From soft Pomeron to hard Pomeron

Introduction to
Regge theory and soft Pomeron
K. Itakura (KEK)
1st NIC (New Interaction Code) meeting
May 31th @ ICRR, Kashiwa
はじめに:Pomeronは何処に出てくるのか
R.Engel, “Very High Energy Cosmic Rays and Their Interactions”
Nucl. Phys. B(Proc. Suppl.) 151 (2006) 437.の第3章が現状を良くまとめている
以下抜粋
• An analysis of the same data set with different hadronic interaction models
can lead to a wide range of different results. (…) The largest uncertainty in
EAS simulation stems from the unknown characteristics of hadronic
multiparticle production.
• Three energy regions:
1. At very low energy (< a few GeV): production and decay of resonances
2. Intermediate energy (<103 GeV): fragmentation of two color strings
3. High energy (>103 GeV): minijet production and multiple partonparton interaction becomes important
• Central assumptions that characterize a model’s high energy extrapolation:
1. Size and energy dependence of the QCD minijet cross section
2. Distribution of partons in transverse space (profile function)
3. Scaling of leading particle distributions or scaling violation
4. Treatment of nuclear effects (semi-superposition model, Gribov-Glauber
approximation, increased parton shadowing, etc)
はじめに:Pomeronは何処に出てくるのか
典型的なモデル:QGSJET vs SIBYLL:最初の2つの点について大きく異なる
2. Parton distributions
dN/dkt2
QGSJET01 “pre-HERA” parton distribution
SIBYLL 2.1 “post-HERA” parton distribution
1. Minijet transverse momentum cutoff (純粋にpQCDの領域)
1/kt2
QGSJET01 energy independent constant cutoff ~ 1.5 GeV
SIBYLL
energy-dependent cutoff
k t2
~1.5GeV at low energy, 8 GeV at 1020 GeV
gluon saturation の効果を反映させている
(cutoffより低い運動量の取り扱いはどうしているか?)
----------------------------------------------------------------------------------------------------QGSJET II QGSJETを “post-HERA” data を扱えるように改良したもの
それでも、cutoff はenergy independentに取っている
その代わりに、このnonperturbative領域を記述する
soft Pomeronとその非線形相互作用を取り入れる。
BBL
SIBYLL2.1に強いsaturationの効果(Black-disk limit)を取り入れたもの
 CGC(nonlinear hard Pomeron)の物理 (soft な寄与は?)
高エネルギー極限
高エネルギー極限 = Regge極限
「全散乱エネルギー」 ≫ 「反応における典型的運動量スケール」
ハドロン・ハドロン散乱
a
c
a
s
e
g*
pm
Proton
t
e
qm
b
運動量移行の二乗
b
陽子の深非弾性散乱
重心系散乱エネルギーの二乗
s=(p +p )2
d
t=(pa - pc)2
s >> |t|
W2 =(p+q)2 g-pの全散乱エネルギーの二乗
Q2 =-q2
光子の仮想度
W2 >> Q2
或いは、 x ~ Q2 /(W2 + Q2 ) 0
Cf) Bjorken limit: x=Q2/2pq を固定して
Q2 ∞, 2pm qm ~ W2 + Q2 ∞
ソフトとハード
反応における典型的運動量スケールμとΛQCDの比較
ΛQCD : QCD結合定数が発散する運動量スケール ~ 200-400MeV
例) 1 loop
4
2
 s (Q) 
,  0  11 n f
2
2
3
 0 ln(Q /  QCD )
ハード(摂動的)
ソフト(非摂動的)
μ ≫ ΛQCD
μ < ΛQCD
~
例)
• 散乱全断面積(光学定理から 前方散乱振幅 t=0 と関係)
• DISにおける仮想光子・陽子散乱断面積
Q2 大→ 摂動的に計算可能(因子化:ソフトとハードの分離が可能)
Q2 小 → 光子(or vector meson)と陽子のソフトな散乱、非摂動的
しかし、一般の物理量に対して明確にソフトとハードの分離がされているわけではない
歴史的経緯
QCD前史
1943 Heisenberg
S行列の理論の提唱
1958 Mandelstam
相対論的S行列の理論(Mandelstam変数の導入)
1959 Regge
Regge極の提唱(量子力学)
1961 Chew-Frautschi 相対論的「Regge理論」の完成 → soft Pomeron
→ その後、dual resonance model, Veneziano amp, string theory
QCD以後
1970年代
QCDの確立
線 1976-78 BFKL QCDによる高エネルギー散乱(LO-BFKL方程式)の導出
→ “hard Pomeron” ( 1993ごろからHERAで観測)
形
~2000
NLO-BFKLの完成 → さらにその再足しあげ
非
線
形
1983
1986
1994
2000
GLR(Gribov-Levin-Ryskin)初めてsaturationを議論. BFKLの変更. CGCの原形
Mueller-Qiu DLA(DGLAPのsmall-x limit)に対する非線形補正
McLerran-Venugopalan模型 高速で走る原子核の有効模型
Iancu, McLerran, etc. GLRを MV模型から再定式化し、さらにそれを超えた
 JIMWLK方程式, BK方程式(LO) 繰り込み群的視点
 Color Glass Condensate (2001 Geometric scaling at HERA)
(2004 RHIC forward dAu)
Regge理論
•
•
•
•
ハドロンの自由度を用いたS行列による散乱の記述
S行列に対していくつかの要請をして、散乱振幅の可能な形(特に高エネル
ギーでの)を規定していく
QCD前史。しかし、いつかはQCDから説明されるべき
特にハードかソフトかを限定していないが、もともと摂動的な記述が不可能な
領域を扱おうとしたもの
Kinematics (2体散乱)
1
3
s
2
t
それぞれの質量を mi
4
Mandelstam変数 ← Lorentz不変
s=(p1+p2)2
t=(p1 – p3)2
u=(p1 – p4)2
独立な変数は2つのみ
4
s  t  u   mi2
i 1
散乱振幅を s と t の関数として表現
A(s,t)
S行列と散乱振幅
• 定義
S行列とは、その成分が状態 |a,in> から 状態 |b,out>への遷移行列要素
Sba = <b, out|a, in>
で与えられる行列。ここで、|a,in> (|b,out>)は tinfinity (tinfinity)での
漸近状態であり、それぞれ規格直交完全系をなす。
(注)Outstate |b,out>を instateの基底で表現すると <b,out|a,in>=<b,in| S |a,in>
なる演算子 S を定義できる。
• S行列に対する3つの要請
I.
S行列はLorentz不変である
II.
S行列はユニタリーである S+ S = S S+ = 1 (確率の保存)
III.
S行列は複素化されたLorentz不変量の解析関数であり、
ユニタリ性から許される特異点構造を持つ
I. S行列はLorentz不変な変数の関数 2体散乱なら S(s, t)
II. Cutkosky則 → 光学定理
III. S行列はsimple pole + cut の特異点構造を持つ
要請IIの帰結
• 散乱振幅 A(s,t)
Sba   ba  i(2 ) 4  ( pb   pa ) Aba
b
a
可能な中間状態についての和
• Cutkosky rule (S+S=1より)
中間状態 c の粒子についての和
2 Im Aba  (2 ) 4   ( pc   pa ) Abc Aca

c
c
a
中間状態に可能な全ての状態 (c) について足しあげる
2 Im
=
+ …….
+
ab
• Optical theorem (Cutkosky ruleで a=bとする)
2 Im Aaa  (2 ) 4   ( pc   pa ) | Aca |2
c
前方散乱 t = 0
 total 
c
a
状態 a から任意の状態へ行く確率 ← 全断面積
1
Im A( s, t  0)
2 | p1 | s
p1はCOMでの入射粒子の運動量
要請IIIの帰結
• Cutkosky則・・・中間状態にn粒子の状態が効く
=
ab
S
1粒子状態
…
2 Im
質量mの束縛状態
→ simple pole
2粒子状態
1
,
2
sm
s  ( p1  p2 ) 2
Im A( 2) (s, t )  s  4m2
s > (2m)2 で連続であり、 s = 4m2 をbranch pointとしてCutが存在
n粒子状態
s > (nm)2 で連続であり、s = (nm)2 をbranch pointとしてCutが存在
s
特異点構造
m2
他チャンネルの議論から
4m2
9m2
部分波展開と複素角運動量
• 部分波展開
非相対論的量子力学での散乱振幅

f(q ) は角運動量の固有状態で展開
f (q )   (2l  1) f l (k ) Pl (cosq )
l 0
部分波振幅 Legendre関数 (k は入射粒子の波数)
同様にして(t channel を主として見る。 s を t と散乱角 q の関数とする)

A( s( zt ), t )   (2l  1)al (t ) Pl ( zt ), zt  cosq t  1 
l 0
2s
t
• 角運動量の複素化 (Sommerfeld-Watson変換)
l
1
a(l , t )
A( s, t )    dl (2l  1)
(1)l Pl ( zt )
2i C
sin l
実はa(l,t)は一意に決定できないが、角運動量の偶奇を分ければ、一意に解析接続可能
→ “signature” h=+, の導入


1
2l  1 (  )
A( s, t )    dl
a (l , t )  a (  ) (l , t ) Pl ( zt )
2i C sin l
角運動量が偶(+)/奇()から作られる解析関数
Regge極
積分路の変更
l
部分波振幅が Re l > 0 に一つpoleを持つとした
a(l , t ) ~
 (t )
l   (t )
“Regge pole”
簡単のためにsignatureは無視
~
1/ 2  i
 (t )
1
2l  1
A( s, t ) 
P ( zt ) 
dl
a(l , t ) Pl ( zt )

sin  (t )
2i 1/ 2i sin l
Regge pole は散乱振幅の高エネルギーでの振る舞いを支配する
s 依存性は P( zt ) の zt=1+2s/t を通じて入るのみ
Regge limit s/|t|  infinity では、線積分の寄与は無視できる

 s 
P (1  2 s / t ) ~   , s/|t|  
| t |
Regge pole のうち、最も大きな Re  の寄与のみを拾うと
 (t )
A(s, t )   (t ) s
, s/|t|  
これは、t-channel に交換される spin  の粒子のように見なせる
“Reggeon”
Regge軌跡
Regge軌跡
t channel に交換される粒子的なReggeonが実際に物理的な
粒子であるならば、それを
スピン J
質量 M
とすれば、「角運動量」 (t) に対して、次が成り立つはず。
 (t  M 2 )  J
複素角運動量空間でのpole が複素 t 空間での
poleに対応すると考えると、 と t の間の線形な
関係が示唆される。
 (t )   (0)   ' t
つまり、角運動量 J と質量 M とが、関係づく
 (M 2 )   (0)   ' M 2  J
“Regge trajectory”
(0) = 0.55 < 1
’ = 0.86 GeV –2
 切片
 傾き
Pomeron
全断面積
 tot
1
~ Im A( s, t  0) ~ s ( 0 ) 1
s
Reggeonのようにintercept が1より小さければ、全断面積は s  infty で減少
Pomeranchukの定理 (1956)
電荷の交換を伴う散乱の断面積は s  infty でゼロになる。
Foldy-Peierls (1963)
s  infty で断面積が減少しなければ、その散乱過程は「真空と同じ量子数」
(isospin 0, charge conjugation even)の交換によって与えられる。
実験では、ハドロン・ハドロン散乱の全断面積の増加が観測されている。
 Reggeon ( (0) < 1 ) とは異なるtrajectoryが存在する!
これを、Pomeron と呼ぶ。 ( (0) > 1 )
Pomeron vs exp. data (standard picture)
陽子・陽子、陽子・反陽子散乱
Donnachie-Landshoff, 1992
Pomeron + Reggeon で表現可
P(0)=1.08 > 1, R(0)=0.55 < 1
Fit region
ポメロン項が主要項で、pp, ppbarで
同じ依存性
ReggeonのR(0)=0.55は Regge 軌跡
からの値と一致
+p, p, g p散乱も同様に記述可
P(0)=1.08 をもつexchangeを
“soft Pomeron”と呼ぶ
pp, ppbarの弾性微分断面積から
’P= 0.25 GeV2
Pomeronの正体?
Pomeron trajectory
 P (t )   P (0)   P ' t  1.08  0.25t
もし実際に粒子的なものなら (Reggeonの時と同様にして)
J  1.08
 P (t  M )  J  M 
 1.9 GeV ( J  2)
0.25
Spin 2 , M=1.9GeV の粒子 ・・・・ f2(1950) , JPC=2++ ??
それとも、未知のglueball?
(実在する粒子として見なせるかは未解決)
2
Beyond single Pomeron exchange
Froissart上限
1 Pomeron exchangeによる全断面積の増加は早すぎる。
部分波のユニタリ性から、全断面積に対して次の「上限」が導ける
Froissart 1961, Martin 1966

s
 tot ( s)  2 ln
m
s0
2
(s0は次元を合わせるために導入したパラメータ)
つまり、1 Pomeron による表現は高エネルギーでは破綻するはず。
何らかの効果によって、変更を受ける。
 多重Pomeron交換、Pomeron相互作用 の効果
(注意1) s0 が未定なので、直接実験と比較することは厳密にはできない。
もし、典型的なハドロンスケールを選んで、s0 ~ 1GeV2 とするなら、
非常に大きな値になる。
 2 s 10 barn at s  1.8 T eV (T evatron)
ln

m2
s0 25 barn at s  14 T eV (LHC)
(注意2) 係数は本当か? カイラル極限では上限が無くなるのか?
Froissart 上限の直観的説明
Heisenberg (1952) 高エネルギー核子・核子散乱を核子を取り巻くメソン
場のshock waveの衝突として記述した(!)
Total energy
Saturation is implicit
係数が1/4だけ違うのみ!
実験データ再び
陽子陽子全散乱断面積
ln s, ln2 s (Froissart bound), or sl (l0.08) (Pomeron) の比較
最近の PDG は ln2 s とコンシステントだというCOMPETE Collab.を採用
Bはプロセスに依らない
S1/2
10
102
103
Fitにはcosmic ray pp data of AKENO & Fly’s eye
を含む
104 GeV
但し、係数BはFroissart上限のものより、遥かに小さい
/m2 = 62 mb
従って、この log2 behavior を「ユニタリ性の現れ」と見なすのは微妙…
なお、CGCは dipole-proton の全断面積に対してCOMPETEに近い値を与える
LO BFKL B = 2.09 ~ 8.68 mb (S=0.1 ~ 0.2)
rNLO BFKL B = 0.446 mb (S=0.1 )
Pomeron相互作用
• Single diffractive event
実験データからtriple Reggeon vertexが決定できる
→ より高エネルギーでは、多重Pomeronの交換や
Pomeron同士の相互作用などが効いてきて、
単純な1Pomeron交換の描像を書き換える
(Reggeon Field Theoryという「有効模型」)
まとめ+
•
ハドロンの高エネルギー散乱は、S行列の理論に基づいて自然に導入され
る「Pomeron」や「Reggeon」を交換すると考えて表現できる。それらは高エネ
ルギーで断面積にエネルギーのべきで寄与し、特に、Pomeronはエネルギー
増加とともに増加し、断面積の主要な寄与を与える。
•
1Pomeron交換は、ある程度は実験結果を記述するが、非常に高エネルギー
では破綻するはず(Froissart上限)。 多重Pomeron交換、Pomeron相互作用
などが効いてくる。
•
今後明らかにすべきは、ハードとソフトの寄与のinterplay. 実際に必要なの
は、forward cross sectionだろうが、それがどれほどsoft Pomeronで記述され、
hard, semi-hardの寄与がどれくらいあるのか?
“cross section”
Hard (pQCD)
Semi-hard (CGC)
Soft (soft Pomeron, string)
energy