朝礼 - 半熟Doctor

リビング・ウィルについて
(嚥下不能時の方針について)
2014年1月20日
山陽病院 内科 辰川 匡史
リビング・ウィル
Living Willとは
Living=生きる Will=意志 のことです。
「生きたい」という意志は当然ほとんどの方にあ
ります。
問題は、
 生きたいという意志表示が明確にできない
 苦痛の多い治療と引き換えに延命をしなければならない
場合です。
ごはんが食べられなくなっ
たらどうするか?
嚥下とは
ものを食べ、のみこむこと。
食べたものは食道に入り、 空
気は喉頭〜気管に入る。
我々は咽頭〜喉頭の働きにより
無意識にこの高度な作業を行っ
ている。
咽頭・喉頭の働きが鈍ってくる
とこれらの機能が失われる
嚥下困難の原因となる疾患
脳梗塞・脳卒中など
神経変性疾患
認知症
意識レベルの低下など
加齢や衰弱などによる筋力低下
喉頭がん・食道がんなど
嚥下困難の場合の選択肢
嚥下訓練リハビリを行い、嚥下機能の回復を
待する
期
 脳卒中などで急に嚥下機能が低下した場合などは有効であるが、
認知症などで徐々に機能低下した場合、日々の食事介助がリハビ
リも兼ねているため、リハビリの上乗せ効果は薄い
経腸栄養 …嚥下できないため、咽頭より下部の
消化管に直接栄養を入れる
 経鼻チューブ
 胃瘻の作成
自然な看取り …
ものがのみ込めない=寿命と考える
も
経管をするかどうか?
メリット
経管治療>さしあたり食事をとれないで体が
消耗するのは避けられる。
デメリット
不自然
苦痛はそれなりにあり。
誤嚥を完全に予防はできない(口腔内の菌は
気管に入る)<もちろん軽減は期待できる
経腸栄養の比較
経鼻チューブ
胃瘻
メリット
すぐ開始できる
経口摂取との併用可能
一旦作成すると トラブルのリ
スクは少なく簡単
介護・在宅でも可能
デメリット
経口とは両立できない
1週間ごとの交換
自己抜去の可能性
誤嚥などのリスクはあり
食道潰瘍などができる
(感覚があれば)おそらく苦痛
はある
内視鏡を行い、小手術が必要
(感染・合併症リスク)
半年ごとに交換
食道裂孔ヘルニアなどがある場
合、逆流による誤嚥はありうる
ご飯を食べられない…点滴は?
ごはんを食べられない状況に対して、脱水や電解質(塩
分など)の補正に点滴を行うことは可能ですが、点滴に
は栄養はそれほど多量には含まれていません。(500ml
で多くても150カロリー)
従って栄養を確保するという意味では点滴は無意味です
高濃度のカロリーを注入する場合、TPN(中心静脈栄養)
といって太い血管にカテーテルを注入して行う治療があ
りますが、消化管機能に異常がない場合は適応がなく、
高齢・認知や脳梗塞などで生じた嚥下困難に関しては適
応ではないとされています(ASPEN:アメリカ静脈経腸栄養学
会ガイドライン 1986-)