雇用平等とジェンダー

雇用平等とジェンダー
2015年1月20日
人事労務管理論B (第13回)
LT1011教室
LT1012教室
ジェンダー gender とは何か
 gender,
sex そして性
セックス(sex)とジェンダーは同じではない
セックス;
ジェンダー;日本語にはこれを区別する用語がない
 ジェンダーの意義
ジェンダーの有り様は一律ではない
社会が作ってきたもの
→
社会・文化や意識の面は急速に変わりにくい
→
2
男女労働状況比較の主な指標
1970年
1985年
2000年
2005年
労働力率
81.8 49.9
78.1 48.7
76.4 49.3 73.4 48.3
労働力中の男女比率
60.7 39.3
60.3 39.7
59.3 40.7 58.8 41.2
就業者中の雇用者比率
71.5 54.7
78.9 67.2
84.3 81.4 84.9 84.2
雇用者の男女比率
66.8 33.2
64.1 35.9
60.0 40.0 58.9 41.1
雇用者の平均年齢(才)
34.5 29.8
38.6 35.4
40.8 37.6 40.6 34.7
11.9
13.3
雇用者の平均勤続(年)
8.8
短時間雇用者の比率
4.0 12.2
5.1 22.0
9.4 36.1 13.0 41.4
100 50.9
100 51.8
100 49.8 100 50.0
賃金の男女比
完全失業率
1.2
4.5
1.0
2.6
6.8
2.7
4.9
8.8 19.2 13.8
4.5
4.9
4.4
(青は男性 赤は女性)3
女性の年齢階級別労働力率
青線:2001年、赤線:2011年 総務省・労働力調査
厚生労働省(2011)『平成23年版 働く女性の実情(概要版)』、1ページより
4
M字型雇用

働く女性の年齢別の割合
学卒の女性;
結婚・出産期の女性;いわゆる「寿退職」
育児・子育て終了後;

M字型雇用の最近の変化
Mの字の谷間の部分が浅くなってきている
→
→
20歳代後半女性の労働力率の増加
→
5
ところが、
今や半数以上の女性は非正規雇用
35.1 %
38.1%
39.1%
46.4 %
52.5%
53.8%
6
日本の女性労働の特徴(1)

働く女性の割合

雇用者の急増
約半数の女性が働いている
→
働く人々の中での男女比も変化なし →
働く女性の割合は変化がないが
雇用労働者として働く女性の割合が急増している
雇用者の男女比率も徐々に接近

結婚しても働き続ける女性
雇用者の平均年齢増加
雇用者の平均勤続年数の増加(4.5→13.8)
7
日本の女性労働の特徴(2)

働く女性の過半数はパートタイマー(50.7%)
→なぜパートタイマーか?
・正規従業員の職がない
・本人の希望
・「家庭責任」(育児、子育て、家事)
・性別役割分業 ・貧弱な社会的インフラ

コース別雇用管理
総合職と一般職:男性コースと女性コース
導入は男女雇用機会均等法がきっかけ
総合職に占める女性の割合はわずか3%
一般職に占める女性の割合は95.6%
8
コース別管理の実態(女性の割合)
総合職採用者
に占める割合
産業平均
建設業
製造業
一般職採用者
に占める割合
総合職に占
める割合
20.6(12.0) 70.9( 95.6) 6.0 (3.0)
7.8(16.7) 60.0(100)
1.2 (0.9)
16.7(11.9) 50.0( 79.7) 3.6 (2.3)
卸・小売業 17.9(12.3) 83.3( 96.6) 6.2 (3.3)
金融・保険 14.6( 9.1) 100 ( 99.9) 4.2 (3.6)
厚生労働省「コース別管理制度の実施状況と指導状況」
2005(2004)年
9
総合職採用の女性の10年後は?
1996年に総合職で採用した男女の実績をみると
 女性が男性より上位職に就いてるケースはゼロ
男性が上位職30&、男女同位職70%
 半数の女性が既に退職
在職女性も64%が子どもがいない
厚生労働省「コース別管理制度の実施状況と指導状況」2005年
10
男女賃金格差

労働基準法第4条:
女子であることを理由に賃金について差別的取り扱
いをしてはならない
 実態→女性は男性の約半分(03年で51.7%)
・
・
・同じ正規従業員でも男性の64.9%

国際的にみても低い
→ OECDの調査によれば、悪い順番に、韓国、日
本、アメリカ、イギリス、オランダ、フィンランド、ドイツ、
スエーデン、オーストラリア、フランス
11
なぜ日本の女性の賃金は低いのか

M字型雇用
職業生活上の中断:年功賃金上では不利
再就職の際はパートタイマー

昇進格差
コース別雇用管理:

人事考課・査定制度
人事考課・査定のあり方の問題性
女性にたいする恣意的・差別的な査定
12
男女雇用機会均等法
 はじめての均等法(1985年成立、86年施行)
国際婦人年(1975)と国際婦人の10年(1976-85):
女性の地位向上と雇用における男女平等
我が国最初の均等法だが、
 間接差別の禁止規定なし
均等法の施行を契機にコース別雇用管理
直接の差別ではないが、事実上の差別になる
差別の隠蔽 →
コース別管理の修正
→
13
99年均等法の改正

均等法改正の契機
欠陥だらけの旧均等法:罰則のない努力義務規定
→
女性が働きやすい職場形成:
女性優遇の取り扱い:

規制緩和:市場原理と競争原理
労働基準法の改正 →
14
均等法の変化(86年法と99年法)
改正前
改正後
募集・採用
差別解消の努力義務(罰則なし) 差別禁止規定
配置・昇進
差別解消の努力義務(罰則なし) 差別禁止規定
セクハラ
な し
防止配慮義務
紛争の調停
労使双方の同意が必要
いずれかの申請で可
時間外労働
年間150時間
保護規定の撤廃
休日労働
製造業は禁止(事務系は4週に1 保護規定撤廃
日)
深夜勤務
特定専門職を除いて22から5時
まで禁止
保護規定撤廃
15
そしてさらに改正(07年4月スタート)①

性差別禁止の範囲の拡大
(1)男性に対する差別も禁止
(2)禁止される差別が追加・明確化
募集・採用、配置・昇進・教育訓練、定年・解雇に加えて
降格、職種変更、雇用形態の変更、
退職勧奨、雇止め差別を禁止
(3)間接差別の禁止
○募集・採用における身長・体重・体力要件
○コース別雇用管理制度における総合職の募集・採用
における全国転勤要件
○昇進における転勤経験要件
16
そしてさらに改正(07年4月スタート)②

妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止
(1)妊娠・出産・産休取得に加えて、その他省令で定める理由
(母性保護措置等)による解雇その他不利益取扱いの禁止
(2)妊娠中・産後1年以内の解雇の無効
事業主が妊娠等を理由とする解雇でないことを証明しない限
り、無効。

セクシュアル・ハラスメント対策を強化
男性に対するセクシュアル・ハラスメントも対象
17
アメリカの場合
 公民権法第7編(1964)--性差別禁止
人種、皮膚の色、宗教、性、または出身国による
差別的処遇の禁止
 雇用機会均等法 Equal Employment
Opportunity Act of 1972
 適用範囲と罰則
従業員15名以上の企業
違反者には
政府契約の取り消しなどの
18
男女賃金格差是正への取り組み

アファーマティブ・アクション affirmative action
性別職務分類:男性職(高賃金)、女性職(低賃金)

コンパラブル・ワース(ペイ・エクィティ)
comparable worth ( pay equity )
19
オランダモデル

パートタイマー革命
賃金、休暇、年金などでパートの差別を禁止

ワークシェアリング
男性の時間短縮
コンビネーション・シナリオ

もう一つの男女平等
・アメリカ型平等;女性も男性並みに雇用
・オランダ型平等:男性のパート化、
女性の職場進出
20
性別役割分業!!
男は外で働き、女は家で家事に専念するべきだ
既婚女性へのアンケート調査より
年
1993
1998
2003
2008
賛成
53.6
52.3
41.1
45.0
反対
46.4
47.7
58.9
55.0
21
雇用平等への日本の課題①

女性たちの裁判闘争
住友グループ、芝信用金庫⇒昇格・昇給差別
丸子警報器のパート訴訟⇒パートの待遇改善

いくつかの企業での先進事例
ベネッセ・コーポレーション:ファミリー・フレンドリー企業
育児・介護休業制度の充実、職場内託児所、
カフェテリア・プラン(各種サービスを自由選択できる)
資生堂:女性の積極的活用(ジェンダーフリー)
営業職の女性比率向上→29.2%(02年)43.6%(04)
管理職の女性比率向上→04年現在、係長15.6%
部長 6.2%
22
雇用平等への日本の課題②

コース別管理からキャリア人事制度へ
コース別管理=女性への間接差別(厚労省2000)
基準を性差から個人のキャリア志向へ:

人事考課・査定制度の全面的な改善
考課の過程と結果の
考課結果の

労働時間の短縮
ポイントは時間外労働の削減;
週休二日制の完全実施、有給休暇の完全取得
23
雇用平等への日本の課題③

法的整備

社会的・制度的環境改善

労使関係の問題
男女共に
違反企業には罰則、コンプライアンス
・保育所、学童保育など
・高齢者介護の支援環境整備と拡充
労働組合による雇用平等への取り組み
個人の権利を擁護できる労働組合へ
24