転換 転換分野ロードマップ(資料2-4) 転換分野の技術スペックの考え方 ①ケース、分野共通の条件 ■資源制約の条件 :想定した石油ピーク(2050年)、天然ガスピーク(2100年)までに、他のエネルギー源と互換可能な 状態とする ■環境制約の条件 :CO2排出量/GDPを2050年に1/3、2100年に1/10以下とする ②技術スペック設定の基本的な考え方 ■需要分野が必要とするエネルギー量を各ケースにて不足無く供給していく。 2000 転換 需要端での全エネルギー需要 (最大ケース) ケースA: 2030 1倍 2050 2100 1.5倍 2.1倍 化石資源+二酸化炭素回収・隔離(CCS)利用ケース 電化・水素化率 1倍 2倍 4倍→約8兆kWh 1倍 3倍 4倍→約8兆kWh 2倍 3倍 ケースB: 原子力利用ケース 電化・水素化率 ケースC: 省エネ+再生可能エネルギー利用ケース 電化・水素化率 1倍 需要分野の省エネ0.3倍→約2兆kWh CO2原単位 370 g-CO2/kWh (1倍) 270 g-CO2/kWh (2/3倍) 120 g-CO2/kWh (1/3倍) 0 kg-CO2/kWh CCS併用化石燃料使用時 110 g-CO2/kWh(1/3 倍) ※各ケースの発電量は、需要端での全エネルギー需要×電化水素化率(ケースCでは,需要分野の省エネを掛け合わせる) 例)2100年のケースA:2000年の発電量約1兆kWh×2.1倍×4倍=約8兆kWh 転-2 ■ケースA (石炭等の化石資源とCO2回収・隔離の最大利用ケース) 需要側での省エネおよび機器効率向上がないという想定の下、エネルギー需要は2100年で約2倍、石油および天然ガス のピークに備えるために電化・水素化率が約4倍になるため、2000年の総発電量の約8倍の供給が必要となる。 ■ケースB(原子力の最大利用ケース) ケースAと同様に約8倍の電力あるいは水素の供給が必要となる。 ■ケースC(再生可能エネルギーの最大利用と究極の省エネルギー実施ケース) 需要側での省エネ(需要側での創エネ含む)および機器効率向上のため、需要側が必要とするエネルギー量は、省エネ 等がない場合に比べて約0.3倍に。電化・水素化率は、相対的に電気・水素以外の割合が大きくなるために約3倍。した がって、2000年の総発電量の約2倍の供給が必要となる。 ③2100年、2050年の条件を満たす個別条件から、逆算によって2030年の個別条件を設定。 (例)ケースB:原子力最大利用ケースではウラン資源の制約から、ウラン利用率の向上が重要である。2100年では約80%、 2050年では約30%が必要であり、2030年では現状の1%以下から5%程度にまで向上させることが必要となる。 ④各時点の個別条件を満たすために求められる技術スペック、時期等をロードマップとして整理。 転換分野の技術スペック実現のための技術群の考え方 エネルギー需要を効率的かつCO2排出原単位改善を図りつつ満たすため、以下の3つの技術群の備えが必要。 ①化石資源利用の効率的利用 石油ピークに備えて天然ガスへの燃料転換、さらには資源量が比較的豊富な石炭への燃料転換を行う。しかしながら、 石炭等の資源も有限であるため、発電(転換)効率向上など化石資源利用の高効率化が重要である。このためには、ガス 化発電(燃料製造)技術、燃料電池と複合した高効率発電技術が必要である。また、CO2排出を伴うため、CO2回収・隔 離(CCS)技術が必須となる。 ②原子力利用技術 核燃料資源の有効利用が必要である。そのためには、現状の軽水炉の効率向上ともに、核燃料サイクルの確立が必須 となる。 ③再生可能エネルギー利用技術 太陽、地熱、風力、バイオマスなどの再生可能エネルギーによる発電(転換)効率向上が重要である。太陽や風力など の設備利用率は低く、大きな設備容量を必要とするため、設置を容易にする技術も必要である。また、自然エネルギーは 気象条件等に左右されるため、需要とのマッチングを図るには、大規模な蓄エネルギー技術や系統制御(エネルギーマネ ジメント)などのネットワークシステムが必須である。 転-3 2000 転換 2030 2050 2100 需要端での全エネルギー需要 (最大ケース) 1倍 1.5倍 2.1倍 電化・水素化率 1倍 2倍 4倍 120 g-CO2/kWh (1/3倍) 0 kg-CO2/kWh 370 g-CO2/kWh (1倍) CO2原単位 270 g-CO2/kWh (2/3倍) CCS併用化石燃料使用時 110 g-CO2/kWh(1/3 倍) 化石使用量の削減 化石資源利用の効率向上 燃料転換 (石油) → (石炭) → 天然ガス 石炭(クリーン・コール・テクノロジー+二酸化炭素回収・隔離(CCS)) 原子力の活用 0 t-CO2/kWh 核燃料サイクル 負荷追従運転 効率向上 再生可能エネルギー 太陽 道路・ダムなどあらゆる場所に設置できる技術 地熱 → 風力 陸上 バイオマス 木質・バイオマス 海洋 → 燃料作物生産 (廃棄物系・未利用系) 効率向上 設置容易化 蓄エネ 非化石エネルギーの導入 転-4 2000 概要 2030 2050 ※化石資源最大利用の場合 ・IGCC 1700℃級GT ・IGCC 1500℃級GT ・石炭ガス化複合発電(IGCC) 化石資源利用+CO2回収・隔離技術 ガス化発電・燃料製造技術 発電(転換)効率 41% 46% ・化学再生形IGFC 65% 50% 55% ・石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC) 電力・燃料併産技術 高圧ガスからの分離・回収技術 CO2回収・隔離技術 2100 石炭ガス化水素製造技術 原子力利用技術 日本型次世代型軽水炉 軽水炉の効率向上 発電効率 34% 第4世代軽水炉(超臨界圧炉) 36% 43% マイナアクチニド核変換 高速増殖炉 FBR (核燃料サイクル) 発電効率 42% 45% 長半減期FP核変換 ※原子力最大利用の場合 (核燃料資源制約による) 44% 高度化 (ガス冷却FBR) 48% 原子力水素・高温水蒸気電解 再生可能エネルギー利用技術 太陽光発電 結晶型 薄膜型 色素増感型等 超高効率新型 発電効率 13% 小規模独立分散発電→広域連携 22% 30% 40% 太陽光・熱利用の水素製造 MW級大規模発電 浅部地熱系(蒸気発電、バイナリー発電) 深部地熱系 高温岩体発電 地熱発電 風力発電 バイオマス利用 (陸上)大型化、低コスト化 (洋上) 直接燃料 沿岸近海着定式 洋上近海 ガス化・ガス化改質 バイオマスガス化燃料・水素製造 洋上遠海浮体式 燃料作物生産 メタン発酵、エタノール発酵 大規模バイオマス発酵水素製造 エネルギー貯蔵・輸送技術 電力・燃料貯蔵 (水素・合成燃料等) ネットワーク技術 リチウム電池 新型二次電池、SMES、フライホイール 瞬時負荷平準化 分散電源連携技術 電解水素・水素貯蔵技術 日間負荷平準化(1日~数日間) 大容量エネルギー貯蔵 季節間調整 電力貯蔵を含めた短期最適運用技術 パイプラインによる 水素の輸送 転-5 化石資源利用+CO2回収・隔離技術 ■ 資源埋蔵量が比較的多い石炭、非在来型化石資源等の化石資源によってエネルギー供給を賄うために必要な技術 ■ 発電効率等の向上および化石資源の利用に伴って発生するCO2を回収・隔離する技術が必要 ■ 需要側での機器効率向上などによる省エネがないという想定の下では、エネルギー需要は2050年で1.5倍、2100年で2.1倍、電化・水素化率が2倍、4倍になるため、2000年の総 発電量約1兆kWh(3,800PJ)は、2050年には約3兆kWh(11,000PJ)、2100年には約8兆kWh(29,000PJ)のエネルギー供給が必要となる。 2000 2030 2050 40% 約3兆 kWh (11,000PJ) 電気・水素化率 20% 必要総発電量 約1兆kWh (3,800PJ) 2100 80% 約8兆 kWh (29,000PJ) 石炭等化石資源量の確保 ■ 2100年で約8兆kWh(29,000PJ)のエネルギー供給を賄うためには石炭等化石資源量の確保が必要となる。 ■ 現在の石炭火力による発電量は約2千億kWh(600PJ)であり、設備容量は約35百万kWである。2000年の年間の発電用石炭輸入量は、約0.6億トン(0.4億toe、1,700PJ)である。供 給するエネルギー量を全て化石燃料で補うとすると、発電(転換)効率向上を考慮しても、 2050年には7億トン(4.5億toe、19,000PJ)、2100年では約20億トン(13億toe、54,000PJ) の石炭調達が必要となり、資源探査・開発技術、選炭・脱灰等の前処理技術、大量輸送技術の開発が必要である。 ■ 蒸気タービン等に利用する水の確保も重要となってくる。 発電・燃料製造効率の向上 ■ 化石資源の有効利用として、発電・燃料製造のさらなる高効率化が重要。 ■ 石炭ガス化複合発電(IGCC)に始まり、最終的には燃料電池と複合したIGFC、およびエクセルギーも有効利用する化学再生形IGFCにより高効率化を図る。 ■ 脱灰・改質などの前処理技術、排ガス処理・石炭灰の有効利用など、クリーン・コール・テクノロジーの周辺技術の開発も必要。 CO2回収・隔離 ■ 化石資源の利用にはCO2排出を伴うため、CO2の回収・隔離技術が必須である。化石資源を最大限利用するケースでは、40億トン-CO2/年の貯留場所の確保が必要となる。 石炭等化石資源量の確保 資源探査・開発技術、前処理(選炭・脱灰・改質・高品位化等)技術、輸送技術 全発電量を化石燃料で 2.5億toe(10,000PJ) 賄うのに必要な化石燃料の量 現状石炭火力 0.4億toe(1,700PJ) 化石全体 1.3億toe(5,500PJ) 発電・燃料製造効率の向上 3億toe(13,000PJ) ・IGCC 1700℃級GT ・IGCC 1500℃級GT ・石炭ガス化複合発電(IGCC) 発電(転換)効率 41% 46% 50% 55% 5億toe(19,000PJ) 13億toe(54,000PJ) ※化石資源最大利用の場合 ・化学再生形IGFC 石炭ガス化水素製造技術 65% ・石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC) 電力・燃料併産技術 化石燃料廃棄物処理・有効利用技術 (コプロダクション) 低コスト化 隔離影響評価・安全性評価技術 CO2回収・隔離技術 高圧ガスからの分離・回収技術 隔離量 15億t-CO2/年 (転換分野でのCO2回収量 >95%) 転-6 40億t-CO2/年 ( >95%) 既存発電方式 超々臨界圧火力発電 高耐熱・耐食性材料技術 600/610℃ 700/720℃ 800/800℃(主蒸気/再熱蒸気温度) 発電効率 42% 46% 49% LNG等ガス燃料、クリーン油用 1500℃級 1700℃級 G/Tコンバインド 発電効率 51% サイクル発電 石炭直接利用 55% 技術以外の要因 ● 他の化石に比べ埋蔵量が多い石炭の重要性が認識されているが、①経済の伸展、電力需要の今後の増大が不透明であり、さらに②電力自由化の拡大、③地球温暖 化に伴うCO2環境制約の今後の負担が不透明な状況にあることから、効率が高い大型火力、新たな発電システムの導入、CO2排出量の多い石炭火力導入は進みに くい状況。 ● 地中隔離可能量:日本及び近海におけるCO2地中貯留可能量は約35~900億トン(エン振協調べ)とされる。2030年以降にCO2回収隔離が行われるとすれば、2075年 程度にて貯留可能量を超える。隔離量確保の観点からも、海洋隔離の隔離影響評価・安全性評価、国際間取り決めが必要である。 ● 総合効率向上(エネルギー有効利用)として大規模熱供給・有効利用技術/社会システムづくりも併せることが重要である。 転-7 原子力利用技術 ■ 運転時にCO2の排出を伴わない原子力によってエネルギー供給を行うのに必要な技術。 ■ ウラン資源の制約により、効率向上と核燃料サイクル技術の確立が重要。 ■ 需要側での省エネおよび機器効率向上がないという想定の下では、エネルギー需要は2050年で1.5倍、2100年で2.1倍、電化・水素化率が2050年で3倍(産業部門等需要部門で の電化・水素化をすすめる必要があるため)、2100年で4倍になるため、2000年の総発電量約1兆kWh(3,800PJ)は、2050年には約4兆kWh(14,000PJ)、2100年には約8兆kWh (29,000PJ)のエネルギー供給が必要となる。 2000 2030 電気・水素化率 20% ウラン利用効率 <1% 必要総発電量 約1兆kWh (3,800PJ) 5% 2050 2100 60% 30% 約4兆 kWh (14,000PJ) 80% 80% (29,000PJ) 約8兆 kWh (現状原子力発電量 0.32兆kWh) 効率向上 ■ ウラン資源の制約により、新型炉の開発などによる発電効率の向上が必要。 核燃料サイクルの確立 ■ ワンスルー型の核燃料利用ではウラン資源の制約があるため、核燃料サイクル技術の確立が必須である。また、原子力を最大利用する場合の2100年における発電量8兆kWh (29,000PJ)を実現するためには、高速増殖炉(FBR)の早期立ち上げ(2030年頃)とプルトニウム倍増時間の短縮(現状の35年→20年)が必要となる。 原子炉の効率向上 発電効率 34% 日本型次世代軽水炉 45% 43% 36% 出力増強>20%、長寿命化>60年、超高燃焼度>100 GWd/t(6PJ/t)、運転サイクル>24ヶ月 第4世代軽水炉 (超臨界圧炉) 高温ガス炉(第4世代炉) 原子力水素 (熱化学法、軽水炉-水電解、高温水蒸気電気分解など) 小型炉実証 (トリウムTh利用も視野に) 電力・水素貯蔵技術と連携した負荷追従、コジェネ、コプロ 核燃料サイクル技術 高速増殖炉 FBR (核燃料サイクル) マイナアクチニド・ 長半減期FP核変換 マイナアクチニド核変換 発電効率 42% 長半減期FP核変換 ※原子力最大利用の場合 (核燃料資源制約による) 44% 高度化 (ガス冷却FBR) 48% 転-8 放射性廃棄物管理 (地中埋設)技術 技術以外の要因 ● 原子力発電を大幅に伸ばすためには、設備量増大、発電効率向上も重要であるが、以下のような概念を確立し、社会的に理解され受容されることが必須の要件である。 ・資源利用率向上 ・循環型社会(プルトニウムの増殖) ・廃棄物低減 ● 2050年さらに2100年における電力供給力の確保のためには、立地問題が制約となる可能性が高く、社会受容性を高める施策が必要である。 ● 廃棄物管理の問題は、発電量増大の制約となる可能性が有り、管理技術早期確立が、社会受容性からも必要である。 ● 核不拡散技術の確立は、社会受容性から必要であり、核燃料の国際管理技術の確立が必要である。 ● 高速増殖炉(FBR)のような新たな技術開発には、第4世代原子炉(Gen.IV)のような国際協力が不可欠である。 ● 原子力を有効に利用するためには、水素、熱、淡水化・・・などの利用領域拡大と発展途上国で利用できる中小型炉開発のような利用地域拡大が必要である。 ● 総合効率向上(エネルギー有効利用)として大規模熱供給・有効利用技術/社会システムづくりも併せることが重要である。 転-9 再生可能エネルギー利用技術 ■ 需要分野で究極的な省エネ・高効率利用、自立化によるエネルギー需要の低減をすすめ、運用時にCO2を発生しない太陽・風力・地熱やカーボンニュートラルなバイオマスエネ ルギー等再生可能エネルギーを最大限利用するために必要な技術。 ■ 需要分野での省エネ等により2100年での転換分野の供給必要量は約2兆kWh(7,200PJ)となる。 ■ 現在の再生可能エネルギーによるエネルギー供給量は900億kWh(320PJ)程度と見られ、2100年には約20倍の導入が必要となるため、供給量の確保のためには転換効率の向 上が必要である。 ■ 太陽・風力などは時間帯、気象条件等により出力が変動し、需要と供給のマッチングが困難なことから、エネルギー貯蔵技術やネットワークによるマネージメントおよび供給調整 が可能なバイオマス利用との調和が重要である。 2000 2030 電気・水素化率 20% 需要分野の省エネ・創エネ化率 0% 必要総発電量 約1兆kWh (3,800PJ) 2050 2100 40% 50% 約1.5兆 kWh (5,400PJ) 60% 70% 約2兆 kWh (7,200PJ) (現状再生可能エネルギー発電量 900億kWh(320PJ)) 太陽 ■ 大きな設置面積を必要とするため、転換効率向上が重要である。 ■ 結晶シリコン、薄膜シリコン、化合物半導体、色素増感型など複数の方式の開発が当面続き、発電効率、生産性、耐久性等の観点から選択されていく。ただし、発電効率が30% を超えるためには、超高効率な新構造・新材料太陽電池が必要である。 ■ 民生分野での導入もあわせ、多様な用途・設置場所・利用形態に対応するために、モジュールの多様化(軽量、フレキシブル、両面受光、インバータ内蔵など)、多機能化(遮音 性、断熱性、防眩性等の機能付加)、建材・部材との一体化等の技術開発も必要である。 ■ 大規模水素製造には、太陽光による電力からの水電解、光触媒、あるいは太陽熱を利用した熱化学法等が考えられ、製造効率、コスト等などにより技術が選択される。 発電 太陽光発電 結晶型 発電効率 13% 水素製造 薄膜型 色素増感型等 小規模独立分散発電→広域連携 MW級大規模発電 22% 超高効率新型 30% 40% 設置面積:80km四方で2兆kWh 日本国土の約2%になる。 太陽光(電気分解) 製造効率 10% 製造効率 20% 製造効率 28% 太陽光利用 38% 太陽光(光触媒) 製造効率 0.01% 太陽熱(熱化学) 0.1% 太陽熱利用 >50% 太陽炉の高効率化、小型化 製造熱効率 30% 技術以外の要因 ● 化石燃料との価格差を埋める導入補助事業などの普及施策 転-10 地熱 ■ 資源量確保のため、地中の高温水蒸気や熱水を利用する浅部地熱系から深部地熱系へ、さらには地中の高温状態にある岩の熱伝導を利用する高温岩体発電へと進む。 ■ 地下深部(高温岩体では5,000m級)の資源量の把握、地熱貯留層の正確な評価など地熱探査技術が必要である。 2000 地熱発電 2030 浅部地熱系(<2,000m) (蒸気発電、バイナリー発電) 2050 2100 深部地熱系(>2,000m) 高温岩体発電 ・地下深部の資源量、地熱貯留層高精度評価技術 ・事業性、坑井採掘技術 ・熱水共存物質による抗井のスケール、腐食対策技術 賦存量(資源量の評価リスク有り) 熱水対流型資源量 2,459万KWe (=1,700億kWh、610PJ) 高温岩体資源量 110,000万kWe (=7,720億kWh、2,800PJ) 技術以外の要因 ● 現状では、発電規模が小さく掘削費用も高いため、発電コストが高く開発リスクが大きい。 ● 開発可能地域が自然公園法等の制約を受ける地域に多い。また、温泉等への影響の懸念がある。 風力 ■ 現状(2003年度)の風力発電の導入量は約70万kWで、大型化、低コスト化により陸上での導入が進む。 ■ 陸上のみでは十分な電力供給ができないため、洋上風力発電が必要となる。 風力発電 (陸上) (洋上) 大型化、低コスト化 沿岸近海着定式 洋上近海 洋上遠海浮体式 賦存量 (NEDO報告書より) 陸上: 3,524万kW (341億kWh/年、120PJ/年) NEDO シナリオ2 3D×10D設置 洋上:25,290万kW (4,027億kWh/年、1,500PJ/年) 海岸線から3km以内 3D×10D設置 技術以外の要因 ● 台風・風の乱れ・雷などの厳しい日本の自然環境に適合し、また狭く険しい日本の国土にも建設しやすい日本に適合した大型風車の開発・導入 ● 欧州とは異なる日本の環境に適合した風車の標準規格制定、認証が必要 ● 風況による出力変動を電力系統運用と調和させるための費用の社会負担方法の明確化 転-11 バイオマス ■ ■ ■ ■ 木質系バイオマス等で現在実用化されている直接燃焼による電力・熱の製造から、ガス化、さらにはガス化改質による電力、気体・液体燃料の製造に移行する。 高含水系バイオマス利用では、メタン発酵が技術的には実用化され、コジェネ等に利用されている。 産業分野でも利用するため、資源量確保のためのバイオマス利用の高効率化および収集・運搬技術が課題となる。 将来的には直接水素製造が考えられるが、製造効率の向上が必要である。 2000 2030 2050 直接燃料利用 ガス化・ガス化改質 集中バイオマス利用 燃料作物生産 メタン発酵、エタノール発酵 【木質系】 ・直接燃料利用 (火力混焼等) ・ガス化+燃焼(エンジン) ・ペレット等固体燃料 大規模バイオマス発酵水素製造 ガス化改質 【高含水系】 ・可溶化+メタン発酵+ボイラ/GE ・エタノール発酵 ・消化汚泥処理・堆肥化・燃料化 ・水熱処理による炭化、燃料化 バイオマスガス化燃料合成 (水素・合成燃料等) 2100 ・電力・熱 ・気体燃料 ・液体燃料 ・固形燃料 高効率化 2100年供給可能量 (「バイオエネルギー」山 地著より 国内木材バイオマス 640PJ/年 国内食料残さバイオマス 177PJ/年 世界木材バイオマス 58.8EJ/年 ・電力・熱 ・気体燃料 ・液体燃料 ・固形燃料 バイオマスガス化燃料・水素製造 冷ガス効率(木質) 65~75% バイオマス醗酵 (水素製造)実験室レベルの基礎研究段階 (発生速度 0.2×10-3Nm3/L・h) 75~80% 新規醗酵菌の探索 水素収率 現状の100倍 発生速度 現状の100倍 1000倍 1000倍 技術以外の要因 ● ● ● ● バイオマス資源(間伐材、林地残材など未利用バイオマス)を効率的に、かつ低コストに収集運搬する社会システムと、地産地消の循環型社会システム構築が重要 東南アジアなどとの国際協調(技術協力、CDMメカニズム利用等)によるバイオマスエネルギーの確保が必要 廃棄物の規制緩和、税制上の施策などバイオマス利用促進のための施策も重要 バイオマス資源は、長期的には食料・飼料利用、マテリアル利用、エネルギー利用等の需給相関が時間軸と共に変遷すると考えられ、独自の戦略が必要 転-12 エネルギー貯蔵・輸送 ■ 化石資源利用、原子力利用の両ケースにおいては、需要地まで大量のエネルギー供給を行うために重要となってくる。 ■ 再生可能エネルギー利用のケースでは、太陽・風力など、時間変動・季節変動が大きい自然エネルギー利用では需要と供給のマッチングに必須な技術である。 ■ エネルギー貯蔵・輸送は、民生分野での創エネおよびエネルギーネットワーク、運輸分野でのエネルギー供給設備などにも重要な技術である。 電力・燃料貯蔵技術 ■ 電力あるいは水素等の燃料を大規模に、かつ高効率に貯蔵する技術が必要。 ■ 新型二次電池、キャパシタ、SMES、フライホイールなどの電力貯蔵技術が、当面、負荷平準化等に用いられ、昼夜間の平準化などに適用が広がる。エネルギー貯蔵の期間、量 が増大するにつれて水素などの化学エネルギーによる貯蔵技術が重要となってくる。 2000 電力貯蔵技術 水素貯蔵技術 リチウム電池 2030 2050 2100 新型二次電池、高性能キャパシタ、SMES、フライホイール 瞬時負荷平準化 圧縮水素、液化水素、炭素系/有機系/合金系/無機系貯蔵 日間負荷平準化(1日~数日間) 季節間調整 配電変電所レベルの最適運用 超高圧系を含む最適運用 0.1 GWh/サイト (0.36TJ/サイト) 0.1 ~1GWh/サイト (0.36~3.6TJ/サイト) 大容量エネルギー貯蔵 備蓄 転-13 電力・燃料輸送技術 ■ 化石資源利用あるいは原子力利用ケースにおいては大容量のエネルギーを輸送するために必要な技術。 ■ 再生可能エネルギー利用ケースでは、供給と需要の地域的あるいは時間的なバランスをとるために必要な技術。 2000 電力輸送技術 送配電ロス 5.6% 大容量電源送電技術 UHVAC 2030 2050 2100 5% 4% 3% 高温超電導送電技術 新方式大容量送電技術 (多相送電、直流超高圧送電等) 常温超電導送電技術 (交流送電/直流送電) 分散電源連携技術 電力輸送ネットワーク技術 電力貯蔵を含めた短期最適運用技術 超電導限流器・変圧器 水素輸送技術 (バッチ輸送) 地域ネットワークの出現 大規模パイプラインによる水素の輸送 ローカルパイプラインによる水素の輸送 技術以外の要因 ● ケーブル、架空のいずれの場合でも、環境/用地問題によりルート確保が極めて難しく、今後の長距離大容量送電の整備はかなり困難であり、長距離大容 量送電の整備の必要量を最小限にする需給バランスおよび電源の立地地点選定が重要。 ● 系統に対して自然エネルギーや分散電源等の影響が無視できないレベルになり設置・管理者が非常に多くなる場合に備え、故障などに対する保護責任の 明確化など、系統連系ルールの整備・拡充を進める必要がある。 ● 電源・流通設備を一体的に制御して、電圧、周波数、故障復旧などの電気の品質を適正な範囲に維持する電力系統の発電設備系統連系サービスに対するコ スト評価、社会の負担方法の明確化が必要。 転-14 転-15 補足説明 1.二酸化炭素回収・隔離(CCS)必要量と可能量について エンジニアリング振興協会の調査結果を下表に示す。CO2の地中への隔離可能量は、カテゴリー1、2で35億t、 カテゴリー3、4まで加えると約915億tである。 2030年からCO2回収・隔離を開始し、2050年、2100年は、それぞれのCO2原単位目標値(それぞれ、1/3およ び1/10)を達成するのに必要な量のCO2を回収・隔離し、各々のその間は、年率一定で回収・隔離量が増加して いくとした場合の年間隔離量およびその累積量を下図に示す。 2030年は5億t-CO2/年、2050年は15億t-CO2/年、2100年は40億t-CO2/年とすると、累積隔離量は、2085年 頃にカテゴリー1~4までを含めた915億tを超える。 CO2地中貯留可能量(カテゴリー別) 50 2500 40 2000 定 義 貯留可能量 大規模な既発見の油・ガス田にある油・ガス層及び帯水層 約 20億トン 過去に国による基礎試錐が行われ、背斜構造が確認されている帯水層約 15億トン 確認されているトラップ構造内への貯留可能量 約 35億トン 陸域で確認されている堆積盆地内の背斜構造を伴わない帯水層 約160億トン 海域の堆積盆地内の背斜構造を伴わない帯水層 約720億トン 通常の帯水層への貯留可能量 約880億トン 日本及び近海におけるCO2地中貯留可能量 約915億トン 30 年間CO2隔離量(左軸) 1500 累積CO2隔離量 (右軸) 20 1000 日本及び近海におけるCO2地中隔離可能量 10 500 累積CO2隔離量(億トン) 分類 カテゴリー1 カテゴリー2 小 計 カテゴリー3 カテゴリー4 小 計 合 計 年間CO2隔離量(億トン/年) (株)エンジニアリング振興協会調査 0 0 2030 2040 2050 2060 2070 2080 2090 2100 西暦(年) 転-16 2.ウラン資源量について ウラン鉱石の埋蔵量は有限であり、炉の形式の違いによる発電効率の違いや核燃料サイクル有無により 原子力の利用可能年数が変化する。ウラン資源制約克服のためには核燃料サイクル技術の確立が重要であ る。 資源量 利用可能年数 (2002年の発電量、発電効率において) LWR(軽水炉) FBR (高速増殖炉) ワンスルー 核燃料サイクル 既知在来資源 4,589万t-U 85年 2,550年 総既知在来資源 14,383万t-U 270年 8,500年 Uranium 2003:Resources, Production and Demand, OECD/NEA, 2004. 転-17 3.2000年の再生可能エネルギー発電量について 2000年の総合エネルギー統計とエネルギー・経済統計要覧等から整理すると次のとおりである。水力を含む 再生可能エネルギー発電量は約900億kWhである。 総合エネルギー統計 水力発電 872億kWh ( 785PJ ) 太陽光発電 3.5億kWh ( 3.1PJ ) エネルギー・経済統計要覧 民生が主 地熱発電 3.3億kWh ( 30PJ ) 総合エネルギー統計 風力発電 1.1億kWh ( 0.98PJ ) 総合エネルギー統計 バイオマス発電 1.0億kWh(0.91PJ) エネ総工研報告書 産業廃棄物(製紙・パルプを除く バイオマス原料)、H15年度 廃棄物発電 21億kWh ( 19PJ ) 総合エネルギー統計 黒液除く 合計 900億kWh(840PJ) ※( )内の数値は、化石資源との比較のため、平均火力発電効率にて一次エネルギー換算値 転-18 4.太陽光発電 (1)分類例及び特徴 太陽光発電は、右記のように多数の種類がある。結晶シリコン、アモルファスシリコン、化合物半導体、有機半導体、 色素増感型など複数の方式の開発が当面続き、発電効率、生産性、耐久性等の観点から選択されていく。ただし、発 電効率が30%を超えるためには、超高効率な新構造・新材料太陽電池が必要である。 (2)太陽光発電のポテンシャル 下記資料によれば、9,680億kWhに対して効率15%の太陽光発電での発電ポテンシャルは、2,080億kWhである。 ケースCの必要発電量2兆kWhは、日本の国土の2%に匹敵する80km四方の面積に効率40%の太陽光発電を設置 した場合の発電量に相当する。発電効率が高く、建築物の壁をはじめ、あらゆるところに設置が容易な太陽光発電設 備の開発が望まれる。 太陽電池の分類例および特徴 分類 特徴 大きな結晶から薄板を切り出して使用する。 変換効率は高いが、製造コストも高い。 結晶シリコン セルが一つの結晶ではなく、複数の結晶粒に分 シリコン系 多結晶シリコン かれているもの。単結晶より変換効率は低いが、 安価に製造できる。 製造方法が比較的容易であり、大面積化に適し アモルファス(非晶質)シリコン ている。薄膜として利用されている。 高効率で放射線耐性が優れているため、宇宙用 太陽電池として実用化されている。多接合セルの Ⅲ-Ⅴ族化合物半導体 場合、さらに高効率化が実現している。 (GaAs、InP等) 多結晶薄膜型のセルは製造コストが低いため、 化合物 第2世代太陽電池として実用化が始まっている。 半導体 Ⅱ-Ⅵ族化合物半導体 (CdTe/CdS、Cu2S/CdS等) 単結晶シリコン カルコバイライト系半導体 (CIS系、CIGS系) 有機半導体 その他 色素増感型(湿式) (出所)各種資料をもとに作成 光吸収係数が大きいため、薄膜型に適している。 小規模であるが、実証試験も行われている。 (CuInSe2、CuIn1-XGaxSe2、CuInS2等) 軽量で低コストではあるが、変換効率は低い。 増感剤(色素)の光励起状態の電子移動反応を 利用したものであり、光触媒作用のある酸化チタ ン(TiO2)と色素を組み合わせて積層した構造と なっている。 <参考>変換効率 実用レベル 研究レベル ~18% ~25% ~16% ~20% 12% ~18% 22% ~37% - ~17% ~14% ~19% - ~5% - ~11% 世界における太陽光発電のポテンシャル推定 利用可能面積 平均日射量 (km2) (kWh/m2/年) 北アメリカ 7,490 2,250 西ヨーロッパ 3,325 1,350 日本 865 1,600 オセアニア 77,700 2,000 計画経済アジア 81,200 1,650 その他アジア 13,600 2,100 中東・北アフリカ 303,200 2,700 サハラ以南アフリカ 255,350 2,475 ラテンアメリカ 42,600 1,650 旧ソ連・東欧 30,000 1,600** 世界合計 815,330 ‐ 地域・国 発電可能量 (TWh/年) 2,528 673 208 23,310 20,097 4,284 122,796 94,709 10,544 7,200 286,438 <参考> 2000年電力需要(TWh/年) 北アメリカ 4,123 西ヨーロッパ 2,700 日本 968 オセアニア 207 計 経済アジア 1,081 その他アジア*** 1,206 中東・北アフリカ 379 サハラ以南アフリカ 348 ラテンアメリカ 626 旧ソ連・東欧 1,028 世界計 12,664 (注)*太陽電池の光電変換効率として15%を想定 **旧ソ連領中央アジアの砂漠を想定 ***アジア計より、中国・ベトナム・日本を引いたもの (出所)山地・藤井(1995),「グローバルエネルギー戦略」: IEA,"Energy Balances of OECD Countries", "Energy Balancesof Non-OECD Countries" 我が国における太陽光発電設備の潜在普及規模 物理的限界潜在量 住宅用 公共施設用 計 (単位:万kW) 2010年度目標値 6,750 550 7,300 482 (出所) 経済産業省 総合エネルギー調査会 新エネルギー部会資料(2000年12月、2001年6月) 出典)日本エネルギー経済研究所資料より 転-19 5.地熱発電 わが国は世界有数の火山国であり、豊富な地熱資源 に恵まれている。 ある試算では、全世界の約1割に相当 する地熱エネルギーが日本列島に賦存するとされている。 当面可能な地熱開発量は、右記に示す通り527万kW とされる。気象条件等に左右され出力の変動がある風力 や太陽光発電に対して、ベースロードとしての利用が可 能なエネルギーである。 我が国で当面開発可能な地熱発電開発可能量 (単位;万kW) 資源密度・確度等からみて開発可能 527 2 247 開発範囲4km 以下 自然公園規制地域外 133 2km以内に幹線道路が存在 95 温泉地域から3km以上離隔 39 温泉地域から5km以上離隔 17 (出所)資源エネルギー庁「21世紀に向けた発電技術懇談会中間報告」、1996年 転-20 6.風力発電 風力資源算出の基本になっているNEDOの全国風況マップ(1994年)によると、シナリオ2「10D×3D」(風速5m以上の すべての陸上の土地、利用面積3,599km 2、国土面積の1.0%)で3,500万kWである。設備利用率25%程度とすると年間 770億kWhとなる。 陸上のみでは十分な電力供給ができないため、洋上風力発電が必要となる。海岸線から3km以内に設置すると想定す ると、25,290万kW (4,000億kWh/年)となる。ただし、洋上の風況マップは今後の整備課題である。 我が国における風力発電設備の潜在的普及規模 物理的限界潜在量 実際的潜在量 (A) 500万kW 3,500万kW 風速 5m 風速 5m 2 2 可能面積 3,600km 可能面積 939km 設置台数 7万基 設置台数 8,300基 220万kW 風速 6m 可能面積 394km2 設置台数 3,700基 2010年目標値 (A)の50% 250万kW 300万kW 110万kW (出所) 経済産業省 総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会資料(2000年1月) 転-21 7.日本及び世界のバイオマス賦存量/利用可能量/供給可能量の推定値 日本のバイオエネルギー供給可能量(PJ/年) 日本のバイオマス賦存量、利用可能量(PJ/年) 賦存量 471 523 141 247 285 1,667 4,334万kL 木質系 製紙系 農業残さ 畜糞・汚泥 食廃 合計 原油換算 利用可能量 395 254 84 247 285 1,261 3,278万kL 3 アジア オセアニア ヨーロッパ 北米 南米 アフリカ 総計 木質系 5.9 0.4 5.0 7.7 1.9 2.0 23 ※METI資料(日エネ学会、MRI:2002年12月)より 2050年 2100年 1,011 678 1,017 678 959 640 食料系 ①究極供給可能量 ②実際的供給可能量 536 195 525 188 495 177 世界のバイオエネルギー供給可能量(EJ/年) 世界のバイオマス賦存量(EJ/年=10 PJ) 廃棄物系 農業系 畜産系 27 15 1.0 1.1 8.0 3.8 9.5 3.1 5.2 5.4 3.3 5.6 55 34 1990年 木質系 ①究極供給可能量 ②実際的供給可能量 小計 49 2.6 17 20 13 11 112 プランテーション 系 38 14 24 21 18 27 142 総計 87 14 41 41 30 38 288 1990年 2050年 2100年 木質系 ①究極供給可能量 ②実際的供給可能量 32.0 17.2 58.3 33.0 97.3 58.8 食料系 ①究極供給可能量 ②実際的供給可能量 51.5 17.2 22.5 4.7 188.2 72.6 ※「バイオマスエネルギー」(山地編、山本、藤野共著:2000年12月) 転-22
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