医療講演会 本当は怖~い脂肪肝 男性の3人に1人、女性の5人に1人と言われる国民病。 『脂肪肝なんて脂肪が少し多いだけ。大した問題じゃないよ』 本当にそうなのでしょうか? 近年、そう軽く考えるべきではない、ということがわかってきまし た。肝硬変(かんこうへん)、その後には肝臓癌(かんぞうがん) なんて事も・・・。 今回は、脂肪肝に隠された怖い病気についてわかりやすく説明いた します。 講師:あさお診療所 医師 中村 努 日時:2011年11月22日(火) 15:00~16:30 場所:あさお診療所 2階組合員ルーム 1 肝臓とは? 最大の臓器 ム 重さ1200~1400グラ 我慢強い臓器、沈黙の臓器と言われている。 肝臓病 肝硬変とは、肝臓が「線維化」し硬くなった状態。 硬くなるほど機能が低下する。この状態になると、 元の健康な状態に戻るのは難しい。 2 肝臓病 肝臓は沈黙の臓器といわれています。それは、 肝臓は再生能力・代償能力に優れ、ダメージを 受けても残った正常細胞が余分に働き、機能を 維持するからです。 そのため肝臓に異常があっても気付かず、異常 に気付いたときには病気がかなり進んでいるこ とがあります。定期的に健診を受け、肝臓の数 値をチェックしながら、脂肪肝になる前にきち んとした食事・生活習慣を心がける事が大切! 3 肝臓病の症状 体が疲れやすくなった 。 何を食べてもおいしくなくなった。 ①手のひらが赤い…。くも状血管腫。 赤い斑点。肝機能が低下すると、余分な女性ホルモン を分解できなくなる。 それが手の毛細血管に入り込み血管を拡張する。 ②足がむくむ… 肝機能が低下すると、水分が血管の外へ漏れ出す。 それが足に溜まる。 ③尿の色が赤茶色か黒っぽくなる。 4 Q1.脂肪肝とは? Q2.脂肪肝の原因は何? Q3.脂肪肝は進行するとどうなる? Q4.脂肪肝にならないためには? 5 A1 肝細胞に、脂肪が溜まりすぎている状態を 「脂肪肝」といいます。 肝臓は色々な働きをしていますが、その中の1つにエ ネ ルギーを貯蔵しておく機能があります。健康な肝臓に は、 エネルギー源として、肝細胞の3~5%に脂肪が蓄え られ ています。ところが脂肪肝の場合、肝細胞の30%以 上に 脂肪が蓄えられているのです。 こうなると、細胞内にたまり過ぎた脂肪のために、肝細 6 A2 原因は飲酒、肥満、糖尿病など様々です。 脂肪肝の原因がアルコールの場合を「アルコール性脂 肝」と いいます。アルコールを分解する際に中性脂肪ができや すく、 毎日お酒を飲むことで中性脂肪が肝臓にたまっていくた めで す。 日本酒では3合以上、ビールでは大ビン3本以上を 毎日 飲酒すると肝臓に負担がかかります。脂肪肝にならない ため にも休肝日を設けて肝臓を休ませてあげる必要がありま す。 7 A3 『脂肪肝→肝炎→肝硬変→肝がん』と進行する事もあります。 アル コール性脂肪肝の状態でお酒を飲み続けると、たまった中性 脂肪が 肝細胞を圧迫し肝細胞が破壊され、炎症を起こします。これ がアル コール性脂肪性肝炎(ASH:アッシュ)です。ASHがもっとひ どくなる と肝硬変や肝がんに移行する場合があります。また非アル コール性 脂肪肝になっている人もASHと同様に中性脂肪により肝細胞が 破壊 されてしまい、10%が非アコール性脂肪性肝炎(NASH: 8 ナッシュ)と A4 生活習慣の改善を第一に考えましょう。 脂肪肝は簡単になりやすい代わりに、軽い脂肪肝 なら 比較的簡単に改善します。脂肪肝をこじらせて肝 炎、 肝硬変になる前に自分で病気の予防に努めましょ う。 肝臓は症状が非常に重くならないと痛みがでない 「沈 黙の臓器」といわれています。だからこそNASH 9 アルコールが原因の場合 適正飲酒 酒に強いか弱いか自分の体質を知る。 酒に弱い体質なら決して無理に飲まない。 強い体質でも1日1合程度に 週に2日は休肝日をつくる。 強い酒は薄めて飲む。 ゆっくりと時間をかけて飲む。 つまみと一緒に飲む。 薬と一緒に飲まない。 女性は男性の半分の量とする。 休みでも朝酒をしない。 10 肥満・糖尿病が原因の場合 標準体重当たり1日総エネルギーとして25~35 kcal/kgを目安とし、タンパク質は1~1.5g/k gを確保して脂肪は総カロリーの20%以下に抑え ることが推奨されている。糖質はなるべく穀類から 摂取し嗜好品からの単純糖質(ショ糖、ブドウ糖) は避けるようにする。 貯蔵脂肪の燃焼を誘導するには継続した20分以上 の有酸素運動が必要とされている。1日に30~4 0分、週3~4回以上の、ジョギング、ウォーキン グ、スイミングのような全身の筋肉を使用する運動 が推奨されている。 しかし、単発で数分でもやらないよりはやったほう 11 つい十数年前までは脂肪肝は肝硬変などに進行 することはなく予後の良い疾患と考えられてい てました。脂肪肝に対する様々な薬物療法の報 告はありますが、どれも際立った効果を示すも のはありません。脂肪肝は肥満を背景とする生 活習慣病なので、重要なのは運動・食事療法で す。脂肪肝の患者さんは肥満の他、脂質異常症 や糖尿病、高血圧などを合併している場合も多 く、これらの治療薬のなかで脂肪肝にも効果が 期待できる薬剤を使用しながら治療をすすめる 場合もあります。あさお診療所では慢性疾患の 生活指導を実施していますので、ぜひご相談く ださい。 12
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