企業の仕組み 第五回 資金調達について

企業の仕組み
第8回 会社の機関について
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委員会設置会社
「委員会設置会社」とは、監督と業務執行が制度的に 分離 した
株式会社(平成14年の商法改正の際に、導入)。取締役会と会計監
査人が設置されている株式会社は、取締役会の下部に指名委員
会・監査委員会・報酬委員会を設置する(定款に明記必要)。
株主総会
報
告
選任・解任
選任
解任
(取締役)
⇊
取締役会
・指名委員会
・監査委員会
・報酬委員会
選定・解職
報告
代表取
締役
監督(執行)
代表執行役・執行役 (業務遂行)
監査
報
告
会計監査人
①指名委員会(取締役の議案作成)
②監査委員会(業務監査と会計監査
人の選任の議案作成)
③報酬委員会(取締役と執行役の報
酬を決定)
※取締役会と執行役の兼務は可能
※取締役会と執行役の任期は1年
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執行役員(会社法上の制度ではない)
執行役員とは、確定した経営方針に沿って、業務を執行する人
執行役員登場の背景:
➀取締役(会)の 責任 軽減
(業務や事業の多様化)
② 経営効率 の向上
(管理できる範囲の限界)
③取締役(会)の少人数(小規模)化
(意思決定の簡素化・迅速化)
※会社法の348条では、株式会社の業務の執行は取締役
の職務となっているが、執行役員を設置するのは自由。
一般的に、執行役員は株式会社と雇用関係にある(支配人その他
の重要な 使用人)と言われているが、取締役(委任関係)が執行
役員を 兼任 することも問題はない。
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執行役員の選任と解任
取締役会設置会社の場合;
取締役会 が経営方針を作成し、執行役員を選任・
解任し、業務を執行する権限を執行役員に委譲する。
非取締役会設置会社の場合;
株主総会や取締役会が経営方針を作成し、それに沿っ
て、執行役員を 取締役 の過半数で承認し、権限を
委譲する。
株主総会
委任
取締役(会)
権限移譲
執行役員
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委員会設置会社の執行役
委員会設置会社では、 監督 (取締役会)と 執行 (執行役)が
制度的に分離されている。
• 取締役会は、会社の基本的事項を決定し、各種委員会の委員
や執行役を選定し、会社が適正に機能するように監督すること
に、専念。
• 取締役会は 執行役 に業務の執行を委託(権限移譲)する。
※委員会設置会社(株式会社)では、所有と経営の分離に加え
て、監督と執行も分離(経営が分割)されている。
執行役の特徴
1. 執行役は委員会設置会社の 機関 (会社法上の制度)。
2. 執行役は取締役会の決議で選任・解職( 委任 関係)。
3. 執行役は取締役会で委任された事項に関して意思決定と執行
を行う。
4. 会社法上の特別の責任を負う(一従業員ではない)。
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株主代表訴訟
• 非公開会社なら全ての株主が、会社に対し、責任追及 等の
訴えを行うことができる。
※公開会社なら6か月以上引き続き株式を保有している株主
• 訴えの種類
➀責任追及
※責任追及の対象は、発起人、設立時取締役、設
立時監査役、役員等若しくは清算人である。他
に、株主の権利行使
②利益の返還を求める訴え
※株主の権利の行使に関し、財産上の利益の供与
を受けた者への返還(会社法120条)など
③支払を求める訴え
※不公正な額で株式を取得した場合や現物出資額が
著しく不足している場合の差額(会社法212条)など
※ただし、責任追及等の訴えが当該株主若しくは第三者の不正
な利益を図り又は当該株式会社に 損害 を加えることを目
的とする場合は、この限りでない。
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株主代表訴訟の手続き
➀株主が、 会社 に対して、書面その他の法務省令で定める方
法により、責任追及等の訴えの提起を 請求
②60日以内に、会社が上記訴えを提起しない(未解決)
(※監査役設置会社では、 監査役 が判断)
③株主代表訴訟(裁判所での争い)
②’請求後、60日以内に、会社が上記訴えを提起(未解決) 。
(※監査役設置会社では、 監査役 が代表して、訴訟を行う)
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名目上の(実質の無い)取締役の責任
• 実質の無い名目上の取締役は、全株主が同意している場合には、の会社
内部に関しては責任を負わない。
代表取締役が虚偽の取引を行って、会社に多大な損失を負わせた場合
でも、会社内部に対しては実質の無い取締役は責任を負わない。なぜな
ら、そのような名目だけの取締役の委任関係が成立しているからである。
• しかし、善意の第三者に対しては、会社が責任を負う。
上記の件に関しては、被害を被った善意の第三者に対しては、名目上の
取締役も責任を負う。他に、善意の第三者に対して、名目上の取締役が
行った行為に関して、会社として責任を負う。
登記簿上 株主総会 実質(承諾)
責任の範囲
備考
実質的に活動
会社の内外に
責任を負う。
当然
原則は、会社に
責任は無いが、
信じた第三者
に対して責任を
負う。
最高裁判所
の判例(善意
の第三者に
は、取締役の
義務は有して
いる。)
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承認
実質ない(名目)
取締役
本人承諾
未承認(不
実の記載)
本人未承諾(怠
慢による未更新)
監査役とは(株主総会で選任)
• 監査役は、株主総会で選任される機関。会社で行われている業
務が、法令や 定款 などに違反してないかを監査する。
※監査役の業務に取締役の判断の妥当性を調査・判定することは含まれな
いが、著しく不当な件に関しては調査・判定することができる。
※例えば、ある不動産を法令や定款に従って購入した。しかし、不当に高額
で代表取締役の親族から購入していた場合は、監査の対象になりうる。
• 監査役の義務
①会社に対して、 監査報告書 を提出する義務を負う。
②社内における法令や定款違反行為を会社に報告。
③ 取締役会 への出席義務(必要に応じて、意見を表明)。
④株主総会の 議案 を調査し、法令や定款に違反等の有無
を報告。
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監査役の権限
➀取締役や会計参与およびその他の 従業員 から事業報告
を請求できる(自ら会社の業務や財産を調査できる)。
② 子会社 に対しても➀と同様のことができる。
③取締役会を招集できる。
④取締役に対して 訴訟 を行う場合、監査役が会社を代表す
る。
社外 監査役とは、株式会社の監査役であって、過去に当該株
式会社又はその子会社の取締役、会計参与(会計参与が法
人であるときは、その職務を行うべき社員)若しくは執行役又
は支配人その他の使用人となったことがないものをいう。(会
社法2条16項)
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監査役会
監査役会は 3 人以上の監査役から構成される合議体であり、その
過半数は 社外監査役 でなければならない。
監査役会の設置が義務付けられている株式会社の2条件
➀ 大会社 (5億円以上の資本あるいは200億円以上の負債を
有している株式会社)、
かつ
② 公開 会社(譲渡制限の無い株式発行している)
監査役会の職務(会社法390条2項で規定)
➀監査報告の作成
② 常勤 の監査役の選定及び解職
③監査の方針、監査役会設置会社の業務及び財産の状況の調
査の方法その他の監査役の職務の執行に関する事項の決定
※第三号の決定は、監査役の権限の行使を妨げることはできない。
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監査役会の運営
監査役会は必要に応じて開催される。
監査役会の招集権は、各監査役が持つ。
招集したい場合は、➀事前に全監査役に通知
あるいは
②監査役 全員 の同意
が必要となる。
監査役会の議決は、全監査役の過半数で承認される。
※取締役と同様に
委任
はできない
取締役会の議事は議事録(参加した監査役は押印または署名)を
作成し、10年間本店に保管しなければならない。
※株主(親会社株主含む)と債権者は裁判所の許可を得られれば、議
事録の閲覧・謄写を請求できる(許可をされない場合もある)。
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会計参与とは(設置は任意)
会計参与の職務
取締役 と共同して、計算書類及びその附属明細書、臨時計算書
類並びに連結計算書類を作成する(会計参与報告作成)。
※委員会設置会社の場合は「取締役」とあるのは「
執行役
」になる。
会計参与の権限
①閲覧及び謄写
・ 会計帳簿 又はこれに関する書面
・会計帳簿又はこれに関する資料が電磁的記録をもって作成され
ているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令
で定める方法により表示したもの
②取締役及び支配人その他の使用人に対して会計に関する報告
を求めることができる
③会計参与設置会社の 子会社 に対して会計に関する報告を
求め、又は業務及び財産の状況の調査をすることができる。
※子会社は、正当な理由があるときは、報告又は調査を拒むことができる。
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会計監査人とは
・会計監査人の設置が義務付けられているのは、 大会社 と委員
会設置会社である。
・会計監査は専門的な知識と経験が必要となるので、公認会計士
または 監査法人 となる。
・会計監査人の職務
①計算書類と付属明細書などに監査する。
②会計監査報告を作成する。
・会計監査人の権限(会計参与とほぼ同じ)
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