企業の仕組み 第五回 資金調達について

企業の仕組み
第10回 組織の再編について
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第9回確認テスト
• デュポン社が世界で初めて職能別組織を導入した。
• はいいいえ
• ISOは、マネジメントを「個人に指揮・命令し、個人を管理する
ための活動」と定義している。
• はいいいえ
• チャンドラーは「組織は戦略に従う」かという命題を提唱した。
• はいいいえ
• プロジェクト・チームは、マトリクス組織と比較して、活動期間
が短い。
• はいいいえ
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会社の再編の背景
再編の要因 (旧組織⇒新組織)
売上増加、製品開発力向上、費用削減、リスク回避(削減)、安定
化(資源確保や法令順守)などのために、(既存の組織あるいは
構造では困難と判断した場合)会社は内部の組織を再編する。
組織
構造
組織構造
組織
構造
行動
業績
(結果)
組織
構造
行動
業績
(結果)
組織
構造
業績
(結果)
組織
構造
行動
※通常、組織の構造が違えば、行動
パターンが異なるので、結果も異
なる。
行動
業績
(結果)
行動
業績
(結果)
行動
業績
(結果)
※組織構造と行動が同じでも、外部の環
境(経済状況やライバルの行動)や内
部状況で結果が変化する。
※構造が同じでも、人財などの内部資源
が異なれば、行動や結果が異なる。 3
●2つの組織観(クローズド・システムとオープンシステム)
両者の相違は、組織それ自体のみを検討するか、もしくは組織が存
在する環境との関連も考慮するかという点である。
○クローズド・システム観(硬直的に、効率性重視)
• クローズド・システム観は、組織の事象における環境の役割を
過少評価する見解が含められる。したがって、そのような見解
は、主として組織内の問題およびその機能に関心が集中する
( 内部 で全て完結するから)。
• クローズド・システム観は機械的な特質を持つ。なぜなら、一
定の目標が決定され、その目標達成のために従業員に役割
が割り当てられ、各従業員がその役割を効率的に遂行するこ
とが主な関心事となるからである。
※クローズド・システム観では、従業員は上から与えられる所与の目標
のもとで、その目標達成のために計画化された職務規定に従って、
ルーティンな活動を行うこととなり、従業員や組織の適応性ないしは
創造性は重視されなくなる。
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○オープン・システム観(環境変化⇒構造変化)
• オープン・システム観では、組織は 環境 の影響を受ける
ので、環境変化に対処しなければならないことを前提として
いる。したがって、この組織観のもとでは、組織は絶えず変
化する環境の下に存在し、環境変化に適合していかなけれ
ばならないということになる。
• オープン・システム観では、組織構造というものは、一時的
なものとして考えられ、環境の変化に弾力的に適応しなけれ
ばならないものとされる。
• ルーティンの活動の生産性よりも、非構造的な価値が重視さ
れ、評価されることになる。すなわち、役割とか職務過程より
も、むしろ自己実現の考え方、自分の名声、グループによる
問題解決が重視されることとなる。
※オープン・システム観に一方的に徹することもまた、問題を生み出す
可能性がある。非構造的な価値のみを一方的に重視すれば、ルー
ティンな活動に支障をきたすことも予想されるからである。
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●効率的な組織とは(統合的な組織観)
クローズド・システム観とオープン・システム観は異なるものと捉えら
れることが多いが、実際の企業は両面を上手に使い分けている。
効率的な組織とは、より多くのアウトプットと良質のアウトプットを生
み出し、環境及び内部問題に一層効果的に適応する組織である。
そのような組織に関して効率を測る以下の3つの基準がある。
•エフィシェンシー(efficiency):
生産性の高低、質の良否(数量生産性と質的生産性との双方
によって測定可能)
•アダプタビリティー(adaptability)
ルーティーンの変更に対する組織の適応可能な範囲(程度)
•フレキシビリティー(flexibility):
緊急の問題に対する組織の対応範囲(程度)
※2つの組織観は企業経営にとってどちらも重要であるが、現在では、後者
の オープン・システム 観として組織を捉えることの重要性が高
まっている(創造性発揮を促し、組織の活性化を図るため)。
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組織効率の測定項目としての「制度化」
• 企業は経済的システムの一部であるので、その中で企業の
組織効率について考察する必要がある一方で、内部的に
確実に遂行できる体制作りが必要となる。
• 組織効率測定のための主な項目として、適合性、順応性等
々の他に 制度化 が加えられることがある。
• 制度化は、ルーティンな活動を合理的に推進することであり
、組織活動の中で重視されなければならないからである。
※このようにして、企業組織は、生産活動を行う経済的システムである
と同時に、種々の動機をもつ人間の集団であるので、組織活動を合
理的に遂行することも、組織の効率性につながるとした(行き過ぎた
オープンシステム観は非効率となるので、クローズシステムの有効
性もプライスは主張した) 。
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事業システム(どのように事業を進めるのか?)
協力企業
(供給)
⇒⇒⇒
←自社→
事業範囲決定
⇒⇒⇒⇒
協力企業
(流通)
⇒⇒⇒
顧
客
関連する会社とどのようにかかわるのか
事業システム戦略
・垂直的な事業範囲の選択(どこまで自社で行うか?)
・サプライチェーンの形成(関連する会社とどのようにか
かわるのか?)
※一社で全て行うのは、非効率あるいは非現実的
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垂直的な事業範囲の選択
垂直的な事業範囲の選択
• 原材料の生産、製造、販売という一連の活動において、企業の
事業範囲を拡大することを 垂直 統合と呼ぶ。
• 顧客(販売)側に活動を広げることを前方統合または 川下
統合と呼び、原材料側への活動展開を後方統合または 川上
統合と呼ぶ。
• 1980年代の日本企業(系列・グループ企業)は、垂直的統合を
進め、内部での活動の調整・最適化をすることで品質とコスト
面での競争力を高めた。
※垂直統合を進めた場合、コア・コンピタンスを社内に抱え込むことに有効
となる(重要な技術や顧客情報の外部への流出を防ぐ)。
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垂直統合型企業と水平分業・垂直分業
活動の流れ
上流
部
設計開発
部品生産
品
A
部 部
品 品
B C
組立・製造
完成品
販売
下流
垂直的統合型企業
(部品の製造から完成品
の販売まで独自に行う)
水平分業
活動の流れ (別会社で部品生産)
上流
部 部 部
部品の
設計開発
品 品 品
部品生産
A B C
垂
製品の
モジュラー
直
設計開発
分
完成品
組立・製造
業
モジュラー
販売
完成品
下流
水平分業・垂直分業体制
(モジュラーとは部品や企業等
の構成要素を組み合せること)
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make or buyの意思決定
• make or buyの意思決定は、垂直的な事業範囲の選択の中で
、部品を 内製 するか、外部から 購入 (外製)するかを決
定すること。
• 内製(make)のメリット;活動相互を調整・最適化することが可
能となり、 付加価値 の増加やコストダウンを実現すること
ができる。技術やノウハウを 内部 に蓄積しやすい。
※例えば、自動車の場合高い品質が求められる。設計の段階から各部品
の調整を行い、間違いなく製造することが求められる。しかし、企業内の
技術が最先端で無い場合、ビジネス上の制約となる場合がある。さらに
自社製品向け部品だけでは規模の経済を追及できないこともある。
• 外製(buy)のメリット;必要に応じて、品質・コスト面において
優れた 部品を市場から調達し、組み合わせられる。
※例えば、PCは部品や周辺機器の組み合わせが自由。このタイプの製品
はモジュラー製品と呼ばれ、差別化が困難になる。
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事業システム戦略
垂直的な企業間強調の必要性
• 企業は 境界 あるいは仕切りの概念(自社がどこまでを取り
扱うか)である。
※実行可能領域(可能な範囲)と合理的な活動範囲(収入と費用のバランス)
• したがって、必ずしも垂直的統合を拡大する必要はない(⇒協
力できる相手との 超 企業・組織間の取引によって対応する
ことが可能)
• このような発想に立って、サプライチェーンマネジメント(SCM;
供給網管理 )が生まれた。SCMとは顧客に価値をもたらして
いる製品、サービス、情報を提供しているビジネスの諸過程(
関連企業)を統合的に管理する活動
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事業システム(ビジネス・システム)による競争優位
加護野・石井(1991)において、日本の 酒類の流通 の研究
を通して、企業が垂直的活動においてどの範囲を担当し、どの
活動を任せるのかという企業の境界と、企業間で統合的な活動
をする組織的な管理の範囲が、歴史的に変遷していることに着
目し、これを事業システムと名付けた。
※トヨタの自動車もトヨタ自動車(株)において付加されている価値より、部品
や材料の供給業者が付加している価値の総額の方が大きい。
ビールの原材料
⇒ 缶ビール(製品・工場)⇒商品(流通機構)
麦芽(豪州やカナダ産が多い)
ホップ(ドイツ・チェコ産が多い)
水(水質が味や品質を左右)
他(米やトウモロコシなど)
卸売や小売を通し
て消費者に販売
※麦芽やホップは国内産もあるが、価格と品質で海外産に劣るので、あまり利
用されていない。
※ホップとはアサ科のつる性多年草で、ビールの苦味、香り、泡立ち、雑菌の
繁殖抑制する効果がある。
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事業システムのサブシステム
加護野・井上(2004)による事業システムのサブシステム
①市場から情報を収集する「(関連企業間) 情報 システム」
②情報分析・意思決定を行う( 個別 の)「内部企業システム」
③市場への対応行動を行う「 企業間取引 システム」 (複数段
階;小売-卸売、卸売-メーカー、メーカー-協力企業)
(例)コンビニで商品販売に至るまでのプロセス
「消費者が欲しいと思う時に欲しいものを販売する」ためにメーカー、本部、
フランチャイズ店、物流業者などが連携。
(1)レジで精算(販売情報収集:情報システム)
(2)商品の仕入れの意思決定を行う(内部企業システム)
(3)本部に発注(取引先や物流センターから補充:企業間取引システム)
※高度の連携体制を整えることによって、予測精度が高まり、さらに迅速な
対応が可能となるので、欠品(品切れ)や廃棄(売れ残り)が抑えられ、収
益の改善につながる。
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例:ビールの事業システム(サプライチェーン)
部品・半完成品
製品
川上 原材料
(上流)
調 達 ・ 製 造 活 動
流通活動(卸売・小売)
大麦
輸入
(オーストラリア
やカナダ産)
ホップ
(ドイツや
チェコ産)
輸入
工場
発酵
物
熟成 輸 流
濾過 送 セ
ン
タ
ー
・
卸
売
輸送
スーパー
輸送
コンビニ
輸送
酒屋
輸送
飲食店
輸送
ディスカウ
ントショップ
輸送
通販
※酒造メーカーなどが行っている主活動は、酒類の製造であるが、
多様な小売店や飲食店への営業活動は不可欠である。
川下
(下流)
客
客
客
客
客
客
客
客
客
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会社法上の会社再編制度
事業 譲渡 (譲受)によるスリム化(拡大):営業財産の一部移転
※例:液晶テレビ事業部の譲渡(液晶テレビ関連の工場などの設備などを譲
渡、債権等も合わせて譲渡可能)
合併:複数の会社が一つになること(吸収合併と新設合併がある)
※新設合併とは、複数の会社で 別会社 を新設し、他の会社が解散・消
滅する場合。吸収合併の場合は、存続会社がある。
会社分割:特定部門を別会社に( 分離独立 )
※営業財産に加えて、当該部門の権利や権限に加えて、義務等も移転可能
株式交換(全発行株式の既存会社への移転)による子会社化
※独立したA社とB社があった場合、B社の株式を全てA社に移転し、B社をA社
の
子会社
にすることが可能。
株式移転(全発行株式を新設会社への移転)によるグループ化
※独立した複数の会社(C・D・E社)があった場合、 持株会社 を新設し、
C・D・E社の株式を移転し、グループ会社とすることができる。
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事業システムの設計に基づく会社の再編
川上
(原材料)
(
材
料
・
部
品
)
|
(
完
成
品
)
モ
ノ
の
流
れ
川下
(市場)
材
料
A
部
品
D
材
料
B
部
品
E
材
料
C
材
料
C
部
品
F
部
品
F
自社活動範囲
(メーカー)
流
通
G
流
通
H
流
通
I
自社製品
(市場)
関連製品
(市場)
(
拡垂
大直
・
縮方
小向
)
水平方向
(拡大・縮小)
垂直方向への拡大
・後方統合(部品D社の合併・子会社化)
・前方統合(流通G社の合併・子会社化)
垂直方向の縮小
・部品F事業の切り離し(子会社化・清算)
水平方向の拡大
・関連市場への進出(多角化)
水平方向の縮小
・事業の縮小(子会社化・清算)
※清算には売却や撤退などがある。
他の企業との提携や市場での売買
取引で代替が可能。
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