会計学入門

会計学基礎
7月13日・7月20日
財務諸表による経営分析
経営(財務)分析とは?



あるテキストによれば『決算書を見ながら、「会
社の善し悪し」を判断すること』
決算書?
「会社の善し悪し」?
「会社の善し悪し」とは?



ある会社が「善い・悪い」会社であるかどうか、画
一的に決める方法はない
「何について」善い・悪いのかを考える必要があ
る
まずは損益計算書を使って、どうやって「儲かっ
ているか?」の分析から始めよう
分析対象を理解する

分析対象の会社は




何のビジネスをやっているのか?
その業界の様子はどうか?
その会社の強み・弱みは何か?
このような話は決算書などの会計のデータをいく
ら眺めていてもわからない

「会計(数字)」以外の情報が重要!
分析対象を理解する


たとえば、ある製薬会社の売上高営業利益率
(後述)が急に高くなったとして、なぜなのか?と
いう疑問を持ったとしよう
これを説明するためにはその会社について知る
ことが欠かせない





新製品の薬が馬鹿売れで儲かっている?
原材料が急に安くなった?
賃下げで人件費を減らした?
会計ルールの影響?
などなど
儲かっているか?(収益性)



儲け=利益
損益計算書の分析からはじめる
いろいろな利益


売上総利益・営業利益・経常利益・税引前当期純利
益・当期純利益
売上高に対するそれぞれの利益の割合は?

百分率損益計算書をもちいるのが便利
損益計算書の内容





売上総利益
 売上高から売上原価を差し引いたもの
営業利益
 売上総利益から販管費を差し引いたもの
経常利益
 営業利益に営業外収益・費用を加減したもの
税引前当期純利益
 経常利益に特別利益・損失を加減したもの
当期純利益
 税引前当期純利益から法人税額を差し引いたもの
販管費
(販売費および一般管理費)

販売費:販売に必要な費用の総称



販売員の給料等
広告宣伝費
一般管理費:企業の管理に必要な費用の総称


総務・財務部門の人たちの給料等
通信費・旅費・交際費・保険料などなど
営業外収益・費用


本業の活動以外による収益・費用
具体的には受取利息・配当金(収益)や支払利
息(費用)が該当する
特別利益・損失



経常的に発生しない、臨時的・偶発的に発生し
た利益・損失
具体的には、固定資産の処分による利益・損失
や災害による損失などが該当する
営業利益に入れるべきかどうかの判断が難しい
場合も多い

「リストラ費用」
営業利益と当期純利益



営業利益:本業による(税引前)の成果
当期純利益:企業活動全体の成果
企業へ資金を提供した人たちの観点からは、



当期純利益は株主にとっての企業活動の成果
営業利益は(株主+債権者)にとっての企業活動の
成果
この二つの利益が損益計算書の分析の中心

ただし、経常利益も重要であるとする意見もある
売上高利益率


売上高に対するそれぞれの利益の割合を示す
最もよく使われるのは以下の3種
売上総利益
売上高総利益率=
売上高
営業利益
売上高営業利益率=
売上高
当期純利益
売上高純利益率=
売上高
潰れる危険はないか?(安全性)


払わなければならないお金をきちんと払えるか
どうか
貸借対照表の分析からはじめる


支払能力はあるか(短期)
財務体質の安定性はどうか(長期)
収益性の分析(投資利益率)

経営分析は、多くの場合金額ではなく、いろいろ
な比率を対象に行われる


ただし、この比較はあくまでも数字の比較に過ぎない
ことに注意!
元手(投資・資本)に対してどれだけの見返り(利
益)があったかを見るのが投資(資本)利益率
利益
資本利益率=
資本
投資利益率

投資(資本)利益率を二つに分解してみる
利益 売上高
資本利益率=

売上高 資本
=売上高利益率  資本回転率

右辺のそれぞれに意味がある


売上高利益率
資本回転率
各種の利益と資本



一口に利益資本率といっても、どの利益・どの資
本を組み合わせるかによってたくさんの利益資
本率が計算できる
しかし、「意味」のある組み合わせは少ない
意味のある組み合わせは「元手」と「見返り」が
対応する組み合わせ
各種の資本

総資本




株主資本


総資本=負債+純資産=総資産
企業が使っているすべてのお金でもあり、
企業が使っているすべての資産と同額
株主が企業のためにつぎ込んだお金
自己資本

株主資本に「評価・換算差額」を加算したもの
四種の資本利益率

事業利益
総資本事業常利益率
総資本
 事業利益=営業利益+受取利息配当金

総資本営業利益率


営業利益
総資本
株主資本(純)利益率 当期純利益
株主資本
自己資本(純)利益率 当期純利益
自己資本
四種の資本利益率


資本利益率の計算において、B/Sの数字はどれ
を使うか?
次の3通りの可能性



(1)期首と期末の数字の平均(テキスト推薦)
(2)期首の数字(私推薦)
(3)期末の数字(推薦できない)

できの悪い教科書では(3)を使っていることもある
四種の資本利益率


我が国では経常利益が重視されてきたが、これ
は特殊な状況
むしろ、営業利益(or事業利益)と純利益の重要
性が認識されつつある


そもそも諸外国には経常利益の概念がない!(営業
利益と純利益のみ)
特に、企業評価のために将来指向の分析を行う
際には、経常利益は用いられない
営業利益と当期純利益

企業評価の観点からは、



当期純利益は株主にとっての企業活動の見返り
営業利益は(株主+債権者)にとっての企業活動の
見返り
株主のためにはROE(株主資本利益率)、投資
家全体(=株主+債権者)のためにはROA(総
資本営業利益率)が重視される
ROE(株主資本利益率)分析のフ
レームワーク(デュポン・システム)
当期純利益
ROE 
株主資本
ROE 
純利益 売上高 総資産


売上高 総資産 株主資本
収益性 効率性 レバレッジ
何がROEを決定するのか?

どれだけ有効に資産を使用し、利益をあげてい
るか


総資産純利益率
どれだけ株主以外から調達した資金を使用して
いるか

(財務)レバレッジ
純利益 総資産( 総資本)
ROE 

総資産
株主資本
ROE


ROEは株主の視点からは最も大切な指標である
しかし、ROEを高める方法は大きく分けて二通り
ある




経営効率を高め、より高い利益を獲得する
負債の割合を増やす
負債の割合を増やすことは、企業の安全性を損
ねることにつながる
したがって、単にROEが高いというだけで「善し悪
し」は判断できない
売上高利益率の分解

売上原価・販管費の分析



過去から現在への変化の推移(時系列分析)
他社との比較(クロスセクション分析)
変化・差異の理由は?
投資の効率性:資産回転率の分解

それぞれの資産(・負債)がどの程度有効活用さ
れているかを分析する

流動資産(・負債)




棚卸資産
売掛金・受取手形(二つの合計は受取勘定・売上債権)
買掛金
固定資産



有形固定資産
無形固定資産
投資その他の資産
投資の効率性:流動資産(・負
債)の分析



流動資産の有効活用の指標
受取勘定回転率=売上高/受取勘定
棚卸資産回転率=売上高/棚卸資産


売上高のかわりに売上原価を用いることもある
買掛金回転率=売上高/買掛金

売上高のかわりに仕入または売上原価を用いることもある
投資の効率性:固定資産の分析



固定資産の有効活用の指標
固定資産回転率=売上高/固定資産
有形固定資産回転率=売上高/有形固定資産
安全性の分析:レバレッジ

レバレッジは、リスク(危険)とリターン(収益)を増加さ
せる



安全性の分析:短期



ただし、負債のコストが得られる投資収益より小さい場合
リスクは収益に見合っているか?が重要
流動負債
短期流動性
安全性の分析:長期


長期負債
長期支払い能力
安全性の分析:短期



流動比率=流動資産/流動負債
当座比率=(現金+短期投資+売掛金)/流動
負債
現金比率=(現金+市場性のある有価証券)/
流動負債


これら三種の比率は、流動負債の返済能力を返済原
資の有無から測定する
流動比率はしばしば200%が目安であるといわれる
が、業種・企業間のよるばらつきは大きく、200%は
意味のない数字である
安全性の分析:短期




現金・預金(広義のキャッシュ)は、多ければ多
いほどよいというものではない
キャッシュが少なすぎるときには経営者は常に
資金繰りに追われることになる
キャッシュが多すぎるときにには、お金を無駄遣
いしている(寝かしている)ことになる
手元流動性比率=(現金・預金+有価証券)/
月商
安全性の分析:長期


レバレッジの逆数が株主資本比率
株主資本比率=株主資本/総資本


これらの指標は、負債による資本調達の度合いを測
定している
株主資本のかわりに自己資本を用いるのが現
状では一般的(らしい)

誤った使用法なのだが…
安全性の分析:長期

固定資産へ投資した資金の調達を短期の資金
によることは経営を不安定にしやすい




投資の成果が現れる前に返済期限が来る=>新た
に資金を調達する必要が発生する
固定比率・固定長期適合率は、期間の長い(=
返済期限がかなり先)資金で固定資産への投資
をどの程度まかなえているのかをみる指標
固定比率=固定資産/株主資本
固定長期適合率=固定資産/(株主資本+固
定負債)
損益分岐点分析

費用を二分割する
固定費・・生産を行わなくても発生
変動費・・生産に比例して発生
どれだけ利益をあげれば赤字から黒字に変わる
のか?を計算によって求める
限界利益
売上高から変動費を控除した額であり、「固定費
を回収し、利益の発生に貢献する額」を意味する
損益分岐図表
収
益
費
用
売上高線
損益分岐点
変動費
総費用線
固定費
売上高

限界利益率「(単価-変動費)÷単価」
売上高に占める固定費の割合
固定費を限界利益率で割ればいい
損益分岐点分析の応用

目標利益を達成するために必要な売り上げを算
出することが出来る

固定費に目標利益を上乗せしたものに対して「損益
分岐点」を求める