6. 柱の断面算定

建築構造計算の演習
6.柱の断面算定
6. 柱の断面算定
6.1.
柱の断面算定の方針
柱の断面算定は次の方針で行う.
(1) 設計用応力のうち損傷制御のための短期設計用せん断力 QDS は式(6.1)により定める.
QD = QL + QE
(6.1)
ここで,QL:鉛直荷重時せん断力,QE:水平荷重時せん断力
(2) せん断の検討は,短期のみ上記の QD を QA(=(2/3) fSbj)と比較して行う.不足する場
合には,せん断補強を行う.
※ 本演習では柱の主筋の付着の検討,および柱梁接合部の検討は省略する.
6.2. 柱の断面算定演習
6.2.1. 柱の断面算定の流れ
以下では,本演習での検討の流れを示す.
6.2.1.1. 曲げに対する検討
※ 本演習では,Y方向に対してのみ検討し,X方向に関してはY方向と引張鉄筋の断面積
が等しくなるように配筋すると仮定する.
z
z
主筋の許容引張応力度(SD345)ft = 215N/mm2(長期),345N/mm2(短期)
コンクリートの許容圧縮応力度(Fc24)ft = 8N/mm2(長期)
,16N/mm2(短期)
本演習では,主筋には D22(断面積 = 387mm2)を使用する.
z
z
有効せい d:dc = dt = 0.1D = 55mm とする.
最小鉄筋量:pg = 0.8%
ag = 0.8 x 10-2 x 550 x 550 = 2420mm2,最小配筋:8-D22(ag = 3096 mm2)とする.
検討の方針としては,まず図表(図 6-1,図 6-2)に従い必要 pt を定め,必要断面積 at
を定める.これが 3-D22 の断面積(= 1161mm2)を下回るのであれば,引張鉄筋は 3-D22 と
する(すなわち柱全体では 8-D22 とする).逆に,不足する場合には本数を変更する(柱幅
が 550mm のとき,D22 では 8 本まで 1 列に配筋可能).
ここで,引張鉄筋が 3-D22 のときの pt は,
1161
pt =
= 3.838 ×10−3 = 0.384%
550 × 550
となる.
6-1
建築構造計算の演習
6.柱の断面算定
図 6-1
柱主筋算定図表(長期,ft = 215N/mm2,fc = 8N/mm2)
6-2
建築構造計算の演習
6.柱の断面算定
図 6-2
柱主筋算定図表(短期,ft = 345N/mm2,fc = 16N/mm2)
6-3
建築構造計算の演習
6.柱の断面算定
6.2.1.2.
せん断に対する検討
z せん断補強筋の許容引張応力度(SD295)295N/mm2(短期)
z コンクリートの許容せん断応力度(Fc24)1.11N/mm2(短期)
本演習では,せん断補強筋は 2-D10(断面積 = 143mm2)を使用する.
z
最小せん断補強筋量:2-D10@100 とする
(pw = 143 / (550 x 100) = 0.0026)
コンクリートのみによる許容せん断力 QA:
b = 550mm,j = (7/8)d = (7/8) x 495 = 433mm,fs = 1.11N/mm2 であるから,
QA = (2/3) x 550 x 433 x 1.11 = 176 x 103 = 176kN
なお,短期で不足している場合には,以下の手順によりせん断補強設計を行なう.
[1] 式(6.2)よりせん断補強筋により負担するせん断力ΔQ を算定する.
ΔQ = QDS − QA
(6.2)
[2] 次いで,式(6.3)より必要せん断補強筋比 pw を算定する.
pw =
2Δτ
ΔQ
+ 0.002, Δτ =
bj
w ft
(6.3)
ここで,b:柱はば(単位:mm),j:応力中心間距離(単位:mm),wft:せん断補
強筋の許容引張応力度(単位:N/mm2)である.
[3] 最後に,せん断補強筋比が必要せん断補強筋比 pw 以上となるように,式(6.4)よりせん
断補強筋の間隔 s を決定する.
s=
aw
b ⋅ pw
ここで,aw:1組のせん断補強筋の断面積(単位:mm2)である.
6-4
(6.4)
建築構造計算の演習
6.柱の断面算定
6.2.2. 柱の断面算定例
計算例として,図 6-3,図 6-4 に示す柱 1C3 の断面算定を行う.
【曲げに対する検討】
断面
b = D = 550mm,bD= 303 x 103 mm,bD2= 166 x 106 mm3
z 柱頭に関する検討
設計用軸力
長期:430kN(圧縮)
短期:364kN(左→右加力時,圧縮),870kN(右→左加力時,圧縮)
設計用曲げモーメント
長期:55kNm,短期:70.1kNm(左→右加力時),180kNm(右→左加力時)
主筋量算定
長期:N / bD = 430 x 103 / 303 x 103 = 1.42N/mm2
M / bD2 = 55 x 106 / 166 x 106 = 0.33N/mm2 :∴図 6-1 より pt = 0.0
図 6-3
図 6-4
柱 1C3
柱 2C3 の軸力・曲げモーメント
6-5
建築構造計算の演習
6.柱の断面算定
短期(左→右)
:N / bD = 364 x 103 / 303 x 103 = 1.21N/mm2
M / bd2 = 70 x 106 / 166 x 106 = 0.42N/mm2 :∴図 6-2 より pt = 0.0%
短期(右→左)
:N / bD = 497 x 103 / 303 x 103 = 1.64N/mm2
M / bD2 = 180 x 106 / 166 x 106 = 1.08N/mm2 :∴図 6-2 より pt = 0.12%
以上により,必要 pt = 0.12%(必要 at = 0.12 x 10-2 x 303 x 103 = 363 mm2)
一方,最小引張主筋量は 3-D25(at = 1521 mm2),かつ引張側圧縮側も同量入れる
こととする.加えて,X方向とY方向で主筋量は同量入れることとする.
∴配筋は 8-D22 とする(ag = 3096 mm2,pg = 1.02%)
z
柱脚に関する検討
設計用軸力
長期:430kN(圧縮)
短期:364kN(左→右加力時,圧縮),497kN(右→左加力時,圧縮)
設計用曲げモーメント
長期:27kNm,短期:149kNm(左→右加力時),204kNm(右→左加力時)
主筋量算定
長期:N / bD = 1.42N/mm2,M / bD2 = 0.16N/mm2 ∴図 6-1 より pt = 0.0
短期(左→右)
:N / bD = 1.21N/mm2,M / bD2 = 0.90N/mm2 ∴図 6-2 より pt = 0.15%
短期(右→左)
:N / bD = 1.64N/mm2,M / bD2 = 1.23N/mm2 ∴図 6-2 より pt = 0.2%
以上により,必要 pt = 0.2%(必要 at = 0.2 x 10-2 x 303 x 103 = 605 mm2)
一方,最小引張主筋量は 3-D25(at = 1521 mm2),かつ引張側圧縮側も同量入れる
こととする.加えて,X方向とY方向で主筋量は同量入れることとする.
∴配筋は 8-D22 とする(ag = 3056 mm2,pg = 1.02%)
【せん断に対する検討】
設計用せん断力(短期)
22.6 + 82.7 = 105.3kN
b = D = 550mm,d = 495mm,j = (7/8)x 495 = 433mm,fs = 1.11 N/mm2(短期)
コンクリートのみによる検討
QA = (2/3) fS b j = (2/3) x 1.11 x 550 x 433 = 176 x 103N = 176kN > 105kN ∴OK
以上により,帯筋は 2-D10@100(100mm 間隔)とする.
以上により,柱 2C3 の配筋は図 6-5 の通りとなる.
6-6
建築構造計算の演習
6.柱の断面算定
主筋:8-D22
主筋:8-D22
帯筋:2-D10@100
(a) 柱頭側
(b) 柱脚側
図 6-5
柱 1C3 の配筋
以上の計算手順を表 6-1 にまとめる
6-7
建築構造計算の演習
6.柱の断面算定
表 6-1
柱記号
位置
N (kN)
長
M (kN-m)
期
Q(kN)
N (kN)
水
M (kN-m)
平
Q(kN)
N (kN)
左→右 M (kN-m)
Q(kN)
短
期
N (kN)
右→左 M (kN-m)
Q(kN)
b x D (mm)
d (mm)
断
j (mm)
面
bD (x103mm2)
bD2(x106mm3)
N / bD (N/mm2)
長
M / bD2 (N/mm2)
期
pt (%)
N / bD(N/mm2)
左→右 M / bD2(N/mm2)
pt (%)
短
期
N / bD (N/mm2)
右→左 M / bD2(N/mm2)
pt (%)
必要 pt (%)
必要 at (mm2)
引張鉄筋の配筋
(2/3) fsbj (kN)
判定
せん断補強
(短期)
柱断面算定例(曲げ・せん断)
1C3
T
430.0
55.0
22.6
66.1
121.5
82.7
B
27.5
176.9
364.4
70.1
149.5
60.2
496.6
180.1
204.4
105.3
550 x 550
495.0
433.1
302.5
166.4
1.42
0.33
0.0
0.16
0.0
1.21
0.42
0.0
0.90
0.15
1.64
1.08
0.12
0.12
363
3-D22
1.23
0.20
0.20
605
3-D22
176
OK
ΔQ(kN)
ΔQ / bj (N/mm2)
必要 pw (%)
帯筋間隔 s(2-D10)
設計
0.2
100
2-D10@100
6-8
建築構造計算の演習
6.柱の断面算定
6.2.3. 柱の断面算定演習
演習:表 6-2~表 6-4 に従って,柱の断面算定を行い主筋量・せん断補強筋量を決定せよ.
ここで,帯筋(せん断補強筋)は,ひとまず 2-D10(aw = 143 mm2)として必要間隔 s を求め,
s<100mm の場合には,3-D10(aw = 214mm2)として再度必要間隔を求めよ.なお,実際に配
筋する場合の帯筋間隔は,50mm の整数倍とする.
6-9
建築構造計算の演習
6.柱の断面算定
表 6-2
柱記号
位置
N (kN)
長
M (kN-m)
期
Q(kN)
N (kN)
水
M (kN-m)
平
Q(kN)
N (kN)
左→右 M (kN-m)
Q(kN)
短
期
N (kN)
右→左 M (kN-m)
Q(kN)
b x D (mm)
d (mm)
断
j (mm)
面
bD (x103mm2)
bD2(x106mm3)
N / bD (N/mm2)
長
M / bD2 (N/mm2)
期
pt (%)
N / bD(N/mm2)
左→右 M / bD2(N/mm2)
pt (%)
短
期
N / bD (N/mm2)
右→左 M / bD2(N/mm2)
pt (%)
必要 pt (%)
必要 at (mm2)
引張鉄筋の配筋
(2/3) fsbj (kN)
判定
せん断補強
(短期)
)
柱断面算定表(柱 2C3(曲げ・せん断)
C
2 3
T
202.1
101.5
55.8
20.8
81.3
38.2
(
(
(
93.7
55.2
)
)
(
(
B
(
)
(
)
(
(
)
)
(
(
)
)
(
(
(
(
(
)
)
)
)
-D22)
)
)
)
(
)
550 x 550
495.0
(
)
(
)
(
)
(
)
(
(
)
)
(
(
)
)
(
(
(
(
(
(
(
)
)
)
)
)
)
-D22)
(
(
)
)
(
(
)
)
ΔQ(kN)
ΔQ / bj (N/mm2)
必要 pw (%)
帯筋間隔 s(2-D10)
設計
(
6-10
)
建築構造計算の演習
6.柱の断面算定
表 6-3
柱記号
位置
N (kN)
長
M (kN-m)
期
Q(kN)
N (kN)
水
M (kN-m)
平
Q(kN)
N (kN)
左→右 M (kN-m)
Q(kN)
短
期
N (kN)
右→左 M (kN-m)
Q(kN)
b x D (mm)
d (mm)
断
j (mm)
面
bD (x103mm2)
bD2(x106mm3)
N / bD (N/mm2)
長
M / bD2 (N/mm2)
期
pt (%)
N / bD(N/mm2)
左→右 M / bD2(N/mm2)
pt (%)
短
期
N / bD (N/mm2)
右→左 M / bD2(N/mm2)
pt (%)
必要 pt (%)
必要 at (mm2)
引張鉄筋の配筋
(2/3) fsbj (kN)
判定
せん断補強
(短期)
)
柱断面算定表(柱 2C4(曲げ・せん断)
C
2 4
T
249.1
77.4
42.9
10.1
124.1
66.1
(
(
(
72.9
107.2
)
)
(
(
B
(
)
(
)
(
(
)
)
(
(
)
)
(
(
(
(
(
)
)
)
)
-D22)
)
)
)
(
)
550 x 550
495.0
(
)
(
)
(
)
(
)
(
(
)
)
(
(
)
)
(
(
(
(
(
(
(
)
)
)
)
)
)
-D22)
(
(
)
)
(
(
)
)
ΔQ(kN)
ΔQ / bj (N/mm2)
必要 pw (%)
帯筋間隔 s(2-D10)
設計
(
6-11
)
建築構造計算の演習
6.柱の断面算定
表 6-4
柱記号
位置
N (kN)
長
M (kN-m)
期
Q(kN)
N (kN)
水
M (kN-m)
平
Q(kN)
N (kN)
左→右 M (kN-m)
Q(kN)
短
期
N (kN)
右→左 M (kN-m)
Q(kN)
b x D (mm)
d (mm)
断
j (mm)
面
bD (x103mm2)
bD2(x106mm3)
N / bD (N/mm2)
長
M / bD2 (N/mm2)
期
pt (%)
N / bD(N/mm2)
左→右 M / bD2(N/mm2)
pt (%)
短
期
N / bD (N/mm2)
右→左 M / bD2(N/mm2)
pt (%)
必要 pt (%)
必要 at (mm2)
引張鉄筋の配筋
(2/3) fsbj (kN)
判定
せん断補強
(短期)
)
柱断面算定表(柱 1C4(曲げ・せん断)
C
1 4
T
564.3
43.7
18.0
35.1
168.1
100.4
(
(
(
21.9
198.4
)
)
(
(
B
(
)
(
)
(
(
)
)
(
(
)
)
(
(
(
(
(
)
)
)
)
-D22)
)
)
)
(
)
550 x 550
495.0
(
)
(
)
(
)
(
)
(
(
)
)
(
(
)
)
(
(
(
(
(
(
(
)
)
)
)
)
)
-D22)
(
(
)
)
(
(
)
)
ΔQ(kN)
ΔQ / bj (N/mm2)
必要 pw (%)
帯筋間隔 s(2-D10)
設計
(
6-12
)