コメの成長戦略~コメの未来を考える~ 富山大学 経済学部(夜間) 山田(潤)ゼミ ◆イントロダクション • • • • 日本のコメ離れの現状 コメ離れによる影響 TPPに関連したデータ これから先どうすれば日本のコメを守れるか 生産者を守る政策 消費者に消費を促す対策 これらの観点から日本のコメがどうあるべきかを考察したいと思います。 2 1.日本のコメ離れの現状 3 1‐1.日本のコメ離れ • 2011年家計調査の結果、一般家庭におけるパンの 消費額がコメの消費額を上回った。 → 戦後の「学校給食法」によって、パン食になじんで育った世代が人 口の大半を占めるようになった。 → 家族の個食が増え、手間のかかるご飯を作る機会が減っている。 4 1‐2.品目別支出金額 出展:総務省「家計調査」 コメの支出金額だけ減少傾向にあることがわかる。 5 2.コメ離れによる影響 6 2‐1.コメ離れによる影響 ・コメ農家 → 衰退の危機 ・コメに代わる代替品の出現 → 日本の食文化の喪失 ・家族の個食化 → 家族間のコミュニケーション不足 ・食糧自給率の低下 → 世界的な食糧危機が起きた場合、 自国のコメだけで国民全体を賄えなくなる これらを防ぐためにはどうすればいいか・・・ 7 3.TPPに関連したデータ 8 3‐1.TPP(環太平洋パートナーシップ協定) ①高い水準の自由化 • 自由化を促進し、活発な貿易を。そして参加国の GDP底上げ。 ②非関税分野や新しい分野を含む包括的な協定 • 関税の撤廃、投資、競争、知的財産、政府調達等 のルール作り、環境、労働を含む包括的協定の作 成。 9 3‐2.物品市場アクセス 『関税の撤廃・削減をして物の自由な流通を促進を目 的としている』 日本では・・・コメの関税撤廃が話題に!! 日米両政府はコメに高い関税をかける日本の輸入の 枠組み残す代わりに、米国産米の輸入量を増やす 国産米の 危機 10 3‐3.農家農村の現状 • 現状を調べるためにアンケート調査をおこなった。 出典:「農業・農村の現場からTPP問題を考える」アンケート結果要旨 鳥取県農業会議 平成23年2月 11 3‐4.昨今の農業情勢について 12 3‐5.TPP参加の是非について 13 4.日本のコメを守るには 14 4-1.生産者を守る政策 15 生産者を守る4つの改革 農地中間管理機構 経営所得安定対策 の創設 の実施体制 日本型直接支払制度 水田フル活用と コメ政策の見直し 16 (1).農地中間管理機構 農地中間管理機構とは… 農地の有効利用の継続や農業経営の効率化、担い手 への農地利用の集積・集約化を進めるための機関。 例) 使用していない農地を借り受け、その農地を 企業などに貸し付けてまとまった形で農地 を利用 してもらうことで、農業の効率化を図る。 以下農林水産省より http://www.maff.go.jp/j/keiei/koukai/sannyu/kigyou_sannyu.html 17 使用していない農地 農家や企業等に 農地を貸す 農地中間管理機構 農家 借受け 貸付け 企 業 18 (1)‐1.一般企業の農業への参入 19 (1)‐2.続き 20 (1)‐3.続き 21 (1)‐4.続き(企業の参入例) • 株式会社六星 所在地:石川県白山市中奥地区 役員:9名(うち農作業従事7名) 従業員数:常時雇用者28名、臨時雇用者延べ11,000名 経営面積 :132.3ha (借入132.0ha) 作付作物:米118.0ha 野菜5.4ha 等 ≪主な業務内容≫ 周辺農家から農地を借り入れて経営し、生産・加 工・販売を 自ら行う体制を築いており、今でも地域農業継 続のために、依頼があれば農地借り入れを考えている。 22 (2).経営所得安定対策等の実施体制 • 交付金の申請手続・支払事務等が円滑に進 められるよう、農業再生協議会と連携・協力し た推進体制を構築し実施します。 できるだけ多くの人に農業に参入してほしい 23 (2)‐1.交付金の種類 再生利用交付金 耕作放棄農地で麦や大豆などを作 付けしたら支払われる交付金。 26年度限り。 農業経営基盤強化準備金制度 経営所得安定対策等の交付金を活用し、計画 的に農業経営の基盤強化を図る取り組み支援。 米価変動補填交付金 米の直接支払交付金 H25年度に米の直接支払交付金を受け た人に交付。標準価格を下回ると差額 を補填する。26年に廃止。 激変緩和のための経過措置。 H26~29年まで有効。 24 (2)‐2.再生利用交付金 耕作放棄地を どうするか・・・ 病虫害・鳥獣被 害の発生拡大 25 (2)‐3.耕作放棄地対策協議会 引き受け手をどうするか • 耕作放棄地の調査 作る物、加工・販路をどうするか • 導入作物や販路に係る検討等 土地条件はどうか • 荒廃した土地の再生作業、土壌改良 26 (2)‐4.耕作放棄地再生利用交付金 用排水施設、鳥獣被害防 止施設を整備 障害物除去や土壌改良な どの活動 地域協議会に対する指導 や助言 荒廃状況の調査、農地利 用調整等 27 (3).日本型直接支払制度 中山間地域等直接支払 農地維持支払 中山間地域等の条件不利地域と平 地との生産費を支援 水路・農道の管理を地域で支援。農 地集積を後押しする 環境保全型農業直接支援 資源向上支払 環境保全効果の高い営農活動で生じ るコストを支援 農地、水路、農道等の地域資源の質 的向上を目指す共同活動を支援 28 (3)‐1.中山間地域等直接支払制度 『棚田オーナー制度』 棚田の保全対策を推進・耕作放棄の防止・地域の 活性化を図る制度 例)場所:富山県氷見市 活動内容: 農道舗装、用排水路改修、 長寿ヶ滝周辺の環境整備、農作業準備 休憩所、交流広場などの整備 29 (3)‐2.取り組み効果 多くの 仕事 人的 金銭的 支援 耕作放棄防止に効果あり!! 30 (4).水田フル活用と米政策の見直し ・水田フル活用 【目的】 交付金や助成を受けてより多くの水田を活用して欲し い。 ・米政策の見直し 【目的】 経営の自由度の拡大 →生産者が需要に応じて、米をいくら生産・ 販売するかを自ら決められるようにする。 31 (4)‐1.交付金・助成の種類 戦略作物助成 収量が上がるほど助成額が増加 二毛作助成 耕畜連携助成 主食用米、戦略作物助成の 対象作物、戦略作物助成の 対象作物同士の組み合わせ による二毛作を支援 耕畜連携の取組(飼料用米の わら利用、水田放牧、資源循 環)を支援 産地交付金 水田における麦、大豆等の生産性向上 等の取組、地域振興作物や備蓄米の 生産の取組等を支援 32 (4)‐2.二毛作助成 主食用米 戦略作物 戦略作物 戦略作物 33 (4)‐3.水田活用の直接支払交付金・助成の狙い 戦略作物助成 耕畜連携助成 二毛作助成 産地交付金 水田の活用 食料自給率・持久力の向上!! 34 生産者を救済する システムでしかない!! コメ離れの根本的な解決にはならない・・・ いかに 消費を増加させるかが重要になってくる!! 35 4‐2.消費を促すコメ 36 (1).コメ離れの解消に向けて コメ離れの原因として・・・ 「炊飯など手間がかかるからコメの消費を減らした」 コメ 手間が かかる 消費を減らす・・・ 37 (1)‐1.コメの消費と就業者数の関係 14,000 13,000 ( 米 12,000 の 消 11,000 費 量 10,000 千 9,000 ト ン ) 8,000 R² = 0.868 7,000 6,000 45,000 50,000 55,000 60,000 65,000 70,000 75,000 80,000 85,000 就業者数(万人) 就業者数が増加するにつれ、コメの消費は減少 38 (1)‐2.小麦の消費と就業者数の関係 7,500 7,000 小 麦 の 消 費 量 ( 千 ト ン ) 6,500 6,000 5,500 R² = 0.8432 5,000 4,500 4,000 3,500 3,000 45,000 50,000 55,000 60,000 65,000 70,000 75,000 80,000 85,000 就業者数(万人) 就業者数が増加するにつれ、小麦の消費も増加 39 (1)‐3.消費の比重 手軽(外食など)に食べ られることが重要になっ ている!! 40 (2).これからのコメの在り方 無洗米 米粉 41 (2)‐1.無洗米の特徴 手間がかからない! • とぎ洗いの必要がなく、水を加えるだけで炊飯できる 栄養価が高い! • 米をとぐ際に、流れ落ちる栄養素(水溶性のビタミンB系)が ないので、普通の米と比べて栄養価が高い 無洗米という概念は海外にない! • TPP参加に際し、日本米の新たなブランドになる可能性があ る 42 (2)‐2.無洗米の生産量推移 最終更新日:: 2014年3月20日(木)|表示回数: 8,449 出所:全国無洗米協会 43 (2)‐3.無洗米の現状と課題 【無洗米の購入割合】 無洗米を購入している人は、年々増加しているとはいえ、全 国平均で約30%ほどで、特に無洗米を多く購入しているのは、 一人暮らしや子どものいる忙しい家庭である。 44 (2)‐4. 続き いずれも情報不足 【無洗米を購入しない理由】 によるもの!! 「美味しくなさそう」・・・約40% 「お米を洗わないので不衛生な気がする」・・・約40% 「普通米より価格が高い」・・・約20% 【無洗米購入を中断した理由】 出典:http://www.musenmai.com/article.php/topics_031016 45 (2)‐5. 続き 無洗米は 美味しくな い? 無洗米は • 普通米のように、とぐ時にうまみが流れ出ることがな いのでコメ自体に多くのうまみが残る • 無洗米独自の水加減を守れば、美味しく炊きあがる →米1カップにつき、大さじ1から2 • 品質基準は厳しく設定されているため安全 • 安全を保証する認証マークがある 不衛生? 無洗米は • 価格は若干高めに設定されているケースがあるが、 普通米をとぐ際に使われる水道代や下水道代、とぐ 時に流れる米粒を考えると費用にそこまでの違いは ない 高い? 46 (2)‐6. 続き 【無洗米の美味しさ】 【無洗米の認証マーク】 ※特定非営利活動法人 全国無洗米協会 認証マーク「エコメちゃん」 国で定めた統一基準がないため、包装に も表示義務がない。 品質基準については、日本精米工業会と 全国無洗米協会がそれぞれ認証マークを 設定しているが、マークの表示が任意であ るため、消費者に無洗米についての情報が 正確に届いていない。 参照:http://www.musenmai.com/staticpages/index.php/faq 47 (2)‐7. 続き 認証マークの 普及 正確な情報 政府の後押し 48 (2)‐8.TPPに関連して ブランド化 無 洗 米 3 割 無 洗 米 5 割 無 洗 米 8 割 実際に海外の国際食品展 に出展している日本のコメ は無洗米を出品している。 49 (2)‐9.日本のコメの需要 日本のコメ ジャポニカ米 このジャポニカ米を主食としている国は、朝鮮半島、中国東北部、台湾北 部、オーストラリア南東部、アメリカ西海岸、エジプト 世界の主なコメの種類 50 出典:https://membersclub.flets.com/pub/pages/contents/list/bunkamura/ls/food/130919/01.html (2)‐10.需要増加の要因 ①アジアの経済成長と高所得層の拡大 ②世界的に増加する日本食レストランの展開 ③日本米への高評価 51 (2)‐11.商業用米輸出実績 52 (2)‐12.国内産米の輸出 年間400~500トン 東 ア ジ ア 地 域 の 発 展 年間3,121トン 53 (2)‐13.輸出促進の支援体制 輸出阻害要因 ↓ 相手国に対して必要な 改善について要請・協 議を行う 相手国の諸制度や取 引慣行、市場特性等を 調査 54 (3).米粉の特徴 新食感! • しっとり、モチモチ、さっくり、カリッとなど、調理の方法によって、新たな食感が楽 しめる どんな食材とも相性が良い! • いろいろな食材との組み合わせや調理法が可能 質の良いたんぱく質! • 体内で重要な働きをする必須アミノ酸が小麦粉より多く含まれている カロリー控えめ! • 小麦粉に比べて粒子も細かく、てんぷらや揚げ物も「薄ごろも」なので、油の吸収 が少ない。パンの場合も水分が多く、同じ質量なら米粉パンの方が低カロリー 55 (3)‐1.米粉用米の生産量推移 56 (3)‐2.自給率の向上 日本人が1ヵ月に3個米粉パンを食べると・・・ 米粉パン を食べる 米粉の 生産量 UP 需要があるから もっと作ろう! 水田の 利用率 UP 食糧 自給率 UP 売れている! 生産量を増やそう! 57 (3)‐3.米粉の活用による効果と期待 米粉の生産量 UP 米政策の見直し 水田のフル活用 4つの改革もより有効になる! 58 (3)‐4.米穀の新用途への利用の促進に関する法律 • 食料自給率、米の需要の低下から食料の安定供給、水田のフル活用を 目的に米粉・飼料用米の新用途への推進を図る法律 農業改良資金融通法 食品流通構造改善促進法 種苗法 59 (3)‐5.法律の内容 米粉の生産・加工の製 造事業計画を農林水産 大臣に提出 農 林 水 産 大 臣 の 認 定 農業改良資金融通法 の特例を受けることが できる 米穀の生産から加工品の製造までの工程の改善を図る事業に関する計画 を作成し農林水産大臣の認定を受けられる。 この認定を受けると農業改良資金融通法の特例(償還期間の延長等)や食 品流通構造改善促進法の特例(食品流通構造改善促進機構による債務保 証の範囲の拡大等)が受けられる。 60 (3)‐6.法律の内容 稲の新品種を 作りたい! 農 林 水 産 大 臣 に 事 業 計 画 を 認 定 種苗法の特例 が受けられる 稲の新品種の育成をする人は、新品種を育成する事業に関する計画を作 成し農林水産大臣に認定されると、種苗法の特例(新品種の出願料・登録料 の減免)を受けられる。 61 5.結論 62 日本のコメを成長させるためには 無洗米・米粉 PR 4つの改革 消費者へのアプローチ 生産者への支援 ①国内の需要が増加 ②海外への輸出が増加 63 《参考文献》 • 農林水産省・・・「4つの改革」、「農地中間管理機構」、「再生 利用交付金」、「棚田オーダー制度」、「二毛作助成」、「商業 用米粉輸出実績」 • 日本調理科学会誌Vol.39,No.5,320~324(2006)〔講座〕 無洗米の現状と課題,将来性 鈴木敬子 https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience1995/39/5/39_320/_pdf 64
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