平成 24 年度 経営計画 - しなの鉄道

平成 24 年度
経営計画
改定版
平成 24 年 5 月
しなの鉄道株式会社
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1 基本方針
当社は、お客様をはじめ沿線地域の皆様方に支えられながら、本年 10 月に開業か
ら 15 周年という節目の年を迎えます。
この間、当社では安全を社是とし、全社員が安全輸送の重要性を深く認識しながら
事故防止に努め、開業以来、大きな輸送障害を起こすことなく事業を継続することが
できました。今後も地域の基幹的な公共交通機関としての使命を果たすべく、安全・
安定輸送の確保に努めてまいります。
一方、開業以降一貫して減少傾向の続いている輸送人員については、平成 23 年度、
年度当初の4月、5月においては、3月の震災の影響から前年度実績を大きく下回る
という厳しい状況となりました。しかしその後、全国的な節電への取り組みから避暑
地としての沿線地域への入り込みが増え、特に年度下期においては、信州デスティネ
ーションキャンペーン等で誘客の増えた一昨年の輸送人員をも上回る月があるなど、
これまでの減少傾向に一定の歯止めとなる兆しが見られました。
経営の根幹でもある運賃収入の確保を図るためには、輸送人員の減少傾向に歯止め
を掛けるということが喫緊の課題であることから、昨年度は、その対応策を検討する
ための社内組織を立ち上げ、鋭意検討を進めてまいりました。本年度は、この検討内
容を各種施策に積極的に取り入れるとともに、引き続き、お客様のニーズを踏まえた
企画商品の開発や首都圏・中京圏等へ向けた情報発信を強力に展開し、前年度に見ら
れた輸送人員減少傾向の歯止めを着実なものとし、更なる増客を目指します。
また、平成 26 年度に予定されている北陸新幹線長野・金沢間の開業に伴い、東日
本旅客鉄道株式会社から経営分離される長野以北の信越本線長野・妙高高原間の経
営を当社が引き受けることになりました。この路線は、通勤・通学・通院・買物など
で沿線地域の日常生活を支える役割とともに、全国的な交通ネットワークの一部と
して観光やビジネスの面でも大きな役割を果たしていますが、新幹線の金沢延伸や
沿線人口の減少等による利用者の減少に加え、豪雪対策等大変厳しい運営が予測さ
れています。
この路線を安全・安定輸送を第一とし、健全な経営のもとに維持発展させるため、
「長野以北開業推進本部」並びに「長野以北開業準備室」を設置し、全社をあげて開
業に向けた準備作業に取り組んでまいります。
一つの節目の年となる平成 24 年度を新たな飛躍の年とするべく、全力で取り組ん
でまいります。
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2 輸送の安全確保
(1) 安全運行体制の確立
 基本力の向上と「考える力」の強化
これまで「基本力の向上」をスローガンに基本的な知識技能(基本力)の
レベルアップに努めてまいりました。本年度は更に、手順書やマニュアルだけ
では対応できないような異常時においても社員一人ひとりが自ら考えて行動
できるよう、想定事象を設定した訓練を実施し、「考える力」の強化に取り組
んでまいります。
 安全マネジメントの確実な実行と継続的改善
鉄道事業者として安全が第一であるということを経営トップをはじめ全社
員が再認識するとともに、それぞれの責務を確実に果たし、全社一体となった
安全確保に取り組みます。また、安全マネジメント内部監査を通じて安全確保
に向けた取組みの継続的な改善を図ります。
 安全意識の高揚と技術力の向上
安全推進委員会を中心に安全・技術情報を全社展開して共有化を図るとと
もに、部門別研修や専門研修への参加などを通じて安全意識の高揚と技術力の
向上を目指します。
 安全情報の公開
上記施策の具体的な取り組みとして「安全計画」を定め全社員に徹底を図る
とともに、年度終了時に同計画を総括し「安全報告書」を作成・公表します。

分岐器の改良
駅構内の分岐器のボールベアリング床板化により、社員の注油作業を削減し
安全の確保を図ります。
(本年度は小諸駅、上田駅構内の分岐器を改良)
(2) 車両・設備の安全性の確保

経費の節減に努めながらも、安全運行に最低限必要な車両や設備の状態につ
いて見極めを行った上で必要な修繕等の手当てをし、安全性の確保を図ります。
(3) 請負工事の事故防止

請負工事の安全対策も会社の安全対策と変わりなく重要な事項であることの
認識を徹底し、請負工事事故防止会議の開催や、安全パトロールの実施などを通
じて請負工事事故の未然防止に向けた取り組みを推進します。
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(4) ヒヤリハットの活用と「気づく力」の醸成

社員が体験した事故や危険に結びつく可能性のある「ヒヤリハット」につい
てその事例集を作成し、その内容を事故の芽として認識を共有するなど、事故の
防止に努めます。

一人ひとりの社員が問題意識を持って安全確保に取り組めるよう、常日頃か
ら社員の「気づく力」の醸成に努めます。
(5)

防災訓練の実施
将来の発生が懸念される大規模地震等を想定した防災訓練を実施し、不測の
事態に備えます。
3 旅客サービスの向上
(1) 接遇向上

サービスアップ委員会の開催や「さわやかサービスキヤンペーン」などの実
施とともに職場研修を通じて社員のレベルアップを図り、お客様第一の爽やかで
心のこもったサービスの提供と、的確なお客様対応のできる知識・技能の向上を
目指します。

外部専門機関の研修への参加のほか、他の鉄道会社との技術交流・情報交換
を通じて社内のサービス水準を確認し、部門毎の実践用サービスモデルの充実を
図り、接遇サービスの向上に努めます。
(2) お客様のニーズを踏まえた列車の運行

ゴールデンウイーク、夏季繁忙期など時季折々のお客様のニーズに合わせた
列車の運行を行います。また、他の鉄道会社と連携した企画商品の開発を行い、
鉄道をより利用しやすい環境の構築を図ります。

しなの鉄道活性化協議会からの委託を受け、軽井沢-小諸間の列車増発によ
る新幹線との接続改善など、お客様の利便性向上に向けた実証運行を継続実施し
ます。
(3) 車両の更新

老朽化した 169 系車両の更新について所要の準備を進めます。

運用の主体となっている 115 系車両について、車内の居住空間の快適化を図
るため、座席の転換クロスシート化について検討を進めます。
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(4) 駅舎・ホーム等の整備

自治体の協力を得ながら、中軽井沢駅の駅舎改築や平原駅のホーム改良工事
などを進めます。
(5) 駅のバリアフリー化等

平原駅の下りホームの改良工事に合わせ、ホームスロープについてもバリア
フリー新法に適合したゆるやかな傾斜に整備します。

坂城駅のエレベーター設置に向けて、必要な調査業務を行います。

AEDの配置
乗降客の多い社員配置駅から順次AEDを配置し、お客様の健康異常時への
対応体制を整備します。
(本年度は戸倉駅に設置)
(6) パーク&レールライドの推進

通勤定期利用のお客様に対する駐車場料金の割引検討や、沿線自治体に対す
る駅周辺への駐車場整備・駐車場料金低廉化等の働き掛けを行い、パーク&レー
ルライドの推進を図ります。
4 収益力の強化
(1) 輸送人員の維持・増加
輸送人員1千万人以上確保に向けた増客推進チームでの検討を踏まえ、輸送
人員の維持・増加に向けた各種施策を積極的に展開します。

鉄道を利用する際の障壁を取り除くため、二次交通を含めた総合路線図の作
成や観光モデルコース等の設定を行います。

シルバー向け商品の充実や沿線地域を舞台としたアニメとの連携商品の企画
など、ターゲット層・テーマ性を意識した商品開発を進めます。

ホームページの全面リニューアルを行い、会社としての「イチオシ」を明確
化するとともに、各種メディアを使った広告宣伝を積極的に展開し、お客様へ
の情報発信力を強化します。

地域の観光資源を活かした時季折々の需要に対応した企画列車を運行します。
また、小布施・湯田中や別所、姨捨等の観光地と連携したフリーきっぷなどを
設定するとともに、観光団体等との連携による広告活動を積極的に展開し、旅
客需要を喚起します。

しなの鉄道活性化協議会からの委託を受け、軽井沢-小諸間の列車増発によ
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る新幹線との接続改善など、お客様の利便性向上に向けた実証運行を継続実施
します。
(再掲)

沿線観光情報等を車内中吊りチラシとして掲出し、観光需要を創出します。
(2) 関連事業の強化

駅の活性化及び構内営業の強化
地産地消の「市」など駅主体のイベントを開催するとともに、地域イベント
会場などに駅を無料開放するなど、まちのステーションとして駅の活性化を図
ります。
また、主要駅における観光案内スペースの整備により情報提供の充実を図る
など、お客様をお迎えするための環境整備を進めます。
さらに軽井沢駅や大屋駅でのテナント募集など、駅構内スペースの有効活用
を図ります。

旅行業・物販等の収益力強化
旅行業や物販について、その効率的なあり方を検討するとともに、旅行商品
の企画、仕入及び催行方法を見直し、コスト低減の方策を追及することにより、
収益性を高めます。

広告業の強化
駅構内広告スペースの有効活用を推進するとともに、広告営業により広告収
入を確保します。
5 効率経営の推進
(1) 経費の節減

組織・勤務体制の見直し等について検討を進め、人件費の更なる抑制を目指
します。

各種契約、業務の発注に際しては、更なる競争原理の導入によりコストを削
減します。

設備投資は、ピークを迎える長期借入金の約定返済を円滑に進めるため、ま
た、車両更新に備えた借入金の抑制を図るため、緊急性の高い投資を中心に実施
します。
なお、実施に当たっては、国の補助制度を有効に活用するとともに、県・沿線
自治体の支援を仰ぎます。
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
設備投資に充てるための新規の長期借入金は必要最低限とし、短期借入金に
ついては、残高の削減に努めます。

開業後4駅が新設されるなど維持管理費、固定資産税が増加しているため、
効率的な業務を推進し、経費の節減を図ります。
(2) 業務の外部委託・直営化

業務内容を精査し、外部委託または直営化の必要性について検討を進めます。
(3) 設備投資の適正化

中軽井沢駅舎の改築や平原駅のホーム改良に当たっては、必要最小限の整備
とします。

不使用或いは利用率の低い施設・設備の閉鎖を進めます。
(4) 過剰設備(遊休地含む)の処分

軽井沢遊休地については、売却対象地の土壌調査を行うなど、売却処分に向
けた準備を進めます。また、売却までの間については、自社での有効活用につい
ても検討を行います。

中軽井沢駅舎改築等に伴い不要となる土地について、自治体への売却を進め
ます。
6 組織体制の強化
(1) 経営力の強化

会社の経営状況を一人ひとりが理解した上で、業務に取り組みます。

組織体制を見直すとともに権限・責任を明確にします。

役員会・経営会議・部課長会議の活性化を通じて経営課題への迅速・的確な
対応を図ります。
(2) 若手社員の育成

若手社員を対象とした社内研修の実施、社外研修への参加、他鉄道会社との
交流を継続実施します。また、研修等を通じ、社会人としての必要な力を涵養し、
意欲を持って働ける職場環境づくりに努めます。

技術・技能の伝承を円滑に進めるため、現場の実情に応じたカリキュラムを
策定し取り組みます。

引続きプロパー社員の役職登用を進め、組織の若返りを進めます。
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7 地域との連携の強化
(1) 地域との連携

平成 22 年 2 月に策定された「しなの鉄道総合連携計画」に基づき、沿線市町、
商工団体、観光団体等と連携し、しなの鉄道の活性化に向けた事業を総合的に展
開します。

地域との連携により、沿線の隠れた観光スポットの掘り起こし・ブラッシュ
アップとそれらを活用した観光モデルコースの作成・提案を行い、首都圏や中京
圏等からの誘客展開を図ります。

AC長野パルセイロや信州ブレイブウォリアーズのホームゲーム開催日程を
周知する等、沿線の地域スポーツとの連携を強化し、相互の誘客展開を図ります。
(2) 他公共交通機関との連携

他の鉄道会社や、バス、タクシーなどとの連携を強化し、鉄道を利用しやす
い環境の構築を図ります。特に、バスとの連携を強化し、列車輸送とバス輸送と
を相互に補完する商品開発を行います。
(3) 環境整備・美化運動

駅前広場や駅周辺の美化を地域住民との連携により積極的に進め、お客様に
より快適な環境を提供します。
8 主な設備投資計画
既存の有利子負債の削減並びに将来の車両購入を考慮し、今年度については設備投
資額を193百万円程度(負担金工事を除く。)とします。
主な設備投資は次のとおりです。

電車線路支持物建替工事(46百万円)
経年劣化したコンクリート柱の更新

大屋変電所高圧配電盤取替工事(26百万円)
老朽化による機器の更新

PCマクラギ交換工事(17百万円)
経年劣化したPCマクラギをPND型マクラギに交換

分岐器床板ボールベアリング化(14百万円)
駅構内(小諸・上田)の分岐器のベアリング化
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
小諸変電所き電盤・直流高速度遮断器取替工事(6百万円)
老朽化による機器の更新

平原駅ホーム改良工事(6百万円)
経年劣化した下りホームの補強
この他負担金工事として、次の工事を実施します。

中軽井沢駅構内改良工事(762百万円)
(軽井沢町負担金工事(一部自社負担)
)
9 長野以北並行在来線の開業準備
長野以北並行在来線対策協議会が平成 24 年3月に策定した「経営基本計画」に基
づき、運行形態・運転本数等の運行計画や運賃・連絡運輸等の営業計画などについて、
JR東日本や新潟県等と詳細な検討を進めます。
また、路線名(愛称を含む)の公募や地域住民、県・沿線関係市町、関係団体等か
らなる運営協議会(仮称)の設置を検討するなど沿線地域と一体となって利用促進に
取り組みます。
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10
予定損益
自
至
科
平成24年4月 1日
平成25年3月31日
目
営 業 損 益
営業外損益
(単位:百万円)
金
額
営 業 収 益
2,781
営
費
2,653
営 業 利 益
128
業
営業外収益
43
営業外費用
52
119
経 常 利 益
特 別 損 益
特 別 利 益
931
特 別 損 失
856
9
法人税、住民税及び事業税
185
当 期 純 利 益
11
予定キャッシュフロー
自
至
項
営 業 活 動
平成24年4月 1日
平成25年3月31日
目
金
194
減 価 償 却 費 等
220
414
856
補助金・負担金
設
備
投
資
▲1,050
▲193
計
財 務 活 動
額
税引前当期利益
計
投 資 活 動
(単位:百万円)
短 期 借 入 金
▲100
長 期 借 入 金
▲134
▲234
計
合
▲13
計
前
期
繰
越
現
金
・
預
金
336
翌
期
繰
越
現
金
・
預
金
323
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