ブラック企業について

ブラック企業について
中京大学
増田ゼミ A班
Contents
Part1. ブラック企業とは何か
Part2. ブラック企業のやり方
Part3. ブラック企業が成り立つ条件
Part4. ブラック企業による影響
ブラック企業とは
• ネットスラング
• IT企業の35歳定年に対する不満が始まり
• ブラック企業の本や裁判をマスコミが
取り上げたことから一般にも認知される
マスコミの定義
• 労働者を酷使・選別し、使い捨てにする
企業
– (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵2013」
• 労働条件や就業環境が劣悪で、従業員に
過重な負担を強いる企業や法人
– 小学館
• 違法または悪質な労働条件で働かせる
会社
– 朝日新聞掲載「キーワード」
ブラック企業大賞企画委員会の定義
ブラック企業とは
① 労働法やその他の法令に抵触、
またはその可能性があるグレーゾーンな
条件での労働を、意図的・恣意的に
従業員に強いている企業
② パワーハラスメントなどの暴力的強制を
常套手段として従業員に強いる体質を
持つ企業や法人(学校法人、社会福祉法人、
官公庁や公営企業、医療機関なども含む)
ブラック企業大賞における
ブラック企業を見極める指標
•
•
•
•
•
•
•
•
長時間労働
セクハラ・パワハラ
低賃金
コンプライアンス違反
育休・産休などの制度の不備
労組への敵対度
派遣依存度
残業代未払い
※ただし多くのブラック企業が上記の問題を複合的に
持っているので、判断する際も総合的に判断する
ブラック企業大賞
2013年
大賞:ワタミフードサービス株式会社
理由:過労死者が出た際の対応の悪さ
理由:理念などの社員を酷使する姿勢
2014年
大賞:株式会社ヤマダ電機
理由:過労によって自殺者が出た
理由:職場環境の悪さ
ちなみに
• 授賞式に参加した
ノミネート企業はなし
• ブラック企業大賞企画委員会を訴えた
ノミネート企業もなし
• ネットでは話題になるが
認知度はそれほど高くはない
結論
ブラック企業とは
• 労働条件が悪い
– 入社後に詳しい雇用条件を知らせる
• 就業環境が悪い
– セクハラ・パワハラが横行している
• 働きに対するリターンが小さい
などの条件を満たす企業
Contents
Part1. ブラック企業とは何か
Part2. ブラック企業のやり方
Part3. ブラック企業が成り立つ条件
Part4. ブラック企業による影響
ブラック企業のコスト削減
• 給料を少しでも安くする
– 残業代を払わない
– 契約の際に内訳を曖昧にする
• 要らない労働者を辞めさせる
– 解雇ではなく
企業に都合の良い自己都合退職
固定残業代制
本来の固定残業代制
• 基本給○万
(残業代○万を含む)
• 残業しなくても
賃金は保障
• 固定分を超える
残業代は支払う
2014/10/28
ブラック企業の場合
• 固定分の労働を
強いる
• 固定分を超えても
その分は支払わない
これに関連した脱法指導を
行う法律家も存在
http://bylines.news.yahoo.co.jp/shimasakichikara/20140721-00037582/
残業代不払いを正当化
サービス業の「名ばかり管理職」
労働基準法上、
管理監督者に残業代を支払わなくてもいい
経験の少ない労働者を半強制的に管理職へ
管理職であることのやりがいや
責任感に漬け込み、
残業代を支払わず長時間働かせる
2014/10/16
http://toyokeizai.net/articles/-/17634?page=3
SHOP99
• 20代男性が入社1年足らずで店長に昇格
• しかし、その4ヶ月後に鬱病で休職
• 慣れない仕事に加え、売り上げの管理や
アルバイトの労務管理まで一人で行う
• 24時間営業のため、昼夜問わず店に駆けつけ、
酷い時には4日間で80時間働いた
• 店長という理由で残業代は支払われず
労働者を簡単には辞めさせない
• 「後続が決まるまで勤めなさい」
• 「あなたを雇う際の手間の分は働いてもらう」
など様々な理由をつけ会社に縛る
また、見せしめや仕返しをほのめかすことも
その後、労働者が身体を壊せば切り捨てる
加えて、自己都合退職を強要
見せしめ・仕返しの例
• 就職手続きを進めない
各種社会保険の手続きを行わない
そのため、失業中の給付金を受け取れず、
再就職にも支障をきたす
• 最終月の給料を支払わない
会社に行ける状態ではないのに、
給料は手渡しと言い、支払いを免れようとする
• 損害賠償の請求
不当な理由で無断欠勤の損害賠償を請求される
退職・辞職・解雇はこう違う
離職形態
離職の経過
法規制
会社都合退職
使用者から申し出た
合意解約
無規制。
若干の訴訟リスク
自己都合退職
労働者から申し出た
合意解約
無規制。雇用保険上、
労働者への制裁
辞職
労働者からの
一方的解約
無規制
解雇
使用者からの
一方的解約
強い規制
退職
自己都合退職に仕向ける
退職勧奨がしつこい・暴力的な場合
退職強要とされる
それを回避するソフトな退職強要
• 「この仕事には向いていないと思う」
• 「私だったら採らない」
など退職を求めているというニュアンスを
伝え続けることで、職場に居づらくする
辞めさせる技術
• カウンセリング方式
カウンセリングを通じて自己の内面を否定
• 特殊な待遇の付与
みなし社員など、辞めることを前提とした
呼称を設ける
例:「退職かみなし社員かを選びなさい」
• ノルマと選択
過剰なノルマを課し、達成・非達成を労働者の
能力や業務方法の選択の問題に落とし込む
Contents
Part1. ブラック企業とは何か
Part2. ブラック企業のやり方
Part3. ブラック企業が成り立つ条件
Part4. ブラック企業による影響
ブラック企業が成り立つには
社会問題になっている今、
これらが揃うことで
ブラック企業は利益を
ブラック企業は
生み出している
成り立つのだろうか?
売り上げはどうなるか
ブラック企業と広く認識されると
全体の売上は落ちる
例:すき家の2013年5月の全ての既存店の
売上前年比8.8%減
従業員不足による休業が原因
消費者需要は一定だが、労働者供給が減少
http://toyokeizai.net/articles/-/40020 2014/10/16
消費者需要は低下しないか
ブラック企業と騒がれても営業している
店舗の売上が大幅に減少するわけではない
例:すき家の2014年5月既存店売上8%増
一時休業の店舗などを売上の基準から省
いている
→労働者供給は集まらないが
消費者需要はそれほど減っていない
http://toyokeizai.net/articles/-/40020 2014/10/16
イメージ悪化による例外
ワタミは今年度中に国内合わせ102店舗閉鎖
居酒屋業界の客数減少から出した想定を
上回る不採算の店舗が増えたのが原因
介護や宅食においても売上が振るわず
→あまりに悪いイメージが定着すると
消費者も敬遠するようになる
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141111/k10013125451000.html
2014/11/13
今後も人件費のカットは可能か
ブラック企業というレッテルを張られると
労働環境の改善が必要になる
例:一店舗ごとの従業員の割合の増加
給料を上げる
元々の、人件費を削ることで利益を
生み出す経営が崩れる
→赤字など経営の悪化につながる
労働者はどのように集まっていたか
• 情報の非対称性
– 情報収集能力の劣る人が入ってしまう
• 使い捨て目的の大量の内定者
– 就職がうまくいかずとびついてしまう
• やりがいを求めて
– 耳触りの良い言葉に惹かれてしまう
名ばかり管理職などはこれにあたる
ブラック企業とわかっていて働くか
• 雇用の流動性が低い
– 日本型雇用
• 終身雇用、定年退職、新卒主義など
• 転職先もブラック企業の可能性
– 労働者の能力にもよるが、
日本の雇用形態では
ホワイト企業への転職は難しい
→ブラック企業とわかっていても
そこから抜け出すのは容易ではない
今後も労働者は集まるか
• 情報収集の容易さ
– ネットのみならず、
今ではたくさんの情報が手に入る
• 新卒就活生が慎重に
– 大学生向けのブラック企業対策講座
– 講義などで労働法の基礎を学ぶ
• 人手不足
– 少子化も相まって労働者供給自体の低下
Contents
Part1. ブラック企業とは何か
Part2. ブラック企業のやり方
Part3. ブラック企業が成り立つ条件
Part4. ブラック企業による影響
ブラック企業が日本社会に与える影響
• コストを社会へ転嫁
– 鬱病に罹患した際の医療費などのコスト
– 若年過労死のコスト
– 転職のコスト
– 労使の信頼関係を破壊したことのコスト
– 少子化のコスト
鬱病に罹患した際の医療費などのコスト
実際
結果
業務に起因する
ブラック企業による
精神疾患も、
労災保険ではなく
疾病の治療費は
国民健康保険などで
私たち社会の成員が
治療される
労災と認められると、
負担している
66ヶ月間(治療期間中)の
8割の給与保障と、
ことになる
治療費が全額支給される
本来
業務上起きた
精神疾患は
労働災害であり、
責任は原則企業にある
現金給付受給者状況調査(平成25年)
表4
傷病別
件数の構成割合
(%)
平成7年 平成10年 平成15年 平成20年 平成21年 平成22年 平成23年 平成24年 平成25年
総数
100.00
100.00
100.00
100.00
100.00
100.00
100.00
100.00
100.00
感染症及び寄生虫症
3.21
2.98
2.89
2.03
1.81
1.97
1.74
1.72
1.57
新生物
14.79
18.02
20.59
21.09
20.66
20.13
19.82
20.15
20.40
血液及び造血器の疾患並びに免疫機構の障害
0.69
0.72
0.41
0.32
0.36
0.34
0.36
0.38
0.35
内分泌,栄養及び代謝疾患
3.36
3.15
2.61
1.98
2.18
2.11
2.00
1.89
1.89
精神及び行動の障害
4.45
5.12
10.14
21.46
23.94
25.64
26.31
25.55
25.67
神経系の疾患
3.28
3.51
4.41
4.13
4.26
4.21
4.31
4.27
4.06
眼及び付属器の疾患
1.26
1.18
1.31
1.11
1.10
1.10
1.09
1.08
1.03
耳及び乳様突起の疾患
0.64
0.67
0.66
0.55
0.59
0.62
0.56
0.69
0.66
循環器系の疾患
15.24
15.86
15.24
13.45
12.50
12.19
11.80
11.56
11.54
呼吸器系の疾患
4.20
4.04
3.16
3.62
2.30
2.03
1.99
2.19
1.93
消化器系の疾患
14.64
11.19
7.40
4.83
4.80
4.29
4.39
4.24
4.23
皮膚及び皮下組織の疾患
1.24
1.23
1.03
0.69
0.78
0.72
0.71
0.71
0.74
筋骨格系及び結合組織の疾患
15.00
14.45
13.36
11.22
11.29
11.00
11.06
11.00
11.14
腎尿路生殖器系の疾患
3.21
3.06
2.55
1.98
1.95
2.03
1.90
2.01
2.08
妊娠,分娩及び産じょく
1.60
1.77
2.41
2.66
2.92
3.10
3.46
3.63
3.93
周産期に発生した病態
0.02
0.00
0.01
0.02
0.01
0.01
0.01
0.01
0.01
先天奇形,変形及び染色体異常
0.80
0.76
0.68
0.26
0.26
0.29
0.25
0.27
0.29
症状,徴候及び異常臨床所見・異常検査所見で他に分類されないもの
2.12
1.91
1.49
0.93
1.03
0.98
0.95
1.04
1.03
10.24
10.38
9.63
7.68
7.24
7.25
7.28
7.61
7.45
損傷,中毒及びその他の外因の影響
全国健康保険協会管掌健康保険 現金給付受給者状況調査報告
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/honbu/cat740/2607/260711/260711001.pdf
2014/11/26
現金給付受給者状況調査(平成25年)
精神及び行動の障害
(%)
26.31%
30.00
25.67%
25.00
20.00
15.00
10.00
4.45%
5.00
-
平成7年
平成10年
平成15年
平成20年
平成21年
平成22年
平成23年
平成24年
平成25年
グラフから
• 平成15年には 10.14% と 10% を超える
このあたりから急激に上昇
• 同時期に話題になりだした
ブラック企業もこれに関係?
現金給付受給者状況調査(平成25年)
図3 年齢階級別、傷病別の件数割合
100%
90%
80%
70%
60%
40%
感染症・寄生虫症
新生物
精神及び行動の傷害
件
数
50%
割
合
40%
神経系の疾患
循環器系の疾患
呼吸器系の疾患
消化器系の疾患
筋骨格系・結合組織の疾患
30%
損傷・中毒・外因の影響
その他
20%
10%
0%
15~19 20~24 25~29 30~34 35~39 40~44 45~49 50~54 55~59 60~64 65~69 70以上
年齢階級
全国健康保険協会管掌健康保険 現金給付受給者状況調査報告
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/honbu/cat740/2607/260711/260711001.pdf
2014/11/26
グラフから
• 20歳~39歳では40%を超える
• 年齢が高くなるに従い減少している
• 若者の使い捨てがこの結果に関係?
グラフのまとめ
• ブラック企業の存在は
今後の日本の未来を担う若者に
悪い影響を与えている
• 日本の未来に悪影響を与えている
政府や厚生労働省は
規制や罰則を強化すべきではないか
実際どうなのか
11月1日から過労死等防止対策推進法実施行
• 過労死等防止啓発月間(11月)
• 過労死の実態調査
• 過労死の防止の対策
• 国民に過労死防止の重要性を促す
• 事業主は防止に協力するように努める
→企業に対する規制や罰則などは特になし
2014/11/19
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000053525.html
• 労働時間の規定などといった根本的な
解決にまったくなっていない法律
→過労死防止対策など今後に期待
社会が過労死などに目を向けるように
もしくは政府や厚生労働省が
ブラック企業をそこまで脅威に思わない?
• 若者を気にせず企業に利益を優先
• 放っておいて大丈夫
今後のブラック企業
• 人件費でのコストカットは
企業のイメージが悪化するほど難しい
• 景気が良くなると労働者の需要も
増えるため労働者がうまく集まらない
ブラック企業は自然に淘汰される
→ブラック企業がうまくいくのは
景気が悪い・社会の認知度が低いとき
参考・引用文献
• ブラック企業大賞ホームページ
http://blackcorpaward.blogspot.jp
• 今野晴貴(2012)『ブラック企業―日本を食いつぶす妖怪』文藝春秋
• 全国健康保険協会管掌健康保険
現金給付受給者状況調査報告(平成25年度)
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/honbu/cat740/2607/
260711/260711001.pdf
以上で研究発表を終わります
ご清聴ありがとうございました