キセノンからの放射性ラドン除去の研究 「宇宙の歴史をひもとく地下素粒子原子核研究」 2015年領域研究会 2015年5月15日-17日 神戸大学百年記念館 六甲ホール 東京大学宇宙線研究所 小川 洋 Contents 低バックグラウンド実験におけるラドンの影響 XMASS実験でのラドン対策 ラドンEmanation測定 キセノンからのラドン除去 XMASS実験におけるラドンの現状について キセノンからのラドン除去システムの開発 低バックグラウンド実験におけるラドンの影響 • 222RnのBGに対する特徴(厄介さ) – 検出器部材からのemanationで 検出器内へしみこんでくる。 – 環境に多く存在する。 • 建設時に娘核(Pb210)が検出 器表面に付着し、background となる。 • 外部から検出器部材を通した diffusionで検出器内にしみこ んでくる。 – メタルシールならば心配は ない。 – これらが観測される時は崩壊平 衡が崩れている点に注意。 暗黒物質探索実験 への影響 • (XMASSでのBG源): Pb214 (β) • ラドンが液体キセノン中に一 様に分布してしまうため、有 効体積での事象選択で除去 できない。 • 10-5 dru(/day/keV/kg) ~1046cm2@100GeV DM の感 度を達成するためには 液体 キセノン中のラドン濃度は ~1uBq/kg以下 が制限となる。 • XMASS実験でのラドン対策 と“努力”: – Radon emanation測定による 検出器部材選別。 – Radon除去技術の開発。 214Pb : 10uBq/kg 小川:2010/03 日本物理学会 XMASS実験でのradon対策: emanation測定 • 静電捕集型ラドン検出器でXMASS検出器内部材を測定した。 ※Rn emanationがでたサンプルの例 • 部材をRn検出器に直接入れる、もしくは サンプルボックスにいれてポンプで循環する。 • あらかじめ真空引き+低ラドン純空気で パージをする。 • 測定した部材の量を実際に使用する 量に直し、XMASS検出器全体での Emanation量を見積もる。 • emanationが多い部材は他部材に交換をした。 5 →BGは測定結果 から引いた。 →測定量から使 用量に換算。 ガス液両方 • ガス <1.61mBq • ガス&液 <10.67mBq • 液 <16.75mBq • 全体 <19.09mBq • (~<20uBq/kg) ガス XMASS実験でのradon対策: emanation測定によ り選定された部材 新emanation測定 器をセットアップ中 200L sample box 液内 →ほとんど上限値 HV/signal コネクタ <1.18mBq HV/signal フィードスルー <0.09mBq モニタフィードスルー(1) 0.06+/-0.01mBq モニタフィードスルー(2) <0.11mBq モニタ用コネクタピン 0.05+/-0.02mBq PMT駆動装置駆動部 <0.76mBq PMT HV cable <9.1mBq PMT signal cable <3.4mBq モニタ用cable (1) 0.57±0.3mBq モニタ用cable (2)同 軸 <0.25mBq SUS配管溶接 温度計 0.58±0.23mB q <0.12mBq ファイバースコープ PMT基板 <1.02mBq <10.9mBq PMT <12.7mBq GOATEX(クッション 材) <1.9mBq コネクタピン <0.31mBq JPS meeting 2010/9/12 XMASS実験でのradon対策:キセノンからのラドン除去 • キセノンとラドンの基本特性(吸着関連) Isotop e (Gas) Mas s Xenon 131 Rado n 222 Melting point[K] Critica l temp.[ K] Critic al pres. [bar] H[mol/( kg・ Pa)@ 100 deg 161.4 (-112 deg) 290 59 2E-1 201.8 (-71deg) 337 63 1E+1 n=Hp • • • n = number of moles adsorbed [mol/kg] p = partial pressure of adsorptive [Pa] H = Henrys constant [mol/(kg·Pa)] Adsorption model for charcoals ※H(Ar, N2) ~2E-4 • ラドンとキセノンの吸着に対する性質が”似ている”。 – N2, Arに比べてラドンをとりにくい。 • 液体キセノン状態でのラドンの吸着:ガスキセノンよりも吸着しに くい。液中ではラドンの拡散係数がガスの場合の~1/100になっ てしまい、ラドンが吸着剤に遭遇しにくくなる。 – =>液体キセノンからラドンを除くのは大変。 Argon、 Xenonガスからのradon除去: Cold trap : Cu wire + activated charcoal Ar Xe • Radon : Argonでは取れていても、Xenonで はとれてない。 (2) radon除去のための努力:キセノン ガス中からのラドン除去 • 活性炭: – 通常の活性炭(Arからラドンを除去 可能)ではキセノンからのラドンの除 去は認められなかった。 – 通常のものより、孔径サイズがラド ンの吸着能力が大きい領域にのみ 分布しているものを使用する。 Sirasagi 活性炭 通常の活性炭の例: 様々な分布がある。 Activated Carbon pore size [Å] Peak分布 KL G2x4/6 ラドン除去:ガスでの除去効率 Shirasagi G2x4/6 25g 214Po 218Po Pore size peak We igh t Trap lengt h(cm ) ガス 流量 (L/mi n) Rn in tra p Remarks Diasor b G4-8 14A 6g 1 0.32.0 0% Trapped Rn in Ar (Radioisotopes 59, (2010) 29-36) Shiras agi G2x4/6 7A 10 g 1 1.03.0 2630 % Tested in 10-1000 Bq/m3 Shiras agi G2x4/6 7A 25 g 60 0.5 85 % ~10% air Leak exist Shiras agi KL 10A 37 g 10 0.5 80 % ~10% air? Leak exist 小川:2010/03 日本物理学会 ~85% in trap ~15% in circulation 活性炭によるラドン除去システム ※breakthrough NIMA661, 50-57 (2012) Shirasagi G2x4/6 を使用。 発生する粉(後述)、自身のラ ドンemanationが問題。 小川:2009/09 日本物理学会 他の除去方法: •ラドンをUV光で“イオン化”し、吸着剤(MS5A)につける。 To ionize only radon, 102.2nm~115.3nm VUV are flashed. Xenon : i.e. =12.130eV =>102.2nm Radon : i.e. =10.748eV =>115.3nm 光源: Ar2* lamp Central wavelength : 126nm Full width of half maximum : 10nm Irradiance : ~1.4mW/cm2 MgF2 window 結果 小川:2009/09 日本物理学会 • UV lamp照射と吸着剤(MS5A)によるRn除去 – ガス循環ではRn吸着を確認。 – 期待されたより取れている=>イオン化ではない? – 吸着メカニズムがまだ完全に理解できない。 – MS5A自身のRn emanationが課題。きれいな吸着剤が必要となる。 heating Lamp off + MS5A 1L/min Radon source injection Lamp on + MS5A12g 1L/min Lamp on + MS5A ※ガスによるテスト Lamp off + MS5A 0.3L/min 214Po 218Po 液中からのラドン除去 • キセノン循環器に活性炭フィルターを組み込み、 XMASSプロトタイプ検出器と循環した。キセノン中 のラドン除去を試みた。 0.5um 活性炭(CarboAct) Rn emanation : 0.2mBq/kg 液中からのラドン除去 • 液体キセノン循環についてはうまくいき、循環の手 法を確立した。 • しかし、ラドン除去については、活性炭、UV照射も 試したが、液体の循環による結局ラドンの除去は出 来なかった。 • 粉問題: – 活性炭の粉は最小で数nm程度(以下)である。 – 活性炭によるラドン除去システム(ガス用)にはsub nmの particle filterを用いている。 • 粉を止めてることの確証が必要。 – 液体キセノン循環では圧損の増加で、数10nmのparticle filterが限度(循環試験では~um pore filterを用いた) – =>粉の出ないラドン除去フィルターが望まれる。 XMASS実験radon現状について • 1)キセノンガスの循環システム – 循環速度は冷却powerに依存する。max30L/min[gas]~10kg/hrの循環 • 2)液体キセノンの循環システム – 循環ポンプを使用。1-5L/min[liq]~180-900kg/hrの循環 ゲッターorフィルター ガス循環 キセノン蒸発装置 フィルター コンプレッサー キセノン凝縮機 キセノンガス相 液循環 液体キセノン相 バルブの切り替えで 検出器中外を循環可能にする. 検出器 液体キセノン循環機 XMASS実験radon現状について Measured Rn emanation rate from all materials is < 20uBq/kg Gas phase removal : 冷却活性炭Shirasagi G2x4/6に よるラドン除去システム. 低ラドンレベルでは未チェック NIMA661, 50-57 (2012) liquid phase removal : 液体キセノン循環装置+filterを準備。 Radon除去システムはできてない。 粉問題がある。 もし、液中からのラドン除去ができれば、 ラドン除去をガスよりも効率的にできる はず。 ※ラドン除去システムは稼働はしていない。 Internal Radon in xenon (XMASSコミッショニングラン) 222Rn 164us Radon concentration: 222Rn : 8.2+/-0.5mBq (~10uBq/kg) 220Rn : <280uBq (90%C.L.) Fitting with an expected decay curve 1st event (214Bi b) 2nd event (214Po a) 220Rn candidate 216Po candidate ~accidental 100 500 1000 Time difference (ms) 220Rn 145ms キセノンからのラドン除去フィルターの 開発(科研費・基盤C) • Filterへの要求(radonの除去能力がある他に): – 低温(-100度)で使用可能 – 粉ができるだけ出ない、もしくはparticle filterで除去 可能 – Filter部材自身からのRadon emanation量が少ない。 • Filter候補 – 還元銅、Gas chromatograph用部材、クォーツファ イバー、etc • まずはキセノンガスからのラドン除去を試みる。 • 液体からのラドン除去: – 効率的な液⇔ガス化を模索をする。冷却能力で制 限されるのを熱交換によって補助する。 除去システムsetup(予定) Ra source Heat exchanger : 効率的な液化⇔ガス化 システムの開発も兼ねる Ref : arXiv:1103.0986v1 pres.gauge Flow meter pres.gauge Refrigerator Xe compressor Particle filter Heat exchanger Radon detector Trap and cooling system Vacuum chamber r まとめ • XMASS実験でのラドン対策について – Radon emanation測定による検出器部材選別。 – Radon除去。 • キセノンからのラドン除去について: – キセノンガスからの除去は、フィルターとしていく つか候補があるが、低emanationであり、 particleが少ないfilter部材が必要。 – 液体キセノンからの除去については液からの直 接の除去は難しそう。効率的な液⇔ガス化による 除去を目指す。
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