スライド 1

2.2 B.問題構造の把握
4402048 長島 健悟
(1) スキーマ

システムの概念化は、「問題構造の把握」と「代替
案の生成」の2つから成り立つ。

この2つの中で、「問題構造の把握」は、スキーマ
と呼ばれる概念と関係がある。

スキーマは構造化された知識の単位で、個々の具
体的事例を一般化したもの。
スキーマの例

ある人が「自動車」という言葉を聞いて、「タイヤが
4個あり、ハンドルがあって…」と思い浮かべたと
すると、それがその人の持つ自動車に対するス
キーマになる。
スキーマの活性化

人間は状況に応じて各種のスキーマを活性化さ
せることによって様々な認知活動を行っている。
スキーマの活性化の例

ある1人の数学が非常に得意な高校生と話をして
いて、会話が電灯の話題に移ったときに、その高
校生は「明かりが無くても夜中に本が読める」と
言った。


これはそのままでは意味不明で混乱するかもしれ
ない。
しかし、この高校生が全盲であると言われたら、点
字に関するスキーマが活性化されて、この高校生
の発言は納得がいくものになる。
問題構造を把握するためには

会話や文章の理解に限らず、
問題構造の把握のためには、スキーマを活性さ
せるか、新しく作り出す必要がある。
(2) 要素の認識

新たにシステムを認識しようとするとき、まずはシ
ステムを構成する要素を抽出することを考える。


この要素は、ある概念を表しているので、問題解決
に関係する要素をコンセプトと呼ぶことにする。
コンセプト抽出には、問題解決を行う人間が持っ
ている内的知識と、それ以外の外的支援を利用
する方法がある。
内的知識に頼る方法
内的知識からのコンセプト抽出の技法としては、
KJ法が代表的。
 KJ法とは




問題に関係があると思われるコンセプト(キーワー
ド)を列挙し、それらをいくつかの集合にまとめる。
類似したコンセプトからなる集合は一般化された1
つのコンセプトを表すので、各集合をさらに少数個
の集合にまとめてより一般化されたコンセプトを得
る。
KJ法は、既にある知識からスキーマを意識化させ
て明示する技法である。
外的支援を利用する方法
「道具」又は、「他人」を利用する。
 「道具」を利用する場合、文献調査やデータベー
スによる情報検索がある。



これらを有効に活用するためには、個人の内的知
識が大きく関与する。
「他人」を利用する場合、専門家あるいは関係者
よりのインタビューやアンケート、問題解決に携わ
るメンバー間でのディスカッションがある。
コンセプトをグループで抽出する方法
ブレインストーミングがある。
 ブレインストーミングとは、メンバー間で相互に刺
激しあいながらコンセプトを列挙するような方法
で、抽出作業中には、決して批判をしないという点
が肝心。


KJ法やブレインストーミングがうまく機能した場
合、メンバー全体の内的知識がメンバー個人の内
的知識に還元される。
(3) 相互関係の認識
① 2つのコンセプト間の因果理解

2つのコンセプト間の因果理解


2つのコンセプト間の関係に何らかの傾向が読み
取れるとき、そこには相関関係があるという。
コンセプトの状態や内容を定量化できる場合、散
布図や統計解析、多変量解析によって相関関係を
把握することが出来る。
相関関係の把握

相関関係を把握する例として、以下のような例が
ある。

発病の相対リスクと失業率
相関関係の把握

散布図を見ると発病の相対リスクと失業率には相
関関係があるといえなくもない。


この散布図のように、一方が増加するともう一方が
減少するような関係を負の相関といい、逆に一方
が増加するともう一方が増加するような関係を正
の相関という。
ただし、この関係は統計資料に基づくものであっ
て、因果関係があると明言するものではない。
因果関係の認識

原因Aによって結果Bが生じるという因果関係を人
間が直感的に認識するとき、通常以下の図のよう
な3つの条件が揃っている。
3つの条件
Aが生起するときは必ずBが生起する。
 Aの生起が時間的にBの生起に先行する。
 AとBとの内容や機能的な距離が近い。

工学や理学で因果関係を取り扱う場合
必ず前述の直感的な因果理解の条件には当ては
まるとは言えない。
 例:ニュートン力学の運動の法則



(a)質量に力(原因)を加えると加速度(結果)が生ず
る。
(b)「質点が円運動するためには、回転の中心方向
に加速度(原因)を持たねばならず、その結果それ
に見合う求心力が作用する(結果)」と考えると原因
と結果があるが、実時間上では同時に起こってい
る。
力と加速度の因果関係
つまり…

因果関係に双方向性が成立するような場合、解
釈が容易な方向へ因果関係の方向を定めてい
る。
因果理解は、必ずしも唯一客観的なものではな
い。
(3) 相互関係の認識
②全体の因果理解

全体の因果理解


個々のコンセプト間の因果関係をまとめることに
よって、全体の因果関係が得られる。
全体の因果関係をどのように表現するかで、因果
理解の難易度が異なってくるため、人間の視覚に
訴えるような表現が望ましい。
グラフによる表現が適している
各コンセプトを節(ノード)で表し、関係のあるコンセ
プト間を弧(アーク又はリンク)で繋ぐ。
反射律と対称律
コンセプトaがコンセプトbに対してRという関係にあるこ
とを
aRb
と表すことにする。
aRa
が成り立つ場合、Rは反射律を満たすという。
Rには、異なるa、bに対して次の対称律
aRb
→
bRa
を満たすものと、満たさないものがある。
グラフでの表現
因果関係は、対称律を必ずしも満たさない方向性
のある関係で、グラフの中では、原因から結果へ
の流れをアークの矢印の向きで表現する。 このよ
うなグラフを有向グラフと呼ぶ。
 相関関係、同値・相当、合同・相似といった関係は、
対称律を満たし、そのような方向性の無い関係を
グラフの中では無向グラフで表現する。

推移律

因果関係をはじめとするいくつかの関係は、次の
推移律を満たす
aRb∧bRc → aRc

推移律が満たされる場合、2つのコンセプト間に関
係があるといっても、間に他のコンセプトが介在す
る間接的な関係なのか、介在しない直接的な関
係なのかの判断が必要となる。
直接的及び間接的な関係が混在した有向グラフから、ど
うすれば直接的な関係を抜き出せるか?
関係表示行列を用いた間接的な因果関係の整理
N個のコンセプトci (i=1, …, N)があるして、ciからcjに対して関係
が認められるなら、行列V(N×N)の(i, j)成分を1とし、認められ
ないなら0とする。 このような行列表現を関係表示行列という。
 図の(a-1)の有効グラフに対する関係表示行列は

となり、この行列により2→1→4→3という関係になることが分か
る。
このような原理に基づき、因果関係を階層的に整理する方法
にISM(Interpretive Structural Modelling)がある。
ループと設計問題

図の(b-1)のグラフの関係表示行列は









1
V1
1
1
0
0
0
0
1
1
1
1
1
1
1
1
となり、1, 3, 4の部分が同等に位置し、この部分は循環し
て元に戻るようなグラフになる、この場合をループと呼
ぶ。
このようなループでは、直接的関係が特定できないため、
不良設計問題の一つである。
設計問題での設計パラメータ間の先決順序の把握、計画
問題での作業単位間の処理順序の把握など、ISMの工学
への応用範囲は広い。
その他のコンセプト間関係の把握方法
関係表示行列では、関係がある(=1)、関係がない
(=0)という2値的な把握だったが、関係に重み付け
を行う方法があり、その延長として3.1節D項の(2)
で示すファジィ集合がある。
 因果関係を正負符号付きの有向グラフで表現し
たものに認知構造図がある。

関係の重み付けの例と認知構造図の例
(4) 階層構造の認識
① 階層化

コンセプトの階層化には、上位から下位へと分析
を進めるトップダウン的な方法と、下位から上位
へと総合化を進めていくボトムアップ的な方法が
ある。


上位とは、より根元的/全体的であることを意味する。
下位とは、より末梢的/部分的であることを意味する。
階層構造の表現
典型的な階層構造: ループを含まない木構造の
グラフ。
 複雑なループを持つ場合: 階層的表現をしようと
することは適切でない。
 ループが小規模な場合: 1つのループを構成する
各コンセプトを同じ階層と見なして階層化できる。

(4) 階層構造の認識
② 分類

分類: 複数個の対象を共通する性質に分けるこ
と。

意味/機能による分類の例
[航空機], [鳥], [船舶]を2つのコンセプトに分類する。
[航空機]: [大気] 中を [浮揚] かつ [推進] する [人工物]
[鳥]:
[大気] 中を [浮揚] かつ [推進] する [生物]
[船舶]: [水] 中を [浮揚] かつ [推進] する [人工物]
これを分類する。
分類の例

[大気]というコンセプトを共通性として重視したら、[航空
機]と[鳥]が類似したコンセプトになる。
 分類に基づいて階層化を行う場合、コンセプト間の上位
下位は包含関係を表す。



[航空機∪船舶]ならば、[流体中を浮揚かつ推進する人工
物]という上位のコンセプトに包含される。
このとき、航空機と船舶は〔流体の種類〕によって分けら
れる。 このようなコンセプトを特徴づける性質を属性と呼
ぶ。
また、この流体の種類について、航空機は{空気}、船舶
は{水}という値を持つ。 この値のことを属性値と呼ぶ。
(4) 階層構造の認識
③ クラスタリング

クラスタリング:
類似性を評価するための規範を定め、それに基
づいてコンセプト全体を似たもの同士の集合(クラ
スター)に分けること。
階層的クラスター分析

まず、クラスタリングの対象となるコンセプト全体
に対し、属性の枠組みを設定する。

ここでは、〔流体の種類〕, 〔浮揚方式〕, 〔推進方式〕の3
種類を設定する。
階層的クラスター分析
階層的クラスター分析では、規範として対象間の
距離を表す非類似度と呼ばれる尺度を用いる。
 ここでは、2つのコンセプトp, q間の非類似度とし
て、重み付ユークリッド距離rpqを用いる。

rpq 
m


i

w
i1


iq 

xip  x
2
階層的クラスター分析

すべてのコンセプト間について非類似度を求め、
その非類似度が最も小さい(最も似ている)組み合
わせを1番目のクラスターCL1とする。

上の表(a)ではw1=5, w2=3, w3=1として非類似度を求
めている。
階層的クラスター分析

ここでは、クラスター間の非類似度については2つ
のクラスターに属するコンセプト間の非類似度の
最大値を取る最大距離法を用いる(上の表(b)参
照)。

階層クラスター分析では、推移律をベースとした
ISMによる階層化と違い、非類似度の大小として
とらえる。
階層的クラスター分析

この例でのクラスタリングの結果は、樹系図(デン
ドログラム)として上の図のように表される。