物理システム工学科3年次 「物性工学概論」 第6回半導体と光(4)

物理システム工学科3年次
物性工学概論
第火曜1限0023教室
第6回 光電変換
大学院ナノ未来科学研究拠点
量子機能工学分野
佐藤勝昭
第5回の復習

さまざまな発光



励起方法による分類
フォトルミネセンス(PL)、カソードルミネセンス(CL)
エレクトロルミネセンス(EL)、注入型エレクトロルミネ
センス(LED)
半導体pn接合
発光ダイオード
LEDの原理




pn接合を順バイアス
電子は、p層に注入
ホールはn層に注入
界面付近で再結合
再結合
p型
-
+
+
+
+
n型
空間電荷層
第5回の問題


励起のメカニズムによりルミネッセンスを分類し、それ
ぞれどのように応用されているかを述べよ。
A:
光で励起:フォトルミネセンス(PL):蛍光灯、PDP
2. 電界で励起:エレクトロルミネセンス(EL):無機EL, 有機EL
3. キャリア注入で励起:発光ダイオード(LED):信号機、電光掲
示板
4. 電子線で励起:カソードルミネセンス(CL):CRT, FED
1.
質問コーナー

授業の中でホールの質量というものが出てきま
したが、ホールは電子の抜け穴と習いました。
穴に質量があるのですか。(荒井)
A:水の中のあぶくと、水飴の中のあぶくでは動きやす
さが違いますよね。穴は、周りの物体が穴に移動し、
もとの場所に穴があくことで移動します。穴の有効質
量というのは、周りにある電子の有効質量なのです。
伝導電子の有効質量と同様に、価電子帯ホールの
有効質量はk空間におけるバンドの曲率の逆数です。
質問コーナー

電気エネルギーもかけず、光を遮断しても光る物質があ
りますが、なぜ光っているのですか。(鈴木)
A:昔の夜光時計の文字盤には放射性夜光塗料が使われてきま
した。これは、ZnS系蛍光体にRa226(ラジウム226) 、
Pm147(プロメチウム147)やH3(トリチウム) などの放射性
物質を添加し、高エネルギーの放射線で励起していました。環
境への影響への配慮から、最近では、放射性物質を使わない
「蓄光性塗料(長残光性蛍光塗料)」が使われます。これはアル
ミン酸ストロンチウムに希土類元素を組み合わせた蛍光体によ
り、ごく僅かな光の励起で長時間残光が継続します。日常生活
での標準的な明るさである500ルックスの光が約10分間照射
されている条件で暗闇の中で光を放つ時間は3~8時間程度
と従来の蓄光塗料と比較すると約10倍以上も長いそうです。
http://www.tokunaga.ne.jp/doc/monogatari/09.htmlによる
第6回で学ぶこと
光電変換:光を電気に変える
 光伝導(photoconductivity)
 光電子放出(photoelectron emission)
 光起電力効果(photovoltaic effect)


フォトダイオード、フォトトランジスタ
太陽電池
光伝導




半導体において光照射により導電率が上がる
(電気抵抗が下がる)効果
光によって生成されたキャリアが伝導に寄与
街灯の自動点灯用センサとして使用される。
光電流は必ずしも光強度に比例しない。真性半
導体では光強度の2乗に比例
光伝導




光によってキャリア生
成
電界によって移動する
再結合するまで伝導に
寄与
トラップ準位があると、
キャリアはいったん捕
捉され、熱的に解放さ
れて再度伝導に寄与
伝導帯
電子
トラップ
ホール
価電子帯
街灯の自動点灯

夕方になると街灯がひとりでに点灯します
が、光導電素子を使って固体リレーを働か
せ、電灯をオンオフしています
CdS光導電セル
モリリカのHPより
街灯自動点滅器(EEスイッチ) 松下電工のHPより
自動点灯するわけ

光を受けて抵抗が低くなる
CdS光伝導センサーと固体
リレーが接続されており、明
るいときにはランプの回路が
開くようにしておく。暗くなる
とリレーの電流がoffになり、
接点が閉じてランプが点灯
する。
リレーって何?

大きな電流を、弱い電流(または小さな電圧)で
on/offするための装置: 例)ランプの点滅
http://www.omron.co.jp/ecb/magazine/p29.html (オムロンのHPより)
スイッチとリレーでランプを点灯させる

1)S1を押します(ON)
2)操作コイルに電流iが流れ鉄心を磁化します。
3)電磁力によって鉄片は鉄心に吸引されます。
4)鉄片が鉄心に吸着されると、可動接点と固定接点が接触しランプが点灯します。
5)S1をもどすと(OFF)操作コイルの電流がなくなり鉄片を吸着する力が消滅して、復帰バネの力で鉄片はもとの
状態へもどります。
6)鉄片がもとの状態にもどると接点部が離れ、ランプは消えます。
http://www.omron.co.jp/ecb/magazine/p29.html
機械式リレーと固体リレー


機械式リレーは、電磁石の原理を応用し
ている。リレーの入力側コイルに電流を
流すと電磁石の原理により出力側機構
が稼動し、出力側切替接点が切り替わり、
出力信号の制御を行う。
固体リレーでは、可動部がなく、フォト・カ
プラと駆動回路、そしてトライアックまたは
サイリスタの半導体スイッチから構成され
ている。
我が家は
太陽光
発電所
太陽電池について
太陽電池は光を電気に変える半導体の素子で
ある。太陽光のエネルギーの10%程度を電気
に変える。
 太陽電池は乾電池や蓄電池と違って電気を貯
める性質はない。光がないと全く発電しない。太
陽光発電器というべきである。
 太陽電池の出力は直流である。そのままでは、
家庭用の電源(交流)として使えない。そのため
インバータという仕掛けを使って交流に変換して
いる。

太陽電池の仕組み
反射防止
コーティング
-
太陽光
上部電極
+
n型シリコン
ここで
電子と
ホールを生成
p型シリコン
下部電極
光起電力の原理



pn接合に光照射
バンドギャップを超え
る光によって電子と
ホールが生成される
空間電荷領域の拡散
電位差によって、電子
はn層に拡散、ホール
はp層に拡散
p型
-
+
+
+
+
n型
空間電荷層
太陽電池の等価回路と特性
開放電圧
短絡電流
佐藤勝昭編著「応用物性」p.153
太陽光スペクトルと理論効率

AM(Air mass) 1.0
または1.5の太陽光
のエネルギー密度ス
ペクトル
AMって?
赤道直下
中緯度地帯
AM1.0
空気層
地上
Am1.5
太陽電池の材料
シリコン系
•単結晶シリコン: 材料高コスト, 比較的高効率
•多結晶シリコン: 材料低コスト, 中効率
•薄膜アモルファスシリコン: 省資源, 劣化が問題
•薄膜多結晶シリコン: 省資源, 中効率
化合物系
•単結晶GaAs: 超高効率, 高コスト, As含有→宇宙
•薄膜多結晶CdTe: 高効率, 低コスト, Cd含有
•薄膜多結晶CuInSe2系: 高効率, 低コスト
同じシリコンでも
分類
不純物濃度
金属級シリコン
10-2
太陽電池級シリコン 10-6 *
半導体級シリコン
<10-9
用途
(原料)
多結晶太陽電池
LSI, 単結晶太陽電池
*Ti, Vについては10-9以下にする必要あり
金属級シリコンに含まれる主な不純物
Al 1500-4000ppm, B 40-80ppm, P 20-50ppm
Ti 160-250ppm, V 80-200ppm
Cr 50-200ppm, Ni 30-90ppm, Fe 2000-3000ppm
太陽光発電システム

独立系
系統連携
■太陽電池入門のホームページより
http://homepage2.nifty.com/domi/nyumon.html#m
太陽電池パネル設置作業
インバータ
電力計
フォトダイオード
佐藤勝昭編著「応用物性」p.152
フォトダイオードの動作



フォトダイオードは、通常、pn接合に逆バイアス
を印加した状態で使用される。空乏層でキャリア
生成、拡散電位差
により分離。
pinフォトダイオード
高速動作
アバランシェ・ダイ
オード:電子雪崩
現象で増倍。
浜松ホトニクスのHPよりhttp://www.hpk.co.jp/Jpn/products/ssd/Si_PD/Si_PD.htm
フォトダイオードの用途




光ファイバー通信:受信用光検出器
光ストレージ:光ピックアップ用光検出器
各種光センサー:自動ドア、リモコン、自動水栓
等
計測用光検出器:赤外線計測
フォトダイオード材料

IV族




Si(最もポピュラーなフォトダイオード材料)
Ge(近赤外線)
III-V族材料:例) GaInSbAs:光通信用
II-VI族材料:例) CdHgTe:赤外線計測用
撮像デバイス




静止画像
動画像
CCD (charge coupled device) の動作
CMOS センサー
ニコンのサイトより
CCDカメラの中身(Asca corpのHPより)

http://askasg.net/popeye/009_20040
225.html
第8回の問題


夜になると街灯が自動的
に点灯する仕組みを説明
せよ。
pn接合が発光ダイオード
(光源)にもフォトダイオー
ド(光センサー)にもなる
理由を考えよ。
6/8 ミニテストについて


指定に従って着席する。学生証を机の上に提示
参考書1冊持ち込み可


カンペA41枚持ち込み可:





たとえば、佐藤・越田:応用電子物性工学、コロナ社、佐藤編
著:応用物性、オーム社、山田・佐藤他著:機能材料のための
量子工学
コピー・ワープロ不可
自筆に限る。記名して必ず提出。
電卓は持ち込んだ方がよい
式の誘導はDrude則のみ
基礎知識と物理的思考を問う問題を出題

昨年度のミニテストの問題・解答例参照
http://www.tuat.ac.jp/~katsuaki/BMiniTest030527.html