けられま
・照明器具に店舗名や商標を入
す。
(東側には設けること
れないようにします。
はできません。
)
・納涼床への看板設置はで
きません。
16
5.鴨川納涼床の景観に係る留意事項
(1)鴨川納涼床の景観に係る留意事項
鴨川納涼床は、京都の夏の風情を醸し出す歴史的・文化的な構造物であり、床を設置して
いるお店の建物と一体となって鴨川の景観を形成しています。
鴨川条例では、良好な景観の形成のために、第 15 条で「知事は、鴨川等の区域のうち知
事が別に定める区域に隣接する土地において工作物を設置する者に対し、鴨川等から望む良
好な景観の形成に配慮して当該工作物を設置するよう要請することができる。」と規定して
います。
そのため、鴨川納涼床を設置する者にあっても、床設置期間、納涼床を楽しみ、また、納
涼床の醸し出す景観を楽しむ人々に対して、設置者として河川景観へ配慮することは当然と
して、床を設置していない期間においても、鴨川の区域に面する建物側では、河川景観への
日常的な配慮とともに、母屋等のデザイン、エアコンの室外機、物干台、看板等に関して良
好な景観を阻害しないよう配慮することが求められています。
【エアコンの室外機に係る留意事項】
景観阻害要因のひとつとして、エアコンの室外機があげられます。納涼床の設置時期にお
いては、納涼床の床下に位置していますが、納涼床の設置期間が終わり、床が撤去されると
その姿が露になる箇所が少なくありません。
鴨川の良好な景観を維持していくためにも、みそそぎ川沿いや鴨川対岸から納涼床や建物
の姿を見る視点を考慮し、納涼床の設置期間も含め年間を通じて、エアコンの室外機等の設
備機器類に覆いを設け修景する等の配慮が必要です。
【室外機が露出している例】
【前面に覆い等を設けて配慮している例】
・室外機が並ぶ様は建物の姿を煩雑に見せ
ています
・建物の足元に設備を隠す覆いを設け、建
物外観に配慮しています
・納涼床を設置しても、みそそぎ川岸から見
ると室外機が露出して見えます
・納涼床を設けても、整った床下空間とし
て見えます
17
(2)京都市景観政策における位置付け
京都市は、50 年後、100 年後の京都の将来を見据えた「新たな景観政策」の実施に向け
て、京都市景観計画をとりまとめ、地域ごとの景観特性に応じて、詳細な景観規制等を実施
しています。
①
景観地区
市街地景観の整備に関する計画において、鴨川納涼床を設置している二条大橋~五条大橋
間の区域は以下の地区に指定されています。
「歴史的遺産型美観地区-一般地区」:伝統的な建築物の町並みと調和するデザイン基準を定
めている。
「岸辺型美観地区」:河川からの眺望や趣のある岸辺の景観にふさわしいデザイン基準を定め
ている。
②
風致地区
鴨川納涼床を設置している二条大橋~五条大橋間の沿岸は、見直し以前風致地区第 5 種地
域に指定されており、建築物の高さが 15mに制限されていました。地区種別の変更により、
第 5 種地域(高さ 15m)から第 4 種地域(高さ 12m)への変更されています。
③
屋外広告物
河川区域については、京都市屋外広告物等に関する条例上、屋外広告物等の表示を禁止す
る「禁止地域」に指定されており、原則的に、鴨川納涼床への屋外広告物の表示はできませ
ん。
ただし、禁止地域を管理する者の承諾を得て使用する土地内において表示する自家用屋外
広告物については表示が可能です。
鴨川納涼床を設置している二条大橋~五条大橋間の区域は、「歴史遺産型第2種地区」と
「第 2 種地域」に指定されており、表示する屋外広告物については、各規制区域の許可基準
に適合するよう努める必要があります。
「歴史的遺産型第2種地区」:対象区域は先斗町地区
「第2種地域」
:対象区域は先斗町地区を除く、二条大橋~五条大橋間の鴨川に面した区域
※上記景観政策に係る具体的内容等は、京都市の担当窓口に相談が必要です。
18
参考資料
参考資料1 納涼床連続写真(平成18年9月現在)
20
参考資料2 納涼床正面図(平成18年9月現在)
24
参考資料3 京都鴨川納涼床協同組合に関する資料
設立趣意書(抜粋)及び納涼床設置規則
19
28
20
21
22
23
40.00
T
四条通
T
9.310K
9.300K
9.200K
庭
道路
60東華菜館
61ちもと
63きた山本店
62銀水
64陣の花
66メゾンドヴァン鵜亭
65セントジェームスクラブ
67かのこ
68まんざら亭
24
T
T T
T
T
92金岩楼別館
93鶴清
69スコルピオーネ吉右
70鳥彌三
71菫
72あと村
73月彩
DL=TP+30.00
9.100K
五条通
9.000K
8.650K
8.600K
8.500K
8.400K
8.330K
参考資料2:正面図A
50.00
40.00
床標準高さ(3.6m)
計画堤防高さ
みそそぎ川護岸高
計画高水位
DL=TP+30.00
みそそぎ川床高
50.00
27禊川
29豆風
28初乃屋
30いしはら
32華めぐり
31風南
34京フレンチきしもと
35卯月
33味がさね
手摺高さが750以下の場合
36四季よし菜
37大市
建物床面より納涼床が低い場合
0
4
9.700K
9.600K
9.500K
9.400K
73月彩
先斗町児童公園
39舛之矢
38招月庵
手摺高さが750より高い場合
T
T
V=1:200 H=1:2000
建物床面より納涼床が高い場合
74京都鴨川倶楽部
75きた村
77大光楼
41みます屋
京町
42かっぱ寿司
44岩焼先斗町ことし
45丹米
46アトランティス
47藤の家
48山とみ
49ごとく庵
50すい月
テーブル席の場合
T
76雪月花
道路
52都
51大當両
53洋食ふらいぱん
56ぽんと
55クワトロセゾン
58開陽亭
57多から
59先斗町いづもや
25
78岡たみ旅館
79たん熊本家
80鳥初鴨川
83佐々木
81栄家
84とみ家
T
道路
道路
85仏沙羅館
87仙鶴
86和
88田鶴
89ザ・リバーオリエンタル
91花の戸
T
T
T
T
T
T
T
仏光寺児童公園
松原通
駐車場
9.310K
9.000K
8.900K
8.800K
8.700K
8.650K
平成18年9月現在
T
40.00
空地
17弘
18金茶寮
19モリタ屋
20こまい亭
21スターバックスコーヒー
26
駐車場
三条通
22吉兆庵
23こみょん
24冨美家
26魯ビン
25茜屋純心軒
27禊川
29豆風
28初乃屋
30いしはら
DL=TP+30.00
9980K
9.900K
9.800K
9.700K
参考資料2:正面図B
50.00
T
10.320K
10.300K
10.200K
10.100K
9980K
10.000K
平成18年9月現在
床標準高さ(3.6m)
空地
高瀬川
空地
御池通
計画堤防高さ
駐車場
みそそぎ川護岸高
みそそぎ川床高
01がんこ高瀬川
02吉屋
03豆屋源蔵
04露湖
05新三浦
06籐吉
07さつき
08竹島
09幾松
10めん坊
11ジェフの英語塾
12ROJI
13梅むら
15櫻
14豆水楼
16河久
建物床面より納涼床が高い場合
手摺高さが750より高い場合
建物床面より納涼床が低い場合
手摺高さが750以下の場合
T
27
計画高水位
テーブル席の場合
V=1:200 H=1:2000
設 立 趣 意 書
1 設立の目的
平安時代から鎌倉時代にかけて鴨川の河原は広大であって、時として集会や勧進田楽
などが催される遊興の場に利用され人々の集う場所となっていた。そして室町時代後期
には、河原で夏の涼を求める人々が床机を並べタ涼みを楽しむようになり、京の中心的
な遊興の場となった。特に祇園舎(現在の祇園祭)の期間は町中から大勢の人々が集ま
り、祇園会の神賑わいとともに鴨川の納涼が町衆の年中行事となった。江戸時代に入り、
「高瀬川」の開墾により京の商業の中心地となった鴨川の護岸一帯は、茶屋や宿ができ
始め、特に二条から五条間ではこれらの店が護岸から張り出した「床」をしつらえ、客
を迎えるようになった。さらに江戸中期、寛永年間に行われた大規模な護岸工事(寛永
の新堤)によりほぼ現在の川幅になった鴨川の西岸には、さらに多くの茶屋ができ、
「床」
も現在のような高床式のものになり、木屋町・先斗町・西石垣を中心に多くの床が作ら
れるようになった。このように長い歴史のなかで、京の夏の文化・遊興の中心的存在と
なった鴨川納涼床は、明治以降徐々にその形を変えながら、京都の人々のみならず観光
客にも夏には欠かせない場所となったのである。
こうした京都の伝統文化・夏の風物詩として、さらには京都の観光資源としての重要
な位置を占める鴨川納涼床を保存するため昭和28年には「鴨涯保勝会」が設立された。
「鴨涯保勝会」は法人格のない任意団体であり、本会を通じて納涼床実施のための河
川占用許可を始め、さまざまなPR活動などの鴨川納涼床実施に欠かせない活動を行って
いるが、任意団体であるゆえに、対外的な法的安定性や対内的な規律の徹底など、活動
の安定性に問題を抱えていた。
鴨川納涼床という文化的資源を将来に亘って継承し、時代の変遷に合わせた健全な発
展を日指すためには、その運営主体である「鴨渥保勝会」が法人格を得て、内部規律を
明確化することが、欠かせないものと判断し、本組合を設立するものである。
2 組織及び事業の概要
(1)名
称
京都鴨川納涼床協同組合
(2)地
区
京都市中京区木屋町通二条下る東生州町から京都市下京区
木屋町通松原下る二丁目下材木町までの鴨川西岸の区域
とする。
(3)事務所の所在地
京都市下京区木屋町仏光寺上る天王町154番地
「もち料理きた村」内
電話075-361-6799
(4)組合員たる資格
本組合の組合員たる資格を有する者は、組合の地区内において土地または建物
を所有または賃借し、飲食店若しくはそれに準ずる店舗を営業し、夏期には納涼
床を開設する小規模の事業者とする。
28
納 涼 床 設 置 規 則
京都鴨川納涼床協同組合は、鴨川納涼床の風習文化を継承・保存・伝承するため、
納涼床設置に関し、以下のとおり規則を定める。
第1条(営業時間)
鴨川納涼床(以下、単に「床」という。)の営業期間は毎年5月1日から9月30
日までとし、各組合員の希望により下記3期間の営業期間を選択し遵守する。
A 5月1日~9月30日
B 6月1日~9月30日
C 6月15日~8月31日
第2条(設置・撤去)
床の設置期間は4月15日以降とし、撤去期問は同年10月15日までとする。こ
の期間以外の設置・撤去は一切認めない。
第3条(設置申請)
床の設置申請について、組合員は毎年決められた期間内に定められた書面を組合
事務所に提出し、当組合が京都府土木事務所に対して行なう床の設置に関する申請
に協力するものとする。
第4条(河川敷占有料)
河川敷占有料に関しては申請後京都府により納付額が決定次第、組合の定める納
期限を厳守して、別途請求額を組合事務所に納めなければならない。
第5条(新築・改築)
床を新築または改造・改築するときは、予め正確な寸法・面積の記載された図面
(規定の様式に準ずる)を組合事務所に提出し、組合が京都府土木事務所に申請す
る。
第6条(設置基準)
床の構造、形状、意匠など設置に関する事項は、京都府土木事務所が決める「鴨
川納涼床許可基準」及び「鴨川納涼床設置についての留意事項」を遵守する。
第7条(営業時間)
床の営業時間は、夕刻より午後11時までとする。ただし、5月及ぴ9月の2ヶ月
間は昼間(午前11時以降)の営業も可能とする。
第8条(屋根・庇など)
床の上に屋根、庇を設置することは禁止する。また、テント、パラソルなどを張
り出すこともできない。ただし、日除けに関して別紙に定める葦簾日除けのみ設置
することができる。
第9条(照明)
床の上での照明について、過度な明るさや照明機器は近所に迷惑となり景観を損
なうためこれを禁止するが、暗すぎると風紀上好ましくないと思われるので、別に
定める一定の照度(新聞の読める程度)とする。
29
第10条(歌舞音曲)
床の上での歌舞音曲は禁止する。従って、床の上での舞、芸能、カラオケ、楽器
演奏、拡声器・音響機器などの使用も禁止する。また、店内から床上に向かって上
記のものなどによる大きな音を出すことも禁止する。ただし特例として正規の祇園
囃子保存会によるお囃子は鴨川納涼床の起因にも関わるものであり、これを認める。
第11条(環境保全)
床での営業上発生するゴミや排水など、川に捨てないこと。万一川に落ちた場合
は各店舗が責任を持って処理すること。また、光・音・煙・におい等近隣に迷惑が
掛からないよう十分に留意すること。
第12条(広告・看板)
欄干・床下など、床に広告看板やその他広告物に当たるものを設置することは禁
止する。
第13条(工事車両の河川敷進入許可について)
床の設置解体工事業者は事前に京都府京都土木事務所に申請し許可を得ること。
また河川敷への出入り口の開閉及び鍵の管理については、申請者が責任を持って行
うことを義務付ける。
第14条(規約の変更)
本規約を変更するには、総会の決議を経なければならない。
30
鴨川納涼床審査基準に係るガイドライン
京都府 京都土木事務所
平成21年5月改訂版
31
32