竹内論文へのコメント Structural FAVARSによる世界景気 の要因分析 二松学舎大学 田端 克至 日本経済学会(京都大学) 1 竹内論文の位置づけ 1.Great Moderation論のアジア地域への拡張 2.Structural FAVARSの東アジア経済への拡張と応用 3.竹内氏の既存研究「アジアの景気連動性に関する一般均 衡アプローチ(2004)年」DSGEの 実証面からの再アプローチ ⇒アジア諸国の政策協力の在り方 2 1.Great Moderationの拡張(1) • 研究者;Kim and Nelson(1999),Stock and Watson(2005) McConnell and Perez –Curios(2000),Bernanke(2004) • 世界の景気変動は、長期的に見れば、Volatileでなくなっ ている? 確認できるか。 その原因は、何なのか。 Stock and Watson(1983) 原因1 1980年代半ばの世界経済の構造変化 原因2 経済政策や在庫管理技術の進歩 原因3 過剰競争の排除 3 1.Great Moderation 論の拡張(2) • Stock and Watson 米国経済ゾーン、ヨーロッパ経済ゾーンという異な る景気循環ゾーンが形成されたことが影響して いる • 竹内論文 先進国ゾーン、ヨーロッパゾーンとも異なる 固有のアジアゾーンの出現は何を意味し ているのか? 4 1.Great Moderation 論の拡張(3) 米国の実質経済成長率の標準化残差 19 75 19 Q2 78 19 Q2 81 19 Q2 84 19 Q2 87 19 Q2 90 19 Q2 93 19 Q2 96 19 Q2 99 20 Q2 02 20 Q2 05 20 Q2 08 Q2 0.0015 0.001 0.0005 0 -0.0005 -0.001 -0.0015 和合、松田「状態空間モデルによる時系列分析」をもとに作成 5 2008Q2 2007Q1 2005Q4 2004Q3 2003Q2 2002Q1 2000Q4 1999Q3 1998Q2 1997Q1 1995Q4 1994Q3 1993Q2 1992Q1 1.Great Moderation 論の拡張(4) -4 (10 ) Malaysiaの実質経済成長率の標準化残差 6 4 2 0 -2 -4 -6 6 19 98 1 9 Q1 99 2 0 Q1 00 2 0 Q1 01 2 0 Q1 02 2 0 Q1 03 2 0 Q1 04 2 0 Q1 05 2 0 Q1 06 2 0 Q1 07 2 0 Q1 08 Q 1 1.Great Moderation 論の拡張(5) 0.8 0.6 0.4 0.2 0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8 インドネシアの実質経済成長率の標準化誤差 7 1.Great Moderation 論の拡張(6) ヒストグラム;通貨危機以前と以後の経済成長率 標準化残差分布(マレーシア) 頻度 7 6 5 4 3 2 1 before after 0 -3 -3 -2.6-2.2-1.8-1.4 -1 -0.6-0.2 0.2 0.6 1 1.4 1.8 2.2 2.6 3 (10 ) 通貨危機以前(1994ⅡQ-1996ⅣQ ) 通貨危機以後(2000ⅠQ-2008ⅢQ) 8 2.Structural FAVARSの拡張 • Factorを抽出したが、そのファクターが何を示す のか、検証していない。 ファクターの要因分析 BY 竹内論文 世界ファクター 東アジアファクター ⇒ エネルギー 資産価格 ⇒ 東アジア固有の技術進歩 ヨーロッパファクター ⇒ ヨーロッパの相対生産性 9 3.竹内(2004)一般均衡モデルの 実証アプローチ • 東アジアの固有の景気循環; 「東アジア型の技術革新」 直接投資の拡大による域内工程間分業 投資特殊的技術進歩 ⇒ 東アジアの景気変動の46%~12%を説明 する。ASEANだとアジア要因で約50% 10 質問1 • 先進国ファクター、ヨーロッパファクターの いづれとも異なる固有のアジアファクター の存在は何を意味しているのか? (質問A)それが、世界各国の景気循環にどのよう なインパクトを持っているのか。 (質問B)各ファクターが、「他の地域」の景気循環 にどのように影響しているのか、この方法を応用 してとらえる方法はないか。 11 質問2 • アジアとヨーロッパの違いは、なぜ? アジア景気循環に占めるアジアファクターの分散分解 寄与度 (カッコ内は自国ショックの寄与度) マレーシア 0.34 (0.05) タイ 0.55 (0) フィリピン 0.3 (0) インドネシア 0.44 (0.02) ヨーロッパ景気循環に占めるヨーロッパファクターの分散分解寄与度 フランス 0.11 (0.02) ドイツ 0.03 (0.08) イタリア 0.01 (0.67) 英国 0.01 (0.25) 12 質問2(続き) 竹内論文; • アジア;工程間分業によるアジア型の技術蓄積 • ヨーロッパ; 工程間分業型の産業再編は行われなかった? 高度先端技術の蓄積? (アジア諸国でもASEAN諸国や中国などは、直接投資型の生産技術 移転ではなく、高度技術の獲得に政策の重点をシフトさせている。) 13 質問3 政策へのインプリケーション は? 例 東アジア版 共同産業政策のようなものが必 要になる? 14 質問4 各ファクターの動学的な動きをみたい。 そのためのアイデアはないか? • (例)スピルオーバー効果の上昇⇒世界景気の連動性U P • (例)世界ファクターの上昇 (時間があれば) 追加の質問;スピルオーバー効果が上昇した要因は? 15 アジアの計測についての所見 • 竹内氏論文が、指摘しているように、アジ ア通貨危機前後のデータを含めた分析に するか、否か判断難しい。 ⇒ アジア通貨危機により、東アジア経済 の連動性強まる。 • 論文投稿前には、この辺を少し慎重に取り 扱う必要性があるかもしれない。 16 スピルーオーバー効果は、 もう少し大きく観測されるのではないか 東アジアの経済循環(1978年―2004年) 0.15 0.1 0.05 Malaysia Indonesia 0 Thailand -0.05 Singapore -0.1 2004 2002 2000 1998 1996 1994 1992 1990 1988 1986 1984 1982 1980 1978 -0.15 ローカル・レベル・モデルの標準化残差を使用 実質GDPの対数値を使用 17 Thank you 田端 克至 18
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