ホモロジー群とその応用 - 九州大学数理学研究院/数理学府/理学部数学科

ホモロジー群とその応用
平岡 裕章
広島大学理学研究科
講義内容
1. トポロジーとは?
2. ホモロジー群入門
3. 情報通信分野へ応用してみよう
--- R. Ghrist(Pennsylvania大学)の研究紹介
講義のスライドが欲しい人は:
http://www.mis.hiroshima-u.ac.jp/~hiraoka/
の classページ へ
1. トポロジーとは?
幾何学:ものの形を研究する数学の分野
図形の分類の仕方は基準の定め方によって様々
基準「合同」:図形が重なり合うときは同じとみなす
∼
=
∼
=
�
∼
=
基準「相似」:スケールをかえて重なり合う図形は
同じとみなす
∼
=
∼
=
�
代数的(定量的)には,,,
合同:図形が重なり合うときは同じとみなす
∼
�
=
①
3辺の長さが同じ3角形は同じと見なす
∼
=
∼
=
相似:スケールをかえて重なり合う図形は同じとみなす
∼
=
∼
=
�
②
2組の角が同じ3角形は同じと見なす
①や②は代数的不変量とよばれるものの例
それぞれの代数的不変量を調べることで図形の分類が可能
トポロジー:幾何学の1分野でその基準は
「切り貼りせずに連続的に変形させて重なり合う
図形は同じものとみなす」
で与えられます
∼
=
∼
=
∼
=
�
∼
=
∼
=
�
∼
=
∼
=
トポロジー = 切り貼りしない連続変形はOK!
疑問:何でもありって感じの世界だけど,そんな世界
で不変な量ってあるの?
∼
=
∼
=
∼
=
∼
=
∼
=
∼
=
∼
=
連結成分
わっか
空洞
1
0
0
2
0
0
1
1
0
1
0
1
連結成分,わっか,空洞の数は不変量だ!
連結成分,わっか,空洞:もののつながり方を表す量
0次元の「穴」:連結成分
1次元の「穴」:わっか
2次元の「穴」:空洞
トポロジー:各次元の「穴」を不変にする変形で
重なり合う図形は同じと見なす
不満:あまりにも「穴」の定義があいまいだ、、、
正確な定義 = 代数化(定量化)
ホモロジー群
ホモロジー群とは
X
幾何学的対象 に対して
H0 (X) = Rk0
H1 (X) = Rk1
k0:連結成分の数
k1:わっかの数
Hq (X) = Rk2
k2:空洞の数
Hq (X) = Rkq
kq:q次元の「穴」の数
を表す,代数的な道具(現代数学に必須!)
H0 ( 西浦先生 ) = R
H1 ( 西浦先生 ) = R36
10
H0 (
)=R
H1 (
) = R847
H2 (
)=0
今日の目標1:ホモロジー群を定義してみよう
問題点:「穴」に着目した代数化(定量化)をどうする?
「穴」は何によって特徴づけられている
かを考え直す必要あり
「穴」の次元も反映されるべき
今日の目標2:ホモロジー群の応用例を見てみよう
センサーネットワーク(工学)への応用
R. Ghrist(Pennsylvania大学)の研究紹介
数学記号の準備
R:実数の集まり
ある性質 P を持ったものの集まりを集合とよぶ
X = {x | x は P を満たす }
x が の要素であるとき と表す
x∈X
X
Rn = {(x1 , · · · , xn ) | xi ∈ R, i = 1, · · · , n}
�
�
2
1
2
2
S = (x1 , x2 ) ∈ R | x1 + x2 = 1
X
Y Y ⊂ X と表す
集合 の部分集合 を S 1 ⊂ R2
和集合 X1 ∪ X2 = {x | x ∈ X1 or x ∈ X2 }
共通部分 X1 ∩ X2 = {x | x ∈ X1 and x ∈ X2 }
R3
x2
S1
1
x1
x Y
X
の各要素 に のある要素を1つ対応させる
f X
Y
ルール を から への写像といい
f :X→Y
x∈X y∈Y
で表す.また が に写されるとき
f : X � x �→ y ∈ Y
と表す.
f : R � x �→ (x, x2 ) ∈ R2
x2
x1
x∈X
f : X → Y, g : Y → Z について に
2つの写像 f g
g(f (x)) ∈ Z を対応させる写像を と の合成写像といい
(g ◦ f )(x) = g(f (x))
g ◦ f で表す; ∀ :任意の
2.ホモロジー群入門
ホモロジー群:連結成分,わっか,空洞を代数的に 扱う道具
ホモロジー群の導入の流れ
単体複体
(多面体)
代数化
幾何学的対象
穴の情報抽出
鎖複体
(chain complex)
代数的対象
ホモロジー群
2.1 単体複体(多面体)
Ω
R
Ω
十分大きな (自然数)が定める 内で考える
大雑把に言うと単体複体とは
点
辺
三角形
四面体
三角形の
高次元版
をズレないように張り合わせてできる
図形のこと
そこでまずは三角形の一般化(高次元化)を考えよう
Xが凸集合 任意のXの2点間を結ぶ直線もXに含まれる
x
∀x, y ∈ X に対して
λx + (1 − λ)y ∈ X, 0 ≤ ∀λ ≤ 1
が成立
y
v2
v0
v3
v1
v0 , v1 , v2 , v3 を含む
同一平面上にない4点 (#3)
最小の凸集合
三角形 (2次元)
v2
v0
v1
v0 , v1 , v2
同一直線上にない3点 を含む
(#2)
最小の凸集合
四面体 (3次元)
n次元三角形:(#n)を含む最小の凸集合
v2
v0
三角形
(#2)
v2
v0
四面体
(#3)
v1
v0 , v1 , v2
同一直線上にない3点 を含む
(#2)
最小の凸集合
−
→
−
−→
v−
v
=
a
v
0 1
0 v2 , a ∈ R, と表されない
→
−
−→
a1 −
v−
v
+
a
v
a1 , a2 ∈ R
0 1
2 0 v2 = 0 を満たす は
a1 = a2 = 0 に限る
v3
v1
v0 , v1 , v2 , v3 を含む
同一平面上にない4点 (#3)
最小の凸集合
−
→
−
−→
−
−→
v−
v
,
v
v
,
v
0 1 0 2 0 v3 の一つのベクトルが残りのベクトル
を使って表されない
→
−
−→
−
−→
a1 −
v−
v
+
a
v
v
+
a
v
0 1
2 0 2
3 0 v3 = 0 を満たす a1 , a2 , a3 ∈ R
は a1 = a2 = a3 = 0 に限る
一般の位置にある3点 v0 , v1 , v2
→
−
−→
a1 −
v−
v
+
a
v
a1 , a2 ∈ R
0 1
2 0 v2 = 0 を満たす は
a1 = a2 = 0 に限る
(#2)
一般の位置にある4点 v0 , v1 , v2 , v3
→
−
−→
−
−→
a1 −
v−
v
+
a
v
v
+
a
v
0 1
2 0 2
3 0 v3 = 0 を満たす a1 , a2 , a3 ∈ R
は a1 = a2 = a3 = 0 に限る
(#3)
一般の位置にある(n+1)点 v0 , · · · , vn
→
−
−v→ = 0
a1 −
v−
v
+
·
·
·
+
a
v
を満たす a1 , · · · , an ∈ R
0 1
n 0 n
は a1 = · · · = an = 0 に限る
(#n)
v2
v0
v3
v1
v0 , v1 , v2 , v3 を含む
同一平面上にない4点 (#3)
最小の凸集合
三角形 (2次元)
v2
v0
v1
v0 , v1 , v2
同一直線上にない3点 を含む
(#2)
最小の凸集合
四面体 (3次元)
n次元三角形
(#n)を含む最小の凸集合
v2
v0 , v1 , v2
一般の位置にある3点 を含む
v0
v1
最小の凸集合
v3
v1
v0 , v1 , v2 , v3 を含む
一般の位置にある4点 v1 v2 |
|v0(2次元)
2単体
三角形
v2
v0
v1 v2 v3 |
|v0(3次元)
3単体
四面体
n単体
|v0 · · · vn |
n = n単体の次元
最小の凸集合
v0 , · · · , vn
一般の位置にある(n+1)点 を含む
最小の凸集合:
{λ0 v0 + · · · + λn vn | λ0 + · · · + λn = 1, λi ≥ 0}
注意)0単体=点,1単体=辺,2単体=三角形,3単体=四面体
σ = |v0 · · · vn | から異なる(m+1)個の頂点 vi0 , · · · , vim
n単体 を選ぶと,それらは一般の位置にあるので m単体
τ
τ = |vi0 · · · vim |
を定める.この を面単体とよび
τ ≺σ
で表す.
例)σ = |v0 v1 v2 |:2単体
v2
|v0 v1 v2 | ≺ σ
v0
三角形
v1
|v0 v1 |, |v0 v2 |, |v1 v2 | ≺ σ
|v0 |, |v1 |, |v2 | ≺ σ
では単体複体の定義を与えます.思い出しておくと,,,
大雑把に言うと単体複体とは
点
辺
三角形
四面体
をズレないように張り合わせてできる
図形のこと
でした.
n単体
三角形の
高次元版
定義(単体複体):
内の有限個の単体の集まり
K が次の条件を満たすとき
RΩ
単体複体とよぶ:
τ ≺σ
σ ∈ K ならば全ての面単体 も
τ ∈K
(1) σ, τ ∈ K かつ ならば かつ
σ ∩ τ �= ∅
σ∩τ ≺τ
σ∩τ ≺σ
(2) Kに含まれる単体の次元の最大値をKの次元とよぶ.
単体複体 Kが定める多面体 |K| :=
例1) v2
v0
�
σ∈K
σ ⊂ RΩ
K2 = {|v0 v1 v2 |, |v0 v1 |, |v0 v1 |, |v1 v2 |, |v0 |, |v1 |, |v2 |}
|K2 | = 三角形
v1
は単体複体
Kn = n単体の全ての面 } は単体複体
より一般に {
定義(単体複体):
内の有限個の単体の集まり
K が次の条件を満たすとき
RΩ
単体複体とよぶ:
τ ≺σ
σ ∈ K ならば全ての面単体 も
τ ∈K
(1) σ, τ ∈ K かつ ならば かつ
σ ∩ τ �= ∅
σ∩τ ≺τ
σ∩τ ≺σ
(2) Kに含まれる単体の次元の最大値をKの次元とよぶ.
v2
例2)
v0
v2
v3
v4
v1
K = K2 ∪ {|v3 v4 |, |v3 |, |v4 |}
は単体複体ではない
∵ |v1 v2 | ∩ |v3 v4 | = |v4 |
|v1 v2 |
が の面単体ではない
v0
v3
v4
v1
とすれば単体複体になる
m切片 K (m):次元がm以下の の単体の集まり
K
K (m) ⊂ K
m切片自身単体複体になる( )
L ⊂ K が単体複体になるとき を部分単体複体
部分集合 L
とよぶ
v2
例) v2
v0
三角形
v1
v0
(1)
K2
v1
= {|v0 v1 |, |v0 v1 |, |v1 v2 |, |v0 |, |v1 |, |v2 |}
K2 の1切片
は 単体の向きについて:
同じ2単体でも頂点の並べ方は 6=3! 通り
v2
|v0 v1 v2 |, |v1 v2 v0 |, |v2 v0 v1 | :互いに偶数回の互換で
移り合うグループ
v0
三角形
v1 |v v v |, |v v v |, |v v v |
0 2 1
1 0 2
2 1 0 :互いに偶数回の互換で
移り合うグループ
注意)互換とは2つの頂点を入れ換える操作のこと
同じグループに所属する並べ方は同じ向きをもつとみなす
v2
�v0 v1 v2 � = �v1 v2 v0 � = �v2 v0 v1 �
�v0 v2 v1 � = �v1 v0 v2 � = �v2 v1 v0 �
v0
v0
v2
v1
v1
注意)1つの単体には2つの向きが入ることになる
今後単体の向き(頂点の順序)を考慮するときは<>を使う
単体の向きについて:
v0 , · · · , vn が定めるn単体の場合も同様 (並べ方は (n + 1)! 個)
(n + 1)!/2
�v0 v1 v2 · · · vn � が定める向き( 個の並べ換え)
(n + 1)!/2
�v1 v0 v2 · · · vn � が定める向き( 個の並べ替え)
例)
1単体:
v0
v1
v0
�v0 v1 �
v0
v1
�v1 v0 �
v0
v3
3単体:
v1
v2
�v0 v1 v2 v3 �
v3
v1
v2
�v0 v1 v3 v2 �
2.2 鎖複体(chain complex)
ホモロジー群の導入の流れ
単体複体
(多面体)
幾何学的対象
代数化
穴の情報抽出
鎖複体
(chain complex)
ホモロジー群
代数的対象
次は穴に着目した代数化を行いたい!
が、そもそも穴って何だ?どうやって
定式化する??
1次元の穴:わっか
1次元図形は境界がなければ「わっか」?
わっかなし
わっかあり
そうでもない
わっかなし
境界あり
境界なし
1次元図形 には境界がないが
2次元図形 の境界になっているので
わっかが消失!
1次元の穴(わっか)の特徴付け
境界のない1次元図形で2次元図形の境界になって
いないもの
り
2次元図形は境界がなければ「空洞」?
空洞なし
中
そうでもない
空洞あり
境界あり
身
あ
中
身
な
し
2次元の穴:空洞
境界なし
空洞なし
2次元図形には境界がないが
3次元図形の境界になっているので
空洞が消失!
2次元の穴(空洞)の特徴付け
境界のない2次元図形で3次元図形の境界になって
いないもの
1次元の穴(わっか)の特徴付け
境界のない1次元図形で2次元図形の境界になって
いないもの
2次元の穴(空洞)の特徴付け
境界のない2次元図形で3次元図形の境界になって
いないもの
q 次元の「穴」の特徴付け
境界のない q次元図形で(q+1)次元図形の境界に
なっていないもの
KEYWORD:境界
ホモロジー群のこころ
境界に着目した定式化を行うことで穴を代数化する
目標:境界に着目した代数化を行う
K:単体複体(n次元)
定義: q 鎖群
Cq (K) :=
��
Cq (K) := 0,
�
αi vi0 · · · viq
q < 0, q > n
�
| αi ∈ R,
�
�
�
vi0 · · · viq :Kの q 単体 0 ≤ q ≤ n
� �
�
vi0 · · · viq , vj0 · · · vjq
ただし異なる向きを持つ2つの単体 は
�
�
�
�
vi0 · · · viq = − vj0 · · · vjq とする
Cq (K)
�
q
の元を 鎖とよぶ
注意)各次元でスライスした形で代数化を行っている
演算(たし算とひき算)は各単体の向きによって導かれている
目標:境界に着目した代数化を行う
K:単体複体(n次元)
定義: q 鎖群
Cq (K) :=
��
Cq (K) := 0,
�
αi vi0 · · · viq
q < 0, q > n
�
| αi ∈ R,
�
�
�
vi0 · · · viq :Kの q 単体 0 ≤ q ≤ n
� �
�
vi0 · · · viq , vj0 · · · vjq
ただし異なる向きを持つ2つの単体 は
�
�
�
�
vi0 · · · viq = − vj0 · · · vjq とする
Cq (K)
例)
v0
�
q
の元を 鎖とよぶ
v2
三角形
K2 = {|v0 v1 v2 |, |v0 v1 |, |v0 v1 |, |v1 v2 |, |v0 |, |v1 |, |v2 |}
v1
C2 (K2 ) � �v0 v1 v2 � + �v0 v1 v2 � = 2 �v0 v1 v2 � = −2 �v1 v0 v2 �
C1 (K2 ) � 3 �v0 v1 � + 2 �v2 v3 � = 3 �v0 v1 � − 2 �v3 v2 �
境界を代数的にとりだしてみよう!
v2
例)
境界は �v1 v2 � + �v2 v0 � + �v0 v1 � ∈ C1 (K2 )
v0
除く
= �v1 v2 � − �v0 v2 � + �v0 v1 �
v1
= (−1)0 �v�0 v1 v2 � + (−1)1 �v0 v�1 v2 � + (−1)2 �v0 v1 v�2 �
�v0 v1 v2 � ∈ C2 (K2 )
=: ∂2 �v0 v1 v2 � (と表すことにする)
∂2 : C2 (K2 ) → C1 (K2 )
この例を一般化すると,,,
�
�
∂q vi0 · · · viq :=
∂q
��
�
�
q
�
l=0
vi0 · · · viq + vj0 · · · vjq
∈
∈
定義:境界作用素 ∂q : Cq (K) → Cq−1 (K)
�
�
�
�
vi0 · · · viq �→ ∂q vi0 · · · viq
�
(−1) vi0 · · · v�
il · · · viq
l
��
�
�
�
�
= ∂q vi0 · · · viq + ∂q vj0 · · · vjq
�
境界の特徴の1つ:境界の境界は空集合
境界
境界
∅(空集合)
境界作用素は同様の性質を保っている?
命題: ∂q−1 ◦ ∂q = 0
∂q
∂q−1
ここで左辺は写像の合成 Cq (K) −→ Cq−1 (K) −→ Cq−2 (K)
注意)代数的に「境界の境界は空集合」を表現している
∂2
∂1
q = 2 で確認:C2 (K) −→
C1 (K) −→
C0 (K)
∂1 ◦ ∂2 �v0 v1 v2 � = ∂1 (�v1 v2 � − �v0 v2 � + �v0 v1 �)
= ∂1 �v1 v2 � − ∂1 �v0 v2 � + ∂1 �v0 v1 �
= �v2 � − �v1 � − �v2 � + �v0 � + �v1 � − �v0 � = 0
q
宿題:一般の でも証明してみましょう
2.3 ホモロジー群
ホモロジー群の導入の流れ
単体複体
(多面体)
幾何学的対象
代数化
穴の情報抽出
鎖複体
(chain complex)
ホモロジー群
代数的対象
q 次元の「穴」
境界のない q次元図形で(q+1)次元図形の境界に
なっていないもの
q 次元の「穴」
境界のない q次元図形で(q+1)次元図形の境界に
①
②
なっていないもの
①を代数的に表すと
Zq (K) := {c ∈ Cq (K) | ∂q c = 0} サイクルとよぶ
②を代数的に表すと
Bq (K) := {c ∈ Cq (K) | c = ∂q+1 c� , c� ∈ Cq+1 (K)}
バウンダリとよぶ
∂q−1 ◦ ∂q = 0 より Bq (K) ⊂ Zq (K) ⊂ Cq (K)
命題 q 次元の「穴」
境界のない q次元図形で(q+1)次元図形の境界に
①
②
なっていないもの
③
よって q次元の「穴」を代数的に表現すると
Zq (K)
Bq (K)
「 に対して を零にする操作で生き残るもの」
①
②
Q
(操作を と表す)
③
�
�
z
=
z
+
b,
z,
z
∈ Zq (K), b ∈ Bq (K)
すると に対して
Q(z � ) = Q(z) + Q(b) = Q(z)
Zq (K)の中で違いが である要素ごとにグループ分け
Bq (K)
した各グループがq次元の「穴」を表現することになる
定義:ホモロジー群
Hq (K) := Q(Zq (K)) = Zq (K)/Bq (K)
= {[z] | z ∈ Zq (K)}
[z] は が所属するグループを表す
z
ここで をq次元ホモロジー群とよぶ
注意1)q次元ホモロジー群は「q次元の穴」を代数的に表します
H0 (K):連結成分
H1 (K):わっか
H2 (K):空洞
[z] + [z � ] := [z + z � ]
Hq (K)
注意2) 上での演算 は幾何学的な穴の
操作としての意味をもちます
∂
1
鎖複体 0 → C1 → C0 → 0
例) v2
v0
v1
C0 = {α0 �v0 � + α1 �v1 � + α2 �v2 � | αi ∈ R}
C1 = {β0 �v0 v1 � + β1 �v1 v2 � + β2 �v0 v2 � | βi ∈ R}
∂1 �v0 v1 � = �v1 � − �v0 �
∂1 �v1 v2 � = �v2 � − �v1 �
∂1 �v0 v2 � = �v2 � − �v0 �


まとめて書くと(行列表示)
−1
0 −1
0 
∂1 (�v0 v1 � �v1 v2 � �v0 v2 �) = (�v0 � �v1 � �v2 �)  1 −1
0
1
1
Z1 � β0 �v0 v1 � + β1 �v1 v2 � + β2 �v0 v2 �
0 = ∂1 (β0 �v0 v1 � + β1 �v1 v2 � + β2 �v0 v2 �)
= β0 ∂1 �v0 v1 � + β1 ∂1 �v1 v2 � + β2∂1 �v0 v2 �
β0
= (∂1 �v0 v1 � ∂1 �v1 v2 � ∂1 �v0 v2 �)  β1 
β2



−1
0 −1
β0
0   β1 
= (�v0 � �v1 � �v2 �)  1 −1
0
1
1
β2
例)
v0
∂
1
鎖複体 0 → C1 → C0 → 0
v2
v1
C0 = {α0 �v0 � + α1 �v1 � + α2 �v2 � | αi ∈ R}
C1 = {β0 �v0 v1 � + β1 �v1 v2 � + β2 �v0 v2 � | βi ∈ R}
Z1 � β0 �v0 v1 � + β1 �v1 v2 � +β2 �v0 v2 �


−1
0 −1
β0
0   β1 
0 = (�v0 � �v1 � �v2 �)  1 −1
0
1
1
β2



−1
0 −1
β0
 1 −1
0   β1  = 0
同次連立1次方程式の解
0
1
1
β2




β0
1
よって
 β1  = β  1 
Z1 = {β(�v0 v1 � + �v1 v2 � − �v0 v2 �) | β ∈ R}
β2
−1
v2
一方 B1 = 0 (∵ ∂2 = 0)
ゆえに H1 = {β(�v0 v1 � + �v1 v2 � − �v0 v2 �) | β ∈ R}
わっかを代数的に表現!
v0
v1
3. 情報通信分野へ応用してみよう --- R. Ghristの研究紹介
昔のGhrist
R. Ghrist の紹介
アメリカの数学者
Pennsylvania大学教授
研究テーマ「トポロジーの工学への
応用」において顕著な成果をあげる
最近のGhrist
ホモロジー群のセンサーネットワーク
研究への応用を見てみよう
センサーネットワーク
センサー = sense + -er = 感知する + 装置
例)自動ドア,防犯センサー,iPadなどのタッチパネル
ネットワーク = 点と線でつながっているもの(グラフ)
例)インターネット,人間関係,道路や鉄道網
センサーネットワーク:多数のセンサーを対象領域に
配置し,情報交換を行えるネットワークを構成したもの
制約条件:各センサーは低性能
「高価なセンサーをそぉっと配置するのではなく,1つや2つ
くらいなら潰れてもいい安いセンサーをバァッとバラまく」
という雰囲気
各センサーからの局所的な情報を統合して大域的な
情報を抽出する必要がある
研究テーマ
1.各センサーからくる膨大な情報の効率的な統合方法や
データ伝搬
2.どのような有益な情報を抜き出せるか( 局所→大域 )
領域被覆問題を考えてみよう!
領域被覆問題
対象領域 D
センサーの計測領域:B(xi ; rc )
xi 半径 rc の円板
中心 xi
領域被覆問題
対象領域 D
領域被覆問題: D ⊂
�
xi :sensor
B(xi ; rc ) ?
D
問題設定
D ⊂ R2
対象領域 は有界閉集合
D
の境界はその上のセンサーが定める区分線形な線分
P := {xi ∈ D | i = 1, · · · , N }:センサーの集合
rb :通信半径(半径 円内にある他のセンサーと
rb
rb
通信可能.境界上の隣接センサー距離は 以下)
√
rc :計測半径.rc ≥ rb / 3
�
U=
B(xi ; rc ):計測領域
xi ∈P
領域被覆問題:D ⊂ U ?
注意)各センサーの絶対位置の情報を仮定しない!
(GPSなどの高価な機材は積んでいない)
What s in Ghrist s Mind?
興味の対象は計測領域 U =
�
B(xi ; rc )
xi ∈P
�
しかし交わり B(xi ; rc ) B(xj ; rc ) を調べることは不可能
センサーは近傍のセンサーと 通信可能/不可能 はわかる
rb が定める)
(半径 Ghrist’s Strategy
センサーの通信ネットワークから抽象的な
単体複体を構成し,そのホモロジー群(穴)
情報から領域被覆状態を調べる
通信単体複体 K
頂点集合 K (0) := P
K � |vi vj |
vi , vj が通信可能
K � |vi vj vk |
どの2つのセンサー間でも通信可能
K � |vi0 · · · viq |
どの2つのセンサー間でも通信可能
1単体
vj
vi と 間距離が 以下
rb
2単体
q単体
通信ネットワーク
通信単体複体 K
注意)ここで現れた単体複体はVietoris-Rips複体という数学的な概念
領域被覆定理(de Silva & Ghrist):
[σ] ∈ H2 (K, F ) が存在し となるならば
δ[σ] �= 0
D⊂U
(つまりセンサー達は領域を被覆している)
δ
→ H2 (K) → H2 (K, F ) → H1 (F ) → H1 (K) →
領域被覆定理(簡易版): H1 (K) = 0 ならば D ⊂ U
注)通信単体複体に「わっか」がなければ領域被覆は達成されている
その他の話題
ターゲットカウント:各センサーの局所ターゲット数
から大域ターゲット数を計算できる?
Ghrist の解答: ターゲット数 =
χ(K) :=
dimK
�
�
hdχ
χ
ここで はオイラー数
(−1)q(Kに含まれるq単体の個数)
q=0
v2
v0
三角形
v1
χ=3−3+1=1
今日の話のまとめ
ものの形を大雑把に分類する「穴」について考えた
ホモロジー群という道具を使うと幾何学的な「穴」を
代数的に扱える
ホモロジー群は工学にも応用されつつある
参考資料
トポロジーの入門書
瀬山士郎,トポロジー:柔らかい幾何学,日本評論社
トポロジーの工学(ロボット,情報通信)への応用
R. Ghrist(Pennsylvania大学)のwebpage
http://www.math.upenn.edu/~ghrist/
ホモロジー群のソフトウェア
CHomP
http://chomp.rutgers.edu/