「高精度アストロメトリ観測の時代を迎えた21世紀の天文学」研究会 Sep. 19-20, 2007 SELENE(かぐや)による高精度測月 ○岩田隆浩*(JAXA・ISAS)、並木則行(九大理)、 花田英夫、松本晃治、野田寛大(天文台)、 RSAT/VRADミッショングループ * [email protected] 月周回衛星「かぐや」(SELENE)のミッション 15のミッション 主な目的 ◇月の起源と進化の解明のため、 グローバルマッピング観測を行う ◇打上げ:2007年9月14日(H-IIA) ◇主衛星+2機の小型衛星 (Rstar/Vstar) 名称 元素の分布 XRS:蛍光X線分光計 GRS:ガンマ線分光計 鉱物の分布 SP:スペクトルプロファイラ MI:マルチバンドイメージャ 表層の構造 TC:地形カメラ LRS:月レーダサウンダ LALT:レーザ高度計 月の環境 重力の分布 広報 LMAG:磁力計 UPI:プラズマイメージャ CPS:粒子線計測器 PACE:プラズマ観測器 RS:電波科学観測 VRAD:相対VLBI用衛星電波源 RSAT:リレー衛星中継器 HDTV:ハイビジョンカメラ 多様な観測手法(14観測機器)による全球観測 + ハイビジョンカメラでの撮像 ミッションプロファイル:月への道のり Rstar 軌道 100×2400km 月に到着 10月3日頃 Rstar Vstar 軌道傾斜角 i=90deg Vstar 軌道 100×800km 観測軌道 100×100km H-IIAロケットでの打上げ 9月14日 10:31:01 月 12.観測 (1年間) 地球 10.ミッドコース マヌーバ2 1.打上げ 6.恒星捕捉 7.高利得アンテナ展開 8.通信リンク確立 11.月周回軌道投入 リレー衛星分離 VRAD衛星分離 6回のマヌーバ 月周回軌道投入後に、 リレー衛星(Rstar)と VRAD衛星(Vstar)が 分離される 10月9日, 12日頃 9. ミッドコースマヌーバ1 2.月遷移 軌道投入 月遷移軌道 → 地球を2周回るフェージング軌道 3.H-IIA 第2段分離 4.太陽捕捉 5.太陽電池パドル展開 Lunar Prospectorまでの月重力場計測の制約 高次側はKaula (1966)の拘束条件を仮定 N | s{Cnm, Snm}| = [S {C2nm + S2nm}]1/2 m=0 = 35.7 x 10-5 n-2 2ウェイ RARR ← ∝ n-2 摂動方向 Apollo, CLEMENTINE Lunar Prospector, etc. 地球 地球局 ・実際の重力場 2ウェイRARR(測距・距離変化率)計測 →軌道の摂動から重力場分布を推定 1)月の表側のみ直接RARR計測 2)地球局の原子標準(水素メーザ)に依存 ↓ 1)裏側の重力場は表側の軌道から推定、 縁辺部の感度も悪い。 2)測定精度向上に限界 縁辺部 ・観測される重力場 Sugano (2004) 月重力場地図:表(左)と裏(右)のリアリティ比較 表 裏 Imbrium Serenitatis Crisium Nectaris Humorum Orientale →裏側の重力場地図は疑わしい ■表側のmascon、 ○裏側のmascon候補 LP165P (Konopliv et al. 2001より Sugano 2004が改変) RSAT:リレー衛星による月裏側4wayドプラ計測 主衛星 Rstar 月裏側の重力場の直接観測 (月裏側) 4ウェイドプラ 2ウェイ RARR + 4ウェイ ドプラ 2-way RARR 地球 JAXA臼田局(UDSC) 改善 月の裏側を飛行中のSELENE主衛星の 軌道を、Rstar経由で計測する。 ↓ 月の裏側の低い軌道を初めて直接観測 し 、Kaula (1966)の拘束条件に依らず 重力場を決める。 JAXA臼田局(UDSC) VRAD:衛星電波源の多周波相対VLBI観測 Rstar 月縁辺部の重力場精度の改善 月重力場の低次項の精度改善 Vstar 月 ・実際の重力場 縁辺部 ・観測される重力場 相対VLBI 地球 VLBI局(天文台VERA4局,上海,烏魯木斉, 豪Hobart,独Wetzel) Sugano (2004) 改善 RstarとVstarから発信される電波を多周波 相対VLBI観測する。 ↓ RARRより約2桁高精度の位置決定、視線 垂直面方向の改善を行い、重力場の低次項 を改善する。 VERA水沢局 VERA石垣島局 VERA小笠原局 多周波を用いた位相遅延決定の概念 電波源 位相遅延→2π(1波長)を超えると 不確定性が解けない 2π 2π 2π 電波源 欠測 より波長の長い観測電波と、 合成周波数から決定する VRADの周波数の条件 ・電離層補正のため、S帯とX帯を同期させる。 f (X) = (n/m) f (S) ・位相差の不確定性を解くため、S帯に3波、 X帯に1波を配置する。 fi+1 < (2p / df) fi where df = 10 deg VRAD周波数 ・2212 MHz ・2218 MHz ・2287 MHz ・8456 MHz 6 MHz 75 MHz 2π 2 π SELENEによる月重力場の改善 RSATのカバレッジ selenoid(等重力potential面)高誤差の改善 裏 表 ●2-way RARR ●4-way Doppler 重力場係数の改善 LP SELENE Matsumoto et al. (2006) 重力異常の波長依存性 惑星表面地形と重力の関係:補償メカニズム ・Airy isostasy ・Pratt isostasy ・lithosphereの弾力性 ・対流するマントルの動圧 →波長への依存性 月の内部構造: 高次:クレータのAiry isostasy Mascon(玄武岩マグマの過剰質量) 表裏2分性? 制約:裏側データの欠如 低次:コアの物理 Masconの影響 重力/地形振幅比 ←Konopliv et al. (1998) ↑Ojima et al. (1999) 地形と重力異常との対応 Schickard (Uncompensated) Mee (Uncompensated) Sugano (2004) Schiller-Zucchius (Compensated) Topography [km] Free Air [mgal] Uncompensated Compensated (Isostasy) Bouguer Free Air Bouguer [mgal] 地殻均衡のスケール → lithosphereの厚みに制約 ←高度補正+ブーゲー補正 ←高度補正 ←地形 Moho Short Lithosphere(岩石圏) Asthenosphere(岩流圏) Long 衝突盆地の進化 ・Mare basaltの噴出量 ・lithosphereの弾性厚さ ・Mantle plugの上昇量 マスコン(anomaly mass concentration)の起源 Sugano (2004) Nectaris Basin ; d = 860 km (Mascon) Rupes Altai : multi-ring structure (uncompensated) Masconの過剰質量の起源: ・クレータ形成後の高密度マントル物質の貫入 ・盆地への溶岩の集積 (Solomon and Head 1979) ←Mare Orientale(東の海): 重力場と地形画像との比較(青島 1999) 月重力場計測とコア密度の推定 比較: 月の慣性モーメント? C/ MR2 = 0.4 ; 一様球 < 0.4 ; コア cf. 地球 = 0.33、火星 = 0.365 LLR(レーザ測距) 0.394±0.002 ↓ 衛星測距(LP75G) 0.3932±0.0002 ↓ Fe-richが判明 →Feコアの場合 半径;320+50/-100km (Konopliv et al. 1998) ↓ VRADで精度改善 重力場の2次の係数に依存: C / MR2 = 4 C22 /γ I / MR2 = 4 C22 (3+β+γ-βγ)/3γ(1+β) 力学的扁平率:β= (C-A) / B, γ= (B-A) / C (A, B, C:主慣性能率) Callisto mixture C/MR2=0.406→0.3537 ? Fe/FeS Io Si C/MR2=0.3770 Moon size ? density ? C/MR2=0.3932 月の強制秤動とラブ数 C21, S21の時間変動 →Love数 k2 :起潮力に対する変形しやすさ 強制秤動の時間変動(from LLR) →Q 値:トルク変動によるエネルギー散逸 ↓ 月震計の観測結果との相違 →部分溶融層境界のエネルギー散逸を示唆 k2 > ~0.10 → 流体核 地球:0.3 火星:0.06-0.15 ? LLR(Williams et al., 2004 ) 0.0227±0.0025 vs. 衛星測距(LP165P; Konopliv et al., 2001 ) 0.026±0.003 ↓ VRADで精度改善 (月ephemeris精度:5mが限界) 月の強制秤動の振幅は 地球の強制章動の10倍 ↓ ~10” ~100”→内部構造を表す 月惑星開発技術と太陽系探査のフロー 2005 2010 小惑星への到達 太陽系探査 太陽と月の精査 2015 木星型惑星探査 の開始と地球型 惑星の探査 月惑星開発技術 月面地質探査 着陸技術習得 表面探査技術習 得 2025 太陽系辺境探査と地球型惑星の 精査 月面開発活動への 展開の判断 月面詳細地図 2020 「生命を育む環境の 解明」への発展 本格的月開発への 展開の判断 極限地域からの自律的サンプル リターン 月面上広域ネットワーク探査 「人類の活動範囲の 拡大」への発展 本格的インフラ技術の蓄積 SELENE 月面天文台 SELENE-2 国際月有人活動 ILOM計画 LLFAST計画
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