P2-073

LiteBIRD実験に向けた前景放射除去法の検討
夏目浩太(YNU), 片山伸彦(Kavli IPMU),小松英一郎(MPA), 水上邦義(YNU)
他 LiteBIRD WG
シミュレーションによるBモード検出感度の研究
図1: Bモード偏光のパ
ワースペクトル。破線は原
始重力波によるもの
(r=0.001とr=0.001)、
点線は重力レンズ効果に
よるもの。茶と青は、それ
ぞれダストとシンクロトロン
によるパワースペクトル、
黒はダスト・シンクロトロン
に50%マスクをかけたパ
ワースペクトル。
LiteBIRDのような低ノイズ(数 mK arcmin 程度)、低解像度(30分角)で全天を観測する衛星実験の為に、
テンプレートを使用して前景放射の除去を行い、ピクセル空間における最尤法を用いて初期密度揺らぎ(曲
率揺らぎ)と重力波揺らぎとの比、テンサー・スカラー比(r)に対する感度を調べた。Bモード測定には、3つ
のノイズソースがある。(1) 測定器のノイズ;(2) 銀河由来の前景放射; (3) 重力レンズである。マップ上で
の前景放射の除去法について議論し、除去しきれない前景放射による rへのバイアスに関して報告する。
図1に、2 mK arcmin のノイズ(黒)、原始重力波(破線、r=0.001と0.01の場合)と重力レンズ(点線)に
よるBモードのパワースペクトルを示す。更に前景放射の2主成分であるダスト(茶)とシンクロトロン(青)の
スペクトルも示す。前景放射はPlanck Sky Model(PSM v1.6.2)によるもので、全天の50%のみを観測
するマスクをかけている。シンクロトロンとダストのスペクトルは l10 の範囲で10-3 ~10-2(mK )2 程であ
り、シグナルの5~500倍も大きい。この様な状況で原始重力波によるBモードが検出出来るだろうか?
シミュレーション
マップモデル
Mask Map
CMB Map
[Q,U ](v)  CMB  Dust(v)  Synch(v)  Noise(v)
C l (CAMB)
全天の50%をマスク(青)
Smoothing 30’ (FWHM)
Foreground Map (PSM v1.6.2)
Down Grade
Smoothing 30’ (FWHM)
Noise Map
N side  16
resampling
smoothing
前景放射除去
最尤法でのr,s推定
N side  128
 vi 

(
)
g
v
i
 Synch (vi , nˆ ) 
Synch (v j , nˆ ) 

v 
(
)
g
v
j

 j
g(v) : アンテナ温度/熱力学的温度の変換係数
Band
Sub
60 78 100
[GHz]
total
Noise level
10.3 6.4 4.6 3.5
[μKarcmin]
 vi
g (v i )
Dust(vi , nˆ ) 
Dust(v j , nˆ )
v
g (v j )
 j
1.64134
テンプレート除去マップ:
x' (v1 , nˆ )  [Q,U ] 1 , nˆ   a D D  a Si S
D [Q,U ](280, nˆ )  [Q,U ](190, nˆ )
S  [Q,U ](60, nˆ )  [Q,U ](78, nˆ )
 1

1
T
0
0
exp  x' (a D , a Si ) C (r , s, a D , a Si ) x' (a D , a Si )
2


L( r , s, a i ) 
| C (r , s, a D0 , a S0i ) |
SI
SI
0
0

Q
U

Q
U

a

a

D
[
,
](
60
)
[
,
](
100
)
(
(
60
)
(
100
))
g


g

(
60
)
60
(
100
)
100
I
I
D
D
 I2 (  S I )   I I

SI
SI
0
0
Q
U

Q
U

a

a

D
[
,
](
60
)
[
,
](
78
)
(
(
60
)
(
78
))
g


g

(
60
)
60
(
78
)
78
I
I
I
I
D
D

c はCMBシグナルの共分散行列(r=1, s=1における)、N1はノイズの共分散行列、N2は共分
散行列を正則行列に整えるために人工的に加えた、微小な対角なノイズの共分散行列。
シンクロトン放射のスペクトル指数の空間分布によって、前景放射除去を行うマップと60,
78GHzのシンクロトロン放射ではミスマッチが起こるため、fsky=0.5のマスクをかけ、12リージョ
ンでテンプレート係数で最適化する。12リージョンの空間分布は図3のa,bの2種類を使用した。
前景放射除去は100, 140GHzで行い、前景放射除去の最終結果としては100,140GHzの結
果の加重平均とした。
図3: aSに仮定した空間分布、a(右図),b(左図)の場合
a S (v1 ) 
I
尤度関数:
aの場合は隣り合うピクセルは近い分布
と仮定した空間分布である。それに対し
てbの場合は、aSの空間分布はβsの空
間分布によるため、PSMのβsをソートし
て12分割したしたものである。
共分散行列:
C ( r , s, a ) 
g (v1 )  v1
g (60)  60
SI
 g (78)  78
SI
rc
tensor
 sc
scalar
 N1 (v1 )  a
02
D
N1 (280)  N1,a S S  N 2
(1  a D0 ) 2
Nside=16の空間で求めたβsマップは図4
(上)であった。全天での空間分布の考慮を
期待したが、図4(下)のようにマスク外の
領域では非常に悪い結果であった。これは
マスク領域内でのSN比が非常に低いため
である。(図5)よって、Nside=16の空間で
得たβsより1つのaSを求め、使用した。
fsky=0.5のマスクをかけた、140,
190GHzのマップより前景放射除去を行い
図4: 求めたβsマップ
最終結果は140,190GHzの結果の
加重平均とした。
図5: 各周波数でのSynch,
Dust, Noiseの温度(uK,
r.m.s) . 点線:Dust, 線:
Synch, 三角: Noise,青:
50%マスク内,桃:マスク無し,
水:50%マスク外
結論
LiteBIRD (Light satellite for the studies of B-mode polarization and
rrecover (mean(r))とエラー(std(r))の結果を図6,表2に示す。
点線はrrecovered=rinput + offsetでポイントに  fitを行った結
果である。 緑:Method I-a, 赤: I-b, 青: II
Offsetは、0.0006  0.0003 (I-a), 0.0003  0.0003
(I-b), 0.0002  0.0002 (II)だった。結果、offset <
0.0003 に抑える事に成功した。(method I-b, II)
0.001
SI




 1

exp  x' (a D ) T C 1 (r , s, a D0 ) x' (a D )
2


L( r , s, a D ) 
| C (r , s, a D0 ) |
0
D
結果
0.003
表1: 本研究で使用した観測周波数・ノイズレベル
[Q,U ] 1 , nˆ   a D [Q,U ](280)  a S S
x' (v1 , nˆ ) 
1aD
aSは最尤法のフリーパラメータとして決めるのではなく、 以下のχ二乗式を最小二乗法で求め
たβsを使用し、解析的に求める。(I:pixel index)
i
0.001
-2.7642
テンプレート除去マップ:
r はテンサ・スカラ比, s はスカラEモードのパワースペクトルの係数、ai (j=S1~12 ,D) は前景
放射のテンプレート係数。
共分散行列:
0
0
02
tensor
scalar
C (r , s, a D , a Si )  rc
 sc
 N1 (v1 )   j D,S a j  N1, j  N 2
rinput
0.003
-3.26483
Band
Sub
140 190 280
[GHz]
total
Noise level
4.0 3.1 4.1 2.1
[μKarcmin]
Method II
Method I
尤度関数:
1.65177
図2: βD (右),βs(左)の空間分布。βs の空
間分布は βDと比較して非常に大きい。
r, s
Scan: “EPIC low-cost”(EPIC-LC)
 S ( nˆ )
 D ( nˆ )
Method I-a
-
Method I-b
Inflation from cosmic background Radiation Detection;
http://cmbpol.kek.jp/litebird) のような、次世代の低ノイズでのCMB偏光観測
Method II
0.0034 ±0.0005 0.0033 ±0.0005
0.0016 ±0.0004 0.0013 ±0.0003 0.0012 ±0.0003
Method I-a
Method I-b
Method II
100(190)GHz
-
0.0039 ±0.0010
0.0032 ±0.0008
140GHz
-
0.0032 ±0.0006
0.0033 ±0.0007
100(190)GHz
0.0021 ±0.0008
0.0021 ±0.0008
0.0011 ±0.0004
140GHz
0.0014 ±0.0004
0.0011 ±0.0004
0.0012 ±0.0004
表2(上):加重平均
表2(左):各前景除去
の結果表
図6: rrecover , σrの結果
衛星実験に向けた前景放射除去法としてinternal template fittingを検討し
た。簡単なテンプレート除去法を用いて、シミュレーションで与えたr(テンサ・スカ
ラ比)に対して、r<0.0003の小さいoffsetで得ることに成功した(Method I-b,
II)。これは以前の研究結果のr<0.0006の半分以下であった。また、offsetの
要因はシンクロトロン放射の空間分布を正確に考慮できていないためである。
よって、offsetを軽減するためにはMethod IではフリーパラメーターであるaSの
数を増やすこと、Method IIではSN比が低い領域で空間分布を用意できるよう
になることが必要であろう。
参考文献
N.Katayama & E.Komatsu, 2011, ApJ, 737, 78; Page, L. et. al., 2007, ApJS, 170, 335; Efasthiou, G., Gratton, S. & Paci, F., 2009, MNRAS, 397, 1355
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