防火区画貫通部の措置工法とロックウール 置工法 - ロックウール工業会

防火区画
防火区画貫通部
貫通部の措置工法とロックウール
平成14年8
平成14年8月
ロックウール工業会
目次
1.はじめに
…………………………………………… 2
2.配管の防火区画貫通部措置工法 …………………………………………… 4
1)一般防火区画貫通部
……………………………………………
a.不燃材料の配管
b.不燃材料以外の配管
2)令 8 区画及び共住区画貫通部
………………………………………… 5
3.ダクトの防火区画貫通部措置工法 …………………………………………11
1)一般防火区画貫通部
…………………………………………11
2)耐火仕様ダクト
…………………………………………11
3)その他の防火工法
…………………………………………11
a.排煙ダクトの断熱措置
b.火を使用する器具に付属する排気筒・給排気筒と可燃材料の離隔距離
c.厨房設備に付属する排気ダクト及び天蓋と可燃材料との離隔距離
4.電気設備の区画貫通部措置工法
1)一般防火区画貫通部
…………………………………………14
…………………………………………14
a.配電管
b.ケーブル配線等
c.金属ダクト
d.床ピット配線
e.セルラーダクト
2)共住区画貫通部
…………………………………………16
a.配電管
b.ケーブル配線等
3)令8区画貫通部
…………………………………………16
5.グリストラップ、和風大便器等の区画貫通部措置工法……………………17
1)グリストラップ
…………………………………………17
2)和風大便器
…………………………………………17
3)洋風大便器に鉛管を使用する場合の扱いについて………………………18
6.参考資料
1)用語の解説
…………………………………………19
2)参考文献
…………………………………………20
7.耐火措置工法解説
…………………………………………21
8.付録(層間区画塞ぎ、ALC目地)…………………………………………23
-1-
1.はじめに
近年の建築物の大規模化、高層化などに伴い建築設備も多様化、性能の高度化が進
み、建築防災関連設備に対する要求は、ますます比重が高くなってきている。とりわ
け防火区画貫通部に関しては、火災の拡大を防止し、直接人命にかかわる関係上各種
の規制があり、従って建築設計の段階から十分考慮しておくことが必要である。
しかし、これらを規制する法令としては建築基準法、建築基準法施行令その他の建
築関係法令及び消防法、消防法施行令その他各市町村火災予防条例などと膨大、多岐
にわたり、法律特有の難解な表現で専門的且つ詳細に規定されている。また平成10年
から12年にかけて建築基準法の一部が改正され、
この法律改正部分を含めてこれら全
体を把握し、実設計に組み込んでいくことは極めて困難である。本資料は、この建築防
災設備の中で防火区画貫通部の処理について、ロックウールを用いる防火区画貫通部措
置工法を整理し、建築設計に資することを目的として編纂したものである。
防火区画貫通部措置工法は、貫通する設備の種類、防火区画の種類等によって要求
される性能が異なり、又、防火区画貫通部ではなくても類似した部分について火災予
防上の措置が定められている場合もある。これに伴い適切な防火処理方法を採用する
ことが必要となる。
本資料では、これらを体系化し、法令などで規定され又は認定工法などの各種防火
区画貫通部措置工法のうち、ロックウールを用いる代表的な防火区画貫通部措置工法
を、貫通する設備の種類ごとにまとめ、建築設計の立場からはもとより一般の方にも、
建築物のより一層の安全性の向上に有効に活用していただけるよう考慮した。従って、
貫通部の防火措置工法としては、本資料に掲載したものに限定されるものではないの
で、その他の防火措置工法を採用する場合には、別途法令などを参考にしていただき
たい。
建築防災としては区画貫通部の防火措置工法が重要であるが、そのほか高温の排気ダ
クトの断熱措置及び可燃物との離隔距離も重要である。ここでは、建築防災の立場か
らこれらについてもロックウールを用いる工法についてふれてみた。
区画貫通部の防火措置工法の概要は、表−1に示したが、詳細については本文及び関
係法令などを参照していただきたい。又、本資料の編纂にあたっては、現時点で入手し
得る建築基準法関係法規、消防法関係法規その他各省庁建築・機械設備共通仕様書を参
考にして作成し、表―1には関係法令などを示したが、法令などの改正等による変更や
所轄の省庁・消防署で認めた特殊な工法もあるので、その都度所轄部署に相談するの
が望ましい。
-2-
表―1 防火区画貫通部措置工法の概要
区画の
防火措置工法関係法令、通達
貫通設備の種類
区分
種類
材料
建築基準法施行令 112 条 15 項
一般区画 給排水管
不燃材
建築基準法施行令 113 条2項
冷水管
建築基準法施行令 129 条の 2 の 5
冷温水管
平 5 建設省告示第 1426 号
蒸気管
ガス管
冷媒管
不燃材以外 平 12 建設省告示第 1422 号
ダクト(風道)
耐火仕様ダクト
排煙ダクトの断熱措置
ガス機器の給排気筒
厨房設備の排気ダクト
配電管
不燃材
不燃材以外
共住区画
令8区画
ケーブル
ケーブルダクトなど
給排水管
不燃材以外
冷水管
不燃材
冷温水管
蒸気管
ガス管
冷媒管
ダクト(風道)
配電管
ケーブル
ケーブルダクトなど
給排水管 不燃材
不燃材以外
冷温水管、冷水管
蒸気管、ガス管
冷媒管
ダクト
配電管
ケーブル
ケーブルダクトなど
建築基準法施行令 112 条 16 項
建築基準法施行令 113 条2項
建築基準法施行令 129 条の 2 の 5
平 12 建設省告示第 1422 号
建築基準法第 36 条
建築基準法施行令 112 条 16 項
建築基準法施行令 126 条の 3
建築基準法第 36 条
建築基準法施行令 115 条 1 項 3、4 号
建築基準法施行令 126 条の 3
建築基準法第 36 条
建築基準法施行令 115 条
S56 建設省告示 第 1098 号
建築基準法第 36 条
建築基準法施行令 115 条
自治省火災予防条例準則第 3 条 4
東京都火災予防条例第 3 条 2 他
建築基準法施行令 112 条 15 項
建築基準法施行令 113 条2項
建築基準法施行令 129 条の 2 の 5
平 12 建設省告示第 1422 号
建設大臣官房庁営繕部電気設備工事共通仕様書
平 12 建設省告示第 1422 号
貫通不可
消防予第 53 号
消防予第 47 号
本文参照
ページ
4
5
11
12
11∼12
12∼14
14
14
14
15∼16
5
貫通不可
―
消防予第 53 号
消防予第 47 号
16
消防予第 53 号
16
消防予第 53 号、消防予第 47 号
5
貫通不可
―
3
2.配管の防火区画貫通部措置工法
配管類は、配管の種類・材質によっては、一般防火区画、共住区画、令8区画を貫通できない場合もあるの
で注意が必要である。
1)一般防火区画貫通部
a)不燃材料の配管
不燃材料の配管などが一般防火区画を貫通する場合の防火措置工法は、法令において下記の方法が定
められている。一般防火区画を貫通できる不燃材料の配管は、給排水管、冷水管、冷温水管、蒸気管、
裸管、ガス管及び冷媒管である。
ア)給排水管、冷水管、冷温水管、冷媒管
※充填密度の指定のない場合は、粒状綿又は保温
板などを隙間の無いよう充填する。
イ)蒸気管
①保温の無い場合
②金属製の筒、管、スリーブを用いる場合
ウ)裸管、ガス管
4
b)不燃材料以外の配管
不燃材料以外の配管が一般防火区画を貫通する場合の防火措置工法は、大臣認定工法であること
大臣認定工法であること
又は平 12 建設省告示第 1422 号によることが必要となる。
2)令 8 区画貫通部及び共住区画貫通部
令 8 区画及び共住区画を貫通する配管、貫通部分に関する施工方法等に係る防火性能等については、53 号通知(平
成 7 年 3 月 31 日)に示す基準に適合するかを、個別に評価(日本消防設備安全センターにおける性能評定)すること
としている。
しかしながら、給排水管等として用いられる鋼管又は鋳鉄管(以下「鋼管等」という。)については、令 8 区画及
び共住区画を貫通する施工方法について、標準的な工法が確立され、確実に施工されることとなっていると認められ
ることから、個別評価を行わなくてよいこととし、その標準施工方法が示されている。尚、鋼管等の呼び径は 200mm
以下、貫通穴は直径 300mm 以下(矩形の場合は直径が 300mm の円に相当する面積以下)であること。鋼管等を使用す
る範囲は区画部を貫通している部分及びその両側 1m以上の範囲とし、配管の用途は、令 8 区画においては給排水管、
共住区画においては給排水管、空調用冷温水管、ガス管、冷媒管等(電気配線含む)に限定されている。また、原則
として保温材で被覆してないものを用いることとしている(但し、保温材について例外規定あり)。
①貫通部の処理
ア. セメントモルタルによる方法
日本建築学会建築工事標準仕様書(JASS)15「左官工事」によるセメントと砂を容積で 1 対 3 の割合で十分
から練りし、これに最小限の水を加え、十分混練りする。貫通部の裏側の面から板等を用いて仮押さえし、セ
メントモルタルを他方の面と面一になるまで十分密に充填する。セメントモルタル硬化後は、仮押さえに用い
た板等を取り除く。
イ. ロックウールによる方法
JIS A 9504(人造鉱物繊維保温材)に規定するロックウール保温材(充填密度 150kg/㎥以上のものに限る。)
又はロックウール繊維(充填密度 150kg/㎥以上のものに限る。)を利用した乾式吹き付けロックウール又は湿
式吹き付けロックウールで隙間を充填する。ロックウール充填後、25mm 以上のケイ酸カルシウム板又は 0.5mm
以上の鋼板を床又は壁と 50mm 以上重なるように貫通部に蓋をし、アンカーボルト、コンクリート釘等で固定す
る。
②可燃物の接触防止処置
鋼管等の表面から 150mm の範囲に可燃物が存する場合には、アに掲げる被覆材をイに定める方法により被覆する
こと。
ア. 被覆材
ロックウール保温材(充填密度 150kg/㎥以上のものに限る。)又はこれと同等以上の耐熱性を有する材料で
造った厚さ 25mm 以上の保温筒、保温帯等とすること。
イ. 被覆方法
鋼管等の呼び径
被覆の方法
部位
100 以下
貫通部の床の上面から上方 60cm の範囲に一重に被覆する。
貫通部の床の上面から上方 60cm の範囲に一重に被覆し、さ
床
100 を超え 200 以下
らに、床の上面から上方 30cm の範囲には、もう一重被覆す
る。
100 以下
貫通部の壁の両側から左右 30cm の範囲に一重に被覆する。
貫通部の壁の両側から左右 60cm の範囲に一重に被覆し、さ
壁
100 を超え 200 以下
らに、壁の両側から左右 30cm の範囲には、もう一重被覆す
る。
(緩和規定)
給排水管で、次のいずれかに該当する場合は、可燃物が直接接触しないことをもって足りる。
・ 給排水管の内部が常に充水
・ 当該可燃物が構造上必要最小限のものであり、給排水管からの熱伝導により容易に着火しないもの
(木軸、合板等)
5
③鋼管等の保温
鋼管等は、原則として、保温材で被覆していないものを用いること。ただし、②アに掲げる材料を保温材として
用いる場合には、この限りではない。この場合において、鋼管等の表面から 150mm の範囲に可燃物が存するときに
②に定める被覆を施す場合には、保温材を被覆材の一部とみなすことができる。
④図面との対応表
部位
貫通部の処理
セメントモルタ
ル
可燃物の有無
無
鋼管等の呼び径
200 以下
100 以下
有
100を超え200以下
床
無
ロックウール
200 以下
100 以下
有
100を超え200以下
無
セメントモルタ
ル
200 以下
100 以下
有
100を超え200以下
壁
無
ロックウール
200 以下
100 以下
有
100を超え200以下
6
保温材の有無
無
無
有
無
有
無
無
有
無
有
無
無
有
無
有
無
無
有
無
有
図番
図―1
図―5
図―13
図―6
図―14
図―2
図―7
図―15
図―8
図―16
図―3
図―9
図―17
図―10
図―18
図―4
図―11
図―19
図―12
図―20
配管径200以下
配管200以下
50以上
直径300以下
300以下
50以上
ケイ酸カルシウム板
又は鋼板等
ロックウール充填
モルタル充填
図―1
図―2
配管径200以下
配管径200以下
ケイ酸カルシウム板
300以下
300以下
又は鋼板等
モルタル充填
ロックウール充填
図―3
図―4
配管径 ≦100
100<配管径≦200
25以上
25以上
50以上
300
600
被覆材
(ロックウール保温筒)
600
被覆材
(ロックウール保温筒)
モルタル充填
図―5
モルタル充填
7
図―6
100<配管径≦200
配管径 ≦100
25以上
ケイ酸カルシウム板
又は鋼板等
300
600
50以上
ケイ酸カルシウム板
又は鋼板等
ロックウール充填
ロックウール充填
図―7
図―8
配管径≦100
100<配管径≦200
300
300
被覆材
(ロックウール保温筒)
モルタル充填
図―10
配管径≦100
100<配管径≦200
ケイ酸カルシウム板
600
25以上
又は鋼板等
300
300
600
300
300
被覆材
(ロックウール保温筒)
ロックウール充填
図―11
被覆材
(ロックウール保温筒)
ロックウール充填
図―12
8
ケイ酸カルシウム板
又は鋼板等
25以上
図―9
モルタル充填
50以上
被覆材
(ロックウール保温筒)
300
25以上
300
25以上
600
600
50以上
50以上
50以上
被覆材
(ロックウール保温筒)
600
被覆材
(ロックウール保温筒)
25以上
100<配管径≦200
配管径 ≦100
25以上
25以上
保温材
(ロックウール保温筒)
50以上
被覆材
(ロックウール保温筒)
300
600
被覆材
(ロックウール保温筒)
600
保温材
(ロックウール保温筒)
モルタル充填
モルタル充填
図―13
図―14
配管径 ≦100
100<配管径≦200
25以上
50以上
50以上
ケイ酸カルシウム板
又は鋼板等
600
被覆材
(ロックウール保温筒)
600
被覆材
(ロックウール保温筒)
25以上
保温材
(ロックウール保温筒)
300
50以上
ケイ酸カルシウム板
又は鋼板等
ロックウール充填
ロックウール充填
図―15
図―16
配管径≦100
100<配管径≦200
600
300
300
300以下
25以上
300
保温材
(ロックウール保温筒)
被覆材
(ロックウール保温筒)
保温材
(ロックウール保温筒)
モルタル充填
モルタル充填
被覆材
(ロックウール保温筒)
図―17
図―18
9
25以上
300
600
50以上
保温材
(ロックウール保温筒)
300
保温材
(ロックウール保温筒)
又は鋼板等
300
25 以上
300
600
300
保温材
ロックウール充填 (ロックウール保温筒)
被覆材
(ロックウール保温筒)
ロックウール充填
被覆材
(ロックウール保温筒)
図―19
図―20
10
25以上
600
ケイ酸カルシウム板
ケイ酸カルシウム板
又は鋼板等
50以上
100<配管径≦200
配管径≦100
3.ダクトの防火区画貫通部措置工法
ダクト類は、一般防火区画を除く防火区画を貫通してはならない。
ダクトにかかる防火措置については、排煙ダクトの断熱措置、ガス機器の給排気筒、厨房設備排気ダクトに関す
る規定も各種あるので関係部分について、この章に掲載した。
1)一般防火区画貫通部
一般防火区画をダクトが貫通する場合は、貫通部空隙にロックウールを充填する。
保温等のあるダクトの防火区画貫通部措置工法の例を下記に示す。
2)耐火仕様ダクト
排煙ダクトが防火区画を貫通する場合も、原則として一般ダクトと同様に貫通部に近接して防火ダンパー(H
FD)を設けなければならないが、主ダクトは機能上、防火ダンパーを設けることが出来ないので、代替措置
として耐火仕様ダクトとしなければならない。
耐火仕様ダクトは、原則として次の構造によるものとし、横引き排煙主ダクトについては、躯体からの支持
を確実に取るなどして、ダクト及び被覆の脱落が生じないようにすることが必要である。
①厚み 1.5mm 以上の鉄板ダクトに、ロックウール 25mm 以上を被覆したもの。
②厚み 1.5mm 以上の鉄板ダクトに、主要構造部を耐火被覆として公的機関の認定を受けた材料を被覆した
もの。
③その他、所轄の消防署に事前承認を受けた工法。
3)その他の防火工法
a)排煙ダクトの断熱措置
排煙ダクトの断熱措置については、建築基準法施行令第 126 条の 3 第 7 号の規定により、令第 115 条第 1 項
第 3 号及び第 4 号に定める構造としなければならない。但し、露出部分で木材、ケーブル、冷媒管などの可
燃材料と 15cm 以上の離隔距離が確保できない場合は、断熱措置を行う。
①排煙口方式
断熱措置施工部分は、排煙口(室内に露出する部分は除く)から竪穴区画されている排煙シャフト入口まで
とする。
11
②排煙ダンパー(SMD)方式
断熱措置施工部分は、集煙口(常時閉)から竪穴区画されている排煙シャフト入口までとする。
HFD:防火ダンバー
HFD:防火ダンバー
SMD:排煙ダンバー(排煙口
SMD:排煙ダンバー(排煙口)
:排煙ダンバー(排煙口)
③天井チャンバー方式
断熱措置施工部分は、集煙口(常時閉)及び排煙延長ダクトから竪穴区画されている排煙シャフト入口までとす
る。但し、排煙ダンパー(排煙口)以降の当該ダクト部分は省略することが出来る。
HFD:防火ダンバー
HFD:防火ダンバー
SMD:排煙ダンバー(排煙口)
SMD:排煙ダンバー(排煙口)
b)火を使用する器具に付属する排気筒(煙突)・給排気筒と可燃材料との離隔距離
①排気温度 260℃を超える排気筒の場合の離隔距離
空間部の場合、可燃材料から15cm以上離して設けることとなるが、ロックウール断熱材を用いる場
合は、緩和措置が適用される。又、隠蔽空間部にあっては、ロックウール断熱材の施工が必要である。
ア) 空間部
断熱施工のない場合
断熱施工した場合
12
イ)隠蔽空間部
②排気温度 260℃を超える排気筒の場合の貫通部措置
貫通部及び隠蔽貫通部について、ロックウールを用いることによる緩和措置はない。
③排気温度 260℃以下の排気筒の場合の離隔距離
空間部の場合、基本的には可燃材料からD/2以上離して設けることとなるが、ロックウール断熱材を
用いる場合は、緩和措置が適用される。又、隠蔽空間部にあっては、ロックウール断熱材の施工が必要
である
ア)空間部
断熱施工無しの場合
断熱施工をした場合
イ)
隠蔽空間部
④排気温度 260℃以下の給排気筒の場合の離隔距離
空間部及び隠蔽空間部の施工にあたって、可燃物との離隔距離についてロックウール断熱による緩和措置は
ない。
13
⑤排気温度 260℃以下の排気筒の場合の貫通部措置
空間部及び隠蔽空間部にあっては、
ロックウール断熱材を用いることによって下記の緩和措置が適用される。
⑥排気温度 260℃以下の給排気筒の場合の貫通部措置
空間部及び隠蔽空間部の施工にあたって、可燃物との離隔距離についてロックウール断熱による緩和措置は
ない。
c)厨房設備の排気ダクト
厨房設備に付属する排気ダクト及び天蓋と可燃物との離隔距離については、次の規定に従うこととなる。
①排気ダクト等は、可燃物との間に 10cm 以上の距離を保つこと。
②但し、ロックウール保温材もしくはこれと同等以上の不燃材料で、厚さ 50mm 以上被覆した場合には、
可燃物との距離を 10cm 未満とすることが出来る。
③②と同等以上の安全性を確保できる措置を講じた場合も同様である。
4.電気設備の区画貫通部措置工法
1)一般区画貫通部
a)配電管
ア)不燃材の配電管
配電管が区画貫通部を貫通する場合の防火措置工法としては、建築基準法に規定された下記工法がある。
この工法以外の材料、工法による場合は、大臣認定
大臣認定を受けた工法となる。
大臣認定
①一般の区画
②他の部分と区画されたパイプシャフト(建築基準法施行令
建築基準法施行令 129 条の 2 の 5)
イ)不燃材以外の配電管
不燃材料以外の配電管が一般防火区画を貫通する場合の防火措置工法は、大臣認定工法
大臣認定工法
であること又は平 12 建設省告示第 1422 号によることが必要となる。
14
b)ケーブル配線等
ケーブル配線等が一般防火区画を貫通する場合の措置工法は、大臣認定工法
大臣認定工法又は建設省電気設備工事共通
大臣認定工法
仕様書に規定された工法となる。下記には、これらの各種工法の内、ロックウールを使用する工法の例に
ついて示した。これらの工法は、認定工法であり、仕様の内容を変更することはできない。
尚、ケーブル防災設備協議会(CFAJ)に加盟している各社のBCJ工法は、一括で
(CFAJ)に加盟している各社のBCJ工法は、一括で「東住指発第 489 号」
の番号で大臣認定を取得している。
①ケーブル配線
ア.電気設備技術基準第 201 条適用工法
イ.東住指発第
東住指発第 489 号(サンドイッチ工法)
ウ.東住指発第
東住指発第 489 号(スリーブ工法-1)
エ.東住指発第
東住指発第 489 号(スリーブ工法―2)
②バスダクト配線
ア.東住指発第
東住指発第 489 号(壁工法例)
イ.東住指発第
東住指発第 489 号(床工法例)
15
ウ.東住指発第
東住指発第 489 号
c)金属ダクト(電気設備技術基準第 197 条適用)
d)床ピット配線(建築設備設計・設計上の指針(‘95年版))
e)セルラーダクト配線
各種大臣認定工法
大臣認定工法があるので、必要に応じて参照して頂きたい。
大臣認定工法
2)共住区画貫通部
a)配電管
給排水管、冷水管、冷温水管、蒸気管、裸管、ガス管、及び冷媒管などの配管と同じ扱いとなりますので、
配管の防火区画貫通部措置工法(4ページ
4ページ)を参照してください。
4ページ
b)ケーブル配線等
消防設備安全センターの防火性能評定を受けた工法となります。
3)令8区画貫通部
令8区画を配電管及びケーブルが貫通することはできない。
16
5.グリーストラップ、和風大便器等の区画貫通部措置工法
1)グリーストラップが防火区画の床を貫通する場合は、破損しても防火区画を構成できるよう床スラブのピッ
トを設けるか耐火性能を有する材料で被覆(欠落しない構造)することが必要である。
a)床スラブピットの例
b)評定済工法の例
2)和風大便器
和風大便器が防火区画の床を貫通する場合は、破損しても防火区画を構成できるよう床スラブのピット
を設けるか耐火性能を有する材料で被覆(欠落しない構造)することが必要である。
尚、「防火区画を貫通する和風大便器の耐火カバー」を使用する場合は、防火上、耐火上支障の無い大臣認定
大臣認定
工法のものとする。
工法
但し、便所が上下階と連なっており、この部分が他の部分と防火区画され、一種の竪穴区画が形成されている
場合は、便所などの内部での火災発生や他の部分からの延焼の恐れは極めて少ないので、上記の措置を講じな
くても良い。この時、防火区画と便器の隙間はモルタルその他の不燃材で埋めるものとする。
a)耐火被覆を取り付ける場合
ア)
17
イ)
防火区画床
湿式ロックウールで全体で 30mm 以上
の被り厚となるよう覆う
ワイヤラスはしっかり
とスラブに固定する
ワイヤラス
(1Kg/㎡以上)
汚水管(不燃材料)
b)耐火カバーを取り付ける場合
3)洋風大便器接続用に鉛管を使用する場合の取扱いについて
鉛管は、鋼管と比較して溶解温度が極めて低いためロックウール(厚さ 25mm 以上)で耐火被覆する。
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建築防災関係用語
耐火構造
(建築基準法第 2 条 7 号、建築基準法施行令第 107 条)
建築基準法施行令で建築物の部分毎、階数毎に定める耐火性能(通常の火
災時の加熱に 30 分、1、2、3 時間以上耐える)を有する構造で、政令で定
める構造又はこれと同等以上の耐火性能を有すると認めて建設大臣が指定
する構造。
防火構造
(建築基準法第 2 条 8 号、建築基準法施行令第 108 条)
建築基準法施行令で定める構造又はこれと同等以上の防火性能を有すると
認めて(S34建設省告示 第 2545 号)建設大臣が指定する構造。
防火区画
(建築基準法 第 26 条、建築基準法施行令 第 112、113、114 条)
大規模建築物を一定の面積以内ごとに区画したり、階段室、吹き抜け、エ
レベーター昇降路など竪穴を形成する部分の区画、又共同住宅等の各戸の
界壁等の区画を耐火構造、防火構造の床・壁又は防火戸で区画した部分。
建築基準法では、防火区画を対象建築物その他によって分類し、各々に構
造基準を定めている。一方、消防法では、消防用設備の設置単位から特例
的に、令8区画及び共住区画を定めている。
令8区画
(消防法施行令第8条)
消防用設備の設置単位として原則的には1棟の建築物を単位とするが、例
外的な扱いとして1棟の建築物であっても開口部のない耐火構造の床又は
壁で区画されている場合にあっては、その区画された部分(「令8区画」)
はそれぞれ別の防火対象物として取り扱われることになり、消防用設備等
の設置について緩和される。
共住区画
(消防安 49 号(S50.5.1)、消防予 170 号(S61.12.5))
共同住宅等における消防用設備等にかかる設置基準の特例で、各住戸間に
おける区画を開口部のない耐火構造の床又は壁で区画(「共住区画」)し
た場合は、特例が適用される。
BCJ評定改正について
防火措置工法で、法律又は建設大臣指定の工法以外に、(
防火措置工法で、法律又は建設大臣指定の工法以外に、(財)日本建築セン
ター(The
ター(The Building Center of Japan(BCJ
Japan(BCJ)
BCJ)が性能評定した工法が
認められていたが、平成 10 年 6 月、建築基準法改正の公布により以下の
ように、改正された。
改正前の大臣認定の仕組みは旧法第 38 条で「特殊な材料又は構造方法は
建設大臣の認定を受けること」とされその技術審査機関として住指発第
建設大臣の認定を受けること」とされその技術審査機関として住指発第 200
号によりBCJを評定(
号によりBCJを評定(評価)
評価)の機関として指定していた。
改正後は、法第 68 条の 26 第 3 項同第 68 条 25 第 1 項で、これら評価認定
の全部又は一部を指定機関に代行させることができると明確化された。
現在、当該貫通処置については(財)日本建築センター、(財)建材試験
センター、(財)ベターリビング、(
センター、(財)ベターリビング、(財)日本建築総合試験所、(
日本建築総合試験所、(財)日本住宅
・木材技術センターが 指定性能評価機関として指定されている。
尚、旧法に基づくBCJ工法(平成
尚、旧法に基づくBCJ工法(平成 12 年5月末までに取得のもの)は大臣
に認定申請し、認められたものが大臣認定工法として、新法の摘要を受ける。
日本消防設備安全センター性能評定
防火措置工法で、法律又は建設大臣指定の工法以外に、(財)日本消防設備
安全センターが性能評定した工法。
日本消防設備安全センターの性能評定済工法については、公表されている資
料はないのでその都度日本消防設備安全センターに問合せすることが必要で
ある。
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参考文献
1. 建築基準法
2. 建築基準法施行令
3. 建設省機械設備共通仕様書(平成 9 年版)
4. 防災設備に関する指針(H8.12.20)
5. 防災設備の電源と配線に関する指針 昭和 57 年版
6. 電気設備工事標準図 平成9年版
7. 電気設備工事共通仕様書 平成9年版
8. 電気設備工事監理指針 平成9年版
9. 建築設備設計・施工上の指導指針 1995 年版
10.東京都建築設備行政に関する設計・施工上の指針(1997 年版)
11.ガス機器設置基準及び実務指針(平成 7 年版)
12.
12.令8区画・共住区画及び区画貫通配管等の防火対策(平成 10 年版)
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耐火措置工法解説
耐火措置工法は、部位・構造により対応が異なるため、詳細に規定されていない場合が多い。詳細に仕様が決め
られていない場合の解釈については、所轄の消防署などに確認することが必要となるが、ここでは一般的な対応に
ついて解説する。
評定済工法を採用する場合は、評定で認められた工法を変更することができないので、全て評定の通りの工法を採
用する必要がある。
1.ロックウール充填で充填密度の指定の無い場合の対応
区画貫通部は、防火上最大の弱点となるため、ロックウールの充填は、正しく行わなければならない。
防火区画の耐火措置工法は、火災が防火区画を通して拡大しないことを期するものであり、区画貫通部への
ロックウール充填もこの基本から外れてはならない。
一般に、充填密度の指定が特に無い場合のロックウール充填は、150Kg/m3 以上の密度とするのが望ましい。
充填が困難な個所についても、火災延焼防止上、他端からの光が全く見えない程度以上には充填することが
必要である。
2.冷媒管の区画貫通部措置工法
冷媒管の区画貫通部措置工法としては、従来東京消防庁予防課長予予第 1475 号(下図参照)が採用されるこ
とが多かったが、本通知は平成6年に失効している。このため、冷媒管が一般防火区画を貫通する場合も、
一般の給排水管と同様の工法を採用することが必要となる。ロックウール又はグラスウール以外の材料で保
温する場合は、大臣認定工法
大臣認定工法を採用することが必要である。
大臣認定工法
又、冷媒管は、共住区画、令8区画を貫通することはできない。
東京消防庁予防課長予予第 1475 号工法
平面図
A工法
B工法
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※B工法の場合、ロックウール保温筒は、密度 150Kg/m3 となっているが、下記の保温筒については同等の
性能があるものとされている。
・日東紡のロックウール保温筒
「ダンカバー」
100 Kg/m3
・新日化ロックウールのロックウール保温筒
「サームカバー」
120 Kg/m3
・ニチアスのロックウール保温筒
「MGマイティカバー」 90 Kg/m3
3.事前に承認を受けた工法
例えば、耐火仕様ダクトにおける事前に承認を受けた工法とは、1.5mm 以下の鉄板ダクトを使用するなど規
定されている以外の材料を使用する場合に、設計事務所等が建築確認の段階で、事前に所轄の消防署に承認
された耐火工法をいう。
4.本資料に掲載した耐火措置工法は、ロックウールを使用する工法に限定して記載してあり、区画貫通部の措
置工法としてはここに掲載した工法以外にも各種ある。部位その他の関係で本資料の措置工法が採れない場
合は、防火区画貫通部措置工法の概要に示した関係法令、通達や大臣認定工法
大臣認定工法又は消防設備安全センターの
大臣認定工法
評定済工法などの中から適宜選択することもできるものであり、耐火措置工法が無いということではないの
で注意が必要である。
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付録
付録として区画貫通部以外のロックウールを使用する耐火措置工法のうち層間区画におけるカーテン
ウォール等の層間塞ぎ材とALC耐火目地材について簡単に解説する。
【層間区画の塞ぎ材】
ある階で発生した火災が上階または下階に延焼拡大すると延焼面積が増大するばかりではなく、火勢が
激しくなる可能性がある。そこで多層階火災を防止する目的で、各階毎に層間区画を設け、十分耐火性能
を有する区画部材で空間を区画しなければならない。
1)カーテンウォール(外壁)の層間
カーテンウォール(外壁)の層間
層間区画を構成する部材として大きく分けると床と外壁があるが、その取り合い部であるカーテンウ
ォールの層間塞ぎ材には層間変位に追従出来る材料としてロックウールが挙げられている。使用出来
るのは、取り合い部に容易に圧縮して詰め込むことが出来るJIS
JIS A 9504のロックウール保
温材に該当する材料
(ロックウール繊維、ロックウールフェルト)で、耐火性を十分に発揮するには、
温材
密度 200kg
以上必要
200kg/
kg/m3以上必要である。
2)外壁と床の取り合い
外壁と床の取り合い
カーテンウォール形式の外壁にあっては、床端部との隙間にも同じく変形に対する追従性のある耐火
材としてロックウール
ロックウールや無機繊維発泡体を隙間無く詰め込み、必要に応じてコーキング処理する。
ロックウール
3)間仕切り壁と梁・柱の取り合い
間仕切り壁と梁・柱の取り合い
間仕切り壁においても超高層建築などで層間変位を考慮しなければならない柱や梁の取り合い部には、
グラスウールは
変形に追従出来る耐火性無機繊維
耐火性無機繊維(ロックウール使用可)
耐火性無機繊維(ロックウール使用可)や耐熱シール材を採用する。グラスウールは
(ロックウール使用可)
低温で容易に溶融し、著しく体積を縮小するので用いないようにする
低温で容易に溶融し、著しく体積を縮小するので用いないようにする。
、著しく体積を縮小するので用いないようにする
4)デッキプレートこま詰め
デッキプレートこま詰め
デッキプレートの様な溝状の鋼板を床に使用する場合、溝の方向と直行する梁との間の隙間に生じる空間には、
火炎が侵入しないように耐火被覆材(ロックウール使用可)
耐火被覆材(ロックウール使用可)を充填する。この際、所定の厚さと比重に留意し、
耐火被覆材(ロックウール使用可)
空隙が大きい場合は確実な施工が出来るよう受け下地を考慮する。
参考図書:防火区画の設計・施工パンフレット
日本建築学会編(1993
日本建築学会編(1993)
1993)
【ALC目地材】
ALCパネル工事において、風圧力や地震力などの外力により建物が変形した場合のパネルへの影響を
避けるために、帳壁における出隅、入隅部の縦目地部、およびパネルの短辺目地部などには、伸縮目地と
して10∼20mmの隙間が設けられている。耐火性能が要求される建物においては、これらの伸縮目地
部分には伸縮性のある耐火目地材としてJIS
JIS A 9504−1995(人造鉱物繊維保温材
9504−1995(人造鉱物繊維保温材)のロッ
保温材)のロッ
クウール保温板の材質と同等以上の品質を有するものを充填することが必要である。
クウール保温板
なお、JIS A 9504−1995はロックウールの他にグラスウールも含まれているが、JAS
S 21 ALCパネル工事仕様書では、耐火性能の高さからロックウール保温板を使用することとされて
いる。その場合、密度が高すぎると外力による変位を吸収することが出来ず、パネルに悪影響を及ぼすこ
とから、ロックウール保温板1号のうち密度が80kg/m
ロックウール保温板1号のうち密度が80kg/m3程度のものが用いられる。
程度のものが用いられる
参考図書:建築工事標準仕様書・同解説
JASS 21 ALCパネル工事
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日本建築学会編(1999
日本建築学会編(1999)
1999)