公共経済学

公共経済学
12. 費用便益分析2
12.1 異時点に発生する費用と便益
r
=利子率(社会的割引率)
C (t )
= t 年後の費用
B(t )
= t 年後の便益
T
=プロジェクトの終了するまでの年数
12.1 異時点に発生する費用と便益
C (1)
C (2)
C (T )
C  C (0) 


2
1  r (1  r )
(1  r ) T
:費用の割引現在価値
B(1)
B(2)
B(T )
B  B(0) 


2
1  r (1  r )
(1  r ) T
:便益の割引現在価値
問題12-1
t
0
1
2
C (t )
B(t )
150
110
0
0
220
121
r=0 ⇒ このプロジェクトは実施すべきか?
r=0.1 ⇒ このプロジェクトは実施すべきか?
12.2 便益を観察される行動から評価する方法
• 市場類似法(market analogy method)
• 中間財手法(intermediate good method)
• 資産評価法(asset valuation method)
• ヘドニック価格法(hedonic price method)
• トラベルコスト法(travel cost method)
• 防御支出法(defensive expenditures method)
(1) 市場類似法
<時間の評価>
道路や鉄道の整備により経済主体が得る経
済的価値の推計
<人命の価値>
死亡確率を低下させることの貨幣価値を推計
問題12-2
1時間30分
個人2の時給=3000円
2時間
道路A
個人2
個人1の時給=2000円
1時間
2時間
個人1
道路B
問題12-2
<個人1について>
• 節約時間=1時間
• 時給=2000円
⇒ 時間節約の便益=2000円×1=2000円
<個人2について>
• 節約時間=0.5時間
• 時給=3000円
⇒ 時間節約の便益=3000円×0.5=1500円
人命の価値の推計方法
• 逸失所得法(forgone earning method)
⇒ 将来所得の割引現在価値
• 消費者購買調査(consumer purchase studies)
⇒ エアバック価格と死亡確率の低下との関係
• 労働市場調査(labor market studies)
⇒ 死亡リスクが大きい仕事に要求される代償
問題12-3
<交通事故で死亡する確率>
エアバックなし=1,000万分の1 (1kmあたり)
エアバックあり=10,000万分の1 (1kmあたり)
<1年間に10,000km走る個人にとってのエアバックの効果>
エアバックなしのときの死亡確率=1,000分の1
エアバックありのときの死亡確率=10,000分の1
エアバックの価格= 9万円 (エアバックの耐用年数=1年)
<死亡確率が低下することの便益>
1年の間に自動車運転中に死亡する確率が
1,000分の1から10,000分の1に低下することの便益
=(少なくとも)9万円
問題12-4
個人=問題12-3のような購買行動
ある橋を毎日通過する個人の数=10,000人
橋の中央分離帯を整備するプロジェクト:
個人が1年間に遭遇する死亡事故の確率が
1,000分の1から10,000分の1に低下
<この橋で1年間に生じる死亡事故の期待値>
中央分離帯整備前=?
中央分離帯整備後=?
中央分離帯の整備による便益の合計=?
人命の価値=?
問題12-4
個人=問題12-3のような購買行動
ある橋を毎日通過する個人の数=10,000人
<橋の中央分離帯を整備するプロジェクト>
個人が1年間に遭遇する死亡事故の確率が
1,000分の1から10,000分の1に低下
<この橋で1年間に生じる死亡事故の期待値>
中央分離帯整備前=10人
中央分離帯整備後=1人
<中央分離帯整備事業の効果>
中央分離帯の整備による便益の合計=9万円
人命の価値=9万円×10,000人÷(10人-1人)=1億円
(2) トラベルコスト法(travel cost method)
⇒自然公園が生み出す便益の評価
<個人関する単純化の仮定>
1. 自宅からその自然公園までの距離が異なる
2. その他の点では同一である。
TCi =個人iの自然公園までの訪問コスト( TC1  TC2  TC3  )
AF =自然公園の入場料
pi  TCi  AF :個人 i の自然公園利用の総コスト(一般化コスト)
q i =個人 i の自然公園(年間)利用回数
qi     pi (   0,   0 ):需要関数
Ⅰ  /   pi qi
  /   pi       pi 
問題12-5
p
     pi  / 
2
 /
Ⅰ
q      pi
pi
Ⅱ
AF
Ⅲ
qi
q
11.費用・便益分析1(続き)
11.2.2 予算制約が存在する場合の採否の基準
予算額=M & プロジェクトは全て非排他的かつ独立
純便益の和を最大にするようにプロジェクトを選択するため
には、次のようにすればよい。
① プロジェクトの中から純便益がプラスのプロジェクトだけを
残す。
② ①で残ったプロジェクトの中から費用合計が以下になる組
合せを全て考える。
③ ②の組合せの中から純便益の合計が最大になるプロジェク
トの組合せを選択する。
便益・費用比基準
= B/Cの大きいプロジェクトから順番にその費
用合計がを越える直前まで採択する。
「選択したプロジェクトの費用合計=予算額」
⇒
選択されたプロジェクトは、①、②、③のプロ
セスで選択された組合せと一致
問題11-7
i
1
2
3
4
5
Bi
Ci
70
52
50
48
20
30
20
20
20
30
Bi  Ci
Bi / Ci
問題11-7
i
1
2
3
4
5
Bi
Ci
Bi  Ci
70
52
50
48
20
30
20
20
20
30
40
32
30
28
-10
Bi / Ci
問題11-7
i
1
2
3
4
5
Bi
Ci
Bi  Ci
Bi / Ci
70
52
50
48
20
30
20
20
20
30
40
32
30
28
-10
70/30
78/30
75/30
72/30
-20/30
B2 / C2  B3 / C3  B4 / C4  B1 / C1  0  B5 / C5
問題11-7
i
1
2
3
4
5
Bi
Ci
Bi  Ci
Bi / Ci
70
52
50
48
20
30
20
20
20
30
40
32
30
28
-10
70/30
78/30
75/30
72/30
-20/30
B2 / C2  B3 / C3  B4 / C4  B1 / C1  0  B5 / C5
M  60
 プロジェクト2 、3
、4 を選択
M  50
 プロジェクト1 、2
を選択