物理フラクチュオマティクス論 Physical Fluctuomatics 第3回 確率変数,確率分布,確率密度関数 3rd Random variable, probability distribution and probability density function 東北大学 大学院情報科学研究科 応用情報科学専攻 田中 和之(Kazuyuki Tanaka) [email protected] http://www.smapip.is.tohoku.ac.jp/~kazu/ 2009/4/30 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 1 確率の基礎知識 a. b. c. d. e. f. g. h. 2009/4/30 事象と確率 結合確率と条件付き確率 ベイズの公式と事前確率,事後確率 離散確率変数と確率分布 連続確率変数と確率密度関数 期待値,分散,共分散 一様分布 ガウス分布 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 前回 今回 2 確率と確率変数 各事象に番号を割り 当て,その番号に対 する変数を導入する. この変数を確率変数 (Random Variable) という. 「奇数の目がでる」 という事象に「X=1」 という等式を対応さ せることができる. 2009/4/30 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 3 確率と確率変数 標本空間から構成されたすべての事象 A に実数値 X(A) を1対1対応させる写像を考える.この写像 X(A) を 事象 A の確率変数 (Random Variable) という.通常, 確 率変数 X(A) は A を省略し,単に X と表される. 確率変数 X が実数値 x をとる事象 X=x の確率を Pr{X=x} と表す.このとき x をその確率変数の実現値ま たは状態 (State)という.起こりうる状態の集合を状態空 間 (State Space)という. 2つの事象X=x および X=x’ が互いに排反であるとき状 態 x と状態 x’ は互いに排反であるという. 2009/4/30 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 4 離散確率変数と連続確率変数 離散確率変数 (Discrete Random Variable): 離散的な状態空間をもつ確率変数 例:{x1,x2,…,xM} 連続確率変数 (Continuous Random Variable): 連続的な状態空間をもつ確率変数 例:(−∞,+∞) 2009/4/30 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 5 離散確率変数と確率分布 標本空間Ωが互いに排反である M 個の事象 A1,A2,…,AM によって Ω=A1∪A2∪…∪AM と表され,確率変数 X がM 個 の状態 x1,x2,…,xM を用いて1対1対応の写像 X(Ai)=xi (i=1,2,…,M) により定義されるとき すべて事象 X=x1, X=x2,…, X=xM の起こる確率 が変数 x の関数 P(x) を用いて PrX x Px x x1 , x2 ,, xM 確率変数 状態変数 状態 と表されるとき, P(x) を確率変数 X の確率分布 (Probability Distribution) ,x を状態変数 (State Variable) という. 2009/4/30 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 6 離散確率変数の確率分布の性質 いずれも確率の公理1,2,3から導かれる. 0 Pxi 1 i 1,2,, M M P x 1 i 1 i 規格化条件(Normalization Condition) 2009/4/30 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 7 離散確率変数の期待値と分散 確率変数 X の期待値 (Expected Value,平均: Average)μ M EX xi Pxi i 1 確率変数 X の分散 (Variance) σ2 M V X xi Pxi 2 2 i 1 σ:標準偏差 (Standard Deviation) 2009/4/30 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 8 離散確率変数の結合確率分布 2種類の確率変数 X, Y に対して,事象 X=x と事象 Y=y 結 合事象 (X=x)∩(Y=y)の起こる確率 Pr{(X=x)∩(Y=y)}= Pr{X=x,Y=y} が関数 P(x,y) を用いて PrX x, Y y Px, y と表されるとき, P(x,y) を確率変数 X と Y の結合確 率分布 (Joint Probability Distribution) という. X Y 2009/4/30 確率ベクトル変数 x y 状態ベクトル変数 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 9 離散確率変数の周辺確率分布 標本空間Ωが互いに排反である M 個の事象 A1,A2,…,AM によって Ω=A1∪A2∪…∪AM と表され,離散確率変数 X がM 個の実数値 x1,x2,…,xM を用いて1対1対応の写像 X(Ai)=xi (i=1,2,…,M) により定義 されるとき M 確率変数 Y の 周辺確率分布 (Marginal Probability Distribution) PY y Pxi , y i 1 PY y Px, y 簡略表記 x 状態空間における互いに排反な取り得るすべての状態 x についての和 P( x, y) 1 x 2009/4/30 y 規格化条件 (Normalization Condition) 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 10 離散確率変数の周辺確率分布 より高次元への拡張 確率変数 Y の周辺確率分布 (Marginal Probability Distribution) PY y Px, y, z, u x 周辺化 (Marginalize) 2009/4/30 z u X Y Z U 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 11 離散確率変数の独立性 確率変数 X と Y が互いに独立である: Px, y P1 xP2 y 確率変数 X と Y の結合確率分布 確率変数 Y の 周辺確率分布 2009/4/30 P1 ( x) P2 ( y) 1 x y 確率変数 Y の確率分布 確率変数 X の確率分布 PY y P x, y P2 y x 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 12 離散確率変数の共分散 確率変数 X と Y の共分散 (Covariance) CovX , Y xi X y j Y Pxi , y j M N i 1 j 1 X E[ X ] xi Pxi , y j Y E[Y ] yi Pxi , y j M M N i 1 j 1 i 1 j 1 Cov[X , X ] V [ X ] 共分散行列 (Covariance Matrix) 2009/4/30 N Cov[Y , Y ] V [Y ] Cov[X , Y ] V[ X ] R V[Y ] Cov[Y , X ] 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 13 離散確率変数の確率分布の例 expax x 1 P( x) 2 cosha EX tanha E[X] VX 1 tanha 2 2009/4/30 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 0 a 14 離散確率変数の結合確率分布の例 expaxy x 1, y 1 P ( x, y ) 4 cosha EX 0 VX 1 Cov[X , Y ] EXY Cov[X,Y] 0 a tanha 2009/4/30 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 15 離散確率変数の条件付き確率分布の例 2元対称通信路の 条件付き確率分布 1 x , y P( y x) p x 1, y 1 expaxy 1 p 2 cosha x,y 1 1 p a ln 2 p 2009/4/30 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 16 連続確率変数の確率 確率変数 X の状態空間 (−∞,+∞) において状態 x が区 間 (a,b) にある確率 Pra X b Pr X b Pr X a X の分布関数 F x Pr X x 確率変数 (Distribution Function) Pra X b F b F a x dx b a 確率変数 X の確率密度関数 (Probability Density Function) 2009/4/30 dF x x dx 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 17 連続確率変数の確率密度関数の性質 x 0 x x dx 1 規格化条件(Normalization Condition) 2009/4/30 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 18 連続確率変数の期待値と分散 確率変数 X の期待値 (平均) EX x x dx 確率変数 X の分散 V X 2 2009/4/30 x x dx 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 2 19 連続確率変数の結合確率密度関数 確率変数 X と Y の状態空間 (−∞,+∞) において状 態 x と y が区間 (a,b)×(c,d) にある確率 Pra X b c Y d d c b a x, y dxdy 結合確率密度関数 (Joint Probability Density Function) x, y dxdy 1 2009/4/30 規格化条件 (Normalization Condition) 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 20 連続確率変数の周辺確率密度関数 Y y x, y dx 確率変数 Y の 周辺確率密度関数 (Marginal Probability Density Function) 2009/4/30 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 21 連続確率変数の独立性 確率変数 X と Y が互いに独立である: x, y 1 x2 y 確率変数 X と Y の 結合確率密度関数 確率変数 Y の 周辺確率密度関数 2009/4/30 1 ( x)dx 1 2 ( y)dy 1 確率変数 Y の確率密度関数 確率変数 X の確率密度関数 Y y x, y dx 2 y 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 22 連続確率変数の共分散 確率変数 X と Y の共分散 (Covariance) CovX , Y x y x, y dxdy X X E[ X ] Y E[Y ] Cov[X , X ] V [ X ] 共分散行列 (Covariance Matrix) 2009/4/30 Y x x, y dxdy y x, y dxdy Cov[Y , Y ] V [Y ] Cov[X , Y ] V[ X ] R V[Y ] Cov[Y , X ] 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 23 一様分布 U(a,b) 一様分布 (Uniform Distribution) の確率密度関数 b a x 0 1 x a, b x ab E X 2 2 b a VX 12 2009/4/30 a x b p(x) (b-a)-1 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 0 a b x 24 ガウス分布(正規分布) N(μ,σ2) 平均μ,分散σ2 のガウス分布 (Gaussian Distribution) の確率密度関数 ( 0) 1 2 x exp 2 x x 2 p(x) 2 2 1 EX VX 平均と分散はガウス積分の公式 (Gaussian Integral Formula) から導かれる 2 0 μ x 1 2 exp 2 d 2 2009/4/30 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 25 多次元ガウス分布 行列 C を正定値の実対称行列として,2次元ガウス分布 (Two-Dimensional Gaussian Distribution) の確率密度関数 1 x X 1 x, y exp x X , y Y C y Y 2 2 det C 2 1 x , y において行列 C が共分散行列になる. Cov[X , Y ] V[ X ] C V[Y ] Cov[Y , X ] d 次元ガウス積分の公式から導かれる 1 T 1 exp 2 C d 2 d det C 一般の次元への拡張も同様 2009/4/30 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 26 大数の法則 X1,X2,...,Xn は平均 , 分散 2 の互いに独立な同一の確 率変数であるとき Yn 1 ( X 1 X 2 X n ) (n ) n 中心極限定理 X1,X2,...,Xn は平均 , 分散 2 の互いに独立な同一の確率 変数であるとき Yn 1 ( X1 X 2 X n ) n は n が大きいとき平均 , 分散 2/n の正規分布に従う. 2009/4/30 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 27 確率の基礎知識 a. b. c. d. e. f. g. h. 2009/4/30 事象と確率 結合確率と条件付き確率 ベイズの公式と事前確率,事後確率 離散確率変数と確率分布 連続確率変数と確率密度関数 期待値,分散,共分散 一様分布 ガウス分布 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 前回 今回 28 演習問題3-1 確率変数 X が ±1 の2値のみをとるものとして事象 X が 状態 x をとるという事象 X=x の確率分布が expax x 1 P( x) 2 cosha により与えられるとき期待値 E[X] と分散 V[X] の表式を導 出し,その 1 a 1 についての値を C 言語,Java または MatLab を用いて計算し,グラフを書け. 2009/4/30 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 29 演習問題3-2 確率変数 X と Y がいずれも ±1 の2値のみをとるものとし て事象 X が状態 x をとり,かつ事象 Y が状態 y をとるとい う事象 (X=x)∩(Y=y) の確率分布 P(x,y) が expaxy x 1, y 1 P ( x, y ) 4 cosha により与えられるとき確率変数 X についての周辺確率 P(X) と共分散 Cov[X,Y] の表式を導出せよ. 2009/4/30 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 30 演習問題3-3 確率変数 X と Y がいずれも ±1 の2値のみをとるものとして事象 Y が状態 y をとるという条件のもとでの事象 X が状態 x をとるという事 象 X=x の条件付き確率分布が 1 x , y P( y x ) p 1 p x,y 次の表式でも与えられることを示せ. expaxy P( y x) 2 cosha ヒント:次の等式を用いる. p expln p 2009/4/30 x, y 1 1 p a ln 2 p 1 1 xy 2 x 1, y 1 cosh(c) は任意の実数 c に対して偶関数 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 31 演習問題3-4 ガウス積分の公式を証明せよ. 0 1 2 exp d 2 2 ヒント R R 1 2 1 2 1 2 exp d 2 lim exp d exp 2 d Rlim R R 0 2 2 2 lim R 2009/4/30 R R 0 0 1 1 exp 2 2 d d 2 lim R 2 2 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 1 2 exp r 1 2 r dr 32 演習問題3-5 確率変数 X が任意の実数 X をとる連続確率変数であり,その確率 密度関数が 1 2 p x exp 2 x 2 2 2 1 x で与えられるとき,平均 E[X] と分散 V[X] が次の表式で与えられること をガウス積分の公式を用いて証明せよ.またμ=0, σ=10, 20, 40 のとき の p(x) の x に対する値を C 言語, Java または MatLabで計算し,グラフ を書け. EX 2009/4/30 VX 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 2 33 演習問題3-6 一様分布 U(0,1) に従う乱数(一様乱数)を発生するプ ログラムを作成せよ.乱数を N 個発生させた場合のヒ ストグラムを N=10, 20, 50, 100, 1000 のそれぞれの場 合について書け. 1 x rand() randmax C 言語では rand() は0,1,2,…,randmax のなかのい ずれかの値をランダムに生成される命令である. randmax の値は rand() の出力の最大値であり,シ ステムによって異なる場合があるので注意. 2009/4/30 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 34 演習問題3-7 平均 μ,分散 σ2 のガウス分布 N(μ,σ2) に従う乱数(ガウス乱 数)を発生するプログラムを作成せよ.乱数を N 個発生させた 場合のヒストグラムを N=10, 20, 50, 100, 1000 のそれぞれの 場合について書け. ヒント: 任意の確率分布に従って生成された n 個の乱数 x1,x2,…,xn に対 して (x1+x2+…+xn )/n はn→+∞ で平均 μ,分散 σ2 のガウス分布 N(μ,σ2/n) に従う[中心極限定理より] 区間 [0,1] の一様分布 U[0,1] に従う乱数を12個 x1,x2,…,x12 発生させる. 平均 0, 分散 1 のガウス乱数 x1 x2 x12 6 σξ+μが平均 μ, 分散 σ2 のガウス乱数 2009/4/30 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 35 演習問題3-8 任意の自然数 d に対して d 行 d 列の正定値の実対称 行列 C に対して次の d 次元ガウス積分の公式を証明 せよ. 1 T 1 exp 2 C d ヒント: 行列 C の固有値 λi に対応する固有ベクトル 2 d det C ui (i=1,2,…,d) とすると行列 C は次のように対角化される 1 0 0 2 C U 0 0 0 0 2009/4/30 0 0 3 0 0 0 0 U 1 d U u1 , u1 ,, ud 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 36 演習問題 3-9 確率ベクトル変数 X の各成分がいずれも任意の実数 をとる連続確率変数であり,正定値の実対称行列 C に 対してその確率密度関数が px 1 T 1 exp x C x d 2 det C 2 1 x 1 x2 d x , x d により与えられるとき,その平均ベクトルが ,共分散 行列 が C となることを示せ. 2009/4/30 物理フラクチュオマティクス論(東北大学) 37
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