(3)証券化の3つのタイプ • タイプ①: – 手持ち資産をそのままバランスシートに持ち続けるか or 証券化するか、という選択の結果証券化される • アセットファイナンスとしての証券化 – 銀行の企業向貸出の証券化、ノンバンクの自動車 ローンの証券化、企業の自社ビル証券化 – 証券化の初期の段階ではこのタイプの証券化が中心 1 • タイプ②: – ローンを提供する段階から証券化を前提 • オリジネーター(ローン提供者)は一旦提供したローンを証 券化のアレンジャー(証券会社、政府系金融機関)に売却 • ローンの提供だけに特化した業者の登場 – 米国:CMBS、サブプライムRMBS、政府系金融機 関によって発行されるRMBS、日本:住宅金融支援 機構によるRMBS – アレンジャーが証券会社の場合、投資家側のニー ズも重視 2 ・米国の商業不動産ローン市場では、90年代以降タイプ②の 証券化が急速に浸透し、それまで長期ローンの主要な提供者 であった生命保険会社が業務縮小・撤退 % 米国の商業不動産ローンの業態別保有 60 50 40 30 20 10 19 80 19 82 19 84 19 86 19 88 19 90 19 92 19 94 19 96 19 98 20 00 20 02 20 04 20 06 0 銀行 貯蓄金融機関 生命保険会社 証券化 3 • タイプ③: – オリジネーターの事情とは関係なく、既存の資産を流通 市場等から買い集めて束ね、それを組み替えて投資家 にとって魅力的な新たな証券を作り上げ、提供する。 – 当初は、ジャンクボンド(投機的債券)や高金利のローン を束ねて証券化 – 最近は低格付の証券化商品を束ねる証券化が増大 • サブプライムRMBSを束ねたCDOはその一種 – アービトラージ型と呼ばれる • ①、②はバランスシート型 4 (4)証券化のメリットと問題点 ○タイプ①の証券化に関して ・オリジネーターにとってのメリット • ① – オリジネーターのリスクから切り離された、担保となっ ている質の高い資産の信用力のみによって裏付けら れた証券の投資家への提供 • ② • ③ – 財務体質の改善、ROA(総資産利益率)や自己資本 比率の向上 – 銀行のBIS自己資本比率対策 • ④ 5 ・日本の企業の証券化の目的(2003) ・R&I(格付投資情報センター)の企業向けアンケート2003.11. 6 バランスシートのスリム化 証券化前資産保有者 (オリジネーター)のB/S 証券化後資産保有者の B/S 負債 資産 負債 資産 ABS(オリジネーター持 自己資本 負債の圧縮 分) 証券化対象 資産 自己資本 SPCのB/S 証券化対象 資産 ABS (投資家持分) ABS(オリジネーター持 分) 7 • タイプ②の証券化に関して • ① – 従来は資金力もローン提供力もある金融機関がローン を提供 – ⇒資金力はないがローン提供力は持っている会社 (ローン提供に専門化した会社)が、ローンを提供 • ② • 以下のメリットはタイプ②、③に共通 • ① • ② – 多段階優先劣後構造 8 ○証券化のデメリット・問題点 • ① • (特にタイプ①の証券化にとって) – 証券化対象資産の選定・分析のためのコスト、 SPVの設立・運営コスト、キャッシュフロー管理の ためのシステムの設計・構築コスト、信用補完の コスト、仕組みのアレンジメントのためのコスト、 格付費用 9 • ② • (特にタイプ②の証券化にとって) – アレンジャーも必ずしもオリジネーターの状況を 把握できておらず、また最終的リスクを負わない – 最終的にリスクを負う投資家にとって、リスク判断 が難しい – 今回のサブプライム問題でこうした問題が深刻な 形で現れた 10 (4) CATボンド • CAT債券(Catastrophe Bond、震災ボンド) – 保険会社が引き受けた損害リスクの移転 • 債券発行時の仕組み 被 保 険 者 保険料 保 険 会 社 再保険料 S P C CAT債券 代金 投 資 家 安全確実な 証券で運用 11 • 災害発生時の資金の動き – 災害の規模に応じてSPCから保険会社に対して保険 金が支払われる。 – 投資家に対しては支払保険金を差し引いた残りが SPCから債券の償還金として支払われる – こうした元本割れリスクを埋め合わせるため、CAT債 券の金利は通常の債券より高い • SPCが保有する証券からの金利+再保険料 12 ・CAT債券の例:97年東京海上火災発行 大橋和彦『証券化の知識』日経文庫 13 ・ CATボンドの発行は世界的に増加している 日経07.09.05.夕 14
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