第1章 記述統計の復習

第1章 記述統計の復習
統計学 2007年度
Ⅰ データの種類
Ⅱ 1変量データのまとめ方
a) 特性値による記述
1) 代表値(中心的傾向)
ⅰ) 算術平均 ⅱ) メディアン ⅲ) モード ⅳ) 各代表値の特徴
2) 散布度(散らばりの傾向)
ⅰ) 分散 ⅱ) 標準偏差 ⅲ) レンジ ⅳ) 四分位偏差
b) 表・グラフによる記述
1) 棒グラフ・円グラフ・帯グラフ・折れ線グラフ
2) 度数分布表
3) ヒストグラム・度数折れ線
Ⅲ 2変量データのまとめ方
a) 特性値による記述
1) 相関係数
b) 表・グラフによる記述
1) 分割表(クロス集計表)・2次元ヒストグラム
2) 散布図
Ⅰ データの種類
10人の学生について下の表のような情報がえられた。
出席番号 学年 性別 出身地 身長
体重
家族の人数 テストの点数
1
2
男 山口県 170.3
61.2
1
60
2
3
女 山口県 155.4
48.6
4
90
3
4
男 広島県 168.2
54.2
5
80
4
2
男 福岡県 171.0
58.5
3
50
5
2
男 島根県 175.4
57.6
2
70
6
3
男 山口県 165.7
63.5
1
10
7
4
女 広島県 157.2
50.1
1
60
8
3
女 愛媛県 162.3
53.4
4
80
9
2
男 山口県 177.1
63.0
3
20
10
3
男 山口県 165.0
52.5
3
80
• 学年、性別、出身地、身長、体重、家族の人数、テストの点数
という7つの変量(変数)について、10個の観測値を持つデー
タ。
• データを分析する場合、性別や出身地などの情報はなんら
かの数値によって表されることが多い。
出席番号 学年 性別 出身地 身長
体重
家族の人数 テストの点数
1
2
1
35
170.3
61.2
1
60
2
3
2
35
155.4
48.6
4
90
3
4
1
34
168.2
54.2
5
80
4
2
1
40
171.0
58.5
3
50
5
2
1
32
175.4
57.6
2
70
6
3
1
35
165.7
63.5
1
10
7
4
2
34
157.2
50.1
1
60
8
3
2
38
162.3
53.4
4
80
9
2
1
35
177.1
63.0
3
20
10
3
1
35
165.0
52.5
3
80
この例では出身地(都道府県コード)、性別(男-1、女-2)を
数値で表している。
この表にある変量は次のように分類することができる。
質的変量(質的変数)
量的変量(量的変数)
性別、学年、出身地など
離散変量(離散変数)
家族の人数、テストの点数など
連続変量(連続変数)
身長、体重など
<質的変量と量的変量>
•
•
•
数値が量的な意味を持つ変量を量的変量、意味を持たないものを質的
変量という。
家族の人数は数値に意味があるが、性別などは数値に意味が無い。ま
た、学年は実際に大学に在学している年数とは異なり、分類のための数
値である。
質的変量か量的変量を見分けるには、「算術平均をとって意味がある
か」を考えてみる方法がある。
<離散変量と連続変量>
•
•
•
量的変量はさらに離散変量と連続変量に分類される。
離散変量は家族の人数やテストの点数など、とびとびの値しかとらない
変量である。
一方、身長や体重などは正確に測ろうとする場合、無限に細かい数値に
なる。(身長171.2865...cm)このような変量は連続変量である。
テストの点数(離散変量)
50
51
52
53
身長(連続変量)
170
171
172
173
データの種類によって、まとめ方が異なる
Ⅱ 1変量データのまとめ方
• データのまとめ方には
1. 特性値による記述(数値的表現)
2. 表・グラフによる記述(視覚的表現)
がある。
• 特性値による記述は、データの特徴をまとめ、それ
を用いた分析をおこなうことが中心的な役割である。
• 表・グラフによる記述は、データの特徴を一目でとら
えやすくするためにおこなわれる。
a) 特性値による記述
1) 代表値(中心的傾向)
• ある集団についてのデータ(例えば50人のクラスの身長な
ど)があるとき、集団の特徴をあらわすには、その中心的傾
向を示す数値が必要となる。
• 中心的傾向をあらわす数値として、
– 算術平均
– メディアン(中央値)
– モード(最頻値)
の3種類がある。
ⅰ) 算術平均
• 算術平均 = データの合計 ÷ データ数
n
x  x    xn
x 1 2

n
x
i 1
i
n
(例) 10人のテストの点数
出席番号
点数
x
1
60
2
90
3
80
4
50
5
70
6
10
7
60
8
80
9
20
10
80
60  90  80  50  70  10  60  80  20  80 600

 60
10
10
ⅱ) メディアン(中央値、中位数)
• メディアン → データを大きさの順に並べたときに
真ん中にくる値。データ数が偶数のときは真ん中の
2つの値を足して2で割る。
出席番号
点数
1
60
2
90
3
80
4
50
5
70
6
10
7
60
8
80
9
20
10
80
点数の低い順に並べ替え
10
20
50
60
60
70
80
80
80
90
真ん中
この2つを足して2で割った
(60+70)÷2=65がメディアン
ⅲ) モード(最頻値)
• モード - データの中で最も多く出てくる値。10
人のテストの点数の例では
出席番号
点数
1
60
2
90
3
80
4
50
5
70
6
10
7
60
8
80
9
20
10
80
80点が3人と最も多い。モードは80となる。
† データのとりうる値が多いとき、データの最も多く出てくるものではな
く、度数分布表にしたときに、最も度数の多い階級の階級値をモード
と考える。
ⅳ) 各代表値の特徴
• 下の表は2006年の中日と東京ヤクルトの打者別本塁打
数(上位5人)である。
中日
ウッズ
福留
アレックス
井上
森野
47
31
15
11
10
東京ヤクルト
リグス
39
岩村
32
ラミレス
26
ラロッカ
18
青木
13
算術平均
22.8 算術平均
25.6
メディアン
15 メディアン
26
データ出典:日本野球機構オフィシャルサイト(www.npb.or.jp)
• 東京ヤクルトは算術平均とメディアンの差が0.4本と小さいのに対し、
中日は7.8本もある。これは中日で本塁打を打つのは、ウッズと福留
という中心選手に限られるからである。
• 下の図は貯蓄現在高階級別の世帯分布である。
• 貯蓄現在高が算術平
均より低い世帯は全世
帯の3分の2におよぶ。
ほとんどの世帯はメ
ディアンである1052万
円ほどの貯蓄もなく、
200万円未満の貯蓄し
かない(ここがモードで
ある)。
• 少数の大金持ちと多数
の庶民がいるため、こ
のようなことがおこる。
出典:総務省統計局『家計簿から見たファミリーライフ』
(http://www.stat.go.jp/data/kakei/family/4-5.htm#1)
• 算術平均は少数の極端な値が含まれるとき、
その集団の正しい代表値とならないことがある。
メディアンの方が少数の極端な値の影響を受
けづらい。
• しかし、貯蓄現在高のように分布がゆがんでい
る場合には、メディアンでも集団の正しい代表
値とはいえない場合もある。(この場合はモー
ドが適切か)
• しかし、算術平均は数学的な扱いやすさから、
代表値として非常に良く用いられている。
算術平均をうのみにしないようにしよう!
b) 特性値による記述
1) 散布度(散らばりの傾向)
教員A
• チャイムの5分後に必ず教室
にくる。
教員B
• チャイムと同時に教室にくるこ
ともあれば、15分以上遅れる
こともある。
• 2人の教員はともに平均してチャイムの5分後に教室にくる
• 2人の教員の特徴を表現するために、平均だけでは不十分。
→散らばりの尺度の必要性
• 散らばりの傾向をあらわす尺度として
– 分散、標準偏差
– レンジ(範囲)、四分位偏差
などがある。
ⅰ) 分散
• 分散=偏差2乗和÷データ数
偏差2乗和 - 個々のデータから算術平均を引いたもの(偏
差)を2乗して、すべて加えたもの。
n
( x1  x ) 2  ( x2  x ) 2    ( xn  x ) 2
s 

n
2
 (x  x)
i 1
2
i
n
10人のテストの点数の例では
(60 60)2  (90 60)2  (80 60)2  (50 60)2  (70 60)2  (10 60)2  (60 60)2  (80 60)2  (20 60)2  (80 60)2
s 
10
2

6400
 640
10
出席番号
点数
1
60
2
90
3
80
4
50
5
70
6
10
7
60
8
80
9
20
10
80
-40
20
400 1600
400
算術平均60を引く
偏差
0
30
20
-10
10
-50
0
20
2乗を求める
0
900
400
100
100 2500
0
合計を求める
6400
データ数(10)で割る
640
分散
ⅱ) 標準偏差
• 標準偏差 ⇒ 分散の平方根
n
s  s2 
2
(
x

x
)
 i
i 1
n
10人のテストの点数の例では
s  640  25.298
ⅲ) レンジ(範囲)
• レンジ ⇒ データの取りうる範囲
レンジ = 最大値 ー 最小値
• 10人のテストの点数の例では
90 - 10=80
ⅳ) 四分位偏差
• データを大きさの順(小さい順)に並べて、4分割す
る点をq1,q2,q3とする。
• このとき、次式で定義されるQを四分位偏差という。
(q3  q1 )
Q
2
最小値
q1
q2
q3
最大値
(例)9人のテストの点数が次のようになってい
たとする。
出席番号
点数
1
60
2
90
3
80
4
50
5
6
7
8
9
70
10
60
80
20
点数の低い順に並べ替え
10
20
50
60
60
最小値
q1
q2
70
80
q3
80
90
最大値
(メディアン)
q1⇒最小値とq2(メディアン)の真ん中の値
q3⇒q2(メディアン)と最大値の真ん中の値
Q
(80  50) 30

 15
2
2
b) 表・グラフによる記述
1) 棒グラフ・円グラフ・帯グラフ・折れ線グラフ
• 集団の特徴をあらわすためには、代表値や散布度などの数
値とともに、さまざまな表やグラフが用いられる。
学年別の割合
3.5
3
20%
度数
2.5
2
40%
1.5
2年
3年
1
4年
0.5
0
1人
2人
3人
4人
5人
40%
家族の人数
• 棒グラフは、家族の人数や学年などの各変量がとる値の度
数をあらわすのに用いられる。
• 円グラフは、その度数の全体に占める割合をあらわすのに
用いられる。
年齢3階級別総人口の推移
完全失業率の推移
40%
60%
80%
100%
出典:総務省統計局『国勢調査』
2007年1月
2006年9月
2006年7月
2006年5月
2006年3月
2006年1月
2005年9月
2005年7月
2005年5月
2005年3月
2006年11月
20%
2005年11月
0%
2005年1月
2005
2004年11月
2004年1月
1990
2004年9月
0-14歳
15-64歳
65歳-
1970
2004年7月
1950
2004年5月
1930
(%)
5.2
5.0
4.8
4.6
4.4
4.2
4.0
3.8
2004年3月
年
年・
月
出典:総務省統計局『労働力調査』
• 帯グラフは、度数の割合が時間とともにどのように変化する
かなどを見るために利用される。
• 折れ線グラフは、主に時系列データ(時間の順序によって並
べたデータ)の変化を表すために利用される。
2) 度数分布表
• 質的変量および量的変量のうち離散変量は、棒グラフや円
グラフとして表すことができる。
• では、連続変量を棒グラフで表したい場合どのようにすれば
よいであろうか?そのままあらわすと下図のようになる。
身長の棒グラフ(男子)
度数
1
178
176
177
175
175
173
174
172
173
171
171
169
170
168
169
166
167
165
166
0
• このような棒グラフでは、集団の特徴がよくわからない。
• そこで、データをいくつかの階級に分け、その階級に入る度
数を表の形でまとめた度数分布表を作成する必要がある。
サッカー日本代表
対ペルー戦(2007.3.24)ベンチ入りメンバー
氏名
身長(cm ) 体重(kg)
川口 能活
180
77
川島 永嗣
185
80
西川 周作
183
79
中澤 佑二
187
78
田中 マルクス闘莉王
185
82
阿部 勇樹
177
77
水本 裕貴
183
72
中村 俊輔
178
69
橋本 英郎
173
68
羽生 直剛
167
63
加地 亮
177
73
遠藤 保仁
178
75
二川 孝広
168
63
中村 憲剛
175
66
鈴木 啓太
177
67
駒野 友一
172
76
藤本 淳吾
173
69
水野 晃樹
173
62
家長 昭博
173
70
本田 圭佑
182
74
高原 直泰
180
77
巻 誠一郎
184
81
佐藤 寿人
170
67
松橋 章太
171
65
矢野 貴章
185
74
階
級
以上
165
170
175
180
185
計
未満
-
170
175
180
185
190
階級値
167.5
172.5
177.5
182.5
187.5
度数
2
7
6
6
4
25
† その階級を代表する値
を階級値という。階級の上
限と下限をたして2で割った
値が用いられることが多い。
• 度数分布表の階級の幅は原則として均一にする。ただし、貯
蓄現在高のようにすべて均一にすることによって、度数が極
めて小さくなる場合には、一部の階級幅を広げることもある。
† 質的変量や離散変量
の場合は、とりうる値1つ
1つが階級となる。
ただし、年収・貯蓄のよう
にとり得る値が多い場合
には、連続変量と同様に
階級を設定する。
<度数分布表からの算術平均、分散の導出>
• 度数分布表にまとめられたデータについて、算術平均と分散
を求めることができる。(下のデータが入手できず、度数分布
表のみ入手できた場合に、この方法を使う。)
階級値
y1
y2
…
ym
度数
f1
f2
…
fm
• 上のような度数分布表があったとする。
このとき、
算術平均=(度数×階級値)の総和÷度数の総和
として求められる。
m
f y  f 2 y2    f m ym
y 1 1

f1  f 2    f m
fy
i 1
m
i
f
i 1
i
i
分散={(階級値-算術平均)2×度数}の総和÷度数の総和
として求められる。
m
f1 ( y1  y ) 2  f 2 ( y2  y ) 2    f m ( ym  y ) 2
s 

f1  f 2    f m
2

i 1
f i ( yi  y ) 2
m
f
i 1
i
計算のためには、
m
s 
2
fy
i 1
m
i
f
i 1
2
i
 y2
i
これらの算術平均と分散は原データから求めた算術平均と分
散の近似値となる。
サッカー日本代表の度数分布表について考えてみると
階
級
以上
未満
165
170
175
180
185
170
175
180
185
190
-
階級値
167.5
172.5
177.5
182.5
187.5
計
度数
2
7
6
6
4
25
算術平均(原データで計算すると177.44)
y
2 167.5  7 172.5  6 177.5  6 182.5  4 187.5 4452.5

 178.1
27664
25
分散(原データで計算すると32.49)
2 167.52  7 172.52  6 177.52  6 182.52  4 187.52
s 
 178.12
27664
793906.25

 31719.61 36.64
25
2
3) ヒストグラム・度数折れ線
• 度数分布表を棒グラフであらわしたものをヒストグラムといい、
それぞれの棒は間隔をつめて描かれる。これは階級と階級
の間が連続していることによる。
• 度数折れ線はヒストグラムにおいてその頂点を折れ線グラフ
で結んだものである。
身長のヒストグラム(20歳男子、107人)
8
20
6
15
度数
度数
サッカー日本代表の身長
4
2
10
5
0
167.5
172.5
177.5
階級値
182.5
187.5
0
159 161 163 165 167 169 171 173 175 177 179 181 183
階級値
• 度数分布表の階級幅、階級の上限と下限の値の取り方に
よってヒストグラムは大きく変化する。
体重のヒストグラム(階級幅5kg)
体重のヒストグラム(階級幅2kg)
5
3
度数
度数
4
2
1
0
63
65
67
69
71
73 75
階級値
77
79
81
83
8
7
6
5
4
3
2
1
0
85
62.5
72.5
階級値
77.5
82.5
体重のヒストグラム(階級幅3kg(b)
体重のヒストグラム(階級幅3kg(a))
6
6
5
5
4
4
度数
度数
67.5
3
3
2
2
1
1
0
0
64.5
67.5
70.5
73.5
76.5
階級値
79.5
82.5
85.5
62.5
65.5
68.5
71.5
74.5
階級値
77.5
80.5
83.5
Ⅲ 2変量データのまとめ方
• 2変量データ → 2つの対になったデータ
(例)サッカー日本代表の身長と体重
※ 日本代表の身長と韓国代表の体重は2つのデータ
であるが、対になっていない。
※ 2変量データはその組合せを変えることはできない
→ 川口の身長と闘莉王の体重を組み合わせても、
意味がない。
• 2変量データの記述
→ それぞれ1変量の記述 + 2変量の関係の記述
a) 特性値による記述
1) 相関係数
r
 (x  x )(y - y)
 (x  x )  (y - y)
i
i
2
i
2
i
• 相関係数 r は2変量間の関連の強さを表す尺度
であり、-1と1の間の値をとる。
 r>0 正の相関 1に近いほど関連度が強い
 r<0 負の相関 -1に近いほど関連度が強い
 r=0 無相関
後で説明する散布図と密接な関係がある。
b) 表・グラフによる記述
1) 分割表(クロス集計表)・2次元ヒストグラム
• 2変量についてクロス集計した度数 • 分割表は下のような2
分布表のことを、分割表(またはク
次元ヒストグラムであ
ロス集計表)という。
らわすことができる。
3
2
1
185-190
175-180
80-83
77-80
74-77
71-74
165-170
身長
68-71
0
65-68
計
3
4
4
2
4
5
3
25
62-65
体
重
62-65
65-68
68-71
71-74
74-77
77-80
80-83
計
165-170 170-175
2
1
0
2
0
3
0
0
0
1
0
0
0
0
2
7
身長
175-180 180-185 185-190
0
0
0
2
0
0
1
0
0
1
1
0
1
1
1
1
3
1
0
1
2
6
6
4
体重
2) 散布図
• 横軸にX、縦軸にYをとった座標軸上に、個々のデータを
あらわしたもの。
• 相関係数と密接な関係があり、相関係数が±1に近いほ
ど、散布図は直線に近くなる。
正の相関(r>0)
負の相関(r<0)
•Xが大きな値をとる
ほど、Yも大きな値を
とる。
•Xが大きな値をとる
ほど、Yは小さな値を
とる。
無相関(r=0)
•Xの値とYの値に一
定の傾向がみられな
い。
• サッカー日本代表の身長と体重の散布図は下の図のように
なる。
サッカー日本代表の身長と体重
85
体重(kg)
80
75
70
65
60
165
170
175
180
185
190
身長(cm)
• サッカー日本代表の身長と体重の間には正の相関が見られ
る。 (r=0.807)