スライド 1

10行動分析学特論(7)
環境と随伴性を自らが変容する行動の獲得とそ
の援助:
(2)自己決定(対人援助のキモ)
●「自己決定」実は「社会行動」です。だから「自己決
定ができない」というのは、社会的な行動随伴性のど
こかに問題があります。「寝たきり(=寝かせきり)」も
周囲との行動の問題(=行動問題)であるように。
●「環境の選択肢を拡大する」という社会行動は、
新しい「発達」の捉え方とも言えるかも。
1
障害領域で言われる「自己決定」:
(障害のある本人が)自らの環境設定や環
境随伴性の変更について、社会成員にその
実現のための援助を要求する社会的行動
(コミュニケーション)である。
「単独」で行う行動ではない。
2
対人援助のキモですな。
Service
本人(ご主人様の)好きな方向へ打てるように
3
自己決定の成立を阻む周囲の要因
1)知的障害のある個人には決定(選択) の
能力がない
①選択内容自体への弁別能力の疑問
②自己責任をとれない
2)重度の障害があると、他者を介して環境変
更を表現する能力がない?
3)自己決定に伴う「自己責任」をとれない
4
「能力」の問題として対象物の選択ができない,という
ことは少なくとも「食事」などの内容については無い。
Parsons,M. B., & Reid, D. H., (1990)
Assessing food preferences among persons
with profound mental retardation.
Journal of Applied Behavior Analysis, 23, 183195.
・重い知的障害があっても食べ物に対して,
一定の「好み」を表明することが可能
・食事中の選択機会設定はそれほど時間的
コストが,かかるものでもない
5
繰り返しの中で,一方の
選択肢から選ぶことが示
された。
Parsons and Reid (1990)
食べ物のペアを連続的に
呈示する
選択に「分化」がある
選択肢の区別やそれに対
する選好は示せる!!
6
2)他者を介して,環境変更を要求するとい
う「能力」がない?
3)自己決定に伴う「自己責任」をとれない?
あらためて,
「自己決定」という行動はどういう行動なの
か?
7
「自己決定」:指定者や援助者など,他者の存
在や,その指定によって選択するのではなく,
あくまでも選択肢の内容によって選択している
事態(Goldiamond, 1970)
こうした事態を、社会的関係として阻害し
ていないか?
8
選択肢
A,B,C
援助者
「Aが良いよ」
選択肢
A,B,C
援助者
「・・・・」
選択
A
選択後に
も援助あり
選択
B
選択後に
援助なし
「自己責任」
もしこのような事態が多ければ・・
援助者が「指定」する選択肢を選んだ場合の方が
強化を受ける率が高まる →「指定」が弁別刺激
9
援助者などが,「本人の利益のため」(という善意に
よっても)
特定の選択肢を「指定」するような場合
●選択肢内容自体の弁別も進まない
●他者が存在する時には,専らその「指定」
に従う行動が示される。
○他者が存在する時には,選択肢そのものの
内容による選択ができなくなる。
●上記のような状況下で,「自己責任」を強調さ
れれば,益々,選択はできなくなる。
「自己責任」がとれないから「自己決定」ができない,と
10
いう論理は,悪循環を生む。
ではどうするか?
選択肢内容によって,本人が選択した場合に,(た
とえ援助者の価値とずれていても)その選択を尊
重しその実現について援助する必要あり。
その選択が結果的に,「失敗」(本人の不
利益につながった)場合には?
失敗の克服(再選択)の機会を保障し,
再びその選択を援助する
これを繰り返すことで,「選択眼」が養われる。
「繰り返しを認める」状況を設定する必要がある
11
パターナリスティックな援助を援助者が
してしまう背景(犯人探しではなく、行動的問題
として)
1)援助についてのノウハウが足りない
2)選択肢の準備が少ない(繰り返しも認めるこ
とができない)
●このような場合に,「自己決定」が強調される
と 自己決定を「放任」とすりかえて,何もしない
(できない)状態になってしまう。
→「パターナリスティックか放任か」の選択を援
助者が強いられることになる。
12
「自己決定」で、もうひとつ忘れてはいけな
いこと。
大前提:正の強化で維持される行動の選択
肢が拡大していくための援助作業の一環で
ある
そのような前提の上で,「援助者」は,本人の決定に
ついて,過不足ない援助をする必要がある。
*単に選べればいいというものではない!
13
過不足ない自己決定の援助
The proposal is to develop our sensitivity
to the various forms of communication
used by people with severe disabilities so
that we may do more of what they want
and impose on them less of what we
assume they want or want them to want.
Baer, D. M. (1998): Commentary: Problems in
Imposing Self-Determination. JASH, 23(1), 50 - 52.
14
産地直送の(過不足ない)自己決定の援助
The proposal is to develop our sensitivity
to the various forms of communication
used by people with severe disabilities so
that we may 彼らが望むことをするand
彼らが望むと推測されることや、望む
ことそのものを押しつけないようにす
る。
Baer, D. M. (1998): Commentary: Problems in
Imposing Self-Determination. JASH, 23(1), 50 - 52.
15
従来の「心理学」などのアプローチとの違い
「知る」から「聴く」
●従来はある個人の行動を法則を見つけ予測しようと
する。つまり、本人が何が好きかを予測(推測し)与える
のではなく(less of what we assume they want)
●ある個人が、その時点で何を要求するかを聞き取
ろうとする( do more of what they want )。
→ 「予測を目的とせず」その時点,時点で
行動選択(選択行動)の機会を保証する
16
選択肢を押しつけない選択機会
は、具体的にはどのように設定
すればよいか?
否定選択肢設定の導入について
17
選択肢提供者の予想を「裏切れる」選択肢
Choice
option 1
Choice
option 2
Rejection
18
選択肢提供者の予想を「裏切れる」選択肢R
Choice
option 1
Choice
option 2
Rejection
19
既存選択肢(選択機会自
体)からの離脱
…..less of we want
them to want
長期にわたる施設生活
JASH(1995)
Nozaki & Mochizuki
聴覚障害の疑いあり
食事・水分制限あり
20
Option 1
Option 2
Option 3
Rejection
Nozaki & Mochizuki (1995)
21
22
この研究で示されたこと
1)最重度の知的障害のある個人でも、その個人に
合わせた選択設定を準備すれば選択表明を行える
2)既存選択肢を「おだやかに」拒否する選択肢の
設定を行うことも可能
3)設定のみではなく、教授機会ももちろん必要
4)「本人の好きなものを」のではなく
「選択機会を常に提供すること」が重要
そして、さらに
5)本人に選択を任せても過剰(逸脱的)にはならない
(ウーロン茶の例)
過剰・逸脱:選択機会や選択肢内容の貧困から(?)
6)本人の属性的な障害性(聴覚障害/無力症状)も
選択できる「やりたい行動」の経験によって軽減
23
応用行動分析学のから自己決定を考える
1.「自己決定」は、単独で行う行動ではな
い
2.何より選択後のフォローが大切
3.好きな物を見つけようとするのではなく「自
由に」選択できる機会の設定とは違う。(「知
る」から「聴く」(鷲田)
4.「自由」:今、援助者ができることは、選択
肢の拒否の選択肢設定(R)
24